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折々の記 2010 F

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】10/01〜     【 02 】10/05〜     【 03 】10/11〜
【 04 】10/22〜     【 05 】11/09〜     【 06 】11/17〜
【 07 】11/30〜     【 08 】12/08〜     【 09 】12/10〜

【 05 】11/09

  11 09 優の中学時代最後の表彰作品
  11 10 砂絵…世界遺産バヌアツの砂絵
  11 12 松本深志岳風会会長山田岳也(裕也)
  11 14 三州街道沿い「かっぱ寿司」で会食
  11 15 田中宇の国際ニュース解説(10 01 05〜10 11 14) 関心を惹くタイトルがずらり

 11 09 (火) 優の中学時代最後の表彰作品

 きのう柿剥きの最中だったが、今年の郡展が飯田東中学校で行なわれていたので優の絵の作品を見に行きました。



 ・「花やみどりのある絵」中央入選作品
 ・平成22年度 第36回「花やみどりのある絵」
 ・喬木村立喬木中学校3学年
 ・地区(下伊那)題名 教室から見える風景
 ・氏名 下平 優

優は絵を描き始めたときから左手を使うようになっていた。 右手でも描いていたのだろうが、落ちついたのは左手になっていた。

2003年 01 20(月) 内孫の優の絵の展示見学 ●天までとどいたあさがお  (この日の老生の日記)


 涼羽の誕生祝を終えて、翌日長野市の信濃教育会館で行なわれている「花やみどりのある絵」を見学した。 優の絵が入選して展示してあるからである。

 運動会では「かけっこ」の選手、プールでの競泳は驚くばかりの力泳ぶり、それに今回は絵の入選、嬉しい限りである。

 左利きなので、みているといじらしい思いがしたんだが、線引きとか文字さえもちゃんと書けれるようになったんで、嬉しかったのだが、今度の入選は決定的なものだった。


“天までとどいたあさがお” は「ジャックと豆の木」と同じような構想による絵で、描いたのは小学二年生まだ七歳のときの作品でした。

二人の内孫は‘ピアノ教室’や‘水泳教室’参加など考えてみると、共に集中力と粘り強い根性をそなえていました。 これは後々いい結果として現われてくるはずです。 有名人にならなくてもいい。 ちやほやされなくてもいい。 恥しくない心ばえをそなえた、女性のなかの女性になってほしい。 二人の孫たちはきっとそうなってくれるものと思っています。

家内の妹(竹花愛子)の義理の妹(佐々木治子)が家に来たとき、優が左利きで絵を描いていたのを見、そのうまさに驚いてその絵を所望しました。 老生は孫の大事な絵を丸けたり画用紙を折ったりいい加減に扱ってほしくなかったので、額に入れて差し上げることにしました。 松戸へ行ったときその額の絵を持参することを忘れ、その後彼女はガンで亡くなってしまいました。

そんな訳で、当時の絵は額に入れたそのままで老生宅にあります。 優の思い出になる作品の一つです。

 11 10 (水) 砂絵…世界遺産バヌアツの砂絵

11月10日(水)午後10:45〜午後10:50(5分間) 短い時間であったけれど、素敵な人間の知恵=文化に出会い驚きました。

砂絵を調べてみると、<NHK世界遺産100 小学館>で取り上げられていました。 DVD+マガジン50巻で、400の世界遺産を紹介しているといいます。

バヌアツの砂絵は <国 名 :バヌアツ  分 類 :無形遺産  登録年 :2008年  遺産名(英語):Vanuatu Sand Drawings> の登録になっております。

● http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E5%BD%A2%E6%96%87%E5%8C%96%E9%81%BA%E7%94%A3 <無形文化遺産 - Wikipedia>

次のサイトが参考になります。

@ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/vanuatu/ <外務省 バヌアツ共和国>

A http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%8C%E3%82%A2%E3%83%84 <バヌアツ - Wikipedia>

B http://世界地図.biz/020_1/cat235/ <バヌアツ共和国・地図や写真。国旗と緯度経度>

C http://www.accu.or.jp/masterpiece/masterpiece.php?id=77&lg=jp <人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言>

  "バヌアツの砂絵"

解説:
南太平洋上に浮かぶバヌアツ群島は、シドニーの北東約2千キロの地点にあります。バヌアツでは、複雑で独特な砂絵の伝統が今もなお保存されています。バヌアツの砂絵は、原住民の芸術表現であるに留まらず、儀式や瞑想から通信・伝達に至るまで、実に多様な状況において多機能を果たす「文字」でもあります。

砂絵は、熟達者によって砂や火山灰、粘土といった地面の上に直接に描かれます。目に見えない升目の上に、1本の指で入り組んだ形の連続線が描かれると、時に左右対称的な、幾何学模様の優雅な構図が完成してゆきます。群島の中部および北部の諸島には、それぞれ固有の言語を用いる約80の部族が住んでいますが、この豊かでダイナミックな図像は、これらの部族が通信し合うための手段として発達しました。また、儀式や神話の知識、島の歴史や宇宙観、親族構造、詩群、農業技術、建築術、職人の技法、舞踏の振り付けといった、さまざまな知識を記録し、継承するための手段としても用いられています。大部分の砂絵は複数の機能を果たしており、重層的な意味を担っています。それゆえに、砂絵は複数の仕方で「解釈する」ことが可能であり、それは、芸術作品であり、情報源であり、物語の挿し絵であり、署名であり、あるいは単なる瞑想のメッセージまたは対象でもあり得ます。砂絵は単なる「絵画」ではなく、詩歌や物語、神俗両方の意味を含んだ知識と相互につながり合った繊細な網の目であるため、砂絵の熟達者には、模様の熟知だけでなく、模様が担う意味を深く理解していることが要求されます。それだけでなく、見る人に対して砂絵を解釈してみせることができなければなりません。

消滅の危機:
砂絵はつかの間の存在であり、それだけに、特に脆弱な文化形式となっています。風雨に晒されるこれらの砂絵は、長期間にわたりそのまま保存されることはほとんどありません。最も一般的な砂絵のデザインは、バヌアツの独自性を表す魅力的なシンボルとして、切手や紙幣、広告などに幅広く用いられています。しかし、観光や、その他の商業目的のための、民族的な装飾の一種として紹介されることも多く、特別な配慮がなされない限り、砂絵の審美的な側面のみを評価する、このような傾向が助長され、砂絵のもつ象徴的な意味と、本来の社会的な機能が失われてしまう恐れがあります。このため、上演会や展覧会といった、一般向けの催しを通じて、砂絵の熟達者の技術の伝統が奨励される予定です。砂絵について、とりわけ特定の学習分野(例えば歴史や地理)に関わる砂絵について、学校教育において研究する機会を設けるとともに、視覚芸術や芸能の教育課程でも砂絵を扱うことが予定されています。

D http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/card/cards777.html <NHK世界遺産 世界遺産ライブラリー [バヌアツの砂絵]>

  [バヌアツの砂絵]

南太平洋上、80もの島々からなる国・バヌアツでは、それぞれの島に独自の言葉や文化があります。共通語のビスラマ語が出来る以前、異なる島同士の会話には、砂に描く絵が使われてきました。その砂絵が世界無形遺産になっています。 「シリーズ世界遺産100」では芸術でもあり、独自の伝達手段でもあるバヌアツの砂絵の魅力をご紹介します。砂絵は指一本で描く幾何学模様。部分ごとに意味を持ち、その組み合わせでさまざまなメッセージを伝えます。物語の要素も含まれ、その意味を深く理解している人ほど尊敬されます。番組では砂絵名人のヒンジさんが、愛の象徴や、村で葬式があることを知らせる絵などを描いていますが、そのなめらかな指の動きと美しい幾何学模様は圧巻です。砂絵は、神話やしきたり、暮らしの知恵、さらには民族の歴史を代々伝承するのにも使われてきました。その種類は数百に及ぶといいます。しかし、近代文明が流入し言語教育が普及するにつれ、砂絵を描ける人は急減しています。ヒンジさんは、子どもたちに砂絵を教え、民族の伝統や誇りを伝えようという取り組みを続けています。

●人の知恵というものはすごい結果を生み出すものだと思います。 バヌアツの砂絵の描き方を教えてくれる本が出ることを願っています。 

 11 12 (金) 松本深志岳風会会長山田岳也(裕也)

暫くぶりの電話でした。 聖徳太子十七条憲法第一条の以和為貴についてのことで、岳風会への新年挨拶の寄稿原稿についてのことでした。

温厚篤実のイメージをもった沈着冷静な人柄でした。 長年のお勤めをやめて余暇をどのように送られていたか殆ど知らずにいました。 ところが電話からの様子では松本平一円と木曽谷をあわせた広範囲の岳風会の会長を務めているということでした。 驚きとともに嬉しさがこみ上げてきました。

茂という誠実なお父さんの性を受け継いでいたことは解かっていたのだが、人が持っている本来の性というものは時を経てもどこかに姿かたちは異なるけれども必ず現われてくるものなんです。 年老いてこうした因果の実質を感ずるようになりました。

ともあれ送ってくれたテープを何回も聴きました。 青年師範の長野地区の同級生が、50過ぎての会席でしたが朗々と詩を吟じてくれたことがあり、ウゥ〜ン、うまいもんだと吃驚したものでした。 テープから流れてくる吟を耳にしていると、それにもまして彼らしい静けさの中の気迫、力強さを感ずることができ、「快哉」の情にどっぷりひたりました。 ありがとうございました。 ありがとうございました !!

「和を以って貴しと為す」 それは彼そのものの表現だと思います。

 テープの詩

    不識庵機山を撃つの図に題す     頼山陽

  鞭声粛々夜河を渡る
  暁に見る千兵の大牙を擁するを
  遺恨なり十年一剣を磨き
  流星光底長蛇を逸す

    道灌蓑を借るの図に題す     太田道灌

  孤鞍雨を衝いて茅茨を叩く
  少女爲に遺る花一枝
  少女は言わず花語らず
  英雄の心緒亂れて絲の如し

    結婚祝いの詩      木村岳風

  良縁成立して神明に誓い 
  結び得たり偕老(かいろう)同穴の盟(ちぎり)
  親戚朋友心を罩(こ)めて祝い 
  また祈る隆隆たる家運の栄を
  相励まし相援(たす)けて苦楽を共にし 
  忘るる莫れ此の日此の時の情

  みづうみの氷は解けてなほ寒し 三日月の影波にうつろふ     島木 赤彦

島木 赤彦(しまきあかひこ)
赤彦は明治 9年(1876)長野県上諏訪町(諏訪市)に生まれ、久保田家の養子となる。 長野師範学校を卒業 して、地元で長く教員生活を送る。 その後「根岸派」の歌人と して伊藤左千夫に師事 した。 大正3年(1912)上京 して「アララギ」の編集に専念し、以降 「斉藤茂吉」と共に、その中心的存在として、大正歌壇の支配的位置を確立 していった。
[諏訪湖の氷は解けたが寒さは厳しい。冴えた三日月が日暮れの湖に影を映している] 
大自然の[諏訪湖] がもつ、不思議で「幽遠」な、厳しくも静かで寂しい姿でもあり、また人生の姿でもあった。 赤彦は自然を写生 して、その窮極には人生の寂寥に澄み入ろうとする立場があり、そのために厳 しい鍛錬道を説いた歌人として知られている。 そして大正15年(1926)春3月、諏訪湖を眼下に見渡せる自宅で死去。享年49歳であった。

  やは肌のあつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君   与謝野晶子

与謝野晶子(よさのあきこ)
晶子(1878〜1942)は、大阪・堺の和菓子商の老舗に生まれた。 女学校を卒業後、店番をしながら「源氏物語」などを愛読、二十歳頃から短歌を作り始めた。 明治33年(1900)与謝野鉄幹が「明星」 を創刊、これに加わり、翌年上京、歌集「みだれ髪」を処女出版した。 大胆奔放な歌で一世を風靡、第一人者となり、同年鉄幹と結婚をした。
[道学の先生達よ、女 の熱愛に触れることもしない感情の没却は寂しくありませんか]
明治30年代といえども、社会は、まだ男尊女卑による封建制度と、儒教精神が根強く生きていた。 その中で、女性の肉体と情熱を誇示し、旧道徳 を説く世俗に対する激しい自己主張の叫びが溢れ、特に若い女性であるだけに、その衝撃は強烈であった。 晶子の数ある短歌の中でも、これぞ一番 として知られる[鎌倉大仏]を詠んだ一首は一度は口にしたことが・・・
“鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな”

  白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかりけり   若山牧水

    しらたまの=真珠の古称 ここでは「歯」を修飾する清冽なイメージがある

若山牧水
牧水はお酒が大好きでした。 旅先では、地元のお酒を探して飲んでいました。 みんなで楽しく飲むこともありましたが、一人で静かに飲むお酒が好きでした。 しかし、あまりにも飲みすぎて、肝臓が悪くなり、昭和三年九月十七日、四十三歳という若さで亡くなります。 牧水は約三百のお酒の短歌を作りました。 お酒を飲まない人からも人気があります。

     楓橋夜泊     張 継

   月落ち烏啼ないて霜天に満つ
  江楓漁火 愁眠に対す
  姑蘇城外の寒山寺
  夜半の鐘声客船に到る


張 継ちょうけい
【張 継】(756年頃)
中国唐時代の詩人。 湖北省、襄陽県の人。政治にも明るくかつて郡を治めたとき、その政治手腕は素晴らしかったといわれている。  また、張継の詩文は彫琢を施さなくても、自然に修辞の美がそなわったという。
【解 説】
船旅の途中楓橋のあたりで、夜となり船中に泊まったときの旅愁を詠った詩である。 「江楓」を「江村」となっている本もあるが、これは兪越ゆえつ(1821〜1906)の説からきている。 しかし、この詩には「江楓」の方が良いとの説が多く、こちらをとる。 中国では船で旅をすることが多くそのときの、旅情、感慨を詠った詩が多い。
【鑑 賞】
この詩は、これまでいろいろ議論されたことでも有名である。 詩としても、ゆったりとした旅愁を感じさせ、絶唱として、吟詠家の間でもよく吟じられている。 私も何度も吟じたことがあるが、第三句は“姑蘇城城外の寒山寺”と助詞の「の」を入れて読むと吟じやすく、それが慣例となっているようだ。 起句、月が沈んで寒々とした秋の夜空に烏が鳴いている。 晩秋の旅愁をかもし出している雰囲気だ。 承句、旅愁の眠れぬ目に映るのは、岸の楓の葉と、赤く燃えるいさり火とである。 この詩のポイントは、ここにある。「江楓」と「魚火」の組み 合わせであり、薄暗い川面に浮ぶあかりと、その明かりに映し出される楓の葉の情景である。 従ってここを「江村」とすると、趣が変わってしまう。 この明るさは、はっきり見える明るさではなく、チラチラする魚火に照らされるので、なんとも言えないほのかな旅愁をそそる。  前半、起・承句は、月、霜、楓、火と視覚を詠じ、後半の、転・結句は鐘の声、聴覚を詠じている。 張継はこの詩一つで有名を馳せ、この詩が「楓橋」の橋を有名にしその後多くの詩人が、この地を訪れるようになったのである。

     海 南 行      細川 頼之

   人生五十 功無きを愧ず
  花木春過ぎて夏已に中なり
  満室の蒼蝿掃えども去り難し
  起って禅榻を尋ねて清風に臥せん


細川 頼之ほそかわよりゆき
【語 釈】
★海南行=海南は讃岐。行は詩の意。 海南の地へ赴く意。 ★花木=花や木。 ★夏已中=初夏・五月。 ★蒼蝿=青ばえ。ここでは、うるさい 小人のこと。 ★禅榻=禅家の長椅子で、座禅に 用いる。
【通 釈】
 「人生五十年」という。 自分はもうその年を過ぎたのに、これといった功績も無く、恥ずかしいばかりである。 花や木も春の季節を過ぎて、夏の半ばにさしかかっている。 うるさい蝿がやって来て、いくら追っ払っても又やって来る。 仕方がないから、起ちあがって、部屋を出て座禅椅子でもさがし、清らかな風に吹かれて横になるとしようか。
【鑑 賞】
政権を離れ讃岐へ帰るにあたり、頼之が感慨を詠ったものである。 自分の努力は報われず、ただ恥じいっている心境がよく表れている。
「愧ず」は謙遜してではなく、本当に慙愧に絶えない思いを述べている。 花木は自分の人生の喩えもあり、活躍していた頃の追憶を差し、その盛りの過ぎたのを「夏すでに中ば」といって、旅立ちの季節と重なりいっそう実感がわいてくる。
 転句では、うるさくつきまとう小者を蝿に喩えている。 結句では、禅道にはいったことを、禅榻に喩えるなど、この詩は、比喩をうまく活用しているところに素晴らしさがある。
 頼之は武人でありながらも、杜甫を学び、詩に対する造詣も深かった。 「野史」(飯田忠彦)にも「頼之嘗て禅を好み、暇あれば則ち杜少陵読み、能く記憶す」とある。
禅榻(ぜんとう)とは、世俗との交渉を絶って禅門清浄な地に身を置くこと。
【細川頼之】(1329-1392)
讃岐高松の城主で足利三代に仕えた名執権職で、後の熊本藩主細川候の祖先である。 尊氏・義詮・義満の中でも三代義満をして名将軍と称されるに至っては頼之(よりゆき)の教育の偉大な力があったという。
南北朝時代の武将で、今の愛知県に生まれた。 人となりは、穏やかで、誠実、つつしみ深く人情に厚かった。 文武の道にすぐれ、足利三代の将軍に仕え、又南北朝を合一するに尽力するなど、多くの功績を残している。 頼之は読書を好み、和歌を詠み、又禅を収め、更に尊氏に従って転戦し、山陽一帯をしずめた。 将軍義詮(よしのり)に背いた細川清氏を讃岐の白峰城に攻め亡ぼし、四国を平定した。 義詮は病床より、讃岐に居た頼之を呼び寄せ、幼少のわが子義満を補佐するよう命じた。 義詮は没するにあたり、義満に「吾汝に一父を残す、その教えに違うなかれ」と言い置いている。 義満は頼之の忠言、切諫を無視したため、頼之は職を辞し、髪をそって名を常久と改め、讃岐に帰ったが、義満は反省し頼之の功を思い再び国政にさせている。 山名氏清が京都を攻めた時、義満の参謀として戦い、鎮圧した。 享年六十四才。 義満は自ら柩を送り、鹿苑院に冥福を祈り、法華経を書写して供養したという。 頼之は当時の武将中、郡を抜いた名将として歴史に特筆されている。
【解 説】
義満長ずるに従い近臣の若侍の言を好み頼之の言をうとんずるに至る。よって一先ずおひまを願い出て国元で静養しようと許しを得て高松へ帰る時の作
細川頼之が晩年、四国の讃岐へ帰るにあたり、感慨をこめて詠ったもの。 人間は誰しも志を達することは難しいものである。 頼之も志を達せず功績がなかったと、恥じているが、謙虚な人柄が感じられる。

     泉岳寺     坂井虎山

  山嶽崩すべし海翻えすべし
  消せず四十七臣の魂
  墳然 満地草苔湿う
  尽く是れ行人流涕の痕

◎詩文解釈
 この詩は、元禄十五年十二月の義士討ち入り事件から約百三十年後に、当時(天保年間)江戸滞在中の儒者坂井虎山(一七九八〜一八五〇)が泉岳寺に詣でて詠んだものである。
 詩文の内容は『世の中で、突然山が崩れて消え去ったり、広々とした海がひっくり返って空から海水が降ってくるような天変地異が起こったとしても、赤穂藩の忠臣四十七士の魂がこの世から消滅することはないだろう。泉岳寺の義士の墓前一帯の草や苔がしっとりと湿っているのも、それは墓參の人達が流した涙のためであろう』と云うもの。
 詩文では討ち入りの事件そのものには一切ふれてないが、この壮挙を周知のこととして、前半は力強い口調で事件を暗示し、後半は義士に対する作者の心情を述べたものである。

△ 付記
   木村岳風 明治三十二(1899)〜昭和二十七(1952) 本名・松木利次 長野県諏訪出身 日本詩吟学院創設者

以上、山田岳也(裕也)から送付されたテープ


※ 調べているうちに、心を寄せていた「寂しさの極みに堪へて」の歌人伊藤左千夫の歌が出ており、心にとどめるために書き残しておきます。

  おりたちて今朝の寒さを驚きぬ 露しとしとと柿の落葉深く     伊藤左千夫

伊藤左千夫(いとうさちお)
左千夫(1864〜1913)は千葉県・成東町に生まれる。 17歳で上京、25歳で当時、本所区茅場町(現在のJR 錦糸町駅南側)で牧場を経営。 生活が安定した頃から短歌を好み、明治33年(1900)に「正岡子規」を訪問以来、その「短歌革新論」に心服。 「根岸短歌会」の主要な一員になった。 この歌は大正元年(1912)自宅の庭の情景。 左千夫死の前年の作である。
 [庭に下りて今朝の寒さを肌に感じた。 しっとりと 露に濡れた柿の落葉が深く散り敷いている]
秋から冬へと自然が見せる凋落に、作者の深い「寂寥感」を暗示し、晩年の傑作といわれる。 左千夫の歌は、写実的歌風を主観的、体験的に深め、声調が豊で叙情性に富むと評される。 なお小説家としても30篇近い作品を遺して、特に[野菊の墓]は「夏目漱石」から賞讃された。

  寂しさの極みに堪へて天地に寄する命をつくづくと思ふ     伊藤左千夫

    http://www.aozora.gr.jp/cards/001059/files/5076_39442.html斎藤茂吉 『さびし』の伝統

 11 14 (日) 三州街道沿い「かっぱ寿司」で会食

きのう涼羽父子がやってきた。 柿剥きも終わったので俊成家族四人と回転寿司(かっぱ寿司=Googleで場所が明示されている)で会食しました。 それぞれの孫がすくすく伸びているから老夫妻にとっては若やいだ喜びとなります。

今年の柿の収穫は夏の暑さのせいで例年の収量の三分の二位しかありません。 どこの家でも収穫量は少なくなっていた様子です。 地球環境は目に見えて悪化の一途を辿るようになっているのに、まだまだ国益感情に左右されている人々が多く、破滅への転落は重要意識ともならず、良民を苦しみにさらしたままでいます。

人の社会の変化とは別に、生命体は未来を夢見て若々しく成長しつづけています。

 11 15 (月) 田中宇の国際ニュース解説(10 01 05〜10 11 14) 関心を惹くタイトルがずらり

シュトゥルム・ウント・ドラング(独:Sturm und Drang) 本来の意味とは別に「疾風怒濤」の訳語の意味で、若い時代に頭に残っていた熟語があった。 今の世相は Sturm und Drang というようなエネルギーはなく、荒れる海原で羅針盤が故障し漂流する難破船にも似た日本の状況にたとえてもいい。

  どうしたことなのだろうか ???

尖閣諸島の問題は国会の課題として旬日をこえ、いつ果てるともない。 こんなことばかりに関わって私どもの代表は国の将来を議していると思っているのだろうか ??

  漂流する難破船にとっては、どちらへ向いて進むべきか羅針盤を修理し熟考しなければならないはずです !!

  国会議員にしても、マスメデアにしても腹をすえて日本の将来を熟議しなければならないはずです !!


政治家にしてもマスメディア関係の人にしても、田中宇の国際ニュース解説(http://tanakanews.com/index.html)のような国際関係の課題に目を通しているはずだし、そうとすれば、尖閣問題と政治と金だけに関わっているのは馬鹿者の構えとしか言いようがないのです !!

試みに、今年になってからの「田中宇の国際ニュース解説」冒頭部分を次に列挙します。 


田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか
http://tanakanews.com/index.html

フリーの国際情勢解説者田中宇が
独自の視点で世界を斬る時事問題の記事分析
新聞やテレビを見ても分からないニュースの背景を説明します

◆実は大成果を挙げているG20
 【2010年11月14日】 韓国G20サミットは失敗の烙印を押された。しかし、G20の周辺で起きていることを詳細に見ると、実はG20は、国際金融システムの構造を着々と多極型の方向に転換している。G20傘下の財務相会議である「金融安定委員会」(FSB)が、今回のサミットの前後に「債券格付け機関」や、米国の「影の銀行システム」といった、国際金融危機の元凶となっている米英金融覇権の真髄に位置する機構(金融兵器)を骨抜きにする政策で合意したからである。

◆世界を二分する通貨戦争
 【2010年11月9日】 米連銀の量的緩和策第2弾(QE2)によって、世界が「ドルを支持する国々」と「ドルを支持したくない国々」に二分される傾向が一気に高まり「通貨戦争」の状態になった。表向きは戦争ではなくG20で話し合う態勢だから「通貨冷戦」とも言える。この戦いによって最終的にドルは基軸通貨の地位を喪失するだろうから、米国による「ドルの自爆テロ」と呼ぶべきかもしれない。英国紙は、QE2の意味を2種類のキーワードで示した。一つは「ソフトな米国の債務不履行」で、もう一つは「経済のスエズ動乱」である。

◆メドベージェフ北方領土訪問の意味 【中国の台頭に反応する周辺諸国(2)】
 【2010年11月6日】 前原外相率いる日本は、尖閣紛争を誘発して中国と対立することで、日米が結束して中国と対決する構図を作り、中国と米国がG2として結束するのを防ぎ、日米同盟を防衛しようとした。しかし「日米が結束して中国と対決する構図」は、ロシアから見ると、渇望していた「中露が結束して米国と対決する構図」そのものだった。ロシアは、頼まれていないのに、日中対決の喧嘩に割り込んできて、この喧嘩を「中露と日米の対決」に転換させた。ロシア政府は、対決の構図を持続させるほど、中国との結束を深められるので、国後島だけでなく、歯舞・色丹も訪問すると息巻いている。

◇中国の台頭に反応する周辺諸国(1)
 【2010年11月2日】 韓国は、台頭する中国が北朝鮮の利権を韓国から奪って傘下に入れてしまう前に、北との経済関係を再開する必要がある。財界出身の李明博は、そのあたりに敏感だ。それで、天安艦問題の「怒りのポーズ」をやめて「北は中国に学べ」という現状追認の発言を行い、北が経済開放策を進めて中国の傘下に入ることを容認した上で、北における韓国の利権の温存を図る戦略に転換したのだろう。韓国は、一触即発の分断された国家であるだけに、島国で天然の安定を持つ日本より、世界の動向に敏感だ。米国の傀儡国として作られただけに対米従属性も強いが、韓国政府は、覇権体制の劇的な転換を機敏に感じ取り、対米従属と自国の国益とのバランスを再調整し続けている。

◆破綻へと迷走するドル
 【2010年10月31日】 米国のドルと経済・財政がかつての安定的な状態に戻ることは、おそらく二度とない。通貨当局と投資家の多くはそれを察知せず、その意味するところもわかってない。ドルは崩壊に向かうが、対米従属諸国からの支持とあいまって迷走状態にあるので、いつ何が起きるか予測が難しい。

◆米金融を壊すフォークロージャー危機
 【2010年10月22日】 今の米経済は、消費や生産という実体経済が回復しないまま、債券金融(影の銀行システム)が債券発行によって作り続ける巨額資金が、株式などの金融市場をうるおし、株価などの経済指標を実態より良く見せることで、あたかも米経済が回復しているかのような幻想を人々に振りまいている。だが債券金融のシステムが壊れると、米経済は破綻した「地の部分」が見えてしまう。今起きているフォークロージャー危機は、まさにこの債券金融システムの崩壊を引き起こしそうだ。

◇劉暁波ノーベル授賞と中国政治改革のゆくえ
 【2010年10月16日】 世界の多くの国が、社会主義とか立憲君主制など、国民を国家に統合するための独自の仕組みを持っている。中国の場合は、共産党独裁の社会主義市場経済である。日本は天皇制を持っている。それらの仕組みを破壊しようとする者は、直接的・間接的に攻撃される。日本で天皇制打倒を主張する言論家にノーベル平和賞が与えられたら、日本の世論やマスコミはどう反応するだろうか。マスコミはできるだけ報道せず、野党は「ノルウェーと国交を断絶しろ」と叫ぶかもしれない。こうした反応を中国流に変換したものが、劉暁波の授賞に対する中国の反応である。現実には、日本が米英に忠誠を誓う限り、天皇制打倒論者にノーベル平和賞が与えられることはない。

◆世界システムの転換と中国
 【2010年10月10日】 米国は、さまざまな面で中国を怒らせ、中国が欧米に対抗するよう誘導し、欧米が作った世界システムとは別の国際システムを中国に構築させ、中国がBRICや途上諸国を率いて別の世界システムを拡充していくように仕向けている。米国は、英国が19世紀に作った今の世界システム(米英覇権)を解体し、多極型の新システム(新世界秩序)に転換し、政治経済の安定と発展を引き出そうとしている。中国は誘導されている。米英優位・発行者主導の債券格付けシステムを乗り越える、新興諸国優位・投資家主導の格付けシステムを中国が作ろうとしているのが、その一例だ。

◆EUを多極化にいざなう中国
 【2010年10月7日】(1)近代ギリシャが英国(今の米英覇権)の傀儡国として誕生したこと、(2)冷戦後のギリシャが米英と別の地域覇権を目指すEU(ユーロ)の傘下に入ったが、リーマンショック後にドルとポンドが崩壊しかけると、米英はドルとポンドを守るためギリシャを財政崩壊させ、EU(ユーロ)をぶち壊そうとしたこと、(3)そこで中国がギリシャ買いに入り、EUとユーロの崩壊を防いだこと、などの点を考慮すると、ギリシャ救済という「トロイの木馬」の中に中国が潜ませた策略は、中国がEUを支配することではない。むしろ中国の意図は、米英同盟が一極支配する従来の覇権体制を崩し、中国やEU、ロシアなどが並び立つ多極型の覇権体制に転換することにある。一度はEU統合を許した米英が、今になってEUをぶち壊しにかかっているのを阻止する多極化戦略が、中国のギリシャ救済の本質だろう。

◇日中対立の再燃(2)
 【2010年10月1日】 尖閣騒動は、外務省が日本の対中国外交から外されることにつながる。前原は、国交相として尖閣騒動を引き起こし、おそらく米国の推挙によって外相になった。外務省の人々は、前原を押し立てて中国敵対路線を走ることで対米従属を強化できると喜んだ。しかし、これは米国の罠だった。日本には、中国と本気で敵対する準備が全くなかった。財界や政界、官界の各所にいる親中派が結束して官邸に強い圧力をかけ、前原らのクーデターは、中国船長の起訴前に頓挫させられ、船長は帰国を許され、菅首相は、前原や外務省を迂回して、細野前幹事長代理を中国に送り込み、関係修復を開始した。尖閣騒動について国民に謝罪せざるを得なくなった菅は今後、少なくとも対中外交において、前原や外務省を使いたくないはずだ。

◆米株価は粉飾されている
 【2010年9月29日】9月27日、英国の証券会社のストラテジストが、CNBCテレビで爆弾発言を放った。9月の米株高の理由は、米連銀が通貨調整や景気テコ入れ策にかこつけて、銀行界に資金を入れ、その金で銀行に株式をプログラム売買させ、株価をつり上げているという指摘だ。

「日中対立の再燃」が英語訳されました。
Rekindling China-Japan Conflict: The Senkaku/Diaoyutai Islands Clash

◆米金融危機再来の懸念
 【2010年9月26日】 不動産市況が悪化してジャンク債の担保割れが広がり、それが一定以上の規模になったところで、投資家がジャンク債のリスクを急に心配し始めるパニックが起こり、一気にジャンク債が売れなくなって、経済を下支えしていた債券市場(影の銀行システム)の全体が凍結・崩壊し、実体経済まで悪化したのが、07年夏以降の米国発の世界経済危機の本質だ。同じパニックが繰り返される恐れがある。「サブプライム危機のバージョン2が起きる」という予測も出ている。

◆日中対立の再燃(続)
 【2010年9月21日】・・・単独為替介入をした日本は、欧米から、米欧日が為替介入をしない建前を守っていた国際通貨体制の秩序を破ったとして批判されており、ドルが崩壊感を強める中で日本が円高を防ごうと単独行動を強めるほど、日本がG7の為替協調体制を壊したと批判される結果になる。もともとドル崩壊でG7は潰れる(G20に取って代わられる)運命にあるのだが、それが米欧の詭弁によって日本のせいにされる。しかも、米欧の日本非難は間接的に中国を利する。満州事変的だ。

◇日中対立の再燃
 【2010年9月17日】 尖閣諸島沖の衝突事件は日本のマスコミで、中国漁船の不法行為を正当に日本の海保が取り締まり、それを不当にも中国政府が非難してた話として報じられている。しかし従来の日本当局は、中国漁船を追いかけても、追い詰めて逮捕起訴することはなかった。今回の逮捕起訴劇の重要点は、漁船の行為や中国の反応ではなく、中国が怒ることを知っていて逮捕起訴する日本政府の能動的な政治意志である。なぜ今、日本政府が中国を怒らせるのか。まず考えられることは、政官界や民主党内での対米従属派の巻き返しである。もう一つの考え方は、米国が日本を中国との敵対に誘導しているのではないかというものだ。

◆イラク「中東民主化」の意外な結末
 【2010年9月14日】 ブッシュ政権が掲げた「中東民主化」の結果としてイラクの政権転覆が行われ、それから7年たってみると、イラクがシーア派の国になるという究極の民主化が達成されている。イラクをシーア派主導に転換させ、史上初の民主体制を作ることを誘導したブッシュの中東民主化は、非常に暴力的で大量殺戮的なやり方であるが、本当に中東(イラク)を民主化したのである。中東民主化は、ネオコンによる画策だ。彼らは中東民主化を本当に実現するつもりだったと思える。

◆多極化とポストモダン
 【2010年9月7日】 工業に代わって金融が経済の中心になったことはポストモダン的だが、1985年以降の米英中心の債券金融の急成長は、結局のところバブルであり、08年のリーマンショック以降大崩壊が続き、今後もっと崩壊していきそうな感じだ。米英に代わって経済的に台頭している中国などBRICは、鉱工業が産業の中心だ。中国政府は国民の愛国心をあおり、国民国家体制の強化に余念がない。これも「まるでモダン」である。金融産業の席巻という、ここ四半世紀のポストモダン的な現象はバブルとして崩壊し、それと同時に起きている覇権の多極化は、モダンの再台頭である。

◇中国の傘下で生き残る北朝鮮
 【2010年9月3日】 胡錦濤が金正日に「中国の経験に基づいて確立された経済開放政策」の導入を強く求めたことは、逆に言うと、もし中国式の開放政策が北朝鮮の社会に合わずに失敗し、北朝鮮が貧困から脱せない場合、中国が北朝鮮に経済支援して補償してやるつもりが、中国側にあるということだ。金正日は、中国の保証を得られたからこそ、経済改革派の旗手である張成沢を復権させ、自分の事実上の後継者として据えたのだと考えられる。北朝鮮は、改革開放を本格導入するにあたり、中国の「債務保証」を得たことになる。

◆国際通貨になる人民元
 【2010年8月30日】20世紀前半、覇権が英国から米国に移転したが、それを引き起こした要因の一つは、米国が全土に鉄道や道路など当時の最新鋭のインフラを整備し、国民の所得増大を誘発して強い国内市場を作り、国内の消費力によって米経済が自転する構造を作って、欧州諸国より強固な経済基盤が構築されたことだった。そして今、中国は、かつて米国がやったのと同じようなインフラと国内消費市場の強化を進めている。今後の多極型の世界の中で、中国が欧米と並ぶ地域覇権国になるのなら、人民元が国際基軸通貨の一つになるのは当然だ。

◆東アジア共同体と中国覇権
 【2010年8月24日】中国を脅威と感じる人々や「民主主義を愛する人々」にとって、東アジア共同体は、とんでもない話である。EUの権力は、独仏など欧州の大国群の談合体制であり、加盟各国の合議制が存在するが、中国が圧倒的な力を持っている東アジア共同体は合議制にならず、実体は「拡大中国」である。米国の覇権が後退し、東アジア共同体が具体化していくことは、中国共産党の独裁権力が東南アジアや朝鮮半島、そしておそらく日本にまで波及してくることを意味する。

◆インドを怒らす超細菌騒動
 【2010年8月20日】英国の権威ある医学論文誌ランセットが、超細菌NDM−1に関してインドを中傷する結論の論文を載せたことが、インドの政府やマスコミを怒らせている。論文の結論は、薬剤耐性化を引き起こす薬の過剰投与をいましめるものになるべきだったが、製薬会社からの横やりがあったのか、インド批判に転嫁された。この問題は、インドを含む新興諸国と、欧米先進国との分断状態を加速し、多極化に対応しようとする英国の新戦略を頓挫させかねない。

◇解放戦争に向かう中東
 【2010年8月16日】 イスラエルがイランを空爆しない場合、中東は平和になっていくのか。そうなれない大きな要因は、レバノンとパレスチナである。かつて諸派が分裂していたレバノンは、今や反イスラエルで結束し、ヒズボラとレバノン国軍が統合している。イスラエルはもうレバノンと戦争したくないが、レバノンの方は、この30年イスラエルにやられ続けてきた復讐をしたいと思っている。レバノンには50万人のパレスチナ難民もおり、ガザや西岸、ヨルダン、シリアのパレスチナ難民と同様、イスラエルが今の状況である限り、難民のままだ。米国が中東から出ていき、イスラエルが弱体化するなら、パレスチナ人は、イスラエルを倒して祖国を再獲得しようと思う傾向を強める。これまでは、イスラエルがレバノンやガザなどを空爆して戦争を起こしてきたが、今後はレバノンやパレスチナの側が、イスラエルを倒す祖国解放戦争を起こす番になりそうだ。

◆米連銀の危険な量的緩和再開
 【2010年8月13日】 連銀が新たな量的緩和策を長期米国債の買い取りというかたちで再開することは、外国勢に対する米国債の信用問題として大きな危険をはらんでいる。連銀が長期金利の上昇を防ぐため米国債を買い支えることは、逆に言うと、連銀が米国債を買い支えなければ、米国債の買い手が足りず長期金利の上昇が起きかねないということだ。連銀は、米国債がすでに危険な「紙くず一歩手前」の状態にあると認めたことになる。連銀が量的緩和の再開を発表したことは、中国やアラブ産油国など、米国債を買い支えてきた外国勢を、米国債買い控えの方向に誘導しかねない。連銀は余計なことをしている。

◆米軍はいつまで日韓に駐留するか
 【2010年8月5日】 天安艦事件の濡れ衣戦略の失敗に懲りた韓国は、いずれ北朝鮮への敵視策をやめて方向転換を模索する。その時に韓国が頼るのは米国ではなく中国だ。中国が南北を仲介し、北朝鮮は天安艦事件で韓国を非難することをやめ、韓国は北に対する融和策と経済支援を再開し、天安艦問題をうやむやにして南北が和解する。史上初の中国による南北仲裁が成功すると、韓国は対米従属を脱し、有事指揮権を米軍から譲り受け、在韓米軍に撤退を要請する。その後、日本でも在日米軍の撤退が取り沙汰されるだろう。

◇中国軍を怒らせる米国の戦略
 【2010年8月2日】 中国軍部は、米国が再強化しようとする対中包囲網が口だけの張り子の虎であることを発見し、党中央に対し「米国の傲慢なやり方を容認せず、米国を第1列島線の東側に追い出す毅然とした態度をとるべきだ」と突き上げる。党中央は軍の意見に引っ張られる傾向になっている。実際に、中国政府が毅然とした態度をとるだけで、米空母は黄海に入らず、台湾への武器売却も見送られた。こうなると、トウ小平の遺言「24文字教訓」を守って米国の挑発に見ないふりをして頭を低くしている必要はないという話になってくる。中国が外交面で自信をつけ、米国を特別視しなくなることこそ、米国の隠れ多極主義者たちが狙ってきた策略であると見える。

◆中東の行く末
 【2010年7月28日】 レバノンでは05年にラフィーク・ハリリ元首相が爆弾で暗殺された。米国や、米国の息がかかった国連の調査団は、これを「シリアの諜報機関の犯行」と断定し、国際社会ではシリアを経済制裁せよという声が強まった。しかし5年後の今、レバノンでモサドのスパイが摘発される中で、ハリリを暗殺したのは実はモサドだったという見方が強まっている。シリア犯人説の主たる根拠は、シリアの関係者がレバノンで使っていた携帯電話の通信記録なのだが、携帯電話会社には上層部から技術陣までモサドのスパイが入り込んでおり、通信記録をでっち上げて当局に提出することができた。モサドはレバノンの軍と通信部門に入り込んでおり、当日のハリリの行動もモサドに筒抜けだった。

◆やはり世界は多極化する
 【2010年7月26日】 影の銀行システムは米経済の隠れた大黒柱であり、その規模は伝統的銀行システムの1・5倍の16兆ドルで、米国GDPの14兆ドルより大きい。影のシステムの再活性化が不発に終わった場合、リーマンショックより大きな金融崩壊が再来する。数年前まで米国の繁栄と覇権を支える秘密の錬金術だった影の銀行システムは、今や、米国の致命的な構造欠陥と化している。こんな構造欠陥を抱える国の通貨を、基軸通貨にし続けられないと国際社会は考え、ドル延命機関だったG7に代わる国際機関として、ドル安楽死のためのG20が作られた。やはり今後2−3年以内に、米経済の崩壊と、世界覇権の多極化が起きる可能性が高いと、私には思われる。

◆影の銀行システムの行方
 【2010年7月19日】 影の銀行システムは、ジャンクの価値しかない債権にお手盛りでトリプルA格をつけて売る詐欺商法であり、そんなものが銀行融資総額より巨額の残高を持っていることは、確かに不健全である。しかし、オバマ政権が影のシステムを潰すことは、米国の経済的な自滅を意味する。影のシステムが再び壊れて米金融市場が再崩壊すると、次はドルや米国債に対する国際信頼が揺らぐ。ボルカーら米当局者が影のシステムに対する規制を強化すると、米経済は失速する。失速が起きるかどうかは、今秋に見えてくる。失速は不可避だと言う人がすでに多い。

◆インドとパキスタンを仲裁する中国
 【2010年7月15日】 カルザイはタリバンに政権転覆され亡命して終わるかもしれないが、そのころには、アフガンの国権はパキスタンと、その背後にいる中国の手中に落ち、タリバン・パキスタン・中国が、中国と仲の良いロシアやイランの協力も得ながらアフガン統治をしていくことになる。米国は何千億ドルもアフガン占領につぎ込んだのに、嫌われ者になって出ていくだけだ(イラクがすでにこの構図だ)。この大転換を目の当たりにしたインドが、対米従属をやめてパキスタンや中国との和解を考えるのは当然だ。

◇アフガン撤退に向かうNATO
 【2010年7月12日】 米国は、カルザイともパキスタンとも関係が悪化し、カルザイとパキスタンは米国を抜かして急接近している。カルザイとパキスタンは、米国よりむしろ中国を頼りにする傾向を強め、米英中心体制から抜け出して、多極型の覇権体制下での生き残りを模索している。今の流れで米軍やNATOがアフガンから撤退していくと、アフガン、パキスタン、インドという南アジアの全体から、米英の影響力(覇権)が締め出されることになる。

◆代替わり劇を使って国策を転換する北朝鮮
 【2010年7月8日】 張成沢の台頭について日韓では「金正日が病気で死にそうなので、息子の金正銀を後継者に定め、その摂政役に張成沢を置くことにした」という分析が主流だ。だが私は「金正日が北朝鮮の経済発展を実現するため、将軍らを出し抜いて先軍政治を脱却し、張成沢を台頭させて中国式の改革開放政策に転換しようとしている」と分析している。後継者として日韓で騒がしく報じられる子息の名前が、金正男、金正哲、金正銀ところころ変わるのを見ると、金正日が権力の父子世襲を考えていると人々に思わせるのも、お得意の攪乱作戦ではないかと思えてくる。

◆再燃する中東大戦争の危機
 【2010年6月29日】 イラン近海のペルシャ湾周辺に、米軍艦が結集している。空母トルーマンとイスラエル軍艦は、6月6日から10日までイスラエル沖の地中海で合同軍事演習をやった。その後、艦隊はスエズ運河を抜けて紅海からペルシャ湾周辺に行き、以前からインド洋にいた米空母アイゼンハワーと合流した。イスラエル空軍は、イランの北隣のアゼルバイジャンに爆撃機を運び込み、イランを空爆する準備をしていると報じられている。アゼルバイジャンには6月6日、米国のゲーツ国防長官が訪問した。3日後の6月9日、アゼリ議会は、国内の基地を外国軍に貸与できる新法を決議した。イラン政府は6月22日、米イスラエル軍がアゼリに結集していることを警戒し、西部国境地帯に非常事態を宣言した。

◇消えゆく中国包囲網
 【2010年6月27日】 冷戦体制下では、日本と台湾の境界線は、軍事的に重要でなかったが、中国が台湾を取り込んだ後には、日本と中国の事実上の国境線が与那国島のすぐ西側までやってくる。米国と中国の影響圏の境界線は、台湾海峡から、与那国島の西側(東経123度、第1列島線)に移る。日中や米中は同盟関係ではない。日中の境界線となる与那国島の西側の線は、従来の日台の境界線だったときよりも、厳格に規定しておく必要がある。領空だが防空識別圏ではないという変則的な空域が境界線に存在したままでは困る。だから日本政府は、台湾が中国に取り込まれていく流れを加速する重慶での「第3次国共合作」的な中台の自由貿易協定の調印の5日前に、与那国島の西側を日本の防空識別圏に編入したのだろう。

◆米中は沖縄米軍グアム移転で話がついている?
 【2010年6月23日】 ロバート・カプランが指摘するように、中国が、日本や韓国など「第1の列島連鎖」を自国の影響下に置くことを長期戦略としているとしたら、米軍をカネで引き留めておく今の日本のやり方は間違っている。米国は「いずれ中国は軍事的に米国を抜かすので、早めにグアム撤退しておいた方が良い」と考えている。米国は「日米同盟は、中国の拡大によって解消されざるを得ない」と考え、中国もそれを知っている可能性が高い。そんな中で1年ごとに米軍を買収しても、それは日米同盟の未来が確保されたことにならない。

◆世界経済多極化のゆくえ
 【2010年6月20日】ロシアのメドベージェフ大統領は「米欧は巨大な金融財政危機の結果、単独で世界を支配していくことができなくなった。だから覇権を多極化し、中国やロシア(インド、ブラジル、EU、米国?)という諸大国が共同で世界を運営し、複数の基軸通貨を持つ新世界秩序へと世界を転換しよう」と提案している。今後、米国の金融システムが再生するなら、メドベージェフの多極化案は実現せず消えていくが、逆に米金融が再び不安定さを増すなら、多極化案が劇的に実現する。事態の行方を決定する要素は、ロシアや中国の側ではなく、米国の側にある。

◇イラン制裁継続の裏側
 【2010年6月18日】 中露の反対でイラン制裁案が否決されると、イスラエルがイランを空爆して中東大戦争を起こすかもしれない。イスラエルは、自国の滅亡の前に、中露など世界に向かって核ミサイルを発射するかもしれない。中露がイランに味方すると、米露戦争にもなりうる。これらのハルマゲドンを防ぐため、中露は、米イスラエルを追い込まず、骨抜きのイラン制裁を残したと考えられる。

◆中国を内需型経済に転換する労働争議
 【2010年6月14日】 中国各地で増えている労働争議の主導者たちは携帯電話で情報交換し、戦術を教え合っている。中国政府が携帯電話を傍受し、争議の主導者を検挙するのは簡単だ。だが中国政府はそれをしないどころか、共産党系の環球時報がスト参加者を支持する社説を流している。その背景にあるのは、中国経済を内需主導型の転換する手法として、低所得層である出稼ぎ労働者の賃金を引き上げることの効果である。低所得者層である彼らは、賃金を2倍(100%の賃上げ)にすると消費が70−90%増える。中国の内需を拡大するなら、大都市のホワイトカラーでなく工場労働者の大幅賃上げが良いわけだ。

◆ロシアと東欧の歴史紛争
 【2010年6月11日】 ポーランドは、ロシアに融和的な米オバマ政権から疎遠にされ、欧州人の多くが「オバマはブッシュより良い」と思っているのに、ポーランド人だけは「ブッシュの方が良かった」と思っている。英国も財政難で国力が落ち、ポーランドは米英に頼りにくくなっている。ロシアはこのすきにポーランドに近づき、カチンの森事件やスターリンに対する歴史観を両国間ですり合わせて歴史観の対立を解消し、ポーランドを米英側から引き剥がして取り込もうとしている。ロシアは、歴史に関するポーランドの主張を受け入れつつも、相手の歴史観をすべて受け入れるのではなく、反論したり、英仏の責任を指摘したりして、論争を残しつつ、歴史観のすりあわせを行っている。

◇中国が核廃絶する日
 【2010年6月8日】 中国が核廃絶することは、短期的にはあり得ない。しかし中長期的に見ると、中国を含む5大国のいずれかが核廃絶する方向性を打ち出し、他の5大国にも核廃絶を求めると、その国は新興諸国や途上諸国を率いる存在になることができ、今後の国際社会で有利な立場に立てる。たとえば北朝鮮を核廃絶させる場合、日本や韓国が「核廃絶しなさい」と言っても、北が聞き入れるはずがない。しかし中国が「うちも核廃絶するので、貴国も廃絶しなさい」と言えば効果がある。

◆北朝鮮と並ばされるイスラエル
 【2010年6月4日】 NPT最終文書では、イスラエルが名指しされた半面、イランに対する批判は一言も載らなかった。「イランは核兵器開発している」と以前から叫んできたイスラエルは「イランを非難しない偽善的なNPT文書など、無視してかまわない」と表明し、NPT加盟を拒否した。だが、実はイランが核兵器開発している話は、イスラエルが米欧を脅して同調させてきた濡れ衣である。偽善なのは、NPT文書ではなく、イランに濡れ衣をかける一方で自国は核兵器を何百発も持ってきた従来のイスラエルの戦略の方であり、その偽善の化けの皮がようやくはがれ、イスラエルが北朝鮮と並ぶ「悪」に突き落とされたのが、今回のNPTだ。

◆鳩山辞任と日本の今後
 【2010年6月2日】 鳩山辞任をめぐる話で重視すべき点は、民主党内での小沢の権力が弱まるかどうかだ。これまでの経緯を見ると、民主党内には、選挙戦をまとめる他の有力な指導者がいないように見えるし、自民党や諸新党が7月の参院選で民主党を大きく打ち負かす結果を出すとも予測されていないので、民主党内での小沢の力は弱まりそうもない。小沢が権力を握る限り、対米従属派と、小沢が動かす従属離脱派との暗闘が続く。普天間問題は、参院選後に再燃するだろう。米国の金融延命策が軌道に乗れば、対米従属派が巻き返せるが、逆に米国で大きな金融危機が再発してドルの崩壊感が強まると、日本は対米従属派が弱まる。

◇韓国軍艦沈没事件その後
 【2010年5月31日】 米国が北朝鮮に対してやっていることが濡れ衣戦略だとしたら、イランに核武装の濡れ衣をかけて潰そうとしているうちに、国連(NPT)でイランではなくイスラエルの核武装の方が問題にされているのと同様、覇権を振り回しすぎて(意図的に)自滅する米国の隠れ多極主義戦略である。これにつき合いすぎると、日本にとって危険なことになる。

◆世界金融は回復か悪化か
 【2010年5月26日】 世界の金融情勢が、米国のレバレッジ再拡大という「回復」の方向と、ユーロ圏の国債危機という「悪化」の方向の間で揺れている。ユーロにとって最も重要なのは、EUが政治統合を進めることだが、政治統合は短期達成できるものではなく、各国のナショナリズムに凌駕されて失敗するかもしれない。その場合、ユーロは解体に向かう。しかし逆に成功した場合、EUは強化され、米英の財政赤字の方が大きな問題となる。

◆トルコ・ロシア同盟の出現
 【2010年5月22日】 トルコはもともとNATOの一員として親米反露の戦略をとっていたが、911後の米国が中東やコーカサスの秩序を破壊する戦略を展開した、これはトルコにとって脅威となったので、静かに国策を転換し、ロシアと組んでコーカサスを独自に安定化し、結果的に米国の影響力を排除する動きを開始している。伝統的にロシアはアルメニアと親しく、トルコはアゼルバイジャンと親しい。ナゴルノカラバフ紛争は、ロシアとトルコがうまく仲裁すれば解決できる。ロシアは、アルメニアとトルコの関係改善を支援する一方で、トルコはロシアとグルジアの関係改善を仲介できる。トルコとロシアは「たすきがけ」の戦略関係にある。

◇善悪が逆転するイラン核問題
 【2010年5月19日】 トルコとブラジルによる動きは、米国が覇権国の威信をかけて展開してきたイラン制裁や政権転覆策に風穴を開けた。米国が隆々とした超大国だった以前なら、米国による報復が恐ろしいので、トルコやブラジルは動かなかった。だが今や米国の威信は揺らぎ、途上国が報復を恐れず米国に横槍を入れられる新時代がきた。トルコのエルドアン首相は「国連安保理の常任理事国は、自分たちは核兵器を持ったまま、他の国々に核廃絶しろと要求する。安保理は、イラン核問題を審議する場としてふさわしくない」と述べた。これは、米国の核兵器は少ししか削減しないのに、世界に核廃絶を求めるオバマへの批判にもなっている。

◆シーレーン自衛に向かう日本
 【2010年5月17日】 ジブチでの自衛隊基地の建設は、控えめに考えるなら、自衛隊員に和食を出し、哨戒機の雨ざらしを避けるための施設を作る話になる。しかし、貿易大国となったのに貿易航路の防衛を米軍に頼ってきた日本の戦後体制を考えると、本件は、日本が自分でシーレーンを防衛する方向性を示す話として画期的だ。自衛隊は、すでに「テロ対策(テロ戦争)」の枠内で、米軍と一緒に公海上の臨検に参加し、インド洋で給油活動を行ったが、今回の基地建設は、それをさらに一歩進めるものとなる。

◆英国政権交代の意味
 【2010年5月14日】 核廃絶と並んで、英国の新政権が打ち出した外交戦略は「米国との同盟関係の見直し」である。これは、日本の鳩山首相が政権をとった直後に「対等な日米関係」を宣言したのと似ている。英新政権は同時に、インドや中国に接近する姿勢を見せ、世界の多極化に対応している。これも鳩山政権が「東アジア共同体(対中接近)」を提唱したのと同じだ。だが英国は、受身的な対米従属の日本と異なり、米国の世界戦略を牛耳って繁栄してきただけに、米国との同盟を失うと、国際影響力と繁栄が大きく損なわれる。連立新政権に入った親EUの自民党は「米国と関係を切ってEUに入ればよい」と言うが、これが英政界の総意になるとは考えにくい。英国は今後、国家戦略の根幹をめぐって波乱が続きそうだ。

◇韓国軍艦「天安」沈没の深層
 【2010年5月7日】 韓国の哨戒艦「天安」の沈没地点から1・8キロ離れた地点に、米軍の潜水艦が沈没している。天安艦に対する捜索として報じられた活動のかなりの部分が、実は米潜水艦に対する捜索だった。それを韓国の公共放送KBSテレビが報じたが、韓国当局は誤報と非難し、KBSを訴追して報道を封じた。「天安艦は米艦による誤爆で沈んだ」という説は、事実上「禁止」された。しかし実際には、どうやら3月26日にペンニョン島周辺の海域で米韓合同軍事演習が行われ、そこで天安艦と米潜水艦が間違って同士討ちして沈んだようだ。米韓当局が、米潜水艦の沈没を隠しているのは、潜水艦が軍事演習とは別の任務として、北朝鮮をいつでも攻撃できるよう、ペンニョン島周辺で長期潜航していたからではないか。

◆資本主義の歴史を再考する
 【2010年5月4日】 欧州が世界に広めた資本主義や競争社会は「野蛮なジャングル」にたとえられるが、実際には、欧州の500年間のように、競争社会を長く維持するには、社会や国際社会に対する巧妙な制御が必要だ。競争している当事者に、自分たちが競争させられているという意識を持たせてはならない。自然に競争が誘発維持されるようにせねばならない。欧州の資本家群は、各国の王侯貴族たちに知られることなく各国を操作するという、非常に巧妙なことをやっていたことになる。

◆ユーロ危機はギリシャでなくドイツの問題
 【2010年4月30日】EUは昨秋、大統領と外相ポストを新設し、政治統合に動き出した。オバマもブッシュ同様、英国を邪険にする態度をとっている。米英の財政赤字も急増し、このままでは英米覇権は崩壊だ。そのため英米中心主義の側は、ギリシャ危機を扇動し、ドルの対抗馬となりそうなユーロを潰しにかかる金融戦争を先制攻撃的に起こした。戦争といっても、戦っているのは米英の側だけで、ドイツはほとんど応戦せず、無抵抗でやられているばかりか、利敵行為をする人がドイツ内部に多い。

◆ゴールドマンサックス提訴の破壊力
 【2010年4月24日】 4月16日、米国の証券取引委員会(SEC)が、最大手の投資銀行であるゴールドマンサックスを、サブプライム住宅ローン債権の証券化をめぐって不正な金融取引を行っていたとして提訴した。これは「ボルカー裁定」の一つだ。オバマの金融改革を主導するポール・ボルカー元連銀議長が、前から制裁したいと思っていたGSに対し「果たし状」を突きつけた・・・

◇日本の政治再編:大阪夏の陣
 【2010年4月22日】 今後の地方選挙で、橋下新党が大阪府下や関西一円の地方議会の多数派になっていけば、地方からの民主的な革命(体制転換)になりうる。関西の動きに呼応し、各地で地方分権の要求が起こり、東京政府の中央集権的な官僚制度が「旧体制」として打倒の対象になる。こうした地方からの革命は、明治維新以来の日本の大転換になる。沖縄、大阪、宮崎での地方分権運動の連携は、かつての「薩長同盟」になりうる。日本人は、陶酔の対象を「坂本龍馬」など美化(誇張)された昔の物語に求める必要はない。明治維新と並ぶ物語が、今の日本で始まっている。

◆米中逆転・序章
 【2010年4月14日】 歴史的に見ると、まず500年前からの欧米の世界支配があり、200年前ぐらいに産業革命で欧米がさらに強くなり、この力で約100年前に欧州は、それまで世界支配の外にあった中華帝国(清朝)を滅ぼした。だがその後、中国は欧米化に努力し、ここに来て中国(やその他の新興諸国)の再台頭となり、米中逆転の現象になっている。歴史から見ると、分析すべきは「中国の再台頭」の前に「欧米の世界支配」である。産業革命前、中国は欧州を支配下に置こうとはしなかった。だが、産業革命で欧中逆転が起きた後、欧州は中国を支配下に置いた。この違いはなぜ起きたか。それは、コロンブス以来の「世界帝国」と関係がある。

◇カルザイとオバマ
 【2010年4月10日】 オバマはブッシュより聡明なので、側近からの情報の歪曲に気づいている。だから「カブールなんか行く必要はありません。ホルブルックに任せておけば良いんです」という側近を無視し、超多忙の合間をぬって無理矢理カブールまで行ってカルザイと会い、アフガン戦略を立て直そうとした。しかし、オバマのカブール訪問自体が米マスコミには都合が悪いらしく、ほとんど報じられず、訪問直後からマスコミはカルザイと米国の関係を悪化させる報道をあふれさせ、オバマのアフガン戦略を失敗の方に押しやっている。

◆操作される金相場(2)
 【2010年4月5日】 従来は、ドルや債券といった「紙」の証券に対する強い信用が世界的にあり、金地金を物理的に手元に置きたい所有者は少なかった。しかし、すでにドルや債券に対する信頼が揺らぎだし、今後さらに信頼が崩れそうだ。金地金を手元に置かないと安心できない人が増え、金の債務不履行が起こりうる。それが起きるときには、紙幣を含む証券への信頼が減っている。地金業者は「金地金が足りないので、代わりに現金で払います」と言うだろうが、現金が信用できないから金地金を手元に置きたいと思う人々は拒否し「紙切れは要らない。金地金をくれ」と怒るだろう。これは「金の取り付け騒ぎ」である。

◇激化する金融世界大戦
 【2010年3月30日】 新興諸国の台頭が進むと、米英の覇権を崩しかねない。米国沖の英国領諸島に英主導で作られた租税回避地などを拠点に、巨額資金(投機筋)が、英米が標的とした国の金融市場を、巨額流入でバブル化させた後、巨額流出によって暴落させて破壊する「金融兵器」の機能が作られた。金融兵器は発動者を特定しにくく、攻撃された方も国権に対する破壊(戦争)と気づきにくい。戦争犯罪に問われず、自国民にも知らせず発動でき、少人数で遂行できて、軍事戦争より好都合だ。90年代以降、金融兵器は軍事兵器をしのぐ破壊力を持った。

◆危うくなる米国債
 【2010年3月27日】 今の世界は、あらゆるところに米英が作った金融システムが浸透し、新興市場諸国の人々にも大きな恩恵を与えている(だから中国はドルペッグすらやめたくない)。米国債の売れ行き悪化に始まる米英金融覇権の崩壊は、世界経済のシステム的な崩壊になる。しかも、ギリシャの財政危機を悪化させ、ユーロを潰そうとしているのが米英金融界の投機資金であることからもわかるように、米英は自分らの覇権崩壊の際に、世界経済をシステムごと道連れにして壊そうとしている。世界経済の無理心中である。これは、大変なことになる。

◇ユダヤ第三神殿の建設
 【2010年3月24日】 旧約聖書の解釈と、ビルナ・ガオン・エリアの預言の両方が正しいとすれば、3月15日にフルバ・シナゴーグが再建された翌日から、第三神殿の建設がひそかに始まっていることになる。この話を真に受けて、パレスチナ人や他のアラブ人、イスラム世界の全体が、イスラエルへの非難を強めている。パレスチナでは「インティファーダの再開」を呼びかける声も強まっている。

◆中国がドルを支えられるか?
 【2010年3月18日】 中国は、米国債とドルを支持しきれるのか。2つの可能性がある。一つは、中国がドルの助っ人に加わったことにより、ドルが今後何年か延命し、その間に基軸通貨体制の多極型への転換が軟着陸的に進む可能性。もう一つは、中国の高度経済成長が続き、インフレがひどくなって人民元のドルペッグを維持できなくなるか、米国債の価値急落によって、中国がドル支持をやめざるを得なくなり、ドル崩壊とハードランディング的な転換(混乱)が起きる可能性である。

◇イラン核問題と中国
 【2010年3月10日】 イラン制裁に反対する中国が得をして、まじめにやってきた日本はイランの利権を失っていく。しかもイランの核兵器開発疑惑は米イスラエルによる濡れ衣だから、中国の制裁反対は間違っていない。問題はむしろ、日本の「まじめさ」の方にある。対米従属を重視するあまり、日本はイラン核問題の濡れ衣性に目をつぶり「イランはそのうち米軍に侵攻され、イラクのように潰される。日本企業はイランに近づかない方がよい」とたかをくくっていたのが間違いだった。

◆大均衡に向かう世界
 【2010年3月8日】 英国のウィーン体制の「小均衡」が第一次大戦で崩れて以来、米国は100年近く、世界体制の「大均衡化」を試みているが、まだ成功していない。この10年の稚拙なテロ戦争のやりすぎと、金融バブル大崩壊の過程での(意図的な)失敗の連続によって、ようやく25年後の大均衡体制が見えてきたところだというのが、ポール・ケネディ発言を読んだ私が感じたところだ。米国が今、財政破綻に向かっていることは、永久の米国の衰退ではなく、米国が英国のくびきから解かれるための「再起動」の過程である。

◇ユーロからドルに戻る危機
 【2010年3月2日】 欧州では、ギリシャ危機に解決の糸口が見えてきた矢先に、今度はスペインへと危機が飛び火し、スペイン国債が売られている。南欧の国債危機は米金融界が仕組んだ面があることと、ドルやポンドも危機なので米英当局は自国よりユーロ圏が危機だと市場に思ってもらいたいことを合わせて考えると、国債危機がギリシャからスペインなどに飛び火する背後に、米英の画策があると推測できる。

◆米国トヨタ欠陥問題の意味
 【2010年2月27日】 依然として日本企業は、対米輸出や米国での現地生産によって発展する形態を好んでいる。だが、政治的な状況を見ると、もはや日本が軍事・政治的に対米従属する代わりに日本企業が米国で自由にものを売れるという日米同盟の体制は終わりつつある。そのため米側は、日本企業の代名詞であるトヨタを標的に「そろそろ米市場に頼るのをやめてくれ」というメッセージを送るべく、トヨタに濡れ衣をかけて戦犯扱いの非難攻撃を開始したのだろう。

◇経済覇権としての中国
 【2010年2月23日】 中国は、改革開放以来の30年の経済成長のノウハウを持ち、アフリカなどの発展途上国にノウハウを伝授して経済成長を実現しつつ、中国自身も儲けている。今まで、国家運営術を欧米から学ぶしかなかったアフリカなどの途上諸国は、中国式というオルタナティブを得た。「人権問題や経済改革で途上国に援助の条件をつけ、途上国を支配し続ける」という欧米の戦略は無効にされた。途上諸国に植えられた中国式ノウハウは、今後の世界経済の長期的な成長を実現していくだろう。中国の覇権が世界にもたらす最重要の点は、そこにある。

◆揺らぐドル
 【2010年2月20日】 米連銀のホエニッヒ理事は最近「新たな財政緊縮策を打たない限り、今後数年間に米連邦政府の財政赤字が急増し、超インフレになる。連銀が景気回復を重視しすぎてドルの過剰発行を続けると、事態は意外な速さで悪化する」と警告した。この主張に賛同する理事たちの突き上げを受け、連銀は公定歩合を1年3カ月ぶりに引き上げた。これを「連銀は金融引き締めに入った」と見る向きもある。だが実際には、連銀は失業が減らない限り金融引き締めには入らないので、今回の利上げは、連銀内の利上げ主張に配慮した一回きりの動きだ。連銀自身が、雇用は少なくとも来年まで回復しないと予測しているのだから、来年まで連銀は金融引き締めをしない。ホエニッヒが懸念する超インフレや国債金利高騰の可能性が高くなる。

◇中国を使ってインドを引っぱり上げる
 【2010年2月17日】 インドは、日本と同様、米国から誘われて喜んで「中国包囲網」の片棒を担いだ。だが、包囲網に対抗して中国がインド洋に進出し、米国が中国に対して意外な譲歩を示し、インド洋が中国の海になりそうな新事態が立ち上がってくると、インドは中国に対抗してインド洋の地域覇権国になる道を歩まねばならなくなった。その状況下で、米国は、インドがインド洋の覇権国を目指すことをQDRの中で奨励し、インドの台頭にお墨付きを与えている。

◆欧米日すべてが財政破綻する?
 【2010年2月12日】・・・この予測通り「2010年春」に先進諸国の国債破綻が起きるとしたら、今後の数週間はギリシャ、ポルトガル、スペインなどユーロ圏諸国の国債危機が続くものの、3月末に連銀が量的緩和策をやめる時期に入ると、その後6月のG20サミットあたりにかけて、危機が米国や英国に飛び火し、G20サミットで人民元の切り上げや、新たな世界的な金融危機対策がとられるといったシナリオが考えられる。その間に英米側から新たな延命策が発せられれば、危機は先延ばしされるが、延命策も無限ではない。今年じゅうに危機が再燃する可能性が高い。

◇米国の運命を握らされる中国
 【2010年2月10日】 中国は、米国を潰したいと思っていない。米経済が立ち直り、中国製品を旺盛に買う昔の状態に戻ってほしいと思っている。中国は、米国債やドル資産を買い支え、米国を延命させている。しかし米国自身は、自滅的な政策を重ねて経済危機の傷を深めたあげく、台湾やチベットなどの政治問題で、中国の米国敵視をあおる言動を繰り返し、中国が人民元の切り上げや米国債の放出など、米国を潰す一手をやるように仕向けている。米国は中国に、米国の生殺与奪を決める手綱を無理矢理に握らせている。

◆ドイツ・後悔のアフガン
 【2010年2月7日】・・・この事件の後、ドイツは国を挙げて激しい呵責の念に襲われた。戦後のドイツは、二度と戦争の人殺しをしないことを誓い、冷戦後の派兵は国際貢献のはずだった。アフガンに駐留しても、できるだけタリバン兵を戦闘で殺さないようにしていた。それなのに、独軍は米軍機に依頼して、タリバンを殺すよりもっと悪い、一般市民に対する虐殺行為をしてしまった。ドイツでは、アフガンからの撤退を求める世論が一気に強まった。

◆通貨安定策の多極化
 【2010年2月3日】 対米従属的な通貨体制でかまわないと思っているASEAN+3が、独自体制への転換へと重い腰をあげたのは、米連銀が2月1日をもって、連銀と欧日など各国中央銀行と締結していた為替スワップ協定を終わりにしたからだ。今後は、金融危機が再来してドルが危なくなっても、他の国々がドルを買い支えてくれる仕掛けがない。アジア諸国は、米国中心の通貨の安定した体制が続くことに期待できず、代わりにアジア諸国間で危機に備えるチェンマイ・イニシアチブの体制を本格稼動することにした。

◇「第2ブレトンウッズ」再び
 【2010年1月31日】 G20が世界政府として機能し始める時期が遅くなるほど、英国は世界政府に救済される前に財政破綻する確率が高くなる。だから英国は急いでいるのだろうが、逆に見ると、英国に牛耳られたくない隠れ多極主義の米国や、地政学的に英国の仇敵であるロシアは、G20が立ち上がる時期を遅らせることで、先に英国の財政破綻を起こせる。今年に入って英仏は、さかんにG20の世界政府化を提唱するが、米国やロシアは、08年とは打って変わって消極的な反応で、中国も通貨多極化に必要な人民元のドルペッグ外しを実施しない。

◆欧米のエネルギー支配を崩す中露
 【2010年1月26日】 プーチン首相が、シベリアから中国や太平洋諸国に原油を輸出するESPO事業を「地政学的な大事業」と呼んだのは、ロシアが原油の9割を欧州に売っていた状態から脱せられるからだ。従来、欧州はロシアの原油に頼ってきたが、ロシアも欧州の消費に頼ってきた。しかし、アジア諸国に原油を売リ出すと、ロシアは、欧州に原油を売らなくても大して困らないようになる。ロシアは、これまで西に送っていたシベリアの原油を東に送ることで、たとえEUがロシア原油の不買活動をしても、ロシアは大して困らなくなる。EUに対するロシアの政治的な力関係は、大きく優位になる。

◆迷走するオバマの経済対策
 【2010年1月24日】 オバマ政権の新しい金融政策は「オバマは大銀行を儲けさせている」と考える米国民をなだめる人気取り政策として打ち出された。だが、金融界に悪影響を与えると懸念される半面、人気取りとしての効果は不明だ。新政策は、商業銀行を危うくする半面、ゴールドマンサックスなど元投資銀行は、再び投資銀行に戻って高リスク高リターンの取引を続けられる。商業銀行がヘッジファンド業務を禁じられた分、投資銀行はシェアを拡大してむしろ儲けを拡大できる。銀行界は、議会に圧力をかけ、規制対象の「自己勘定取引」の範疇を小さくして、儲けを減らさないようにするだろう。「オバマは銀行を儲けさせている」と感じる米国民の怒りは消えそうもない。

◆短信集(2010年1月21日)
●温暖化誇張コンビに離別の危機!?
●深まるインフルエンザ誇張疑惑
●ベネズエラ経済難で多極化が逆流?

◇グーグルと中国
 【2010年1月20日】 グーグルは、ユーザーが残していく情報を中国当局に見せたがらないので、ユーザー情報を当局に提供しているであろう「百度」などに比べて中国政府から好かれない。中国政府が国策ファイアーウォールの微妙な運営によってグーグルの表示を制限し、中国人がグーグルではなく百度を使うように仕向けた可能性が指摘されている。米国では、これをグーグルに対する中国の非関税障壁とみなし、WTOに提訴すべきだという主張が出ている。中国政府に対してグーグルが反抗的な態度をとったのは、米政府と謀ってこの問題をWTOに持ち込むきっかけを作るためだった可能性もある。

◆中華文明と欧米文明は衝突するか
 【2010年1月17日】 中国は「中華文明」として台頭しているのではなく、孫文以来の中国人が「欧米文明」のシステムを修得する努力を続けた結果、台頭した。中国は中華文明を捨てて欧米文明化を成し遂げたからこそ、急成長している。「偉大な中華文明」という言い方は、中国人(漢民族)のナショナリズム鼓舞のため流布されているにすぎず、中華文明はアヘン戦争とともに死んで久しい。だから欧米と中国の「文明の衝突」は起こり得ない。世界の文明は不可逆的に単一化、普遍化している。

◆ガザ戦争の危機再び
 【2010年1月14日】 イスラエルは米国の政治を牛耳ってきただけに、イスラエルが今後どうなるかは、基軸通貨としてのドルの地位(米国の経済覇権)が今後どうなるかという問題と並び、世界の覇権構造にとって大きな話である。イスラエルの力が縮小ないし消滅すれば、サウジアラビアなどペルシャ湾諸国が安全保障を米国に頼る必要が減り、イランとサウジ、イラクが談合して石油利権の非米化に拍車がかかり、石油価格は超高値安定になりそうだ。

◇インフルエンザ騒動の誇張疑惑
 【2010年1月12日】 12月31日、欧州議会の保健衛生委員会は、昨年夏から豚インフルエンザが流行した際、欧米の製薬会社が、ワクチンや関連医薬品の売り上げを伸ばすため、国連のWHO(世界保健機構)や国際医学界などに影響力を行使し、インフルエンザに対する危機感を世界的に扇動した疑いがあるとして、調査を開始することを全会一致で決議した・・・

◆アジア経済をまとめる中国
 【2010年1月10日】 元旦に発足したASEANと中国のFTA(CAFTA)は、東南アジアにとって歴史的、地政学的な大転換である。CAFTAは人民元を決済通貨として使う計画を開始し、今後何年かかけて東南アジアの基軸通貨はドルから人民元に切り替わる。基軸通貨がドルである限り、米英は97年のアジア通貨危機が象徴するように、東南アジアを通貨や財政の面から支配できる。人民元が基軸通貨になることは、東南アジアが米国の覇権下から中国の覇権下に移転することを意味している。

◆中国のバブルが崩壊する?
 【2010年1月5日】 中国のバブル崩壊は、日本が90年代のバブル崩壊で経験した「失われた10年」のような長く大きな不調にはなりにくい。中国は80年代以来の高度成長の中で、何度もバブル崩壊を経験している。中国では経済全体の状況把握が難しいので、供給過剰に陥りやすい。しかし、中国は広大で多様性が強いので、沿岸部経済でも、加工組立・再輸出産業から発展してきた広東と、揚子江流域の莫大な人口を背景に発展してきた上海が別々に動いている要素も強く、中国全体が崩壊することには、なかなかならない。日本のバブル崩壊後の失われた10年は、米国を抜きたくなかった対米従属戦略の日本の大蔵官僚らが意図的にやったことではないかと疑われるが、この点も中国は、日本と異なり、米国を抜くことへの抵抗がない。

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