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折々の記 2012 C

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】03/26〜     【 02 】04/03〜     【 03 】04/11〜
【 04 】05/02〜     【 05 】05/23〜     【 06 】05/24〜
【 07 】05/28〜     【 08 】06/02〜     【 09 】06/07〜

【 05 】05/23

  05 23 金環日食・「天声人語」朝刊
  05 24 孝経(身体髪膚)(その一)・(その二)

 05 23 (水) 金環日食・「天声人語」朝刊

●「金環日食」=5月21日、長野県飯田市の飯田市美術博物館(早坂洋祐撮影)



●「天声人語」朝刊(2012年5月23日)

▼幸田露伴の「五重塔」は、名人気質の頑固な大工が五重塔を独力で建てる物語。心魂を傾けた塔は落成式を前に大暴風雨に見舞われるが、嵐が去ると「一寸一分(いちぶ)歪(ゆが)みもせず」に見事に立っていた。工事中に東日本大震災に耐えた東京スカイツリーと、どこか重なり合う。

▼地震の1週間後には高さが634メートルに届いた。日本中が騒然、暗然となるなかで、ともしびのような話題だった。聞けば耐震性を高める設計は、伝統建築の五重塔の知恵を生かしているのだという。

▼「心柱(しんばしら)」と呼ばれる柱が、五重塔の中心を貫いている。似た構造をツリーも持つ。地震だけでなく、瞬間風速が毎秒110メートルという超暴風も想定しているそうだ。ツリーの地元で長く暮らした露伴翁は、天上でご満悦なことだろう。

▼着工から完成へ、淡々かつ黙々と空へ伸びていった。爪の垢(あか)を煎じて政治家に飲ませたくなるようなプロの仕事師ぶりだ。基礎工事をはじめ照明や塗装、アンテナなどまで、総身が日本の最新技術の結晶という。ものづくりの底力を思うと、じんとくる。

▼設計に際しては「威圧感を持たせないようにした」そうだ。巨大建築は往々に国威や権勢を誇り、象徴する。それをすらりと脱ぎ捨てた「雅(みやび)」と「粋(いき)」は江戸の下町によく似合う。

▼きのうの開業初日。前の日の天体ショーに晴れ間を譲ったのか、東京は雨になった。だが樹下から仰ぐと、上半分を雲が流れてなかなか幻想的だった。雨のち晴れの日本の明日を、ツリーとともに歩みたい。

 05 24 (木) 孝経(身体髪膚)(その一)・(その二)

孝経(その一)
  http://nozawa22.cocolog-nifty.com/nozawa22/2009/10/nozawa22-5.html
  孝経 身体髪膚 毀傷せざるは、孝の始め

掛け軸が、西木村の佐藤さん宅の床の間に掛けてあった。「この文章の意味は?」と、つい聞いてしまったら、誰も意味を知らない。ちょっといやみだったかと思い、調べてみた。すると、論語と並んで、儒教において規範として尊ばれる先秦典籍。儒家経典の五経、十三経などの一つ。私が論語だと勘違いしている文章が、書いてある。

身體髪膚、受之父母、不敢毀傷、孝之始也(身体髪膚之れを父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。)東洋思想の基本が書かれている。今、さんまが「オレ肩に笑と(刺青タトゥー)入れようか、それとも耳にピアスを空けようか、悩んどる」としゃべっていたが、彼がそんなこと言い出すほど、体にキズつけてもなんとも思わないほど、儒教の思想が衰退している。

孝は『孝経』において、道徳の根源、宇宙の原理として形而上化され、絶対服従と父子相隠は法律にも明文化された。儒教において規範として尊ばれる先秦典籍は、儒家経典の五経、十三経などがある。

君臣間の徳目である「忠」と常に齟齬を来すことになるが、中国や朝鮮では多くの場合、「忠」よりも「孝」が大切だと考えられた。ただし、日本においては朱子学伝来以後、逆に「孝」よりも「忠」が大切だと考えられて、江戸幕府体制下では公的な見解として採られる様になっていった。Wikipedia引用

『子曰く、吾十有五にして学に志し、 三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を 知る。六十にして耳順(したご)う。 七十にして心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず。』

「孔子は言った、 十五歳のとき、私は学ぶことにまじめに興味を抱き始めた。(志学) 三十歳で私は私の性格を形成した。(而立) 四十歳で私はいかなる困惑をももたなくなった。(不惑) 五十歳で私は「天」の意志を知るにいたった。(知命) 六十歳で私の耳にするどんな言葉も、私を掻き乱すことがなくなった。(耳順) 七十歳で、私は道徳律を脱逸しないで、 私の思いを自由に遊ばせることが出来るようになった。(従心)」【論語/為政篇】

論語に書かれている言葉は、中学生、高校生になれば、大抵は知っていた。だから、15歳で志を立て、勉強始めるという励まし方をした。

今の天皇陛下であられたと思うが、40歳の記者会見で、「不惑の歳」という言葉を踏まえて「まだ迷ってばかりです」と答えておられた。而立=30歳、知命=50歳、耳従=60歳。みんな、これらの言葉を踏まえて、自分の人生を語っていた。最終段階は、70歳で「心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず」自分のしたいことをしても、法を犯さず、自在の自分が存在する、と考えられた。

なかなか、この通りにはいかないが、一つの道筋だ。私の好きな言葉は「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る 」倉庫(今は貯蓄かな)がいっぱいになって礼儀と節度を知り、着る物と食べるものが充分あってはじめて名誉と恥を知る。

なかなか、昔の人は人生の真髄をついている。現代人は、改めて古代の人が人生の全てを知り尽くしているなだから、それを「温故知新」っていって、学習しなおしですね。

これらは、みな中国から知恵を輸入したもので、東洋の知恵、これこそが東アジア共同体のコンセプトにしたらどうだろう。タトゥーを体に刻みこむ文化より、いいように思うが、どうなんだろう。

若い世代の人とは、文化のギャップがあるから、共感を持たれない。だからから、こういうことは異世代間で理解しあうチャンスがほしいものだ。

孝経本文と読み方

【本文】

孔子謂曾子曰、身體髪膚受之父母。不敢毀傷、孝之始也。身體、言其大。髪膚、言其細。聖人論孝之始、以愛身爲先。立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。國人稱願幸哉有子如此。所謂孝也。夫孝始於事親、中於事君、終於立身。愛親者不敢惡於人、敬親者不敢慢於人。愛敬盡於事親而コヘ加于百姓、刑于四海。此天子之孝也。惡慢於人、則人亦惡慢之。如此辱將及親。在上不驕、高而不危、制節謹度、滿而不溢。然後能保其社稷而和其民人。此諸侯之孝也。高而危者以驕也。滿而溢者以奢也。制節、制財用之節。謹度、不越法度。非先王之法服不敢服、非先王之法言不敢道、非先王之コ行不敢行。然後能保其宗廟。此卿大夫之孝也。以孝事君則忠、以敬事長則順。忠順不失以事其上。然後能守其祭祀。此士之孝也。用天之道、因地之利、謹身節用以養父母。此庶人之孝也。春耕、秋穫、高宜黍稷、下宜稻麥。謹身則無過不犯兵刑、節用則不乏以共甘旨。能此二者養道盡矣。故自天子至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。

【読み】

孔子、曾子に謂いて曰く、身體髪膚之を父母に受く。敢て毀傷せざるは孝の始なり。身體は其の大を言う。髪膚は其の細を言う。聖人孝の始を論じ、身を愛するを以て先と爲す。身を立て道を行い、名を後世に揚げて、以て父母を顯わすは、孝の終りなり。國人、幸なるかな子有りて此の如しと稱願す。孝と謂う所なり。夫れ孝は親に事うるに始まり、君に事うるに中ばし、身を立つるに終る。親を愛する者は敢て人を惡まず、親を敬う者は敢て人を慢らず。愛敬親に事うるに盡してコヘ百姓に加わり、四海に刑(のっと)る。此れ天子の孝なり。人を惡み慢れば、則ち人も亦之を惡み慢る。此の如くなれば、辱しめ將に親に及ばんとす。上に在りて驕らざれば、高くして危からず、節を制し度を謹めば、滿ちて溢れず。然して後に能く其の社稷を保ちて其の民人を和す。此れ諸侯の孝なり。高くして危き者は驕るを以てなり。滿ちて溢れる者は奢るを以てなり。節を制するは、財用の節を制するなり。度を謹むは、法度を越えざるなり。先王の法服に非ざれば敢て服せず、先王の法言に非ざれば敢て道わず、先王のコ行に非ざれば敢て行わず。然して後に能く其の宗廟を保つ。此れ卿大夫の孝なり。孝を以て君に事うれば則ち忠、敬を以て長に事うれば則ち順。忠順失わずして以て其の上に事う。然して後に能く其の祭祀を守る。此れ士の孝なり。天の道を用い、地の利に因り、身を謹み用を節して以て父母を養う。此れ庶人の孝なり。春は耕し、秋は穫り、高きは黍稷に宜しく、下きは稻麥に宜し。身を謹めば則ち過無くして兵刑を犯さず、用を節すれば則ち乏しからずして以て甘旨を共う。此の二の者を能くして養道盡く。故に天子より庶人に至るまで、孝に終始無くして、患及ばざる者は、未だ之れ有らざるなり。

孝経(その二)
  http://kanbun.info/keibu/kokyo01.html
  <Web漢文大系 > 孝経 >>

孝経 開宗かいそう明義めいぎ章第一

仲尼居、曾子侍。
仲尼ちゅうじきょし、曾子そうしす。
  • 仲尼 … 孔子のこと。
  • 居 … 古文では「間居」に作る。
  • 曾子 … 孔子の弟子で、姓は曾、名はしんあざな子輿しよのこと。
  • 侍 … 古文では「侍坐」に作る。
子曰、先王有至徳要道、以順天下、
いわく、先王、至徳しとく要道ようどうあって、もって天下をじゅんにす。
  • 至徳 … 無上の徳、孝徳を指す。
  • 要道 … 肝心な道、大事な道、孝道を指す。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
民用和睦、上下無怨、汝知之乎。
たみもって和睦し、上下しょうか怨みなし。なんじこれを知るか、と。
  • 上下 … 「上」は君父、「下」は臣子、身分の高い者も低い者もの意。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 汝 … 今文は「汝」、古文は「女」、ただし四部叢刊本では「女」に作る。
曾子避席曰、參不敏、何足以知之。
曾子そうしせきけていわく、しん不敏ふびんなり。なんもっこれるにらん。
  • 不敏 … 賢くないこと。転じて自己の謙称。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 古文では「何足以知之」のあとに「乎」の字あり。
子曰、夫孝、徳之本也、教之所由生也。
いわく、それ孝は徳の本なり。おしえのよって生ずるところなり。
  • 由 … 古文では「?」に作る。
復坐、吾語汝。
坐にかえれ。われ、なんじに語らん。
  • 汝 … 今文は「汝」、古文は「女」、ただし四部叢刊本では「女」に作る。
身體髮膚、受之父母、不敢毀傷、孝至始也。
身体しんたい髪膚はっぷこれ父母ふぼく。あえ毀傷きしょうせざるは、孝の始めなり。
  • 之… 古文では「于」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
立身行道、揚名於後世、以顯父母、孝之終也。
身を立て道を行い、名を後世こうせいげ、もって父母をあらわすは、孝の終りなり。
夫孝、始於事親、中於事君、終於立身。
れ孝は、親につかうるに始まり、きみに事うるにちゅうし、身を立つるに終る。
大雅曰、無念爾祖、聿脩厥徳。
大雅たいがに曰く、なんじの祖をおもうことなからんや。その徳をべ修む、と。
  • 大雅… 『詩経』大雅・文王の章。
  • 脩… 古文では「修」に作る。
  • 厥 … 古文では「其」に作る。

孝経 天子てんし章第二

子曰、愛親者不敢惡於人、
いわく、おやあいするものは、えてひとにく まず。
敬親者不敢慢於人。
親をけいするものは、えてひとあなどらず。
愛敬盡於事親、而徳教加於百姓、刑于四海、
愛敬あいけい親につかうるにつくして、徳教百姓ひゃくせい に加わり、四海にのっと る。
  • 而… 古文では「然後」に作る。
  • 百姓… 庶民。
  • 于 … 古文では「於」に作る。
蓋天子之孝也。
けだし天子の孝なり。
甫刑云、一人有慶、兆民頼之。
甫刑ほけいに云く、一人慶あれば、兆民ちょうみんこれをこうむる、と。
  • 甫刑… 古文では「呂刑」に作る。『書経』の呂刑篇。
  • 兆民… 多くの民。

孝経 諸侯しょこう章第三

在上不驕、高而不危。
かみにありておごらざれば、高くして危うからず。
  • 在… 古文では「居」に作る。
  • 古文では「子曰、居上不驕……」で始まる。
制節謹度、滿而不溢。
節を制し度を謹めば、満ちてあふれず。
高而不危、所以長守貴也。
高くして危うからざるは、長くたっときを守るゆえんなり。
  • 貴 … この場合、お金持ちのこと。
滿而不溢、所以長守富也。
満ちて溢れざるは、長く富を守るゆえんなり。
  • 富 … この場合、福と同義。
富貴不離其身、然後能保其社稷、而和其民人、蓋諸侯之孝也。
富貴はその身を離れず、しかるのちよくその社稷しゃしょくを保って、その民人みんじんを和す。けだし諸侯のこうなり。
  • 社稷 … 国家のこと。
詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。
詩に云く、「戰戰兢兢せんせんきょうきょうとして、深淵しんえんのぞむが如く、薄氷はくひょうむが如し」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・小旻の章。

孝経 卿大夫けいたいふ章第四

非先王之法服、不敢服。
先王の法服にあらざれば、敢てふくせず。
  • 古文では「子曰、非先王之法服……」で始まる。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
非先王之法言、不敢道。
先王の法言にあらざれば、敢てわず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
非先王之徳行、不敢行。
先王の徳行にあらざれば、敢て行わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
是故非法不言、非道不行。
この故に法にあらざれば言わず、道にあらざれば行わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
口無擇言、身無擇行、
口に択言たくげんなく、身に択行たくこうなし。
  • 択言 … 言葉を選ぶこと。
  • 択行 … 行ないを選ぶこと。
言滿天下無口過、行滿天下無怨惡。
ことば、天下に満ちて口過こうかなく、行い、天下に満ちて怨悪えんおなし。
  • 無口過 … 古文では「亡口過」に作る。
  • 無怨悪 … 古文では「亡怨悪」に作る。
  • 口過 … 失言。
三者備矣。
三つの者備わる。
然後能守其宗廟。蓋卿大夫之孝也。
しかるのちよくその宗廟そうびょうを守る。けだし卿大夫の孝なり。
  • 古文では「然後能」のあとに「保其祿位而」の五字あり。
  • 宗廟 … 祖先の霊をまつった建物、みたまや。
詩云、夙夜匪懈、以事一人。
詩に云く、「夙夜しゅくや おこたらず、もって一人いちにんつかう」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・烝民の章。
  • 夙夜 … 朝早くから夜遅くまで。

孝経 章第五

資於事父以事母而愛同。
父につかうるにってもって母に事う、しこうして愛同じ。
  • 古文では「子曰、資於事父以事母……」で始まる。
  • 而 … 古文では「其」に作る。
資於事父以事君而敬同。
父につかうるにってもって君に事う、しこうして敬同じ。
  • 而 … 古文では「其」に作る。
故母取其愛。而君取其敬。
ゆえに母にはその愛を取り、君にはその敬を取る。
兼之者父也。故以孝事君則忠。
これをぬる者は父なり。ゆえに孝をもって君につかうればすなわち忠なり。
以敬事長則順。忠順不失。以事其上。
敬をもって長につかうればすなわち順なり。忠順失わず、もってそのかみつかう。
  • 敬 … 古文では「弟」に作る。
然後能保其禄位。而守其祭祀。蓋士之孝也。
しかる後よくその禄位ろくいを保ち、その祭祀を守る。けだしの孝なり。
  • 禄位 … 古文では「爵禄」に作る。
詩云。夙興夜寐。無忝爾所生。
詩に云く、「つとよわねて、なんじ所生しょせいはずかしむることなかれ」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・小宛の章。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 所生 … 父母。

孝経 庶人しょじん章第六

用天之道、分地之利、謹身節用、以養父母、此庶人之孝也。
天の道をもちい、地の利をわかち、身を謹み用をせっし、もって父母をやしなう。庶人しょじんの孝なり、と。
  • 古文では「子曰、因天之時……」で始まる。
  • 用天之道 … 「天之道」は春夏秋冬の四時の変化。「用」を古文では「因」に作る。「道」を古文では「時」に作る。
  • 分 … 古文では「就」に作る。
  • 地之利 … 地質の良し悪し、土地の農作物を生産しうる力。
  • 節用 … 財産を節約すること。
故自天子、至於庶人、孝無終始、而患不及者、未之有也。
ゆえに天子より庶人にいたるまで、孝に終始くして、わざわいの及ばざる者は、いまらざるなり。
  • 古文では「故自天子……」以下を独立させて「孝平章第七」としている。
  • 古文では「子曰、故自天子……」で始まる。
  • 古文では「故自天子」のあとに「以下」の二字あり。
  • 至於庶人 … 古文では「至于庶人」に作る。
  • 孝無終始 … 古文では「孝亡終始」に作る。

孝経 三才さんさい章第七

曾子曰、甚哉、孝之大也。
曽子そうしいわく、はなはだしいかな、こうだいなるや。
  • 古文では「三才章 第八」に作る。三才とは天・地・人のこと。
子曰、夫孝天之經也。地之義也。民之行也。
いわく、れ孝は天のけいなり、地の義なり、民の行いなり。
  • 経 … 不変の法則。
  • 義 … 秩序の原型。古文では「誼」に作る。
天地之經、而民是則之。
天地の経にして、民ここにこれにのっとる。
則天之明、因地之利。以順天下。
天の明にのっとり、地の利にり、もって天下をじゅんにす。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
是以其教不肅而成、其政不嚴而治。
ここをもってそのおししゅくならずして成り、そのまつりごとげんならずして治まる。
先王見教之可以化民也。是故先之以博愛、而民莫遺其親。
先王、教えのもって民をすべきを見るなり。この故にこれに先んずるに博愛をもってして、民その親をわするることなし。
陳之以徳義、而民興行。
これにぶるに徳義をもってして、民興行こうこうす。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 興行 … 奮起して行いに努めること。
先之以敬讓、而民不爭。
これに先んずるに敬譲けいじょうをもってして、民争わず。
  • 敬譲 … 恭敬謙譲。
導之以禮樂、而民和睦。
これを導くに礼楽れいがくをもってして、民和睦わぼくす。
示之以好惡、而民知禁。
これに示すに好悪こうおをもってして、民禁を知る。
  • 禁 … 禁令。
詩云、赫赫師尹、民具爾瞻。
詩に云く、「赫赫かくかくたる師尹しいん。民ともになんじる」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・節南山の章。
  • 赫赫 … 光り輝くさま。
  • 師尹 … 太師の尹氏。
  • 瞻る … 仰ぎ見ること。

孝経 孝治こうち章第八

子曰、昔者、明王之以孝治天下也、不敢遺小國之臣。而況於公侯伯子男乎。
いわく、昔者むかし明王みょうおうの孝をもって天下を治むるや、あえて小国の臣をわすれず。しかるをいわんやこうこうはくだんにおいてをや。
  • 古文では「孝治章 第九」に作る。
  • 明王 … 賢い王。
故得萬國之懽心、以事其先王。
ゆえに万国の懽心かんしんを得て、もってその先王につかう。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
治國者不敢侮於鰥寡。而況於士民乎。
国を治むる者はあえて鰥寡かんかを侮らず。しかるをいわんや士民においてをや。
  • 鰥寡 … 男やもめと後家。
故得百姓之懽心、以事其先君。
故に百姓ひゃくせい懽心かんしんを得て、もってその先君に事う。
  • 百姓 … 国中の人々。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
治家者不敢失於臣妾、而況於妻子乎。
家を治むる者はあえて臣妾しんしょうを失わず、しかるをいわんや妻子においてをや。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 臣妾 … 下男・下女。
  • 古文では「治家者不敢失於臣妾」のあとに「之心」の二字あり。
故得人之懽心、以事其親。
ゆえに人の懽心かんしんを得てもってその親に事う。
  • 懽 … 古文では「歡」に作る。
夫然。故生則親安之、祭則鬼享之。
しかり。ゆえけるにはすなわおやこれやすんじ、まつりにはすなわこれく。
  • 鬼 … 死者の霊。
是以天下和平、災害不生、禍亂不作。
ここもっ天下てんか和平わへいにして、災害しょうぜず、禍乱からんおこらず。
故明王之以孝治天下也如此。
ゆえ明王めいおうの孝をもっ天下てんかおさむるやかくごとし。
詩云、有覺徳行、四國順之。
詩に云く、「かくたる徳行あり、四国これにしたがう」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅抑の章。
  • 覚 … 正直高大。
  • 四国 … 四方の国々。

孝経 聖治せいち章第九

曾子曰、敢問、聖人之徳、無以加於孝乎。
曽子曰く、あえて問う、聖人の徳もって孝に加うることなきかと。
  • 古文では「聖治章 第十」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
子曰、天地之性、人為貴。
いわく、天地の性、人をたっとしとなす。
人之行、莫大於孝。
人の行いは、孝より大なるはなし。
孝莫大於嚴父。
孝は、父をげんにするより大なるはなし。
嚴父莫大於配天。
父を厳にするは天に配するより大なるはなし。
則周公其人也。
すなわち周公しゅうこうはその人なり。
昔者、周公郊祀后稷以配天、宗祀文王於明堂以配上帝。
昔者むかし、周公は后稷こうしょく郊祀こうししてもって天に配し、文王ぶんのう明堂めいどう宗祀そうししてもって上帝に配す。
  • 周公 … 周初の政治家。文王の子。姓は、名はたん。兄の武王を助けて殷を滅ぼし、その死後、幼少の成王を補佐して周の基礎を固めた。孔子は礼を整備した聖人として尊敬し、後世、先聖とあがめられた。の祖。周公旦。
  • 后稷 … 「后」は君、「稷」は五穀。周王朝の始祖とされる伝説上の人物。姓は、名は。舜につかえて人々に農業を教え、功により后稷(農官の長)の位についた。
  • 郊祀 … 帝王が国都の郊外に壇を築き天地をまつる儀式。漢代以降は帝王の特権となり、その威厳を誇示する祭祀となった。郊社。郊祭。
  • 文王 … 周王朝の始祖武王の父。姓は、名は昌。西伯と称する。殷代末期に、太公望など賢士を集め、渭水盆地を平定して周の基礎を築いた。古代の聖王の模範とされる。生没年未詳。
  • 明堂 … 天子や王者が政治を行う宮殿。政堂。朝廷。
  • 宗祀 … 最も大切なものとしてまつること。
  • 上帝 … 天上にあって、万物を支配する神。天帝。
是以四海之内、各以其職來祭。
ここをもって四海のうち、おのおのその職をもって来り祭る。
  • 四海 … 天下。世の中。また、世界。
夫聖人之徳、又何以加於孝乎。
それ聖人の徳、また何をもってか孝に加えんや。
故親生之膝下、以養父母日嚴。
ゆえにおやこれを膝下しっかに生じ、もって父母を養い、ひびげんにす。
  • 故親生之膝下、以養父母日嚴 … 古文では「是故親生毓之、以養父母曰嚴」に作る。
聖人因嚴以教敬、因親以教愛。
聖人厳にりてもって敬を教え、親にりてもって愛を教う。
聖人之教不肅而成、其政不嚴而治。
聖人の教えはしゅくならずして成り、そのまつりごとは厳ならずして治まる。
其所因者本也。
そのるところのものは本なり。
父子之道天性也。君臣之義也。
父子の道は天性てんせいなり。君臣の義なり。
  • 「父子之道」以下、古文では「父母生績章 第十一」に作る。
  • 古文では「父子之道」に前に「子曰」の二字あり。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 也 … 古文ではこの字なし。
父母生之、續莫大焉。
父母これを生む。つづくこと、これより大なるはなし。
  • 續 … 古文では「績」に作る。
君親臨之、厚莫重焉。
君親くんしんとしてこれに臨む。あつきことこれより重きはなし。
故不愛其親、而愛他人者、謂之悖徳。
ゆえにその親を愛せずして他人を愛する者、これを悖徳はいとくと謂う。
  • 故 … 古文ではこの字なし。
  • 「不愛其親」以下、古文では「孝優劣章 第十二」に作る。
  • 古文では「不愛其親」に前に「子曰」の二字あり。
不敬其親而敬他人者、謂之悖禮。
その親を敬せずして他人を敬する者、これを悖禮はいれいと謂う。
以順則、逆民無則焉。
順をもってすればのっとり、逆なれば民のっとることなし。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。
  • 逆 … 古文では「昏」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
不在於善、而皆在於凶徳。
善にあらずして、みな凶徳にあり。
  • 在 … 古文では「宅」に作る。
雖得之、君子不貴也。
これをといえども、君子はたっとばざるなり。
  • 之 … 古文では「志」に作る。
  • 不貴 … 古文では「弗從」に作る。
君子則不然。
君子はすなわちしからず。
言思可道、行思可樂。
げんうべきを思い、こうは楽しむべきを思う。
徳義可尊、作事可法、容止可觀、進退可度。
徳義たっとぶべく、作事のっとるべく、容止ようし観るべく、進退とすべし。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
以臨其民。
もってその民にのぞむ。
是以其民畏而愛之、則而象之。
ここをもってその民おそれてこれを愛し、のっとってこれにかたどる。
故能成其徳教、而行其政令。
ゆえによくその徳教を成して、その政令をおこなう。
詩云、淑人君子、其儀不?。
詩に云く、「淑人しゅくじん君子、その儀?たがわず」と。
  • 詩 … 『詩経』曹風・?鳩の章。
  • 淑人 … 善人。

孝経 孝行こうこう章第十

子曰、孝子之事親也、居則致其敬、養則致其樂、病則致其憂、喪則致其哀、祭則致其嚴。
いわく、孝子の親につかうるや、おるにはすなわちその敬を致し、やしないにはすなわちそのたのしみを致し、やまいにはすなわちそのうれいを致し、にはすなわちそのかなしみを致し、まつりにはすなわちそのげんを致す。
  • 古文では「紀孝行章 第十三」に作る。
  • 病 … 古文では「疾」に作る。
五者備矣、然後能事親。
五つのもの備わりて、しかる後よく親に事う。
  • 然後能事親 … 古文では「然後能事其親」に作る。
事親者、居上不驕、爲下不亂、在醜不爭。
親に事うる者はかみに居ておごらず、しもとなって乱れず、もろもろに在って争わず。
居上而驕則亡、爲下而亂則刑、在醜而爭則兵。
上に居ておごればすなわち亡び、下となって乱るればすなわちけいせられ、もろもろに在って争えばすなわちへいせらる。
三者不除、雖日用三牲之養、猶爲不孝也。
三つのもの除かざれば、日に三牲さんせいやしないを用いるといえども、なお不孝となすなり。
  • 三者不除 … 古文では「此三者不除」に作る。
  • 三牲 … 牛・羊・豕(いのこ、ぶた)。
  • 猶 … 古文では「?」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。

孝経 五刑ごけい章第十一

子曰、五刑之屬三千、而罪莫大於不孝。
いわく、五刑ごけいぞく三千、つみ不孝より大なるはなし。
  • 古文では「五刑章 第十四」に作る。
  • 五刑 … 肉体を傷つける五種類の刑罰。
  • 罪 … 古文では「辜」に作る。
要君者無上、非聖人者無法、非孝者無親。
きみを要する者はかみなみし、聖人をそしる者は法をなみし、孝をそしる者は親をなみす。
  • 無 … ないがしろにすること、無視すること。古文では「亡」に作る。
此大亂之道也。
れ大乱の道なり。

孝経 こう要道ようどう章第十二

子曰、教民親愛、莫善於孝。
いわく、民に親愛を教うるは孝より善きはなし。
  • 古文では「廣要道章 第十五」に作る。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
教民禮順、莫善於悌。
民に礼順れいじゅんを教うるはていより善きはなし。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
移風易俗、莫善於樂。
ふうを移しぞくかううるは、がくより善きはなし。
  • 移風易俗 … 民衆の悪い風俗を善い方向へ移し改めること。
  • 楽 … 音楽。
安上治民、莫善於禮。禮者敬而已矣。
かみやすんじ民を治むるは、礼より善きはなし。礼は敬のみ。
故敬其父、則子悦、敬其兄、則弟悦、敬其君、則臣悦。
ゆえの父を敬すればすなわち子よろこび、の兄を敬すればすなわち弟よろこび、きみを敬すればすなわしんよろこぶ。
敬一人而千萬人悦。
一人いちにんけいして千万人せんまんにんよろこぶ。
所敬者寡、而悦者衆。此之謂要道也。
けいするところものすくなくして、悦ぶ者はおおし。これ要道ようどううなり。
  • 要道 … 大切の道、肝要な道。

孝経 こう至徳しとく章第十三

子曰、君子之教以孝也、非家至而日見之也。
いわく、君子の教うるに孝をもってするや、家ごとに至って日ごとにこれを見るにあらざるなり。
  • 古文では「廣至徳章 第十六」に作る。
  • 也 … 古文にはこの字なし。
教以孝所以敬天下之爲人父者也。
教うるに孝をもってするは、天下の人の父たる者を敬するゆえんなり。
教以悌所以敬天下之爲人兄者也。
教うるにていをもってするは、天下の人のあにたる者を敬するゆえんなり。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
教以臣、所以敬天下之爲人君者也。
教うるに臣をもってするは、天下の人のきみたる者を敬するゆえんなり。
詩云、ト悌君子、民之父母。
詩に云く、「ト悌がいていの君子はたみの父母なり」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・?酌けいしゃくの章。
  • ト悌 … やわらぎ楽しむこと。
非至徳、其孰能順民如此其大者乎。
至徳しとくにあらざれば、それたれかよく民にじゅんにすること、かくのごとくそれ大なる者あらんや。
  • 順 … 古文では「訓」に作る。

孝経 こう揚名ようめい章第十四

子曰。君子之事親孝。故忠可移於君。
いわく、君子の親につかうるや孝。ゆえに忠をばきみに移すべし。
  • 古文では「廣揚名章 第十八」に作る。
  • 之 … 古文にはこの字なし。
事兄悌。故順可移於長。
兄に事うるやていゆえに順をば長にうつし。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
居家理。故治可移於官。
家に居ておさまる、ゆえに治をば官に移すべし。
是以行成於内、而名立於後世矣。
ここをもって行いはうちに成って、名は後世に立つ。
  • 内 … 家の中。

孝経 諫爭かんそう章第十五

曾子曰、若夫慈愛恭敬、安親揚名、則聞命矣。
曽子曰く、慈愛じあい恭敬きょうけい、親を安んじ名をぐるがごときは、すなわち命を聞けり。
  • 古文では「諫諍章 第二十」に作る。
  • 恭 … 古文では「?」に作る。
  • 則 … 古文では「參」に作る。
敢問、子從父之令、可謂孝乎。
あえて問う、、父のれいに従うは、孝とうべきか。
  • 令 … 古文では「命」に作る。
子曰、是何言與。是何言與。
いわく、これなんげんぞや。これなんの言ぞや。
  • 子曰、是何言與。是何言與。 … 古文では「子曰、參是何言與。是何言與。言之不通耶。」に作る。
昔者、天子有爭臣七人、雖無道、不失其天下。
昔者むかし、天子に争臣そうしん七人あれば、無道といえどもその天下を失わず。
  • 争臣 … 君の過失を痛烈にいさめる家臣のこと。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 其 … 古文にはこの字なし。
諸侯有爭臣五人、雖無道、不失其國。
諸侯に争臣五人あれば、無道といえどもその国を失わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
大夫有爭臣三人、雖無道、不失其家。
大夫たいふに争臣三人あれば、無道といえどもその家を失わず。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
士有爭友、則身不離於令名。
士に争友そうゆうあれば、すなわち令名れいめいを離れず。
  • 争友 … 悪い点をどこまでもいさめてくれる友人。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。
  • 令名 … 名声。
父有爭子、則身不陷於不義。
父に争子そうしあれば、すなわち身、不義ふぎに陥らず。
  • 争子 … 過失をいさめる子のこと。
  • 不陷 … 古文では「弗陷」に作る。
故當不義、則子不可以不爭於父。
ゆえに不義に当っては、すなわち子もって父に争わざるべからず。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 於 … 古文では「于」に作る。
臣不可以不爭於君。故當不義、則爭之。
臣、もってきみに争わざるべからず。ゆえに不義に当ってはすなわちこれを争う。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
從父之令。又焉得爲孝乎。
父の令にしたがう。またいずくんぞ孝とすをんや。
  • 令 … 古文では「命」に作る。
  • 焉 … 古文では「安」に作る。

孝経 應感おうかん章第十六

子曰、昔者、明王事父孝、故事天明。
いわく、昔者むかし、明王父につかえて孝、ゆえに天につかえて明なり。
  • 古文では「應感章 第十七」に作る。
事母孝、故事地察。
母につかえて孝、ゆえに地につかえてさつなり。
  • 察 … 明らか。
長幼順。故上下治。
長幼ちょうようじゅんなり、ゆえ上下しょうか治まる。
天地明察、神明彰矣。
天地明察なれば神明あらわる。
  • 神明 … 古文では「鬼神」に作る。
  • 彰 … 古文では「章」に作る。
故雖天子、必有尊也。言有父也、必有先也。言有兄也。
故に天子と雖も必ずそん有るなり。父有るを言うなり。必ずせん有るなり。兄有るを言うなり。
  • 古文では「言有兄」のあとに「必有長」の三字があるが、衍字と思われる。
宗廟致敬、不忘親也。
宗廟そうびょうに敬を致せば親を忘れざるなり。
脩身愼行、恐辱先也。
身を修め行いを慎むは、先をはずかしめんことを恐るるなり。
宗廟致敬、鬼神著矣。
宗廟に敬を致せば鬼神あらわる。
孝悌之至、通於神明、光于四海、無所不通。
孝悌の至りは神明に通じ、四海にち、通ぜざるところなし。
  • 悌 … 古文では「弟」に作る。
  • 于 … 古文では「於」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。
  • 通 … 古文では「曁」に作る。
詩云、自西自東、自南自北、無思不服。
詩に云く、「西より東より、南より北より、思うて服せざるなし」と。
  • 詩 … 『詩経』大雅・文王有聲の章。
  • 自西自東 … 古文では「自東自西」に作る。
  • 無 … 古文では「亡」に作る。

孝経 事君じくん章第十七

子曰、君子之事上也、進思盡忠、退思補過。
いわく、君子のかみつかうるや、進んでは忠を尽さんことを思い、退いては過ちを補わんことを思う。
  • 古文では「事君章 第二十一」に作る。
將順其美、匡救其惡。
その美を将順しょうじゅんし、その悪を匡救きょうきゅうす。
  • 将順 … 助け行なう。
  • 匡救 … 正して直すこと。
故上下能相親也。
ゆえ上下しょうかよくあい親しむなり。
詩云、心乎愛矣。遐不謂矣。中心藏之。何日忘之。
詩に云く、「心に愛せばなんげざらん。中心これをぞうせば、いづれの日かこれを忘れん」と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・隰桑しゅうそうの章。
  • 中 … 古文では「忠」に作る。
  • 藏 … 古文では「臧」に作る。

孝経 喪親そうしん章第十八

子曰、孝子之喪親也、哭不?、禮無容、言不文、服美不安、聞樂不樂、食旨不甘。此哀戚之情也。
いわく、孝子の親にそうするや、こくして?せず、礼はかたちつくるなく、言はかざらず、美を服して安からず、がくを聞いて楽しまず、うまきをらいてうまからず。これ哀戚あいせきの情なり。
  • 古文では「喪親章 第二十二」に作る。
  • 不 … 古文では「弗」に作る。(5箇所すべて)
  • ? … 泣き声が長く細く尾をひくこと。古文では「依」に作る。
  • 哀? … 哀しみ悼むこと。
三日而食、教民無以死傷生。毀不滅性、此聖人之政也。
三日さんじつにして食し、民をして死をもって生をそこなうことなく、して性を滅せざらしむ。これ聖人のせいなり。
  • 古文では「教民無以死傷生」のあとに「也」の字あり。
  • 毀 … 痩せること。
  • 政 … 古文では「正」に作る。
喪、不過三年、示民有終也。
、三年に過ぎざるは、民に終りあるを示すなり。
爲之棺椁衣衾而舉之、陳其??、而哀戚之、?踊哭泣、哀以送之、卜其宅兆、而安措之、爲之宗廟、以鬼享之、春秋祭祀、以時思之。
これが棺椁かんかく衣衾いきんつくってこれをげ、その??ほきつらねて、これを哀戚あいせきし、?踊へきよう哭泣こっきゅうして、哀んでもってこれを送り、その宅兆たくちょうぼくして、これを安措あんそし、これが宗廟そうびょうつくって、をもってこれをきょうし、春秋しゅんじゅうに祭祀して、時を以てこれを思う。
  • 棺椁 … 内棺と外棺。
  • 椁 … 古文では「槨」に作る(同字)。
  • 衣衾 … しかばねに着せる衣と、しかばねを包む布団。
  • 而舉之 … 古文では「以舉之」に作る。
  • ?? … 供物用の祭器。
  • 哀戚 … 哀しみ悼むこと。
  • 戚 … 古文では「?」に作る。
  • ?踊 … 葬式のときの悶え泣く儀礼。
  • ?踊哭泣 … 古文では「哭泣擘踴」に作る。
  • 宅兆 … 墓穴と墓地。
  • 卜 … 占うこと。
  • 安措 … 安置。
  • 鬼 … 死者の魂のこと。
  • 享 … 祀ること。
  • 春秋 … 春夏秋冬のこと。
  • 以時 … 季節の供物を供えて。
生事愛敬、死事哀戚。
生けるにつかうるには愛敬し、死せるに事うるには哀戚あいせきす。
  • 戚 … 古文では「?」に作る。
生民之本盡矣。死生之義備矣。孝子之事親終矣。
生民せいみんもと尽くせり。死生しせいの義備われり。孝子の親に事うること終れり。
  • 生民 … 人間。
  • 本 … 根本。
  • 死生 … 死者と生者。生きている間の父母と死んだあとの父母を指す。
  • 義 … 古文では「誼」に作る。
  • 親 … 古文にはこの字なし。

孝経 閨門けいもん章第十九(古文のみ)

子曰、閨門之内、具禮矣乎。嚴親嚴兄、妻子臣妾、猶百姓徒役也。
いわく、閨門けいもんうちれいそなうるかな。おやたっとあにたっとびて妻子さいし臣妾しんしょう百姓ひゃくせい徒役とえきのごときなり、と。
  • この章今文になし。
  • 閨門 … 本来は婦人の室。ここでは、家庭という意。
  • 臣妾 … 下男下女。