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続折々の記 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 05 】10/04
35首脳ら取引 ブレア元英首相やアブドラ国王白
宿業 - 新纂浄土宗大辞典
衆院選、31日投票 解散17日後は最短、任期満了超え
岸田新内閣、派閥と刷新感重視
新首相を分析する①~③
2021/10/04
きょうの新聞
※朝日の1面記事
35首脳ら取引 ブレア元英首相やアブドラ国王
ブレア元英首相やヨルダンのアブドラ国王ら世界の現旧首脳35人が、タックスヘイブン(租税回避地)に設立した法人を使った不動産取引などに関わっていたことが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の入手資料から判明した。タックスヘイブンをめぐっては国際的な規制強化が求められているが、指導者らの「世に知られたくない」財産や取引の隠れみのになっている実態が改めて浮かぶ。▼4面=透明性訴えた裏で、27面=日本では
ICIJが、各地のタックスヘイブンに会社や信託を設立・管理する法律事務所や信託会社など14社の1190万件以上の内部書類を入手し、「パンドラ文書」と名付けた。91カ国・地域の330人以上の政治家や政府高官にタックスヘイブンとのつながりが確認された。この取材プロジェクトには日本から朝日新聞と共同通信が参加した。
文書によると、ブレア元英首相夫妻は2017年、英国の旧保護領だった中東バーレーンの閣僚の家族から、タックスヘイブンの英領バージン諸島の会社を買収した。この会社は約880万ドル(約9億7千万円)の価値があるロンドンのビルを所有しており、ビルには妻の法律事務所が入居していた。ICIJは、夫妻が会社の株式を取得したことで、ビルを直接購入した場合にかかる税金40万ドル以上を払わなくて済んだとしている。
ブレア氏の妻はICIJの取材に、ブレア氏はこの取引に関与しておらず「会社と建物を英国の税制と規制の下に移すため」の取引だったと説明した。バーレーンの閣僚側は「会社は過去も現在も英国のすべての法律を順守している」と弁護士を通じて回答した。
また、文書によると、安定した王政で知られる中東・ヨルダンのアブドラ国王は1995~2017年に、少なくとも36の会社をタックスヘイブンに設立。これらを介して、03~17年に英国と米国で14の不動産を購入していた。高級住宅街やビーチ沿いの豪邸で、資産価値は計1億600万ドル(約118億円)を超える。
これらの不動産取引の大半は11年以降のものだった。この年から本格化した中東の民主化運動「アラブの春」では、チュニジアやエジプトで政権が崩壊し、ヨルダンでも政治改革を求めるデモが起きた。アブドラ氏は当時、官僚や政治家の汚職には厳正に対処すると公言していた。アブドラ氏の弁護士は、ICIJの取材に「公金を悪用していない。ヨルダンの法律では国王に納税義務はない」と回答した。
低税率や無税のタックスヘイブンに会社を設立する行為は違法ではないが、会社設立や銀行口座の開設には専門家の助けがいる。高額の手数料が必要で、利用できるのは巨大企業や富裕層に限られる。実際に収益を得た国で支払うべき税を納めずに公共サービスの恩恵だけを受ければ、税の負担に不公平が生じる。
▼4面=透明性訴えた裏で
91カ国・地域、330人超の名 透明性訴えた首脳らも 「パンドラ文書」
■ICIJ提携記事
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パンドラ文書」には、タックスヘイブン(租税回避地)を介した取引に関わった世界91の国・地域から330人以上の政府高官ら公人の名前が記されていた。なかには、反腐敗や租税回避の撲滅などを訴えてきた首脳らも含まれている。▼1面参照
文書によると、チェコのバビシュ首相は2009年、タックスヘイブンの企業を介して2200万ドルを投じ、南仏カンヌ近くの村の大邸宅などを購入していた。ICIJは、これらの企業や住宅が公人に求められる資産申告には見当たらないとしている。
バビシュ氏は財政界のエリート批判で支持を集めた。ビジネスで成功した大富豪でもあり、前米大統領になぞらえて「チェコのトランプ」とも呼ばれる。政界入りする直前の11年には「起業家らが喜んで納税する」国をつくりたいと訴えていた。
ケニアのケニヤッタ大統領が、パナマの財団の隠れた受益者になっていたことも明らかになった。ICIJは同氏にコメントを求めたが、応じなかった。
ケニヤッタ氏は18年の英BBCのインタビューで「すべての公職者は、人々が合法性を問えるよう、資産を公にすべきだ」と述べていた。
パンドラ文書からはほかに、エクアドルのラソ大統領やウクライナのゼレンスキー大統領らとタックスヘイブンとつながりも浮かんだ。また、英国の歌手エルトン・ジョン氏や、ビートルズ元メンバーのリンゴ・スター氏らの名前もあった。
■パンドラ文書に出てくる現旧首脳や有名人
ブレア元首相(英国)
アブドラ国王(ヨルダン)
バビシュ首相(チェコ)
ケニヤッタ大統領(ケニア)
ゼレンスキー大統領(ウクライナ)
ラソ大統領(エクアドル)
エルトン・ジョン氏(英国出身の歌手)
リンゴ・スター氏(ビートルズ元メンバー)
シャキーラ氏(コロンビア出身の歌手)
クラウディア・シファー氏(ドイツ出身のファッションモデル)
▼27面=日本では
タックスヘイブンに会社、理由追う 「税金安くする、それ以外ありますか」
■ICIJ提携記事
「パンドラ文書」に登場する日本の個人や法人は千を優に超える。タックスヘイブン(租税回避地)との関わりはどんなものなのか。▼1面参照
パンドラ文書に名前のあった日本人の中には租税回避目的を認める人もいた。
東京都内でIT関連会社の日本法人を経営する男性は、親会社を英領バージン諸島に設けていた。取材に応じた妻は、税金を安くする目的はなかったのかとの問いに、「そうとは言いたくないが、それ以外にない」と答えた。
妻は親会社の株主で、経理も担当。かつてはバージン諸島の親会社に日本法人からコンピューターシステム利用料を支払っていたという。それによって日本法人の課税所得は減り、納税は減る。「それ以外の理由でタックスヘイブンに親会社をつくる会社はありますか」
親会社は2016年にシンガポールに移した。当時、国際的に租税回避をなくすための改革が進んでいたからだという。取引先に大手企業が多いこともあり、バージン諸島に親会社があることが「世の中の流れ的」に差し支えが出てきたのだという。
インド洋のタックスヘイブン・セーシェル島に会社を設立し、カンボジアで不動産ビジネスを手がける別の男性は、記者の電話取材にこう語る。「税金ゼロは大きいですね」
セーシェル島は、国外であるカンボジアで発生した所得への課税はゼロだ。さらに、各国は「CRS」という制度に基づき、互いに口座情報を交換しているが、男性の住むカンボジアは参加していない。
男性は「カンボジアはどの国とも情報交換をしておらず、日本に情報が渡らない」と説明。「タックスヘイブンとカンボジアの組み合わせが最強なんです」
匿名性の高さもセーシェルの魅力だという。「経営者の情報開示は裁判所の令状が必要なので、簡単には会社の内情を調べられない」のだという。
■パンドラ文書、孫正義氏や元官僚の名も 租税回避目的を否定
文書によると、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2009年、自身が代表を務める投資関連会社(東京)の子会社をタックスヘイブンの英領ケイマン諸島に設立。14年ごろ、子会社が小型ジェット機を購入し、米国の信託会社の所有とした上でリース契約を結んだと記されていた。
ソフトバンクは「孫個人の活動にかかわる法務、会計、税務などは複数の専門家により適切に処理されている」と回答。子会社について「日本法人の子会社であり、親会社の所得に合算されるため、租税回避にならない」とした。子会社で購入した理由については「資金調達やその他の手続きがケイマンのほうがやりやすいと判断した」と説明した。
業界に詳しい関係者によると、タックスヘイブンとされる国の多くが税制面だけでなく、航空機の登録や取引の環境が比較的整っているとされ、今回の文書ではビジネスジェットの関連とみられる文書が4千件以上あった。
内閣官房の東京五輪・パラリンピック推進本部の事務局長を務めた元通産官僚の平田竹男氏は、日本サッカー協会専務理事だった04年、英領バージン諸島に法人を設立。08年に清算していた。平田氏は02年、資源エネルギー庁石油・天然ガス課長を最後に退官しており、取材に「石油やサッカーで交渉する海外の相手がしばしば(タックスヘイブンの)資金の動きの話をしており、どんなものか知りたかった。お金を動かしたことは一回もない」と語った。
内閣府参与なども務めた投資会社経営の原丈人氏もバージン諸島にある法人を所有していた。原氏は「新事業の設立の際は関係国の制度諸条件を満たすためにケイマンなどに会社を作る必要があり、この一環だと思う」と説明した。法人は日本での投資活動が目的で、17年時点の資産は3100万ドル(三十数億円)と記されているが、原氏は「17年に3100万ドルの資金を伴う活動を日本でしていた事実はない」と否定。「適時・適切に必要な課税地に納税している」と話した。
(畑宗太郎、編集委員・奥山俊宏)
■<視点>パナマ文書後、各国で抜け穴対策
タックスヘイブンの実態が「パナマ文書」で報じられてから5年。今回の「パンドラ文書」で、タックスヘイブンとのつながりが判明した世界の政治家や高官は330人を超え、パナマ文書の倍以上だ。ただし、日本の政治家は見あたらない。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)がタックスヘイブンに関する取材プロジェクトを立ち上げたのは2011年。それからの10年、パナマ文書(16年)やパラダイス文書(17年)の報道によってタックスヘイブン利用への国際社会の批判が強まっている。
タックスヘイブンの利用そのものは違法ではない。だが、法律が想定していない特異なスキームで税負担の減少を図ったり、資金の流れを隠したりする目的で、タックスヘイブンが悪用されることもある。「多くは適法だが、適法であることこそが問題だ」とオバマ米大統領(当時)が述べた通り、大企業や富裕層が税負担を減らして恩恵を受ける一方、しわ寄せは市民が負う。不公平の象徴となっている。
このため、国際社会は法制度の不備を塞ぐ仕組みを設けた。法人の実質的支配者を透明化する制度や、非居住者の銀行口座情報を国同士で交換する制度などだ。7月には主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が、法人税の最低税率を世界的に15%以上とする方針で合意した。
タックスヘイブンの側も対策を迫られている。パナマ政府の代理人は9月16日、ICIJに手紙を寄せ、「5年前のパナマと今日のパナマは全く異なる」と強調した。代理人によると、昨年1年間でパナマ政府は76万の企業や財団のうち39万を登記から抹消した。「パナマに登記された会社が違法な目的や税逃れの目的に使われるリスクを減らし、透明性を確保する政府の決意を示している」
国際世論の圧力がないとタックスヘイブン対策は進まない。対策を決める立場の政治家たち自身が利用者であることが背景にあるのだろう。その点、これまでの文書が明らかにした限りでは、日本の政治家は比較的、タックスヘイブン利用を控えているようだ。
日本は国際社会で対策の仕組みづくりを主導すべきだ。(編集委員・奥山俊宏)
◆キーワード
<パンドラ文書> 英領バージン諸島やケイマン諸島などの租税回避地に法人や組合を設立するのを専門とする14の業者、法律事務所から流出したとみられる1190万件余、2.94テラバイトの電子ファイル群。匿名の人物から国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に何回かに分けて提供され、多くは1996年から2020年にかけ作成されていた。
ICIJの呼びかけに応じ、朝日新聞、共同通信(日本)、ワシントン・ポスト(米国)、ガーディアン、BBC(英国)、ルモンド(フランス)など、117カ国から600人のジャーナリストが分析と取材に参加。「パンドラ文書」と名付け、10月3日(日本時間4日午前1時半)に一斉に報道を始めることにした。
宿業 - 新纂浄土宗大辞典
jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/宿業
(ここをクリック)
【超訳・意訳】
「ゴータマ・シッダールタ(お釈迦さん)が気づきになられた悟りの内容(仏教)を、私たち生きとし生けるものが、どんな身分や存在や境遇であっても、絶対に、皆が悟ることができるように、 弥陀(阿弥陀如来/法蔵菩薩)が、不思議な形であっても、さまざまな機会や経路でもって、絶対に働きかけてくれているからといって、悪行を恐れないのは、「本願誇(ぼこ)り(※)」と言って、本願(※)の核心を、はき違えているから、決して往生(※2)することはできない」という解釈がある。
[しかし、じつは]この解釈も、まだ本願を信じきっていないものであり、善悪の宿業(※3)を、しっかりと理解していないものである。
じつは、善い心が起こるのも、そういう善い行動を、自分がとれるような無数の条件が揃っていればこそ、はじめて可能なのである。
どうしても悪事を起こしてしまうのも、じつは、さまざまな無数の条件の積み重なりによる悪業という形で、自分には、どうしても避けられないからなのだ。
生前に親鸞聖人は、こう仰っておられた「ウサギやヒツジの毛の先に付いている塵(ちり)みたいな小さな悪行ですら、これまでの無数の条件の積み重なりから無縁なものなどないのだ」と。
また別の機会に、「唯円房よ、私の言うことならば信じるか」と親鸞聖人が私に仰ったので、「ええ、信じます」と答えたら、「本当に、私の言ったとおりに、何でもするか」と重ねて訊かれたので、ええ、仰せのとおりに承ります、と答えたところ、
「それでは、1000人を殺せ、そうしたら、何ひとつ煩(わずら)い苦しむ事なく、ただ生かされている歓(よろこ)びだけを実感する境地である浄土に、達観できるのが、間違いないぞ」 と親鸞聖人が仰った。
しかし、「お言葉ですが、この私の器では、1000人どころか、ひと一人ですら、殺すことはできません」と申し上げたところ、
「これで判っただろう。
どんな事でも、自分の思ったとおりにできるのならば、往生(浄土の境地に達する事)のために、 ひとを1000人殺せ、と言われたならば、すぐにでも殺せたはずだ。
2021/10/05
きょうの新聞
※朝日の1面記事
衆院選、31日投票 解散17日後は最短、任期満了超え 岸田新内閣、派閥と刷新感重視
自民党の岸田文雄総裁は4日の臨時国会で第100代首相に選出され、自民、公明両党による連立内閣が発足した。閣僚人事では派閥や「老壮青」のバランスを意識し、13人を初入閣させた。首相は「新時代共創(きょうそう)内閣」と銘打ち、新型コロナウイルス対策を最優先課題として政権運営を進める考えを示した。
■14日解散、19日公示
岸田首相は同日夜の就任会見で、「国民から信任をいただいて、国政を担っていく必要がある」と述べ、臨時国会の会期末の14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票とすることを明らかにした。解散から投開票までの期間は17日間で戦後最短となり、衆院議員の任期満了(10月21日)を超えての衆院選は現行憲法のもとでは初めてとなる。臨時国会では8日に所信表明演説、11~13日に衆参両院での代表質問が行われる見通し。
首相は新型コロナ対策について「丁寧な説明、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とする」とし、「ワクチン接種、医療体制の確保、検査の拡充について、対応策の全体像を早急に示す」と述べた。
経済政策として「新しい資本主義の実現」をめざすと言及。「成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済をつくる」と述べ、「新しい資本主義実現会議」を設置し、ポストコロナの経済ビジョンをつくる方針を掲げた。
またイタリア・ローマで30、31の両日に予定されている主要20カ国・地域(G20)の首脳会合について、首相は「リモートによって参加することも可能」と述べ、対面での参加を見送る方向であることを示した。
今回の組閣では、首相を含めた21人の閣僚のうち、再任は茂木敏充外相、岸信夫防衛相の2人で、横滑りは文部科学相だった萩生田光一経済産業相のみだった。一方、後藤茂之厚生労働相や末松信介文部科学相ら13人が初入閣。女性閣僚は3人(菅内閣発足時は2人)、平均年齢は61・8歳(同60・4歳)となった。
首相は衆院選に向けた挙党態勢をつくるため、組閣では主要派閥のバランスに配慮した形だ。最大派閥の細田派(96人)は4人、麻生派(53人)は3人、竹下派(51人)は4人、二階派(47人)は2人、岸田派(46人)は3人が入閣。無派閥議員から3人が入閣した一方で、石破派(15人)と石原派(10人)からの起用はなかった。
■新しい資本主義担当相、新設
首相は総裁選で訴えた「経済安全保障の強化」を実行するため、経済安保担当相を新設し、衆院当選3回の小林鷹之元防衛政務官を起用。また首相は、「新しい資本主義担当相」を新設し、経済再生担当相との兼務で山際大志郎元経済産業副大臣を充てた。
「中堅・若手の登用」として、閣僚内で44歳と最年少で衆院当選3回の牧島かれん元内閣府政務官を、9月に設置したデジタル庁を率いるデジタル相に就けた。同じ衆院当選3回の議員では、堀内詔子氏をワクチン担当相に充てた。注目ポストへの若手登用で、刷新感をアピールする狙いがあるとみられる。
■岸田内閣(2021年10月4日発足)
◆総理
岸田文雄(きしだふみお) 64
《岸田派》 〈元〉党政調会長・外相・防衛相▽早大=衆(9)広島1区
◆総務=初
金子恭之(かねこやすし) 60
《岸田派》 〈元〉党政調会長代理・国交副大臣▽早大=衆(7)熊本4区
◆法務=初
古川禎久(ふるかわよしひさ) 56
《無派閥》 〈元〉財務副大臣・環境政務官▽東大=衆(6)宮崎3区
◆外務=再
茂木敏充(もてぎとしみつ) 65
《竹下派》 〈元〉経済再生相・経産相▽米ハーバード大院=衆(9)栃木5区
◆財務 金融
鈴木俊一(すずきしゅんいち) 68
《麻生派》 〈元〉党総務会長・五輪相・環境相▽早大=衆(9)岩手2区
◆文部科学=初
末松信介(すえまつしんすけ) 65
《細田派》 〈元〉党参院国対委員長・参院議運委員長▽関学大=参(3)兵庫
◆厚生労働=初
後藤茂之(ごとうしげゆき) 65
《無派閥》 〈元〉党政調会長代理・法務副大臣▽東大=衆(6)長野4区
◆農林水産=初
金子原二郎(かねこげんじろう) 77
《岸田派》 〈元〉参院予算委員長・長崎県知事▽慶大=参(2)長崎〈衆(5)〉
◆経済産業
萩生田光一(はぎうだこういち) 58
《細田派》 〈元〉文科相・党幹事長代行▽明大=衆(5)東京24区
◆国土交通
斉藤鉄夫(さいとうてつお) 69
《公明党》 〈元〉党幹事長・環境相▽東工大院=衆(9)比例中国
◆環境=初
山口壮(やまぐちつよし) 67
《二階派》 〈元〉党筆頭副幹事長・外務副大臣▽東大=衆(6)兵庫12区
◆防衛=再
岸信夫(きしのぶお) 62
《細田派》 〈元〉外務副大臣・防衛政務官▽慶大=衆(3)山口2区〈参(2)〉
◆官房 拉致問題
松野博一(まつのひろかず) 59
《細田派》 〈元〉党政調会長代理・文科相▽早大=衆(7)千葉3区
◆デジタル 行革=初
牧島かれん(まきしまかれん) 44
《麻生派》 〈元〉党青年局長▽国際基督教大院=衆(3)神奈川17区
◆復興 沖縄・北方=初
西銘恒三郎(にしめこうさぶろう) 67
《竹下派》 〈元〉経産副大臣・総務副大臣▽上智大=衆(5)沖縄4区
◆国家公安 防災=初
二之湯智(にのゆさとし) 77
《竹下派》 〈元〉党参院政審会長・総務副大臣▽慶大=参(3)京都
◆少子化 地方創生
野田聖子(のだせいこ) 61
《無派閥》 〈元〉党幹事長代行・総務相・郵政相▽上智大=衆(9)岐阜1区
◆経済再生 コロナ対策=初
山際大志郎(やまぎわだいしろう) 53
《麻生派》 〈元〉党政調会長代理・経産副大臣▽東大院=衆(5)神奈川18区
◆経済安全保障=初
小林鷹之(こばやしたかゆき) 46
《二階派》 〈元〉防衛政務官▽米ハーバード大院=衆(3)千葉2区
◆ワクチン 五輪=初
堀内詔子(ほりうちのりこ) 55
《岸田派》 〈元〉環境副大臣・内閣府副大臣▽学習院大院=衆(3)山梨2区
◆万博 消費者=初
若宮健嗣(わかみやけんじ) 60
《竹下派》 〈元〉外務副大臣・防衛副大臣▽慶大=衆(4)東京5区
※敬称略。「=再」は再任、「=初」は初入閣。名前の後の数字は年齢。《 》内は派閥、自民党以外の場合は政党。〈元〉の後は過去の略歴。=の後は当選回数と選挙区
■他の主な担当 鈴木氏=デフレ脱却▽末松氏=教育再生▽萩生田氏=産業競争力、ロシア経済分野協力、原子力経済被害▽斉藤氏=水循環政策▽山口氏=原子力防災▽松野氏=沖縄基地負担軽減▽牧島氏=規制改革▽西銘氏=福島原発事故再生総括▽二之湯氏=国土強靱(きょうじん)化、領土問題、国家公務員制度▽野田氏=男女共同参画、女性活躍、こども政策、孤独・孤立対策▽山際氏=新しい資本主義、全世代型社会保障改革、経済財政政策▽小林氏=科学技術政策▽若宮氏=共生社会
2021/10/05朝日新聞の主要総括
原彬久(ヨシヒサ) 新首相を分析する①~③ 東京国際大学名誉教授。
第1回 岸田首相はお公家集団のプリンス カギは苦労人・池田勇人の教え
岸田文雄政権の登場は、戦後日本政治の歴史的文脈の中で、どんな意味を持つのか。半世紀以上にわたって日本政治外交史と国際政治を研究し、与野党の政治家をはじめ、政策決定に関わった当事者へのインタビューを行ってきた政治学者の原彬久さんに聞きました。
はら・よしひさ 1939年生まれ。東京国際大学名誉教授。著書に「岸信介」「吉田茂」「戦後史のなかの日本社会党」「戦後日本を問いなおす」など。「戦後政治の証言者たち」で日本エッセイスト・クラブ賞受賞。訳書にモーゲンソー「国際政治」、カー「危機の二十年」など。
自民党総裁に選ばれた際、岸田文雄首相は「丁寧で寛容な政治を進める」と発言しました。同じ広島選出で、現在の自民党岸田派である「宏池会」の創設者・池田勇人が61年前に首相になった際の「寛容と忍耐」、これを意識しているのは間違いないでしょう。
この言葉は、いずれも池田の側近で後に首相になった2人の合作です。「忍耐」が大平正芳、「寛容」はJ・S・ミルの言葉から宮沢喜一が進言したものです。総裁選で岸田首相が掲げた政策にも、池田内閣の「所得倍増」や宮沢内閣の「生活大国」を髣髴(ほうふつ)とさせるものがあります。具体的な中身はこれからでしょうが、新自由主義からの転換や日本型の資本主義を目指すその根底には、宏池会の伝統が感じられます。
初代会長・池田勇人にあって岸田新首相にないもの
宏池会政権の誕生は、宮沢政権の発足以来30年ぶりのことです。この派閥には「抑制的に行動するお公家集団」といった評価が定着しています。このお公家集団のプリンスとされた岸田首相は、祖父も父も衆院議員を務めた世襲政治家で、恵まれた経歴を歩んできました。父親の秘書になって以降も、厳しい選挙や激しい政治闘争を勝ち抜いてきたとは思えません。
しかし、宏池会初代会長の池田は違いました。旧大蔵官僚出身でしたが大衆的で、しかも目的達成への迫力がありました。官僚時代に難病で4年も伏し、看病に疲れた妻の病死に遭うなどの苦労人です。自らの限界を意識し、足らざるを優れたブレーンで補おうとしたことでは、類を見ないしたたかな政治家でした。昨年の総裁選で敗れて無役になるという挫折を経験した岸田首相が、学ぶべきことは多いと思います。
岸田首相は、外相を戦後最長の4年7カ月間務めたことを強調していますが、世界を見渡すと、この在任期間は決して長いとはいえません。世界の指導者と関係を築き課題に取り組むことが国民の暮らしに直結する現代、首脳外交の重要さが飛躍的に増しているだけに、岸田外交はこれからが本番です。
一方、今回の岸田政権誕生は、世論よりも、自民党内の派閥の駆け引きによって決まるという派閥政治への先祖返りの結果でもありました。これは議会制民主主義の本来の姿ではありません。野党が弱体なため、自民党で繰り返されてきた「疑似政権交代」というゲームにまたまた身を任すことが今日改めて可能になったとも言えます。
戦後政治史を振り返ると、長期政権の後は短命政権が続いてきました。「人の意見を聞く」と繰り返す岸田首相ですが、派閥や党内の実力者たちの顔色だけをうかがっていては、長期政権はおぼつかないでしょう。池田のように時代と国民の思いをつかむことができるかがカギです。(聞き手・池田伸壹)
2021/10/06
沼上幹(ヌマガミ・ツヨシ) 新首相を分析する② 一橋大学教授(経営学)
第2回 岸田首相は決断型か丸投げか 1年後にわかる「人の話をよく聞く」力
「『俺に付いてこい』の政治はしない」という岸田文雄首相。「多様な声」や「寛容さ」も尊重するという新たな日本のリーダーは、私たちにとってどんな意味を持つのでしょうか。数多くの企業の経営を見てきた沼上幹一橋大学教授(経営学)に組織論の視点から話を聞きました。
ぬまがみ・つよし 1960年生まれ。一橋大学商学部教授(兼東京工業大学教授)
専門は経営組織論、経営戦略論。著書に「組織戦略の考え方」「経営戦略の
思考法」「日本の企業家13 小倉昌男」など多数。
――菅義偉前首相はこわもてでトップダウンのイメージが強かったのに対し、岸田首相はソフトでボトムアップの印象があります。どう見ますか。
「岸田さんは『私の特技は人の話をよく聞くこと』と言っていますが、その真意は何かを見極めることが重要だと思います」
「朝日地球会議」「朝日新聞『Think Gender』キャンペーン」関連イベント
衆院選を前に、同性婚や選択的夫婦別姓など「多様性と政治」について掘り下げる、無料のオンラインイベントを10月2日に開催します。詳細はこちらのURLから。
――といいますと?
「一概に人の話を聞くと言っても、周囲の意見や情報を広く集めた上、最後は自身の頭で考えてメリハリの利いた決断をするのか。それとも、みんなの意見を折衷したりバランスを取ったりして決めるのか……。企業では、後者は問題の多いタイプのリーダーです」
岸田新首相は付加価値を持つリーダーか
――どういう点が問題なのでしょうか。
「このタイプは多数決を取ったり、平均値を採用したりする議長型で、自分が下すべき判断を下に丸投げしていると見られかねません。意見多数の案や皆の意見の平均値をただ採用するというのなら、落としどころを探っているだけで、実はそのようなリーダーはよほど安泰な時代にしか価値をもちません」
――なるほど。
「部下や株主の多数意見や平均的な意見だからと物事を決めていく社長に、社長としての価値があるでしょうか。周りの意見に耳を傾けながらも、従業員や株主が思いも付かない長期的ビジョンにもとづく最終判断ができる社長が、付加価値の高い社長といえます」
――岸田首相は付加価値を持つリーダーでしょうか。
「岸田さんは政治家としてのキャリアが長いですが、総理総裁としては新人です。初めから完璧なリーダーを求めるより、経験を積む中で、先ほど述べた前者のタイプの首相なのか、それとも自民党総裁選直後の『融和』路線を継続していくのか、今後の『伸びしろ』を見ていくべきではないかと思います」
――自民党の新役員人事では、さっそく「論功行賞」などと言われていますが。
「企業でも、新社長就任時のトップ・マネジメント・チームは、前社長が決めたメンバーを引き継がざるを得ない部分が多く、自分のカラーはすぐには出しにくい。しかし、徐々に、自身の考えるトップ・マネジメント・チームへと変えていくことができます。リーダーの評価は、時間の経過を経ないとわからない面があります」
初めから社長なのではなく「社長になっていく」 ――確かに岸田首相は、総裁選出馬会見の際、二階俊博前幹事長に引導を渡す党改革を掲げ、キャラクターが変わった印象は与えました。
「私は以前、『宅急便』の生みの親で、霞が関の規制と戦ったヤマト運輸の故・小倉昌男氏について調べたことがあります。小倉さんはもともと優秀な方だったと思いますが、社長に就任してからも飛躍的に成長したリーダーでした。当時の運輸業界で存続の危機に直面し、『危ない会社』とまで言われた運送会社のトップとして、当初は自社をどうにか生き残らせることに集中して考えていたのですが、宅急便を創始してからは『日本のインフラになる』という大きなビジョンを打ち出し、業界のみならず日本社会全体まで俯瞰(ふかん)する偉大な経営者に成長していきました。社長は初めから社長なのではなく、『社長になっていく』のです」
「岸田さんが『周囲の意見や情報を広く集めた上、最後は自身の頭で考えてメリハリをつけて決断する』というタイプのリーダーなら、難しい状況を乗り越えながら、時と共に必ず成長していくことと思います。一国の宰相も、なりたての時と1年後ではかなり違ってくる、という視点を持つべきではないでしょうか。もし厳しい目を向けるなら、一定期間後に『成長していないぞ』と指摘するのが正しいと思います。また、その時に『私の特技は人の話をよく聞くこと』という言葉の意味が明らかになるのではないでしょうか」
――組織のトップは大抵多忙です。人の話を聞く時間的余裕はあるのでしょうか。
「人間の認知能力から言っても、おのずと限界があります。組織論ではスパン・オブ・コントロール(管理の幅。統制可能な範囲のこと)といい、リーダーが直接管理できる部下の人数は、業務内容にもよりますが、せいぜい4~8人、能力が高いリーダーでも10~12人と言われます。これが政治の世界にも当てはまるかはわかりませんが、閣僚だけでも20人、閣僚以外にも自分の手足となる官僚が多数いる。ですからリーダーにとって大切なのは、時間をかけて意見を聞く部下と、そうではない部下と、メリハリを付けることです。仮に周囲のコアメンバーが8人とすると、その8人も、信用できる重要な情報を取ってくるネットワークを持っているかもポイントです。ただ『人の話を聞く』のでなく、『誰』から『どのように』聞くかが重要なのです」
マイナス情報にも耳を傾けることができるか
――組織のトップが、自分の周囲の「誰」から、「どのように」聞くかを誤ると、その組織はどうなってしまうのでしょう?
「おそらく、情報の探索の範囲がきわめて狭くなります。その結果、コンファメーション(確証)バイアスという現象が起こり得ます」
――コンファメーション・バイアスですか。
「このバイアスは『自分の見方は正しかった』と思えるような情報ばかりを集めてしまう傾向のことです。まずい組織のリーダーとその取り巻きは、そうした情報ばかりを集めようとします。一方、本当に正しい判断ができる経営陣は、『自分の判断は正しいはずだ』という信念も持ち続けつつ、同時に『自分の判断は間違っているかもしれない』という疑念を殺さずに抱き続けるアンビバレントな姿勢を維持します。これは一見矛盾した態度ですが、これこそトップが持つべきウィズダム(賢慮)です。リーダーがこのウィズダムを持ち続けられるかどうかは、どんな取り巻きに支えられているかにも左右されるでしょう」
――リーダーとその取り巻きの関係も、微妙で難しそうです。
「たとえば、組織内で下から上がる情報のうち、耳の痛い情報はなかなか上げにくい。組織にとってまずい情報、たとえば自社製品の売り上げが落ちているといった情報を社長に上げると、その情報を上げた人に責任はないのに、社長が怒ったり顔を曇らせたりする。自分の運命を左右する人事権を持つ上司にそんな反応をされると、部下は背筋が凍るような思いでしょう。しかしネガティブ情報ほど早く上げないと、その組織のダメージは広がる一方です。マイナス情報にも耳を傾けることができるリーダー、そんな情報も率直に上げる取り巻きを持つことも、組織にとっては重要です」
「優れたリーダーは、実は自分の取り巻き以外にも、現場の実態を正確につかむ別の情報ルートを持っています。先に触れたヤマト運輸の小倉さんの場合、そのルートは自社の労働組合でした。組合が小倉さんに対し、『社長は現場のことを知らないだろう!』と突き上げても、そうした中で労組から伝えられる情報は『ありがたかった』と、小倉さんは述懐しています。これもリーダーの『聞く力』と言えます」
――その他に「聞き上手」とされる岸田首相が留意すべきことはありますか。
「極端なことを言えば、一国の首相が日本の有権者全員の話を聞くわけにはいきません。もし一般国民が自分の声を岸田さんに届けようとすれば、それは何より、組織化された団体の声になるでしょう」
――例えば、選挙で集票力のある業界団体などですね。
「それは、極めてシャープな利害を共有し、有権者全体に占める比率から見ればごく限られた少数の集団でしょう。そういう人たちの意見だけを聞いていたら、日本の政治・行政は歪(ゆが)んでしまいます。本当に国民を代表する声、日本の現状と将来を正確に見据えた声にいかに耳を傾けられるかが問われています」
「現在の日本の1人あたりGDP(国内総生産)を見ても、この国は本当に貧しい国になりつつあります。これだけ日本の経済成長が鈍化している時、『バランスを取る』といって各方面に予算配分していたら、それは単なるバラマキです。そうではなく、たとえば新たな成長産業を作り出す。そのためには、かなり強力なパワーで、集中的にある特定部門に投資する必要があります。仮に『人の話を聞く』としても、最後には選択と集中の決断を下し、わかりやすいビジョンで国民に伝えることが日本のリーダーには求められていると思います」(聞き手・稲垣直人)
2021/10/07
牛窪恵(ウシクボ・メグミ) 新首相を分析する③ 評論家
第3回 岸田首相はロールキャベツ男子? 肉を見せて「ラスボス」と闘うには
第100代内閣総理大臣になった岸田文雄さんは、アクの強さを感じさせず、歴代首相の中では「普通の人」に見えます。かつて「草食系男子」という言葉を世に広めた世代・トレンド評論家の牛窪恵さんに、岸田文雄という人物をどう見ているか、話を聞きました。
うしくぼ・めぐみ 1968年生まれ。立教大学大学院客員教授。
出版社勤務を経て、2001年にマーケティングなどを行うインフィニティ
を設立し代表取締役。著書に「草食系男子『お嬢マン』が日本を変える」
「若者たちのニューノーマル」など。
――岸田新首相は期待できそうですか。
「印象は比較的良いし、期待もそれなりには持てます。少し前にはやった『ロールキャベツ男子』かもしれないと思わせます」
――それはなんですか。
「見た目は草食系のキャベツだけれど、中には核となる肉が入っている。外見と中身にギャップがある男子のことです。岸田さんは見た目がソフトです。眼鏡のフレームもごく普通。太かったり、色が特殊だったり、形が個性的だったりするフレームを最近多く見かけますが、岸田さんのは主張しすぎないメタルのようで、まじめなビジネスパーソン風です」
「でも、自民党総裁選では真っ先に立候補を表明し、当時の二階俊博幹事長に反発されても党役員の任期制限を打ち出しました。中間層への所得配分を重視するなど、これまでの政権とは違う政策も掲げています。芯が通っている印象を受けました。去年の総裁選に負けて『岸田は終わった』と言われたのに、変わったなと思いました」
「バナナはおやつですか」の質問の答えに出た「地」
――「思いました」というのは、過去形ということですか。
「総裁選が始まったら、森友学園問題をめぐる発言がトーンダウンしたり、安倍晋三さんや麻生太郎さんに忖度(そんたく)したりと、派閥に気を使っているようにも見えます。ひょっとするとキャベツを巻きっぱなしで、肉は見えないままかもしれません」
――政策に通じて手堅いイメージがありませんか。
「岸田さんの著作を読みましたが、金融機関の出身のせいか、確かに経済政策に強い印象です。ユーチューブの番組では、視聴者の『バナナはおやつか』という質問に、岸田さんは『おやつに含まれません』ときまじめに答えていました。あのまじめさは『地』だと思います。まじめでマイルドで、ノンアルではないけど『微アルコール』という感じですね」
――「特技は、人の話をよく聞くこと」と岸田さんは自らを評しています。
「そういうリーダー像は、コロナで不安な世の中には求められていると思います。若い人に取材すると、堅実さや、岸田さんがいう『協調』の精神を感じます。先が見えないせいか、支え合って生きていこうという思いが強い。起業を志す人も、かつてのように『ヒルズ族』を目指すのではなく、仲間を集めて社会貢献を重視します。人の話を聞く傾聴力が政治でも歓迎されます」
「いまの若い人は、話を聞いてくれる上司を欲しています。理想の上司を挙げてもらうと、大リーグのイチロー選手などにまじって、ジャーナリストの池上彰さんや、俳優の大泉洋さんなども入ります。孤高のイチロー選手に比べ、池上さんなら『いい質問ですね』とか、大泉さんなら『それおもしろい!』とか、小さな声も拾ってくれそうな印象があります」
「岸田さんも、記者とのやりとりを見る限り、丁寧に受け答えしています。でも、どこまで本気で国民の現状を知りたいのかな、とも感じました」
――どういうことですか。
「経済対策で『多くの国民に協力してもらえる雰囲気をつくっていきたい』と話していましたが、いまは『雰囲気をつくる』とかいう甘い状況ではありません。明日の生活に困る人、奨学金を返せない人、350円の生理用品が買えない人……。政治家としてすぐに行動を起こさなければいけないのに、そうした人の思いを肌感覚でわかろうとしているのでしょうか」
「スマートでビジネスライクで、派閥の有力者に気を使っているように見えるせいか、そう感じてしまいます。言葉尻を捉えるわけではないですが、挫折の経験として、東大に3回落ちたことを挙げていたのも、一般的な感覚と微妙にずれていますよね」
「その人がどんな人なのかは、友人を見ればわかる」
――そんな岸田さんが長期政権を目指すとすれば、何が必要ですか。
「どんな仲間や協力者をつくるかにかかっていると思います。自分が不得手な点を指摘し、補ってくれる仲間です。安倍元首相はよくも悪くも『チーム安倍』に支えられた。岸田さんは『いい人』に見えるけれど、誰が周りにいるのか見えません。その人がどんな人なのかは、友人を見ればわかります。ロールキャベツ自体は基本的に味を感じませんが、あわせるスープによって印象は千差万別です」
――ロールキャベツの核の肉が見えるときは来るのでしょうか。
「ひょっとしたら、いまは派閥や党内力学に従っているように見えても、じっと機をうかがっているのかもしれません。でも、バランス感覚だけでなく、いつかは突破力が求められます。党内の『ラスボス』に対抗するには、根回しや泣かせのテクニックといったアイテムをそろえなければならないし、それには仲間の力が不可欠です。岸田さんがキャベツを脱ぎ捨てて、真ん中のお肉の存在を示すときがくるのか、注目しています」(聞き手・岸善樹)