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折々の記 2011 A

【心に浮かぶよしなしごと】

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【 01 】02/16

  02 16 小沢の起訴検証
  02 17 チャイナ・ウォッチャーの視点

 02 16 (水) 小沢の起訴検証・週刊朝日‘談 [DAN]’

マスコミが取り上げない一つのニュースに‘小沢の起訴検証’があります。 理由の根拠がわかりません。 

案ずるに、「寄らば大樹」の風潮に毒されていると思います。 マスコミにこんな空気があるから、日本がいつまでもモタモタしているのです。 マスコミが鉛の兵隊になってしまうと、その国の大地には自由な発想の大樹が伸びてきません。

みんな“複数の価値意識”に毒されています。 行政権に対する個人の意識反映が、北アフリカや中近東に現前し始めているのです !!!

マスメディアに関わる評論家にしても、第一線でニュース発信の役目に当たる新聞記者や雑誌記者にしても、「寄らば大樹」という集団意識に毒されているのです。  曰く‘○○同窓会’‘〇〇党員’‘日の丸・国歌’‘国益’それらすべて、単数思考や自主独立の気風を毒しているのです。 そこには皆の発展が約束されません。

調べていたユダヤの心底は、自分の国家がなかったことによって、わが子の教育の重要性、知識学問の尊厳、自立心の高揚、などを大切にしなければならなかった、その一点にあると思いました。  こう考えるに至ったのには、老生になにか齟齬があるのだろうか ……… 。 まずは、たいした齟齬はないと思います。

以上のように判じていますので、次の“週刊朝日 談 [DAN]”の最近の舵取りの方向には、脱マスメディアの主張としての敬意をもつのです。




http://www.wa-dan.com/article/2011/02/post-67.php
週刊朝日 談 [DAN]


消費税を上げる前にやることがあるだろう
小沢がやれば、日本はこうなる


週刊朝日2011年1月28日号配信

死児の齢を数えても詮無いことはわかっているが、昨今の菅直人首相の体たらくを見るにつけ、ほかに道はなかったのか、と来し方を顧みたくなるのも人情だ。昨年9月の民主党代表選。あのとき、小沢一郎元代表(68)が勝っていたら、日本はどうなったのか。「無口な剛腕」が語る政策論を改めて検証した。

 首相にとって、内閣改造は政権の求心力を高める切り札である。だが、政権与党・民主党では、改造前から異論・反論が噴出し、一向に収まる気配がない。

 「菅さんはとんちんかんなんだよ」
 と苦笑するのは、首相をよく知る民主党幹部だ。

 民主党批判の急先鋒だった与謝野馨・前たちあがれ日本共同代表に経済財政相のポストを奪われた海江田万里経済産業相が、「人生は不条理」とこぼすなど、早くも"閣内不一致"の様相さえ呈している。

 そんな政権の迷走ぶりをよそに、菅首相の目の上のこぶである小沢氏は、年末から年始にかけて、本誌やインターネットの動画サイト、衛星放送などに立て続けに出演し、政局だけでなく政策についても持論を発信し続けている。

 かつて菅首相を支持したこともある議員の一人は、こんな反省の弁を述べた。

 「菅さんは首相になることが目的の人だった。そんな人を選んでしまった罪は重いと思っている」

 歴史に「たら」「れば」は禁物だというが、もし、昨年の代表選で小沢氏が勝ち、首相になっていたら、日本はどうなったのか。本誌のインタビューなど、最近の小沢氏の発言から改めて検証してみよう。

   ◆景気対策・財源 所得の分配率上げ、予算はぶった切る

 菅首相は昨年末から、「政治とカネ」の問題をことさらに重視し、小沢氏が政治倫理審査会で説明することを強硬に求めてきた。

 だが、多くの国民にとっては、「政治とカネ」論争よりも、まずはこの不景気をどうにかしてくれというのが本音だろう。

 小沢氏が目指す景気対策は、国民所得を上げ、国内消費を盛り上げようという、きわめてオーソドックスなものだ。

 「個人の消費が伸びなければ、経済の立て直しなんかできません。だからやっぱり、国民の(年金や医療などの)将来不安をなくすこと、その一環としてセーフティネットをつくること、そして一般の人たちへの所得の分配率を上げること、その3つが必要ですね」(「週刊ポスト」1月14・21日号)

 中小企業への支援を重視する姿勢も顕著だ。

 「大企業はもう少し社員や下請けの中小企業の人たちに利益配分を手厚くするべきですよ。自分の懐にだけためたって、国民全部が使わなくては自分の会社も悪くなるのですから」(テレビ朝日「スーパーモーニング」10年9月3日)

 他方、財政赤字に苦しむ日本の「財源」問題では、官僚に丸投げの予算編成ではなく、政治家が自分たちで予算の必要性を判断して取捨選択すれば、財源は捻出できるという立場だ。

 「優先順位は、役人の仲間同士じゃつけられない。大臣はじめみんなが、腹を決めてやれば、財源は出てくる」(インターネット番組「ニコニコ生放送」10年11月3日)

 小沢氏は、党幹事長だった09年12月、土地改良事業費の予算を半減させる「荒業」を見せた。それが予算全体に広がれば、財源論争に新たな地平が開けるのかもしれない。

   ◆ねじれ国会 野党との信頼関係、筋を通して築け

 仮に首相が代わったとしても、衆参ねじれの状況は変わらない。だが、やりようによってはなんとかなる、というのが、小沢氏の持論のようだ。菅首相やほかの民主党議員と違い、小沢氏はねじれ国会を乗り切った経験がある。

 小沢氏は1989年、47歳の若さで自民党幹事長に就任した。当時の参院第1党は社会党で、参院では野党が過半数を握っていた。そこで小沢氏は公明党や民社党とのパイプを築くことに腐心した。

 「22年前に僕が自民党幹事長だったときも、参議院で少数で、ねじれ国会でした。だけど、野党の最も反対するPKO協力法案も、ほとんどの法案も問題なく通りました。それは、野党にも建前と本音があるから。本音で反対するのは仕方ないけど、建前では反対するが理屈はわかっているよという場合なら、あとは信頼関係ですから」(BS11「INsideOUT」1月5日)

 ポイントは「筋を通す」ことのようだ。

 「例えば、1988年に竹下政権で消費税の導入を決めた時、僕は官房副長官でした。野党は『減税』を先にやれば審議に応じてもいいという。そこで、当時の竹下登首相と宮沢喜一蔵相を説得した。宮沢さんは心配したけど、これで消費税導入が実現しました」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 ちなみに、小沢氏はかつて「日本国憲法改正試案」という論文を月刊誌に発表し、こう述べている。

 「選挙によって国民の代表を選ぶのは、衆議院に限定して、参議院はチェック機能に徹するべきだ」(「文藝春秋」1999年9月特別号)

 参議院はイギリスのような「権力なき貴族院」に近い議会に変え、参院議員は名誉職的なものにするという考え方だ。

 ◆政治主導 政治家が責任取る体制づくりが必要

 そもそも、「政治主導」とは何なのか。小沢氏の言葉を借りれば、
 「官僚任せでない、政治家が自ら責任を持って決断し、自らの責任で実行する、そういう政治・行政」(10年9月1日の共同会見)
 ということになる。ポイントは「自らの責任で実行する」という部分だ。

 小沢氏は、政治主導を実現するには政治家にそれだけのリーダーシップと責任感が必要だと説いている。

 「僕は官僚無用論を言っているわけではありません。官僚は優秀ですし、必要です。ただ、政治家が、官僚を自分の理想や政策を実現するためのスタッフとして使えるだけの見識とビジョンを持たないとダメです。『僕が責任を取る。我が党としては、これが最優先だ。これにカネを付けろ』とちゃんと言えば、官僚は従いますよ」(「週刊朝日」1月7・14日号)

 この「政治主導」は、政治家・小沢一郎の原点ともいうべき理念だ。42年前の1969年に27歳で衆議院選挙に初めて立候補した際の選挙公報に、小沢氏はこうつづっている。

 《このままでは日本の行く末は暗澹たるものになる。こうした弊害をなくすため、まず官僚政治を打破し、政策決定を政治家の手に取り戻さなければならない》

 昨年9月14日の代表選でも、小沢氏は投票直前の決意表明でこの一文を読み上げ、さらにこう続けた。

 「若かりしころの、感じたその思いは初当選以来、いまなお変わっておりません

 「官僚依存の政治に逆戻りさせるわけにはいきません。それはとりもなおさず、政治の歴史を20世紀に後戻りさせることになるからであります

 菅政権は財務省をはじめとする霞が関に取り込まれたかのように見える。小沢流の「政治主導」は依然、確立されていない。

   ◆日米同盟・普天間 米軍撤退の流れで基地問題解決も

 鳩山政権崩壊のきっかけの一つとなった米軍普天間基地移設問題。菅首相は昨年12月17日に沖縄で仲井真弘多県知事と会談し、
 「普天間の危険性除去を考えた時、辺野古はベストの選択ではないかもしれないが、実現可能性を含めてベターの選択ではないか」
 と理解を求めたが、仲井真氏は取り付く島もなく、
 「ベストでなくてベターだというのは勘違い。県内(移設)はすべてバッド」
 と記者団に語った。

 一方、小沢氏は昨年9月2日の代表選の公開討論会でこう主張している。

 「日本とアメリカの国同士の約束は尊重しなければならないと思っております。ただ、沖縄の県民の皆さんがどうしても反対だとなりますと、現実に進まない。沖縄の皆さんとも話さなくてはいけないし、またアメリカ政府とも話さなくてはいけないし、その中で両方が納得できるいい知恵が出るように努力することは、決して悪いとは思いません

 小沢氏は、そもそも米軍は沖縄から撤退しようとしていると指摘する。

 「米国としても、兵器や軍事技術が発達し、前線に大きな兵力を配置しておく必要はないと考えている。だからこそ、海兵隊をグアムへ移転させるのでしょう」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 たしかに、ドイツや韓国ではすでに米軍撤退と基地縮小が進んでいる。

 年明け早々に来日したゲーツ米国防長官は、1月13日に北沢俊美防衛相と会談し、共同記者会見で同盟の重要性を語った。

 「この1年間、普天間のことばかりが言われてきたが、日米同盟はより深く、より豊かなものだ」

 だが、小沢氏は昨年12月23日の動画配信サイト「ユーストリーム」で、こうぶちまけていた。

 「僕は日米同盟なんて、同盟関係じゃないと思ってる。同盟っていうのは対等な国と国との関係であって、日米同盟なんて存在しない

 ゲーツ長官は、2005年に策定した「共通戦略目標」を日米両政府が見直す際に、普天間問題を切り離す方針も明言した。しかし、と小沢氏は言う。

 「アメリカは、ほんとうに自分の利益に合致しなかったら、血を流してまで日本を守る気はないです。だからその意味で、僕はもっときちんと自立した日本人と日本にならなくてはいけないと主張している。アメリカは最大の同盟国であって、日本にとって最も大事な国であることは間違いない。ただ、だからといってアメリカに尾っぽを振っているだけでよいわけではない」(「週刊ポスト」1月14・21日号)

 日米間に横たわる本質的な問題は、今のままでは解決できないというのが年来の主張だ。

 ◆日中関係 大事な隣国でも言うべき事は言う

 日米関係と並んで重要なのが日中関係だ。

 小沢氏は日米中の関係は「正三角形であるべき」だと考えてきた。

 「政治・経済システムが基本的に一緒の日米関係が、非常に緊密で大事な関係であるのは間違いありません。ただ、中国は隣国で、文化的にも長年影響を受けた国だし、大国ですから、同じように大事な関係だと僕は言ってるんですよ」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 その中国と、昨年9月の尖閣諸島沖衝突事件で大もめにもめたのは、ご存じのとおりだ。政府が中国人船長を釈放したことに、与党内からも猛烈な反発が出た。

 小沢氏は、一連の対応について、
 「事実として領海侵犯、公務執行妨害があったのならば、法に照らして厳然と処理する。まあ、僕だったら、まず釈放はしません」(「週刊朝日」1月7・14日号)

 「親中派」と目される小沢氏だが、強気の姿勢は一貫している。

 「中国の首脳と会談したときにハッキリ言ってます。『何千年の歴史の中でも、中国の政権の支配下に入ったことはない。日本領土であることは間違いない』と。僕の正論、筋論に対して、中国はおかしな反論はしなかったですよ」(「ニコニコ生放送」10年11月3日)

 その一方で、今の中国の問題点をこう指摘する。

 「中国の今の政権はかなり軍部の力が強くなってるように私は感じます。中国は『覇権主義はとらないよ』と自分で言ってるんですから、一定のけじめある態度をとらないといけないと思います」(朝日ニュースター「ニュースの深層」1月11日)

 他方、日本自身の問題点も明確に意識している。

 「中国でも欧米でも、自己主張のない人間は軽蔑されます。逆に信頼を損ねることになる。歴代首相と一緒に外遊に行ったとき、世界観や哲学を問われて答えられる首相は、僕の知っている限りいなかった。だから、いけないんです」(「週刊朝日」1月7・14日号)

 ◆TPP 安全網とセットで自由貿易を進める

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加は、菅首相が消費税の増税と並ぶ政権浮揚の鍵と位置づける重要な政策だ。1月14日、内閣改造後の初閣議でも、
 「本年を『平成の開国元年』と捉え、貿易自由化や農業再生などにより日本人全体が世界に向かって活躍することを目指す」
 との基本方針を決定している。

 これに対し、党内では小沢系の議員を中心に、国内の農業への打撃を心配する声が強まっているが、実は小沢氏はTPPへの参加そのものには前向きだ。

 「自由貿易によって一番利益を得るのは日本です。だから、考え方は賛成です」(「ニコニコ生放送」10年11月3日)

 しかし、無防備な貿易自由化には反対しており、
 「セーフティーネットをきちんとしないうちに全部オープンにしちゃったら、それはもうゴチャゴチャになってしまいます。まったく無防備に、ただ賛成っていうのは、いけないと思います」(同前)
 と懸念も示している。

 つまり、貿易の自由化は安全網の整備とセットで進めるべきだというのが、小沢氏の考え方なのだ。

 小沢氏が言うセーフティーネットの柱は、農畜産物の販売価格と生産費の差額を販売農家に直接交付する「戸別所得補償制度」だ。すでに10年度からコメを対象に始まっており、初年度は5618億円の予算が計上された。

 ただ、党が09年衆院選などで掲げた公約を完全に実現するには、年1兆円の予算が必要だとされる。

 「政治主導」によるさらに踏み込んだ決断をするかどうか。菅政権の本気度が問われている。

 ◆地域主権 ひも付きやめれば地方は活性化する

 民主党は政権交代当初、地域主権改革を「改革の一丁目一番地」に掲げていた。だが、もはや風前の灯だ。

 菅首相は昨年12月16日、地域主権戦略会議で、
 「いっぺんに頂上までは行かないまでも、しっかり取り組む」
 と話したが、原則廃止のはずだった国の出先機関改革が当面先送りされるなど、中央省庁の抵抗は強烈だ。

 地域主権に関する小沢氏の主張は明確である。

 「国の『ひも付き補助金』を改めて一括交付金にすること。地方で自由に使えるカネが増えれば必ず活性化する」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 「民主党の調査でも、首長さんたちは自由に使えるお金ならば、今の補助金のトータルの7割で、今以上の仕事を十分やれるという答えが出ております。地方に落ちるカネは表面上は減りますけれども、実質的には増えるということです」(10年9月2日の民主党代表選の公開討論会)

 地方に財源を移譲すれば、ムダが削減されて実質的に新たな財源が生まれるというわけだ。

   ◆皇室・靖国 女性の皇位継承も一向に差し支えず

 小沢氏は、かねて女性天皇を容認している。

 雅子さまが愛子さまを出産し、皇室典範の改正論が高まった01年12月の会見では、こう指摘している。

 「女性の皇位継承者ということも一向に差し支えない。日本では何度も女性の天皇陛下というのはあった。男系の男子に限ったのは明治になって皇室典範を作ってからだ

 昨年の代表選に向けての会見でも、
 「男系の男性、直系の男性に限る必要はないのではないか」(10年9月8日)
 と語っている。

 一方、靖国問題では小沢氏は「分祀論者」である。

 「靖国神社は、戦争でお国のために亡くなった人をまつっているところだと思います。そして、いわゆるA級戦犯と呼ばれる方は、戦争そのものの行為で亡くなったわけではない。合祀される以前には、天皇陛下もきちんと靖国神社をお参りしておりましたし、総理を始めみなさんも確か参拝しておられたんじゃないでしょうか」(同前)

 分祀をして、靖国神社を誰でも参拝できる「本来」の姿に戻すべきだという主張だ。

      *

 小沢氏のさまざまな政策論の背景にあるのは、政権交代可能な二大政党制を定着させることが、この国の民主政治の発展にとって不可欠だという信仰にも似た確信だろう。

 「(歴史的な政権交代という)この試みが失敗すると、半永久的に日本に民主主義は定着しない。僕はそれを本気で心配している。民主党が政権を与えられたということは、歴史的に大変な役割を背負ったんだと思うんです。これを成功させなきゃいかんですよ」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 昨年末に本誌で小沢氏と対談した脳科学者の茂木健一郎氏は、「プリンシプル(原理・原則)の人」と評した。強制起訴を覚悟した「剛腕」の言動から、まだまだ目が離せない。  (本誌・神田知子、田中裕康)

   週刊朝日 談 [DAN] には次のようなバックナンバーもあります。(下平・注記)

       渡辺允前侍従長に聞いた「天皇陛下、喜寿の胸の内」
       皇太子妃雅子さまを"隠密行動"にしてしまう 宮内庁東宮職の愚


 02 17 (木) チャイナ・ウォッチャーの視点

    ニュースを探していて、面白いサイトを見つけました。

    このサイトを読んでみると、小沢一郎を中国ではどう見ているのか興味深いものがあります。
    茂木健一郎氏は、「プリンシプル(原理・原則)の人」と評した、とは週刊朝日2011年1月28日号でした。
    メディアの世界での小沢の評価は、菅の評価とは比べるべくもない。
    日本の検察権力の不条理な暴走をどこでチェックできるのだろうか。 真実の追究は出来ないのか。
    下記のサイト中にも‘(5)日本のような国家で、検察機関の「暴走」を抑える制度はあるのか’と疑念が出ている。



http://wedge.ismedia.jp/
WEDGE Infinity(ウェッジ)

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/760?page=1
単なる親中派にあらず 小沢一郎「中国観」の本音


チャイナ・ウォッチャーの視点
単なる親中派にあらず 小沢一郎「中国観」の本音
2010年02月03日(Wed) 城山英巳

民主党の小沢一郎幹事長が、自身の資金管理団体「陸山会」をめぐる土地取引事件で検察当局と攻防を展開、中国共産党・政府も注視している。小沢氏は2009年12月、民主党所属国会議員140人以上を含む総勢640人もの大訪中団を引き連れて北京で胡錦濤国家主席と会談。さらに来日する習近平国家副主席と天皇陛下との会見を望んだ中国の崔天凱駐日大使の要請を受け、「特例会見」実現に向けて官邸サイドに働き掛けるなど、今や中国が最も頼りにする「親中派」大物議員だ。それだけに日中関係も、検察捜査を受けた小沢氏の影響力次第という見方が強い。本稿では中国が小沢氏をどう見ているのか、そして「親中派」と見られる小沢氏は、実際に中国をどう捉えているのかその本音を探りたい。

「鳩山ではなく小沢」
 「小沢さんの捜査次第で民主党もどうなるか分からないでしょう」。これは中国政府幹部の偽らざる率直な感想だ。中国紙も今回の捜査の行方や「小沢像」について一定の程度で報じている。

 「鳩山(由紀夫首相)がいなくても民主党政権はまだ存在できるが、小沢がいなければ民主党政権は恐らく持続は難しいだろう。理由は非常に簡単だ。小沢が『選挙の神様』であると誰もが認識しているからである」。こう報じたのは、国営新華社通信発行の『参考消息』(1月21日付)だ。

 「片や日本最強の反汚職検察機関、片や日本政界で最強権力を持つ政治家。この両雄決闘は一体、いずれに軍配が上がるのか、日本人を釘付けにしている」。こう紹介した『第一財経日報』(同18日付)は現在の「5大懸念」についてこう指摘する。

 (1)検察機関は有力な証拠を発見できなかったらどう幕を引くのか
 (2)小沢がもし逮捕されれば民主党はどうするか
 (3)民主党が検察機関を報復するならば、この闘争はどこに向かうのか .
 (4)自民党はこの機に今夏の参院選で捲土重来を図れるか
 (5)日本のような国家で、検察機関の「暴走」を抑える制度はあるのか

 1月26日付『法制日報』は、「小沢は、田中角栄(元首相)を師としており、東京地検が最も湧き立ったロッキード事件で田中は有罪となったが、小沢と東京地検の恩と仇はこの時から始まった」と解説する。

 多くの論調が、小沢について日本政界を牛耳る「大物」ととらえ、田中角栄と重ね合わせていることが特徴だ。小沢の「中国原点」は田中である。昨年末に訪中した際、小沢は記者団にこう漏らしている。「最初に中国を訪問したのは初当選した40年近く前だったかなあ。私の政治の師匠である田中先生の大英断によって日中国交正常化ができ上がったわけだが、その意味でことさら感慨深い」。

 胡錦濤指導部に対日政策を提言している中国の日本研究者は09年末、北京で筆者にこう解説した。「われわれは今や民主党と鳩山政権を分けて考えている」。民主党政権はある程度長期化するが、鳩山内閣は長続きしないとの見方だ。そしてこう付け加えた。「中国国内では小沢氏の株が上がっている」。

 「大訪中団」と「天皇特例会見」を受けて胡指導部は、小沢の絶大な権力と影響力を見せ付けられたからだ。

 筆者は『文藝春秋』2月号に「中国共産党『小沢抱き込み工作』」と題するリポートを寄稿したが、中国が小沢を見る上で興味深い視点を拙稿の中から紹介したい。

 「中国政府関係者も、鳩山内閣を支配する小沢一郎について、最高実力者として時の総書記の上に立った『ケ小平』になぞらえる」。

 「鳩山ではなく、やはり小沢だ」。指導部は、日中間で懸案が持ち上がった際、最高実力者・小沢を「窓口」にすれば、「政治主導」で解決を図れると見込み、対日工作を強めようとした。その矢先の「陸山会」をめぐる土地取引事件だった。

米長官に「危うい中国」説く
 米軍普天間飛行場移設問題をめぐり日米同盟への亀裂が深刻化する最中の「小沢大訪中団」に対し、オバマ米政権からは、極端な対中接近に警戒論が噴出した。「小沢は一貫して民主党における対中交流の核心人物」と断言する社会科学院日本研究所の高洪研究員は、共産党機関紙・人民日報系の国際問題紙『環球時報』(09年12月11日付)に対してこう冷静に分析している。

 「小沢は対中友好を主張しているが、同時に日本が『大国路線』を歩み、日本の利益を保護する戦略という点では非常に強硬的な政治家である。国家戦略上で『日本は中国とは切っても切り離せない』とはっきりと認識しているにすぎない」。

 確かに小沢は、中国高官を前にした時の親中的発言と、それ以外の場で語る独自の「中国論」では大きく内容が違うことに注意を払う必要があろう。

 例えば、民主党が政権を取る前の09年2月。小沢は同党代表として来日した中国の王家瑞共産党対外連絡部部長と会談した際、当然ながら「親中派」の顔を前面に出した。「中国もアメリカも、ともに大事な国であり、(日中間と日米間が同じ長さの)二等辺三角形であり、トライアングルであることはその通りだ。中国は隣の国だし、長い歴史もあり、文化的にも交流が深い。そういう意味でどっちが大切とか、そういうことではなく、中国に対する特別な親近感を持っているし、当然、両国のより良い関係を発展させたい」。

 しかし実はこの1週間前、クリントン米国務長官が来日した際、打って変わって同長官に厳しい「中国論」を展開しているのだ。

 「中国問題がより大きな問題だと思う。中国のこれからの状態を非常に心配している。ケ小平さんが文化大革命の失敗を償うために市場主義を取り入れたのは大きな成果だったが、それは両刃の剣で市場主義と共産主義は相容れない。必ずこの矛盾が表面化するだろう。従って日米にとって世界にとって最大の問題は『中国問題』だろう」。

 この頃、講演会ではもっと過激な「中国論」を披露している。「中国はバブルが崩壊して共産党の腐敗は極度に進行している。軍部も非常に強くなっている。そういう中国で今、景気後退で大量の失業者が出ており、各地でものすごい暴動が起きていると聞いている。抑えているけど、共産党政権というのはその基盤が揺らいでいると思っている。中国は非常に危ういと思う」。

 「危うい中国」が小沢の本音だろう。与党・自由党党首だった1999年、新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の「周辺事態の範囲」をめぐって「中国、台湾も入る」と発言して中国を激怒させたことがあった。もともと中国の小沢観は「米国重視」「台湾寄り」「タカ派」「改憲論者」だったが、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝問題を受けた06年、最大野党代表・小沢は中国と「反小泉」で思惑が一致、「共同戦線」を組むようになったのである。

 さらに興味を引くのは、小沢が「最大の問題は中国」という言い方ではなく、わざわざ「中国問題」と言っていることだ。近く世界第2の経済大国になる中国の台頭という世界情勢の変化を見て、米中が「G2」として連携を強化すれば、日本はつまみ出されるという危機感が対中接近につながっているという側面は確かにある。しかしそれだけではなく、中国が抱える内部矛盾、つまり腐敗、格差、暴動などに代表される「危うい中国」も見抜き、日本としてどう向き合うかを説いているのだ。

 ある日中関係者は「小沢氏は中国を好きか嫌いかの感情論ではなく、必要か必要ではないかの観点からとらえている」と解説する。

「脱亜入欧」からの脱却
 小沢がなぜ「中国問題」にこだわるのだろうか。ヒントとなる発言がある。

 「自民党を出て13年がたった。幕末にペリーが黒船で来航(1853年)してから明治維新(1868年)まで15年。私に残された時間はあと2年だ」。06年に訪中した小沢は、古くからの友人、李淑錚元共産党対外連絡部部長に漏らした。

 あと2年間で政権を奪取する決意を語ったものであり、3年後にその決意は実際に実るわけだが、小沢は09年9月の自民党から民主党への政権交代を、明治維新以来の大改革の時と位置付けている。

 「小沢氏は歴史的観点を持っている」との見方を示すのは「日本通」の中国人研究者だ。

 「明治時代以来、日本は『脱亜入欧』を強め、欧米の基準に合わせてきた。しかし近代以来、日本の問題というのは結局、隣の大国である中国とどう向き合うかという『中国問題』だった。現在、中国が台頭する中で、小沢氏は単に『米国重視』から『中国重視』に転換したのではなく、複雑化する『中国問題』がどれだけ重要かという近代以来のテーマに日本人としてどう取り組むべきか問題提起しているのではないか」。

 日本は近代以降、欧米、特に戦後は米国を通じて中国やアジアの問題に取り組んできた。対中政策は常に、米国の顔色をうかがいながら決めてきた。しかし小沢は今、「脱亜入欧」を脱却し、「米国は米国」「中国は中国」としてそれぞれ正面から取り組む必要性を訴えているのではないか、というのがこの研究者の視点である。これが日米中「二等辺三角形論」というわけだ。

 ここで近代以降の日中関係を振り返っておこう。ちょうど、1月31日に発表された『日中歴史共同研究報告書』で、日本側座長・北岡伸一東大教授による「近代日中関係の発端」と題する論文が掲載されているので一部を引用したい。

 「西洋の衝撃なしには、東アジアの変容はありえなかった」。

 『報告書』の「近現代史総論」は、「西欧との遭遇の重要性という一点については、(日中)双方は共通の認識に達している」と指摘。「西洋の衝撃」に関して「中国においてはアヘン戦争、日本においてはペリー来航と明治維新を始点にしている」と記した。

 北岡氏は、「西洋の衝撃」に対して「中国は西洋が持ち込もうとした近代国家システムにうまく適応することができず、多くを失った。これに対して日本は、相対的にこの課題を大きな失敗なしに乗り切っていった」としているが、注で「一般的に言って、ある課題における成功の条件は、次の課題における失敗を引き起こすことが少なくない」と付け加えている。

 前述の中国人研究者は、「日本は近代以降、中国との付き合い方が分からず、失敗を重ねてきた」と解説する。まさに満州問題をはじめとする「中国問題」への対応の失敗が開戦と敗戦への道につながったと、この研究者は分析している。『報告書』では中国側研究者も、「脱亜入欧」が「対外拡張主義や武力至上論の道具になった」として、日本の近代対中政策の過程を否定的に見ている。

 「西洋の衝撃」の契機となったペリー来航・明治維新を、今回の政権交代と重ね合わせる小沢は、今まさに「光」と「陰」の両面において国際社会で存在感を高める中国の台頭を「中国の衝撃」ととらえ、近代以降の「脱亜入欧」の転換点として「中国問題」を正面から考える時期に来ていると考えているのではないか。

 小沢側近の民主党衆院議員は「今(民主党と中国共産党で)やっている交流は『政治主導』の戦略対話の土壌づくりだ」と言い切り、何でも言い合える関係づくりを目指していると強調したが、それが実現するかどうかは検察の捜査を受けた小沢の影響力如何に懸かっているのだ。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜