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続折々の記 2022 ④
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【 01 】05/06
    侵攻「私たち全員の過ち」   ウクライナ国連大使インタビュー
       動けぬ安保理、国連の危機「拒否権は時代錯誤」事務総長「失敗」
    製鉄所で戦闘、退避中断 市内・近郊「344人救出」マリウポリ   
    米、0.5%大幅利上げインフレ抑制へ、資産縮小も   
       家賃1.7倍「もうNYを出る」米、40年ぶり高インフレ抑制へ利上げ
       0.75%は積極検討せず 利上げ「安全運転」米FRB議長
    大祖国戦争   天声人語
    田中宇の国際ニュース解説  2022年5月5日

 2022/05/06 
侵攻「私たち全員の過ち」   ウクライナ国連大使インタビュー
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S15286476.html?ref=pcviewer

【画像】ウクライナのキスリツァ国連大使=4日、米ニューヨーク
 ウクライナのセルギー・キスリツァ国連大使(52)が、用意していたその原稿を読むことはなかった。

 「ロシア軍が、きょうはウクライナに侵攻しないと記録に残したい」

 米東部時間2月23日夜、ウクライナ危機をめぐる国連安全保障理事会の緊急会合で、ロシア大使にそう確認するつもりだった。

 だが、それは無駄になった。会合中、キスリツァ氏の演説前にロシアのプーチン大統領が「特別軍事作戦」を宣言し、ウクライナ全土で攻撃が始まった。

 ■すべてに常に、目つぶってきた

 「時間の問題だった」

 外交官として30年、ロシア絡みの問題に対応し続けたキスリツァ氏にとって、侵攻は驚きではなかった。

 「私たちはすべてに、常に、目をつぶってきた。モルドバの領土が占領されても、ジョージアが侵略されても、シリアが爆撃されても、北朝鮮を支援しても」

 だから、いまウクライナで起きていることを「私たち全員の過ちの集積」「国際社会の無責任な自己満足の結果」という。

 ■完璧ではない、それでも国連は

 1月末以降、キスリツァ氏は安保理で15回、総会で3回演説し、国際社会に助けを求めてきた。2月21日、侵攻直前には安保理で不満をこぼした。「国連は病んでいる。クレムリンによって拡散されたウイルスにやられてしまった」

 3月2日、ロシアを非難する決議が141カ国の賛成で採択された後は、報道陣に「国連はまだ生きている」と言った。

 ただ、侵攻から2カ月以上たっても戦争は終わらない。国連は無力なのか。

 キスリツァ氏は「国連は完璧ではない」と言う。それでも、各地域の代表が出席し、世界中にその会合の様子が流れる安保理に代わるプラットフォームはないと、そう言い切る。グテーレス事務総長のロシア訪問についても、ウクライナ南東部マリウポリの一部市民の退避につなげたとして「限定的であるが、それでも成功だ」と評価する。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、グテーレス氏に連絡を取り、マリウポリの製鉄所に残る市民のさらなる救出を頼んだ。「国連全体が失敗したというのは言い過ぎだ。国連がなくなれば、悪の目的に資することになる」とキスリツァ氏も指摘する。

 国連に今後、求めることとしては、責任の追及をあげる。「ロシアが軍事的に敗北することに関しては、疑いを持っていない。ただ、ロシアの敗北は、終わりを意味しない。責任を取らせなければ、ロシアは5年、10年かけて、また攻撃しようと考えるだろう」

 ■日本への期待、返ってきた答え

 「ロシアによる国際秩序の破壊を許せば、日本の周辺が次の戦場になる可能性もある」。そう警鐘を鳴らすキスリツァ氏に日本政府への期待を尋ねた。

 「私の答えは、あなたへの質問だ。日本国民は日本政府に何を期待するのか」

 いま、国際社会はウクライナを助けている。同じように、有事の際に日本が国際社会から助けてもらうために、どのようなウクライナ支援ができるのか、あなたが考えてほしい――。そんな答えがかえってきた。
     ◇
 キスリツァ氏は4日、米ニューヨークで朝日新聞の単独取材に応じた。
 (ニューヨーク=藤原学思)

 ▼3面=動けぬ安保理
動けぬ安保理、国連の危機「拒否権は時代錯誤」事務総長「失敗」

写真・図版  ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、国連安全保障理事会に対する批判が高まっている。ロシアが常任理事国であるため、決議や声明といった一致した見解を示せずにいるからだ。ウクライナ危機は、国連の危機でもある。(ニューヨーク=藤原学思)▼1面参照

 米東部時間2月23日夜(日本時間24日)、ニューヨークの国連本部にある安保理議場で、各国大使らのスマートフォンに一斉に通知が届いた。ロシアがウクライナ侵攻を始めた――。

 「絶望を感じた。ショックだった。全員があぜんとした。憂鬱(ゆううつ)な夜で、生涯、忘れないだろう」

 非常任理事国アイルランドのネイソン国連大使は、取材にそう語った。「侵略を阻止するための努力が、水の泡になった気がした。ウクライナの人びとはどんな経験を強いられるのか。心配と恐怖があった」

 国連憲章で国際の平和と安全に主要な責任を持つとされる安保理は、米英仏中ロ5カ国の常任理事国と、10の非常任理事国からなる。1月31日以降、17回の公式会合を開いたが、法的拘束力のある決議は一度も通せていない。ロシアが自国を非難する決議案に拒否権を行使し、また、フランスやメキシコが用意した人道決議案にも、その行使をちらつかせたからだ。

 「私たちができることには限りがある。極めて難解な問題であり、とても恥ずべきことだ」。そう話すネイソン氏は「拒否権は時代錯誤であり、完全に廃止すべきだ」と訴える。

 欧米の理事国が中心となり、2~4月には国連総会の「緊急特別会合」を要請した。安保理としては40年ぶりのことだった。総会では3度にわたり決議を通し、ロシアの人権理事会理事国としての資格停止にまで踏み込んだ。

 ただ、それがウクライナにおける緊張の緩和につながっているとは言えない。ゼレンスキー大統領は先月、安保理で行った演説で「安保理はあるが、何事もなかったかのようだ」「我々は安保理の決定をいま、必要としている」などと不満をあらわにした。

 国連のグテーレス事務総長も4月末、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と会談後の共同会見で強調した。

 「安保理はこの戦争を防ぐため、終わらせるため、持てる力を出し切ることに失敗した。これは大きな失望やフラストレーション、怒りの理由になっている」

 ■変わらない常任国、憲章改正に高い壁

 国際連合は1945年、51カ国が加盟して始まり、現在は4倍近い193カ国まで増えた。拒否権を持たず、選挙で選ばれる非常任理事国は65年に6カ国から10カ国に増やす決定がなされたが、常任理事国は当初から変わっていない。

 半世紀以上も構成が変わらないのは、国連憲章の改正が必要なためだ。憲章は、常任理事国すべてを含む、国連加盟国の3分の2がそれぞれの国内手続きを経て改正される。そのハードルの高さから、国連創設から76年半の間に改正は3度しか実現していない。

 安保理改革はできるのか――。国連を専門とする国際政治学者であるニューヨーク市立大大学院センターのトーマス・ウィース教授は、公開講座を開く度にその質問を受ける。「この40年間、私の答えはずっと『できない』だ。どんな改革案であれ、それと同じだけの問題がある」

 非常任理事国であるノルウェーのジュール国連大使は書面取材に対し、「安保理は現在の地政学的な現実を反映しておらず、数十年前と同じような運営が続けば続くほど、安保理の正統性や信頼はむしばまれる」。

 ただ、安保理改革が長年、ほぼ実現していないことを考慮しなければならないとして、現実的な対応をとる必要性を語る。先月、拒否権を使った国に総会での説明を求める国連総会決議が採択されたのは、その一例だ。

 抜本的な改革は難しくても、可能な範囲で安保理のあり方を変えようとする動きは過去にもみられた。

 たとえば92年、ベネズエラの国連大使だったディエゴ・アリア氏は、理事国以外や利害関係国以外にも、安保理の場を開放する新しい形の会合を考えた。

 これは「アリア・フォーミュラ会合」と呼ばれ、現在にいたるまで活用されている。先月27日にはウクライナ危機の責任をめぐっても開かれ、国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官や国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の代表がそれぞれ意見を述べる機会を得られた。

 ■識者「多くの課題では機能」

 シンクタンク「国際危機グループ」の国連担当、リチャード・ゴーワン氏は「安保理の活動レベルは常に上下してきた。大国間の緊張により、今後は世界情勢において、安保理があまり重要ではなくなる時代に突入するだろう」と語る。

 一方、ゴーワン氏は「ウクライナ危機で失敗しながら、多くの課題で安保理はまだ機能している。崩壊はしていない」とみる。たとえば3月には、国連アフガニスタン支援団(UNAMA)の任期延長も安保理によって決められた。

 ベルリンに拠点を置く市民団体「国境なき民主主義」のアンドレアス・ブメル代表は「安保理の機能不全や構造的な欠陥は、国連加盟国にとって何もしないための言い訳になっている」と指摘した。

製鉄所で戦闘、退避中断 市内・近郊「344人救出」マリウポリ

【写真】ウクライナ南東部マリウポリで黒煙が上がる製鉄所「アゾフスターリ」=ロイター(5日に提供された映像から)

 ロシア軍の包囲で人道的な危機が続くウクライナ南東部マリウポリでは4日、前日に続き住民の救出が行われた。しかし、多くの民間人や負傷兵が取り残されている同市内の製鉄所「アゾフスターリ」では、ロシア軍が突入して戦闘が起きたとされ、市民の退避は中断している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、5日未明にSNSに投稿したビデオ演説で、製鉄所以外のマリウポリの市内や近郊から4日、344人の住民が救出されたと述べた。

 一方、製鉄所を守るウクライナ軍側の部隊「アゾフ連隊」のプロコペンコ指揮官は4日夜、「激しい、流血の戦闘が起きた」とする動画をSNSに投稿。「極めて厳しい状況」にあることを明らかにした。プロコペンコ氏によると、ロシア軍は前日に製鉄所内に突入。内部には数百人単位の市民がいるとみられるが、脱出できずにいる。

 ロシア国防省は4日夜、製鉄所内にいる民間人のための避難ルート「人道回廊」を5~7日の3日間、設けると発表した。国防省は「この間はロシア側が戦闘行為を中断する」とした。だが、アゾフ連隊のパラマル副司令官は5日、SNSに投稿したビデオメッセージで「ロシアがまたしても停戦の約束を破り、避難を許さなかった」と主張し、ロシア側を批判した。

 米国防総省の高官は4日、マリウポリの攻防戦に、ロシア側が2千人規模の兵力を残しているとの見解を明らかにした。
(リビウ=坂本進、ワシントン=高野遼)

米、0.5%大幅利上げインフレ抑制へ、資産縮小も

 米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は4日、22年ぶりとなる0・5%の大幅利上げを決めた。保有資産を縮小して市場に出回るお金を減らす「量的引き締め」も始める。ウクライナ危機で世界経済の先行きは不透明感を増しているが、高水準が続く物価上昇(インフレ)の抑え込みを最優先にする。▼2面=「もうNYを出る」、4面=議長会見

 3~4日の連邦公開市場委員会(FOMC)で全会一致で決めた。企業や個人がお金を借りる際の金利などに影響する政策金利の水準(誘導目標)は、0・25~0・5%から0・75~1・0%へ、0・5%幅上げる。民間の活動を抑えてインフレを冷ます狙いがある。通常の利上げ幅である0・25%の2倍にあたる利上げは、ITバブル下の2000年5月以来。

 米国債などを購入して市場にお金を供給する量的緩和策も停止し、6月から月475億ドルを上限に保有証券を減らし、市場のお金の回収に転じる。上限額は9月には950億ドルに拡大する。FRBの総資産はこの2年で2倍の約9兆ドルに膨らんだ。市場にお金があふれている状態はインフレ要因となる。

 米消費者物価指数(CPI)は約40年ぶりの高水準で、米国民の生活を直撃している。コロナ禍の経済を支えるために20年3月に始まったゼロ金利政策と量的緩和策から、インフレ抑制に向けた金融の引き締めへ、米国の金融政策は大きく転換する。一方、市場ではFRBがインフレ退治にのめり込むあまり、6月以降のFOMCで異例の0・75%の利上げに動くとの観測がくすぶり、景気後退懸念も高まっている。

 この点について、パウエル議長は4日の記者会見で「今後数回の会合では、0・5%の利上げが検討される」と述べ、0・75%幅の利上げには慎重な姿勢をみせた。(ワシントン=榊原謙)

▼2面=「もうNYを出る」 (時時刻刻)
家賃1.7倍「もうNYを出る」米、40年ぶり高インフレ抑制へ利上げ

 高インフレが続く米国経済を正常化するため、米連邦準備制度理事会(FRB)が強力な金融引き締めを決めた。経済大国の金融政策の転換は、新興国からの資金流出など影響が広がった歴史もあり、ウクライナ危機に直面する世界経済への更なる重しになる可能性がある。▼1面参照

 築100年を超える米ニューヨークのアパートに、ジョシュ・ダニエルソンさん(23)は友人2人と暮らす。個室の3部屋に台所、ソファと小さなテーブルを置けばいっぱいになる共用のリビング。手狭ではあるけれど、バーやレストランが多く若者に人気のエリアという立地が気に入った。

 家賃は約2300ドル(約30万円)。家庭教師として働くダニエルソンさんの月収は約3千ドル(約39万円)。「3人で割れば1人あたり800ドル以下に収まる」と契約を決めた。

 だが、昨年4月に入居してまもなく、米国では消費者物価指数(CPI)の上昇が始まった。約40年ぶりの高水準となった今年2月。家主から契約の更新を伝えるメールが届いた。提示された4月以降の家賃は7割超の値上げとなる3950ドル(約51万円)。1人あたりの負担は約1300ドルに跳ね上がる。「収入の4割以上が家賃で消えれば、暮らしていけない」

 値下げ交渉は不調に終わり、7月までに退去せざるを得なくなった。ダニエルソンさんは「大学に進学するために借りた学生ローンの返済もあるし、食料品も値上がりしている。もうニューヨークは出て行くつもりだ」と話す。

 住宅トラブルから住人を守るニューヨークの団体のジェネシス・アキーノさんによると、コロナ禍前と比べ、家賃高騰など住宅関連の相談者数は2~3倍増えた。特に株高や不動産価格高騰の恩恵を受けにくい中・低所得層が、食料品や家賃の値上げなどに苦しんでいると言う。アキーノさんは「家主が賃料収入を増やそうと、家賃の低い住人に高額な家賃をふっかけて追い出そうとする例も多発している」と憤る。

 3月の米CPIは前年比8・5%の上昇だった。調査会社「モーニング・コンサルト」によると、住居費の支払いに不安を感じる人の割合は3月は16・8%に達し、この1年で最高になった。

 同社の調べでは、年収5万ドル(650万円)未満の人の3月の住居費は前年比11%増だったが、それ以上の収入がある層の支出は減った。収入の多い層は持ち家であることも多く、住まいに関わる支出を調整できている可能性がある。

 低所得層は家計に占める生活必需品への支出の割合が大きく、値上がりの打撃を受けやすい。FRBのパウエル議長も4日の会見で「高インフレが、食費や住居費、交通費の上昇についていけない人々の大きな苦難になっていることを痛感している」と話した。(ニューヨーク=真海喬生)

 ■新興国、資金流出を懸念

 インフレを抑制するため異例の金融引き締め策に乗り出した米国だが、その影響は世界各国に及ぶ。

 「金融環境を無秩序に引き締めることは、もちろん避けなければならない」

 先月19日。国際通貨基金(IMF)で経済分析をするトビアス・エイドリアン氏は、記者会見でFRBの引き締め策を問われ、こう語った。コロナ感染拡大で世界中で株価が急落した2020年3月の市場の混乱を振り返りつつ、行き過ぎた引き締めにクギを刺した。

 IMFは今年1月、「新興国は米国の金融引き締めに備えよ」との警告を発するなど、FRBの動向が世界経済に波及することを見込んで警戒を呼びかけていた。米国の金融引き締めが新興国を揺さぶってきた歴史があるためだ。

 08年のリーマン・ショック後、ゼロ金利政策を続けていたFRBが利上げに動くとの観測が強まり、実際に利上げした15年。中国経済の減速もあり、世界の新興国からは7千億ドル以上が流出した。新興国通貨の対ドルレートをまとめた米モルガン・スタンレーの統計によると、15年末は前年末より7%下落し、この10年で最大の落ち幅だった。

 米国が利上げすれば、ドルを買って新興国通貨を売る動きが強まりやすい。新興国は対外債務の3分の2をドル建てで持ち、通貨安は債務の返済負担を重くしてしまう。新興国経済への不安が高まると、株式や債券からも資金が流出する悪循環に陥る。

 こうした問題に加え、今回はウクライナ危機が影を落とす。特に懸念されるのが、新興国の中でも地政学的リスクを背負う国だ。

 トルコはロシアやウクライナからのエネルギーや食糧に大きく依存する。これらの価格高騰で3月はインフレ率が61%に達し、リラはこの1年で対ドルで約4割下落した。IMFによれば、カザフスタン、ハンガリー、ポーランドなど、ロシアやウクライナとの地理的・経済的な結びつきが強い国の通貨も大きく下落。米国の引き締めの影響次第では、更なる通貨安や経済への打撃も避けられない。(ワシントン=榊原謙)

 ■日米金利差、円安加速の恐れ

 日本にとって気がかりなのは、円安の行方だ。

 利上げを進める米国とは正反対に、日本銀行は金利を低く抑えて景気を支える政策を維持している。このため、米国の利上げが進むほど、金利が高くて運用益が得やすいドルを買い、円を売る動きが強まり、円安が加速する可能性があるからだ。

 日銀は4月28日、金利の上昇を強制的に抑え込む「指し値オペ」を原則毎営業日行う、という強攻策も決定。当面は超低金利政策を変える見込みはなく、じわじわと円安が進むとの見方が一般的だ。実際、円は一時、20年ぶりとなる1ドル=131円台まで下落。米国が利上げを始めた3月以降、15円超も下げている。

 最近は、円安で原油や穀物などの輸入品の価格が上がり、企業や家計を圧迫するというマイナス面の方が目立つ。円安や物価高が加速すれば、日本のコロナ禍からの回復がさらに遅れる可能性がある。
(徳島慎也、江口英佑)

▼4面=議長会見
0.75%は積極検討せず 利上げ「安全運転」米FRB議長

 大幅な利上げなどに動いた米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、記者会見で今後の金融政策について説明した。市場関係者は更なる金融引き締めにつながる発言を警戒していたが、この日は「安全運転」に終始。動揺していた市場もいったん落ち着きを取り戻した。▼1面参照

 3~4日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエル氏らは通常の2倍の利上げ幅となる0・5%の引き上げを決定。FRBの保有資産の縮小も決め、物価高(インフレ)の抑え込みを最優先にする意思を改めて示した。

 ただ、市場関係者の間では、そこまでは織り込み済み。むしろ、6月以降は0・75%の大幅利上げに動くのではとの観測が広がっていて、パウエル氏がどう言及するかが注目点だった。

 FOMC後の記者会見では早速、質問が飛んだ。これに対し、パウエル氏は「0・75%の利上げは、委員会で積極的に検討されてはいない」と説明。さらに「今後数回の会合では、0・5%の利上げがテーブルにのる(=検討される)というのが、委員会の大方の見方だ」と述べた。

 市場の観測とは距離を置いたパウエル発言を米メディアは速報。厳しい金融引き締めを見越して値を下げていた米ニューヨーク株式市場ではこの日、主要企業でつくるダウ工業株平均が一時950ドル超上昇した。

 また、パウエル氏が会見で重ねて強調したのが、「米国経済は強い」という認識だ。「景気の後退が間近に迫っている、あるいは後退しやすい状況にあることを示唆するものは何もない」と自信を見せた。

 ただ、インフレ退治のため、大幅な利上げと量的引き締めという景気を冷やす政策を続けつつ、景気後退を避けるという「ソフトランディング」は簡単ではない。

 パウエル氏はこの日の会見で、ウクライナ危機による海外経済の不振や世界的な物流網の混乱が米国に与える悪影響についても懸念を表明。新たな危機が、金融政策のかじ取りをさらに難しくしている。(ワシントン=榊原謙)

 ■対インフレには不十分 スタンフォード大、ジョン・テイラー教授

 FRBが前回よりも大きい0・5%の利上げを決めた判断は、正しい方向だ。ただし、米国のインフレ率は8%超。それなのに政策金利が1%ではほとんど意味がない。FRBは、景気を刺激も抑制もしない「中立金利」は2~3%としている。政策金利が中立金利を下回る限り、インフレの勢いは止まらない。少なくとも、政策金利は3%を超える水準が必要だ。

 ウクライナの問題や中国のロックダウンは、たしかにインフレ率が上がる要因となっている。しかし、根底にある消費などインフレ圧力に対処する必要がある。

 米国の利上げは、各国に資金流出などの影響を及ぼす。だからといって各国が通貨防衛のために金利を引き上げるのは間違っている。各国は自国の成長のために最適な政策金利を選ぶべきだ。(聞き手・真海喬生)

 ■世界景気、今後は減速感 SMBC日興証券、丸山義正チーフマーケットエコノミスト

 0・5%の利上げと「量的引き締め」の実施は予想通りだった。FRBは当面、利上げを続ける見通しで、世界経済にとっては、今年末や来年にかけて景気の減速感が出てくることにつながる。日本経済にも米国向けの輸出が落ちてくるなど、影響が出るだろう。

 0・75%の利上げの可能性も指摘されていたが、パウエル議長は否定的な見方を示した。しかし、0・5%の利上げは続く見通しで、その間は円安に振れるリスクがあり、9月までは1ドル=135円まで進む可能性がある。急速な円安は、輸入物価が高騰する一方で企業の価格転嫁は追いつかず、よくない。

 ただ、年末にかけて利上げのペースは落ちてくるとみている。その場合はドル円相場も落ち着き、1ドル=120円半ばまで戻してきても不思議ではない。(聞き手・江口英佑)

(天声人語)
大祖国戦争

 今年の本屋大賞に選ばれた小説『同志少女よ、敵を撃て』を読んだ。作中、実在したソ連の狙撃手リュドミラ・パブリチェンコが登場する。主人公の少女らがあこがれる伝説的な女性兵士だ
▼ウクライナ出身。第2次世界大戦に志願し、前線で309人ものドイツ兵を射殺する。その武名をソ連は軍事動員に利用した。狙い通り若い女性が狙撃学校の門をたたき、多くは戦場で命を落とす。負傷したパブリチェンコは、政府の命令で欧米を回り、支援を訴えた
▼ソ連の英雄に祭り上げられた彼女の故国はいま、ロシア軍に蹂躙(じゅうりん)されている。連日届く映像には女性兵士の姿も多い。捕虜交換で解放されたウクライナ兵の中には、妊娠5カ月の女性もいたという。傷つき命を落とす者も多いだろう。小説の輪郭と重なり、何ともやりきれない気分になる
▼ソ連は対独戦を「大祖国戦争」と名付けた。「祖国戦争」と呼ばれた19世紀の対ナポレオン戦と重ね合わせ、民衆の愛国心を鼓舞するためだ。多大な犠牲を払いナチスを打ち破った記念日として語りつがれる5月9日は、ロシア最大の祝日という
▼この日がいま世界の注目を集める。「ウクライナに正式な宣戦布告をし、攻勢を強めるのではないか」。英米ではそんな観測が飛び交う。ロシア高官は「たわごとだ」と退けるが、どこまで信用できる発言か
▼ひところ期待を込めた停戦交渉も、音沙汰が無くなった。戦勝記念日に砲火がやむという展開には、もう一筋の光すら差さないのか。

田中宇の国際ニュース解説
   https://tanakanews.com/220505russia.htm
   2022年5月5日

同盟諸国とロシアを戦争させたい米国


【2022年5月5日】  田中 宇
米国自身は決してウクライナに派兵しない。米大統領府がウクライナの戦況を歪曲して実際と全く違う「露軍の大敗北」の話にしているからだ。今のように戦況をわざと大間違いして議会や国民に信じ込ませ、諜報界に正しい調査をさせないまま米軍を派兵すると、米軍は失敗して無駄な戦死者を出し、厭戦気運が高まってバイデンの人気がますます下がる。米大統領府が戦況分析を故意に大間違いしている限り、米軍は派兵されない。大間違いの戦況分析を正しい方向に転換するのは困難なので、米国は今後もずっとウクライナに参戦しない。ポーランドや独仏に参戦しろとせっつくだけだ。 詳細

最近の記事で、ロシアがウクライナの東部から南部にかけての地域を分離独立させて親露的なノボロシア連邦を新設しようと目論んでいる話を書いた。ロシアは、ウクライナの何割かの土地に傀儡国家を作る形で自国側に割譲させようとしている。しかし実のところ、ウクライナから土地を奪おうとしている国は敵方のロシアだけでない。ウクライナの味方であるはずのポーランドも、リビウなど自国に隣接するウクライナ西部を奪って自国領として「取り戻す」計画をひそかに進めている。ロシア政府がそう指摘し、ポーランド政府は否定しているが、ロシアが勝ってウクライナ全体がロシアの傀儡国になりそうなことから考えると、ポーランドがウクライナ西部を取っておこうとするのは自然だ。 (Poland Reportedly Interested in Annexing Part of Ukrainian Territories) (ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?)

ポーランドは14-18世紀と、2度の大戦の戦間期(1919-41年)に、リビウなど今のウクライナ西部地域を領有していた。リビウ市民の半分がポーランド人で、3割がユダヤ人だった。戦後、この地域はソ連の一部であるウクライナに編入され、ポーランド人はポーランド側に移住させられ、ユダヤ人はイスラエルや米国に移り、リビウにウクライナ人が急増した。 (Washington, Warsaw Plot 'Reunification' of Poland & Western Ukraine - Russian Foreign Intel Chief)

そして今、ポーランド政府は、ウクライナの国家機能が戦争によって低下しているので「補助する」という名目で、ポーランド軍をリビウなどウクライナ西部に進軍させ、これまで国家警察などウクライナ当局が担当していた西部地域の治安維持などをポーランド軍が代行する計画を持っている。米国やNATOも、ウクライナ政府をロシアとの戦争に注力させられるのでポーランド軍のウクライナ西部侵攻に賛成している。今はまだ米国もNATOも「ロシアを打ち負かし、ウクライナにドンバスやクリミアを奪還させ、戦勝させて元に戻す」ことしか言っておらず、ポーランド軍のリビウ進出も、この戦勝目標が達成されたら終わることになっている。 (Poland has secret plan for Ukraine, Moscow claims)

しかし、もしロシアが勝ち、クリミアやドンバスだけでなくオデッサやハルキウ(ハリコフ)までロシア側に奪われ、ウクライナが分割されることになったら、ポーランド軍はそのままリビウ周辺に居座り、ウクライナ西部はポーランドに併合される。ウクライナ国家として残るのはキエフ周辺などだけになり、それも親露的・露傀儡的な国家になる。ウクライナ戦争は、米国側でなくロシア側の勝ちになる可能性が大きい。ロシアが勝ち、ウクライナ全体がロシアの傀儡国になってしまうぐらいなら、あらかじめウクライナ西部をポーランドの取り分として確保しておいた方が良い。ポーランドはそう考えて、リビウ周辺への越境進軍を検討している。(ポーランドは領土拡張欲が強く、ロシアの盟友であるベラルーシからフロドナ周辺を「奪還」することも目指している) (Poland Wants to Snatch a Piece of the Pie from Collapsing Ukraine)

米国はポーランドの侵攻計画を支持しているが、私が見るところ、それは別の思惑に基づいている。別の思惑とは「NATOの一員であるポーランドをロシアと戦争させる」ことだ。米国の支持によってポーランドの領土欲が刺激され、ポーランド軍がウクライナ西部に侵入・駐屯すると、彼らの役目はリビウ周辺の治安を守るだけでなく、露軍と戦うウクライナ軍を訓練することも任務に入ってくる。米欧NATO諸国がウクライナに送った新兵器類をウクライナ軍が操作できるよう、NATOの一員であるポーランド軍が訓練するのは米国側にとって重要だ。しかしそうなるとポーランド軍は、ウクライナを「非武装中立」にするために戦争しているロシアの敵になってしまう。ポーランド軍がウクライナに駐屯したら、ロシア軍の標的にされる。ロシアとポーランドがウクライナで戦争になり得る。

NATO加盟国であるポーランドがウクライナ西部の治安維持に協力するために軍隊(平和維持軍)を派遣したところ、ロシア軍が攻撃してきたとなると、NATOの5条が発動され、米英独仏などNATO全体がポーランド軍を守るため、ウクライナでロシアと戦わねばならなくなる。こうした状況を作る、もしくは事態をこうした状況に近づけることが米国の目標だ。NATOの5条が発動されても、それですぐに米国がロシアと戦争しなければならないわけではない。ロシアに痛めつけられているポーランドを助けるNATO5条の義務は、米国より先に、現地の欧州大陸にある同じEUのドイツやフランスに課せられる。米国は、独仏など欧州諸国をロシアとの戦争に直面させるためにウクライナの敵対状況を扇動してきた。

独仏など欧州諸国は、ロシアと戦争したくない。欧州諸国は、少ない負担で自国の安全を確保するために、米国の傘の下に入れるNATOに加盟している。NATOがロシアを敵とする組織だというなら、米国主導のロシア敵視の演技に参加してもいいが、それは演技だけですよ、というのが欧州の本音だ。冷戦終結でロシア(ソ連)敵視のNATOは不要になったはずだが、英国やEUなど欧州諸国が米国の傘の下に入り続けたいのでNATOは温存され、米国は同盟諸国を守る安保上の負担を強いられ続けてきた。戦後ずっと米国の覇権運営を黒幕的に牛耳ってきた英国は、米国の軍産複合体と組んでNATOを温存し、軍事費など米国の安保資産の恩恵を、軍産と英欧(イスラエル日豪)など同盟諸国で山分けする事態が続いてきた。米国は同盟諸国に搾取されている。

イラク戦争を起こしたネオコン以来の、米国中枢に巣食う超党派の過激=覇権放棄的な隠れ多極主義勢力は、同盟諸国を巻き込んで米国の覇権戦略を過激に稚拙に好戦的に残虐にやり続けて失敗を繰り返し、同盟諸国が米国に愛想を尽かして離反するように仕向けてきた。しかし同盟諸国は、日本式の「見ないふり・いないふり戦略」や、ドイツ式の「EU軍を作るふりだけして何もしない戦略」などを駆使してしつこく米覇権に従属・ぶら下がり続け、米国がいくら無茶苦茶をやっても誰も離反しなかった。覇権放棄を果敢に推進したトランプも1期で排除された(次期に復権しそうだけど)。しかたがないので、米国中枢は稚拙な好戦戦略をどんどん過激化し、今回のウクライナ戦争に至っている。

ポーランド軍が本当にウクライナ西部に進出するのかどうか、まだわからない。ポーランドがウクライナに進出して露軍に潰されても、独仏が外交的に右往左往するばかりで軍事的に動かず、米国も傍観するだけだと、ポーランドは見捨てられて大敗北になってしまう。その場合、NATOの5条が空文であることも確定してしまうので、NATOを米覇権牛耳りツールとして温存したい英国は、ポーランドに対し、米国から誘われてもウクライナに進軍するなと忠告しているはずだ。それらの展開を、プーチンは含み笑いしつつ眺めている。

米議会では共和党の一部の議員(共和党内で民主党に肩入れするAdam Kinzingerら)が「ウクライナでロシアが大量破壊兵器を使ったら、米大統領の権限で米軍をウクライナに派兵してロシアと戦争できるようにする」法案を提出しようとしている。この法案は、前回の記事に書いた「米大統領府の安保会議のタイガーチームが、ウクライナでロシアが大量破壊兵器を使ったという濡れ衣をかける演出をやろうとしている」という話と連携している。ロシア軍はウクライナで余裕で勝っているので大量破壊兵器を使う必要がないが、それを濡れ衣の演出でねじ曲げ、露軍が大量破壊兵器を使ったと世界に信じ込ませ、米軍をウクライナに派兵させる試みが進んでいる。この謀略が進むと、NATOの5条発動がなくても事態は米露戦争に近づく。 (Adam Kinzinger introduces bill to allow U.S. military into Ukraine) (US lawmaker seeks to bring American troops to Ukraine) (ウソだらけのウクライナ戦争)

しかし、私が見るところ、米国は決してウクライナに派兵しない。そう思える理由は、米軍のウクライナ派兵を進めているかに見えるタイガーチーム自身が、同時に、ウクライナの戦況を歪曲して、実際と全く違う「露軍の大敗北」のイメージにしてしまっているからだ。米軍をウクライナに派兵するなら、まず米国自身がウクライナの戦況を正しく把握して議会やマスコミ権威筋の全体でそれを共有せねばならない。今のように、戦況をわざと大間違いして議会やマスコミ権威筋や国民に信じ込ませ、諜報界に正しい調査をさせない状態で米軍をウクライナに派兵すると、米軍は失敗して無駄な戦死者を出し、米国内の厭戦気運が高まってバイデンの民主党の人気がますます下がる。イラク戦争の時もインチキな諜報が出回ったが大した問題でなかった。しかし今回の敵は、弱いイラク軍でなく強いロシア軍だ。今回はインチキな諜報が敗北につながる。米大統領府がウクライナの戦況分析を故意に大間違いしている限り、米軍はウクライナに派兵されない。大間違いの戦況分析を正しい方向に転換するのは困難なので、米国は今後もずっとウクライナに参戦しない。ポーランドや独仏に参戦しろとせっつくだけだ。 (ロシアが負けそうだと勘違いして自滅する米欧)

米国はロシアと話し合いをする気が全くない。ロシアが潰れるまで戦う(ウクライナやEUを戦わせる)だけだと米政府は言い続けている。ロシアは潰れない。米露は永久に対立するだけだ(そして世界の覇権構造が多極型に転換する)。この流れの中に、米軍のウクライナ派兵が入る余地はない。米軍がウクライナに派兵されてもロシアは潰れないので、派兵したら米国はその後どこかの時点で米軍撤退のためにロシアと話し合いが必要になる。この展開は、米露の恒久対立を望む今の米国の戦略になじまない。米国はウクライナに派兵しないし、ロシアと直接戦争しない。だから米露核戦争もない。 (Pelosi's 'Victory' Rhetoric During Surprise Trip To Kiev Making Some Allies Nervous)

(最近ロシアの政府筋は「米国側が激しく攻撃してきたら核兵器による反撃も辞さない」といった感じのことを言い続けている。それを受けて米国側の人々は「ロシアが核戦争を起こしそうだ」と言っている。米国側では「ロシア軍は、核兵器に頼らねばならないほど追い詰められているんだ。やっぱりロシアはウクライナで負けている」といった見方も出ている。私が見るところ、これらは間違いだ。ロシアは、米国側の人々を怒らせて、より強い対露経済制裁を仕掛けてくるよう誘導するために、核兵器使用をちらつかせている。米国側の人々が激怒し、ロシアからの石油ガス資源類の輸入停止など対露経済制裁を強くやるほど、その制裁はロシアでなく米国側諸国の経済と国民生活に大打撃を与え、米国側が自滅していく。実際のロシア軍は余裕があり、核兵器を使う必要がない。ロシア側がブチャ事件など戦争犯罪の濡れ衣を放置しているのも、米国側の人々を激怒させ、米国側に自滅的な対露経済制裁を強めてもらいたいからだ。米国側のマスコミ権威筋は、ロシアをこっそり支援する米中枢の隠れ多極派に誘導されている) (Russian TV Warns Britain Can Be 'Drowned In Radioactive Tsunami’ By Single Nuclear Sub Strike)

ポーランドが侵攻してきて西部を奪おうとしているのに、ウクライナ政府は黙認している。ポーランドは米国の後ろ盾を得ているので、同じく米傀儡国であるウクライナは反対できない。その一方でウクライナ政府は「ハンガリーがウクライナの一部を奪おうとしている」と言ってハンガリーを非難している。こっちの方は無根拠な濡れ衣だろう。ハンガリー政府はオルバン首相の親露政権で、ウクライナの極右がオルバンを「殺すべき人のリスト」に入れたのと同期して、ウクライナ政府がハンガリー非難のために濡れ衣を言い出した。ウクライナの一部であるトランスカルパチアはかつてハンガリー領で、トランスカルパチアを奪還すべきだと言っているハンガリー人もいるが、親露でEU加盟のハンガリー政府はロシアとEUとの安定的な和解を望んでおり、トランスカルパチア奪還に動く状況でない(今のところ)。 (Ukraine claims Hungary wants its territory) (Names of Hungarian PM, Croatian President Appear on Notorious Ukrainian Kill List Site)

ウクライナの近隣では、モルドバと沿ドニエストルも、米国側の謀略によって戦争に巻き込まれそうになっている。米国傀儡のウクライナのゼレンスキー政権は、モルドバ政府に対し、沿ドニエストルを武力で回収すべきだと要請している。沿ドニエストルはもともとモルドバの一部で、モルドバはもともとソ連の一部だった。モルドバはソ連崩壊後、ルーマニアに編入してもらうか独立国になるかで迷った末に独立国になったが、その際、モルドバ国内の沿ドニエストルだけは、ソ連の後継国であるロシアと一緒になりたいと望み、1990年にモルドバからの分離独立を宣言した。92年にモルドバと沿ドニエストルが内戦になった後、ロシアが仲裁して停戦させ、ロシア軍が沿ドニエストルに進駐して兵力引き離しを監視している。 (ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?) (Transnistria reports attack from Ukraine)

沿ドニエストルはウクライナと国境を接している。今回、ウクライナ軍は4月27日に無人爆撃機(ドローン)を沿ドニエストルのロシア軍の施設に向けて飛ばす攻撃をやっている。その後、ウクライナ政府がモルドバ政府に対し、沿ドニエストルを武力で回収すべきだ(ウクライナも協力するよ)と提案した。ロシアとの貿易が経済の重要な部分を占めているモルドバの政府は、ウクライナの提案を断った。ウクライナ政府の提案は、ゼレンスキーらが独自に考えたのでなく、モルドバとウクライナで沿ドニエストルに駐留するロシア軍を挟み撃ちにすれば、ロシアから援軍が来て本格戦争になり、ウクライナを使ってロシアを潰す戦争を扇動できて好都合だと考えた米国が、ウクライナにやらせているのだろう。 (Moldova turns down Kiev’s suggestions on Transnistria) (NATO weighs in on threat to Ukraine's neighbor)

米国側はモルドバの政治家を動かして、モルドバをルーマニアに併合させようとする動きもやっている。モルドバはルーマニア語の国で、両国は親和性が高い。モルドバはNATO加盟していないが、ルーマニアはNATO加盟国なので、モルドバがルーマニアに入ればNATO加盟地域になり、モルドバの一部だが分離独立を宣言している沿ドニエストルも、NATOやモルドバ側から見ると加盟地域になる。沿ドニエストルに駐留するロシア軍は、NATO加盟国内に居座っていることになる。モルドバがルーマニアに併合されると、NATOは沿ドニエストルの独立を否定し、そこにいるロシア軍に退去を求める。ロシアは、沿ドニエストルの民意を理由に撤退を拒否する。NATOとロシアが沿ドニエストルをめぐって鋭く対立し、事態は戦争に近づく。これは米国中枢のタイガーチームが喜びそうなシナリオだ。 (Moldova, Transnistria to enter NATO through absorption by Romania)

米国は沿ドニエストルを新たな戦場にしたいらしく、ルーマニアに兵器をどんどん送り込んでいる。戦争を拡大したがっているのはロシアでなく米国側だ。ゼレンスキー大統領のウクライナ政府も、自国民のことより米国傀儡として戦争を拡大することを最優先にしている。ウクライナ政府を支援するのはやめるべきだ。対米従属もできるだけ早くやめた方が良い。中立国になれば石油ガス資源類にも困らないですむ。 (US sending more troops to Romania - president Iohannis)