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折々の記 2013 ④

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】06/15~     【 02 】06/17~     【 03 】06/22~
【 04 】07/17~     【 05 】07/24~     【 06 】08/02~
【 07 】08/05~     【 08 】08/07~     【 09 】08/17~

【 06 】08/02

  08 02 麻生副総理発言の波紋  
  08 02 安倍首相「撤回、早い方がいい」  
  08 03 靖国参拝へ 官邸に打診
      法制局長官に小松一郎駐仏大使(集団的自衛権容認派)安倍色人事
      公明党の山口那津男代表 集団的自衛権、理念と現実の溝
      核といのちを考える(核問題シリーズ)
      パウエル氏、核廃絶を語る
  

 08 02 (金) 麻生副総理発言の波紋  

ニュース > トピックス > 麻生太郎に関するトピックス
 麻生副総理の発言
ナチスの憲法改正「手口学んだら」
 今回の憲法の話も狂騒のなかでやってほしくない。 靖国神社も静かに参拝すべきだ。 お国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。 いつからか騒ぎになった。 騒がれたら中国も騒がざるをえない。 韓国も騒ぎますよ。 だから静かにやろうや、と。 憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。 だれも気づかないで変わった。 あの手口に学んだらどうかね。 わーわー騒がないで…[詳細記事へ](註・1)
最新ニュース麻生氏釈明「政治家特有のやり方」 又市・社民党首代行
麻生太郎副総理は「誤解を招いた」という言い方でナチス発言を釈明しているが、政治家特有の「真意はこうだったけどうまく伝わらなかった」と全否定してみせるやり方だ。(党本部での記者会見で) 麻生氏釈明「政治…(2013/08/01)

ナチス発言「国内外への恥」 麻生氏批判、改憲派からも
麻生太郎副総理が憲法改正をめぐり、ナチス・ドイツを引き合いに「手口に学んだらどうか」と発言。国内外から批判が高まるや、あっさり撤回した。繰り返される閣僚の失言に、識者や関係団体から厳しい声があがった。…(2013/08/01)

麻生氏、ナチス発言を撤回 「改憲の悪しき例あげた」
麻生太郎副総理兼財務相は1日午前、憲法改正をめぐってナチス政権を引き合いに「手口に学んだらどうか」などと発言したことについて、「誤解を招く結果となったので撤回したい」と述べた。財務省内で記者団に語った…(2013/08/01)

ナチス発言「世界に謝罪を」 米ユダヤ人人権団体副代表
米ユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)のエイブラハム・クーパー副代表は7月31日、朝日新聞の電話インタビューで、麻生太郎副総理の発言を重ねて批判した。 クーパ…(2013/08/01)

「撤回は当然」与党からも批判 麻生氏のナチス関連発言
安倍政権は麻生太郎副総理の発言撤回で事態の幕引きを図る。ただ、政権のアキレス腱(けん)とも言える歴史認識をめぐる失言には与党内にも困惑が広がる。野党は2日に召集される臨時国会で追及する構えだ。 菅義偉…(2013/08/01)

麻生氏が発表したコメント全文
麻生太郎副総理が1日に発表したコメント全文は次の通り。 ◇ 7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。 私は、憲法改正…(2013/08/01)

麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細(註・2)
麻生太郎副総理が29日、東京都内でのシンポジウムでナチス政権を引き合いにした発言は次の通り。 僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主…(2013/08/01)

ナチスの憲法改正「手口学んだら」 麻生副総理が発言
麻生太郎副総理が憲法改正をめぐり、ナチス政権を引き合いに「手口に学んだらどうか」などと発言したことに対し、米国の代表的なユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)は…(2013/08/01)

麻生副総理発言、野党が批判 「発言撤回と辞職求める」
社民党の又市征治幹事長は31日、麻生太郎副総理がナチス政権の手法を引き合いにした発言について「断固糾弾し、発言の撤回と閣僚及び議員辞職を求める。麻生氏の歴史的な事実に対する認識不足は疑うべくもない。ナ…(2013/08/01)



(註・1)

ニュース > 政治 > 国政 > 記事  2013年8月1日2時18分

 麻生太郎副総理が29日、東京都内でのシンポジウムでナチス政権を引き合いにした発言は次の通り

 僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

 そして、彼はワイマール憲法という、当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下にあって、ヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくても、そういうことはありうるということですよ。ここはよくよく頭に入れておかないといけないところであって、私どもは、憲法はきちんと改正すべきだとずっと言い続けていますが、その上で、どう運営していくかは、かかって皆さん方が投票する議員の行動であったり、その人たちがもっている見識であったり、矜持(きょうじ)であったり、そうしたものが最終的に決めていく。

 私どもは、周りに置かれている状況は、極めて厳しい状況になっていると認識していますから、それなりに予算で対応しておりますし、事実、若い人の意識は、今回の世論調査でも、20代、30代の方が、極めて前向き。一番足りないのは50代、60代。ここに一番多いけど。ここが一番問題なんです。私らから言ったら。なんとなくいい思いをした世代。バブルの時代でいい思いをした世代が、ところが、今の20代、30代は、バブルでいい思いなんて一つもしていないですから。記憶あるときから就職難。記憶のあるときから不況ですよ。

 この人たちの方が、よほどしゃべっていて現実的。50代、60代、一番頼りないと思う。しゃべっていて。おれたちの世代になると、戦前、戦後の不況を知っているから、結構しゃべる。しかし、そうじゃない。

 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

 ぜひ、そういう中で作られた。ぜひ、今回の憲法の話も、私どもは狂騒の中、わーっとなったときの中でやってほしくない。

 靖国神社の話にしても、静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。静かに、きちっとお参りすればいい。

 何も、戦争に負けた日だけ行くことはない。いろんな日がある。大祭の日だってある。8月15日だけに限っていくから、また話が込み入る。日露戦争に勝った日でも行けって。といったおかげで、えらい物議をかもしたこともありますが。

 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。

 昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。ぜひ、そういった意味で、僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。

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(註・2)

ナチスの憲法改正「手口学んだら」 麻生副総理が発言

■ユダヤ人団体が説明要求  麻生氏発言に関する記事はこちら

 麻生氏は29日、東京都内でのシンポジウムで「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」などと語った。

 シンポジウムはジャーナリストの桜井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」が都内のホテルで開いた。桜井氏が司会をし、麻生氏のほか西村真悟衆院議員(無所属)や笠浩史衆院議員(民主)らがパネリストを務めた。

 発言に対し、同センターは声明で「どんな手口をナチスから学ぶ価値があるのか。ナチス・ドイツの台頭が世界を第2次世界大戦の恐怖に陥れたことを麻生氏は忘れたのか」とした。

 同センターはロサンゼルスでホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を展示する博物館を運営。反ユダヤ活動の監視も手がけ、1995年には「ホロコーストは作り話だった」とする記事を掲載した文芸春秋発行の月刊誌「マルコポーロ」に抗議。同誌は廃刊、当時の社長が辞任した。

 一方、韓国外交省の趙泰永・報道官は30日の会見で「こうした発言が、過去に日本の帝国主義による侵略の被害に遭った周辺国の国民にどう映るかは明白だ。多くの人を傷つけるのは明らかだ」と批判。中国外務省の洪磊・副報道局長も31日、「日本の進む方向にアジア諸国と国際社会の警戒を呼び起こさないわけにはいかない」との談話を出した。

 また、ドイツの週刊紙ツァイト(電子版)は31日、「日本の財務相がナチスの改革を手本に」という見出しで発言を伝えた。同センターなどの反応を伝え、「ナチスの時代を肯定する発言で国際的な怒りを買った」とした。

 08 02 (金) 安倍首相「撤回、早い方がいい」  

ニュース > 記事  2013年8月2日
 安倍首相「撤回、早い方がいい」 麻生氏ナチス発言

麻生太郎副総理の「ナチス発言」に、安倍政権は早期の幕引きを図った。主導したのは首相官邸だった。▼2面=政権にショック、(註・1)、4面=発言と釈明に矛盾(註・2)、16面=社説(註・3)、35面=何度目ですか(註・4)

 7月29日夜。麻生氏は東京都内のシンポジウムで憲法改正についてナチス政権を引き合いに出した。「ある日気づいたらワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうかね」

 翌朝に一部メディアが報じると、官邸内に「日本として恥ずべき発言だ」(首相周辺)との懸念が噴出。米国の代表的なユダヤ人人権団体の反発が伝わると、「できるだけ早く収束させた方がいい」(政府高官)という雰囲気が広がった。

 菅義偉官房長官は31日昼、地元・福岡にいた麻生氏に電話で「誤解を受けるような状況になっています。考えをメディアの前で述べていただきたい」と要請。麻生氏はこう応じた。

 「俺は憲法改正は静かな雰囲気でやった方がいいよという意味で言ったんだけどな。誤解されているなら撤回しないといけないな」

 電話を終えた菅氏から報告を受けた安倍晋三首相は「撤回は当然だ。早い方がいい」と指示。第1次内閣で閣僚の失言に悩まされた教訓があった。財務省や外務省の官僚らが官邸と連絡を取って撤回コメントづくりに着手した。

 1日午前、麻生氏は「ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」とコメント文を読み上げた。その約30分後、菅氏は会見でこう強調した。「安倍内閣がナチス政権を肯定的にとらえることは断じてない」

     ◇

 麻生氏の発言に批判声明を発表した米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」のエイブラハム・クーパー副代表は、電話インタビューで「発言を撤回したのは適切だった。だが、見たところ彼は今、(当時は)逆のことを言おうとしたと言っているが、ナチスのたとえを使った理由が不可解なままだ」と語った。(ラスベガス)

8月2日朝刊記事一覧へ

 「国際社会、敵に回す」 政権に麻生ショック写真付き記事(8/2)
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 高市氏発言、撤回・謝罪で幕引き急ぐ 首相、外遊先から注意(6/20)
     ↓↓
高市氏発言、撤回・謝罪で幕引き急ぐ 首相、外遊先から注意(6/20)

 自民党の高市早苗政調会長が「原発事故によって死亡者が出ている状況ではない」とした自身の発言の撤回と謝罪に追い込まれた。福島の反発も強く、ダメージを広げないため政権として幕引きを急いだ結果だ。

 菅義偉官房長官は19日の記者会見で、欧州訪問中の安倍晋三首相からの指示内容を明らかにした。

 「首相からは『発言に注意し、政調会長としての職務にこれからもしっかり努めるように』との話があり、高市氏に伝えた」

 高市氏が発言した翌18日、菅氏は「前後を見るとそんなに問題になるような発言ではなかった」と擁護した。だが、野党だけでなく自民党内からも激しい批判が噴出。党福島県連幹部は19日午前に党本部を訪れ、撤回と県民への謝罪を求める抗議文を提出し、福島県選出の森雅子少子化相は高市氏に直接抗議した。

 官邸スタッフは「仮に閣僚だったら大問題になる発言。安倍内閣への風向きが大逆風になる」と危機感を抱く。菅氏は高市氏と電話で連絡を取り合い、石破茂幹事長による厳重注意で収束を図る検討に入った。

 18日には「趣旨が取り違えられた」と説明していた高市氏も、自民党の足元からの強い反発に軌道を修正。19日午後に党本部で記者団に「自民党の取り組みに対する誤解を招いたとしたら残念」と述べ、発言を全面撤回して県民に謝罪したうえで「進退は首相に任せている」と語った。

 進退問題にまで広がる恐れも出たため、菅氏は海外出張中の首相の指示を仰いだ。その結果、首相が高市氏に注意するとの体裁を整えた。首相周辺は「本人が謝罪して、これで決着だろう」と述べ、事態が収まることへの期待感を示した。

 ただ、参院選を前に選挙公約の責任者が問題発言をしたことは尾を引く可能性もある。福島県連幹部の一人は「まだ正式には聞いていない。確かめたい」と述べるにとどめた。



(註・1)2面=政権にショック


安倍政権、麻生ショック
  「国際社会、敵に」収束急ぐ ナチス発言


歴史認識をめぐる安倍政権要人の言動

 安倍政権は麻生太郎副総理による「ナチス発言」で早期の幕引きを図ったものの、政権ナンバー2が抱えるリスクだけに収束するかは不透明だ。安倍晋三首相が進めようとする「安倍色」の政策実現にも影を落としかねない。

▼1面参照

 麻生氏の発言撤回を受けて、政権幹部らは一斉に幕引きムードを演出した。

 菅義偉官房長官は1日の記者会見で「本人も発言を撤回したし、安倍内閣としてナチス政権を肯定的にとらえることは断じてない。私の会見で、みなさんにご理解いただきたい」と理解を求めた。

 古屋圭司国家公安委員長は東京都内で記者団に「副総理もピシッと正式に撤回したから、これで一件落着じゃないか」と述べ、政府高官も「今日で幕引きだ」と強調した。

 参院選に大勝して長期政権の足場を築いた安倍政権としては、早々に「撤回カード」を切ることで事態の収拾を図りたい考えだ。ただ、歴史認識を問われ続ける安倍政権が「右傾化」のレッテルを貼られかねない事態だけに、今後の政権運営に影を落としそうだ。

 米国などは先の大戦で連合国が枢軸国の軍国主義に勝利したという見方に異を唱える人を「修正主義者」と呼ぶが、東京裁判を「勝者の断罪」と語る安倍首相をそう評することもある。今回の麻生氏の発言は、国際社会に政権全体がそういう姿勢だと受け止められかねない。

 とりわけユダヤ人の人権団体から反発が出たことに、外務省幹部は「最悪だ」と悲壮感を漂わせる。

 ユダヤ人社会は世界にネットワークを持ち、米国内でも影響力が強い。日本の「右傾化」批判が強い中国や韓国に米国が同調すれば「国際社会を敵に回す」(官邸スタッフ)ことになるからだ。沖縄県の尖閣諸島や従軍慰安婦などの問題で対立する中韓両国の主張に理解を示す国が増える可能性もある。

 経済最優先で進めてきた安倍政権は、参院選を終えて国のかたちにかかわる「安倍色」の政策にも手を付け始めている。

 外交・安全保障政策の司令塔となる日本版の国家安全保障会議(NSC)の設置をめざし、年末の防衛大綱見直しをにらんで集団的自衛権の行使容認に向けた議論も加速させる方針。中長期の課題として首相が意欲を示す憲法改正では、改憲案の発議に必要な衆参両院で3分の2議席以上の勢力の確保を目指していく構えだ。

 こうした政治日程が目白押しのなか、官邸スタッフは「麻生氏の発言が情報戦に利用され、『安倍政権の歴史認識はやはり危険だ』とされるのが一番困る」と、政策遂行への影響を懸念する。

 外務省は1日、各国政府や海外メディアなどからの問い合わせに備えて麻生氏の撤回コメントの英訳を始めた。

 首相にとって、麻生氏は菅氏と並ぶ「政権の要」(首相周辺)だ。副総理兼財務・金融相として首相と二人三脚でアベノミクスを引っ張ってきた。もともと自民党内で基盤の弱かった首相を支えてきた数少ない派閥領袖(りょうしゅう)でもある。麻生氏を更迭すれば、政権全体が揺らぎかねない。

 そんな政権ナンバー2が起こした失言騒ぎだけに、首相側近は1日、こうぼやいた。

 「麻生さんは例えが悪すぎる」

 ■野党、国会追及の構え 与党側は逃げの一手

 野党は2日から始まる臨時国会で追及する場を求めていく構えだ。

 民主党の海江田万里代表は1日、党役員会で「ナチスから学ぶべきものは一切ない。憲法改正は正々堂々と議論して進むべき問題だ。こっそりやってしまえ、という発言は撤回して済む問題ではない」と批判。安倍首相の任命責任を追及する考えを示した。

 日本維新の会の橋下徹共同代表は1日、記者団に「かなり行き過ぎたブラックジョーク」。小沢鋭仁国会対策委員長は同日、自民党の鴨下一郎国対委員長に電話し、「(今国会中に)何らかの形で麻生氏の真意を聞く機会をつくってもらいたい」と要請した。共産党の志位和夫委員長も記者会見で「むき出しのナチズムの肯定で民主主義否定の暴論だ。日本の国政に参加する資格はない」と議員辞職を要求し、衆参予算委員会での集中審議を求めた。  自民党からも麻生氏への批判が出ている。派閥領袖の一人は「撤回するなら初めから言うなという話。首相をやっていたことが信じられない。何がポスト安倍だ」と批判。別の領袖も「まともな配慮があればこんな事例は出てこない」と苦り切った。

 ただ、臨時国会の会期は7日までだ。平日は4日間しかなく、6日の広島平和記念式典には与野党幹部が出席するため、その前後も国会は開かれない見通し。予算委員会の質疑を確保することもままならない。

 与野党は当初、臨時国会で審議する予定はなかったため、1日に国会日程を話し合った衆参両院の議院運営委員会理事会では議題にならなかったが、2日の理事会で野党が麻生氏の発言について質疑を要求するのは確実だ。今回の機会を逃すと、10月以降に召集される臨時国会まで追及する場を作るのは難しくなる。

 このため首相周辺は「野党が追及すると言っても何ができる。やりようがない」と静観の構え。自民党国対幹部は「今国会は無理。秋の国会なら追及できるが、その前にいろんなニュースがあって忘れられる」と言い切る。

 昨年の衆院選に続いて参院選でも大勝し、与党は絶頂にある。与党幹部も「内輪もめ」と見られることを恐れ、表だっての批判を回避。逃げの一手を決め込んでいる。自民党の石破茂幹事長は1日、記者団に「政府としてきちんと対応すべきだ。この問題について論評することはない」。公明党の山口那津男代表も会見で「枢要な立場にある政治家は発言に配慮が重要」と述べるにとどめた。

 ■米の人権団体「なぜナチスを例えに」 独専門家「信じられぬほどの誤り」

 麻生氏の発言に素早く反応した米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)。「そもそも、なぜナチスのたとえを使ったのか」。エイブラハム・クーパー副代表は麻生氏の発言撤回に一定の評価はしつつも、発言の経緯の説明をなお求める構えを見せる。

 同センターはナチス戦犯を追い続けたサイモン・ウィーゼンタール氏の名を冠して1977年に設立。世界中で反ユダヤ活動の監視を続け、ヒトラーが崇拝したワーグナーの上演禁止訴訟を起こしたりしている。95年には「ナチ『ガス室』はなかった」と題する記事を掲載した文芸春秋の月刊誌に抗議。雑誌は廃刊し、当時の社長が辞任した。

 クーパー氏は発言撤回前にも電話インタビューに応じて発言に対して謝罪を求める意向を示していた。

 米国ではホワイトハウスは今のところ沈黙を守り、メディアの報道も多いとは言えない。だが、ユダヤ人社会を中心に経緯説明や謝罪を求める声がさらに広がれば、報道のトーンが変わってくる可能性もある。

 過去を引き合いに出されたドイツ。存在しない「ナチス憲法」を挙げるといった麻生氏の発言に、驚きを隠さない。

 ナチス政権下で秘密国家警察ゲシュタポなどがあった跡地にたつ展示館「テロの地勢」のアンドレアス・ナハマ館長は「ナチスは合法性を装い、憲法を失効させた。麻生氏は何を話しているのか、分かっていないのではないか」と語る。

 ナチスは反対政党の議員を迫害するなどして、議会の承認なしに政府が立法権を行使できる全権委任法を成立させた。ベルリン自由大のハーヨ・フンケ教授は「麻生氏が言うような、『誰も気づかないで変わった』などということはまったくない。信じられないほど間違った発言だ」と指摘する。「ドイツでこんな発言を公にする人間は考えにくい」

 「日本の政権幹部がキツネのしっぽをさらけ出した」。中国国営新華社通信傘下の新華ネットはこんな見出しで論評。発言は憲法改正や軍備拡張を進めようとする安倍政権の本質を示す、という内容だ。

 尖閣諸島を巡る日本との対立を歴史認識問題と結びつけようとする中国にとっては、国際世論を味方につける機会でもある。中国軍機関紙・解放軍報も「麻生氏の発言は人類の良識への挑発」などとする評論を掲載した。

 韓国メディアも麻生氏の過去の失言をこぞって取り上げ、4月の靖国神社参拝を改めて批判している。

 韓国政府関係者は「問題は麻生氏が政権ナンバー2だということだ。韓国としては改憲への牽制(けんせい)も含めて、厳しく指摘せざるを得ない」と話す。

 (ラスベガス=藤えりか、ベルリン=松井健、北京=林望、ソウル=貝瀬秋彦)


(註・2)4面=発言と釈明に矛盾


発言と釈明、矛盾
  麻生氏「ナチスの手口に学んだら」→後に「悪しき例」


麻生太郎副総理は「ナチス発言」について「悪(あ)しき例としてあげた」と説明し、撤回した。ただ、当初の発言との矛盾点も見える。そもそもなぜナチス・ドイツを引き合いに出したのか。麻生氏自身の言葉足らずもあり、疑問がぬぐえない弁明となった。▼1面参照

 ■本人周辺は「言い間違い」

 ワイマール憲法下で誕生したヒトラー政権は、議会の機能不全に乗じて対抗勢力を弾圧し、全権委任法や授権法と呼ばれる法律を作った。この歴史的経緯について、麻生氏は7月29日のシンポジウムで「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった」と語り、こう続けた。

 「あの手口に学んだらどうかね」

 だが、1日に発言を撤回した際のコメントでは「喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として経緯をあげた」と説明。麻生氏周辺は「『手口』はマイナスの意味のこもった言葉。ナチスのような悪い手口で憲法が変えられたことを繰り返さないよう歴史に学ぶべきだと言いたかった」と解説する。

 ただ、「手口に学ぶ」は好例として手本にすると受け取られかねない。「単なる言い間違いというのが本人の偽りない気持ち」(周辺)としているが、誤用では済まない波紋を広げた。

 また、麻生氏は憲法問題だけでなく、首相らの靖国神社への参拝問題でも「いつからか騒ぎになった。騒がれたら中国も韓国も騒ぐ。だから(憲法改正は)静かにやろう」という流れでナチス政権の経緯を引用。撤回コメントでは「憲法改正は落ち着いて議論することが極めて重要だと強調する趣旨」とも説明したが、ナチス憲法に変わった経緯を「喧騒にまぎれて」としたこととの食い違いもある。

 自民党三役経験者の一人は「例え話を使えばわかりやすくなるだろうというのは、政治家がよく陥るワナだ。まともな配慮があればナチスの事例は出てこない」と指摘する。麻生氏の辞任を求めた社民党の又市征治幹事長は1日の記者会見で、こう語った。

 「首相もやり、いま副総理をやっている人が何をこんな馬鹿げたことを……。よく字も読み間違えた人だから歴史も読み間違えたんでしょう」

 ■麻生氏の改憲発言(要旨)

 護憲と叫んでいれば平和が来ると思っているのは大間違いだし、改憲できても『世の中すべて円満に』と、全然違う。改憲は単なる手段だ。目的は国家の安全と安寧と国土、我々の生命、財産の保全、国家の誇り。狂騒、狂乱のなかで決めてほしくない。

 ヒトラーは民主主義によって、議会で多数を握って出てきた。ワイマール憲法という当時欧州で最も進んだ憲法下にヒトラーが出てきた。常に、憲法はよくてもそういうことはありうる。

 今回の憲法の話も狂騒のなかでやってほしくない。靖国神社も静かに参拝すべきだ。お国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。いつからか騒ぎになった。騒がれたら中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから静かにやろうや、と。憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね。わーわー騒がないで。本当にみんないい憲法と、みんな納得してあの憲法変わっているからね。ぼくは民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、私どもは重ねていいますが、喧騒(けんそう)のなかで決めてほしくない。

 ■麻生氏の撤回コメント(全文)

 7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。

 私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。この点を強調する趣旨で、同研究会においては、喧騒(けんそう)にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪(あ)しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。


(註・3)16面=社説


(社説)麻生氏の発言 立憲主義への無理解だ

憲法改正論議にからみ、ナチスを引き合いに出した麻生財務相の発言が波紋を広げている。

 麻生氏はきのう、「誤解を招く結果となった」と発言を撤回した。だが、明確に謝罪はしていないし、発言の核心部分の説明は避けたままである。

 欧米では、ナチスを肯定するような閣僚の発言は即刻、進退問題につながる。麻生氏は首相や外相を歴任し、いまは副総理を兼ねる安倍政権の重鎮だ。その発言によって、侵略や大虐殺の歴史を忘れず、乗り越えようとしてきた人たちを傷つけ、これに対する日本人の姿勢について大きな誤解を世界に与えた責任は、極めて大きい。

 麻生氏は先月29日のシンポジウムで、日本の憲法改正論議を「狂騒の中でやってほしくない」としたうえで、以下のように述べた。

 「ある日気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」

 普通に聞けば、ナチスの手法に学ぶべきだと言っているとしか受け止められない。事実認識にも問題がある。

 ヒトラーは巧みな演説で国民を扇動し、まさに狂騒の中で台頭した。首相に就任すると、国会の同意なしに法律をつくる権限を政府に認める全権委任法を制定。これでワイマール憲法は実質的に停止されたが、「ナチス憲法」なるものができたわけではない。

 いずれにせよ、だれも気づかないうちに憲法が変えられることなど、絶対にあってはならない。ましてやヒトラーを引き合いに出し、その手法を是と思わせるような麻生氏の発言は、撤回ですむものではない。

 当時のドイツでは、ワイマール憲法に定める大統領緊急令の乱発が議会の無力化とナチスの独裁を招き、数々の惨禍につながった。こうした立憲主義の骨抜きの歴史を理解していれば、憲法論でナチスを軽々しく引き合いに出すことなど、できるはずがない。

 自民党は憲法改正草案をまとめ、実現に動こうとしている。だが議論にあたっては、歴史や立憲主義への正しい認識を土台にすることが大前提だ。

 安倍首相は、「ナチスの手法に学べ」と言わんばかりの今回の発言を、どう整理するのか。前言撤回で幕引きをはかるのではなく、きちんとけじめをつけなければ、まともな憲法論議に進めるとは思えない。

 これは、安倍首相の認識が問われる問題である。


(註・4)35面=何度目ですか


麻生副総理、失言何度目ですか
  「影響を計算できない人」識者苦言 ナチス発言


失言、釈明、撤回。ナチス・ドイツを引き合いにした発言が批判を浴びた麻生太郎副総理は、これまでも「問題発言」を繰り返してきた。なぜこうも続くのか。▼1面参照

 「麻生氏には、公の場での発言の影響を計算する能力が欠落している」。北海道大大学院の加藤重広教授(言語学)は、厳しく指摘する。

 「アルツハイマーの人でも分かる」「金がねえなら結婚しない方がいい」。これまでも、首相や外相だったころの発言が関係者の怒りを買った。本人は否定したが、2008年には「ナチスに例えて民主党を批判した」として同党が反発したこともあった。

 「なぜ政治家の失言はなくならないのか」と題した講演経験もある加藤教授は「品のない言い方をした方が、聞く人に響く。麻生氏は、このテクニックをよく使う」とみる。その上で「『ここまでなら言って大丈夫』と見極めるのが表現能力。外部に発信されることへの計算がないのは、あまりに自覚が足りない」と批判した。

 原彬久(よしひさ)・東京国際大学名誉教授(政治学)も「今回は弁解しきれない。国益を損傷し、日本の品格を汚してしまった」と話す。

 発言が出たシンポジウムは、ジャーナリストの桜井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」が東京都内で開いた。桜井氏が司会で、麻生氏や西村真悟衆院議員(無所属)らがパネリストを務めた。それぞれ改憲や国防などについて考えが近いとされる。

 原名誉教授は「日本の政治家は、地元の選挙区に帰ったときや小さな会合での失言が多い。今回も、いわば身内の会合という安心感があって麻生節が出たのでは」と話す。

 麻生氏は1日、発言を撤回。「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ」と釈明した。

 ただ、「真意と異なる」「誤解を招いた」は政治家の釈明の常套句(じょうとうく)。原名誉教授は「謝罪すれば許す日本の文化も問題。内輪で許しあう文化は日本の良さでもあったが、世界では通用しない」と苦言を呈した。

 麻生氏の釈明を「責任を他人になすりつけていて最悪」と指摘するのは、日本大芸術学部の佐藤綾子教授(パフォーマンス心理学)。首相経験者も含め、これまで50人の国会議員に演説の指導をしてきた。「『あるまじきことを言ってしまい、自分を恥じている。許して下さい』とはっきり謝るべきだった」

 海外からの批判を招いた点についても「『反日』というレンズを通ったり、発言の一部を切り取って翻訳されたりすることも意識して話すのが公人」と話した。

 ■五輪招致に心配の種 特別顧問務める

 2020年夏季五輪の招致を目指す東京都。ある幹部は「誤解されかねない発言は控えてもらいたい」と漏らす。

 麻生氏は、招致委員会の評議会で特別顧問を務める。7月にはスイスのローザンヌに赴き、政府として東京招致を全面的に支援する姿勢を国際オリンピック委員会(IOC)委員にアピールしたばかりだった。

 招致関係者にとっては、猪瀬直樹都知事が4月に「イスラム諸国はお互いにけんかばかりしている」と発言した苦い記憶も残る。今回は、開催都市決定を9月7日に控えた時期の問題発言。都幹部は「海外向けのロビー活動も大詰めを迎えた大事な時期なのに」と心配する。一方、別の幹部は「発言の中身は五輪招致と全く関係ない。結びつけるべきではない」と話した。

 ■「元はナチ同盟国」「東条英機が誕生」 海外サイトに書き込み続々

 世界最大級の米国のソーシャルニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト」には、麻生氏の発言を伝える記事を配信した直後から、読者のコメントが次々書き込まれた。

 ある読者は「彼は(終末期医療をめぐり)『さっさと死ねるようにしてもらいたい』と発言したこともある」と麻生氏の「失言歴」を指摘。「日本は、なんと言ってもナチスの仲間だった」「日本は第2次大戦で果たした役割や近隣諸国に与えた影響を常に否定してきた」といった、戦時中の同盟関係や歴史認識に触れた書き込みもあった。

 麻生氏の発言後、メディアが「『ナチの改憲手法学べ』麻生氏発言波紋」などと大々的に取り上げた韓国。ニュースサイトの書き込み欄には「東条英機が誕生したみたいだ」「軍国主義を忘れられずにもがいている」などの投稿が相次いだ。「ナチス政権が消滅して生まれ変わったドイツのように、新しい日本が誕生することを期待する」という意見や、「もう日本に地震が起きても同情すらわかない」というコメントもあった。

 ■過去に問題となった麻生氏の発言(カッコ内は当時の肩書)

(A)発言内容

(B)その後の対応や反応

     *

<2007年7月(外相) 富山県高岡市内の講演で>

(A)日本と中国の米価の差について「アルツハイマーの人でも分かる」

(B)翌日、「不適切なものがあった。発言を撤回し、不快な念を持たれた方々と関係者の方々におわび申し上げたい」と陳謝

<08年9月(自民党幹事長) JR名古屋駅前での街頭演説で>

(A)同年8月末に愛知県内を襲った豪雨について「安城や岡崎だったからいいけど、名古屋で同じことが起きたら全部洪水よ」

(B)岡崎市と安城市に「私の不用意な発言で、皆様方に不愉快な思いを抱かせたことに、お詫(わ)び申し上げます」とする謝罪文を送る

<08年11月(首相) 全国知事会議で>

(A)地方の医師確保について問われ「(医師には)はっきり言って社会的常識がかなり欠落している人が多い」

(B)会議後に「まともなお医者さんが不快な思いしたって言うんであれば、申し訳ありません」と謝罪

<09年8月(首相) 東京都内での対話集会で学生に>

(A)「金がねえなら結婚しない方がいい、おれもそう思う。うかつにそんなことしないほうがいい。おれは金はない方じゃなかった。だけど結婚は遅かった」

(B)野党が「多くのワーキングプアをつくった責任を感じないのは政治家失格」「非正規雇用が増えたのは政治のせい。自己責任にするのは政策を理解していない」などと批判

<13年1月(副総理兼財務相) 社会保障国民会議で>

(A)終末期医療にふれ、「さっさと死ねるようにしてもらうとか、考えないといけない」。延命治療について「その金が政府のお金でやってもらっているなんて思うと、ますます寝覚めが悪い」

(B)会議後、「終末期医療のあるべき姿について意見を申し上げたものではない」と釈明。その後、「国民会議という公の場で発言したことは、適当でない面もあった」として、発言を撤回



(声)欧州で知ったナチスへの反省
   http://digital.asahi.com/honshiimage/launcher.php?ap=PlqlwC%2BsMQy7ExSIXNeopABIkUlwpAcIIMaWQ8bC05nPOkMSz1eEYoVhjIMUXFbLe0qFfxHNC1kb1bqQfeuoKnJGRZs44YimtYnEaUv2hLUDF5L5XLhVst9Hm0HOEo7L%2BBN2adePhHraFP94XzPHT0bvOdyidDFkY0mU2CF5uB8%3D

 元地方公務員 柘知行(東京都 66)

 欧州に駐在していた十数年前、スイスでの国際会議が終わり、夕食に誘われた。英国人、米国人のほか、ドイツの現職市長が一緒だった。アルコールもまわり、冗談を言い合ううち、私は、ドイツのタクシー運転手から聞いた次のような「小話」を披露した。

 「ナポレオンというブランデーがあるのだから、ヒトラーというビールがあってもいいのではないか」

 笑いが起きるかと思ったら、ドイツの市長が、真顔で「それはとんでもないことだ」と言った。他の欧米人も口々に運転手を非難した。私の人格まで否定されているように感じられた。

 ユダヤ人をガス室で大量虐殺したナチスの歴史は決して過去のものにはなっていない。英国留学の経験もある麻生太郎副総理はそうした欧州の雰囲気を感じたことはなかったのだろうか。それは、日本が国として第2次世界大戦で行ったことについて忘れつつあることと無関係であるまい。




 08 03 (土) 靖国参拝へ 官邸に打診
         法制局長官に小松一郎自衛権容認派安倍人事
         公明党の山口那津男代表 集団的自衛権、理念と現実の溝
         「核兵器廃絶への道」
         パウエル氏、核廃絶を語る

2013年8月3日
 稲田行革相、終戦記念日に靖国参拝へ 官邸に打診、了承

 安倍政権の稲田朋美行革相が、15日の終戦記念日に靖国神社に参拝する意向を固めた。自身が所属する議員グループ「伝統と創造の会」の一員として参拝する。現職閣僚が15日に靖国参拝することが明らかになるのは初めて。

 稲田氏は終戦記念日の参拝について1日、首相官邸に打診し、了承を得た。首相は先月21日、「各閣僚はそれぞれの信念の中で判断してほしい」と述べ、閣僚の靖国参拝を制限しない方針を表明していた。

 安倍政権の閣僚をめぐっては、今年4月、春季例大祭の前後に、稲田氏や麻生太郎副総理ら4閣僚が靖国神社に参拝した。これに中国や韓国が反発し、日本と中韓との関係が悪化した経緯がある。他の3閣僚の態度は現時点で不明だが、終戦記念日に現職閣僚が参拝すれば、中韓がさらに批判を強める可能性がある。

 稲田氏は2日の記者会見では参拝を明言せず、「自分の国のために命を捧げた人に対し、感謝と敬意、追悼の意を表すことは主権国家として許されるべきだ」とだけ述べていた。



2013年8月3日
 解釈変更へ地ならし 法制局長官に集団的自衛権容認派 安倍色人事で掌握

 安倍晋三首相が悲願の集団的自衛権の行使容認に向けて「法の番人」の人事に踏み切った。内閣法制局長官に外務省出身者を起用する極めて異例な人事は、「安倍色」の政策を官邸主導で進めていくという強い意思の表れだ。

 安倍首相は2日昼、国会内で開かれた自民党議員の会合でこう訴えた。

 「消費税、TPP(環太平洋経済連携協定)、規制改革、外交・安全保障。取り組むべき課題は山積している。大いに議論しよう」

 官邸に戻った首相は菅義偉官房長官、岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、麻生太郎副総理と意見交換。年明けの発足を目指す国家安全保障会議(NSC)の中核となる枠組みで、外交・安保政策の議論を加速させる意気込みを示した。

 首相が小松一郎駐仏大使を法制局長官に充てる方針を固めたのも、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安保論議を加速させる布石だ。

 首相は自民党幹事長だった2004年1月の衆院予算委員会で、「行使を研究する余地」について質問。秋山収法制局長官は行使を容認できない理由について「我が国に対する武力攻撃が発生したことを満たしていない、という趣旨だ」と答え、かわされた。

 首相には、内閣法制局による憲法解釈が行使容認を阻む壁になってきたという思いがある。

 どう乗り越えるか。実は首相は参院選中から法制局長官の交代を視野に入れていた。首相周辺は「長官を代える手もある」と漏らし、法制局全体を「安倍色」に染めることをひそかに検討していた。

 参院選での大勝後、首相は7月22日の記者会見で集団的自衛権の行使容認について議論の加速を表明、そして今回の人事となった。白羽の矢が立ったのが安保法制に詳しく、第1次内閣でも容認論議を事務方として支えた小松氏だった。そして、次長が昇格するという通例は破られた。官邸スタッフは「安保上必要なのに憲法解釈や法制局の判断が足かせになっているのはおかしい」と指摘する。

 今回の人事案に対し、自民党の石破茂幹事長は2日の記者会見で「集団的自衛権を行使できるようにするという我が党の立場からすれば、極めてふさわしい人材を得た」と評価する。

 首相は月内にも私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を再開。秋にもまとまる報告書を受けて首相が年内に憲法解釈変更を閣議決定し、来年の通常国会で関連法を整備する「最速シナリオ」も政権内にはある。

 ただ、集団的自衛権の行使容認に慎重論が根強い公明党は戸惑いを隠せない。党幹部の一人は警戒感をあらわにする。「『行使容認のための人事だ』と内閣に正面から言われたら、どう対応すればよいのか……」

 ■揺らぐ「法の番人」

 今回の人事は「内閣法制局との100年戦争」の流れを変えそうだ。長官への外務省出身者の異例の起用。省幹部は2日、「国際法の知識を含め法律の素養がある適材が任命されるならいいことだ」と語った。

 政府は集団的自衛権について「保有するが行使できない」とする。憲法9条が認める武力行使は日本を守るためで、集団的自衛権は他国を守るための武力行使となるから使えない――。こうした解釈を作ってきたのが「法の番人」と呼ばれる内閣法制局。歴代の長官は国会答弁で自衛隊の海外での活動を縛ってきた。

 一方、外務省はこうした憲法解釈に不満を抱えてきた。国連平和維持活動(PKO)など、冷戦後の自衛隊の国際貢献で足かせになってきたという思いだ。

 内閣法制局では80人弱の職員が政府提出法案の合憲性をチェック。部長などの幹部は法務、財務、総務、経済産業、農林水産の5省の出身者が就く。長官は農水省を除く4省出身者が基本で、憲法解釈について国会で答弁することも多い。

 小松氏が長官になれば、外務省出身者としても部長未経験者としても初めて。内閣法制局からは不安の声が漏れる。ある幹部は「外務省国際法局長当時の国会答弁を聞いたが粗かった。国際法しか知らない人ができるのか」と手厳しい。

 外務省でも不安と期待が交錯する。「法制局は小松さん一人乗り込んで変わる組織じゃない」(幹部)。ただ、別の幹部は「集団的自衛権の行使容認は首相の意思。何とかなる」と官邸主導に期待する。

 憲法解釈を変え集団的自衛権の行使を完全に認めれば、米本土への攻撃にも自衛隊が「海外派兵」されうる。憲法9条はそのままでどこまでできるのか、知恵を絞るのは法制局だ。

 日本攻撃に至るおそれのある周辺事態での米軍への後方支援やPKOでの他国軍との協力に向け、政権は自衛隊に「他国軍の武力行使との一体化」を禁じる憲法解釈の変更も目指す。「専守防衛」の自衛隊は大きく変わることになる。

 防衛省幹部はこんな懸念を示す。「普通の軍隊を持つまともな国になりたい、という理念が先行している。中国や北朝鮮にどう対応するかという目下の課題にもっと集中してほしい」

     *

 小松一郎氏(こまつ・いちろう)一橋大中退、72年外務省に入り、国際法局長などを経て11年9月から駐仏大使。62歳。

 ◆キーワード <集団的自衛権>

  同盟国などが攻撃されたときに自国への攻撃とみなし反撃できる権利。
  政府見解では日本が自衛権を行使するには、
    ▽ 我が国への急迫不正の侵害がある
    ▽ 他の適当な手段がない
    ▽ 必要最小限度の実力行使にとどめる――
  の3要件が必要とされ、
  1981年の政府答弁書は
    「集団的自衛権の行使は我が国を防衛するための必要最小限の範囲を超え、
     憲法上許されない」
  としている。



2013年7月28日 公明党の山口那津男代表
 (日曜に想う)集団的自衛権、理念と現実の溝 特別編集委員・星浩

 公明党の山口那津男代表は、安全保障問題の論客だ。20年前に防衛政務次官を務め、弁護士でもあるから、関連の法律や条約を熟知している。党の先輩で防衛問題に詳しい市川雄一元書記長からは、国会質問の手ほどきを受けた。「千本ノックで鍛えられました」と山口氏は振り返る。

 日本の政界に目を凝らす米国政府が放っておくはずがない。ワシントンの国防総省や東京の米大使館の幹部たちが、説明や陳情のためにしょっちゅう山口氏を訪れてきた。

 その山口氏が、最近の米国の反応に変化を感じている。

 「湾岸戦争からイラク戦争まで、米国は『ショー・ザ・フラッグ』や『ブーツ・オン・ザ・グラウンド』と言って、自衛隊の派遣を求めてきた。軍事面での日米協力を重視していた。ところが、最近、米国から聞こえてくるのは『日本は中国や韓国とうまくやってほしい』という声だ。安倍晋三首相はそこを見極めないといけませんね」

 日米の安全保障関係を振り返ってみよう。米ソ冷戦時代、米国にとって日本は、ソ連との間にある「不沈空母」だった。途上国向けの日本の経済協力も、米国の対ソ戦略の一翼を担った。冷戦が終わって米国経済が不振になると、在日米軍絡みのさまざまな経費負担を求められた。湾岸戦争やイラク戦争では、自衛隊による「目に見える協力」を迫られた。それが近年、とりわけオバマ政権は、中国との経済関係を重視。日米の軍事協力には、かつてほど前のめりではなくなっている――。

     *

 参院選のさなか、山口氏は集団的自衛権の行使容認に「断固反対」と力を込めた。支持母体の創価学会の意向もあるが、米国の変化を見据えた上での「問題提起」だったようだ。

 集団的自衛権。自国と密接な関係のある外国が攻撃された時、自国が直接攻撃されていなくとも、自国への攻撃と見なして反撃する権利のことだ。

 国連憲章に規定があり、どの国も持つ。しかし、日本は憲法9条で必要最小限の自衛権しか行使しないことになっている。集団的自衛権はその範囲を超えるから行使は許されない、というのが従来の政府見解だ。

 安倍首相は、その見解を、現憲法の下でも「行使できる」と改めることに強い意欲を見せている。参院選で自民党が圧勝したことで、解釈変更に向けた首相側の勢いは増している。

 しかし、政府や自民党内の動きを観察してみると、山口氏の言う「変化」が影を落としていることが分かる。

 安倍首相の外交ブレーンの谷内正太郎内閣官房参与(元外務次官)は、集団的自衛権について「国家の品格の問題だ。友人に助けられても自分は助けないというのは、国家として恥ずかしいことだ」と話す。米国の意向に関わらず、日本としてやらねばならないことだと説く、いわば「理念派」だ。

 これに対して、外交・安保を担当する政府高官の中には「オバマ政権は必ずしも積極的ではない。ここはしばらく様子見が良いのではないか。少なくとも、中国との関係が少しでも改善されるのを待つ方が得策だ」という声がある。米国や中国の反応を見極めてから解釈を変更しても遅くはないという「現実派」だ。

     *

 さて安倍首相、どう決断するか。

 行使容認を決めれば、理念派からは喝采を受ける。一方、これまでの政府解釈を担ってきた内閣法制局の幹部の更迭は避けられない。公明党の不満も募る。中国や韓国からは「日本の軍事大国化」といった批判が出るのは間違いない。行使容認を先送りすれば、中韓との関係改善を願う現実派からは歓迎されるが、日米の防衛協力を進めようという勢力は失望する。理念と現実の溝は埋まりそうにない。

 米国はどう出るかが、大きなポイントだ。その時、山口氏にはどんな本音が伝えられるのか。日米関係の節目となる選択の時が迫る。

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核といのちを考える 2013年06月18日
 核と人類、共存できるのか 取材センター発足
   http://digital.asahi.com/articles/OSK201306170072.html?ref=comkiji_redirect

 広島・長崎の惨劇を招いた核兵器と、福島第一原発事故につながった「平和利用」という名の原子力民生利用。この二つは基本的には同じ物理原理の応用ですが、これまで別次元のものとして扱われてきました。「核兵器」を「原子力兵器」とは呼ばず、「原子力発電」を「核発電」と言わないことからも分かるように、私たちは「核」と「原子力」の言葉を暗黙のうちに使い分けてきました。

 しかし、広島・長崎に加えて福島の核被害を経験した今、核兵器と原発は密接につながっているとの認識に立ち、「核と人類は共存できるのか」を問い直す時代がきています。

 朝日新聞は核と人類の関係を包括的に考えるため、「核と人類取材センター」をこの春、大阪本社に発足させました。原爆投下から70年を迎え、世界の核管理の基本となっている核不拡散条約(NPT)の再検討会議が開かれる2015年に向けて、情報発信を強化するのが目的です。

 核兵器を持たない国に、代わりに原発技術を利用する権利を保障したNPT体制は、1970年の発効以来、逆に核の拡散リスクを高め、北朝鮮の核実験やイランの核開発疑惑を招いています。一方で、2011年の福島の事故は、核エネルギーを安全に制御できない現実を見せつけました。

 事故の収束・廃炉への道筋も見えず、廃棄物の最終処理技術も確立されていない中で、政府は成長戦略の名の下に地震国トルコや台湾、政治的に不安定な中東などへの原発輸出を推進し、核のリスクをいっそう高めようとしています。

 人類が核の恐怖を感じないですむ世界をいかに実現していくか。次世代を担ういのちに希望ある未来を受け渡すためにも、読者の皆さんと考えていきます。

核といのちを考える
 「核兵器廃絶への道」国際平和シンポジウム
   http://www.asahi.com/special/nuclear_peace/

   … 【USTREAM】により「核兵器廃絶への道」が再現されている …

特集・オピニオン > 核といのちを考える > 核といのちを考える コラム一覧メニュー
 核といのちを考える コラム一覧
   http://www.asahi.com/special/nuclear_peace/column.html

(核リポート)核抑止論と核廃絶論 つなぐ営み、広島で(8/1)
(核リポート)2つの事故原発 チェルノブイリと福島(7/29)
(核に別れを:10)世界をリードしてこそ(7/15)
(核に別れを:9)シナリオは描いてある(7/14)
(核リポート)「人道的」な議論 欧州からのメッセージ(7/14)
(核に別れを:8)ミサイル基地で考えた(7/13)
(吉田文彦の地球360度)もうひとつの「ドクトリン」(7/12)
(核に別れを:7)できるまで挑む「宿題」(7/11)
(核に別れを:6)「番人」は毅然と臨んだ(7/10)
(核に別れを:5)神に祈るしかないのか(7/8)
(核リポート)福島のこれから チェルノブイリで考えた(7/8)
(核に別れを:4)ビッグベンも動き出す(7/8)
(核に別れを:3)ロシアの4人が応えた(7/7)
(核に別れを:2)重鎮4人が帰ってきた(7/6)
(核に別れを:1)プラハは一日で成らず(7/5)
(竹内敬二の窓)「事故の経験で、最も安全な…」の軽さ(7/4)
(核リポート)原発テロ対策 「不作為」の重い責任(7/2)
(吉田文彦の地球360度)イラン新大統領の懐刀(6/28)
(核リポート)届かぬ被爆地の思い ジュネーブ(6/19)
(吉田文彦の地球360度)核抑止が腐り始めた(6/19)
(核リポート)核抑止論と核廃絶論 つなぐ営み、広島で(8/1)
(核リポート)2つの事故原発 チェルノブイリと福島(7/29)
(核に別れを:10)世界をリードしてこそ(7/15)
(核に別れを:9)シナリオは描いてある(7/14)
(核リポート)「人道的」な議論 欧州からのメッセージ(7/14)
(核に別れを:8)ミサイル基地で考えた(7/13)
(吉田文彦の地球360度)もうひとつの「ドクトリン」(7/12)
(核に別れを:7)できるまで挑む「宿題」(7/11)
(核に別れを:6)「番人」は毅然と臨んだ(7/10)
(核に別れを:5)神に祈るしかないのか(7/8)
(核リポート)福島のこれから チェルノブイリで考えた(7/8)
(核に別れを:4)ビッグベンも動き出す(7/8)
(核に別れを:3)ロシアの4人が応えた(7/7)
(核に別れを:2)重鎮4人が帰ってきた(7/6)
(核に別れを:1)プラハは一日で成らず(7/5)
(竹内敬二の窓)「事故の経験で、最も安全な…」の軽さ(7/4)
(核リポート)原発テロ対策 「不作為」の重い責任(7/2)
(吉田文彦の地球360度)イラン新大統領の懐刀(6/28)
(核リポート)届かぬ被爆地の思い ジュネーブ(6/19)
(吉田文彦の地球360度)核抑止が腐り始めた(6/19)

(核といのちを考える 孤立する日本:上)
 非人道声明、署名せぬ被爆国
   http://digital.asahi.com/articles/SEB201308020091.html?ref=comkiji_redirect

 4月24日午後4時、スイス・ジュネーブ。2年後の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けた第2回準備委員会で、核兵器の非人道性を訴える共同声明が発表された。南アフリカやスイスなど最終的に80カ国が賛同したが、日本は署名しなかった。

 しかし直前までは日本も賛同するはずだった。

 「主要な提案国が日本の修正要請を受け入れそうだ」。与党議員は2時間前、外務省幹部から電話で伝えられた。

 日本は南アフリカなどの提案国に対し、文中の「核兵器が二度といかなる状況でも使われないことが人類生存の利益になる」との部分の修正を求めていた。北朝鮮の核開発など周辺の脅威には米国の核抑止力に頼る実情を踏まえ、「いかなる状況でも(under any circumstances)」の3語は、米の行動を制限しかねないと考えた。

 岸田文雄外相は日本代表団に「3語を削る修正を」と指示していた。

 24日午後、現地の代表団は南アフリカから「修正で合意できる」との情報を得た。しかし声明発表の40分前、事態は一変する。南アフリカのアブドゥル・ミンティ大使は、天野万利(まり)軍縮大使に「当初の文案で発表する。変えることはできない」と告げた。

 日本の関係者は「土壇場で修正を受け入れない国があった」と証言する。取材すると、交渉の舞台裏が見えてきた。

 ■「3語削除」疑念招く

 外務省関係者によると、「いかなる状況でも」の3語削除をめざす岸田外相の指示は、準備委員会が開幕する4月22日、天野大使ら代表団に伝えられた。

 岸田氏は被爆地の広島が地元。朝日新聞の取材に書面で回答を寄せ、「日本は唯一の戦争被爆国。だからこそ私自身、直接指示し、関係国とぎりぎりの調整をした」「賛同できなかったことは大変残念」と説明。一方で「安全保障環境は厳しさを増し、米国の核戦力を含む日米同盟の抑止力で自国の安全を確保する必要がある」と強調した。

 日本の要求はどう受け止められたのか。提案国のノルウェー政府関係者は「なぜ3語が重要なのか。(日本の真意が)理解できなかった。交渉はゲームのように感じた」と語る。日本の「本気度」を疑っていた。

 24日午後2時すぎ。日本側は修正合意の感触をつかんだと思ったが、修正を想定していない国もあり、提案国側の認識は日本とずれていた。ある提案国の外交官は「日本は修正を求めつつ、3語を削れば声明に賛同すると確約していなかった」と証言する。

 文案を変えるなら、提案国の同意が必要だが、日本が修正を条件に賛同を確約したのは発表1時間前の午後3時前後。修正協議の時間は残っていなかった。南アフリカのアブドゥル・ミンティ大使は振り返る。

 「複数の国が文案の変更は難しいと感じていた。日本の提案は遅すぎた」

 ■「抑止論に日本固執」

 ジュネーブの政府間会合を見守った、NGO「ピースボート」の川崎哲共同代表(44)は日本政府の姿勢を批判する。「被爆国の日本は核兵器の非人道性を最初に主張した。しかし核抑止論に固執し、多くの国が核の非人道性を訴える新たな潮流の中で、置きざりにされつつある」

 国際会議で「核兵器の非人道性」がキーワードに浮上したのは、2010年のNPT再検討会議の合意文書だ。「核兵器使用がもたらす壊滅的な人道上の結果に深刻な懸念を表明」との表現が盛り込まれた。核保有国のパワーバランスに傾いていた議論に対し、核の使用は人道的な惨事を招くとの共通認識が芽生えた。

 これに、核保有国による「段階的核廃絶」が進まないことに不満を抱くスイスやノルウェーなどが着目。昨年から今年4月、核兵器の非合法化や非人道性に言及する共同声明が3回、国際会議で採択された。しかし日本は、核保有国やドイツ、韓国などと一連の声明への賛同を見送ってきた。

 ■プラハ演説後、依存加速

 「核兵器を使ったことがある唯一の核保有国として行動する道義的責任がある」。オバマ米大統領は09年4月、プラハで「核なき世界」へ向けた核軍縮への決意を語った。だが皮肉にも、日本の核抑止力への依存は、この時からさらに深まった。

 防衛省幹部は、オバマ氏の戦略について「米ロの核軍縮が進めば、米の核の信頼性は低下する。同盟国を軽視するのかと思った」と語る。日本が懸念したのは核開発を進める北朝鮮や中国の動き。不安を裏付けるように北朝鮮は翌月、2度目の核実験に踏み切った。

 核の傘の保証は冷戦時代、日米首脳の共同声明や政府間の文書で確認されるだけだった。だが、日本は「核抑止の維持」の確約を取り付ける必要を感じ始めた。一方、米側も「日本を核武装に走らせないためにも、同盟国の不安を和らげることが必要」(元外務省幹部)と考えていた。

 日米は09年7月、外交や防衛の実務担当者が直接対話する「拡大抑止協議(EDD)」の設置で合意した。日本もミサイル防衛などを担い、米国の抑止力の一角に加わることを想定していた。09年9月には民主党政権に交代するが、EDDは引き継がれる。当時の岡田克也外相は、EDDについて「核がある以上、政府には国民を守る責任がある。ただ米国にお任せではなく、互いに理解して中身を話し合うべきだと考えた」と話す。

 両国の協議は、いまの安倍政権のもとでも着実に進められている。

 今年4月。米・シアトルに近いキトサップ海軍基地で、5回目のEDDが開かれた。核ミサイル原潜の母港で、米国の核戦略の重要拠点のひとつだ。

 米側からは国務・国防両省の次官補代理ら、日本からは外務・防衛両省の審議官級幹部らが参加。出席者らによると、北朝鮮が日本を核で「恫喝(どうかつ)」した事態も想定し、航空機やミサイルによる核攻撃も含めた対応を協議した。

 防衛省幹部は言う。「核の傘が自動的に差しかけられた冷戦時代と違い、日本が直接、核の脅威に向き合う時代になった。これが最善の選択と信じている」

 (谷田邦一、武田肇)

     *

 核依存を深め、世界から「孤立」する日本の姿を2回の連載で報告する。

 ■核廃絶と核抑止力をめぐる動き

09年4月 オバマ大統領が「核なき世界」を表明

   5月 北朝鮮が2度目の地下核実験

   7月 日米が拡大抑止協議(EDD)の設置で合意

   9月 民主党に政権交代。鳩山内閣発足

12年5月 ウィーンでNPT再検討会議第1回準備委員会。「核兵器の非合法化」の共同声明に日本は賛同せず

  12月 自民党に政権交代。安倍内閣発足

13年3月 ノルウェー・オスロで核兵器の非人道性をテーマにした初の国際会議。127カ国が参加

   4月 ジュネーブでNPT再検討会議の第2回準備委員会。「核兵器の非人道性」の共同声明に日本は賛同せず

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2013年07月30日
 米、極秘核施設を同盟国に開示 核の傘、不信拭う狙い
   http://digital.asahi.com/articles/TKY201307290493.html

 【ワシントン=牧野愛博】米国が極秘としてきた核関連施設を昨年から、日本など同盟国に見せ始めた。オバマ政権が核軍縮に取り組むなか、「核の傘」で米国が同盟国に与える抑止力に不信感を持たれないようにする措置。日本政府は歓迎しているが、米国の核戦略への関与という重い課題も背負うことになる。

 複数の日米政府関係者らが明らかにした。2010年2月から始まった、核の傘を巡る政策などを話し合う日米拡大抑止協議の一環として、日本の外務、防衛両省幹部が昨年5月と今年4月、核戦力に関連した米軍基地計3カ所を訪れた。

 オファット空軍基地(ネブラスカ州)では、核攻撃目標を決める戦略軍司令部センター▽マルムストローム空軍基地(モンタナ州)では、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射司令室▽キトサップ海軍基地(ワシントン州)では、核搭載可能なミサイル「トライデント」を装備するオハイオ級戦略原子力潜水艦の内部で、説明を受けた。

 ただし核兵器そのものは開示されず、運用システムや運搬手段の視察にとどまった。米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟国や韓国にも、こうした核関連施設を見せ始めている。

 拡大抑止協議では、日米両国が第三国から核攻撃を受ける場合に備えた軍事、外交上の対応策などを協議する机上演習も始めた。

 米国は日米同盟の一環として「核の傘」の提供を日本に確約してきたが、核兵器や関連施設、核戦略の詳細などは明らかにしていなかった。米側関係者の一人は「オバマ政権の核軍縮政策で同盟国が動揺しないよう、透明性を高めた」と説明している。北朝鮮の核に対抗して日韓が核武装に向かうといった「核ドミノ現象」を抑え込むねらいもあるとみられる。

 オバマ政権は大規模な国防費削減に取り組んでいる。核戦略に日韓を取り込むことで、ミサイル防衛(MD)や、核使用の動きを事前に封じる敵基地への先制攻撃などについて、日韓の協力をさらに引き出したい思惑もありそうだ。

 日本政府は1990年代の朝鮮半島核危機以来、米国に、核の傘の詳細を明らかにするよう求めてきた。日本政府関係者の一人は、米側の措置について「同盟関係を強化する画期的な動きだ」と評価した。

 安倍政権は参院選の結果を受け、集団的自衛権の行使や敵基地攻撃能力の保有などを検討する方針。日米は、防衛協力のための指針(ガイドライン)改定などで、核の傘をめぐる協力を加速化させそうだ。

     ◇

 〈核の傘〉 核保有国が同盟国に核兵器の抑止力を提供し、安全を保障すること。米国は北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国や日本、韓国などに対し、同盟国に加えられた攻撃については、米国への攻撃と同様にみなして報復するとの保障を与えている。

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2013年07月11日
 パウエル氏、核廃絶を語る 「極めてむごい兵器」
   http://digital.asahi.com/articles/OSK201307100115.html?ref=comkiji_redirect

 【論説副主幹・吉田文彦、アメリカ総局長・山脇岳志】北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルの開発を進め、中国が尖閣諸島沖で領海侵入を繰り返す。安全保障をめぐる環境が厳しさを増す中、日本国内の一部には核武装への積極論もある。だが、核は本当に抑止力として役に立つのか。米軍制服組トップと国務長官を務めた後、近年、核兵器不要論を説くコリン・パウエル氏に聞いた。

 ――なぜ核兵器が不必要だと思うのでしょうか。

 「極めてむごい兵器だからだ。まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば、基本的には無用だ」

 「私は軍事的な意味で無用だと言っている。政治的に見れば、核には抑止力があり、北朝鮮は核兵器を持つことで自国の力や価値が増すと考えている。だからこそ私は核軍縮を提唱している。核兵器をすぐにゼロにするのは難しい。しかし、核廃絶という目標を持つのは良いことだ」

 「各国は協力して核兵器をコントロールし封じ込めることが重要だ。技術は出回っているし、ウランやプルトニウムもそうかも知れない。テロリストが触手を伸ばし、初歩的な、あるいは本格的な核兵器を開発しかねない。これは、今や現実的な脅威だ」

 ――北朝鮮に対して、米国は、通常兵器だけで抑止力があるのでしょうか。

 「私の個人的な見方だが、通常兵力は強力であり、核兵器を使わなければならないことはない。もし北朝鮮が核兵器を使ったり、使おうとしたりしているとみた場合、米国はすぐに北朝鮮の体制を破壊するだろう。なので、軍事的に考えても、外交的に考えても北朝鮮が核を使う理由は見あたらない」

 「金一族は核を持つことで強い立場になれると考え、軍を強くすることに没頭しているが、それは彼らを守るのには役立たず、リスクを高めている。核開発は自殺行為なのだ」

 ――中国も、核兵器の近代化を図っているのでは。

 「能力がさほどでもないから近代化している。米国だって常に近代化はしている。核兵器がより安全で信頼度が高くなるなら、むしろシステムの近代化はしてもらいたい」

 ――もし米中間に危機が起きたときは、中国が核兵器を使わないように説得できますか。

 「そんなことは起きないだろうから、考えたこともない。米国は中国と敵対関係にはない。むしろ、中国が成長し、アジアの平和が維持できるような状況を作ってきた。中国が豊かになるにつれ、いつか米国の敵になるだろうと考えている人は多いが、40年前から中国に行っている私は、そうはみていない。中国は多くの人を貧困から脱却させ、世界第2位の経済大国になった。中国は米国の敵にならなかったことで成功してきた。それが、なぜいきなり米国の敵になるのだろうか」

 「中国はもう貧しくはない。彼らは、世界でもっと影響力を高めたいと思うだろう。ただ、その影響力は主に経済力から生じるものだ。米国と中国との間で、核兵器であれ通常兵器であれ、紛争が起きると真剣に考えたことはない」

 ――核抑止という概念は国際政治の中に存在しています。核兵器は軍事的に不必要とのことですが、どのように状況を変えていくのですか。

 「状況はすでに変わっている。私が統合参謀本部議長に就任したころ、米国は大量の核兵器を保有していた。我々は、大幅に保有量を削減した。潜水艦搭載の弾道ミサイルを除いて海軍から核を撤収し、陸軍からも撤収。空軍の戦術核はいくらか残しているが(大幅に減らした)」

 「我々が核兵器を削減しているという例を示すことが、いつか核兵器がゼロになる時代がくるかもしれないと世界各国に思わせることになると期待している。北朝鮮やイランに対しては、こんなメッセージを送りたい。『あなた方は時間とお金を無駄にしている。わずかな核兵器を持とうとして、国際社会から制裁を受け、国を荒廃させている。気は確かか?』と。最も強力な政治的武器は、核武装ではなく、経済成長だ」

 ――でも、彼らを説得できていませんね。

 「我々は多くの国を説得してきた。たとえばリビアは説得された。(ブラジルやアルゼンチンのように)自ら納得して核開発をやめた国もある。彼らは『ほかにやるべきことがある。経済を立て直したほうがよい』と考えたのだ。そうした考えに至っていないのは、実質的にイランと北朝鮮だけだ」

 ――それは核が、政治的に有益だということを示しているのでは。

 「もちろんそうだ。しかし、核保有国が、危機に対応するための備えとして持つ抑止力としては、ずっと少ない核兵器数で十分なのだ。核を減らすことは私が国務長官の時も、オバマ大統領が新戦略兵器削減条約(新START)でも、実施したことであり、さらなる削減に向け、ロシアと再び交渉しようとしている。ただ、私は、この10年ほど、他国と交渉せずとも、米国は核兵器を減らせると言い続けてきた」

 「北朝鮮やイランはクレージーなので核兵器を使うと言う人たちがいる。私は、北朝鮮のシステムはクレージーではあるものの、システムの中では賢明であり、自殺行為はしないと思う。イランも同様だ」

 「インドとパキスタンの間で(2002年に)危機が起きた際、パキスタンの(ムシャラフ)大統領に電話してこう言った。『あなたも私も核など使えないことはわかっているはずだ。1945年8月の後、初めて核兵器を使う国やリーダーになるつもりなのか。もう一度、広島、長崎の写真を見てはどうか。あんなことをしたいのか、考えたりもするのか』と。もちろん、パキスタン大統領の答えは『ノー』だった。インドも同様な反応だった。彼らは冷静になり、危機は去った」

 ――オバマ大統領はベルリンでの演説で、配備済みの戦略核弾頭をさらに3分の1削減することを提案しました。ロシアには、ミサイル防衛(MD)での合意なしにはさらなる削減は難しいとの意見もあるようですが、どうみていますか。

 「MDに対するロシアの態度は、米ロの戦略核の保有量を削減してきた過去10年の二つの条約の成立を妨げなかった。MDと保有量の削減は、今後の交渉に任せるべきだ」

 ――日本には、原子力発電によって、将来、必要があれば核武装できる能力を保つべきだとの考えもありますが、どう思いますか。

 「原子力は原子力に対するニーズに基づくべきもので、兵器のためであるべきではない。大地震と津波、福島原発の事故で、日本は難問に直面している。原子力はもう必要ないと言えるのか、エネルギー需要の増大をどう満たすのか、空気汚染を覚悟して化石燃料を増やすのか、太陽光発電や風力発電は原子力発電の落ち込みをカバーできるのか、日本は慎重に判断するしかない」

 ――日本の核武装は心配していないのですね。

「心配していない。二つの理由がある。一つは、核武装を真剣に考える、まじめな日本の政治家や自衛隊幹部に、私は会ったことがないということだ」

 「二つ目は、核武装は、理にかなった行動ではないという点だ。日本は過去60年で、原爆や戦争による壊滅状態から、すばらしい経済や生活水準を手に入れ、最も成功した国の一つとなった。大きな変化を、核武装なしにやり遂げたのだ」

 ――核兵器の廃絶に向け、日本と米国はどのように協調すべきでしょうか。

 「一つの方法は、日本が核兵器や核開発計画を持たず、持つという意思もないことを再確認することだ。日本がその立場から離れてしまえば、非核化の進展は難しくなってしまう」

 「6者協議で、日本と米国は、常に『朝鮮半島の非核化を実現しよう』と主張してきた。もし日本が核武装を検討するような姿勢を示し始めれば、韓国はどう行動するだろうか。日本は、核を持たなかった過去60年の歴史をみるべきだ。世界は冷戦時代に比べれば平和になっている。日本が核武装をしないから、米国の大統領は、日本を良い例として挙げることができたのだ」

     ◇

 Colin Powell 1937年、ニューヨーク市で生まれた。ニューヨーク市立大学卒業後、陸軍に入隊。ベトナム戦争に2度従軍し、負傷した。その後、大将に昇進し、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で、米軍制服組トップの統合参謀本部議長として、パナマ侵攻や湾岸戦争を指揮した。

 陸軍退役後、自伝「マイ・アメリカン・ジャーニー」がベストセラーになり、96年の大統領選では有力な大統領候補と目されたが、立候補はしなかった。

 2001年に発足したジョージ・W・ブッシュ政権で国務長官に就任。イラクへの単独攻撃を主張する強硬派が政権内に多い中、最後まで開戦に慎重だったが、最終的には支持。03年、国連で演説し、イラクが大量破壊兵器を保有する証拠を挙げたが、後に、その情報は虚偽だったと判明。この演説を自ら「汚点」と認めている。

 12年、自らの経験や人生訓をまとめた「It Worked for Me」(邦訳「リーダーを目指す人の心得」)を出版した。

     ◇

■取材を終えて

 パウエル氏は黒人として初めて、米軍制服組トップや国務長官を務めた。

 退任後は、投資銀行などの誘いを断り、自由な立場で発言している。高額報酬の魅力を断ったのは「主に、渡りをつけるきっかけやディナーの客寄せ」になってしまうと思ったからだと著書に記している。

 オバマ大統領に対して直接、アドバイスを行うこともあるが、大統領、パウエル氏ともに、その内容を明らかにはしていない。共和党政権で要職を務めたにもかかわらず、大統領選で2度とも民主党のオバマ氏を支持して話題を呼んだ。

 オバマ大統領が核廃絶を目指す姿は日本でも知られている。ただ、数年前からキッシンジャー元国務長官、シュルツ元国務長官ら共和党穏健派の重鎮も、テロリストに核兵器が渡ることなどを懸念し、核兵器の削減や将来の廃絶を主張してきた。パウエル氏も同様の考えだ。

 パウエル氏は、単純な理想主義者ではない。

 核抑止の政治的な意味は否定せず、すぐに核廃絶が可能とも思っていない。ただ、米国などが長期的に核廃絶に向けて努力する姿勢を示すことが、世界の安定につながるとみる。現実の国際政治の難しさを踏まえた理想主義ともいえるだろう。

 日本が核兵器を持つことが、国際的にいかに有害になるかを説く姿が印象的だった。被爆国である日本が核武装の議論を始めたとき、核廃絶という理想は遠くなる。

 北朝鮮の脅威を前に、今後、日本国内で核武装論が高まらないか。「心配していない」という言葉とは裏腹に、パウエル氏は、実は警戒をしているのかもしれない。