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続折々の記 ⑧
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【 07 】10/08
新しい資本主義とは何か
岸田首相が所信表明 新しい資本主義を 全閣僚、車座対話へ
岸田政権、試される実行力 「国民との対話」強調 初の所信表明演説
岸田首相の所信表明演説(全文)
<1>はじめに
<2>第一の政策 新型コロナ対応
<3>第二の政策 新しい資本主義の実現
<4>第三の政策 国民を守り抜く、外交・安全保障
<5>新しい経済対策
<6>おわりに
2021/10/09
新しい資本主義という言葉は何を意味しているのか? 今までの資本主義のおかしい点を明示して言葉の意味を明確に規定しなければ、国民が新しい資本主義という言葉を理解できない。
第100代の日本の総理大臣が、「新しい資本主義」を所信表明で標榜した。
▼1面=所信表明
岸田首相が所信表明 新しい資本主義を 全閣僚、車座対話へ
岸田文雄首相は8日、衆参両院の本会議で就任後初めてとなる所信表明演説を行い、「成長と分配の好循環」を柱とする「新しい資本主義」の実現を打ち出した。新型コロナウイルス対応では、司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正を進める考えを示した。
▼3面=実行力焦点、5面=演説全文
賃上げを行う企業への税制支援のほか、看護や介護、保育などの現場で働く人の収入増に向け、公的価格のあり方を抜本的に見直すとした。経済安全保障を推進するための法案をつくることも表明した。
コロナ対応では、ワクチンの3回目接種の準備を進め、ワクチン接種証明の積極活用、予約不要の無料検査の拡大などを挙げた。
外交・安全保障では、国家安全保障戦略や防衛大綱を改定して「ミサイル防衛能力など防衛力の強化、経済安全保障など新しい時代の課題に果敢に取り組む」とした。被爆地・広島選出の首相として、「私が目指すのは核兵器のない世界」とも訴えた。
一方、「信頼と共感を得られる政治が必要」とし、全閣僚が様々な人と「車座対話」を行う意向を表明。「みんなで前に進んでいくためのワンチームを創りあげる」と力を込めた。
各党による代表質問は、11~13日に行われる。
首相は8日の閣議で、新たな経済対策の策定を指示。次期衆院選後に「速やかに経済対策を決定して補正予算を提出する」とした。(小野太郎)
▼3面=実行力焦点
岸田政権、試される実行力 「国民との対話」強調 初の所信表明演説
【写真・図版】問われる岸田首相の「聞く力」と「丁寧な説明」
岸田文雄首相が国会で初めての所信表明演説に立った。「信頼と共感を得られる政治」を実現するとし、国民との対話を重視する姿勢を強調した。問われるのは、その実行だ。中間層を拡大することをめざす「新しい資本主義」をどう打ち立てるのか。前政権までの「負の遺産」への向き合い方も注目される。▼1面参照
「国民との丁寧な対話を大切にしていく」
演説の初めに首相が力を込めたのが、「国民の信頼と共感」を得るための対話だ。自民党総裁選前から、自身の長所として「聞く力」をアピールしてきた。菅政権の新型コロナウイルス対応をめぐって、「丁寧に説明する部分に課題があった」とも指摘した。
演説では、こうした「聞く力」について「全閣僚が様々な方と車座対話を積み重ね、国民のニーズに合った行政を進めているか徹底的に点検するよう指示していく」と述べた。
「車座対話」として想定するのは、2009年の衆院選で野党に転落した際、当時の谷垣禎一総裁が取り組んだ「ふるさと対話集会」だ。「政権を失ったのはおごりがあったからだ」(当時の党幹部)との反省に立ち、党幹部らが全国各地を訪れてひざ詰めでの対話を重ねた。岸田政権の幹部は「谷垣さんはマイクもいらない小集会で国民の声を聞いた。首相もその姿勢をイメージしている」と語る。
首相が問われるのは、安倍、菅両政権からの政策の修正なども進めていくうえで、様々な対話をどう政治に具現化させるかだ。
首相は演説で、「めざすのは新しい資本主義の実現だ」と述べた。新自由主義的な政策について「富めるものと富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と指摘。中間層の拡大をめざす考えを強調した。
一方、その前提には、安倍政権が掲げた「アベノミクスの3本の矢」である金融政策、財政政策、成長戦略の推進があることも押さえた。「成長と分配の好循環」を掲げた首相だが、新内閣の布陣に市場関係者からは「改革への期待感は後退」との見方も出る。
被爆地・広島が地元の首相は、核兵器廃絶に向けても「私がめざすのは『核兵器のない世界』だ」と述べた。注目されるのは、今年1月に発効した核兵器禁止条約への向き合い方だ。
米国の「核の傘」に依存する日本は参加していない。首相は外相時代、条約の交渉会議に「積極的に参加し、主張していきたい」と意欲を示したが、政府内で調整をつけられずに断念した経緯がある。広島、長崎の被爆地から早期批准を求める声も上がるなかで、首相はどう振る舞うのか。
前政権までの「負の遺産」に正面から向き合うのかどうかも、試金石だ。
安倍政権下で起きた森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんでは、改ざんに関与させられ自死した近畿財務局職員の妻が6日、再調査を求める手紙を首相に郵送した。首相は8日、記者団に手紙を読んだと説明。「いま民事訴訟のプロセスの中にある。財務省に丁寧に対応するということについて、しっかりと指示を出した」などと繰り返し、再調査するかどうかには答えなかった。
また、19年参院選の広島選挙区で自民党本部が提供した1億5千万円をめぐる問題では、甘利明幹事長が再調査を否定した。だが、広島県連幹部は5日に首相官邸を訪れ、「広島県民、国民は納得していない」と首相に改めて説明を求めている。(菊地直己)
■野党「アベノミクスの三番煎じ」
岸田首相の所信表明に対し、野党からは「美辞麗句を並べるだけで、具体的な中身がなかった」という批判の声が上がった。31日に投開票される衆院選を控え、事実上の選挙演説とみられており、野党側は、首相の目玉政策「新しい資本主義」に照準を合わせる。
「『新しい資本主義』という言葉がどんな中身だろうと楽しみにしていた。残念ながら、中身はスカスカだと言わざるを得ない」。立憲民主党の枝野幸男代表は8日午後、記者団にこう語った。11日の代表質問で具体策を問いただす方針だ。
首相は、新しい資本主義を進める前提として、「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努める」と演説で語った。この点について、共産党の志位和夫委員長は「安倍晋三元首相の『3本の矢』と同じ。『新しい資本主義』というキーワードが出たが、中身はアベノミクスの三番煎じだ」と指摘した。同党幹部は「菅政権が二番煎じ、岸田政権が三番煎じだ。出がらしで味もしない」と語った。
国民民主党の玉木雄一郎代表も「書いてあることよりも、書いていないことが非常に気になる演説だった。コロナ対策の規模も時期も給付金も、具体的な給付対象や金額が一切出てきていない。誰をいつまで助けるのかが全く不明だ」と指摘した。
首相は演説の最後に、「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」ということわざを2度も繰り返した。社民党の福島瑞穂党首はこう疑問を呈した。「みんなで一緒にどこに連れて行こうとしているのか。未来がわからない」(吉川真布)
▼5面=演説全文
岸田首相の所信表明演説(全文)
■<1>はじめに
第205回国会の開会にあたり、新型コロナウイルスにより亡くなられた方々、そして、ご家族の皆様方に心よりお悔やみを申し上げるとともに、厳しい闘病生活を送っておられる方々に心よりお見舞いを申し上げます。
また、我が国の医療、保健、介護の現場を支えて下さっている多くの方々、感染対策に協力して下さっている事業者の方々、そして、国民の皆さんに、深く感謝申し上げます。
新型コロナとの闘いは続いています。
こうした中、このたび、私は、第100代内閣総理大臣を拝命いたしました。
私は、この国難を、国民の皆さんと共に乗り越え、新しい時代を切り拓(ひら)き、心豊かな日本を次の世代に引き継ぐために、全身全霊を捧げる覚悟です。
私が、書きためてきたノートには、国民の切実な声があふれています。
一人暮らしで、もしコロナになったらと思うと不安で仕方ない。
テレワークでお客が激減し、経営するクリーニング屋の事業継続が厳しい。
里帰りができず、1人で出産。誰とも会うことが出来ず、孤独で、不安。
今、求められているのは、こうした切実な声を踏まえて、政策を断行していくことです。
まず、喫緊かつ最優先の課題である新型コロナ対応に万全を期します。国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とします。
また、新型コロナで大きな影響を受ける方々を支援するため、速やかに経済対策を策定します。
その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。我が国の未来を切り拓くための新しい経済社会のビジョンを示していきます。
国民の皆さんと共に、これらの難しい課題に挑戦していくためには、国民の声を真摯(しんし)に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要です。
そのために、国民の皆さんとの丁寧な対話を大切にしていきます。
私をはじめ、全閣僚が、様々な方と車座対話を積み重ね、その上で、国民のニーズに合った行政を進めているか、徹底的に点検するよう指示していきます。
そうして得た信頼と共感の上に、私は、多様性が尊重される社会を目指します。若者も、高齢者も、障害のある方も、ない方も、男性も、女性も、全ての人が生きがいを感じられる社会です。
経済的環境や世代、生まれた環境によって生じる格差やそれがもたらす分断。これが危機によって大きくなっているとの指摘があります。同時に、我々は、家族や仲間との絆の大切さに改めて気付きました。
東日本大震災の時に発揮された日本社会の絆の強さ。世界から称賛されました。危機に直面した今こそ、この絆の力を発揮するときです。
全ての人が生きがいを感じられる、新しい社会を創っていこうではありませんか。
日本の絆の力を呼び起こす。それが私の使命です。
■<2>第一の政策 新型コロナ対応
まず、新型コロナ対応です。
足下では、感染者数は落ち着きを見せ、緊急事態宣言は全面的に解除されました。
菅前総理の大号令の下、他国に類を見ない速度でワクチン接種が進み、この闘いに勝つための大きな一歩を踏み出せました。前総理のご尽力に、心より敬意を表します。
しかし、楽観視はできません。危機対応の要諦(ようてい)は、常に最悪の事態を想定することです。感染が落ち着いている今こそ、様々な事態を想定し、徹底的に安心確保に取り組みます。与えられた権限を最大限活用し、病床と医療人材の確保、在宅療養者に対する対策を徹底します。
希望する全ての方への2回のワクチン接種を進め、さらに、3回目のワクチン接種も行えるよう、しっかりと準備をしていきます。経口治療薬の、年内実用化を目指します。あわせて、電子的なワクチン接種証明の積極的活用、予約不要の無料検査の拡大に取り組みます。
これらの安心確保の取り組みの全体像を、早急に国民にお示しするよう関係大臣に指示しました。国民の皆さんが先を見通せるよう、丁寧に説明してまいります。
同時に、これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったのかを検証します。そして、司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正、国産ワクチンや治療薬の開発など、危機管理を抜本的に強化します。
国民の協力を得られるよう経済支援を行うことも大切です。大きな影響を受ける事業者に対し、地域、業種を限定しない形で、事業規模に応じた給付金を支給します。新型コロナの影響により苦しんでおられる、非正規、子育て世帯などお困りの方々を守るための給付金などの支援も実行していきます。
■<3>第二の政策 新しい資本主義の実現
次に、私の経済政策について申し上げます。
マクロ経済運営については、最大の目標であるデフレからの脱却を成し遂げます。そして、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進に努めます。
危機に対する必要な財政支出は躊躇(ちゅうちょ)なく行い、万全を期します。経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。
経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組みます。
その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。
新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています。世界では、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうした、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始まっています。
今こそ、我が国も、新しい資本主義を起動し、実現していこうではありませんか。
「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」。これがコンセプトです。
成長を目指すことは、極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。しかし、「分配なくして次の成長なし」。このことも、私は、強く訴えます。
成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現します。大切なのは、「成長と分配の好循環」です。「成長か、分配か」という、不毛な議論から脱却し、「成長も、分配も」実現するために、あらゆる政策を総動員します。
新型コロナで、我が国の経済社会は、大きく傷つきました。
一方で、これまで進んで来なかったデジタル化が急速に進むなど、社会が変わっていく確かな予感が生まれています。今こそ、科学技術の恩恵を取り込み、コロナとの共生を前提とした、新しい社会を創り上げていくときです。
この変革は、地方から起こります。
地方は、高齢化や過疎化などの社会課題に直面し、新たな技術を活用するニーズがあります。例えば、自動走行による介護先への送迎サービスや、配達の自動化、リモート技術を活用した働き方、農業や観光産業でのデジタル技術の活用です。
ピンチをチャンスに変え、我々が子供の頃夢見た、わくわくする未来社会を創ろうではありませんか。
そのために、「新しい資本主義実現会議」を創設し、ビジョンの具体化を進めます。
新しい資本主義を実現していく車の両輪は、成長戦略と分配戦略です。
まず、成長戦略の第一の柱は、科学技術立国の実現です。
学部や修士・博士課程の再編、拡充など科学技術分野の人材育成を促進します。世界最高水準の研究大学を形成するため、十兆円規模の大学ファンドを年度内に設置します。デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙など先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行います。民間企業が行う未来への投資を全力で応援する税制を実現していきます。
また、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援を通じて、新たなビジネス、産業の創出を進めます。
そして、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温暖化対策を成長につなげる、クリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進いたします。
第二の柱は、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」です。
地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていきます。そのために、5Gや半導体、データセンターなど、デジタルインフラの整備を進めます。誰一人取り残さず、全ての方がデジタル化のメリットを享受できるように取り組みます。
第三の柱は、経済安全保障です。
新たに設けた担当大臣の下、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現します。強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築し、我が国の経済安全保障を推進するための法案を策定します。
第四の柱は、人生100年時代の不安解消です。将来への不安が、消費の抑制を生み、経済成長の阻害要因となっています。
兼業、副業、あるいは、学びなおし、フリーランスといった多様で柔軟な働き方が拡大しています。大切なのは、どんな働き方をしても、セーフティーネットが確保されることです。働き方に中立的な社会保障や税制を整備し、「勤労者皆保険」の実現に向けて取り組みます。
人生100年時代を見据えて、子供から子育て世代、お年寄りまで、全ての方が安心できる、全世代型社会保障の構築を進めます。
次に、分配戦略です。
第一の柱は、働く人への分配機能の強化です。
企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵を受けられる「三方良し」の経営を行うことが重要です。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備を進めます。
政府として、下請け取引に対する監督体制を強化し、大企業と中小企業の共存共栄を目指します。
また、労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化します。
第二の柱は、中間層の拡大、そして少子化対策です。
中間層の拡大に向け、成長の恩恵を受けられていない方々に対して、国による分配機能を強化します。
大学卒業後の所得に応じて「出世払い」を行う仕組みを含め、教育費や住居費への支援を強化し、子育て世代を支えていきます。
保育の受け皿整備、幼保小連携の強化、学童保育制度の拡充や利用環境の整備など、子育て支援を促進します。こども目線での行政の在り方を検討し、実現していきます。
第三の柱は、看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくことです。
新型コロナ、そして、少子高齢化への対応の最前線にいる皆さんの収入を増やしていきます。そのために、公的価格評価検討委員会を設置し、公的価格の在り方を抜本的に見直します。
第四の柱は、公的分配を担う、財政の単年度主義の弊害是正です。科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備などの国家課題に計画的に取り組みます。
これらに加え、地方活性化に向けた基盤づくりにも積極的に投資します。
東日本大震災からの復興なくして日本の再生なし。この強い思いの下で、被災者支援、産業・生業(なりわい)の再建、福島の復興・再生に全力で取り組みます。
農林水産業の高付加価値化と輸出力強化を進めるとともに、家族農業や中山間地農業の持つ多面的な機能を維持していきます。新型コロナによる米価の大幅な下落は、深刻な課題です。当面の需給の安定に向けた支援など、十分な対策を行います。
老朽化対策を含め、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の強化とともに、高速道路、新幹線など、交通、物流インフラの整備を推進します。
いのち輝く未来社会のデザイン。これが、2025年大阪・関西万博のテーマです。地域から、IoTや人工知能などのデジタル技術を活用した未来の日本の姿を示します。
観光立国復活に向けた観光業支援、文化立国に向けた地域の文化、芸術への支援強化にも取り組みます。
■<4>第三の政策 国民を守り抜く、外交・安全保障
私の内閣の三つ目の重点政策は、「国民を守り抜く、外交、安全保障」です。
私は、外交、安全保障の要諦は、「信頼」だと確信しています。
先人たちの努力により、世界から得た「信頼」を基礎に、三つの強い「覚悟」をもって毅然(きぜん)とした外交を進めます。
第一に、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟です。
米国をはじめ、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国・同志国と連携し、日米豪印も活用しながら、「自由で開かれたインド太平洋」を力強く推進します。
深刻化する国際社会の人権問題にも、省庁横断的に取り組みます。
第二に、我が国の平和と安定を守り抜く覚悟です。
我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を断固として守り抜きます(?)。
そのために、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定に取り組みます。この中で、海上保安能力や更なる効果的措置を含むミサイル防衛能力など防衛力の強化、経済安全保障など新しい時代の課題に、果敢に取り組んでいきます(?)。
こうした我が国の外交・安全保障政策の基軸は、日米同盟です(?)。私が先頭に立って、インド太平洋地域、そして、世界の平和と繁栄の礎である日米同盟を更なる高みへと引き上げていきます。
日米同盟の抑止力を維持しつつ、丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます。
北朝鮮による核、ミサイル開発は断じて容認できません。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。
拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。
第三に、地球規模の課題に向き合い、人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟です。
核軍縮・不拡散、気候変動などの課題解決に向け、我が国の存在感を高めていきます。
被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、「核兵器のない世界」です。私が立ち上げた賢人会議も活用し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします。
これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明(たいまつ)を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くします。
世界で保護主義が強まる中、我が国は自由貿易の旗手を務めます。デジタル時代の信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」を実現するため、国際的なルールづくりに積極的な役割を果たしていきます。
中国とは、安定的な関係を築いていくことが、両国、そして、地域及び国際社会のために重要です。普遍的価値を共有する国々とも連携しながら、中国に対して主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めると同時に、対話を続け、共通の諸課題について協力していきます。
ロシアとは、領土問題の解決なくして、平和条約の締結はありません。首脳間の信頼関係を構築しながら、平和条約締結を含む日ロ関係全体の発展を目指します。
韓国は重要な隣国です。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。
■<5>新しい経済対策
「新型コロナ対応」、「新しい資本主義」、「外交・安全保障」。
これら三つの政策を着実に実行することで、国民の皆さんと共に、新しい時代を切り拓いていきます。
本日朝の閣議で、新型コロナ対応に万全を期すとともに、新しい資本主義を起動させるため、新たな経済対策を策定するよう指示しました。
総合的かつ大胆な経済対策を速やかにとりまとめます。
■<6>おわりに
憲法改正についてです。
憲法改正の手続きを定めた国民投票法が改正されました。今後、憲法審査会において、各政党が考え方を示した上で、与野党の枠を超え、建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待します。
最後になりますが、このようなことわざがあります。
「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」
新型コロナという目に見えない敵に対し、我々は、国民全員の団結力によって一歩一歩前進してきました。
改めて、この日本という国が、先祖代々、営々と受け継いできた、人と人のつながりが生み出す、やさしさ、ぬくもりがもたらす社会の底力を強く感じます。まさに、「この国のかたち」の原点です。
この「国のかたち」を次の世代に引き継いでいくためにも、私たちは、経済的格差、地域的格差などがもたらす分断を乗り越え、コロナとの闘いの先に、新しい時代を切り拓いていかなければなりません。そのために、みんなで前に進んでいくためのワンチームを創りあげます。
「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」
一人であれば、目的地に早く着くことができるかもしれません。しかし、仲間とならもっと遠く、はるか遠くまで行くことができます。私は、日本人の底力を信じています。
新型コロナの中にあってもなお、デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙、新しい時代の種が芽吹き始めています。
この萌芽(ほうが)を大きな木に育て、経済を成長させ、その果実を国民全員で享受していく、明るい未来を築こうではありませんか。
明けない夜はありません。国民の皆さんと共に手を取り合い、明日への一歩を踏み出します。
同僚議員各位、そして、何よりも国民の皆さんのご協力を心からお願い申し上げ、所信表明とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。