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続折々の記 2021①
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 04 】01/25~ 【 05 】02/03~ 【 06 】02/05~
【 07 】03/03~ 【 08 】03/13~ 【 09 】04/03~
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【 01 】01/01
日本人としての集団意識
天皇陛下の新年のお言葉
普遍性を見つめ直すこと
コロナがもたらす社会の分断
新型コロナ東京感染1337人
共生のSDGs 明日もこの星で
連載
01 01 (金) 元旦の朝 日本人としての集団意識
朝起きてみると一面白い雪景色となっていた。 この冬初めての雪でした。
朝の自分の行事を済ませてテレビを見ると、天皇陛下が始めい国民に述べたという映像が出ていました。 ドイツのメルケル首相が新型コロナに関して国民に語りかけた内容が新聞に紹介されて直接対話の大切さに感心していたばかりだったので、天皇陛下の話を聞いてとてもうれしく思いました。 新聞記事として明日でると思うのでコピーするつもりです。天皇陛下の新年のお言葉手に入ったのでここへ入れます
一 天皇陛下の新年のお言葉 動画
二 両天皇陛下の新年のお言葉
【天皇陛下】
皆さん新年おめでとうございます。
【皇后さま】
おめでとうございます。
【陛下】
今年の正月は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、残念ながら一般参賀の場で皆さんに直接お話をすることができなくなりました。そこで、今回は、ビデオで新年の御挨拶をしようと思います。
振り返りますと、昨年7月に、豪雨により多くの尊い命が失われたことは痛ましいことでした。御家族を亡くされた方々や、住む家を無くし、仮設住宅などで御苦労の多い生活をされている方々の身を案じています。
この1年、私たちは、新型コロナウイルスという、今の時代を生きる私たちのほとんどが経験したことのない規模での未知のウイルスの感染拡大による様々な困難と試練に直面してきました。世界各国で、そして日本でも多くの方が亡くなり、大切な方を失われた御家族の皆さんのお悲しみもいかばかりかと思います。
そのような中で、医師・看護師を始めとした医療に携わる皆さんが、大勢の患者さんの命を救うために、日夜献身的に医療活動に力を尽くしてこられていることに深い敬意と感謝の意を表します。同時に、感染の拡大に伴い、医療の現場がひっ迫し、医療従事者の皆さんの負担が一層厳しさを増している昨今の状況が案じられます。
また、感染拡大の防止のために尽力されている感染症対策の専門家や保健業務に携わる皆さん、様々な面で協力をされている多くの施設や、国民の皆さんの努力や御苦労も大変大きいものと思います。
この感染症により、私たちの日常は大きく変わりました。特に、感染拡大の影響を受けて、仕事や住まいを失うなど困窮し、あるいは、孤独に陥るなど、様々な理由により困難な状況に置かれている人々の身の上を案じています。感染症の感染拡大防止と社会経済活動の両立の難しさを感じます。また、感染された方や医療に従事される方、更にはその御家族に対する差別や偏見といった問題などが起きていることも案じられます。その一方で、困難に直面している人々に寄り添い、支えようと活動されている方々の御努力、献身に勇気付けられる思いがいたします。
私たち人類は、これまで幾度(いくど)も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきました。しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたものと思います。今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っています。
即位以来、私たちは、皆さんと広く接することを願ってきました。新型コロナウイルス感染症が収まり、再び皆さんと直接お会いできる日を心待ちにしています。
そして、今年が、皆さんにとって、希望を持って歩んでいくことのできる年になることを心から願います。ここに、我が国と世界の人々の安寧と幸せ、そして平和を祈ります。
【皇后さま】
この1年、多くの方が本当に大変な思いをされてきたことと思います。今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします。
また、この冬は、早くから各地で厳しい寒さや大雪に見舞われています。どうぞ皆様くれぐれもお体を大切にお過ごしいただきますように。
耳が遠いので、朝見ていた放映ではすべてお話しされたわけではなかったせいもあり、内容は確認できなかった。
次の新聞に載るだろうと思っていたら、新聞編集はすでに終わっていたらしく編集では後のほうに出ていました。 そのためコピーはできなかったが、検索で調べると幸運にもコピーできるサイトがありそれをコピーしてここへ挿入しました。
表現された言葉は気品に満ちており、その願いは崇高な願いだと私は受けとめました。 とても嬉しかった。
今朝は神棚へ最初の礼拝をした。 日本の歴史に伝えられていた古事記や日本書紀に見るようにそしてまた関係資料からうかがえるように、日本とイスラエルは同じ祖先であったという研究を知ることになった。 伊勢神宮のお札を神棚へ奉しているので自分たちのご先祖様へ感謝をこめて自分の健康を祈り約束しました。
そんな気持ちが強くしていたので、今朝のNHK番組で日本の国の始まりに関して出雲地方と高千穂地方の現地をいろいろと紹介していましたので驚いたのです。 若ければこの放映した場所を訪問し体験したいと思ったのです。
雲にそびゅる高千穂の …… 戦前派の私には懐かしい歌です。
唱歌《紀元節》の全詞章
一、雲に聳(そび)ゆる高千穂の
高根おろしに草も木も
靡(なび)きふしけん大御世を
仰ぐ今日こそたのしけれ
二、海原なせる埴安(はにやす)の
池のおもより猶ひろき
めぐみの波に浴(あ)みし世を
仰ぐ今日こそたのしけれ
三、天つひつぎの高みくら
千代よろづに動きなき
もとい定めしそのかみを
仰ぐ今日こそたのしけれ
四、空にかがやく日の本の
よろずの国にたぐいなき
国のみはしらたてし世を
仰ぐ今日こそたのしけれ
海ゆかば …… 後輩として特攻隊を送り出した。
海行かば 水漬く屍
山行かば 草生す屍
大君の 辺にこそ死なめ
かへり見は せじ
「海ゆかば」を検索で調べてみると、
言葉は、『万葉集』巻十八「賀陸奥国出金詔書歌」(『国歌大観』番号4094番。『新編国歌大観』番号4119番。大伴家持作)の長歌から採られている。作曲された歌詞の部分は、「陸奥国出金詔書」(『続日本紀』第13詔)の引用部分にほぼ相当する。
この言葉には、1880年(明治13年)に当時の宮内省伶人だった東儀季芳も作曲しており、軍艦行進曲(軍艦マーチ)の中間部に今も聞くことができる。戦前においては、将官礼式曲として用いられた。
この二つの歌など、戦時色の強い歌でことに皇統一環を奉じ日本民族が連綿として続いたことを誇りとしていた歌として作者や作曲者が考えていたからでしょう。
種族をまとめるのには、民族史とか宗教観とか実証不可能な神の存在の考え方が大事にされるのです。 としてまた、その集団が小さいにしろ大きいにしろ一個人としては共同意識になって寄りかかれるものになるとも考えられるのです。 一人の人としては、安心を求めることが無意識の意識となっているのでしょう。 これは間違いのないことなのです。 このことを私は集団帰属という無意識という仕組に組込まれていると考えています。
北海道釧路の鶴居村で岡田さんの馬の放牧場や、テレビでイワシの大群が集団を作ったり、家の周りのスズメも集団帰属によって自己防御しているのをみかけたり、人も集団帰属が無意識のうちにも働いていると思われるからです。
コロナ化の分断意識から生まれるもの
普遍性を見つめ直すこと
(インタビュー)音楽はどこまで届く ミュージシャン・米津玄師さん
新型コロナウイルスの脅威に悩まされたこの1年、社会には「距離」という新たな規範が生まれた。 集うことも、触れあうことも奪われた世界で、他者へのいらだちや社会の分断がむき出しになっている。 この息苦しさをどう乗り越えられるのだろう。 音楽は距離を超える、という。 2020年、数多くの人に音楽を届けたミュージシャンの米津玄師さんは「普遍性を見つめ直す」と語った。
ここを開いて読んでみると、米津玄師 の良心のささやきがわかる気がする。
友達が多く生きている時代にはそのような社会の距離とか社会の分断という、意識の有無にかかわらずあまり感じない。 でも生まれた部落の男たちがみんな死んでしまい、今いる部落の同年配の人もなくなり、老年配の人が孤立感を持つのは当りまえだと気がつく。
新型コロナ東京感染 1337 人
新型コロナウイルスの国内の感染者は31日午後10時時点で新たに4520人が確認され、1日あたりの感染者数としては26日の3882人(修正値)を大幅に上回り、過去最多を更新した。東京都の感染者も1337人に上り、初めて1千人を超えて最多を更新。年末年始を迎えても、感染の拡大傾向が続いている。▼3面=救命瀬戸際、38面=強い対策求める声
全国の感染者数は累計で23万6619人(大型クルーズ船含む)。亡くなった人は全国で49人増え、累計で3505人となった。厚生労働省によると、30日時点の重症者は前日より13人増えて全国で681人となり、過去最多を更新した。
東京では、1週間平均の陽性率が30日時点で10・2%。11月初旬の3%台から上昇し、5月の緊急事態宣言解除後で最高を更新した。都幹部は「大きなクラスター(感染者集団)があるわけではなく、市中感染が広がっている」とみる。
厚労省は31日、英国とアラブ首長国連邦から到着した10歳未満~50代の男女6人が、変異ウイルスに感染していたと発表した。
※ 救命瀬戸際 コロナ拡大、救急患者へのしわ寄せ深刻
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、医療に深刻な機能不全が起きている。一刻を争う救急患者を受け入れる病院がなかなか見つからない事態になるなど、影響は新型コロナの患者だけにとどまらない。
■対応60%台に低下、入院先を見つけるのも難航
「呼吸苦の女性。3日前のPCR検査では陰性でした」。12月30日午後5時半、東京都三鷹市の杏林大病院高度救命救急センター。救急車からストレッチャーで運び込まれた50代女性の顔は、蒼白(そうはく)だった。
「いま、苦しい感じはどうですか? 少しは楽になりましたか?」。医師の呼び掛けに酸素マスクをつけた女性がうなずく。
感染が広がり、今やだれが新型コロナにかかっているのかわからない。医師や看護師は呼吸が苦しくなるN95マスク、目元を覆うシールドをつけ、ガウンを着て対応する。
この日、センターでは先に薬物中毒の患者2人を受け入れており、最初に治療をする三つの「初療室」はすべて埋まった。だが3分後、新たに救急車が到着。「来ました!」。男性看護師が声を上げる。
胸の痛みを訴える心筋梗塞(こうそく)の70代男性が運び込まれ、患者の間に仕切りを立てて対応した。
さらに5分後、消防の指令センターから呼吸苦を訴える70代女性の受け入れ要請が入った。「4件対応中で受けられない」。当直の荻野聡之医師はそう言って断った。「五つ、六つの病院に断られ、遠方から来るケースもある。12月に入って増えている」と言う。その後も緊急手術中に、心肺停止の患者が運ばれてきた。
新型コロナによる医療崩壊は、まず救急の現場に表れると言われる。
東京都の場合、高度な医療を必要とする新型コロナの重症患者の4割が、救命救急センターのICU(集中治療室)に入院中。新型コロナの対応に人手を割いていることもあり、救急の受け入れに制限が生まれる。救急の負担が一部の病院に集中し、病床が埋まってしまう現象も起きている。大都市だけでなく、患者が急増している地域で共通する問題だ。
杏林大病院の山口芳裕センター長によると、命に関わる深刻な容体の患者を運ぶ都内の「3次救急」で、1度の電話で病院が引き受ける割合を示す「応需率」はすでに60%台まで低下。昨年4月の「第1波」の50%に近づいている。
新型コロナの患者も入院先がなかなか見つからない。関係者によると、新たに保健所に相談があっても入院先を決めきれず、都の入院調整本部に持ち込まれる案件は1日200ほど。調整本部でもその日のうちに入院先を見つけられず、翌日に持ち越すケースが12月30日は150を超えた。
山口さんは「医療崩壊は、派手に見えるものではない。救急車に乗った時に行く場所がない、そうなった時に初めて実感する」と話す。
■心臓病や透析治療、後回しになる恐れ
急病への対応は日々難しくなっている。
「医療の崩壊は、命を救えるはずの患者に対する医療の機会を奪い、新型コロナを超えるような犠牲者が出てしまう。さらに厳重な対策をしてほしい」。危機感をあらわにするのは、都内73病院や消防でつくる「東京都CCUネットワーク」の高山守正会長だ。
同ネットは、一刻を争う心臓や血管の病気の患者を、いち早く地域の専門病院につなぐ。だが昨年11月以降の「第3波」では、複数の受け入れ病院で新型コロナの院内感染が発生。ある地区では、6割の病院が一時機能停止に陥った。
急性心筋梗塞(こうそく)は、発症2時間以内の緊急カテーテル治療が生死の鍵を握る。大動脈瘤(りゅう)破裂といった急性心臓病では、緊急手術ができなければ7割が亡くなるとされる。発生件数でみると、冬場のこうした病気は、夏場の2倍に上る。
慢性疾患を抱えた人たちも困難に直面している。
腎臓の機能が低下した透析患者は重症化のリスクが高く、関連学会でつくる委員会によると、12月25日時点で全国で522人が感染し、71人が亡くなっている。
新型コロナに感染した場合、透析もできる病院に入らなければならない。だが、首都圏で受け入れ可能な病院はほぼ満杯の状態。菊地勘委員長は「自転車操業で、医療崩壊はもはや始まっている」と話す。
日本医師会の中川俊男会長は21日の記者会見で、「全国の医療提供体制は逼迫(ひっぱく)の一途をたどっている。新型コロナの医療だけではなく、がん、心臓病、脳卒中を始め、通常の疾患の治療も後回しになることが起きてきた」と話した。
杏林大病院の山口さんは「社会全体で新型コロナの感染者を減らさないと、大きなケガや病気をした時に影響が出てしまうことを理解してほしい」と話す。(月舘彩子、服部尚)
大みそか、感染最多次々
より強い対策求める声
新型コロナウイルスの感染拡大は年の瀬も続き、国内の新たな感染者数は31日、過去最多を600人以上、上回った。政府や首長らが繰り返し注意や対策を呼びかけてきたが、効果は出ていない。野党からは緊急事態宣言を求める声も出るなど、より強い対策が必要とする声が上がった。▼1面参照
「コロナにとっては、年末も年始もありません。特にこの寒い時期、感染拡大は非常に厳しい状況です」
この日、初めての1千人台となる1337人の感染が確認された東京都。小池百合子知事は報道陣を前にそう危機感を訴え、「静かなお正月を、ステイホームで送っていただきたい」と改めて呼びかけた。
立憲民主党の枝野幸男代表や国民民主党の玉木雄一郎代表は31日、SNSなどで政府に緊急事態宣言の発出を求めた。菅義偉首相は宣言を出す考えはないか記者団から問われたが、「まず今の医療体制をしっかり確保し、感染拡大回避に全力をあげることが大事だ」などと述べるにとどめ、宣言自体に触れなかった。
新型コロナは3月から5月にかけての「第1波」、夏に「第2波」に見舞われ、秋以降に「第3波」に襲われた。政府は再び緊急事態宣言を出すことは見送ってきたが、12月に入って感染者は急増。1日の感染者数が3千人台に上る日があり、大みそかの31日には一気に4千人を超えた。東京のほか埼玉、千葉、神奈川、岐阜、福岡の5県でも31日に感染者数が最多を更新し、感染は各地で広がっている。
医療体制のいっそうの逼迫(ひっぱく)が懸念されており、専門家からはより強い対策を求める声も上がっている。
順天堂大学の堀賢教授(感染制御学)は「人の動きが減っていないので、さらに感染者は増えるだろう。医療の崩壊で1月末には亡くなる人が急増する恐れもある」と指摘。「都独自の緊急事態宣言を出すとともに、家族以外との会食の禁止や対面時のマスク着用の義務化など、より強い対策が必要だ。若い世代にも影響力のある人を巻き込んだキャンペーンなど、対策の周知に力を入れるべきだ」と訴えている。
◇
衆院は31日、共産党の清水忠史衆院議員=比例近畿=が新型コロナウイルスに感染したと発表した。
(以上のほか都道府県別の感染者死者などの一覧表がのっていた)
(明日もこの星で:5)
ベネチアは澄んだ 観光・経済ストップ、水質改善
係留されたゴンドラが激しく揺れ始めた。運河から水があふれ出し、ひたひたと迫ってくる。石畳の広場はあっという間に水に覆われ、市民らが渡し板の上を足早に行き交う。12月1日、イタリアの「水の都」ではこの日も例年の光景が繰り返された。
世界的な観光地ベネチア。世界遺産のこの街が近年、相次ぐ高潮の被害に見舞われている。地球規模の温暖化の影響で冬場の高潮の頻度が増え、20年前には数年に1度だった大規模な浸水が、1年に何度も起きるようになった。
「いま手を打たなければ街は死んでしまう」。ルイジ・ブルニャーロ市長(59)は危機感を強める。
高潮だけではない。年に1300万人もの観光客が訪れることで、下水やゴミによる運河の汚染も深刻化している。工場の煙や自動車の排ガスによる大気汚染も問題になっている。
そんな街に2020年、大きな変化が起きた。観光客の姿が、新型コロナウイルスの感染拡大でぱったりと消えたのだ。12月、記者が訪れると、かつては濁って異臭を放っていた運河が透き通り、無数の魚が泳いでいるのが見えた。「舟が来ないからね。ヘドロも巻き上がらない」。ゴンドラの船頭がつぶやいた。
環境保全活動をする海洋コンサルタントのマルティーナ・ボッチさん(56)によると、昨年3月に全土で行われたロックダウン(都市封鎖)以降、観光客が減ったことで運河に直接流れ込む下水の量が減り、水の透明度が増した。大気汚染も例年より減ったという。
コロナ禍で人間が活動を止めたことが、はからずもベネチアの環境浄化につながった。だがそれは、新型コロナのような危機が起きない限り、かつての美しさを取り戻せないという深刻さの表れでもある。
昨年10月から「モーゼ」と名付けられた巨大水門が稼働を始め、130センチ以上の高潮予報が出されると、鋼鉄製の巨大な扉が街を水から守る仕組みができた。ただ、全ての高潮を完全に防げるわけではなく、1回の稼働には数十万ユーロ(数千万円)の費用もかかる。
30年後にはモーゼが必要になる回数が年200回になるとの予測もある。地元エンジニア団体のマリアーノ・カラロ会長(67)は「このまま化石燃料を使い続ければ、温暖化と海面上昇は続く。気温が2度上がれば、私たちはもう潟に住めなくなり、観光も成り立たない」と指摘する。「ベネチアは消滅するだろう」
ベネチアが直面する問題は、人類が共通に向き合う危機でもある。大量生産や大量消費が地球環境を大きく変え、人類の存続そのものを脅かしているからだ。よりよい世界をめざすSDGs(持続可能な開発目標)は、世界が2030年までに具体的な対策を取ることを掲げる。いま私たちは何を考え、どう行動すべきなのか。(ベネチア=河原田慎一)
(2面に続く)
経済再開、また大気汚染悪化
(1面から続く)
アパートの窓の外の白く煙った景色に目をやりながら、インドの首都ニューデリーに住む主婦アヌパマ・チョプラさん(72)は、ため息をつく。「朝と晩はほとんど何も見えない日がある。春の頃はよかった」
新型コロナウイルス対策として、政府が全土で厳しい外出制限を課していた昨年4月、アパートの屋上からは約3キロ先のヒンドゥー教寺院が見えた。チョプラさんは手を合わせて拝んでいたという。しかし、今は辺りは白くかすみ、数十メートル先さえ見えない。「外出制限は解除されたが、息苦しくなるので外にはほとんど出なくなった」と話す。
インド都市部の大気汚染は世界最悪レベルだ。それが、昨年3月下旬に全土で始まった都市封鎖によって工場や公共交通機関が止まり、一時的に改善した。かすんで見えなかった星空やヒマラヤ山脈が見えるようになるなど、インド各地で珍しい光景が話題になった。
中国の北京でも新型コロナの感染が広がった昨年1月下旬以降、交通渋滞が消えた。運転手の男性は「大通りを見渡しても自分の車1台だけという時もあった。あんなことは初めてだ」と振り返る。各地で工場が止まり、空気が澄み渡った。
英医学誌ランセットの関連誌の論文によると、中国ではコロナ禍の外出制限でPM2・5が減少し、昨年2~3月、大気汚染を原因とする推計2万4200人の死亡が避けられたという。中国政府発表の新型コロナの死者4634人を大幅に上回る数だ。
ただ、こうした状況は一時的で、経済活動や交通量は元に戻りつつある。
ニューデリー周辺では、インド政府が6月以降に経済活動を再開したことで、屋外活動を自粛しなければ健康を害する水準にまで大気汚染が悪化している。
「大気汚染の影響によってコロナ感染者が重症化し、状況をより悪化させている」。デリー首都圏政府のケジリワル首相は11月、報道陣にそう述べて危機感をあらわにした。新型コロナの感染拡大が、大気汚染による人体や環境への悪影響を改めて浮かび上がらせた形だ。(奈良部健、北京=高田正幸)
■人間の活動、気候や生物種を左右
コロナ禍で、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量も一時的に激減した。だが、その影響は限定的で、経済回復とともに元に戻りつつある。大気中のCO2濃度は下がる兆しがなく、2020年の世界の平均気温は観測史上3位以内の高温になる見込みだ。
現在は、地球の状態を人間が支配する新たな地質年代に入ったとして「人新世」とも呼ばれる。同年6月には、北極圏にあるシベリアの町で観測史上最高の38度を記録。温暖化がなければ、8万年に1回未満しか起こらない現象が現実のものとなった。
気候変動に対して何の対策もとらない「最悪のケース」では、世界の平均気温が、20世紀末と比べて21世紀末には2・6~4・8度上がるとされる。日本の平均気温は4・5度上がり、東京は現在の屋久島に近い気温になる。世界の平均海面も最大1・1メートル上昇。日本沿岸も最大で1メートル弱上がり、台風や強い低気圧がなくても高波などのリスクが高まる。
この半世紀で世界の人口は約2倍に増えた。世界自然保護基金(WWF)などによると、人類がいまの生活を維持できる食料や水を得るには「地球1・6個分の自然資源が必要」という。世界の人々が米国人と同じ生活をすると地球5個分、日本人と同じ生活なら2・8個分が必要だ。
こうした状態は他の生物種の減少を招く。国際組織IPBESによると、地球上の種の現在の絶滅速度は、過去1千万年の平均の数十~数百倍に達している。
地球は「第6の絶滅時代」に入ったと警告する科学者たちもいる。過去5回の絶滅時代は大規模な火山の噴火などが発端だったが、いま直面する絶滅時代は私たち自身が引き金を引いている。
直近の大量絶滅は、隕石(いんせき)の衝突が発端という説が有力で、食物連鎖の頂点にいた恐竜が地球上から姿を消した。一方、人の祖先である小型哺乳類は必要な食料が少なくすんで生き延びた。国立科学博物館の恐竜学者、真鍋真氏は「人の祖先は省エネだったので生き残れた。人間が恐竜と同じ状況に陥る可能性は十分にある」と警鐘を鳴らす。(水戸部六美、阿部朋美)
■大量消費・環境破壊「コロナは警告」
著名な米国人シェフのホセ・アンドレ氏が昨年4月末、ツイッターに2枚の写真を投稿した。1枚は、コロナ禍で買い手がつかず、アイダホ州で廃棄された山積みのジャガイモ。もう1枚は、テキサス州のフードバンクに並ぶ車の大行列を撮ったものだ。
同じ米国に、食料が余る場所がある一方で、食べ物に困る人たちがいる現状を示した2枚。「繁栄し、技術が進展した時代に、この2枚の写真がどうして同時期に存在するのだ?」。そんなつぶやきが世界中で話題を呼んだ。
米国では食肉処理場でも新型コロナの集団感染が発生。食肉処理が滞り、育ちすぎた牛や豚が大量に殺処分された。毛皮の産地デンマークでは、突然変異した新型コロナウイルスが人に感染したとして、1700万頭のミンクが殺処分されることになった。
コロナ禍があぶり出したのは、人類の身勝手さと現代社会のもろさだ。ウイルスの出現そのものが、そんな人間活動に起因するとの指摘もある。新型コロナは、コウモリやセンザンコウといった野生動物が宿主だとの説がある。背景には、開発などによって野生動物の生息域が減少し、人と動物との接触の機会が増えたことがある。人間の活動が続く限り、第二、第三の新型コロナが現れる可能性があるということだ。
一方で、感染症は世界史を変える岐路にもなってきた。神戸大の塚原東吾教授(科学史)によると、代表的なのは三つのパンデミック(世界的大流行)だ。14世紀に主に欧州で流行した黒死病(ペスト)は人口減をもたらして合理化の原動力になり、16世紀にアメリカ大陸を席巻した天然痘は、インカやアステカ帝国を結果的に滅ぼした。近代に各地へ広がったコレラは近代衛生システム確立の契機になった。
塚原氏は「19~20世紀はその延長線上にある社会の到達点」とみる。「エネルギーを大量消費し、近代的な畜産が窒素やリンを大量に排出して、海洋プラスチックがあふれている現在、地球上の物質循環が明らかに健全ではなくなっている。かつては成功したウイルスとの闘いが、今回もうまくいくとは限らない。新型コロナは非常に大きな警告の一つとみるべきだ」
長崎大の山本太郎教授(国際保健学)は「自然破壊や温暖化で野生動物が追い詰められた結果、野生動物と共存していたウイルスは人の社会に入り込み、密集した都市から世界の隅々へと広がった。現代社会は新型コロナウイルスにとって格好な条件と言える」と指摘する。
「コロナ禍は地球環境への人類の影響の大きさを改めて示した。二酸化炭素の排出をゼロにするなどのドラスティックな変化を、今すぐ始めなければならない。間に合うかどうか、時間との闘いだ」(合田禄、石井徹)
(3面に続く)
「コロナの時代の僕ら」
著者、パオロ・ジョルダーノさんに聞く
(2面から続く)
「すべてが終わった時に、僕たちは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」。新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がったイタリアから、そう問いかけた作家がいる。科学者でもあるパオロ・ジョルダーノ氏(38)だ。同氏の「コロナの時代の僕ら」(早川書房)は世界30カ国以上で出版され、大きな反響を呼んだ。コロナ禍のいま私たちは何を考えるべきなのか、同氏に聞いた。
■危機と教訓を記憶し、ものの見方を変えるとき
新型コロナのワクチンが行き渡れば、みんなマスクを外して、これまでの全てを忘れてしまうかもしれません。それは、亡くなった人や今なお苦しむ人に対して、とても失礼な態度だと思います。
私はこの1カ月半、父が長く勤めた北部トリノの病院に通い、集中治療室の医師や看護師など多くの人から話を聞きました。改めて痛感したのは、この病気が数字の上で増えているだけでなく、私たち人間の体に実際に起きているということであり、未来のためにその記録を残す必要があるということでした。
著書(日本語版)で私は、コロナ禍での出来事や人々の姿について、何度も「僕は忘れたくない」と書きました。それは、私たちがこの危機と苦い教訓を記憶し、今こそ物の見方を変えるチャンスにしようと伝えたかったからです。
新型コロナは、私たちが直面する地球規模の脅威のうち、最後のものにはならないでしょう。環境問題では、私たちはもっと致死的で破滅的な脅威が起きかねない瀬戸際にいます。
このパンデミックは、気候変動対策や地球の持続可能性といった問題の重大性について、改めて私たちに気づかせました。予測できない危機が全世界で起きたことで、私たちの意識が世界レベルの問題に向けられたからです。社会的弱者や最も貧しい国がより大きな影響を受けるという点では、新型コロナも同じですが、しかし、気候や環境の問題はもっと複雑です。
私たちは今回のパンデミックから、「複雑な問題に対して単純な解決策は存在しない」ということを学びました。気候変動のようなさらに大きな問題を解決するには、一時的に我慢して習慣を変えればいいというのではなく、私たちが永続的に変わらなければ効果は表れないのです。
コロナ後の世界を想像することは、現時点では難しいかもしれません。けれども、ワクチンが行き渡った時、私たちは危機意識がなくなってしまって、コロナ禍の中で考えたり悩んだりしたことを全て忘れてしまうのでしょうか。私はそうなってほしくない。今を人類が変わる転換点にするためにも、現在の危機を記録し続けたいと思います。(聞き手・ローマ=河原田慎一)
*
Paolo Giordano 1982年、イタリア北部トリノ生まれ。大学で物理学を学び、数学の「双子素数」をモチーフに2人の若い男女の人間関係を描いた「素数たちの孤独」(2008年)で、イタリア文学の最高賞であるストレーガ賞を受賞。20年春に新型コロナウイルスの感染が広がるローマで書かれたエッセー集「コロナの時代の僕ら」は、世界30カ国以上で出版された。(写真は本人提供)
◇次回は「リアルの価値」がテーマです。ウイルスの拡散を防ぐため、会いたい人にも会えない日々が続いています。オンライン化が急速に進む中で、人と人が直接会うことの意味について考えます。
1月3日(明日もこの星で:6)
オンラインでは埋められない
会う大切さ、実感する恋人たち
日曜日の夜、JR名古屋駅の新幹線乗り場には、スーツケースや大きなリュックを手にしたカップルたちの姿が目立つ。マスクをつけたままキスをしたり、ずっと抱き合ったままだったり……。つかの間の週末を一緒に過ごした恋人たちは、この場所で再び別れの時を迎える。
「気を付けてね」
12月中旬、辻満由子さん(26)はホームで、山口県に戻る恋人の男性(25)に手を振った。交際を始めてから約2年。いつも笑って次に会う約束をする。
この時は1カ月ぶりの再会だった。手をつなぎながらのデート。時間はあっという間に過ぎた。
新型コロナウイルスの感染が急速に広がり始めた春先、2人の生活は一変した。政府が緊急事態宣言を出し、街頭から人影が消えた。それまでは定期的に会えていたのに、簡単には会えなくなった。
ドッグトレーナーとして働いていた辻さんは仕事が減り、5月にはゼロに。だが、なぐさめてほしい時、そばに彼はいなかった。
少しでも一緒にいる気持ちになろうと、休日はLINEのビデオ通話を一日中つなぎっぱなしにした。朝起きてから、朝食を準備し、歯を磨いて、同じテレビの番組を見る。寝るまでスイッチを切らなかった。
1人でいる時は、旅先で撮りためた2人の写真や風景を、ずっとスマホで眺めていた。だが、画面越しの会話や思い出だけでは、心は満たされなかった。
「いつ会えるのかな」。6月中旬、夜いつものように電話をしていると、そんな言葉と一緒に涙がこぼれた。最後に会ってから2カ月以上が経っていた。
一緒にオムライスをつくりたい。「今年やりたいこと」に決めたことを一緒にしたい。そして何よりも、彼に頭をなでてほしかった。辻さんが仕事で落ち込んでいる時、彼はいつもそうしてくれていた。「それがいつも落ち着くというか、ほっとするんです」
彼はすぐに会いに来てくれた。久しぶりの2人の時間。彼は辻さんの頭を優しくなでてくれた。「さみしさに気づいてくれていたんだ」。笑みがあふれた。
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いま2人は月1、2回のペースで会う。離ればなれの間はビデオ通話が2人をつなぐ。「技術の発展のおかげで、画像もきれいで会話の遅れもない」と辻さんは言う。
しかし、同時にこうも思う。「一緒に過ごしながら何げなくふれあったりするその積み重ねが、恋人同士の距離を近づけている。それはオンラインではたどり着けないんじゃないかな」
私たちは会いたい人にも会えない日々を強いられてきた。SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる安心で豊かな未来を実現するには、一人一人が人間らしく生きられることが欠かせない。愛すること、ふれあうこと――。コロナ禍の中で、私たちはその大切さに改めて気付かされている。(小川崇)
(2面に続く)
リモート時代、リアルに価値
(1面から続く)
コロナ禍で巣ごもり生活が続いた昨年、東京・青山の結婚相談所「マリーミー」では、恋人や伴侶を求める新規相談者の数に大きな変化があった。感染拡大が本格化した3月ごろから通常よりも2割ほど増え始め、緊急事態宣言が解除された後の夏ごろには2倍近くに達した。代表の植草美幸さんは「不安を一緒に解消できるパートナーを求める人が増えた」とみる。「リモートが増え、その場しのぎではない『家族』との安らぎを求めているようです」
相談所ではオンラインお見合いを導入し、会員向けにレッスンも始めた。ただ、当初こそ利用率が会員全体で半分を超えたものの、現在は10%程度にまで減っている。植草さんによると「希望者の本気度は低い印象がある。『画面の中の人は本物なの?』と疑う人もいる」という。
「結婚相手を決めるには、触れたり同じ匂いをかいだりして五感を共有しないといけない。オンラインだけというのは難しい。会ってみないと完全に相手の性格はわかりません」
コロナ禍では、会話や密を避けた出会いの場も生まれた。その一つが7~9月に都内などの飲食店で開催された「ノートークバー」だ。出会いイベントのサイト運営を手がけるリンクバル(東京)などが実施した。
集まった男女はマスクを着けて2メートルほど間隔をあけ、直接話さないのがルール。チャット機能を使って気になる人にメッセージを送り、画面越しでやり取りする仕組みだった。
「安心できる」「声をかけやすい」と好評だったといい、対象店舗は各地に広がった。同社の出来(でき)千春さん(27)は「オンラインなら出会いの幅が広がる」と説明する。ただ、成功の鍵は参加者が実際に同じ空間に集まったことだとも語る。「画面越しの写真だけではわからない雰囲気が、同じ場所にいればわかる。『相手がそこにいる』という安心感が大事なんです」(小川崇)
■「距離」あったから救われた
オンライン化が急速に進んで救われた人もいる。
12月3日夜。ひきこもりの当事者ら15人がZoomにログインした。話題は「コロナ・ビフォー&アフター」。コロナ禍で生活や心境にどんな変化があったかを語り合った。
「ソーシャルディスタンスのおかげで他人が距離を詰めてこないのが心地いい」「予定を入れなければという焦りが消えた」――。顔を表示できる機能は全員がオフ。チャット欄だけで語る人もいた。
ずっと引きこもり生活だった30代半ばの男性は、ツイッターでこの会を知り、初参加した。リモートの普及で実際に人と会わなくてもよくなり、「知らない人とのオンライン自助会にも進んで参加するようになった」という。「体調不良を通信技術がカバーしてくれた。世界が広がりました」
オンライン化は障害を持つ人々の生活も変えた。脳性まひがあり、介助が必要な立命館大客員研究員の河合翔さん(34)は、その長所も短所も感じている。
普段、外出する際には駅での乗り換えなどに時間がかかるが、時間を有効に使えるようになった。一方で、小さな画面に顔だけしか映っていないと、相手に言葉をうまく聞き取ってもらえなかったり、障害に気付いてもらえなかったりすることもある。「実際に会う方が、人のぬくもりは感じられる」と話す。
ただ、単にコロナ以前に戻ればいいとは考えていない。「リモートワークが普及すれば、障害者にも働きやすくなる人がいる。オンライン教育が当たり前になれば、様々な事情で学校に通えない子どもにも教育の機会が広がる。自分にあったリモート会議のシステムだって開発されるかもしれない。コロナと向き合うことは社会の仕組みを変えるきっかけになると思う」(伊木緑、小早川遥平)
■「会いたい」が育んだ豊かさ
現在のような交通手段がなく、電話もインターネットもなかった時代、人々は会いたい気持ちとどう折り合いをつけていたのか。
「人が人に会いたい気持ちは昔も今も変わりません」。平安文学を研究する日本女子大の高野晴代名誉教授によると、源氏物語にも、孫と会えない寂しさを嘆く祖母が登場するという。平安時代、愛を育む手段は和歌だった。「会えない間、気持ちを膨らませ、時間をかけて歌を詠んだ」
それから1千年。画面越しにリアルタイムで会話できる時代でもやっぱり直接会いたいのはなぜだろう。
技術哲学を研究する名古屋大の久木田水生(くきたみなお)准教授は「人間のコミュニケーションで言語から得る情報はごく一部だ」と話す。「『感じがいい』といった感触は言語化できない情報から感じ取るし、身体接触は共感や信頼を生みます」
より速くより多くの人に直接会うため、人類は新たな移動技術を生み出してきた。恋愛でもビジネスでも旅行でも、現代はほぼどこにでも行けるようになった。だが、鉄道や自動車、飛行機が二酸化炭素(CO2)を排出し、地球温暖化が加速している。
そんな状況に昨年、変化が起きた。コロナ禍で人の活動が止まり、CO2の排出量は全世界で7%減る見通しだ。排出量の減少自体は、温暖化対策の取り組みを掲げたSDGs(持続可能な開発目標)の後押しにはなる。かといって、人間がずっと活動を停止したままでいるわけにもいかない。
「人は長期の自粛に耐えられないというのがコロナ禍の教訓だ」。国際環境経済研究所の手塚宏之主席研究員は指摘する。「温暖化は結局、クリーンなエネルギー源の開発など科学技術で解決するしかないのでは」
ただ、何もしなくていいわけではない。「『新しい生活様式』で、オンラインでも十分な会議などができると実感できた。無駄を省いて必要な行動はする。メリハリが大事だと思います」(伊木緑)
■無駄に見えたことが重要だった 俳優・片桐はいりさん
5~6月、リモートで演劇を作りました。稽古が終わると同時に自分の生活に戻れて無駄がない。でも演劇も映画も、現場にいて、ああだこうだ言いながら作っていくもの。私は稽古場ではすごく笑ってるんですけど、笑い声って、「賛成!」「私これ好き!」という意見の表明だと思うんです。でも、リモートでは出番ではない時は音声も映像もオフ。無駄に見えるコミュニケーションがいかに重要か気づかされました。
本番は配信でした。もちろん生とは別物です。以前、一人芝居で全国を回りました。「よく一人でやるね」と言われましたが、一人で芝居なんかできませんよ。お客さんがいるからできるんです。お客さんの波動が芝居をつくる。だから一人芝居を経験したあと、客として観劇する時は緊張するようになりました。パフォーマンスを左右するのは観客である私なんです。
2000年代はインターネットと共にありました。2020年、人は人と会えなくなった。もちろんウイルスのせいですが、助走はずっと前から始まっていたんだなと思うんです。
先日仕事した人は、一緒にいる時間の3分の2くらいスマホに目を落としていました。また、いつからか演劇の稽古場ではリンゴのマーク(米アップル社のノートパソコン)に向かって芝居しているような感じになりました。スタッフがみんな広げているから。
今からネットなくして生活はできません。でも、映画館で映画を浴びること、ライブでもみくちゃになって騒ぐ喜びを、簡単に手放せないと思うんです。オンラインが便利にしたことと奪ったものを知ったうえで、どう生きていくか。後戻りはできない、この状況を生きていくしかないわけですから。(聞き手・伊木緑)
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かたぎり・はいり 1963年東京生まれ。大学在学中に劇団に入る。映画「かもめ食堂」やNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」など出演多数。映画「私をくいとめて」が公開中。
◇次回は「気候危機」がテーマです。私たちの日常でも、地球温暖化の影響を感じる場面が増えています。雪不足に悩むスキー場の様子などを通して、気候危機の現状と世界の取り組みについて伝えます。