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折々の記 2012 �C

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】03/26〜     【 02 】04/03〜     【 03 】04/11〜
【 04 】05/02〜     【 05 】05/23〜     【 06 】05/24〜
【 07 】05/28〜     【 08 】06/02〜     【 09 】06/07〜

【 05 】05/23

  05 23 金環日食・「天声人語」朝刊
  05 24 孝経(身体髪膚)(その一)・(その二)

 05 23 (水) 金環日食・「天声人語」朝刊

●「金環日食」=5月21日、長野県飯田市の飯田市美術博物館(早坂洋祐撮影)



●「天声人語」朝刊(2012年5月23日)

▼幸田露伴の「五重塔」は、名人気質の頑固な大工が五重塔を独力で建てる物語。心魂を傾けた塔は落成式を前に大暴風雨に見舞われるが、嵐が去ると「一寸一分(いちぶ)歪(ゆが)みもせず」に見事に立っていた。工事中に東日本大震災に耐えた東京スカイツリーと、どこか重なり合う。

▼地震の1週間後には高さが634メートルに届いた。日本中が騒然、暗然となるなかで、ともしびのような話題だった。聞けば耐震性を高める設計は、伝統建築の五重塔の知恵を生かしているのだという。

▼「心柱(しんばしら)」と呼ばれる柱が、五重塔の中心を貫いている。似た構造をツリーも持つ。地震だけでなく、瞬間風速が毎秒110メートルという超暴風も想定しているそうだ。ツリーの地元で長く暮らした露伴翁は、天上でご満悦なことだろう。

▼着工から完成へ、淡々かつ黙々と空へ伸びていった。爪の垢(あか)を煎じて政治家に飲ませたくなるようなプロの仕事師ぶりだ。基礎工事をはじめ照明や塗装、アンテナなどまで、総身が日本の最新技術の結晶という。ものづくりの底力を思うと、じんとくる。

▼設計に際しては「威圧感を持たせないようにした」そうだ。巨大建築は往々に国威や権勢を誇り、象徴する。それをすらりと脱ぎ捨てた「雅(みやび)」と「粋(いき)」は江戸の下町によく似合う。

▼きのうの開業初日。前の日の天体ショーに晴れ間を譲ったのか、東京は雨になった。だが樹下から仰ぐと、上半分を雲が流れてなかなか幻想的だった。雨のち晴れの日本の明日を、ツリーとともに歩みたい。

 05 24 (木) 孝経(身体髪膚)(その一)・(その二)

孝経(その一)
  http://nozawa22.cocolog-nifty.com/nozawa22/2009/10/nozawa22-5.html
  孝経 身体髪膚 毀傷せざるは、孝の始め

掛け軸が、西木村の佐藤さん宅の床の間に掛けてあった。「この文章の意味は?」と、つい聞いてしまったら、誰も意味を知らない。ちょっといやみだったかと思い、調べてみた。すると、論語と並んで、儒教において規範として尊ばれる先秦典籍。儒家経典の五経、十三経などの一つ。私が論語だと勘違いしている文章が、書いてある。

身體髪膚、受之父母、不敢毀傷、孝之始也(身体髪膚之れを父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。)東洋思想の基本が書かれている。今、さんまが「オレ肩に笑と(刺青タトゥー)入れようか、それとも耳にピアスを空けようか、悩んどる」としゃべっていたが、彼がそんなこと言い出すほど、体にキズつけてもなんとも思わないほど、儒教の思想が衰退している。

孝は『孝経』において、道徳の根源、宇宙の原理として形而上化され、絶対服従と父子相隠は法律にも明文化された。儒教において規範として尊ばれる先秦典籍は、儒家経典の五経、十三経などがある。

君臣間の徳目である「忠」と常に齟齬を来すことになるが、中国や朝鮮では多くの場合、「忠」よりも「孝」が大切だと考えられた。ただし、日本においては朱子学伝来以後、逆に「孝」よりも「忠」が大切だと考えられて、江戸幕府体制下では公的な見解として採られる様になっていった。Wikipedia引用

『子曰く、吾十有五にして学に志し、 三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を 知る。六十にして耳順(したご)う。 七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。』

「孔子は言った、 十五歳のとき、私は学ぶことにまじめに興味を抱き始めた。(志学) 三十歳で私は私の性格を形成した。(而立) 四十歳で私はいかなる困惑をももたなくなった。(不惑) 五十歳で私は「天」の意志を知るにいたった。(知命) 六十歳で私の耳にするどんな言葉も、私を掻き乱すことがなくなった。(耳順) 七十歳で、私は道徳律を脱逸しないで、 私の思いを自由に遊ばせることが出来るようになった。(従心)」【論語/為政篇】

論語に書かれている言葉は、中学生、高校生になれば、大抵は知っていた。だから、15歳で志を立て、勉強始めるという励まし方をした。

今の天皇陛下であられたと思うが、40歳の記者会見で、「不惑の歳」という言葉を踏まえて「まだ迷ってばかりです」と答えておられた。而立=30歳、知命=50歳、耳従=60歳。みんな、これらの言葉を踏まえて、自分の人生を語っていた。最終段階は、70歳で「心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず」自分のしたいことをしても、法を犯さず、自在の自分が存在する、と考えられた。

なかなか、この通りにはいかないが、一つの道筋だ。私の好きな言葉は「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る 」倉庫(今は貯蓄かな)がいっぱいになって礼儀と節度を知り、着る物と食べるものが充分あってはじめて名誉と恥を知る。

なかなか、昔の人は人生の真髄をついている。現代人は、改めて古代の人が人生の全てを知り尽くしているなだから、それを「温故知新」っていって、学習しなおしですね。

これらは、みな中国から知恵を輸入したもので、東洋の知恵、これこそが東アジア共同体のコンセプトにしたらどうだろう。タトゥーを体に刻みこむ文化より、いいように思うが、どうなんだろう。

若い世代の人とは、文化のギャップがあるから、共感を持たれない。だからから、こういうことは異世代間で理解しあうチャンスがほしいものだ。

孝経本文と読み方

【本文】

孔子謂曾子曰、身體髪膚受之父母。不敢毀傷、孝之始也。身體、言其大。髪膚、言其細。聖人論孝之始、以愛身爲先。立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。國人稱願幸哉有子如此。所謂孝也。夫孝始於事親、中於事君、終於立身。愛親者不敢惡於人、敬親者不敢慢於人。愛敬盡於事親而�コ�ヘ加于百姓、刑于四海。此天子之孝也。惡慢於人、則人亦惡慢之。如此辱將及親。在上不驕、高而不危、制節謹度、滿而不溢。然後能保其社稷而和其民人。此諸侯之孝也。高而危者以驕也。滿而溢者以奢也。制節、制財用之節。謹度、不越法度。非先王之法服不敢服、非先王之法言不敢道、非先王之�コ行不敢行。然後能保其宗廟。此卿大夫之孝也。以孝事君則忠、以敬事長則順。忠順不失以事其上。然後能守其祭祀。此士之孝也。用天之道、因地之利、謹身節用以養父母。此庶人之孝也。春耕、秋穫、高宜黍稷、下宜稻麥。謹身則無過不犯兵刑、節用則不乏以共甘旨。能此二者養道盡矣。故自天子至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。

【読み】

孔子、曾子に謂いて曰く、身體髪膚之を父母に受く。敢て毀傷せざるは孝の始なり。身體は其の大を言う。髪膚は其の細を言う。聖人孝の始を論じ、身を愛するを以て先と爲す。身を立て道を行い、名を後世に揚げて、以て父母を顯わすは、孝の終りなり。國人、幸なるかな子有りて此の如しと稱願す。孝と謂う所なり。夫れ孝は親に事うるに始まり、君に事うるに中ばし、身を立つるに終る。親を愛する者は敢て人を惡まず、親を敬う者は敢て人を慢らず。愛敬親に事うるに盡して�コ�ヘ百姓に加わり、四海に刑(のっと)る。此れ天子の孝なり。人を惡み慢れば、則ち人も亦之を惡み慢る。此の如くなれば、辱しめ將に親に及ばんとす。上に在りて驕らざれば、高くして危からず、節を制し度を謹めば、滿ちて溢れず。然して後に能く其の社稷を保ちて其の民人を和す。此れ諸侯の孝なり。高くして危き者は驕るを以てなり。滿ちて溢れる者は奢るを以てなり。節を制するは、財用の節を制するなり。度を謹むは、法度を越えざるなり。先王の法服に非ざれば敢て服せず、先王の法言に非ざれば敢て道わず、先王の�コ行に非ざれば敢て行わず。然して後に能く其の宗廟を保つ。此れ卿大夫の孝なり。孝を以て君に事うれば則ち忠、敬を以て長に事うれば則ち順。忠順失わずして以て其の上に事う。然して後に能く其の祭祀を守る。此れ士の孝なり。天の道を用い、地の利に因り、身を謹み用を節して以て父母を養う。此れ庶人の孝なり。春は耕し、秋は穫り、高きは黍稷に宜しく、下きは稻麥に宜し。身を謹めば則ち過無くして兵刑を犯さず、用を節すれば則ち乏しからずして以て甘旨を共う。此の二の者を能くして養道盡く。故に天子より庶人に至るまで、孝に終始無くして、患及ばざる者は、未だ之れ有らざるなり。

孝経(その二)
  http://kanbun.info/keibu/kokyo01.html
  <Web漢文大系 > 孝経 >>

孝経 開宗(かいそう)明義(めいぎ)章第一

仲尼居、曾子侍。
仲尼(ちゅうじ)居(きょ)し、曾子(そうし)侍(じ)す。
  • 仲尼 … 孔子のこと。
  • 居 … 古文では「間居」に作る。
  • 曾子 … 孔子の弟子で、姓は曾、名は参(しん)、字(あざな)は子輿(しよ)のこと。
  • 侍 … 古文では「侍坐」に作る。
子曰、先王有至徳要道、以順天下、
子(し)曰(いわ)く、先王、至徳(しとく)要道(ようどう)あって、もって天下を順(じゅん)にす。
  • 至徳 … 無上の徳、孝徳を指す。
  • 要道 … 肝心な道、大事な道、孝道を指す。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
民用和睦、上下無怨、汝知之乎。
民(たみ)用(もっ)て和睦し、上下(しょうか)怨みなし。汝(なんじ)これを知るか、と。
  • 上下 … 「上」は君父、「下」は臣子、身分の高い者も低い者もの意。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 汝 … 今文は「汝」、古文は「女」、ただし四部叢刊本では「女」に作る。
曾子避席曰、參不敏、何足以知之。
曾子(そうし)席(せき)を避(さ)けて曰(いわ)く、参(しん)不敏(ふびん)なり。何(なん)ぞ以(もっ)て之(これ)を知(し)るに足(た)らん。
  • 不敏 … 賢くないこと。転じて自己の謙称。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 古文では「何足以知之」のあとに「乎」の字あり。
子曰、夫孝、徳之本也、教之所由生也。
子(し)曰(いわ)く、それ孝は徳の本なり。教(おしえ)のよって生ずるところなり。
  • 由 … 古文では「?」に作る。
復坐、吾語汝。
坐に復(かえ)れ。われ、汝(なんじ)に語らん。
  • 汝 … 今文は「汝」、古文は「女」、ただし四部叢刊本では「女」に作る。
身體髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝至始也。
身体(しんたい)髪膚(はっぷ)、之(これ)を父母(ふぼ)に受(う)く。敢(あえ)て毀傷(きしょう)せざるは、孝の始めなり。
  • 之… 古文では「于」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。
身を立て道を行い、名を後世(こうせい)に揚(あ)げ、もって父母を顕(あら)わすは、孝の終りなり。
夫孝、始於事親、中於事君、終於立身。
夫(そ)れ孝は、親に事(つか)うるに始まり、君(きみ)に事うるに中(ちゅう)し、身を立つるに終る。
大雅曰、無念爾祖、聿脩厥徳。
大雅(たいが)に曰く、爾(なんじ)の祖を念(おも)うことなからんや。その徳を聿(の)べ修む、と。
  • 大雅… 『詩経』大雅・文王の章。
  • 脩… 古文では「修」に作る。
  • 厥 … 古文では「其」に作る。

孝経 天子(てんし)章第二

子曰、愛親者不敢惡於人、
子(し)曰(いわ)く、親(おや)を愛(あい)する者(もの)は、敢(あ)えて人(ひと)を悪(にく) まず。
敬親者不敢慢於人。
親を敬(けい)する者(もの)は、敢(あ)えて人(ひと)を慢(あなど)らず。
愛敬盡於事親、而徳教加於百姓、刑于四海、
愛敬(あいけい)親に事(つか)うるに尽(つく)して、徳教百姓(ひゃくせい) に加わり、四海に刑(のっと) る。
  • 而… 古文では「然後」に作る。
  • 百姓… 庶民。
  • 于 … 古文では「於」に作る。
蓋天子之孝也。
蓋(けだ)し天子の孝なり。
甫刑云、一人有慶、兆民頼之。
甫刑(ほけい)に云く、一人慶あれば、兆民(ちょうみん)これを頼(こうむ)る、と。
  • 甫刑… 古文では「呂刑」に作る。『書経』の呂刑篇。
  • 兆民… 多くの民。

孝経 諸侯(しょこう)章第三

在上不驕、高而不危。
上(かみ)にありて驕(おご)らざれば、高くして危うからず。
  • 在… 古文では「居」に作る。
  • 古文では「子曰、居上不驕……」で始まる。
制節謹度、滿而不溢。
節を制し度を謹めば、満ちて溢(あふ)れず。
高而不危、所以長守貴也。
高くして危うからざるは、長く貴(たっと)きを守るゆえんなり。
  • 貴 … この場合、お金持ちのこと。
滿而不溢、所以長守富也。
満ちて溢れざるは、長く富を守るゆえんなり。
  • 富 … この場合、福と同義。
富貴不離其身、然後能保其社稷、而和其民人、蓋諸侯之孝也。
富貴はその身を離れず、しかる後(のち)よくその社稷(しゃしょく)を保って、その民人(みんじん)を和す。けだし諸侯の孝(こう)なり。
  • 社稷 … 国家のこと。
詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。
詩に云く、「戰戰兢兢(せんせんきょうきょう)として、深淵(しんえん)に臨(のぞ)むが如く、薄氷(はくひょう)を履(ふ)むが如し」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・小旻の章。

孝経 卿大夫(けいたいふ)章第四

非先王之法服、不敢服。
先王の法服にあらざれば、敢て服(ふく)せず。
  • 古文では「子曰、非先王之法服……」で始まる。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
非先王之法言、不敢道。
先王の法言にあらざれば、敢て道(い)わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
非先王之徳行、不敢行。
先王の徳行にあらざれば、敢て行わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
是故非法不言、非道不行。
この故に法にあらざれば言わず、道にあらざれば行わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
口無擇言、身無擇行、
口に択言(たくげん)なく、身に択行(たくこう)なし。
  • 択言 … 言葉を選ぶこと。
  • 択行 … 行ないを選ぶこと。
言滿天下無口過、行滿天下無怨惡。
言(ことば)、天下に満ちて口過(こうか)なく、行い、天下に満ちて怨悪(えんお)なし。
  • 無口過 … 古文では「亡口過」に作る。
  • 無怨悪 … 古文では「亡怨悪」に作る。
  • 口過 … 失言。
三者備矣。
三つの者備わる。
然後能守其宗廟。蓋卿大夫之孝也。
しかる後(のち)よくその宗廟(そうびょう)を守る。けだし卿大夫の孝なり。
  • 古文では「然後能」のあとに「保其祿位而」の五字あり。
  • 宗廟 … 祖先の霊をまつった建物、みたまや。
詩云、夙夜匪懈、以事一人。
詩に云く、「夙夜(しゅくや) 懈(おこた)らず、もって一人(いちにん)に事(つか)う」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・烝民の章。
  • 夙夜 … 朝早くから夜遅くまで。

孝経 士(し)章第五

資於事父以事母而愛同。
父に事(つか)うるに資(と)ってもって母に事う、而(しこう)して愛同じ。
  • 古文では「子曰、資於事父以事母……」で始まる。
  • 而 … 古文では「其」に作る。
資於事父以事君而敬同。
父に事(つか)うるに資(と)ってもって君に事う、而(しこう)して敬同じ。
  • 而 … 古文では「其」に作る。
故母取其愛。而君取其敬。
ゆえに母にはその愛を取り、君にはその敬を取る。
兼之者父也。故以孝事君則忠。
これを兼(か)ぬる者は父なり。ゆえに孝をもって君に事(つか)うればすなわち忠なり。
以敬事長則順。忠順不失。以事其上。
敬をもって長に事(つか)うればすなわち順なり。忠順失わず、もってその上(かみ)に事(つか)う。
  • 敬 … 古文では「弟」に作る。
然後能保其禄位。而守其祭祀。蓋士之孝也。
しかる後よくその禄位(ろくい)を保ち、その祭祀を守る。けだし士(し)の孝なり。
  • 禄位 … 古文では「爵禄」に作る。
詩云。夙興夜寐。無忝爾所生。
詩に云く、「夙(つと)に興(お)き夜(よわ)に寐(い)ねて、爾(なんじ)の所生(しょせい)を忝(はずか)しむることなかれ」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・小宛の章。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 所生 … 父母。

孝経 庶人(しょじん)章第六

用天之道、分地之利、謹身節用、以養父母、此庶人之孝也。
天の道を用(もち)い、地の利を分(わか)ち、身を謹み用を節(せっ)し、以(もっ)て父母を養(やしな)う。此(こ)れ庶人(しょじん)の孝なり、と。
  • 古文では「子曰、因天之時……」で始まる。
  • 用天之道 … 「天之道」は春夏秋冬の四時の変化。「用」を古文では「因」に作る。「道」を古文では「時」に作る。
  • 分 … 古文では「就」に作る。
  • 地之利 … 地質の良し悪し、土地の農作物を生産しうる力。
  • 節用 … 財産を節約すること。
故自天子、至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。
故(ゆえ)に天子より庶人に至(いた)るまで、孝に終始無(な)くして、患(わざわ)いの及ばざる者は、未(いま)だ之(こ)れ有(あ)らざるなり。
  • 古文では「故自天子……」以下を独立させて「孝平章第七」としている。
  • 古文では「子曰、故自天子……」で始まる。
  • 古文では「故自天子」のあとに「以下」の二字あり。
  • 至於庶人 … 古文では「至于庶人」に作る。
  • 孝無終始 … 古文では「孝亡終始」に作る。

孝経 三才(さんさい)章第七

曾子曰、甚哉、孝之大也。
曽子(そうし)曰(いわ)く、甚(はなは)だしいかな、孝(こう)の大(だい)なるや。
  • 古文では「三才章 第八」に作る。三才とは天・地・人のこと。
子曰、夫孝天之經也。地之義也。民之行也。
子(し)曰(いわ)く、夫(そ)れ孝は天の経(けい)なり、地の義なり、民の行いなり。
  • 経 … 不変の法則。
  • 義 … 秩序の原型。古文では「誼」に作る。
天地之經、而民是則之。
天地の経にして、民ここにこれに則(のっと)る。
則天之明、因地之利。以順天下。
天の明に則(のっと)り、地の利に因(よ)り、もって天下を順(じゅん)にす。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
是以其教不肅而成、其政不嚴而治。
ここをもってその教(おし)え肅(しゅく)ならずして成り、その政(まつりごと)厳(げん)ならずして治まる。
先王見教之可以化民也。是故先之以博愛、而民莫遺其親。
先王、教えのもって民を化(か)すべきを見るなり。この故にこれに先んずるに博愛をもってして、民その親を遺(わす)るることなし。
陳之以徳義、而民興行。
これに陳(の)ぶるに徳義をもってして、民興行(こうこう)す。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 興行 … 奮起して行いに努めること。
先之以敬讓、而民不爭。
これに先んずるに敬譲(けいじょう)をもってして、民争わず。
  • 敬譲 … 恭敬謙譲。
導之以禮樂、而民和睦。
これを導くに礼楽(れいがく)をもってして、民和睦(わぼく)す。
示之以好惡、而民知禁。
これに示すに好悪(こうお)をもってして、民禁を知る。
  • 禁 … 禁令。
詩云、赫赫師尹、民具爾瞻。
詩に云く、「赫赫(かくかく)たる師尹(しいん)。民ともに爾(なんじ)を瞻(み)る」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・節南山の章。
  • 赫赫 … 光り輝くさま。
  • 師尹 … 太師の尹氏。
  • 瞻る … 仰ぎ見ること。

孝経 孝治(こうち)章第八

子曰、昔者、明王之以孝治天下也、不敢遺小國之臣。而況於公侯伯子男乎。
子(し)曰(いわ)く、昔者(むかし)、明王(みょうおう)の孝をもって天下を治むるや、あえて小国の臣を遺(わす)れず。しかるをいわんや公(こう)侯(こう)伯(はく)子(し)男(だん)においてをや。
  • 古文では「孝治章 第九」に作る。
  • 明王 … 賢い王。
故得萬國之懽心、以事其先王。
ゆえに万国の懽心(かんしん)を得て、もってその先王に事(つか)う。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
治國者不敢侮於鰥寡。而況於士民乎。
国を治むる者はあえて鰥寡(かんか)を侮らず。しかるをいわんや士民においてをや。
  • 鰥寡 … 男やもめと後家。
故得百姓之懽心、以事其先君。
故に百姓(ひゃくせい)の懽心(かんしん)を得て、もってその先君に事う。
  • 百姓 … 国中の人々。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
治家者不敢失於臣妾、而況於妻子乎。
家を治むる者はあえて臣妾(しんしょう)を失わず、しかるをいわんや妻子においてをや。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 臣妾 … 下男・下女。
  • 古文では「治家者不敢失於臣妾」のあとに「之心」の二字あり。
故得人之懽心、以事其親。
ゆえに人の懽心(かんしん)を得てもってその親に事う。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
夫然。故生則親安之、祭則鬼享之。
夫(そ)れ然(しか)り。故(ゆえ)に生(い)けるには則(すなわ)ち親(おや)之(これ)に安(やす)んじ、祭(まつり)には則(すなわ)ち鬼(き)之(これ)を享(う)く。
  • 鬼 … 死者の霊。
是以天下和平、災害不生、禍亂不作。
是(ここ)を以(もっ)て天下(てんか)和平(わへい)にして、災害生(しょう)ぜず、禍乱(からん)作(おこ)らず。
故明王之以孝治天下也如此。
故(ゆえ)に明王(めいおう)の孝を以(もっ)て天下(てんか)を治(おさ)むるや此(かく)の如(ごと)し。
詩云、有覺徳行、四國順之。
詩に云く、「覚(かく)たる徳行あり、四国これに順(したが)う」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅抑の章。
  • 覚 … 正直高大。
  • 四国 … 四方の国々。

孝経 聖治(せいち)章第九

曾子曰、敢問、聖人之徳、無以加於孝乎。
曽子曰く、あえて問う、聖人の徳もって孝に加うることなきかと。
  • 古文では「聖治章 第十」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
子曰、天地之性、人為貴。
子(し)曰(いわ)く、天地の性、人を貴(たっと)しとなす。
人之行、莫大於孝。
人の行いは、孝より大なるはなし。
孝莫大於嚴父。
孝は、父を厳(げん)にするより大なるはなし。
嚴父莫大於配天。
父を厳にするは天に配するより大なるはなし。
則周公其人也。
すなわち周公(しゅうこう)はその人なり。
昔者、周公郊祀后稷以配天、宗祀文王於明堂以配上帝。
昔者(むかし)、周公は后稷(こうしょく)を郊祀(こうし)してもって天に配し、文王(ぶんのう)を明堂(めいどう)に宗祀(そうし)してもって上帝に配す。
  • 周公 … 周初の政治家。文王の子。姓は姫(き)、名は旦(たん)。兄の武王を助けて殷を滅ぼし、その死後、幼少の成王を補佐して周の基礎を固めた。孔子は礼を整備した聖人として尊敬し、後世、先聖とあがめられた。魯(ろ)の祖。周公旦。
  • 后稷 … 「后」は君、「稷」は五穀。周王朝の始祖とされる伝説上の人物。姓は姫(き)、名は棄(き)。舜につかえて人々に農業を教え、功により后稷(農官の長)の位についた。
  • 郊祀 … 帝王が国都の郊外に壇を築き天地をまつる儀式。漢代以降は帝王の特権となり、その威厳を誇示する祭祀となった。郊社。郊祭。
  • 文王 … 周王朝の始祖武王の父。姓は姫(き)、名は昌。西伯と称する。殷代末期に、太公望など賢士を集め、渭水盆地を平定して周の基礎を築いた。古代の聖王の模範とされる。生没年未詳。
  • 明堂 … 天子や王者が政治を行う宮殿。政堂。朝廷。
  • 宗祀 … 最も大切なものとしてまつること。
  • 上帝 … 天上にあって、万物を支配する神。天帝。
是以四海之内、各以其職來祭。
ここをもって四海のうち、おのおのその職をもって来り祭る。
  • 四海 … 天下。世の中。また、世界。
夫聖人之徳、又何以加於孝乎。
それ聖人の徳、また何をもってか孝に加えんや。
故親生之膝下、以養父母日嚴。
ゆえに親(おや)これを膝下(しっか)に生じ、もって父母を養い、日(ひび)に厳(げん)にす。
  • 故親生之膝下、以養父母日嚴 … 古文では「是故親生毓之、以養父母曰嚴」に作る。
聖人因嚴以教敬、因親以教愛。
聖人厳に因(よ)りてもって敬を教え、親に因(よ)りてもって愛を教う。
聖人之教不肅而成、其政不嚴而治。
聖人の教えは肅(しゅく)ならずして成り、その政(まつりごと)は厳ならずして治まる。
其所因者本也。
その因(よ)るところのものは本なり。
父子之道天性也。君臣之義也。
父子の道は天性(てんせい)なり。君臣の義なり。
  • 「父子之道」以下、古文では「父母生績章 第十一」に作る。
  • 古文では「父子之道」に前に「子曰」の二字あり。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 也 … 古文ではこの字なし。
父母生之、續莫大焉。
父母これを生む。続(つづ)くこと、これより大なるはなし。
  • 續 … 古文では「績」に作る。
君親臨之、厚莫重焉。
君親(くんしん)としてこれに臨む。厚(あつ)きことこれより重きはなし。
故不愛其親、而愛他人者、謂之悖徳。
ゆえにその親を愛せずして他人を愛する者、これを悖徳(はいとく)と謂う。
  • 故 … 古文ではこの字なし。
  • 「不愛其親」以下、古文では「孝優劣章 第十二」に作る。
  • 古文では「不愛其親」に前に「子曰」の二字あり。
不敬其親而敬他人者、謂之悖禮。
その親を敬せずして他人を敬する者、これを悖禮(はいれい)と謂う。
以順則、逆民無則焉。
順をもってすれば則(のっと)り、逆なれば民則(のっと)ることなし。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
  • 逆 … 古文では「昏」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
不在於善、而皆在於凶徳。
善にあらずして、みな凶徳にあり。
  • 在 … 古文では「宅」に作る。
雖得之、君子不貴也。
これを得(う)といえども、君子は貴(たっと)ばざるなり。
  • 之 … 古文では「志」に作る。
  • 不貴 … 古文では「弗從」に作る。
君子則不然。
君子はすなわち然(しか)らず。
言思可道、行思可樂。
言(げん)は道(い)うべきを思い、行(こう)は楽しむべきを思う。
徳義可尊、作事可法、容止可觀、進退可度。
徳義尊(たっと)ぶべく、作事法(のっと)るべく、容止(ようし)観るべく、進退度(ど)とすべし。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
以臨其民。
もってその民に臨(のぞ)む。
是以其民畏而愛之、則而象之。
ここをもってその民畏(おそ)れてこれを愛し、則(のっと)ってこれに象(かたど)る。
故能成其徳教、而行其政令。
ゆえによくその徳教を成して、その政令を行(おこな)う。
詩云、淑人君子、其儀不?。
詩に云く、「淑人(しゅくじん)君子、その儀?(たが)わず」と。
  • 詩 … 『詩経』曹風・?鳩の章。
  • 淑人 … 善人。

孝経 紀(き)孝行(こうこう)章第十

子曰、孝子之事親也、居則致其敬、養則致其樂、病則致其憂、喪則致其哀、祭則致其嚴。
子(し)曰(いわ)く、孝子の親に事(つか)うるや、居(おる)にはすなわちその敬を致し、養(やしない)にはすなわちその楽(たのしみ)を致し、病(やまい)にはすなわちその憂(うれい)を致し、喪(も)にはすなわちその哀(かなしみ)を致し、祭(まつり)にはすなわちその厳(げん)を致す。
  • 古文では「紀孝行章 第十三」に作る。
  • 病 … 古文では「疾」に作る。
五者備矣、然後能事親。
五つのもの備わりて、しかる後よく親に事う。
  • 然後能事親 … 古文では「然後能事其親」に作る。
事親者、居上不驕、爲下不亂、在醜不爭。
親に事うる者は上(かみ)に居て驕(おご)らず、下(しも)となって乱れず、醜(もろもろ)に在って争わず。
居上而驕則亡、爲下而亂則刑、在醜而爭則兵。
上に居て驕(おご)ればすなわち亡び、下となって乱るればすなわち刑(けい)せられ、醜(もろもろ)に在って争えばすなわち兵(へい)せらる。
三者不除、雖日用三牲之養、猶爲不孝也。
三つのもの除かざれば、日に三牲(さんせい)の養(やしない)を用いるといえども、猶(なお)不孝となすなり。
  • 三者不除 … 古文では「此三者不除」に作る。
  • 三牲 … 牛・羊・豕(いのこ、ぶた)。
  • 猶 … 古文では「?」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。

孝経 五刑(ごけい)章第十一

子曰、五刑之屬三千、而罪莫大於不孝。
子(し)曰(いわ)く、五刑(ごけい)の属(ぞく)三千、罪(つみ)不孝より大なるはなし。
  • 古文では「五刑章 第十四」に作る。
  • 五刑 … 肉体を傷つける五種類の刑罰。
  • 罪 … 古文では「辜」に作る。
要君者無上、非聖人者無法、非孝者無親。
君(きみ)を要する者は上(かみ)を無(なみ)し、聖人を非(そし)る者は法を無(なみ)し、孝を非(そし)る者は親を無(なみ)す。
  • 無 … ないがしろにすること、無視すること。古文では「亡」に作る。
此大亂之道也。
此(こ)れ大乱の道なり。

孝経 廣(こう)要道(ようどう)章第十二

子曰、教民親愛、莫善於孝。
子(し)曰(いわ)く、民に親愛を教うるは孝より善きはなし。
  • 古文では「廣要道章 第十五」に作る。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
教民禮順、莫善於悌。
民に礼順(れいじゅん)を教うるは悌(てい)より善きはなし。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
移風易俗、莫善於樂。
風(ふう)を移し俗(ぞく)を易(かう)うるは、楽(がく)より善きはなし。
  • 移風易俗 … 民衆の悪い風俗を善い方向へ移し改めること。
  • 楽 … 音楽。
安上治民、莫善於禮。禮者敬而已矣。
上(かみ)を安(やす)んじ民を治むるは、礼より善きはなし。礼は敬のみ。
故敬其父、則子悦、敬其兄、則弟悦、敬其君、則臣悦。
故(ゆえ)に其(そ)の父を敬すれば則(すなわ)ち子悦(よろこ)び、其(そ)の兄を敬すれば則(すなわ)ち弟悦(よろこ)び、其(そ)の君(きみ)を敬すれば則(すなわ)ち臣(しん)悦(よろこ)ぶ。
敬一人而千萬人悦。
一人(いちにん)を敬(けい)して千万人(せんまんにん)悦(よろこ)ぶ。
所敬者寡、而悦者衆。此之謂要道也。
敬(けい)する所(ところ)の者(もの)は寡(すくな)くして、悦ぶ者は衆(おお)し。之(これ)を此(こ)れ要道(ようどう)と謂(い)うなり。
  • 要道 … 大切の道、肝要な道。

孝経 廣(こう)至徳(しとく)章第十三

子曰、君子之教以孝也、非家至而日見之也。
子(し)曰(いわ)く、君子の教うるに孝をもってするや、家ごとに至って日ごとにこれを見るにあらざるなり。
  • 古文では「廣至徳章 第十六」に作る。
  • 也 … 古文にはこの字なし。
教以孝所以敬天下之爲人父者也。
教うるに孝をもってするは、天下の人の父たる者を敬するゆえんなり。
教以悌所以敬天下之爲人兄者也。
教うるに悌(てい)をもってするは、天下の人の兄(あに)たる者を敬するゆえんなり。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
教以臣、所以敬天下之爲人君者也。
教うるに臣をもってするは、天下の人の君(きみ)たる者を敬するゆえんなり。
詩云、�ト悌君子、民之父母。
詩に云く、「�ト悌(がいてい)の君子は民(たみ)の父母なり」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・?酌(けいしゃく)の章。
  • �ト悌 … 易(やわ)らぎ楽しむこと。
非至徳、其孰能順民如此其大者乎。
至徳(しとく)にあらざれば、それ孰(たれ)かよく民に順(じゅん)にすること、かくのごとくそれ大なる者あらんや。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。

孝経 廣(こう)揚名(ようめい)章第十四

子曰。君子之事親孝。故忠可移於君。
子(し)曰(いわ)く、君子の親に事(つか)うるや孝。ゆえに忠をば君(きみ)に移すべし。
  • 古文では「廣揚名章 第十八」に作る。
  • 之 … 古文にはこの字なし。
事兄悌。故順可移於長。
兄に事うるや悌(てい)。故(ゆえ)に順をば長に移(うつ)す可(べ)し。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
居家理。故治可移於官。
家に居て理(おさ)まる、ゆえに治をば官に移すべし。
是以行成於内、而名立於後世矣。
ここをもって行いは内(うち)に成って、名は後世に立つ。
  • 内 … 家の中。

孝経 諫爭(かんそう)章第十五

曾子曰、若夫慈愛恭敬、安親揚名、則聞命矣。
曽子曰く、夫(か)の慈愛(じあい)恭敬(きょうけい)、親を安んじ名を揚(あ)ぐるがごときは、すなわち命を聞けり。
  • 古文では「諫諍章 第二十」に作る。
  • 恭 … 古文では「?」に作る。
  • 則 … 古文では「參」に作る。
敢問、子從父之令、可謂孝乎。
あえて問う、子(し)、父の令(れい)に従うは、孝と謂(い)うべきか。
  • 令 … 古文では「命」に作る。
子曰、是何言與。是何言與。
子(し)曰(いわ)く、これ何(なん)の言(げん)ぞや。これ何(なん)の言ぞや。
  • 子曰、是何言與。是何言與。 … 古文では「子曰、參是何言與。是何言與。言之不通耶。」に作る。
昔者、天子有爭臣七人、雖無道、不失其天下。
昔者(むかし)、天子に争臣(そうしん)七人あれば、無道といえどもその天下を失わず。
  • 争臣 … 君の過失を痛烈にいさめる家臣のこと。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 其 … 古文にはこの字なし。
諸侯有爭臣五人、雖無道、不失其國。
諸侯に争臣五人あれば、無道といえどもその国を失わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
大夫有爭臣三人、雖無道、不失其家。
大夫(たいふ)に争臣三人あれば、無道といえどもその家を失わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
士有爭友、則身不離於令名。
士に争友(そうゆう)あれば、すなわち身(み)、令名(れいめい)を離れず。
  • 争友 … 悪い点をどこまでもいさめてくれる友人。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 令名 … 名声。
父有爭子、則身不陷於不義。
父に争子(そうし)あれば、すなわち身、不義(ふぎ)に陥らず。
  • 争子 … 過失をいさめる子のこと。
  • 不陷 … 古文では「弗陷」に作る。
故當不義、則子不可以不爭於父。
ゆえに不義に当っては、すなわち子もって父に争わざるべからず。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
臣不可以不爭於君。故當不義、則爭之。
臣、もって君(きみ)に争わざるべからず。ゆえに不義に当ってはすなわちこれを争う。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
從父之令。又焉得爲孝乎。
父の令に従(したが)う。また焉(いずく)んぞ孝と為(な)すを得(え)んや。
  • 令 … 古文では「命」に作る。
  • 焉 … 古文では「安」に作る。

孝経 應感(おうかん)章第十六

子曰、昔者、明王事父孝、故事天明。
子(し)曰(いわ)く、昔者(むかし)、明王父に事(つか)えて孝、故(ゆえ)に天に事(つか)えて明なり。
  • 古文では「應感章 第十七」に作る。
事母孝、故事地察。
母に事(つか)えて孝、故(ゆえ)に地に事(つか)えて察(さつ)なり。
  • 察 … 明らか。
長幼順。故上下治。
長幼(ちょうよう)順(じゅん)なり、故(ゆえ)に上下(しょうか)治まる。
天地明察、神明彰矣。
天地明察なれば神明彰(あら)わる。
  • 神明 … 古文では「鬼神」に作る。
  • 彰 … 古文では「章」に作る。
故雖天子、必有尊也。言有父也、必有先也。言有兄也。
故に天子と雖も必ず尊(そん)有るなり。父有るを言うなり。必ず先(せん)有るなり。兄有るを言うなり。
  • 古文では「言有兄」のあとに「必有長」の三字があるが、衍字と思われる。
宗廟致敬、不忘親也。
宗廟(そうびょう)に敬を致せば親を忘れざるなり。
脩身愼行、恐辱先也。
身を修め行いを慎むは、先を辱(はずかし)めんことを恐るるなり。
宗廟致敬、鬼神著矣。
宗廟に敬を致せば鬼神著(あらわ)る。
孝悌之至、通於神明、光于四海、無所不通。
孝悌の至りは神明に通じ、四海に光(み)ち、通ぜざるところなし。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
  • 于 … 古文では「於」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 通 … 古文では「曁」に作る。
詩云、自西自東、自南自北、無思不服。
詩に云く、「西より東より、南より北より、思うて服せざるなし」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・文王有聲の章。
  • 自西自東 … 古文では「自東自西」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。

孝経 事君(じくん)章第十七

子曰、君子之事上也、進思盡忠、退思補過。
子(し)曰(いわ)く、君子の上(かみ)に事(つか)うるや、進んでは忠を尽さんことを思い、退いては過ちを補わんことを思う。
  • 古文では「事君章 第二十一」に作る。
將順其美、匡救其惡。
その美を将順(しょうじゅん)し、その悪を匡救(きょうきゅう)す。
  • 将順 … 助け行なう。
  • 匡救 … 正して直すこと。
故上下能相親也。
故(ゆえ)に上下(しょうか)よく相(あい)親しむなり。
詩云、心乎愛矣。遐不謂矣。中心藏之。何日忘之。
詩に云く、「心に愛せば遐(なん)ぞ謂(つ)げざらん。中心これを蔵(ぞう)せば、何(いづ)れの日かこれを忘れん」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・隰桑(しゅうそう)の章。
  • 中 … 古文では「忠」に作る。
  • 藏 … 古文では「臧」に作る。

孝経 喪親(そうしん)章第十八

子曰、孝子之喪親也、哭不?、禮無容、言不文、服美不安、聞樂不樂、食旨不甘。此哀戚之情也。
子(し)曰(いわ)く、孝子の親に喪(そう)するや、哭(こく)して?(い)せず、礼は容(かたち)つくるなく、言は文(かざ)らず、美を服して安からず、楽(がく)を聞いて楽しまず、旨(うま)きを食(く)らいて甘(うま)からず。これ哀戚(あいせき)の情なり。
  • 古文では「喪親章 第二十二」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。(5箇所すべて)
  • ? … 泣き声が長く細く尾をひくこと。古文では「依」に作る。
  • 哀? … 哀しみ悼むこと。
三日而食、教民無以死傷生。毀不滅性、此聖人之政也。
三日(さんじつ)にして食し、民をして死をもって生を傷(そこな)うことなく、毀(き)して性を滅せざらしむ。これ聖人の政(せい)なり。
  • 古文では「教民無以死傷生」のあとに「也」の字あり。
  • 毀 … 痩せること。
  • 政 … 古文では「正」に作る。
喪、不過三年、示民有終也。
喪(も)、三年に過ぎざるは、民に終りあるを示すなり。
爲之棺椁衣衾而舉之、陳其??、而哀戚之、?踊哭泣、哀以送之、卜其宅兆、而安措之、爲之宗廟、以鬼享之、春秋祭祀、以時思之。
これが棺椁(かんかく)衣衾(いきん)を為(つく)ってこれを挙(あ)げ、その??(ほき)を陳(つら)ねて、これを哀戚(あいせき)し、?踊(へきよう)哭泣(こっきゅう)して、哀んでもってこれを送り、その宅兆(たくちょう)を卜(ぼく)して、これを安措(あんそ)し、これが宗廟(そうびょう)を為(つく)って、鬼(き)をもってこれを享(きょう)し、春秋(しゅんじゅう)に祭祀して、時を以てこれを思う。
  • 棺椁 … 内棺と外棺。
  • 椁 … 古文では「槨」に作る(同字)。
  • 衣衾 … しかばねに着せる衣と、しかばねを包む布団。
  • 而舉之 … 古文では「以舉之」に作る。
  • ?? … 供物用の祭器。
  • 哀戚 … 哀しみ悼むこと。
  • 戚 … 古文では「?」に作る。
  • ?踊 … 葬式のときの悶え泣く儀礼。
  • ?踊哭泣 … 古文では「哭泣擘踴」に作る。
  • 宅兆 … 墓穴と墓地。
  • 卜 … 占うこと。
  • 安措 … 安置。
  • 鬼 … 死者の魂のこと。
  • 享 … 祀ること。
  • 春秋 … 春夏秋冬のこと。
  • 以時 … 季節の供物を供えて。
生事愛敬、死事哀戚。
生けるに事(つか)うるには愛敬し、死せるに事うるには哀戚(あいせき)す。
  • 戚 … 古文では「?」に作る。
生民之本盡矣。死生之義備矣。孝子之事親終矣。
生民(せいみん)の本(もと)尽くせり。死生(しせい)の義備われり。孝子の親に事うること終れり。
  • 生民 … 人間。
  • 本 … 根本。
  • 死生 … 死者と生者。生きている間の父母と死んだあとの父母を指す。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 親 … 古文にはこの字なし。

孝経 閨門(けいもん)章第十九(古文のみ)

子曰、閨門之内、具禮矣乎。嚴親嚴兄、妻子臣妾、猶百姓徒役也。
子(し)曰(いわ)く、閨門(けいもん)の内(うち)、礼(れい)を具(そな)うるかな。親(おや)を厳(たっと)び兄(あに)を厳(たっと)びて妻子(さいし)臣妾(しんしょう)は猶(な)お百姓(ひゃくせい)徒役(とえき)のごときなり、と。
  • この章今文になし。
  • 閨門 … 本来は婦人の室。ここでは、家庭という意。
  • 臣妾 … 下男下女。