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続折々の記 2020⑧
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【 08 】10/25
10 25 (火) 学術会議問題批判 菅政権の間違い
時の政権が軍事関係の権力にかかわって、戦争の憂き目を見てきたのは歴史が明らかにしている。
今でもほとんど世界各国の政権は軍事力増減の権利を持っている。 だが、この考え方は民衆の危惧をまねいている。
きょうの予定、
菅内閣支持の急落
「学問の自由」は戦争反省の証
法律違反のオンパレード
2020/10/25
菅内閣支持の急落
※ 菅内閣支持率 学術会議 任命拒否 菅内閣の説明
朝日・10月17~18日調査 共同通信・10月17~18日調査
9月 65% 十分だ 16.1%
⇩⇩⇩ ⇩⇩⇩
10月 53% 不十分 72.7%
「安倍政権より悪い政権はないと思っていたら、それ以上の政権が出てきた」――。 菅義偉首相による日本学術会議への人事介入に抗議する東京・渋谷ハチ公前の宣伝で、社会学者の毛利嘉孝(よしたか)さんは訴えました。(18日)
学術会議会員の任命拒否問題での菅首相の説明が「不十分だ」との声は7割にも。 菅政権の支持率は、発足から1ヵ月で12ポイント下落しました。
安倍政権以上の強権ぶりをあらわにし、こくみんに「自助」「自己責任」を押しつける菅政権をこのまま続けさせていいのか――。 日本共産党の志位和夫委員長は訴えます。 「日本共産党は次の総選挙で政権交代を実現し、野党連立政権を樹立することに正面から挑戦します」 「次の総選挙を、菅政権を終わりにし、新しい日本の扉を開ける選挙にしていこう」と。
2020/10/25
「学問の自由」は戦争反省の証し
菅義偉首相による日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人の任命拒否した問題。 過去に例のない異常な事態で、安倍政権以上の強権ぶりが浮き彫りになりました。
様々な学会をはじめ、大学・大学人有志、日本野鳥の会、日本自然保護協会など幅広い団体・個人が、任命拒否の理由の説明と撤回を求めています。
声明や要望書を発表した学界、団体など(10月19日現在)
その中心は、政府からの「独立」を保障する学術会議法と、憲法23条の「学問の自由」に反するとの批判です。安全保障関連法に反対する学者の会調べ
学 会 416 大学・大学人有志 34 労 働 組 合 34 諸 団 体 76
憲法は「思想及び良心の自由」(19条)、「表現の自由」(21条)にとどまらず、「学問の自由」を明記しているのは、戦前の日本の歴史の反省に立ってのことです。
戦前、学問と思想の自由に政府が介入・弾圧し、科学者が戦争に動員それました。
京都帝国大学の滝川幸辰 教授の刑法学説が「国体に反する」として免官された「滝川事件」(1933年)。 東京帝国大学の美濃部達吉教授の、天皇は国家の一機関であるという学説が「国体を破壊する思想」とされ、公職を追われた「天皇機関説事件」(35年)は、その代表的例です。
日本共産党の志位和夫委員長は15日の記者会見で、今回の学術会議人事への介入は 「憲法23条の学問の自由に反することは明らかだ」 と強調。 その内容として、
▽ 個々の科学者の研究の自由を侵害し、研究者の委縮を生むこと
▽ 学術会議という研究者のコミュニティーの自主性・自立性を侵害したこと
を指摘しました。
学者・研究者が次々抗議
菅首相の学術会議会員候補の任命拒否に、学者・研究者らが次々抗議の声を上げています。
「安全保障関連法に反対する学者の会」は14日、東京都内で記者会見を行い、抗議声明を発表しました。
会見で佐藤学・学習院大学特任教授は 「学問の自由、学術会議の独立性を侵害し、学問を冒とくするものだ」 と批判。 浅倉むつ子・早稲田大学名誉教授は、 「学問に対する萎縮効果を生み出し、こういう事態はあっという間に社会全体に及ぶ。 政府のいいなりになる学者ばかりが育つ社会は発展しない。 本当の被害者は国民全体です」 と述べました。
大沢真理・東京大学名誉教授は、 「内閣総理大臣の任命は形式的なもので、形式たるゆえんは憲法の学問の自由と関連している。 中曽根康弘元首相が国会で答弁している」 と語りました。
憲法研究者有志も14日、国会内で会見を開き、憲法23条 「学問の自由」 にてらせば、首相は 「推薦を拒むことはできない」 とする声明を発表。 憲法研究者138人が賛同しています。
会見で、稲正樹・元国際基督教大学教授は、 「(任命拒否は)学問の自由、研究者の自律的コミュニティーの決定権を侵害している」 と指摘。 清水雅彦・日本体育大学教授は 「前例ができれば学者の間に忖度が生まれる。 絶対に認められない」 と厳しく批判しました。
「1983年国会答弁」内閣府が暴論
「1983年国会答弁」の維持可否の返答は困難
野党合同ヒアリングで
日本学術会議の任命拒否問題に関する野党の合同ヒアリング(18日)で、会場がどよめく場面がありました。
岡田正則・早稲田大学教授は、 「首相の任命行為は形式的」 「推薦していただいたものは拒否しない」 とする1983年の国会答弁が、現在も維持されているかと質問。 内閣府は 「1983年の当弁ですので、この時点において適時適切に答弁されたもの。 現在維持されているかどうかは、現時点でお答えするのは困難だ」 と述べたのです。
法律は、国会審議の時の答弁で解釈が確定します。 「維持しているか否か答えるのは困難」では法治国家ではなくなります。
歴史に汚点 到底承服できない
ノーベル物理学賞受賞者 益川敏英
日本学術会議というのは、先の戦争の反省のうえにつくられました。
戦争には協力しない、学問の自由を守る、政府から独立するというのが重要です。
戦前、原爆の研究など軍が大学に出入りし、強引に科学者が軍事目的の研究に動員されました。 このような戦争協力体制を繰り返さない、と出発したのが学術会議です。
政府の人事介入はあってはならないことです。 汚点を残すもので、到底承服できません。 菅義偉首相が、任命拒否という乱暴なことをおこなったことは、歴史上、長く糾弾されるでしょう。
2020/10/25
法律違反のオンパレード
菅義偉首相による日本学術会議会員候補の任命拒否問題。 日本共産党の志位和夫委員長は、「法律違反のオンパレードだ」 と批判しました(15日)。 その中身を詳しく見ると――。
法律違反 1 任命拒否
「任命拒否しない」との政府答弁を覆した
一つ目の法違反は、これまでの 「任命拒否はしない」 という政府答弁・法解釈を覆したことです。
会員の任命について日本学術会議法は7条で 「(学術会議の)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命すると定めています。
この条文でいう 「任命」 は本来、学術会議の推薦をそのまま首相が任命する 「形式的任命」 です。 政府も国会でそう繰り返し説明してきました。
同法を改定した当時の中曽根康弘首相つまり、学問の自由や独立を守るためには、今回のような任命拒否があってはならないということです。
「政府の行為は形式的行為であるとかんがえれば、学問の自由・独立というものはあくまで保障される」(1983年5月12日、参院文教委員会)。
当時の担当大臣、丹羽平助総理府総務長官
「推薦していただいた者は、拒否はしない。 その通りの形だけの任命をしていく」(同年11月24日、同委員会)。
法律違反 2 「総合的、俯瞰的」に判断
法律にはない基準を理由にしている
二つ目の法違反は、 「総合的、俯瞰的――」 などと法律にはない基準を持ち込み、任命拒否の理由にしたことです。
日本学術会議法に書かれた会員の選考基準は “優れた研究又は業績” のみです。 同法17条は 「日本学術会議は…優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し…内閣総理大臣に推薦する」 と定めています。
ところが菅首相は、任命について「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」 としています。 これは基準があいまいなだけでなく、法律のどこにも書いてありません。
また同法17条で会員選考の権限が与えられているのは、首相ではなく日本学術会議です。
法律違反 3 推薦名簿「見ていない」
「推薦に基づく任命」になっていない
三つ目の法違反は、菅首相が6人の除外前の、学術会議が出した推薦名簿を見ていないとしていることです。 これは 「(学術会議の)推薦に基づいて」 任命するという同法7条に反します。
9日のインタビューで菅首相は、記者から 「任命するその前の(学術会議の)推薦段階での(105人の)リストはご覧になってない?」 と問われて、 「見てません」 と答えました。
見ていないなら、 「推薦に基づいて」 任命したことにはなりません。 また、どうやって 「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」 というのでしょうか。
法律違反 4 首相以外が排除に関与
学術会議の推薦権、首相の任命権を侵害した
四つ目の法違反は、名簿から6人を排除する過程に杉田和博官房副長官が関わり、学術会議の推薦・選考権、首相の任命権を侵害したことです。 「総理大臣が任命」 と定めた同法7条に反します。
菅首相は、会員候補の名簿を見た時にはすでに、日本学術会議が推薦した105人ではなく、99人だったとしています。
9日のインタビューで菅首相は、 「私が最終的に決済を行ったのは9月28日で、会員候補のリストを拝見したのはその直前だった。 その時点では、現在の最終的に会員となった方(99人)がそのままリストになっていた」 と説明しました。
首相が見る前に名簿から6人を除いた判断には、杉田氏が関与したと報じられています。 任命権は首相にあると言いながら、それ以外の人物が推薦名簿を “改ざん” したことになります。
官邸・杉田氏の介入が横行
日本学術会議への官邸による人事介入は2016年から行われていました。
学術会議元会長の大西隆・東京大学名誉教授によると、1916年に欠員の補充のために官邸に候補者を示したところ 「難色が示された」 といいます。 1917年には定員より多い110人超の名簿を提示。 大西氏は 「苦い経験だった」 と話します。
1918年の欠員補充でも、官邸が難色を示していたことが判明しています。
官邸の担当者は、杉田和博・内閣官房副長官でした。
杉田氏は警察庁出身で警察庁警備局長などを歴任。 第二次安倍政権八足後の12年末、官房副長官に就任しました。17年からは官房人事を仕切る 「内閣人事局」 の局長を兼務しています。
最高裁も
杉田氏による人事介入は学術会議ばかりではありません。 「朝日」(17年3月2日付)は、最高裁裁判官の後任人事案で最高裁担当者が候補者一人を示したのに対して 「2枚持ってきてほしい」 と 「杉田氏がその示し方に注文をつけた」 と報じています。
法制局も
安倍政権は13年、内閣法制局長官を集団的自衛権行使容認派にすげ替えました。
当時、長官だった山本庸幸(つねゆき)氏は、杉田氏から 「辞めてもらう」 と言われたことを明かしています。(「朝日」9月30日付)
文化功労者も
元文部科学事務次官の前川喜平氏は野党合同ヒヤリング(13日)で、 「文化功労者選考会」 の委員選定でも杉田氏による介入があったと証言しました。
前川氏によると、杉田氏は 「政権を批判する人物は困る」 と候補の差し替えを指示したと言います。
野党4党は、臨時国会への杉田氏の招致を求めることで一致しています。
杉田和博 首相官邸URLより
2020/10/25
生年月日 昭和16年4月22日生 出身地 埼玉県 昭和41年 3月 東京大学法学部卒業 昭和41年 4月 警察庁 昭和57年11月 内閣官房長官秘書官事務取扱(後藤田・藤波官房長官) 昭和60年 4月 警視庁第一方面本部長 昭和61年 8月 鳥取県警察本部長 平成 5年 3月 神奈川県警察本部長 平成 6年10月 警察庁警備局長 平成 9年 4月 内閣官房内閣情報調査室長 平成13年 1月 内閣情報官 平成13年 4月 内閣危機管理監 平成16年 1月 退官 平成17年 7月 財団法人世界政経調査会会長 平成24年12月 内閣官房副長官(第2次安倍内閣) 平成26年 9月 内閣官房副長官(第2次安倍改造内閣) 平成26年12月 内閣官房副長官(第3次安倍内閣) 平成27年10月 内閣官房副長官(第3次安倍改造内閣) 平成28年 8月 内閣官房副長官(第3次安倍第2次改造内閣) 平成29年 8月 内閣官房副長官(第3次安倍第3次改造内閣) 平成29年11月 内閣官房副長官(第4次安倍内閣) 平成30年10月 内閣官房副長官(第4次安倍改造内閣) 令和 元年 9月 内閣官房副長官(第4次安倍第2次改造内閣)
政治学者東京工業大学教授 中島岳志
政権交代 共産党とともに
安倍政権も菅政権も少なくない国民は「まずいな」と思っています。 しかし国民にはその船しか見えない。 だからしすせみゅくマストにしがみついているような状態です。
野党は早くもう一艘(そう)の船=「政権交代の船」を浮かべなければなりません。 「あっちの船に移ったらよりよい未来が待っている」と国民に見えるようにする必要があります。
国民の中には民主党政権の失敗のイメージがまだあります。 それを払拭(ふっしよく)し、政権運営の安心感を与えるためにも私は、日本共産党を含めた連立が必要だと考えています。
「共産党と連立を組むと左翼化する」という議論がありますが、それは違います。 共産党と連立を組むことで中小企業や農業を守ることができる。 自民党政治のもとでないがしろにされてきた保守的な政策を推進することができます。
東京工業大学教授 中島岳志
忖度の横行を防ぐ道は
次の総選挙で政権奪取
なかじま・たけし=1975年大阪生まれ。 大阪外語大卒。 京都大学大学院博士課程修了。
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。 専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。
『「リベラル保守」宣言』 『保守と立憲』 『自民党 価値とリスクのマトリクス』 など著書多数
政権交代 インタビュー
共産党含めた連立が現実的
政権交代は過去2回日本で起きました。 1993年の細川連立政権、2009年の民主党政権です。 私は、1党に人気が集中して政権をとるというより、共産党を含めたいくつかの党が連立をする、細川政権型のほうが現実的だと思います。
日本では1993年以降ずっと連立政権です。 野党は共産党と連立するしかない。 その判断に早く踏み切るべきです。
野党共闘に、与党経営が豊富な中村喜四郎さん(衆院議員)のような方が参加するのを私は歓迎しています。 地方の優れた首長さんらの知恵と経験も大切です。
私は、昨年出版した『自民党 価値とリスクのマトリックス』という本で、菅義偉さんについて「忖度政治と大衆迎合」を論じました。 “安倍政治” “菅政治”の特徴は「忖度」だと思います。
彼らが最初にターゲットにしたのが「官僚」でした。 次は「メディア」。 ここを締め上げ、「忖度」「自主規制」させてきました。
自民党が野党の時代に菅さんは、『政治家の覚悟』という本を書いています。 そこで官僚のコントロール術を、「伝家の宝刀」は人事権だとあけすけに書いています。 “官僚は人事によってコントロールできる” “人事によって大臣の意思を鋭く察知する”……。 つまり 「察知させる」 というのです。 直接的命令なしにコントロールできるのが重要だと、菅さんは書いています。
戦前の北大での事件が示す
国民全体に自主的服従促す危険
いま菅政権による日本学術会議への人事介入が大問題になっています。 この問題は、あっという間に国民全体に向けられる危険があります。 そのことは、北海道大学で戦前に起きた 「宮沢・レーン事件」(1941年) が示しています。
この事件で、宮沢弘幸君という学生と英語の教官であるレーン夫妻が逮捕されました。 宮沢君は戦後まで監獄から出られず(45年10月釈放)、レーン夫妻は帰米(43年)させられました。
3人がなぜ逮捕されたのかは戦後もずっとわかりませんでした。その理由が広く社会に知れ渡ったのは80年代でした。 宮沢君がレーン夫妻に「根室に海軍の飛行機がある」と話したことが、軍機保護法違反の罪に問われたのです。
ところが、根室に海軍の飛行機があるというのは当時、公知の事実でした。 当時の地図にもしっかり載っていました。 別に機密でもなんでもありません。 「見せしめ」目的だったのです。
この事件で重要だったのは、逮捕の理由がわからなかったことです。 理由がわからないから、官憲が求めている以上に、どんどん自主規制のハードルが上がっていきました。
レーン氏がよく行く本屋の店主までが「私はレーン氏とは親しくありません」と言いだしたそうです。 もっともローコストで、効率的・服従システムです。
学術会議が推薦する6人の会員候補を菅政権が任命拒否したことは、明らかに学者・研究者に対する「みせしめ」です。
政府が明らかにしないためメディアは、任命を拒否された学者が 「過去に何をやったのか」 「何を言ってきたか」 と探り出します。 共謀罪に反対したとか、安保法制を批判したとか…… 。 それらがすべて学者の自主規制のハードルになっていく。 メディアは完全に権力の術中にはまってしまっています。
このメカニズムはそのうち、国民一人ひとりにまで適用されるようになります。 秘密保護法と共謀罪はすでに成立しています。 秘密保護法だと逮捕の理由も明らかにしない。 するとメディアは勝手にいろいろと推測を始めます。 さまざまな運動の委縮、抑制の “効果” をもたらすでしょう。
こうした “悪夢” の現実化を防ぐためには、政治の流れを大きく変える必要があります。 次の総選挙で政権交代をしなければなりません。
聞き手・田中倫夫記者
10 29 (木) 学術会議問題批判 菅政権の間違い
安倍政権に続いて、より国民に直結した専制政治とした菅政権。
戦前の轍 (わだち)にはまり込んだ。 学問の自由を踏みにじった自分勝手な考え方に腹が立つ。 ウソツキ !! この言葉は子供のころつかった言葉だ。 同じウソでも、相手が少数ならまだわかるが、ことは重大で国民全体に対するウソとなる。
戦争の惨 めさを体験していない世代の人は、悲惨という言葉をその一部の理解・解釈でしか判ってはいないと思う。 このような言い方をすると、多分に反発される言葉が返ってくると思う。
目前に死をまのあたりにし、一部始終を見てきた者にとって戦争とは何かの言葉は、死ぬか生きるかの問題なのです。 専制政治は戦争を苦にもしない。 なぜか言えば、自分は弾丸破片が飛び交う戦場の体験がなく、おや兄弟の死に出会ってもいないからなのです。 この言葉でもまだ反発されるかもしれない。
私が出会った人たちには、爆弾で木っ端微塵 になってしまい、ズボンの左前の内側へ自分で書いた分隊班所属と名前の5センチ四方の布切れしかどう探しても見つからなかった人がいた。 彼の親へは分隊士がそれだけしか送ってあげられなかった。 弱冠満16才の少年兵だった。
親の悲しみすら当時は十分な察しもつかなかったけれど、自分が子供を持つようになってからそれを思うといたたまれない思いに襲われました。 兄弟もいたことでしょう。
軍隊の上層部の人や政治家のリーダーであった人たちは、こうした現実の体験はなかったのです。 いろいろ考えてみていると、死者に口なしの言葉通り死者でない限り実体験はないのです。 いったん法律として制度が出来上がると、どんな法律にしても個人ではどうしようもありません。
ですから、悪法もまた法なりとして、毒杯を飲み干したというギリシャの哲人のことは今も生きているのです。
今回の学術会議のメンバー候補任命にあたって、政治家が自分の政策に反する考えを持つ人たちを除名する行為は、「学問の自由」に反するばかりでなく人間の自由権の否定にもつながるこういであり、それは専制政治につながる行為でもあるのです。
私はこうした考えには反対であり、国家の将来を考えると悲しいのです。 悲しくて悲しくてジダジダを踏むほど悲しいのです。 明るく元気な子供たちの将来に暗雲がかかるのです。
菅義偉さんは、総理大臣ですのに、悲しみも哀れさも底知れぬ苦しみもわかってはいない。
今日の新聞記事を残しておきます。
2020年10月29日 ▼1面
任命除外「多様性、念頭に」 首相「判断変更しない」
9月に就任した菅義偉首相に対する初めての代表質問が28日、衆院本会議で始まった。野党は日本学術会議の任命除外問題を追及。首相は除外について、具体的な理由の説明を避けたうえで、「多様性が大事だということも念頭に任命権者として判断したものであり、変更することはない」と改めて表明した。▼2面=コロナ後の社会像論戦、4面=枝野氏の狙いは、14面=社説
立憲民主党の泉健太政調会長が除外の撤回と理由の説明を求めたのに対し、答えた。首相は学術会議について、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがみられる」と自らの主張する「多様性」の問題を指摘。同時に「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動」「バランスの取れた活動」なども求める姿勢を改めて強調した。
立憲の枝野幸男代表は、「(学術会議の)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と定める日本学術会議法の規定を挙げて、任命除外を「条文上、明らかに違法」と批判した。
構成が似ている「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する」という憲法6条の規定を引用しつつ、首相に判断の余地はないと詰め寄ったが、首相は「法文の文言のみで比較することは妥当ではない」とかわした。
枝野氏は「政府が行うのは形式的な任命」とした1983年の政府答弁との整合性もただしたが、首相は「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではない点は、政府の一貫した考えだ」と反論した。
首相が掲げる看板政策も問われた。不妊治療支援について、首相はこの日の答弁で、男性の不妊治療への助成拡大に言及した。一方、26日の所信表明で「所得制限を撤廃」という表現が使われたことをめぐり、枝野氏は、保険が適用されない治療への助成も「制限撤廃」の対象となるのか尋ねた。首相は「保険適用されている治療で所得制限が課されているものはないことを踏まえ」表明したと説明。制限撤廃は保険適用を指すものとの認識を示した。
森友学園をめぐる公文書改ざんや加計(かけ)学園問題、「桜を見る会」も引き続き論点になった。泉氏はこれらの問題の再調査機関の設置を求めた。首相は、改ざんに絡んで自ら命を絶った財務省近畿財務局職員の遺族が求める再調査について「結論が出ている」と答弁。いずれの問題も対応済みとの立場を崩さず、再調査には言及しなかった。(大久保貴裕)
▼2面=コロナ後の社会像論戦
(時時刻刻)コロナ後の社会像、論戦 国会代表質問
【写真・図版】2人の党首が所信・代表質問で語ったこと
菅義偉首相にとって初の国会論戦が28日始まった。衆院代表質問で、合流新党・立憲民主党の枝野幸男代表は、1年以内にある衆院選を見据え、「コロナ後」の社会像や経済政策で論戦に挑んだ。議場がもっとも白熱したのは、日本学術会議の任命拒否問題だった。与野党の激しい攻防を予感させる幕開けとなった。▼1面参照
■首相「自助・共助・公助」の順、強調 枝野氏「まず自助、考え時代遅れ」
新型コロナウイルスの感染拡大という危機のなか、菅氏と枝野氏の初顔合わせは、どういう社会を築いていくのかが論点になった。
枝野氏は、菅氏が所信表明で語った理念「自助・共助・公助」に切り込んだ。コロナ禍で困難な生活を強いられる学生やシングルマザーを例示しながら、「ことさら『自助』を口にする総理に実態が見えているのか」と訴えた。
首相の理念を、競争と効率ばかりの「新自由主義」と攻撃。「自助と共助と公助を順番に並べる考えは、昭和の成功体験にとらわれた時代遅れ」と批判した。
これに対し首相は、めざす未来像について「根本を貫く考え方が『自助・共助・公助』、そして絆だ」と強調。「まずは自分でやってみる。そして、家族や地域で助け合う。その上で政府のセーフティーネットでお守りする」と述べ、改めて持論を繰り返した。また、「行政の縦割り、既得権益などあしき前例を打破する」と述べ、規制改革に取り組む考えを示した。
衆院議員の任期は来年10月で1年以内に総選挙がある。首相は携帯電話料金の値下げや不妊治療の保険適用など、国民の関心が高い政策を早く実現させて、支持を広げたい考えだ。
対する枝野氏は、政権交代に向け、立憲が「選択肢」になるよう、対立軸を作ることに力点を置いた。
枝野氏は、コロナ危機の経済対策として「消費税の時限的な減免」を提案した。次の選挙で共産党などとの「野党共闘」を実現する「旗印」になるものだ。これに対し、首相は「消費税は社会保障制度のために必要な財源」とかわし、引き下げを否定した。
首相が目玉政策として打ち出した「2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロをめざす」という「脱炭素社会」については、「自然エネルギー立国」を掲げる枝野氏が「原子力発電への依存を強めることはあってはならない」と牽制(けんせい)。首相は「原子力を含め、あらゆる選択肢を追求していく」と述べ、違いが浮き彫りになった。
枝野氏は、女性の活躍の妨げになっている夫婦同姓を「日本最大の規制」と主張し、選択的夫婦別姓の導入も求めた。首相は「国民の間に様々な意見があり、動向を注視する」と慎重な姿勢を崩さなかった。(小林豪)
■「支離滅裂の答弁」批判も 学術会議、首相の「多様性」発言
代表質問で最も議場が沸いたのは、首相の答弁が日本学術会議の任命拒否問題に差し掛かった時だった。
枝野氏は「(学術会議が)推薦された方を任命しないことは、条文上、明らかに違法だ」と言い切り、6人を任命しなかった理由などをただした。
これに首相が「人事に関することで答えを差し控える」と具体的な説明を拒むと、その答弁が聞き取れなくなるほどのヤジが野党席から飛んだ。
「ちょっと静かにしてもらえないですか」
首相はしびれを切らし、大島理森議長に注意を要求。ざわめく議員を前に「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが出ないことも踏まえて、多様性を念頭に私が任命権者として判断を行った」と続け、任命除外が自身の判断だと強調した。
しかし、この日、大西隆・元学術会議会長(東京大名誉教授)が野党側に提供した資料によると、東大在職者や関東地方の会員の割合は低下傾向にある。東大は2020年10月時点で16・7%で、11年10月(28・1%)から低下。関東地方も49・5%(20年10月)と59・5%(11年10月)から減った。女性会員の割合も37・7%と増加。学術会議側は「会員選考の際に、ジェンダー、地域、所属、分野、年齢の多様化を図ってきた成果」としている。
首相は代表質問の答弁で、会員の選考は「私が判断した」とも語った。ただ、首相は朝日新聞などのインタビューで6人を除外する前の105人分の推薦名簿は「見ていない」と述べている。枝野氏は代表質問後、「全員の名前の載った名簿は見ていないにもかかわらず、『バランスをとって自分が判断した』という支離滅裂の答弁を堂々とした。これだけでも辞職ものだ」と首相を糾弾した。
6人の任命除外について具体的に語らず、学術会議の全体像には能弁な首相。政府・与党は、その姿勢に呼応するように会議の見直しの動きを進める。
井上信治・科学技術担当相はこの日午前、河野太郎行政改革相と会談。学術会議事務局の定員や予算の観点から行政改革の対象とする河野氏と緊密に連携していく考えを伝えた。井上氏は同日夕には、学術会議のあり方を議論している自民党PT(プロジェクトチーム)座長の塩谷立・元文部科学相とも面会。同PTは年内に提言を政府に提出する方針だ。
塩谷氏は面会後、記者団に「政策決定に貢献してもらうようなあり方を追求したい」と述べた。(小泉浩樹、石井潤一郎、石倉徹也)
■どちらが「庶民派」?対決
この日の代表質問では、菅氏と枝野氏の「身の上話」対決もみられた。
菅氏は自民党総裁選から、「雪深い秋田の農家に生まれ」とはじめて、「たたき上げ」を訴える演説が十八番だ。26日の所信表明演説でも、この話を交えて地方政策をアピールした。
対抗するように、枝野氏は代表質問で「中学生の時に、父親の勤め先の倒産を経験した。失業保険と母のパートで育ててもらった。父は小さな町工場を開き……」と語り出した。その上で、立憲が掲げる「共生社会」の必要性を訴えた。
どちらが「庶民派」か、農家VS.町工場で競った形だ。
▼4面=枝野氏の狙いは
枝野氏、女性・若者に焦点 外交安保、言及少なく 政権と対立軸
【写真・図版】枝野代表、代表質問で何をどれだけ語った?
立憲民主党の枝野幸男代表は28日、衆院本会議で、菅義偉首相への初の代表質問に臨んだ。政権担当能力をアピールするため、女性や若者支援策に焦点を当てて対立軸を打ち出そうとした一方、外交安全保障への言及は少なかった。▼1面参照
「政治に私たちは見えていますか」
代表質問の冒頭、コロナの影響でアルバイト収入が激減し、親からの支援も受けられなかったというある学生からの問いかけを紹介。「コロナ禍から国民の命と暮らしを守る国会にしなければならない」と訴え、収入減に直面する若者や女性を中心に支援を拡充する必要性を強調した。
大学授業料を半額にすることや、保育士の賃金引き上げを首相に求めるとともに、選択的夫婦別姓の実現といったジェンダー平等を推進することも提案した。
「政権の選択肢を目指す党の代表」を自任する枝野氏は、代表質問のねらいについて「菅氏より首相らしいということを見せたい」と周囲に語っていた。質問と答弁がほぼ一往復の代表質問では、日本学術会議の任命問題を十分に追及しきれないと判断。立憲の社会像を示すことに主眼を置いた。
ただ、外交や安全保障政策への言及は、全体の中で短めだった。質問の終盤で「健全な日米同盟を軸として、現実的な安保、外交政策を推進する」と説明。沖縄・辺野古への新基地移設問題で埋め立て中止を訴え、日米地位協定の改定を求めた。(吉川真布)
▼14面=社説
(社説)国会代表質問 「建設的」には程遠い
政府が進める諸施策の説明には言葉を費やすが、野党が追及する争点については、従来通りの答弁ではねつける。これではとても、菅首相のいう「建設的な議論」にはつながらない。
首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。所信で一言も触れられなかった日本学術会議の人事について、どう語るかが注目されたが、「必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではない」として、6人の任命拒否を撤回する考えがないことを明確にした。
「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動」を実現するために判断したと繰り返したが、この6人を外すことがその目的にかなうのか、到底説得力はない。
首相は今週になって、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがあると言い始め、きのうの答弁でも、「多様性」の確保が念頭にあったと語った。しかし、これとても、6人を拒む理由にはならない。
人事権の行使を通じて、政権の意に沿うよう、学術会議を牽制(けんせい)する狙いがあるのではないか――。こうした疑念は、後付けのような説明をいくら重ねても、払拭(ふっしょく)はできまい。
首相が安倍前政権の「負の遺産」に向き合う気がないことも、改めてはっきりした。
森友問題は財務省の内部調査や検察の捜査で決着済み。加計学園の獣医学部新設のプロセスに問題はない。桜を見る会は自分の任期中は開催しない。公文書管理の問題は今後二度と起こさないことが大事……。過去のうみを出し切ることなく、政治や行政への信頼を回復できると思っているのだろうか。
首相がめざす社会像、力を入れる個別政策を貫く理念についての説明も不十分なままだ。
立憲民主党の枝野幸男代表はきのうの質問の中で、競争や効率を重視する新自由主義にかわる選択肢が必要といい、政治と行政が支え合いの役割を果たす「共生社会」の実現を訴えた。
人口減少や高齢化、独り暮らし世帯の増加、地域の疲弊など、社会環境の激変に伴い、自助だけでは生きていけず、共助も難しい地域や人々が格段に増えているとして、首相がいう、まず自助、次に共助、最後に公助という考えは「時代遅れではないか」と批判した。
これに対し首相は、正面切って反論することもなく、自らの「自助・共助・公助」観を肉付けして語ることもなかった。これでは大局観に欠けると批判されても仕方あるまい。
首相は国会答弁の基本姿勢を問われ、「丁寧な説明」と「建設的な議論」と語った。単なる掛け声でないことを、これから続く論戦で示してほしい。