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折々の記 2013 ⑤

【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】08/24~     【 02 】09/22~     【 03 】09/23~
【 04 】09/24~     【 05 】09/28~     【 06 】10/08~
【 07 】10/09~     【 08 】10/12~     【 09 】10/13~

【 04 】09/24

  09 24 涼羽の運動会  
  09 25 ニュースの断片  

 09 24 (火) 09/21 涼羽の運動会

涼羽の運動会に招待されていて、俊成の運転で小諸へ出かけた。 20日の夜、VTRで小学生100mの県大会の様子を見せてくれ、涼羽の途中からの群を抜く速さに驚く。

当日の100m短距離走と女子リレー競技で、その疾走ぶりを見た。 身長はぐんぐん伸びて短距離走能力は抜群、読書意欲は旺盛で目を見張るものがあり、ピアノ演奏力にも舌を巻く。 子供はすくすく伸びている。 嬉しい限りだ。

これからどう伸びさせたらよいのか、周囲の者たちが方向性を支えていかなくてはなるまい。

 09 25 (水) ニュースの断片

  ① 2013/09/24 <韓国中学生リポート>自分は平気で嘘…友人の不正行為には強く抗議

  ② 2013/09/24 安倍首相がハーマン・カーン賞を受賞-外国人で初めて

  ③ 2013/08/14 まずは隣国に謝罪を―オリバー・ストーン氏の日本へのアドバイス

  ④ 2013/08/08 戦後最大の日本の軍艦「いずも」が進水

  ⑤ 2013/07/31 麻生財務相に非難の嵐-「ワイマール憲法」発言で

  ⑥ 2013/06/12 日本は尖閣問題を「棚上げ」するのが得策だろう=コロンビア大教授

  ⑦ 2013/05/28 日本、22年連続で世界最大の債権国に

  ⑧ 2013/07/12 中国と韓国の日本嫌い、鮮明に―親日的な東南アジアと対照的

  ⑨ 2013/09/24 ロボットが中国の家電製造に革命も

  ⑩ 2013/09/25 教委権限、首長に移行案 中教審分科会、提示へ

  ⑪ 2013/09/25 政治的中立の確保課題 教委権限、首長に移行案

  ⑫ 2013/09/25 集団的自衛権の行使容認、解釈変更は来春以降

  ⑬ 2013/09/25 「地球の裏側」発言に波紋 自衛隊派遣、政権は火消し

  ⑭ 2013/09/19 <秘密保護法案 読み解く:1> 記者の取材活動も処罰される?

  ⑮ 2013/09/20 <秘密保護法案 読み解く:2> なぜ急ぐの? 外国の情報、国内から漏れ防ぐ

  ⑯ 2013/09/21 <秘密保護法案 読み解く:3> なぜ厳罰化? 米に配慮、懲役10年の対象拡大

  ⑰ 2013/09/25 <秘密保護法案 読み解く:4> 適性評価って? 職員の資質見極め、差別の恐れも




<中央日報/中央日報日本語版>
2013/09/24
  ① <韓国中学生リポート>自分は平気で嘘…友人の不正行為には強く抗議
        http://japanese.joins.com/article/397/176397.html?servcode=400§code=400

「試験の不正行為など他人の過ちには強く問題を提起する。自分が損をしていると思うから…」(ソウル中浪区A中学1年担任教師)

「自分に過ちがあれば最後まで言い訳をする。事実でないのは明らかなのに、何ともなく嘘をつく。絶対に認めない」(ソウル江南区B中学3年担任教師)

他人の不正には強い抵抗感を見せる。一方、自分の過ちは大したことではないと考える。親や教師、友人に平気で嘘をついたりもする。一瞬矛盾した姿と思われるこうした現実は、中学生が持つ道徳性の断面だ。人に厳しく自分には寛大な一部の大人の二重基準が子どもにそのまま投影されている姿だ。取材チームがソウル・京畿道の中学生・教師・保護者119人に深層インタビューをした結果だ。

これは客観的な数値にも表れている。慶煕大・中央日報の人格指数調査(中学生2171人調査)で正直(61.7点)は10の指標のうち最も低かった。一方、正義(81.3点)は最も高かった。人格を形成する3つ(道徳性・社会性・情緒)の領域のうち、唯一道徳性に属する2つの指標でこういう相反する結果が出た理由は何か。

「正直は自分に対する基準であり、正義は他人に対する基準。自分は正直でないのに、他人の過ちは許せないということだろう」。 慶煕大のキム・ビョンチャン教授(教育学)は「全般的に道徳性の指標が低いにもかかわらず正義だけが高いというのは、他人の不正で自分が被害を受けるかもしれないという利己的な動機のため」と説明した。

深層インタビューで会った82人の中学生も似た考えだった。「正直になれば友達に利用され、馬鹿者扱いされる」(ソウル東大門区C中学3年男子生徒)、「テレビに出てくる長官や国会議員を見れば、みんな嘘をついている。正直者は成功できないと思う」(ソウル蘆原区D中学3年女子生徒)。

教師も生徒が正直でない点を最も大きな問題だと指摘した。京畿道水原E中学3年の担任教師は「たばこの吸い殻がポケットから出てきても、現場を目撃しなければ吸っていないと言い張る」とし「嘘が習慣化している」と述べた。

人格指数調査で中学生の32.5%は「友達や親をだましている」と答えた。中学1年の子どもがいるパクさん(45、女性、京畿道高陽市)は「家でゲームを禁止したところ、インターネットカフェに行こうとずっと嘘をつく」とし「嘘が増え、日常的な会話もしにくくなった」と話した。

「路上でお金を拾えば持ち主を探すか」という質問には、41.8%が「探さない」と答えた。D中学のカン君(15、3年)は「持ち主を探す人は一人もいないはず」とし「落とした人が悪い」と話した。

深層インタビューに参加した慶煕大フマニタスカレッジのイ・ムンジェ教授は「とにかく勉強ができればいいという行き過ぎた結果中心教育方式が、子どもたちをだめにしている」とし「大人から変わらなければいけない」と述べた。ソウル中浪区のA中校も「子どもに問題であるのは、正しく教えていない大人の責任」と話した。

実際、成人対象の調査で大人の人格指数は高いほうではなかった。教師は83.5点だったが、親(73.6点)は生徒(69.8点)とほとんど差がなかった。

【下平・評】韓国の人たちの一断面を知ることができる。 文化の様相もうかがい知ることができるということになる。 ちょっと寂しい。



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/09/24
  ② 安倍首相がハーマン・カーン賞を受賞-外国人で初めて

安倍晋三首相は25日、米国の有力保守系シンクタンクであるハドソン研究所から、同研究所の創設者故ハーマン・カーン氏の名を冠した「ハーマン・カーン賞」を受賞する。同賞は、保守的な立場から国家安全保障に貢献した創造的でビジョンを持った指導者に毎年贈られているもので、米国人以外では初めての受賞となる。

安倍晋三首相同賞はこれまで、ロナルド・レーガン元大統領、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ディック・チェイニー前副大統領など米国の保守派指導者が受賞してきた。授賞式は25日にニューヨークで行われ、同研究所によれば、安倍氏は日本の経済改革と日米関係の持続的な重要性に関する「重要演説」を行う。ハドソン研究所は「安倍氏は、日本が活力を取り戻すために必要な改革を前進させようとしている変革期のリーダーである」と称賛した。

カーン氏は、長年にわたり日本の保守派指導者と深い関係にあった。同氏は、1940年代に物理学者としてランド研究所に入所し、「水爆戦争論」で核戦略を論じた。その後は地政学の研究に転じた。

カーン氏は、早くも1962年に日本の台頭を予想したことで名を馳せた。70年には「超大国日本の挑戦」を著し、日本が経済的にも、技術力でも、金融面でも超大国になるのは「ほぼ間違いない」と予言するとともに、軍事的にも、政治的にもグローバルな影響力を保持するだろうと述べた。

ハドソン研究所では、11年12月に石原伸晃自民党幹事長(当時)が講演し、尖閣諸島(中国名:魚釣島)の早期国有化と自衛隊配備を提唱した。それに呼応して、同氏の父親で保守政治家として名高い石原慎太郎都知事(同)が12年4月に、同じく米国の著名保守系シンクタンクのヘリテージ財団で講演、都による尖閣諸島購入計画を明らかにした。同年秋に日本政府が、都による購入を阻止するために同諸島を国有化した。

安倍氏は、ナショナリスト的な傾向を隠そうとせず、日本の安全保障の強化を図っている。しかし、まず日本の主要な課題である経済・財政上の問題を解決しなければ安全保障の問題に取り組むことはできない。安倍氏のハドソン研究所での講演は、それにどう対処するつもりなのか、新たな手がかりを示す機会となろう。


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<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/08/14
  ③ まずは隣国に謝罪を―オリバー・ストーン氏の日本へのアドバイス

「ウォール・ストリート」「プラトーン」などの作品で知られる米国の社会派映画監督オリバー・ストーン氏は、何かと論議を巻き起こす発言でも有名だ。広島・長崎への原爆投下は必要なかったとして米国を非難したかと思うと、今度は中国などアジアの近隣諸国に対する日本の対応に批判的な見解を示した。

記者会見するオリバー・ストーン氏(12日、東京)都内の日本外国特派員協会で12日に講演した際、日本は戦時中の行為についてもっとはっきりと謝罪する必要があり、また中国や北朝鮮といった隣国がもたらす安全保障上の脅威に対処する方策として軍事力に頼ることは慎むべきだと語った。

日本の歴代指導者はこれまで、日本がアジア諸国に及ぼした肉体的および精神的な被害に対して深い反省と遺憾の意を表明しているが、その一方で頻繁に東京の靖国神社の参拝を行ってきた。そのため、平和憲法の改正を巡る国内議論の高まりとともに、近隣国の間では日本が繰り返してきた声明の意図を懐疑的に見る動きも出てきている。

ストーン氏は講演の中で、「(戦時中の)中国での行為やそこで殺害した中国人について、謝罪することから始めるべきだ」と述べ、日本がもっと率直に謝罪すれば、世界中から大きく脚光を浴びるだろうという見方を披露。さらに、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の領有権をめぐる中国との対立がこう着状態にある中で、「日本の長期的な国益は中国と非常に強く結びついている」と指摘、「中国を敵国と捉えてはいけない。違った視点から中国を見ることを始めたほうがよい」と日中関係をもっと広い目で見るべきだと語った。

そして中国と対立する日本については、「ケンカを始めておきながら、その収拾を兄に頼るやんちゃ坊主」のようだとも表現した。もちろん、兄というのは日本に対して安全保障上の義務のある米国を指している。

とにかく日本は平和的なやり方で紛争を解決する上で指導力を発揮すべきだというのがストーン氏の主張だ。「日本のビジョンを示しながら太平洋地域の紛争を解決し、より平和的な世界の構築において主役を演じてほしい」と、平和憲法を持つ日本に注文した。

権力への疑心が強いストーン氏は政治権力には抑制と均衡が必要だと信じており、これが同氏の観念の土台となっている。そのため、国家安全保障上の極秘文書を暴露したとして訴追された米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者の逃亡事件については、「中国が彼を逮捕しなかったのは喜ばしいことだ。少なくとも、中国にはこのように(米国に)立ちはだかるだけの度胸がある」と米国に容疑者の身柄を引き渡さなかった中国を称賛さえした。

ストーン氏は、自ら制作したドキュメンタリー作品「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史(原題:The Untold History of the United States)」がNHKで放映されたことに合わせて来日した。この作品は20世紀における米国史を通説とは違った角度から検証したもので、広島・長崎への原爆投下も取り上げられている。作品を共同制作した米アメリカン大学の歴史学教授、ピーター・カズニック氏は、日本の被爆者や歴史学者、ジャーナリストに会えたことについて「われわれにとって学習体験となった」と語った。

また作品では、原爆投下は戦争を終結させるために必要だったという長年の定説は間違っており、ソ連の参戦なども日本の全面降伏を促した強力な要因だったとの主張が展開されている。カズニック氏は「詳しく検証していけばいくほど、われわれにとって厄介な問題であることが分かってきた。そして、日本だけでなく米国や世界にとっても、日本がその過去について正面から取り組んでいくことがいかに重要であるかを実感するようになった」と述べ、日本と米国が両国の歴史全てについて共謀してうそをついてきたと、過去に対する両国の姿勢に批判的な見解を示した。

記者: Mitsuru Obe



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/08/08
  ④ 戦後最大の日本の軍艦「いずも」が進水

横浜港で進水した「いずも」日本は、東シナ海の諸島の領有権をめぐり中国との緊張が続き、その軍事戦略を強化しようとする中で、戦後最大規模の軍艦が完成した。

海上自衛隊は6日、横浜で、全長248メートル、基準排水量1万9500トンのヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の命名、進水式を行った。ジャパンマリンユナイテッドが約1200億円で建造した「いずも」は、平和維持活動、災害救援のほか対潜水艦作戦も行う。

海自ではこれまでのところ、「ひゅうが」型ヘリ搭載護衛艦2隻(1万3950トン)が最大規模で、ヘリ11機を運べる。「いずも」はこれを上回り、14機のヘリと乗組員470人を30ノットの速さで運ぶ。2015年3月に運用開始の予定。

同艦の命名式は、日本と中国が東シナ海の尖閣諸島(中国語名・釣魚島)の領有権をめぐりお互いに警戒感を強める中で行われた。ここ数年、8、9の両月は同諸島をめぐる対立が特に激しさを増す。今年は、香港の活動家グループが日本の終戦記念日に当たる8月15日に、同諸島に上陸する計画を明らかにした。

日本は6月、米国との協調と、離島の奪還を想定し水陸両用の海兵隊的作戦への対応能力を高めるため、米軍を中心としたカリフォルニア州での合同軍事演習「ドーン・ブリッツ」に参加した。

日本の防衛省は、中国の軍事プレゼンスの拡大と北朝鮮のミサイルの脅威を指摘して、軍事能力を高める計画を示している。同省は7月下旬、年内に公表する新たな防衛計画の大綱に関する中間報告を発表。計画には無人偵察機や島しょ部での水陸両用車の配備、弾道ミサイル攻撃への対処能力の改善などが含まれている。

安倍晋三首相は昨年12月に就任して以来、中国の領土的野心と北朝鮮の好戦的姿勢に強い姿勢で臨む方針を強調している。首相は過去11年間で初めて、国防予算を増やし、米国やインドなど同盟国との防衛協力強化を約束した。

安倍首相は、7月21日の参議院選挙での勝利によってその支配力を強め、国家安全保障問題と戦後の平和憲法を改正する目標を追求するための基盤ができ上がった。これは一方で、過去に日本軍国主義の犠牲となった中国と韓国の両国を警戒させることになった。

記者: Alexander Martin



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/07/31
  ⑤ 麻生財務相に非難の嵐-「ワイマール憲法」発言で

麻生太郎副総理兼財務相(7月25日、東京での講演で)麻生太郎副総理兼財務相は、平和憲法の改正のモデルとして日本が戦前ドイツのナチス政権時代に目を向けるべきだと一部の人々に解釈されかねないような発言をしたとして批判を浴びている。ただ、麻生氏の側近たちはそうした意図を否定している。

麻生氏のこの発言の報道を受け、ユダヤ人の人権団体と、日本の旧植民地の韓国から、直ちに批判が起きた。麻生氏は今年これまでにも、靖国神社を参拝して韓国の反感を買っていた。

国内メディアによると、麻生氏は29日の東京での演説で、「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口に学んだらどうかね」と述べた。この発言については麻生氏の事務所が確認した。

麻生氏の側近たちは、同氏が31日、地元の九州にいて、コメントは取れないと述べた。しかし、麻生氏の発言は文脈を無視して引用されていて、麻生氏はナチス・ドイツを称賛するようなことは何も言っていないと説明した。むしろ、麻生氏は、憲法論議は静かな環境で進めるべきだとの認識を強調したものだと指摘した。

大臣秘書官の1人、村松一郎氏は「ワイマール憲法改正の事例について、反面教師としてとらえた方がいいとの趣旨」と述べた。さらに、「感情的に議論していると、誤った方向に行く。憲法改正は慎重に議論すべきだと言っている。大臣は、ナチス憲法の方がいいと言っているのではない。(憲法改正のやり方でナチスから学ぶ点があると発言が受けとめられているとすれば)大臣の意図とは真逆だ」と続けた。

共同通信も、ワイマール憲法が当時の欧州でいかに最も「進歩的」だったか、しかし、その憲法下でナチス政権が誕生したと麻生氏は言及したと報じた。良い憲法のもとでさえ、こうしたことが起こると述べたと引用された。

麻生氏の意図するところが何だったにせよ、国内メディアで大々的に報じられたことは、時々そうしたケースがあるように、麻生氏の発言が時にとりとめがなく、同じ聴衆の中でも違った解釈につながったり、あるいは、少なくとも困惑したりする人がいることが示されている。

麻生氏は公益財団法人、国家基本問題研究所主催のイベントで演説した。同研究所は改憲を求めている保守派のシンクタンクで、戦時中の戦地での慰安婦の強制連行に日本軍が関与したとの主張を否定して議論を呼んでいる。

麻生氏の発言報道を受け、韓国は直ちに批判した。日韓関係は戦時中の日本の行為やこのところの領土問題をめぐる論争を受けて緊張が高まっている。また、戦後の平和憲法の改正を訴える安倍晋三首相の動向を韓国は慎重に眺めている。

韓国外務省の報道官は30日、記者団に対し、麻生氏の発言が「多くの人々を傷つけることは明らかだ」と表明した。

韓国外務省の公式表明によると、報道官は「過去に日本帝国が侵略した近隣諸国の国民がこうした発言をどのようにみるかは明白だ。日本の政界のリーダーたちは発言や行動に慎重になるべきだと確信している」と述べた。

また、ロサンゼルスに本部を置くユダヤ教の人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)は30日に声明を発表し、麻生氏に発言の説明を求めた。

この声明は、SWCの副代表で宗教指導者エイブラハム・クーパー氏の発言を引用し、「ナチス政権のどの「やり方」──民主主義をひそかに無能にするやり方──が学ぶ価値があるのか」と問いかけた。

クーパー氏は「麻生副総理はナチス・ドイツの支配力が素早く世界を地獄に連れ込み、第二次世界大戦の甚大な恐怖に人類を巻き込んだことを忘れたのか。統治をめぐるナチス第三帝国からの唯一の教訓は、権力の地位にある者がどう振る舞うべきではないかということだけだ」と続けた。

日本の政府報道官はコメントを避け、この問題は麻生氏の問題だと述べた。菅義偉官房長官は31日の会見で、麻生氏の発言への認識を問われ、「麻生副総理が答えるべきだ」と述べるにとどまった。

麻生氏は失言や政治的論争と無縁ではない。2001年に経済財政相だった麻生氏は外国特派員クラブで行われた講演で、「日本に外国人が働いていることは良いことだと思う。独断と偏見だが、金持ちのユダヤ人が住みたくなる国が良い国だと思う」と述べたことがあった。

記者: Alexander Martin and Mitsuru Obe



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/06/12
  ⑥ 日本は尖閣問題を「棚上げ」するのが得策だろう=コロンビア大教授

米コロンビア大学政治学教授のジェラルド・カーティス氏は尖閣諸島をめぐる問題について、日本が国際司法裁判所に持ち込まないのは誤りだが、中国がそうすることに合意しないだろうから、この問題は棚上げするのが得策だろうとの見方を示した。ウォール・ストリート・ジャーナルが6日に東京都港区のアークヒルズカフェで開いたトークセッション「WSJカフェ東京」で話した。

主な一問一答は以下の通り。

──安倍首相は領土問題にどのように対処しているか。

「これも頭脳と心情の問題だ。つまり、実用主義と一段と観念的なアプローチの問題だ」

米コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授「領土問題は3つある。中国との尖閣諸島の問題と、韓国との竹島問題、さらに、ロシアとの北方領土の問題だ。これら3つの問題について、深刻なのは1つだけだ。それは尖閣問題。これは潜在的に非常に危険な問題だ」

「竹島問題はそうでもない。韓国人が独島(竹島)について語ったり、大統領がこの島を訪れるのを止めて静かにすれば、われわれは大ごとにするつもりはない、というのが日本の政権の見方だと考える」

「日本にはこうした諸島を奪還する希望はないし、軍事力を行使する意図もない。しかし、韓国の指導者がこれは韓国の領土だと言えば、日本の指導者は国内的にはいいや違う、それは島根県に属すると主張するだろう。この問題は完全に対処可能だと私はみている。また、韓国側もそう考えていると確信している。したがって韓国の李明博(イ・ミョンバク)前大統領が竹島を訪問するというようなばかげたことをするのは完全に国内向けで、政治的な理由からで、私の見方では非常に無責任な行為だ」

「2つ目は、北方領土問題だが、これは重要ではない。どうなるかに注目する価値はあるが、この問題は解決する可能性がある。その理由は2つだ。1つは日本には大きなエネルギー問題が存在すること。原発の再稼働は当面難しいだろう。日本経済が拡大すればするほど、エネルギーがますます必要になる。米国からのシェールガス輸入については多くの期待がある。しかしまた、ロシアから輸入できる天然ガスも大量にある。そして、ロシアはそれを輸出したがっている」

「もう1つは、安倍首相が各国を訪問していることだ。首相はモスクワを訪問しプーチン大統領に会った。中国を取り囲むあらゆる国を訪れた。これが、北方領土問題の解決が不可能ではない理由だ。この地域の地政学的バランスの問題だ。日本がついに平和条約に調印し、大いに経済交流を行うと想像してみてほしい。中国政府はよく思わないだろうが、日本の強さを示すことになろう」

──日本はロシアとの間でどのような妥協ができるだろうか。

「2プラスアルファ―と呼ばれるものだ。つまり、ここで問題になっているのは4島で、そのうちの2島は、日本が平和条約に調印する際にロシアが返還することで合意した。4島のうち、小さな方の2島だ。したがって問題となるのは、日本が示している公式な立場通りに、安倍首相が4島全部にこだわる場合には、解決は見られないだろう。したがって、2島プラス他の2つということだ。様々な形式が協議されている。1つは領土すべてをたして割って半分ずつというもの。あるいは、この問題を解決せずに50年か100年、共同で管理し、100年後の国民に考えさせるというものだ。実際、これが最善の解決策だ。したがって、意思があれば道はあるということだ」

──中国についてはどうか。

「これは非常に危険だ。安倍首相は実際、これは歴史的にも国際法に照らしても日本の領土で、議論の余地は全くないとの立場に固執している。習近平国家主席に会って多くのことについて語るのが非常に楽しみだが、尖閣諸島の問題での妥協については尋ねないでほしい、尖閣諸島は日本の領土だ、受け入れるべきだ、というのが日本政府の立場だとみている。そして、中国政府の姿勢も同じくらい頑なだ。これは中国の領土なので、何としても取り戻す」

「したがってこの状況が続く限り、日本にとっての鍵は米国を味方に付けておくことだ。米国の見方は米国が尖閣諸島に関して日本を見はなせば、安全保障条約自体が紙切れ同様になってしまうというものだと私は考えている。この条約は何のためのものか。日本の施政権下にある尖閣諸島を守ることを米国にコミットさせるものだ」

「尖閣諸島は日本の施政権下にある。これが奇妙なほどに難しい問題になっているのは、日本の尖閣諸島の領有権を米国が認めていないことだ。米国は中立だ。米国の公式な立場は、あなたたち(日本)が中国と折り合いをつけるべきだというものだ。双方で解決せよと。しかし、日本政府は尖閣諸島を支配しているので、米国は日本の支援にコミットしている」

「中国側は、中国人も尖閣諸島近海に出向くことができ、日本人はそれを止められないと主張し、また、中国も同諸島に対し高度な施政権を行使していると主張するために、日本政府の施政権を徐々に弱めようと試みている。中国側がその議論を正当化できれば、米国の立場は弱まるだろう」

「問題は、可能な妥協などあり得るかということだ。答えは、あるというものだ。実際、田中角栄元首相は1972年に当時の周恩来首相と妥協に達し、1978年には鄧小平氏もその立場を繰り返した。忘れて、棚上げしよう。日本政府はそうした姿勢を取ったことがあることを否定している」

「日本政府の見方はいわゆる棚上げも含め、議論することは何もないというものだ」

「われわれは、棚上げという言葉を安倍首相と習主席に言ってほしいと思っている。この問題はあまりにも複雑すぎるということだ。そのままにしておくほうがいい。日本は施政権を保有している。中国は漁業権をはじめとする他の全権を有している。そしてそのまま棚上げしたほうがいい」

「他の解決策は、この問題を国際司法裁判所に持ち込むことだ。中国側はこれを拒否している。日本はもっと強力にこの策を支持しないことによって過ちを犯していると私は考えている。日本政府の見方は、問題は存在しないというものだ。しかし、中国人がこれを問題だと考えれば、このケースを国際司法裁判所に持ち込むことができ、われわれは合意するだろう。安倍首相はそうしないとは言っていない。しかし、中国人は自分たちが負けることが分かっているので、そうしないだろう」

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 安倍首相の第3の矢、参院選後に国民は失望へ=コロンビア大教授  http://bitly.com/104UyiD
 安倍政権が長続きする理由  http://bitly.com/14KBoKP



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/05/28
  ⑦ 日本、22年連続で世界最大の債権国に

日本は2012年も世界最大の債権国となり、その座を22年連続で維持した。近年輸出は不振に陥っているものの、年末にかけての円の急落で対外資産の評価額が増えたことが影響した。

財務省が28日発表したデータによると、日本の円建てによる対外純資産は12%増となり、再び首位をキープした。2位と3位には中国とドイツが続いた。

だがアナリストらは、日本の債権国トップの地位は今後も保証されているわけではないと指摘する。日本は輸出低迷と国内原発の稼働停止による化石燃料の輸入急増で巨額の貿易赤字が続いているためだ。4月の貿易収支も10カ月連続の赤字となった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の中沢剛シニア・ストラテジストは、「為替相場は短期的には(対外資産残高に)影響を与える。だが中長期的には、経常収支やエネルギー政策、日本経済の競争力による」と述べ、日本は今は過去の遺産で食べていると指摘した。

財務省のデータによると、為替や米国債などの日本の海外保有資産から外国人が保有する日本株や日本国債などの負債を差し引いた12年末の日本の対外純資産は296兆3200億円となった。

前年と比較して30兆8900億円の増加で、09年の268兆円という過去最高記録を更新した。2位は香港を含む中国で213兆6600億円、3位は121兆9000億円でドイツ。

財務省によると、年前半は円高の進行で日本企業による海外資産の積極的な購入が加速する一方で、年後半は主にドルが対円で11%急騰したことが原因で日本の海外保有資産の価値が押し上げられた。安倍晋三新首相が景気浮揚に向けて積極的な金融緩和に踏み切るのではとの期待から、円は年末にかけて対ドルで下落した。

セグメント別では、対外資産残高は661兆9000億円と、前年の80兆3900億円から13.8%の増加となった。そのうち海外証券保有残高は305兆1100億円で、前年から42兆7900億円増えた。海外証券の80%超は債券で、残りは株式。 外貨準備高は前年から8兆9500億円増えて109兆4600億円となった。また海外直接投資は15兆5200億円増えて89兆8100億円となった。

これら増加分は負債の増加で一部相殺された。負債は49兆5100億円増加して365兆5900億円となった。増加は主に海外投資家が保有する日本株の価値が上昇したことが影響した。

記者: Mitsuru Obe



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/07/12
  ⑧ 中国と韓国の日本嫌い、鮮明に―親日的な東南アジアと対照的

米世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(PRC)が11日発表した世論調査によると、日本の国民は昨年よりも経済にはるかに楽観的になっていることが分かった。安倍晋三首相が国民の気分を変えるのに成功していることが改めて示された。

日本の軍隊をイメージさせる旭日旗に大きなバツを付け、燃やす韓国のデモ隊しかし調査では同時に、安倍首相が日本以外の諸外国で対日認識を変えられていないことも示されている。アジアの最も近隣の国、つまり韓国と中国では、過去の日本の軍事侵略への贖罪意識に欠けているとして日本に否定的な見方が圧倒的多数に上っているのだ。

安倍首相は「アベノミクス」として知られる成長政策で国内の見方を変えるのに成功しているが、日本に対する中国人や韓国人の見方、特に戦争中に行ったことに対する見方を変えるにはもっと努力する必要があることが示唆されている。

調査は今年春実施された。それによると、現在の経済状況について肯定的な見方をしているとの日本人は全体の27%に達し、昨年調査時のわずか7%から急増した。この27%という数字をもって楽観的とするのはやや問題があるが、PRCの調査ディレクター、ブルース・ストークス氏はJRT(Japan Real Time)に対し、これは北東アジア諸国が日本に否定的な見方をしているとの結果と並んで、今年の世論調査で判明した最も顕著な結果の一つだと述べた。

ストークス氏は「日本人は先進諸国の中でも将来について最も意気軒昂で、欧州ではこうした高率回答は得られない。米国では高い数字だが、日本ほどではない」と述べた。そして「人々はアベノミクスを受け入れようとしているが、それはリスクも高まっていることを意味する」とし、「この成長が実現するとの期待が高いが、安倍氏がそれを達成できなければ、人々は失望するだろう」と語った。

日本国内では安倍氏に対する支持と将来への希望が上昇しているが、近隣諸国は日本のイメージにより悲観的になっている。

調査によると、日本を否定的に見る韓国人は全体の77%、中国本土では実に90%に達した。韓国と中国では安倍氏への不支持率も85%前後と高率だ。前回同じ設問をした2008年には、日本を否定的にみるのは中国で69%、韓国では51%にとどまっていた。PRCの世論調査では、その年のメーンテーマに応じて異なる質問が設定されている。

左:諸外国の日本に対するイメージ(緑が肯定的、赤が否定的)、中央:安倍首相に対する評価、右:日本が軍隊を保持し宣戦布告できるように憲法を改正することをどう思うか(緑が賛成、赤が反対) クリックして拡大する≫日本を否定的にみる主な要因として、日本が過去の軍事侵略を十分に悔いていないことを挙げたのが韓国人で98%、中国人で78%に達した。

過去12カ月間で日本と近隣諸国間の緊張は領土問題をめぐって高まっている。しかし今回のPRC調査では、尖閣諸島(中国名は釣魚島)や竹島(韓国名は独島)をめぐる日本と中国、韓国との主権争いをどう感じているかは示されていない。

調査結果によれば、アジア近隣諸国に十分に謝罪していないとの見方は日本ではそれほど認識されておらず、近隣諸国とのギャップが広がっていることがうかがえる。ただし、第2次世界大戦中に日本軍に占領されたマレーシア、フィリピン、インドネシアでは、それは既に過ぎ去ったことだとの認識のほうがはるかに強い。例えば、これら東南アジア3カ国では、日本が真摯に謝罪していないとみる人々は半分未満だった。実際のところ、日本が好きだと回答したのは3カ国とも80%前後に達しており、調査対象となった7カ国(これら3カ国と韓国、中国、オーストラリア、パキスタン)の中でこれら東南アジア3カ国が最も高率だ。

安倍氏はまた、東南アジア諸国の間では総じて好意的にみられている。ただ具体的に答えられるほどに安倍氏を知らないとの回答は、これら3カ国で20−40%となっている。

ストークス氏は、中国と韓国という最も近隣国の国民が日本の戦時中の行動に現在も厳しい見方をしていることに強い印象を受けたとし、調査の結果、安倍氏が近隣諸国の対日イメージ改善のため、取り組む必要のある諸問題が浮き彫りになったとの見方を示した。

ストークス氏は「安倍氏は前任者たちが消極的だった戦時中の行動に対する贖罪という問題に対処するユニークな立場にある。彼はそうしないことを選択するかもしれないが、われわれの調査では彼は極めて人気があることが判明しており、近隣諸国に関して動ける余地がある。安倍氏は自らの右翼支持層を固めるためナショナリスト的なカードをこれ以上使う必要はない」と指摘した。その上で、「安倍氏は、終戦記念日の8月15日に靖国神社に参拝するかどうか表明していないが、今回のわれわれの調査では、国内的な支持固めのため参拝の必要がないことが示唆されている。国民は既に彼を支持しているからだ」と語った。

記者: Joelle Metcalfe



<ウォール・ストリート・ジャーナル>
2013/09/24
  ⑨ ロボットが中国の家電製造に革命も

 中国で新たな「労働者革命」が起こりつつある。ただし、それには人間がからんでいない。

 中国では賃金が高騰し、人口が高齢化しているため、家電製造工場の責任者たちは、工場で人間の代わりにロボットが活躍する日もそう遠くないだろうと話している。

 現在、産業ロボットの新たな波が押し寄せつつある。視覚や触覚のほか、学習能力さえも備えるハイエンドの人間型ロボットから、労働者の最低賃金を下回ることを目指す低コストロボットに至るまで、さまざまなロボットだ。

 企業幹部らは、向こう5年間でこういった技術が中国の工場を変えていくだろうと指摘し、中国の若者が肉体労働をしたがらなくなるにつれて生じてきた労働力不足を埋めるのにも役立つだろうと話している。その変化の度合いは、家電のサプライチェーンのどれほどが中国に残るかを決める上で大きな役割を果たすだろう。

 取り組みを進めているのは、スイスのABBやドイツのクーカといった伝統的なロボットメーカーだけではない。台湾の台達電子(デルタ電子)や富士康科技(フォックスコン・テクノロジー・グループ)といったアジアの大手家電メーカーや、デンマークのユニバーサル・ロボッツといった中小メーカーも、より良いロボットの製造を目指している。

 ただし、一部の業界幹部は中国のオートメーションへのシフトには何年もかかる公算が大きいと警告し、多くの難題を挙げている。高性能なロボットの価格の高さ、依然として残る技術的な制限のほか、ロボットの工場導入に対する柔軟性の欠如という問題もある。

 台湾のパソコン受託製造業者、広達電脳(クアンタ・コンピューター)のティム・リー上級副社長は、「受注が減ったとき、労働者ならレイオフできるが、ロボットはそれができない」と話す。

ジグソーパズルを組み立てるデルタ電子のコンセプト・ロボット

 この分野に最近参入した企業の1つであるデルタ電子は、長年アップルなどのブランド向けに電源アダプターを製造してきたが、昨年、もっと野心的なプロジェクトに着手した。それは中国の家電工場で人間の代わりに安く使えるロボットを作ることだ。

 同社の海英俊董事長はインタビューで、「オートメーションが中国のこれからのトレンドであることが明らかだが、ロボットのコストをどのようにして下げるかが大きな問題だ」と話し、「当社にはそれができると信じている。当社は部品の3分の2を自社製造しているからだ」と付け加えた。

 デルタは1本の腕に4つの関節を持つロボットの試験を行っている。このロボットは物を動かしたり、部品を結合させたりといったことが可能。同社はこの販売価格を1万ドル(約100万円)程度にまで安くしたいと考えている。1万ドルという価格は現在の主力ロボットの半額未満になる。

 この価格は中国人労働者の賃金を下回る。しかもロボットは一日中稼働できる。

 デルタは同社台湾工場のコスト面の強み、部品の自社生産、それにロボットの目標寿命を短くすることを通じて低価格を実現できると考えている。

 台湾のほかに目を向けると、もっと先進的なロボットが開発されている。容易にプログラムの書き換えができ、負傷のリスクなしに人間と作業できるような賢いロボットだ。例えば、ABBの人間型ロボットには7つの関節がある腕が2本あり、正確なタスクをこなせ、人間が触ると作業を止める。

 これらのロボットは工場労働者よりも高価だが、コストの差は縮まってきている。中国人の賃金は年間2けたの伸びを示しているからだ。

 ロボット技術の進展により、家電会社が一部の製造過程を米国に戻せるのではないかとの期待も膨らんでいる。しかし、業界専門家は、家電の組み立ては、たとえオートメーションが容易になっても、中国にとどまる公算が大きいとみている。もっと大きな部品サプライチェーンが中国国内に存在しているからだ。



<朝刊>
2013/09/25 1面
  ⑩ 教委権限、首長に移行案 中教審分科会、提示へ

 教育委員会制度の見直しを検討している中央教育審議会分科会の中間まとめ案が24日、分かった。地方教育行政をとり行う機関を、現行の教委から自治体の長(首長)に替える案を「国民の期待に応える最も抜本的な改革案」と強く打ち出す一方、首長の教育行政への関与が強まるため、政治的中立性の確保などを課題としている。▼3面=懸念の声も

 教委制度は、いじめ問題への対応の遅れなどを契機に見直し論が浮上し、政府の教育再生実行会議が「首長が責任を果たせる体制にする必要がある」と4月に提言。下村博文文部科学相が中教審へ諮問した。

 中間まとめ案では、(1)首長を執行機関とする案と、(2)教委を執行機関とし続ける案――の二つを記載。(2)については「現行制度との違いが分かりにくいという課題がある」とした。教育長については両案とも「教育行政の責任者」と位置づけている。

 (1)の場合、教育長は首長の指揮監督を受ける補助機関となり、議会の同意を得て首長が任免する。教委が任命する現行より首長の影響力が強まる。ただ、政治的中立性などに配慮するため、首長からの指揮監督は「特別な場合のみ」とし、罷免(ひめん)できる要件も「限定的にするのが適当」とした。

 教委は、施策について審議や勧告をする首長の付属機関にとどまり、行政の方向性を示したり、チェックしたりする。

 一方、(2)は現行通り、教委を執行機関、教育長をその補助機関とする。ただ、教育長の責任を明確化するため、教委の役割を主な事項の審議やチェックに限り、教育長への指揮監督は「特別な場合のみ」とした。教育長は(1)と同じく首長が任免するため、いずれの案でも首長の影響力は今より強まることになる。

 中間まとめ案は26日の分科会で議論後、10月上旬の次回会合で固められる。その後、全国知事会の意見聴取などを経て1案に絞った答申が年内に出される。それを受けて、文科省は来年の通常国会に改正法案を提出する見通しだ。(岡雄一郎)

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<朝刊>
2013/09/25 3面
  ⑪ 政治的中立の確保課題 教委権限、首長に移行案

 地方の公教育を誰が主導するのか――。中央教育審議会(中教審)が、その権限を教育委員会から自治体の長(首長)に移す案を優先的に検討していることが明らかになった。責任の明確化や迅速な危機管理がその決め手だが、教育内容や教職員人事への政治的影響を制限できるのか、懸念の声がある。▼1面参照

 戦後日本の教育を担ってきた教委制度については、「非常勤の教育委員が事務全般の責任を負うのは難しく、制度が形骸化している」という批判が続いてきた。また昨年、社会問題化した大津市のいじめ事件を機に見直し論が噴出。橋下徹大阪市長らは「選挙で選ばれた政治家でなければ、責任をとれない」と教委廃止を訴えている。

 自民党も野党時代から、首長が任命する教育長を教育行政の責任者とする案を主張。それに沿う形で、政権交代後の1月に始動した政府の教育再生実行会議が提言を出し、中教審に制度設計が委ねられてきた。

 中教審は文科相の諮問機関で、学習指導要領の改訂や教員養成制度のあり方など国の主な教育施策を議論し、文科相に答申する。

 地方の首長や教育長、大学教授らが参加するその分科会では、主に首長から制度の抜本見直しを求める意見が相次いだ。「教育だけ特別視する必要はなく、首長が責任と権限を負うべきだ」。そんな意見だ。

 見直しを支持する声は、文科省内にも広がっている。ある幹部は「半世紀以上、同じ批判が繰り返されてきた。制度の限界を認める時期かもしれない」と漏らした。

 教委制度は、軍国主義教育に偏ってしまった戦時中の反省などもあり、政治的中立を保つ目的で続いてきた。ある自治体の教育長は言う。「教育は住民に最も身近な行政分野で、教員人事など要望が多い。選挙で様々な約束をする政治家が中立を保てるのだろうか」

 中教審が年内にまとめる答申を受け、文科省は改正法案を来年の通常国会にも提出する。戦後教育の大きな転換点になる可能性が高まっている。(岡雄一郎)

 ◆キーワード

 <教育委員会> 教育が政治に左右された戦前の反省から、1948年、政治権力が教育に直接関与できないように作られた。自治体の長(首長)に任命された原則5人の教育委員が、教員人事や使用する教科書など教育に関する方針や施策を合議で決める。

 非常勤の教育委員らによる運営が「形骸化している」との批判があり、教育再生実行会議は4月、合議制の教育委員会ではなく、首長が議会の同意を得て任免する教育長が教育行政の責任を担うことを提言した。

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<朝刊>
2013/09/25 1面
  ⑫ 集団的自衛権の行使容認、解釈変更は来春以降

 安倍政権は、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更を来年春以降とする方針を固めた。安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)の提言を秋の臨時国会後の12月中旬以降にする。重要法案が多い臨時国会後に解釈変更を本格検討し、丁寧に議論するのが望ましいと判断した。▼4面=「地球の裏側」発言波紋

 複数の政府関係者が明らかにした。首相は当初、早ければ年内に集団的自衛権の行使を容認したい考えだったが、与党の公明党が「短兵急にはいかない」(山口那津男代表)と慎重姿勢を崩していない。臨時国会では産業競争力強化法案や国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案、特定秘密保護法案など重要法案が目白押し。政権は「国会が閉じないと提言できる状況にならない」(政府関係者)として、臨時国会中の提言を避ける方向だ。

 安倍首相は安保法制懇の提言を踏まえ、憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認する方針。提言が12月中旬以降にずれ込む見通しになったことで、政府・与党内の協議も年明け以降になる方向になった。このため、首相が憲法解釈の変更を決断するのは、通常国会で来年度予算が成立した後の来春以降になる見通し。

 安保法制懇は今月17日から議論を再開。第1次安倍政権の2007年に設置された安保法制懇では、集団的自衛権について「公海での米艦防護」「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃」の場合で認めるよう提言。今回はさらに行使容認の範囲を拡大する方針だ。

 ◆キーワード

 <安保法制懇> 第1次安倍内閣の2007年に発足し、集団的自衛権や集団安全保障に関する「4類型」を可能とする提言を安倍晋三首相の退陣後に提出した。昨年末の安倍首相の再登板に伴い、今年2月に改めて議論を始めた。第1次の提言を踏まえて検討を進めている。

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<朝刊>
2013/09/25 4面
  ⑬ 「地球の裏側」発言に波紋 自衛隊派遣、政権は火消し

 集団的自衛権の行使が認められた場合、自衛隊が「地球の裏側」まで派遣される可能性があることを安倍政権の政府高官が示した。これまで政権は世論や諸外国の反発を招かないよう「地球の裏側」論に否定的な見解を示してきただけに、火消しに追われている。今後の集団的自衛権行使の容認をめぐる議論では、派遣先の地理的範囲も大きな焦点になりそうだ。▼1面参照

 「地球の裏側に行って戦争をするような実際と大きく異なるイメージが独り歩きし、国民や周辺諸国の不安をあおっている面がある」。小野寺五典防衛相は20日、安倍政権で安全保障政策を担当する高見沢将林・官房副長官補が「地球の裏側」で集団的自衛権を行使する可能性に言及したことに対し、強い懸念を示した。

 ■範囲も焦点に

 ただ小野寺氏は、集団的自衛権が認められた場合、自衛隊が「地球の裏側」に行く可能性があるのか問われると、「(集団的自衛権の行使容認を議論する)安保法制懇の議論を待ちたい」と述べるにとどめた。

 高見沢氏の発言の背景には、集団的自衛権は行使の範囲について地理的な制約を受ける性格のものではない、との考えがある。これまでの安保法制懇でも、憲法解釈を変更して集団的自衛権を認める際は、地理的制限を加えることに否定的な意見が大勢。自衛隊がどの地域で活動するかは、個別ケースごとに内閣が判断すべき問題としている。

 ■「周辺」を強調

 にもかかわらず、政権側が高見沢氏の発言の火消しに回り、日本周辺での集団的自衛権行使を強調するのは、世論の理解を得やすくするためだ。

 高見沢氏が発言した19日の自民党部会でも岩屋毅安全保障調査会長が「高見沢さんの説明は全くその通り」と認めつつ、「(『地球の裏側』への自衛隊派遣が)あまりまた前面に出てくると、またあらぬ議論を惹起(じゃっき)する」と述べた。

 こうした動きに対し、派遣される側の自衛隊幹部は神経をとがらせている。

 ■米から要請も

 2001年の同時多発テロを受けたアフガニスタン戦争では、米国と同盟を結ぶ英国など北大西洋条約機構(NATO)諸国は集団的自衛権の行使に合意。日本で集団的自衛権の行使が全面解禁されれば、法律などで歯止めをかけない限り、米国の紛争にどこまでも自衛隊が参加可能となる。

 ある自衛隊幹部は「集団的自衛権行使が容認されれば、米国は自衛隊の参加を要請し、軍事行動に加わる恐れはある」と語る。

 自衛隊派遣先をめぐっては過去にも論争となった。1999年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の審議でも、周辺事態の地理的範囲について、当時の小渕恵三首相が「地球の裏側は考えられない」と答弁した。(園田耕司)

 <発言した高見沢氏とは>

 高見沢将林(のぶしげ)・官房副長官補(58)は、1978年に東京大学卒業後、防衛庁(現・防衛省)に入庁。運用企画局長や防衛政策局長と主要ポストを歴任したが、民主党政権で防衛政策の中枢から外れ、防衛研究所長に就任した。政権交代後の今年7月、官邸に常駐する事務次官級の官房副長官補に就いた。

 現在は安倍政権で集団的自衛権の行使容認を議論する首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の事務局も担当している。安全保障専門家の間では「防衛省の中でも学者肌だ」という評判がある。

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<秘密保護法案 読み解く:1>
2013/09/19
  ⑭ 記者の取材活動も処罰される?

 俳優の藤原紀香さんは今月13日、ブログにこう書き込んだ。「真実を知ろうとして民間で調査している人やマスコミ関係者などが逮捕されてしまう可能性があるって……。日本は民主主義国家ではなくなってしまうのかな」

 藤原さんが指摘したのは、安倍政権が臨時国会に提出する特定秘密保護法案のことだ。法案では、防衛や外交など4分野が「特定秘密」に指定される。法案の概要によると、秘密を漏らした人はもちろん、秘密を知ろうとする行為も処罰対象になりかねない。

 英国の19世紀の歴史家アクトンが「権力は腐敗する」と指摘したように、政府が常に正しいとは限らない。報道機関やフリーのジャーナリストらは、それを監視する役目を担う。情報公開や情報収集に独自に取り組み、政府の問題を追及する人たちもいる。

 だが、公開されるべき情報が一方的に隠されたり、自由に取材できなくなったりすれば、国民が知るべき情報を得られない。藤原さんの心配は取り越し苦労なのか。

 政府の説明はこうだ。法律で守られる特定秘密は、4分野の中でも「国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要」な情報に限定。秘密の指定期間も5年を上限にし、更新制とする。有効期間内でも隠す理由がなくなった場合は速やかに指定を解除する。

 法案には秘密の範囲を拡大解釈することを禁じる規定を設ける。「知る権利」や「報道の自由」を保障する条文も盛り込む方針。基本的人権を侵害しない姿勢を示し、国民から理解を得ようという配慮だ。

 だましたり、盗んだり、建物に侵入したりして得た情報は処罰対象になるが、政府関係者は「通常の取材活動が罰せられることはあり得ない」と強調。だが、秘密を漏らした公務員らの罰則が厳しくなるだけに、取材を受けることへの精神的負担が高まるのは避けられない。厳罰を恐れ取材を拒む関係者が増えれば事実上の取材制限になりかねない。

 秘密にする期間の上限5年間も、実際は何度でも更新できる。権力者が恣意(しい)的に4分野に分類してもチェックする仕組みがない。情報公開や情報収集に取り組む人たちの活動も大幅に制約される恐れがある。

 「国が『この案件は国家機密である』と決めたことに関しては、国民には全く知らされない」。そんな藤原さんの懸念は払拭(ふっしょく)されていない。(安倍龍太郎)

    ◇

 安倍政権は秋の臨時国会に特定秘密保護法案を提出する予定です。どんな内容の法案で、どの点が問題となっているのか、解説していきます。

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 「天声人語」(9/18)
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 (声)秘密保全法案 国民が注視を(8/27)



<秘密保護法案 読み解く:2>
2013/09/20
  ⑮ なぜ急ぐの? 外国の情報、国内から漏れ防ぐ

 安倍政権はなぜ今、秘密保護法制の整備を急ぐのか。安倍晋三首相は肝いりの国家安全保障会議(日本版NSC)とのセット論を強調する。8月26日には訪問先の中東オマーンで記者団に「国家安全保障会議ができると、国の安全を守るために様々な議論がなされる。秘密保持は極めて重要な要素で、今のままではNSCとして十分に機能しない」と説明した。

 構想では、NSCは外交・安全保障の司令塔として官邸に設置され、防衛、外務など関係省庁の情報を一元的に管理し、同盟国の米国などとの情報共有を進める。首相は、中国や北朝鮮情勢など厳しさを増す東アジアの安全保障環境に対応するにはNSCが不可欠と強調。政権は秋の臨時国会で設置法を成立させ、来年1月にも本格稼働させる方針だ。秘密保護法案を説明する17日の公明党会合では、政府側は「法案はNSCという器をしっかりとするために必要だ。車の両輪に近い」と説明した。

 特に政権が情報管理を強めるのは、米国をはじめ外国の情報が日本から漏れるのを防ぐためだ。政府高官は「罰則を諸外国並みにしなければ、外国から信用されない」と話す。実際、特定秘密の具体例には、安全保障に関する外国の政府、国際機関との交渉、協力の方針や内容▽外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関して収集した国際機関、外国行政機関の情報など▽テロ防止活動に関して収集した国際機関、外国行政機関の情報など――が挙げられている。

 一方、政府関係者は「あえてセット論を強調して日米関係の重要性に注目を集めさせれば、『情報隠し』という批判をかわしやすい」とも解説する。過去の政権はたびたび国家公務員の秘密漏出への罰則強化を模索したが、「国民の知る権利」や「報道の自由」を侵害するというメディアや法曹界などの反発で頓挫。セット論を前面に出すことで反発を少しでも和らげたいとの思惑もありそうだ。(蔵前勝久)

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<秘密保護法案 読み解く:3>
2013/09/21
  ⑯ なぜ厳罰化? 米に配慮、懲役10年の対象拡大

 特定秘密保護法案の大きな特徴は、国の安全保障の情報を漏らしたり、取得したりした人への罰則を最長で懲役10年に厳しくしたことだ。

 安倍晋三首相は先の通常国会で「国民の知る権利や取材の自由を十分に尊重しつつ、秘密の範囲や罰則を含め、様々な論点の検討を進めております」と答弁。「日米の同盟関係の中でも高度な情報が入ってくる。秘密保全に関する法制を整備していないことについて、不安を持っている国もある」と、米国との関係を念頭に罰則を検討していることを示唆した。

 「国民の知る権利」と「米国の不安」。首相の言う両方を考慮した結果、特定秘密を扱う国家公務員が漏らしたら最長で懲役10年との罰則にした。国家公務員法の守秘義務違反が懲役1年、自衛隊法の防衛秘密の漏洩(ろうえい)も懲役5年以下なのに比べ厳しい内容だ。

 懲役10年は米国の罰則にもある。内閣官房が自民党に示した資料では、米国の合衆国法典で「行政機関の職員らによる安全保障に関する秘密情報の外国政府への漏洩」は懲役10年以下。今回は米国と同等になる。

 すでに日本でも、米国から供与された装備品の情報を漏らした場合に限り「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」で懲役10年の罰則がある。今回は米国からの装備品に限らず、自衛隊の研究開発段階の内容や外交の情報などまで広く懲役10年に。首相の言う「日米同盟関係の中の高度な情報」としてミサイル防衛の共同開発などが進み、日本側の漏洩は米側にも痛手だからだ。

 第1次安倍政権でも2007年、自衛隊員がイージス艦の情報を自宅に持ち帰った事件を受け、久間章生防衛相がゲーツ米国防長官から「日米協力を進めるためにも情報保全は重要になる」と秘密保護の強化を求められた。

 一方、秘密保護法案では(1)人を欺き、暴行を加え、脅迫(2)窃取(3)建物への侵入(4)不正アクセスといった行為をして情報を取った場合、最長で懲役10年とした。米国の合衆国法典でも「外国を利するなどの意図を有する者による国防情報の取得」は、やはり懲役10年以下だ。

 さらに、法案は教唆(そそのかし)や共謀も罰則を設ける。日本弁護士連合会は「取材により『特別秘密』(特定秘密)を入手しようとする行為」も「『漏洩』の教唆として処罰されうる」などと法案に反対。一方、自民党プロジェクトチームの町村信孝座長は「(記者が)何でもかんでも逮捕されることはない」としている。教唆などはすでに国家公務員法で懲役1年、自衛隊法で懲役3年以下。法案の概要に罰則の詳細は書いていないが、自衛隊法並みの懲役3年か、さらに厳しくなる可能性がある。(鶴岡正寛)

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 秘密保全法案―権利の侵害は許されぬ(8/25)



<秘密保護法案 読み解く:4>
2013/09/25
  ⑰ 適性評価って? 職員の資質見極め、差別の恐れも

 防衛省や外務省の職員がすべて国の機密情報を扱えるわけではない。この職員に扱わせても情報を漏らす恐れはないか――。特定秘密保護法案では、職員の資質を見極めるために「適性評価」を義務づけることにしている。

 法案の概要によれば、本人が評価を受けることに同意すれば、自らの犯罪歴や飲酒量、経済状態のほかテロとの関係といった7項目に加え、家族や同居人の国籍や住所などを申告する。大臣らは必要に応じて本人に面談したり、職場の上司や他の行政機関・金融機関に問い合わせたりして、申告された内容が正しいかどうか確認する仕組みだ。

 個人のプライバシーに踏み込むため、政府は法案に「目的外利用の禁止」を明記。国家公務員法で罰せられる内容が見つかれば別だが、そうでなければ資質を見極める以外に調査内容を使わない、としている。

 「だから本人の不利益にはならない」というのが政府の説明だが、うのみにはできない。適性評価を受けなければ機密情報を扱うことはできず、本人の処遇にまったく影響しないとは考えにくいからだ。ある防衛省関係者は「幹部になればなるほど機密を扱う。出世を考えれば同意せざるを得ない」と打ち明ける。

 法案に携わる礒崎陽輔首相補佐官は18日のテレビ番組で「機密に関与できずに『昇進で差別しないで』というのは無理では」と問われ、「実質的にはいろいろあるかもしれない」と発言。実際の運用が建前通りにはいかない可能性をにじませた。

 法案では配偶者のほか、その両親までを対象に広げ、生年月日や国籍、住所などを調べる。政府関係者は「一般論」と断ったうえで、「身内に中国や韓国、北朝鮮、ロシア国籍がいることがわかれば適性評価をクリアするのは難しいのでは」と明かす。

 日弁連で秘密保全法制対策本部事務局長を務める清水勉弁護士は適性評価を「差別に使われかねない」と批判。「国籍や生年月日で何がわかるのか。『外国籍だからちょっと危ない』というのは実にくだらない」と批判する。(安倍龍太郎)

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