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折々の記 2013 ⑤
【心に浮かぶよしなしごと】
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【 02 】09/22
09 22 08 24~09 19音楽著作権侵害修復期間中の 新聞ニュース・他
① 2013.9.13
丸岡最寄りの会 飯田市 ひがしの料亭
丸岡敏邦夫妻 小沢修 片桐久義 高森・K 松川・H 下平好上
論語、学而編第一に
子曰、学而時習之、不亦説乎、有朋自遠方来、不亦楽乎、人不知而不慍、不亦君子乎。
とある。
互いに齢を重ねてみると、論語の言葉がいろいろの意味を含むこととなり悦の一語と同義となってくる。 心温まる最寄りの会であった。
そこでこんなことが大事なことだと改めて腹の底に位置づいた。
若さを保ち続ける秘訣は、これはいいなと思いついたら子供のように行動に移すことにあるということだ。 子供は失敗したらという躊躇はしない。 若さの秘訣は思いついたら行動に移すことにある。
丸岡は二人で四国の巡礼に行こうとしていた。 小沢くんは井上井月について語ってくれた。 話は私の意欲に炎をつけてくれた。 落ち着いた雰囲気の語り方は、朋としての温かい手を差し伸べてくれるのです。
楽しい一夕でした。
② 2013.9.16
NHKニュース 滋賀・京都・福井に特別警報 9月16日 5時18分
大型の台風18号の影響で、滋賀県と京都府、それに福井県では数十年に一度しかないような大雨となり、気象庁は大雨の特別警報を発表しました。
気象庁は大規模な災害の発生が迫っているとして、周囲の状況を確認して直ちに安全を確保するよう呼びかけています。
気象庁の発表によりますと、大型の台風18号は16日午前5時には静岡県の御前崎市の南西210キロの海上を1時間に35キロと速度を速めながら北東へ進んでいるとみられます。
中心の気圧は970ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は30メートル、最大瞬間風速は45メートルで、中心から半径90キロ以内では風速25メートル以上の暴風が吹いています。
この時間、和歌山県と奈良県、それに三重県の一部が暴風域に入っています。
近畿や東海・北陸では降り始めからの雨量が多いところで500ミリを超え、滋賀県や京都府、それに福井県では数十年に一度しかないような記録的な大雨となっています。
気象庁は午前5時すぎ滋賀県と京都府、それに福井県に大雨の特別警報を発表しました。
これらの地域では土砂災害や低い土地の浸水、川の氾濫といった大規模な災害の発生が迫っています。
最大級の警戒が必要です。
気象庁は、自治体の情報に従って直ちに安全な場所に避難するか、周囲の状況を確認して外に出るのが危険な場合は、建物の上の階に移動するなど、できるかぎり安全を確保するよう呼びかけています。
気象庁が特別警報を発表したのは、先月30日に運用を始めて以降、今回が初めてです。
各地で激しい雨が降り続き、午前4時半までの1時間には、三重県大台町で48.5ミリ、山梨県南部町で43ミリ、静岡県川根本町で42ミリの激しい雨が降りました。
これまでの雨で、近畿や東海・北陸、それに四国などでは土砂災害の危険性が非常に高くなっている地域があり、近畿と東海・北陸では川が増水して氾濫の危険性が非常に高くなっている地域があります。
次第に風も強まり、神戸市では午前4時前に33.4メートル、和歌山県かつらぎ町では午前3時半すぎに32.5メートルの最大瞬間風速を観測しました。
台風はこのあと近畿や東海の沿岸にかなり接近して上陸するおそれがあり、昼前から午後にかけて関東甲信や東北にも接近する見込みです。
16日は西日本と東日本、それに北日本で雷を伴って非常に激しい雨が降る見込みで、局地的には1時間に80ミリから100ミリの猛烈な雨が降るおそれがあります。
17日の朝までに降る雨の量はいずれも多いところで、東北と関東甲信、それに東海で300ミリ、北陸で250ミリ、近畿と北海道で200ミリと予想されています。
台風の接近に伴い、各地で非常に強い風が吹く見込みで、最大風速は、陸上では近畿と関東甲信で25メートル、東北で23メートル、中国地方と東海・北陸、それに北海道で20メートル、四国で18メートル、海上では23メートルから30メートル、最大瞬間風速は35メートルから45メートルに達すると予想されています。
西日本から北日本かけての太平洋沿岸は大しけとなり、関東と東海、近畿では波の高さが9メートルと猛烈なしけになる見込みです。
16日は広い範囲で土砂災害や低い土地の浸水、川の氾濫、暴風、高波に厳重な警戒が必要です。
落雷や竜巻などの突風、高潮による浸水にも十分注意する必要があります。
気象庁は、地元の市町村からの情報や周囲の変化に注意し、できるだけ安全な場所で身を守るよう呼びかけています。
[関連ニュース]
・ 台風 「特別警報」発表の可能性も (9月14日 19時32分)
[関連リンク]
◇ 災害担当記者が解説 「特別警報」とは? ニュース特設
ニュース特設
「特別警報」とは?
気象庁の「特別警報」。運用開始は8月30日です。今までの警報と何が違うのか、発表されたときどう行動すればいいのか、皆さんはご存じでしょうか?「特別警報」について社会部・災害担当の村松あずさ記者が解説します。
「特別警報」とは
「特別警報」は、現在の警報の基準をはるかに超えるような、重大な災害の危険性が非常に高いときに、より強く警戒を呼びかけるため、発表されます。 ひとことで言うと、多くの命に関わる非常事態になっていること、深刻な状態になる可能性が高いことを端的に伝えるための情報です。
なぜ、今までの「警報」だけではだめなのか。その背景には、ここ数年の大きな災害の際に、「大雨警報」や「記録的短時間大雨情報」といった、既存の防災情報を繰り返し発表したにもかかわらず、避難や被害防止に結びつかなかったという教訓があります。特に、おととし紀伊半島を襲った台風12号による豪雨では、数日間の雨量が1000ミリから2000ミリという記録的な雨が降りましたが、地元の自治体からは、「雨量の数値だけを聞いてもどのくらい危険な状態なのかが分からなかった」という指摘が相次ぎました。
気象庁は、強い危機感を分かりやすく伝え、身を守ってもらうために法律を改正して「特別警報」の新設を決めました。
「特別警報」は災害の種類ごとに発表されます。気象分野では「大雨」と「大雪」、「暴風」、「暴風雪」、「波浪」、それに「高潮」の6種類です。「洪水」については、「氾濫危険情報」など、すでに河川ごとの情報があることなどを理由に導入が見送られました。
一方、同様に重大な災害の危険性を伝える「大津波警報」や「噴火警報」、「緊急地震速報(震度6弱以上)」も、法律上は「特別警報」に位置づけられましたが、これらの「特別警報」は今後も従来どおりの名称で伝えられます。
「50年に一度」で発表
「特別警報」が発表される「重大な災害の危険性が非常に高い」とはどのような状況なのでしょうか。気象庁は、その地域にとって50年に一度あるかないかの現象が起きている場合、または発生が予想された場合に「特別警報」を発表することにしています。地域差はありますが、発表基準は、「50年に一度」の大雨、「50年に一度」の暴風、「50年に一度」の高潮、・・・ということになります。
過去の災害に当てはめると、▽昭和34年に5000人以上が犠牲となった「伊勢湾台風」や、▽大雨による川の氾濫で住宅1万棟以上が浸水した平成16年7月の「福井豪雨」、▽おととしの「台風による紀伊半島の豪雨」、▽去年7月の「九州北部豪雨」、▽それに、ことしでは7月28日に山口県と島根県を襲った記録的な大雨が「特別警報」に該当します。いずれも、広範囲に甚大な被害が出ていますが、「特別警報」に該当する災害は、全国的に見ても、1年に一度、あるかないかの極めて“まれ”な現象であることが分かります。
「特別警報」はすでに危険
気象庁によりますと、「特別警報」が発表されるケースには、大きく分けて次の2つのパターンがあります。
▽1つは台風です。
例えば中心気圧930hpa以下という「伊勢湾台風」級の猛烈な台風が日本列島に近づきつつある場合、進路に当たる地域に「特別警報」が発表される可能性があります。台風には進路予報がありますので、接近の前から「特別警報」を発表することができ、事前の避難や被害防止に役立てることができると期待されます。
▽問題はもう1つのパターン。
7月28日の記録的な大雨や、去年の九州北部豪雨のように、予想を超える大雨などで急激に状況が悪化し、すでに避難することが難しい状況になってから発表されるケースです。
実際、7月28日の中国地方の大雨で、気象庁は、特別警報に相当する「これまでに経験したことのないような大雨」という情報を午前11時20分ごろに発表し、午後0時半には記者会見も行いましたが、このときはすでに、各地で川の氾濫や浸水の被害が広がっていました。
この大雨のあと自治体の関係者に取材したところ「事前予告のようにもっと早く情報が出るものだと思っていた」という声を数多く聞きました。「特別警報」も多くの場合、今回のように、状況が悪化したあとに発表されると考えられています。つまり「特別警報」が発表された段階では、すでに危険な状態に陥っている可能性が高く、今置かれている環境の中で「できるかぎり安全を確保する」ことが必要となります。
▽大雨で浸水が広がっている地域では、無理に外を歩くよりも建物の2階以上に上がる。
▽裏山が崩れる危険性がある地域では、近所の頑丈な建物に逃げるか、家の上の階のできるだけ斜面から離れた部屋に移る。
「これで絶対に安全」とは言えないかもしれませんが、「特別警報」が出た地域では、できるかぎり安全なスペースを探して身を守ることが必要となります。そのためには、ふだんから、身の周りにある斜面や川などの危険性をよく知り、大雨が降った場合に家の中や近所でどこが最も安全なのか、事前に確認しておくことも重要です。
結論:「警報」から行動を
では、このような「極限状況」に追い込まれないためには、どうすればいいのか。気象の「特別警報」が発表される地域には、ほとんどの場合、事前に「警報」が出ているはずです。また、「警報」が出た段階で各市町村は、「避難勧告」や「避難指示」を発表しているかもしれません。
これまでどおり、「警報」や「勧告・指示」が発表された段階から、早めに安全な場所に避難しておくことが身を守るうえで最も有効なのです。
特にお年寄りや障害がある方が身近にいる場合は、より早めの行動が大切です。「特別警報」ができるからといって、これまでの警報が軽くなるわけではありません。「まだ『特別』じゃないから、大丈夫」という誤解は非常に危険です。
命を守るために、警報が出るような状況になったら、これまでと同様、早めの避難や行動を心がけたいものです。
③ 井上井月の句碑
https://maps.google.co.jp/maps/ms?brcurrent=3,0x601cf6a4b983b8eb:0xa2cdc29c04415ef2,0&ie=UTF8&t=m&geocode=FSTzIgIdMa45CA&source=embed&oe=UTF8&msa=0&msid=214635586253749135401.0004ac631139e7b997809
最寄の席で小沢君から井上井月(イノウエセイゲツ)についての解説をお聞きした。 嬉しい話であった。 早速調べてみると、なるほど新潟生まれの人なのだが、伊那の風土人情をこよなく愛し骨をも埋めることとなった人である。 人間いたるところ青山あり。 素晴らしい人柄の方であったようです。
☆ ☆ ☆
幕末から明治にかけて長野県伊那谷を30年にわたり放浪した俳人井上井月、井月の句碑が上伊那の8市町村(伊那市、駒ヶ根市、箕輪町、辰野町、飯島町、南箕輪村、宮田村、中川村)に約57基あります。
ここではまず、お寺や公共の場所にある句碑を紹介します。
井月の墓*降るとまで人には見せて花曇
伊那市の「まほら伊那いいとこ百選」に選定されている井上井月の墓。杉の根元に小さな丸い墓がある。墓石に刻まれていた句「降るとまで人には見せて花曇り」は摩耗して今は見る事ができない。
六道の堤*何処やらに寉の声聞く霞かな
どこやらにたずのこえきくかすみかな
昭和15年に設立。この地域では一番古い井月の句碑。道路拡張により現在の場所に移された。
清水庵*旅人の我も数なり花ざかり
たびびとのわれもかずなりはなざかり
伊那市の「まほら伊那いいとこ百選」に選定されている清水庵。
井月はここ清水庵で句会を開き、地元の人達とともに詠んだ89句が「俳額」として納められている。
春近大橋*降りかくす麓や雪の暮さかひ
ふりかくすふもとのゆきはくらさかひ
R153号沿い、西春近と東春近を結ぶ春近大橋の四隅の親柱に井月句のプレートが埋め込まれている。
この句は東北の親柱。
春近大橋*春風に待つ間程なき白帆かな
はるかぜにまつまほどなきしらほかな
R153号沿い、西春近と東春近を結ぶ春近大橋の四隅の親柱に井月句のプレートが埋め込まれている。
この句碑は西春近側、西南の親柱。
春近大橋*礎は亀よはしらは鶴の脛
いしずえはかめよはしらはつるのはぎ
R153号沿い、西春近と東春近を結ぶ春近大橋の四隅の親柱に井月句のプレートが埋め込まれている。
この句碑は西春近側、西北の親柱。
春近大橋*暮れ遅き鐘のひびきや村渡し
くれおそきかねのひびきやむらわたし
R153号沿い、西春近と東春近を結ぶ春近大橋の四隅の親柱に井月句のプレートが埋め込まれている。
この句碑は東春近側、東南の親柱。
天伯神社*楽しみは浅瀬に有や小鮎くみ
たのしみはあさせにありやこあゆくみ
富県天伯神社の境内にある。
法正寺*闇き夜も花の明りや西の旅
くらきよもはなのあかりやにしのたび
金鳳寺*人の日や釜にこころの移る朝
ひとのひやかまにこころのうつるあさ
三峰川遊歩道右岸1*稲妻や藻の下闇に魚の影
いなずまやものしたやみにうおのかげ
三峰川遊歩道右岸2*明安き夜を日に継や水車
あけやすきよをひにつぐやみずぐるま
三峰川遊歩道右岸3*菜の花に遠く見ゆるや雪の山
なのはなにとおくみゆるやゆきのやま
三峰川遊歩道右岸4*楽しみは浅瀬に深し蜆とり
たのしみはあさせにふかししじみとり
三峰川遊歩道右岸5 *除け合うて二人ぬれけり露の道
よけおうてふたりぬれけりつゆのみち
三峰川遊歩道左岸1*子供にはまたげぬ川や飛蛍
こどもにはまたげぬかわやとぶほたる
三峰川遊歩道左岸2*手元から日の暮れゆくや凧
てもとからひのくれゆくやいかのぼり
三峰川遊歩道左岸3*若鮎の瀬に尻まくる子供かな
わかあゆのせにしりまくるこどもかな
三峰川遊歩道左岸4*小流に上る魚あり稲の花
こながれにのぼるうおありいねのはな
三峰川遊歩道左岸5*稲妻のひかりうち込夜綱かな
いなづまのひかりうちこむよあみかな
伊那食品工業 *銭取らぬ水からくりや心太
ぜにとらぬみずからくりやところてん
伊那橋 *柳から出て行く舟の早さかな
やなぎからでていくふねのはやさかな
鉄人遊園*鬼灯を上手に鳴らす靨かな
ほおずきをじょうずにならすえくぼかな
吉祥寺*照返すもみぢ気高き時雨かな
てりかえすもみぢけだかきしぐれかな
ラーメン大学伊那インター店*子供にはまたげぬ川や飛ぶ蛍
こどもにはまたげぬかわやとぶほたる
竹林苑庚申窪*明安き夜を日に継や水車
あけやすきよをひにつぐやみずぐるま
竜勝寺*何処やらに寉の声きく霞かな
どこやらにたづのこえきくかすみかな
杉島橋名碑*松風を押へて藤の盛りかな
まつかぜをおさえてふじのさかりかな
南アルプス岩入公園*しぐるるや馬に宿かす下隣
しぐるるやうまにやどかすしたどなり
全昌寺*雁鳴くや町の明かりの小田にきく
かりなくやまちのあかりのおだにきく
蔵沢寺*駒ヶ根に日和定めて稲の花
こまがねにひよりさだめていねのはな
蔵沢寺のある駒ヶ根市中沢は井月研究家下島勲(空谷)の出身地。
下島勲は井月の良き理解者でした。
芥川龍之介は主治医だった下島勲を通じて井月を知った。
火山峠*闇き夜も花の明りや西の旅
くらきよもはなのあかりやにしのたび
菅の台*雁がねに忘れぬ空や越の浦
かりがねにわすれぬそらやこしのうら
光前寺*降るとまで人には見せて花ぐもり
ふるとまでひとにはみせてはなぐもり
桃源院*立ちそこね帰り後れて行乙鳥
たちそこねかえりおくれていくつばめ
小鍛冶橋西*若し橋も小舟もある流れ
あゆわかしはしもこぶねもあるながれ
伊那森神社*よき酒のある噂なり冬の梅
よきさけのあるうわさなりふゆのうめ
駒見大橋東*舟を呼ぶこゑは流れて揚雲雀
ふねをよぶこえはながれてあげひばり
長春寺*ほととぎす旅なれ衣脱日かな
ほととぎすたびなれころもぬぐひかな
聖徳寺*霜除る菊や小庭のしき松葉
しもよけるきくやこにわのしきまつば
飯島文化会館西裏*灰に書く西洋文字や榾明り
すみにかくせいようもじやほたあかり
大草城址公園*秋も良面白うなる瓢かな
秋もややおもしろうなるふくべかな
折草峠*濃く薄く酔いて戻るやもみぢ狩
こくうすくよいてもどるやもみぢがり
権兵衛峠*霞むべき山は放れて夏木立
かすむべきはやまはなれてなつこだち
善光寺句碑
「思ひよらぬ梅の花見て善光寺」
「蝶に気のほぐれて杖の軽さかな」
六道の森
煩悩の闇路(やみじ)も地蔵祭りかな
魂棚(たまだな)や拾はれし子の来て拝む
④ ひまわりの病害虫対策と収穫時期
http://www3.cty-net.ne.jp/~fumifuji/insects.html
ひまわりの病害虫対策
http://www.youtube.com/watch?v=Uq3Kv43YqXo
ひまわりの種採取方法
⑤ 朝刊(2013年09月16日)
(攻防太平洋 動く南の大国)豪、米戦略の最前線 中国みすえ最大演習
「発射準備!」。米陸軍中尉の号令で、小隊の動きが慌ただしくなった。ずらりと並んだ120ミリ迫撃砲が、北7千メートル先の「敵」をとらえた。「ドーンドーン」。無人島に爆音が鳴り響いた。
豪州の首都キャンベラから北に約1700キロ。2年に1度の米豪合同軍事演習「タリスマンセーバー2013」に同行取材した。ショールウオーターベイ国軍訓練場から、多目的ヘリ・ブラックホークで演習地のタウンズエンド島へ向かう。
「タンデムスラスト」の名称で1997年に始まった合同演習は、今年は7月15日から8月5日まで行われた。米軍から2万人以上、豪軍から約8千人が参加し、過去最大規模の演習となった。日本などから運ばれた米新型輸送機オスプレイ11機も加わった。
タウンズエンド島は、7700ヘクタールの島全体が軍事演習地域になっている。豪軍のブラウン報道官は「第7艦隊全体が参加したのは近年ないこと。米軍の意気込みが伝わってきた」と話す。
今年、米国が力を入れたのには理由がある。オバマ米大統領は昨年、「アジア重視」を宣言。地域の国々と連携を強める手立てを次々と打ち出した。
豪州では昨年4月、初めて戦闘部隊が常駐を開始。現在、北部ダーウィンを中心とする豪軍基地に米海兵隊約250人が駐留しており、16年には2500人に増える予定だ。
今年の演習で目玉となった「ウオーゲーム(作戦演習)」には、不思議なシナリオがあった。
「独裁国カマリアが豪北部にモンニール、東部にレガイスという傀儡(かいらい)政権を設立。人権侵害で多数の難民がでた。国連安保理は決議2122を採択。米豪連合軍に、カマリア軍の撤退と航行の自由を目的とする軍事行動の権限を与えた」
仮想敵国「カマリア」とはどこを想定しているのか。米豪両軍とも「昔から演習で使っていて、モデルなどない」と言葉を濁す。
だが、80年代から国防補佐官などを務めた豪州国立大学のヒュー・ホワイト教授(戦略研究)は、明快に言った。「中国だ」
(タウンズエンド島〈豪東部〉=郷富佐子)
(2面に続く)
(攻防太平洋 動く南の大国)豪、安保と経済のはざまで
(1面から続く)
豪州にとって、米国は太平洋戦争以来、最も重要な同盟国だ。朝鮮戦争やベトナム戦争で米国を支え、9・11同時多発テロ事件後は豪・ニュージーランド・米国相互安全保障条約(アンザス条約)に基づき集団的自衛権を発動してイラクへ派兵した。だが、これまで米軍基地が置かれたことはない。
北部ダーウィンの米海兵隊駐留は、アジア太平洋地域で米国が進める「中国包囲網」のひとつだ。中国から一定の距離を置きつつ、全体を見渡せる要の位置にある。
豪州国立大学のヒュー・ホワイト教授によると、そもそも豪州と米海兵隊をつなげたのは「1990年代半ばの大田昌秀・沖縄県知事(当時)の発言がきっかけだった」という。
「大田知事が、沖縄の負担を減らすために『米海兵隊の一部を豪州へ移したら』と言ったことがあった。日本では無視されたが、豪国防省内でちょっとした話題になった」
ちょうど96年に保守系ハワード政権が誕生したころだった。イラク戦争などでも米ブッシュ政権を支持し続けたハワード首相の指示で、国防省の戦略担当事務次官だったホワイト氏が米国防総省に派遣された。
ホワイト氏は「我が国で海兵隊の訓練をしてはどうか」と提案した。だが、米国防総省の幹部たちの反応は「地図を見てくれ。遠くてコストがかかりすぎる」というものだったという。その古いオファーが、中国の軍事的台頭でよみがえった。「中国への危機感が、米国の距離感を縮めさせた」とホワイト氏。
今年4月、豪フリゲート艦シドニーが米海軍の第7艦隊に初参加した。数カ月の予定で豪国内では正式な発表はなかったが、ホワイト氏は「米国が初めて豪州を北東アジア戦略に組み込んだ、大変な出来事だ。仮に米中が戦争状態になれば、集団的自衛権が発動され、また前線へ送られる可能性がある」と話す。
■中国に配慮、揺れる政策
こうした米豪の動きに、中国も警戒を強めている。一昨年にオバマ米大統領とギラード豪首相(当時)が米海兵隊の北部駐留を発表した際、中国の外務省報道官は「軍事同盟の強化・拡大が時宜にかなった行動か、議論の余地がある」と不快感を示した。
鉄鉱石や石炭を中心に輸出先の約4分の1を占める中国は、豪州の好景気を支える原動力だ。今年4月、ギラード氏は「史上最もハイレベル」の代表団を引き連れて中国を訪問。李克強(リーコーチアン)首相と会談し、首相、外相、経済相が「戦略対話」を毎年開催することで合意。「戦略的パートナーシップ」も締結した。
だが、最近は別の懸念が浮上している。日本の尖閣諸島だ。タウンズエンド島での米豪合同軍事演習で、複数の豪軍関係者から尖閣問題の行方について聞かれた。「前線」になった場合、米国が豪州に支援を求めるのでは、という含みだ。
安全保障では米国に守ってもらいたい。でも今の豊かさを保つため、中国には高い経済成長を続けてほしい。豪州の「迷い」は、防衛白書からもうかがえる。
ラッド政権下の2009年白書は「中国がアジア最強の軍事力を持つようになる」と、アジア地域でのパワーシフトを明記。30年までに巡航ミサイル搭載の潜水艦を倍増するなど、大幅な軍備増強計画を打ち出した。中国が「脅威」になり得ると位置づけ、豪州の軍事的自立を目指す姿勢を明示したものだ。
ところが今年5月、ギラード政権が発表した新たな白書は、「中国を敵国とみなさず、平和的台頭を促すことを基本政策とする」と方向転換した。戦闘機調達の一部延期など国防費の削減も決めた。
9月7日の総選挙では、ハワード元首相のまな弟子といわれるアボット氏が率いる保守連合が6年ぶりに政権に返り咲いた。中国との自由貿易協定(FTA)の締結へ積極的な姿勢を見せつつ、公約で「国防費を国内総生産(GDP)の2%まで戻す」と増額を明言。新たな防衛白書は18カ月以内に出される。
(キャンベラ=郷富佐子)
■日米豪合同演習、欠かせぬ ロバート・トーマス米第7艦隊司令官
軍事演習「タリスマンセーバー2013」には、米海軍横須賀基地を拠点とする第7艦隊が参加した。7月末に同艦隊の新司令官に就任したロバート・トーマス海軍中将が、朝日新聞の書面インタビューに答えた。
――日本は米国に次いで豪州と物品役務相互提供協定(ACSA)を結んだ。日米豪の3カ国関係の将来をどうみるか
「日豪間のACSAは重要な節目だ。国連平和維持活動や海外での災害救助などの任務で燃料や後方支援、補給品の融通などができる。6月に行った日米豪合同演習パシフィック・ボンドのような演習は、地域の安全保障ニーズに応えるために欠かせない」
――こうした関係を中国が「包囲網」とみるという意見もある
「我々は70年以上もアジア太平洋地域に存在し、今後も存在し続ける。中国の人民解放軍とも地域の安保と安定のためにともに働きたい」
――尖閣諸島問題をどうみるか
「日本と中国が責任感を持ち、平和的に話し合うと確信している。強制や威嚇、武力行使なしで平和的に扱わなければいけない」
――第7艦隊からみたアジア太平洋地域の理想的な安全保障の構図は
「米海軍は2020年までに、太平洋と大西洋における態勢配分を、現在の50対50から60対40にする。沿海域戦闘艦の展開や海兵隊プレゼンスの拡大、日本への最新鋭戦闘機F22やオスプレイ配備などからもわかるだろう」
◇
朝日新聞は9月1日付でオーストラリアにシドニー支局を開設しました。郷富佐子支局長が、アジア太平洋地域で起きている地殻変動を多角的に伝えます。
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⑥ 朝刊(2013年09月16日)
偶然見えた脳の動き fMRI開発、マウス酸欠きっかけ
人が怒ったり、喜んだりした時に、脳の中はどのように変化しているのか。血流の変化を頼りに、脳の活動を画像にする技術がある。「機能的磁気共鳴断層撮影」(fMRI)という。精神の病気の解明や脳科学の研究にも役だつ、この技術は、一人の日本人物理学者が経験した実験中のトラブルから生まれた。
ドーナツ形の装置に寝るだけで、体の輪切り画像が撮影できるMRI。いまでは、がんや脳梗塞(こうそく)などの診断に欠かすことのできない技術だ。この技術の開発に貢献した、米国と英国の研究者は2003年、ノーベル医学生理学賞を受けた。
MRIは体内の水の分布をとらえることで、体の中の構造を画像化する。強力な磁場の中で、体に電磁波を当てると、体内の水素原子が核磁気共鳴という現象を起こす。この現象で出る水の信号をとらえ、画像を作り出している。
しかし、この装置では、体が活動する様子、生理現象そのものをつかむことはできないと考えられてきた。
だが、その可能性を信じていた人がいた。日本の物理学者の小川誠二さん(79)だ。「体の構造だけでなく、活動自体をとらえる方法はないか」。医療現場でMRIが広がりつつあった1980年代後半、小川さんは、多くのノーベル賞受賞者を輩出した米ベル研究所で、MRIの研究をしていた。
■ヘモグロビンに変化
ある時、マウスの脳のMRI画像を撮っている時に、マウスが急に酸欠に陥るというトラブルに遭遇した。慌てて、大量の酸素を送ると、血管を示す細かい黒い線が画像から消え、真っ白になった。
「一体、何が起きたのか」
小川さんはひらめいた。血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの性質が変化して、画像に現れたのではないか。生物は酸欠になると、ヘモグロビンが結合していた酸素を手放して、脳に供給する。ヘモグロビンには、酸素を手放すと磁気を帯びやすく、酸素と結合すると磁気を帯びにくくなる性質がある。この変化が、MRIがとらえる水の信号の強さを変えたと確信した。
実験を重ね、酸素より強くヘモグロビンと結合する一酸化炭素を吸わせたマウスの脳も、白く写ることも確認。血液中の酸素濃度に依存して、MRI信号の強弱が変わる現象があるとして、小川さんは「BOLD(ボールド)(Blood Oxygenation Level Dependent)効果」と名付けた。90年に論文を発表した。
論文は当初、注目されなかったが、2年後、人間でも同じような現象があると発表すると、世界中の注目を集めるようになった。この原理を応用して、MRIの装置を使って、脳の活動をみることができるようになり、脳科学者や心理学者が次々に研究に使うようになった。この手法は、fMRI(機能的MRI)と呼ばれるようになった。
■病気診断や夢を研究
現在では、脳内の動きをつかむことで、精神の病気を診断したり、心を読んだりしようという研究が行われている。
例えば、アルツハイマー病の患者と健康な人とで、安静にしている時の脳内の様子を観察すると、活性化したり不活発になっていたりするパターンが違うことがわかってきた。研究が進めば、病気を発症前に診断し、治療に役立てられる可能性がある。
夢の解読に挑む研究も進んでいる。夢を見ている時に活発に働く脳の場所と、その夢に関連する画像を見た時の脳活動のパターンを、fMRIで調べ、夢の内容を推定する。将来は、心理状態を可視化することが、できるようになるかもしれない。
今では、小川さんの業績は、世界的に評価されている。英科学誌ネイチャーは昨年、fMRIの特集で、先駆者の一人として小川さんを紹介。fMRIに関する研究は増え続け、11年には年間約1600本の論文が発表されている。
ただ、fMRIにはまだ弱点もある。一つは、fMRIは脳の神経活動そのものではなく、関連する血流の変化をとらえているため、神経活動から血流の変化を画像化するまでに数秒の時間差がある点だ。もう一つは、脳が情報をやりとりする活動は分かっても、情報の中身はまだ分からないことだ。
世界中の多くの科学者たちが、脳機能をより早く、より詳しく、測る方法を探している。小川さんも、東北福祉大や大阪大などに拠点をもち、研究を続けている。
「将来、脳内言語を画像化して解読できる時代がくるかもしれない。いつか実現すると夢見ながら、研究を続けています」(下司佳代子)
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⑦ 朝刊(2013年09月16日)
温暖化とめる道、探る IPCC第5次報告書に向け始動
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書の公表が、今月末の第1作業部会を皮切りに1年後の統合報告書に向けて動き出す。発足から四半世紀にわたり、温暖化の科学を政治の世界に橋渡ししてきた組織。6年ぶりとなる報告書は、2020年以降の新たな国際的な温暖化対策の枠組みづくりに大きな影響を与える。
■科学的評価を政治に提示・圧力受ける弱さ同居 IPCC
IPCCは、加盟する195カ国の政府が指名する科学者と行政官で構成される「政府間パネル」という組織。世界中から最新の研究成果を集めて評価し、政策を決める政治家らに提示してきた。
いわば、国家のコントロール下で科学者が活動する。1988年の発足時、「科学者だけの組織では政治が制御できなくなる」という意見があり、この形になった。
IPCCの弱さも強さもこの独特の組織から生まれる。科学者が報告書を書いても、各国の政治圧力で表現を変えられてしまうことがある。ただ、全体の合意でいったんできあがると、だれも無視できない政治的強さを持つようになる。
25年の歴史で、最大の問題は「人間活動による温暖化が起きているのか」だった。近年の気温上昇は「自然変動」なのか、「人間活動で増えたCO2のせい」なのか。
答えは報告書の要約版「政策決定者向け要約」の書きぶりに表されてきた。要約版の文章は、全体会議で一行ずつ延々と議論して決める。当初、温暖化を認めたくない産油国などが、表現を緩めようと抵抗して混乱する時代が続いた。
第1次報告書では「人為的な温暖化の程度はよく分からない」と書いたが、第4次報告書では「可能性がかなり高い」となった。
一方、過去の報告書はそのときどきの交渉を後押しする政治的なメッセージになっている。
第1次報告書(90年)は、地球が温暖化という大変な危機を抱えていることを世界に知らせた。これで国連が動き、翌91年から国連のもとで「気候変動枠組み条約」をつくる交渉が始まった。
第2次報告書(95年)は、温暖化対策には条約では不十分で、京都議定書をつくる必要性を訴えるものだった。
第4次報告書(2007年)は、京都議定書の重要性を訴えたが、日本が議定書の第2期から離脱するなど、国際社会は議定書を発展させることに失敗した。
そして今回の第5次報告書は2015年につくる「次期枠組み」に向けた国際交渉の後押しを狙う。温暖化にブレーキをかけるには実効性のある枠組みが必要だが、米中など京都議定書で削減義務を持たなかった主要国すべてが参加する制度づくりは難航必至だ。
それに1990年代は、世界各国はIPCCが示す温暖化の科学を尊重していたが、最近は関心が低い。第5次報告書が、交渉を大きく前進させるだけの衝撃とパワーを持っているかどうか。(竹内敬二)
■事実隠し疑惑も
第4次報告書公表後、IPCCはスキャンダルに見舞われた。
2009年11月、気候研究で有名な英イーストアングリア大のコンピューターから大量の電子メールなどが盗み出され、温暖化を否定する事実を隠したかのようなやりとりが暴露された。欧米メディアは、ウォーターゲート事件をもじって「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んだ。
10年1月、「このまま地球温暖化が続くと、35年までにヒマラヤの氷河が消失する可能性は非常に高い」という記述に科学的根拠がないことが判明。ほかにも間違いが見つかり、報告書全体の信頼が揺らいだ。
これらの問題は、温暖化に懐疑的な人たちを勢いづかせた。英国議会、オランダ政府、イーストアングリア大などは、別々に独立した委員会をつくって調査した。その結果、メール事件の対象になった科学者の行動に問題はなく、第4次報告書の根幹も揺るがないと結論づけた。
◇
■CO2、過去80万年で最高
東日本大震災による津波で大きな被害を受けた岩手県大船渡市の中心部から東に約10キロ。気象庁の大気環境観測所は、太平洋に突き出た同市三陸町綾里の小高い丘の上に立つ。
1987年に二酸化炭素(CO2)の観測を始めた。5人の所員が、刻々と変化するメタンやフロンなどの温室効果ガス、浮遊粒子物質のエーロゾルの状態も測定している。
世界気象機関(WMO)による全球大気監視(GAW)計画の地域観測所として、同庁の南鳥島(東京都小笠原村)や与那国島(沖縄県与那国町)の2地点とともに地球温暖化研究にデータを提供している。
綾里でCO2濃度の月平均が初めて400ppm(0・04%)を超えたのは、昨年3月だった。永井康之技術専門官は「濃度は季節変動を繰り返しながら年々増加している」と言う。
太平洋の真ん中にある米ハワイ・マウナロア観測所では今年5月9日、日平均のCO2濃度が400ppmを超えた。観測を始めた1958年は約315ppmだった。人類が石炭を使い始め、大量のCO2を出し始めた産業革命より前(1750年ごろ)の約280ppmから4割も上がった。過去80万年で最も高い。
IPCCは、世界の平均気温が産業革命前と比べて2℃を超えて上がると、地球規模で環境が激変する可能性を指摘する。
だが、数年後には地球全体が400ppm時代に突入するとみられている。温暖化の影響を避ける「2℃シナリオ」の実現は、困難さを増している。(編集委員・石井徹)
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⑧ 朝刊(2013年09月17日)
(世界とアベノミクス:4)財政赤字の穴埋めを懸念 ホルスト・レッシェル氏
――安倍政権の経済政策「アベノミクス」をどう見ていますか。
「日本は長期間、(物価が下がる)デフレに苦しんでいる。デフレでは投資や消費が低水準となり、成長も雇用も低迷する。デフレを克服するための経済政策をとり、(物価が上がっていく)インフレへの期待を高めるのはいいことだ」
「ただ、日本の財政問題は別だ。日本はすでに膨大な借金を抱えている。財政出動による景気刺激をはかれば、国債はさらに増え、金利の上昇につながるだろう。日本政府は中長期的に債務問題にどう対処するかを考えなければならない」
――インフレ期待を高めるため、日本銀行は大量の国債を買って過去最大の金融緩和を行っています。
「中央銀行が国債を買うのは、非常に特別な状況にのみ許されることで、中長期にわたることは許されない。政府が中央銀行にお札を刷らせ、財政赤字を穴埋めする『財政ファイナンス』の可能性があるからだ。もし日本が『財政ファイナンス』をしていると見なされれば、日本政府と日銀、そして円の信頼は破壊される」
――ドイツは、インフレ政策に批判的ですね。なぜですか。
「一つは歴史的経緯からだ。ドイツには第1次世界大戦後、『財政ファイナンス』をさせた最悪の経験がある。ハイパーインフレを引き起こし、第2次世界大戦につながった。だからこそ、ドイツは、インフレに敏感だ」
「ドイツ人は不動産や株への投資が少なく、銀行預金や国債で持つ傾向がある。そのため、ドイツ国民の間にも、インフレを嫌がる傾向が強い」
――金融緩和を進める米国や日本などの先進国で、高インフレは起きていません。それほど恐れなくてもいいのでは。
「インフレはふつう消費者物価の上昇のことをいうが、中央銀行のお金がモノやサービスの市場に流れ込まなければ、インフレにはならない。ではお金はどこに行っているのだろうか。多くは金融機関の間にとどまっている。金融セクターにとどまっていることで、資産バブルを引き起こす危険性はより高まっている」
(聞き手・フランクフルト=星野真三雄)=おわり
*
フランクフルト金融経営大学院教授 民間銀行などをへて、1997年からフランクフルト金融経営大学院(FSFM)教授。マクロ経済学や国際金融が専門で、フランクフルト・ゲーテ大で経済学博士号を取得した。欧州中央銀行(ECB)の金融政策や中国・アジア経済に詳しい。59歳。
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