10 01 (金) 強硬な中国 |
尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で逮捕、勾留(こうりゅう)された中国人船長は釈放され、自宅に戻った。にもかかわらず、中国政府は日本側に謝罪と賠償を求めるなど、強硬な姿勢を示した。 中国側は強腰で臨めば、日本はさらに譲歩してくると思ったのだろうか。それは思い違いであり、中国の長期的な利益にもならない。 中国は経済の改革開放により、日本を抜いて世界第2の経済大国になるのが確実だ。その経済力を背景にアジアやアフリカなど世界で存在感を強めている。 中国政府は経済的な余裕を、軍事力増強にも向けた。その結果、海軍は太平洋などで活動を広げている。尖閣諸島だけでなく、南シナ海でも周辺各国と領有権をめぐって対立している。 その注視の中で、今回のようななりふり構わぬ振る舞いは、国際社会から異様と受け止められている。 中国は長らく、中国の発展は世界の脅威ではなく、あくまでも平和的な道を歩むと国際的に訴えてきた。その姿勢が変わったかのように見えるのは、極めて遺憾だ。 指導部の入れ替えがある2012年の共産党大会を控えた微妙な時期に、胡錦濤総書記をはじめとする指導部は、火種になりかねない日中関係で弱腰になるわけにはいかないのだろう。大国意識の強まる世論を無視できないことも容易に想像できる。 とはいえ、世界のリーダーにならんとする中国が、隣国との関係でここまでかたくなになるのはやり過ぎだ。 米国がかつてのような国力を誇れぬ今、中国はアジアの安定を保つ方向に動くべきだ。調和のとれた国際関係は中国外交の目標のはずだ。ならば、大国の自制を示すべきだ。 釈放について国内に批判がある。 だが、「平和的で外交的な手続きをとることがいかに重要かという洞察力と見解を示した」(キャンベル米国務次官補)という評価もある。平和的な手段こそ、日本のとるべき道だ。 菅直人首相は10月4、5両日にブリュッセルで開かれるアジア欧州会議首脳会議に出席すると決めた。 1日から臨時国会が始まるが、尖閣沖の事件を受けて、首脳会議を優先する。当然の選択だ。外交の重要さをあらためて認識したい。 各国に日本の立場への理解を求めるだけでなく、中国との対話も探るべきだ。少なくとも、事件再発を防ぐ話し合いを始めなければならない。 38年前のきょう、日本と中華人民共和国は外交関係を樹立した。 北京で署名された「日中共同声明」で、双方は両国間の恒久的な平和友好関係の確立に合意した。中国はこれを忘れてはいまい。 (朝日新聞社説 2020/9/29) |
仙石長官が要請 民主党の細野豪志前幹事長代理が中国・北京を訪問したのは、仙石由人官房長官の要請に基づくものであることが分かった。 細野氏は北京入りした先月29日夜、中国外交を統括する戴秉国・国務委員(副首相級)と会談していた。 訪中にかかわった関係者が明らかにした。 細野氏は29日、北京市内の釣魚台迎賓館で中国外務相幹部と長時間にわたり会談。 途中から戴秉国氏も加わった。 閣僚級交流の停止などの中国側の対抗措置のほか、河北省石家荘市で起きた4邦人の拘束事件などが取り上げられ、関係改善に向けて意見交換したとみられる。 |