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10 24 (日) ドル崩壊か !! 非常事態の情報 |
2010年10月22日 田中 宇 米国で「フォークロージャー(注記@)危機」もしくは「フォークロージャー・ゲート」と呼ばれる金融事件が始まっている。フォークロージャーは米国の不動産業界の用語で「抵当処分」「担保権の行使」を意味する。一般には、土地を担保に金を借りた人や企業が借金(ローン)を返せなくなった(返済遅延を起こした)とき、貸し手(銀行など)が裁判所の手続きを経て、担保物件を差し押さえて借り手から取り上げ、競売にかけて売却し、貸し手はその売上金で債権を穴埋めする。穴埋めしきれない分は貸し手の損失(不良債権)となる。 これが担保権行使の基本なのだが、米国は不動産登記のシステムに欠陥がある。日本では、各地の法務局が保管する不動産登記簿に記載された所有者が、その土地の所有者である。登記簿の記載が間違っていることはほとんどない。土地の所有者や抵当権者が誰であるかを、事実上、政府が保証している。一方、米国も各地に州立の登記所があるが、登記を受け付けるだけだ。登記所は、登記された土地の所有者や抵当権者が本物かどうか保証しない。このため以前の米国では、登記を信用して行われた土地の売買の後に、売り手が土地の所有者でなかったことがわかり、買い手が大損する詐欺や所有権争いの事件が多発した。買い手は、詐欺による損失を防ぐため、登記が間違っていた場合に保険金が支払われる権原保険(title insurance)をかける必要があった。(Title insurance vital if you bought a foreclosed home) この問題を解決するため、住宅ローンなど不動産担保融資を行う米金融界が資金を出して、1995年に「抵当電子登録システム」(MERS、Mortgage Electronic Registration Systems)が作られた。MERSは、融資の担保になった土地の所有者や抵当権者をデータベース化したもので、全米で合計6600万件、米国で組まれたローンの60%が登記されている。(Foreclosure Crisis Triggers Debate on Role of Mortgage Registry) MERSが作られた背景には、90年代に入って本格化した米国の金融自由化(債券化)によって、債権者である銀行が、無数の住宅ローンの債権を束ねて債券化し、不動産担保債券(MBS)として投資家に売ることが許されたことがある。銀行は、この債券化ビジネスで大儲けできるので住宅ローンの融資が急増し、各地の登記所での登記が追いつかず作業遅延がひどくなった。(MERS From Wikipedia) MERSは、全米各州の登記所に取って代わり、米国で最も信用される土地登記システムとなった。ファニーメイやフレディマックといった米政府傘下の住宅金融機関(住宅ローンの債務保証会社)も、債務保証を行う際、対象物件がMERSに登録されていることを条件にしている。銀行界が融資するローンの正当性を保障する登記システムを、銀行界が出資して作った私企業が運営している状況なので、政府が金融を監督する構図から逸脱したが、これは90年代の米国で流行した「民営化」「市場原理主義」の一例として容認され、むしろ民営化によって行政コストを下げる仕組みとして奨励された。(Invasion of the Robot Home Snatchers) ▼ひも付けが切れた債券 95年にMERSが設立されて以来、MERSを使った債券(MBS、ジャンク債)の発行が急拡大した。債券金融の総残高は、従来型の預金金融の総残高を超えて増加した。債券金融は「影の銀行システム」(shadow banking system)として、米経済の資金調達や株価の上昇、企業倒産の減少、景気の維持に不可欠な存在となった。債券こそ金融の中心で、預金集めは儲からない古くさい分野になり下がった。(影の銀行システムの行方)→2010.07.19 田中宇ブログ しかし住宅ローンの債券化には、根本的な問題があった。何万軒分もの住宅ローンを束ねた後「トレンチ(溝)」と呼ばれる格付けに流し込まれて再分割された債券は、どの家のローン債権(抵当権)がどの債券とひも付けされているかわからなくなった。住宅価格が上昇している05年ぐらいまで、返済不能になるローンが少ない間は、それを誰も気にしなかった。しかし、住宅相場が下落し始め、07年にサブプライム住宅ローン危機が起こると、このひも付け不能性が問題になりだした。 何万軒分もの住宅ローンを一つずつ精査し、ローンを返せそうもない債務者の分から順番に並べることができれば、格付けによって輪切りにされた各トレンチの債券と、担保にとった物件とをひも付けできた。だが、90年代からの金融バブルの大忙しの大儲けの中で、悠長な調査をする余裕が金融界になかったし、精査などしなくても債券がどんどん売れた。債券のトレンチごとの条件の違いは「ローン全体のうちの破綻率が7%以下なら最下位トレンチの債券が元本割れし、7−10%なら下から二番目のトレンチまで元本割れし・・・」という具合に、全体的な比率の問題として処理された。ひも付けの考え方は消えていた。 ローンの返済が滞って破綻になると、担保権を行使して担保物件の住宅を差し押さえ、競売にかけて債権の何割かを回収する抵当処分(フォークロージャー)の手続きに入る。この際、債券(債権)と住宅(抵当)が、あらかじめひも付けされている必要がある。原理的には、最初にローン破綻した物件を、最も格下のトレンチの債券とひも付けしていけば良いのだが、これだと後付けの作業になる。最初の起債の段階でひも付けが行われていることが必要だが、すでに書いたように、それは行われていない。(A Primer On The Foreclosure Crisis) MERSのシステムは、ローン破綻後に行われたひも付け作業を、起債時に行われたように銀行が装うことを黙認することで、この問題を解決した。これは違法なことだったが、当初は問題にならなかった。抵当処分は本来、裁判所を通して行う手続きだが、米国では経済自由化の結果、MERS上で債権債務関係が証明できれば、債権者である銀行が、裁判所を通さずMERSのシステム上で抵当処分の手続きを行えるようになっていた。すべてが業界のシステムであるMERS内で処理されていたので、07年夏にサブプライム住宅ローン危機が起こり、抵当処分が増加した後も、債務者による反訴という形で違法性が指摘されることは少なかった。 ▼崩壊に瀕する米国の抵当システム だがその後、住宅相場の下落が止まらず、抵当処分が増え続ける中、今年9月末、裁判所がMERSの後付けのひも付けを無効とする判決を出した。これを機にフォークロージャー危機が起こり、いったんMERS上で決定された抵当処分でも、後から債務者(ローン支払い者)が裁判所に提訴すれば、その処分を無効にできる道が開かれた。7つの州の捜査当局が、銀行界やMERSのやり方に違法性がなかったかどうか調べ始め、今や全米50州のすべての州当局が何らかの調査を開始している。(Why the foreclosure mess could last for years) 抵当処分を申請できるのは、抵当権者(債権者)だけであるが、住宅ローン債権は債券化され、もともとの債権者である銀行から他の投資家に転売されている。銀行は抵当権を持っておらず、抵当処分を申請する権限がない。しかし米国の各大手銀行は「抵当権者は自分たちである」という宣誓書(affidavit)を偽造して裁判所に提出していたことが、各州当局の調査によって判明した。 宣誓書には、専門家による監査を受けた証明書をつけねばならないが、銀行は、専門家でない一般の人々を専門家として雇い、監査をせずに証明書に署名させていた。この署名問題(robo-signing)も、銀行のスキャンダルとして報じられ始めた。これらの全体が、フォークロージャー・ゲートである。(Foreclosure Fraud: 6 Things You Need To Know About The Crisis That Could Potentially Rip The U.S. Economy To Shreds) 現在、米国で売買されている住宅の25%が、抵当処分された物件だ。カリフォルニアなど州によっては売買住宅の4割以上が抵当物件だ。今回の問題の顕在化によって、抵当処分が事後的に裁判所で無効と判決されるケースが増え、抵当物件の住宅を買った人々が、あとで購入を無効とされてしまうかもしれない事態となっている。これでは、恐くて抵当物件の住宅を購入できない。権原保険をかけることが再び奨励されているが、住宅の売れゆきが悪化しそうだ。(Title insurance vital if you bought a foreclosed home) 半面、ローン返済が滞り、銀行から抵当処分をかけられている債務者は、うまく裁判をすれば債務不存在の判決を勝ち取れる状況になっている。抵当権をめぐる米国のシステムが根本的に崩壊し始めている。/FONT>銀行やMERSが不正を行っているという批判や債務者からの反訴が急増しそうな中、このまま抵当処分を続けることができないと判断した銀行界は、10月に入り、バンカメやJPモルガンが、自主的に抵当処分の申請を当分見合わせることを相次いで決定した。(2010 United States foreclosure crisis From Wikipedia) ▼不動産担保債券の全体がインチキ商品? 抵当処分は、住宅の競売(もしくはショートセールの安値売り)が必要で、買い叩かれて住宅相場を引き下げる効果を持つ。銀行界が抵当処分を自主的に停止したので、金融危機再燃の引き金を引きそうな米国の住宅相場の下落が止まるという見方もできる。だが、もっと巨視的に見ると、一時的にではなく構造的に住宅相場が下げ止まるには、むしろどんどん競売が行われて相場が続落し、安値感が出て人々が住宅を買いたくなる値段になって需要が復活することが必要だ。抵当処分の自主的な停止は、米住宅市場復活の根本的な解決策を先延ばししているにすぎない。抵当処分が再開されると、延命していた分の揺れ返し的な急落が起きる。(Bank Balance Sheets 'Full of Rotten Stuff': Jim Rogers) しかも、今回のフォークロージャー・ゲートによって、不動産担保債券(MBS)に「債権と抵当のひも付けが起債時に行われていない」という構造的な欠陥(違法性)があることが広く露呈し、MBSは債券の設計そのものに欠陥がある不良品なのだから、起債した銀行界が買い戻すべきだ、と欧米の機関投資家が言い出す流れになっている。MBSを起債した銀行の元担当者が、自分たちが設計した債券の安全性について理解していなかったと告白する内部告発も出てきた。(Whistleblower Speaks On Fraudclosure) 特にバンカメ(注記A)については、一つの住宅ローン債権が複数の債券(MBS)の担保として重複して利用されているケースも暴露され始めている。これが事実なら金融犯罪だ。バンカメは近年の金融危機の過程で、カントリーワイドなど住宅ローン専門金融機関を買収したが、それらの債権の中に犯罪的なものが混じっているようだ。バンカメはすでに、投資家から合計470億ドル分のMBSの払い戻しを要求されている。(Guest Post: Mortgages Were Pledged to Multiple Buyers at the Same Time)(US investors pressure Bank of America) 爆弾案件はシティグループにもある。シティが起債したローン債券のうち、06年分の60%、07年分の80%が、当初から不十分な価値の担保しかついていない不良品だったと報じられている。シティは今後、これらの不良商品の払い戻しを投資家に請求されるだろう。(80% of Citi Mortgages Defective) 「ローン債券化」のビジネスモデル自体が巨大な「ねずみ講」だったのだという指摘も発せられている。MBSはリスクの大小で債券をいくつもの格付けに分割する「トレンチ」の概念を使ってジャンク債を最優良債券に見せかけるインチキ商品だとも指摘されている。(FORECLOSUREGATE By Ellen Brown) 銀行は、ローン債務者から債務不存在を主張され、債券購入した投資家からは不良品だから買い戻してくれと言われ、州当局からは抵当処分の合法性を疑われて捜査され、四面楚歌になっている。米銀行界は来年にかけて、巨額損失を抱えかねない危機に見舞われそうだ。債券金融システムは総額20兆ドルで、その何分の一かを買い戻しさせられただけで、米国の大銀行のいくつかが吹き飛びかねない。(Wall Street, White House Blame Homeowners in Foreclosure Crisis) MBSを起債した米大手銀行は、債券のリスクの元となる住宅ローン債務者の信用性(完済できる確率)について、何も調べなかったわけではない。各銀行は、クレイトン・ホールディングスという調査会社に、債務者の信用性のサンプリング調査を個別に依頼し、完済できる確率が意外と低いことを起債時に把握していた。だが各銀行は、この調査結果を債券の買い手となった投資家に知らせず、結果的に投資家は債券の下落で大損した。最近になって投資家たちは、この件を告知義務違反と主張し、銀行を相手に損害賠償を起こす構えを見せている。この件は抵当処分と関係ないので、フォークロージャー・ゲートとは別件だが、銀行にとって巨大なリスクになっていきそうだ。(The enormous mortgage-bond scandal) ▼大した話でないとうそぶくマスコミ 米国の住宅ローンと不動産担保債券(MBS)が抱えるこれらの問題は、07年夏にサブプライム住宅ローン危機が起きる前後から指摘されていた。しかし、銀行界の世論操作の影響下にある米国の主要マスコミでは、これらの問題を、ごく一部の状況下で起きた限定的かつ技術的な問題として報じる傾向が強かった。「サブプライムという、もともとリスクの高い、全体のごく一部の住宅ローンの分野が問題を起こしているだけだ」という報道も多かった。しかし、サブプライム問題は、不動産担保融資や債券市場全体の問題へとふくらんでいき、08年秋の決定的なリーマンブラザース倒産、そして最近のドル崩壊過程へとつながり、世界不況と米経済覇権の衰退を引き起こしている。(▼住宅ローン債券の抵当権を使えない金融機関)→2007.12.04 田中宇ブログ 今また、米国のマスコミでは「フォークロージャー危機は、ごく一部のローンをめぐる手続き上の間違いでしかなく、金融界にとっての損失は限定的だ」という報道が目立つ。しかし、これはおそらく、サブプライムの時と同じ手口の歪曲報道である。「大したことない」とうそぶく懲りない報道がある一方で、FT紙は「フォークロージャー危機は、オバマ政権の最大の課題となりつつある」と書いている。(Sorry Folks, The Put-Back Apocalypse Ain't Gonna Happen)(Foreclosure crisis tops Obama agenda) 今回のフォークロージャー・ゲートは「住宅市場におけるエンロン事件だ」と言われている。エンロン事件は、2001年に米国で起きた、エネルギー市場の自由化の過程を崩壊させた不正経理スキャンダルだ。エンロンは、電力ガスを電力会社などの企業が売買できる民間のスポット市場を運営する会社で、米国の経済自由化・民営化の象徴として一時もてはやされていたが、不正な仕掛けが暴露されて潰れた。同時に、米国エネルギー市場の自由化もそれで終わった。(Will Bankers go to Jail for Foreclosure-gate?) フォークロージャー・ゲートも、エンロン事件と同様、経済自由化によって作られて高成長した米国の市場原理システムを、システムごと破壊しかねない。今の米経済は、消費や生産という実体経済が回復しないまま、債券金融(影の銀行システム)が債券発行によって作り続ける巨額資金が、株式などの金融市場をうるおし、株価などの経済指標を実態より良く見せることで、あたかも米経済が回復しているかのような幻想を人々に振りまいている。債券金融のシステムが壊れると、米経済は破綻した「地の部分」が見えてしまう。(Junk Bonds Are Back on Top) フォークロージャー・ゲートは、まさにこの債券金融システムの崩壊を引き起こしかねない。このシステムは16兆ドルの規模を持ち、既存の預金金融システム(13兆ドル規模)より大きい。それが崩壊したら、米連銀が始めそうな自滅的な量的緩和の再開(QE2)と相まって、米国の金融とドルと国債が破綻に向かい、世界経済にも大変な悪影響をもたらし、米国覇権の中枢に位置する「ニューヨーク資本家層」の破綻に結びつく。この危機がどこまで発展するかわからないが、私にとっては、すでに最重要の国際ニュース案件となっている。(◆影の銀行システムの行方)→2010.07.19 田中宇ブログ (注記@) フォークロージャー foreclosure 《法律》(抵当権・質権の)差し押さえ. (注記A) バンカメ Bank of America = ‘Bankame’ 通称バンカメ アメリカ合衆国、ノースカロライナ州のシャーロット市に本社を置く銀行で、 1998年 - ネーションズバンク社とバンク・アメリカ社の合併によって誕生した。 2009年1月1日、メリルリンチをグループ傘下におさめ、2600の支店がある アメリカ最大の民間金融機関となった。 (注記B) 各文節最後の青字部分について 例→ (Junk Bonds Are Back on Top) http://tanakanews.com/index.html ‘田中宇の「国際ニュース解説」’を開いて、 「田中宇プラス」(購読料は6カ月で3000円)に加入しますと、ニュース源として アクセスできます。 |
10 25 (月) 「2010 金価格分析」 |
【グラフ目盛り】 横軸 2002/1 2004/1 2006/1 2008/1 2010/1 (年/月) 縦軸上 200 400 600 800 1000 1200 1400 (1トロイオンス当りドル) 縦軸下 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 (1グラム当り円) 2010 金価格分析 7月改訂版 NY金は史上最高値更新!! 国内金は27年ぶりの高値更新!! 国際金価格は史上最高値を更新するなど、世界的に大きく注目される実物資産「金」。この金価格について様々な角度から分析した一冊。 世界的に信頼性の高い金の調査機関GFMS社発表による金の最新需要・供給データに加え、投機マネーの動向、世界の金ETF残高、国際情勢や基軸通貨ドルの動向、金融不安の影響など、幅広い角度から分析・検証しています。 今後の金価格の動向を探る上で市販の書籍等では得ることのできない、当社オリジナルレポートです。 【監修】 園田 征次(貴金属アナリスト) 【作成】 第一商品株式会社 企画部 (2010年7月版 A4版 72ページ 非売品) 金価格分析 目次 “まさか”に備える、実物資産「金」 1.金が買われた理由 (1)ドル一極支配の終焉 (2)インフレの脅威 (3)金市場の構造変化 (4)公的売却の大幅減少 (5)「有事の金」は生きている (6)新興国の経済成長と中国の金需要 (7)ギリシャ発、欧州「ソブリン・リスク」の顕在化 2.マネタリーインフレによる通貨価値暴落 3.主要通貨建て金価格 ? 4.日本の財政破綻とハイパーインフレ 5.消費税率上昇で金需要増加 6.ファンド資金の動向 7.為替と金相場 8. 金の需給動向 9. 金価格39年間の足取り(金価格長期グラフ) 10.白金(プラチナ) 11.パラジウム 12.銀 13.貴金属価格データ |
世界経済は、2007 年の米国サブプライム問題以来、揺らぎ続けています。 2008 年にはリーマン・ショックを初めとする欧米の大手金融機関の破綻が相次ぎ、2009 年には米大手自動車会社の破綻やドバイ・ショック、2010 年に入るとギリシャ・ショックに端を発したソブリン・ショックと、世界経済を震撼させる信用不安が続発しています。 これら一連の“ショック”を乗り切るため、日米欧の各国金融当局は協調利下げや公的資金注入、そして過去最大級の金融対策を実施し、金融システムの維持に躍起となっています。 それにもかかわらず、ソブリン・ショックによる影響が収まる気配が見えません。 それはギリシャを含めた将来の危機に対処するためにEUとIMFによる基金が創設されたものの、ギリシャに返済能力がないために融資が焦げ付く可能性があること、資金を拠出したユーロ導入国の中に第二、第三のギリシャになりうる国があり、それがさらに世界に広がる懸念があるためです。 米ドルへの不安から 「第二の基軸通貨」 と期待されていたユーロへ資金シフトする動きが出ていましたが、そのユーロにも不安が強まったことで、注目されたのが 「無国籍通貨」 である金でした。 金はそれ自体に価値があり、1971 年のいわゆるニクソン・ショックによって金・為替本位制が廃止となるまで、長らく通貨の信用を裏付ける役割を果たしてきましたが、世界経済の成長とともに膨張してきた貨幣による信用経済に危機が訪れたとき、世界がすがる先はラスト・リゾート (最後の避難場所) たる金しかなかったのでしょう。 機関投資家や個人はもちろん、国家までがこぞって金へ大きく資金シフトしました。 金ETF (金価格連動型上場投資信託) 残高は過去最高水準にあり、金貨も一時は生産が追いつかないほどの売れ行きを見せました。 また、経済成長著しい中国やインド、ロシアなどの新興国が金保有量を増加させています。 今後、信用不安がどのような展開となるかはわかりませんが、“まさか”に備える動きは急速に広がっています。 日本の公的債務残高はギリシャを上回る約 190% (GDP比) まで膨れ上がっており、ギリシャ・ショックは 「対岸の火事」 ではありません。 日本人こそ、備えなければならないのです。 “まさか” が起こったときには手遅れなのですから。 2010年7月 第一商品株式会社 企画部 |
2001 年 9 月 11 日 の米国同時多発テロ発生以後、米国を中心とした信用経済の不安が高まる中、「実質資産・金」への注目が加速、ドル建て金価格はこの 10 年間で 4 倍以上に、円建て価格も 3 倍以上に暴騰した。 その理由は以下の 7 つである。 @ ドル一極支配の終焉 サブプライムローン問題をきっかけとした米国発の世界的な金融危機発生でドルへの不安が拡大し、膨張した投資マネーはドルをはじめとする通貨から独立した受け皿を求めた。 A インフレの脅威 原油のみならず、穀物や非鉄金属などのいわゆる資源価格が上昇し、インフレの脅威が身近になってきた。 ペーパー資産である株や債権、ひいては通貨でさえも資産を守ることが困難な時代になってきた。 B 金市場の構造変化 金地金を証券化した金ETFの登場によって、年金基金をはじめとする機関投資家の金投資が容易になった。 金融不安を背景に、金ETF残高は市場最高水準を更新し続けている。 C 公的売却の大幅減少 90 年代には金利がつかず、価格も低迷していたため資産ポートフォリオの観点から各国中央銀行は保有金の売却を進めてきたが、99 年 9 月に売却量を制限するワシントン合意がなされた後は、金融危機の影響もあり、逆に購入する国が増えている。 D 「有事の金」は生きている 戦争や大インフレ時に価格上昇してきたが、冷戦終結後にはその役割もなくなったと見られていた。 ところが、2001 年 9 月の米国同時テロ発生によって見直され、また近年は金融危機などの経済有事発生の際も、 「無国籍通貨」 としての役割から上昇している。 E 新興国の経済成長と中国の金需要 経済成長とともに外貨準備高が急増し、大半を占めるドル資産への不安から、その一部を金に換える分散投資の動きが広がっている。 F ギリシャ発、欧州「ソブリン・リスク」の顕在化 ギリシャ・ショックに端を発した国家の財務リスクへの備えとして、 「無国籍通貨」 である金が安全資産として買われている。 日本円を除く主要国通貨建ての金価格が市場最高値を更新していることからも、この流れの大きいことがわかる。 ソブリン・リスク(Sovereign Risk) ソブリンリスクとは、外国の政府や中央銀行、外国地方公共団体といった事実上の外国国家に対する融資におけるリスク。 カントリーリスクと同義で使われることもある言葉だが、厳密に区分するならば、ソブリンリスクは特に国家への融資に関するリスクに限定されている。 ETFとは? ETFなら初心者の方でも手軽に株式投資ができます 投資初心者にも取引しやすい金融商品の中にETFがあります。ETFとはExchange Traded Fundsの頭文字をとった略語で、株価指数に連動する型の上場投資信託のことを指します。日本であれば日経平均連動型やTOPIX連動型が主流です。 なぜ初心者にも取引しやすいかと言えば、個別銘柄を選ぶ(研究する)ことなく、日本株全体に対して投資ができるからです。極端に言えば、日本株が上がるか下がるかだけ気にしていればよく、個別銘柄の動きは気にしなくてもよくなります。むろん、個別銘柄特有のダイナミックな動きはない一方で、指数に連動しますので、値動きも比較的マイルドです。また、一般的な投信よりも手数料が安く、リアルタイムで取引が可能なことも利点です。 ちなみに、日本ではまだまだETFの数が少ないですが、米国の証券取引所には約700種もの多様なETF銘柄が存在しています。それらは各国や地域の株式市場に連動したものから、金融、不動産、電機、環境など細かなセクターに投資するもの、さらに債権、商品、通貨にいたるまでほぼ全投資商品をカバーしています。例えば米国人も上海や深センの中国本土A、B株には投資できませんが、それらをまとめて直接投資したETFもあり、09年は年初から中国本土株の好調さに合わせて好調です。またショートETFと言って、対象投資資産が値下がりするほどETF価格が上昇するものも多数あり、加えてそれにレバレッジの掛かったタイプも数多く存在します。 残念なのは米国株のETFでも日本では数十種類しか扱っておらず、特にショートETFに関しては日本では取扱いがありません。これはベアマーケットでは投資機会が大きく減ることになってしまいます。今後の日本市場での新しいETFの登場や米国株ETFの取り扱い数増加に期待したいところです。 金ETF残高って何? ETFには、信用取引と言う売買方法があり、その取引によって生じた残高には『買い残』と『売り残』があります。その二つをまとめたものを『信用取引残高』と言い、『ETF信用残』とか、『ETF残高』と言ったりもします。 『ETF残高』の内の『買い残』とは、信用取引において信用買いをして、まだその資金を返済していない状態のETFの数(又は金額)のことを指します。そして、この信用買いをした分は6ヶ月以内に売らなければなりません。 このETF買い残は「将来価格が上昇する」と予想している投資家がいて、将来的に「売り決済」が行われることを意味しています。つまり、ETFの買い残が多いと言うことは、将来的(6ヶ月以内)にその数量分のETFの「売り」が発生すると言うことになります。 『ETF残高』の内の『売り残』とは、信用取引において、信用売りをしてまだその分を返却していない状態のETFの数(又は金額)のことを指します。そして、この信用売りをした分は6ヶ月以内に買い戻さなければなりません。 信用売り残は「将来価格が下降する」と判断している投資家がいて、将来的に「買い決済」が行われることを意味します。つまりETFの売り残が多いという事は、将来的(6ヶ月以内)にその数量分のETFの「買い」が発生すると言うことになります。 ETF残高で何が分かるかと言うと、ETFの買い残が多ければ、買い取引を行ってから6ヶ月以内に売りが多くなると考えられ、そのため価格は上昇しにくいと考えられます。そして、ETFの売り残が多ければ、売る取引を行ってから6ヶ月以内に買いが多くなると考えられるため、価格が上昇しやすい状態だと考えることがでます。 ETF残高は、ETFの需給関係を計るために重要であり、価格の動向にも影響があります。 ポートフォリオとは? 「ポートフォリオ運用」の考えかたで特徴的なのは、「分散して投資する」ということです。つまり、資産をすべて同じ種類の金融商品で運用するのではなく、複数の金融商品に分散して長期的な資産運用を行う、というのが基本的な考えかたです。資産運用には「安全性」「流動性」「収益性」においてバランスをとる必要があります。これらの点で異なる性格を持つ商品にわけて投資をするのが基本です。 |