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折々の記 2013 ⑥
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 05 】11/09

  11 09 島倉千代子さんが亡くなった  優しく慎ましい佳人
  11 09 「いちえふ」福島第一原発の作業員が描く渾身のルポ漫画  汚染現場の実態を知ろう
  11 10 許せない悪行 サイバー攻撃  思想の自由を否定するとんでもない勘違い

 11 09 (土) 島倉千代子さんが亡くなった

テレビの放送で島倉千代子さんが亡くなったことを知りました。

「この世の花」でデビューし、「人生いろいろ」で大ヒットしたといいます。 75歳肝臓癌だったといいます。

この頃やたらと声を震わせて歌う歌人が多くなり、歌の品がなくなったことに気付いていました。 そうした点、この方の歌には優しさと雅さがいつも感じられていました。



  「この世の花」  歌手:島倉千代子  作詞:西条八十  作曲:万城目正

    あかく咲く花 青い花
    この世に咲く花 数々あれど
    涙にぬれて 蕾のままに
    散るは乙女の 初恋の花

    想うひとには 嫁がれず
    想わぬひとの 言うまま気まま
    悲しさこらえ 笑顔を見せて
    散るもいじらし 初恋の花

    君のみ胸に 黒髪を
    うずめたたのしい 想い出月夜
    よろこび去りて 涙はのこる
    夢は返らぬ 初恋の花

      <http://mojim.net/tw_video_u2_n0qH4-m6z9Q.html?h=110758x3x1>

  「人生いろいろ」  歌手:島倉千代子  作詞:中山大三郎  作曲:浜口庫之助

    死んでしまおうなんて 悩んだりしたわ
    バラもコスモスたちも 枯れておしまいと
    髪をみじかくしたり つよく小指をかんだり
    自分ばかりを責めて 泣いてすごしたわ
    ねぇおかしいでしょ若いころ
    ねぇ滑稽でしょ若いころ
    笑いばなしに涙がいっぱい
    涙の中に若さがいっぱい
    人生いろいろ 男もいろいろ
    女だっていろいろ 咲き乱れるの

    恋は突然くるわ 別れもそうね
    そしてこころを乱し 神に祈るのよ
    どんな大事な恋も 軽いあそびでも
    一度なくしてわかる 胸のときめきよ
    いまかがやくのよ私たち
    いまとびたつのよ私たち
    笑いばなしに希望がいっぱい
    希望の中に若さがいっぱい

    人生いろいろ 男もいろいろ
    女だっていろいろ 咲き乱れるの

    人生いろいろ 男もいろいろ
    女だっていろいろ 咲き乱れるの

    人生いろいろ 男もいろいろ
    女だっていろいろ 咲き乱れるの

      <http://mojim.net/tw_video_u2_mq37a-wHRVY.html?h=110758x3x8>

  「悲しい酒」  歌手:島倉千代子  作詞:石本美由起  作曲:古賀政男

    ひとり酒場で 飲む酒は
    別れ涙の 味がする
    飲んで棄てたい 面影が
    飲めばグラスに また浮かぶ

      ああ別れたあとの心残りよ
      未練なのね あの人の面影
      淋しさを 忘れるために
      飲んでいるのに 酒は今夜も
      私を悲しくさせるの 酒よ
       どうしてどうして あの人を
       あきらめたらいいの
       あきらめたらいいの

    酒よこころが あるならば
    胸の悩みを 消してくれ
    酔えば悲しく なる酒を
    飲んで泣くのも 恋のため

    一人ぽっちが 好きだよと
    言った心の 裏で泣く
    好きで添えない 人の世を
    泣いて怨んで 夜が更ける

        <http://mojim.net/tw_video_u2_Uf2YEvWRrDQ.html?h=110758x3x16>

 11 09 (土) 「いちえふ」福島第一原発の作業員が描く渾身のルポ漫画

汚染現場の実態を知りましょう

昨夜の9時からのニュースで、東京電力福島原発現場作業にあたっている竜田一人さんが現場の様子を漫画にして国民に知ってもらおうとしていることを知りました。

The Huffington Post というのは、ウィキペディアによれば
ハフィントン・ポスト(英語:The Huffington Post)は、アメリカ合衆国のリベラル系インターネット新聞である。様々なコラムニストが執筆する論説ブログおよび各種オンラインメディアからのニュースアグリゲーターで、政治、メディア、ビジネス、エンターテイメント、生活、スタイル、自然環境、世界のニュース、お笑いなど広い分野を扱う。略称はハフポスト、ハフポである。

本家アメリカ版のほかにイギリス版、カナダ版、フランス版、スペイン版、イタリア版、日本版[1]、マグリブ版が展開され、2013年9月にドイツ版が開設予定である。
というメディアです。

講談社の週刊漫画誌「モーニング」に掲載され、一躍関心を集めているようです。



The Huffington Post
「いちえふ」福島第一原発の作業員が描く渾身のルポ漫画 「モーニング」で48歳新人がデビュー
    http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/03/ichiefu-comic-morning_n_4034313.html

東京電力福島第一原子力発電所は、「いちえふ」と呼ばれている。現場の人間や地元住民で、「いちえふ」を「フクイチ」と呼ぶ人間はいない——

原発事故の後、福島第一原発で作業員として働いた経験をつづった漫画「いちえふ 福島第一原子力発電所案内記」が10月3日発売の週刊漫画誌「モーニング」に掲載された。新人ながら冒頭4ページをカラーで掲載するなど、人気漫画誌で異例のデビューを飾った。

【福島原発の関連記事】

  ① •福島第一原発事故処理が進まない背景とは? | 山口巌
  ② •汚染水漏れ「福島の状況は深刻」英独の専門家
  ③ •「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判


福島第一原発について紹介した本や映像はあったが、作業員の立場からここまでリアルな現実を描いた漫画ははじめて。Jヴィレッジから福島第一原発への道のりや、原子炉建屋の様子、作業員の一日、下請け業者の実態などが淡々と丁寧に描かれている。

週刊マンガ誌「モーニング」(講談社)主催の新人賞「第34回MANGA OPEN」で大賞となった本作。作者は、48歳の竜田一人(たつた・かずと)さん(ペンネーム)だ。

新人賞の選考委員は、漫画家の森高夕次さんと東村アキコさん。作品について、森高さんは「これは本当のことしか描いていない漫画だと思うんです」と語り、東村さんは「外側から見ていると、恐ろしくてとんでもない作業が行われている場所なんだけど、内側にいると、ほのぼのとまではいかないけれど淡々とした日常があるということを描くのはすごく意味があると思います」と作品を評したという。

当初、竜田さんから持ち込みを受けた講談社の担当は「撮影を禁止されている区域は、漫画だからこそ再現できる。遠いフクシマのことが身近に感じてもらえる、読み応えのある作品です」と思いを語った。「いちえふ」は、本誌のほかDモーニングでも読むことができる。

「いちえふ」について、インターネット上ではこんな声が上がっている。

The Huffington Post 投稿日: 2013年08月29日 13時04分
① 福島第一原発事故処理が進まない背景とは?
    http://www.huffingtonpost.jp/iwao-yamaguchi/post_5510_b_3833731.html

事故が起こった福島第一原発により、地下水が汚染され太平洋に垂れ流し状態になっている。一体どの時点から? どの程度の放射性物質を含んだ汚染水が? 毎日どのくらい? 流出しているのかさっぱり分らない。世界がこの事態を危惧し、杜撰な日本の対応を批判するのは当然である。事ここに至り、ようやく政府も事の重大性を認識したのか茂木経産相は「(汚染水対策は)東電まかせでは解決は困難。国が前面に出る」とコメントした。既に遅きに失した感はあるが、安倍政権は汚染水対策に限らず福島第一原発事故処理を東京電力に丸投げするのではなく、政府主導で確実に進めて行く必要がある。

そもそも福島第一原発事故処理の具体的中身とは?

福島第一原発事故処理という言葉を目にする機会は多い。しかしながら、その具体的中身に言及した記事を読む事は、私を含め殆どないのではと思う。飽く迄個人的な推測であるが、大別して、今回の「汚染水対策」、「廃炉」、「汚染地域の除染」、「近隣地域への賠償」辺りが主要業務かと思う。業務は多岐に渡り、廃炉が終了するまでには今後何十年もかかる。事故処理コストは恐らく天文学的数字となり、処理を誤れば日本の国家財政を震撼させる事態もあり得る。

果たして東京電力にそれが出来るのか?

本来は出来るからやらしているはずである。しかしながら、東京電力に限らず電力会社の仕事は、発電所を建設し、電気を作り出し、送電線網を完備して、企業であれ、一般家庭であれ、電気を必要とする所に必要とされるだけの電気を供給する事である。従って、今回東京電力が悪戦苦闘している「汚染水対策」、「廃炉」、「汚染地域の除染」、「近隣地域への賠償」については、達成のために必要な「技術」、「経験」、「実績」、「人材」が元々払底している。従って、幾ら原子力損害賠償支援機構経由必要な資金は供給するといっても元々無理のある話である。政府による東京電力への無責任な福島第一原発事故処理業務の「丸投げ」といって良いだろう。

何故こういう事になってしまったのか?

原発事故処理業務を進めるに際し、2011年4月の時点で時の菅政権が誤ったスキームを構築してしまった事に尽きる。詳しくは、東京電力をどうするか?を参照して戴きたい。掻い摘んでいえば、福島第一原発事故処理業務は多岐に渡り、且つ、一私企業に過ぎない東京電力に処理出来る規模で収まる話ではない。そして、問題はスキームが賠償の実務を担当する東京電力と賠償の原資を調達、供与する賠償機構の2重構造であり、結果、東京電力は親方日の丸で言われた通り支払し(自分の懐は痛まないので)、一方、賠償機構は東京電力の求めに応じ幾らでも資金の提供に応じてしまうであろう危惧が払拭出来ない事である。結果、賠償交渉は長期化し、金額も天文学的に膨張する事になる。既に、現時点で政府から東電への賠償支援の総額は3兆円を超えた。こういう「管理者不在」の無責任体制を放置すれば賠償支援の総額はまるで雪だるまの様に膨れあがり、現行スキームの将来の電力料金値上げで回収するというのは所詮絵に描いた餅となり、結果、日本のそれでなくとも厳しい財政を直撃する事になる。

現行スキームが構築された、菅政権下2011年4月の時点では世の中は未だ3.11によるパニック状態を引きずり正常な判断が出来なかった様に記憶している。放射能に対する不安と恐怖から国民は一種のヒステリー状態に陥っており、こういう間違ったスキームによるなし崩しの東電国有化を傍観してしまったのだと思う。とはいえ、1年後の2012年6月ともなれば、日本社会はある程度落ち着きを取り戻し、東京電力をどうするか?(続編)で紹介した様に、「電気料金審査専門委員会」委員長の安念潤司氏より現行スキームの矛盾を指摘する問題提起がなされている。しかしながら、野田政権はその意味を理解する事なく放置してしまった。

それでは安倍政権はどうすべきなのか?

前政権(菅政権)の誤りを正すしかない。もっと具体的にいえば、現行スキームが間違っているのでこれを改正するという話になる。当事者能力の無い東京電力を原発事故処理業務の前面に立たすのはやめて、責任の所在が国にある事を明確にした上で、国が直接担当すべきである。一方、東京電力については、私は今でも現行法に基づいての破綻処理がベストであると考えている。しかしながら、諸般の事情によりこれが困難という事であれば、せめて東京電力を「発電」と「送電」の維持管理といった現業業務を担当する「存続会社」と、その他の「清算会社」に分離し、「清算会社」の資産を没収し、今後の賠償原資に充当さすべきと考える。東京電力の責任と補償に一旦区切りを付けた上で、責任を政府に一元化して、分り易い形で原発事故処理業務を再スタートするという事である。

The Huffington Post  投稿日: 2013年09月06日 13時35分
② 汚染水漏れ「福島の状況は深刻」英独の専門家
    http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/06/fukushima_leak_nuclear_experts_warn_n_3877586.html

福島第一原発事故をめぐっては、矛盾する報告書が飛び交って混乱を招いてきた。原子力の専門家たちは、「汚染水が漏れた問題の深刻度については、誰にも本当のところがわからない」と強調している。

福島第一原発は、2011年3月に発生した地震と津波によって電源を喪失して冷却が止まり、原子炉のメルトダウンが起きた。同原発を運営する東京電力は、溶けた核燃料を冷やすべく必死で注水作業を行っている。

汚染水は1日400トンの割合で増加し、発電所に設置された1000個以上のタンクには、現在合計で33万5000トンの汚染水が貯蔵されている。そして、これらのタンクのいくつかから、汚染水が地上に漏れ出している。

東京電力は先月、2011年3月の事故以来これまででもっとも深刻な状況として、敷地内にある貯蔵タンクから300トンの高濃度放射能汚染水が漏れたことを認めた。

ドイツ出身で、フランス政府やドイツ政府への助言も行ってきたエネルギー問題のコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、事態は「われわれが実際に認識しているよりもはるかに悪い状態」に発展していると述べている。

シュナイダー氏はハフィントンポストUK版の取材に対して次のようにコメントしている。「現在、数百という問題が山積みになっている。温度、被ばく線量、被ばくした人数、これらすべてのデータに不備がある。われわれはまだ何も把握できていない。一般市民が理解しているよりも、はるかに悪い状態だ」

シュナイダー氏は、現在の状況を引き起こしている原因は、日本政府と東京電力が、問題の深刻さを認めることを拒否していることにあると主張する。

「現在の課題は、彼らの現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている」

日本政府は5日、原発のタンクからの漏えいを阻止し、高濃度汚染水を処理するための対策に470億円を投入すると発表した。投入資金の大部分は、摂氏マイナス40度の冷却材を入れた管を使って最深30メートルまで地盤を凍らせる「遮水壁」(日本語版記事)の建設に使用される。

理論的には、この遮水壁が汚染水の漏えいを阻止するほか、放射性物質が大量に検出されている原子炉とタービン建屋に地下水が流入するのを防ぐ役割を果たすことになる。

しかし、今回の決定は、国際オリンピック委員会(IOC)が2020年夏季オリンピックの開催地を東京、イスタンブール、マドリードの中から選定する数日前に発表されたこともあり、「原発事故による安全性の心配はない」とアピールするためのものではないかと見られている。

シュナイダー氏はこう述べている。「遮水壁のプロジェクトは、画期的な対策案が存在するとアピールするために考え出されたものだ。日本政府はオリンピック開催地決定の数日前になって、このプロジェクトに470億円もの資金投入を決定した。しかし、実用的な面から考えれば、この対策は非常に疑わしく、信頼性が高いとはいえない。長期的に持続可能とはいえず、この壁に効果があるかどうかは誰もわかっていない。パニックが引き起こした反応と言える」

氷壁の維持は非常に難しく、ひとたび停電が起きれば「すべてだめになってしまう」可能性がある、と専門家たちは指摘する。

原子力のエンジニアでコンサルタントも務める英国のジョン・ラージ氏は、この技術は小規模な汚染を管理するためにしか使用されたことがないと指摘し、今回の頼みの綱とするのはリスクが高すぎると述べる。

「彼らは放射性物質を貯蔵する巨大なタンクの建設を計画しているが、この氷壁が崩壊してしまえば汚染水は自由に動き回ることになる。氷壁は脆弱であり、ましてこの規模のものは前例がない」

ラージ氏は、矛盾した報告書が「飛び交ってきた」原因について、東京電力と日本政府という2つの情報源だけに頼っていることだと指摘する。「これらの情報は矛盾を含み、混乱している。それに、信用できないと感じる。彼らの真意が何であるか、疑わざるを得ない」

シュナイダー氏も、問題はもはや誰も東京電力や日本政府を信頼していないことだと話す。「日本の人々が、彼らの主張は信用できないと感じるのはもっともなことだ」

The Huffington Post 投稿日: 2013年09月07日 16時53分
③ 汚染水漏れ 「Nature(ネイチャー)」が日本政府の福島第一原発の対応を批判
    http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/07/nuclear_error_nature_n_3884364.html?utm_hp_ref=osensui

科学雑誌のネイチャー(Nature)が、9月3日に掲載した福島第一原発に関する論説が話題になっている。日本政府の行動の遅さと、情報公開のおそまつさを指摘する厳しい内容だ。思想家の内田樹氏は、「自然科学のジャーナルが一国の政府の政策についてここまできびしい言葉を連ねるのは例外的なこと」と、同記事の内容を紹介している。

【原発汚染水・関連記事】

  イ •【福島原発 汚染水漏れ】「日本人は助けを求めるのがヘタ」と海外から懸念の声も
  ロ •福島原発から汚染水流出 海外紙はどう伝えた?
  ハ •汚染水漏れ「福島の状況は深刻」英独の専門家
  ニ •汚染水、タンク4か所以外に配管からも漏洩 東電、受け皿を置いて対策


ネイチャーの指摘する内容はどのぐらい厳しいものなのか。

記事は「Nuclear error」と題され、「日本はもっと世界に助けを求めるべきだ」という副題がついている。福島第一原発事故の事故は東京電力の手に負えないほどのものとした上で、政府が先頭に立って対応するということを決めた時期が遅すぎると非難している。また、漏れた汚染水の放射線量が、最初に報道されていた状況よりも18倍も高かったことや、報道が遅れたこと、監視体制の甘さなどを挙げ、情報に精通した海外の専門家に助けを求めるべきと助言している。

日本が海外の力を借りるべきとする意見を出しているのは、ネイチャーだけではない。

ドイツ出身のエネルギーコンサルタント、マイケル・シュナイダー氏は、ハフィントン・ポストUK版の取材について、「現在の課題は、彼ら(日本政府)の現実逃避的な姿勢を崩すことだ。これは組織的な現実逃避だ。ここでは日本の持つプライドが問題になっているが、プライドが現実逃避の態度へと変わってしまうと、このような問題は本当に危険なものとなる。彼らは人々を、高まり続けるリスクにさらしている」と述べている。

アメリカの科学者、チャールズ・ファーガソン氏も、ロシアやノルウェーには、汚染水が海洋生物にどのように影響があるかを調べる専門家がいることなどを挙げ、日本が他の国から多くの専門家を呼び込むべきだということに同意している。

また、ロシアの国営原子力発電所操業会社ロスエネルゴアトムの第一副社長、ウラジミール・アスモロフ氏は、「原子力業界はグローバル化しており、事故が国内でとどまることはない。国際的な問題だ」と述べ、ロシアとしても支援する用意があると述べたという。

ネイチャーは、福島沖の海洋汚染の問題を挙げ、安倍首相が掲げる科学振興に言及して次のように述べている。

安倍首相と政権は、科学振興を推進すると述べている。世界中の研究者が、(汚染された海洋データを)調査しシェアしていくことを支援するべきではないか。チェルノブイリの事故後にはこのような機会がなかった。しかし、福島ではまだ遅くはない。 (ネイチャー「Nuclear error」より。 2013/09/03)

東京電力は、相澤善吾副社長が8月21日の記者会見において、海外を含む国内外の叡智を結集して汚染水の対応にあたると話している。一刻も早い対応が期待される。

NewSphere
③のイ 「日本人は助けを求めるのがヘタ」 福島原発の汚染水漏れに海外から懸念の声も
    http://news.livedoor.com/article/detail/7979234/

 22日、福島第1原子力発電所の汚染水貯蔵タンクのうち2個の底付近で、乾燥地としては初めて、1時間あたり70~100ミリシーベルトの高放射線領域が発見された。100ミリシーベルトは、作業員の5年分の被爆許容量に相当する。

 20日には貯蔵タンクからの高レベル放射性水約300トンの漏出が公表され、他の貯蔵タンクにも漏出があるのではないかとの懸念が持ち上がっていた。ただし今回の貯蔵タンク内は満水で、漏水は確認されなかった。

 各紙は、東京電力の危機対応能力が一層疑われ、政府の介入強化が求められていると報じた。

【実態は把握不可能】

 BBCは、コンサルタントのミクル・シュナイダー氏やウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー氏ら専門家の意見として、実態は、東電や日本政府に「信じさせられていたよりもずっとひどい」可能性があると示唆した。

 山側から供給され続ける地下水に、タンクだけでなく地下室や、施設各所の確認不能な亀裂からの汚染水が混入し、その総量は把握できない状態にある。水を汲み上げても貯水タンクには限度があり、どうしても一部は海に達して、魚介類などを汚染する。放射性セシウムなどの一部は地層で濾過されるが、ストロンチウム90など流動性の高いものはすり抜ける。

 また、使用済み核燃料棒を保管しているプールについても、プールに接近して確認できない以上、亀裂が存在する可能性がある。使用済み核燃料棒は、チェルノブイリで爆発時に放出されたよりもはるかに多くの放射性セシウムを含んでいるという。

 福島原発について国際的タスクフォースの結集を呼びかけているシュナイダー氏は、「日本人は助けを求めるのが下手だという問題を抱えています。それは大きな間違いです。彼らにはその助けが、どうしようもなく必要なのです」と語っている。

 また、村田光平・元駐スイス日本大使は、東京オリンピック招致の中止を求めている。国連事務総長への書簡で村田氏は、東電が発行する公式の放射線数値は信頼できないと述べたという。

【政権の原子力セールス路線にも打撃】

 ブルームバーグは、24日から原子力技術の売り込みのため中東に向かう安倍首相の経済戦略にとっても、打撃だと論じた。安倍政権は原子炉再稼働により、円安の副産物であるエネルギー輸入コストの削減も狙っている。

 安倍政権は発足以来50%以上の支持率を維持しており、先週の時事ニュース調査でも54.2%となっている。しかし支持の源は経済政策であり、消費税増税で経済成長が阻害されないためにも、原子炉再稼働は死活的に必要であるという。

 それに対し、7月時点の世論調査でさえ、日本人は再稼働に反対51%、賛成40%であった。上智大学の中野晃一教授は、「安倍政権は肩をすくめて、事態は現在制御できていると言い、施設の再稼働を推進し続ける誘惑に駆られるかもしれません」、「漏出がもっと深刻であることが示されれば、それは大衆の反発と国際的な批判の観点から、全く見当違いのアプローチとなるかもしれません」と懸念している。

newsphere
③の(イの続) 福島第一原発、燃料棒抜き取りへ 安全アピールする東電、懸念指摘する海外紙
    http://newsphere.jp/national/20131107-4/?cpno=1200746581

 福島第一原発4号機解体に向け、1000本を超す燃料棒の抜き取り作業が始まる。BBCが「並外れて繊細で危険な仕事」と評している作業だ。

 事故当時、4号機はたまたまメンテナンス中で燃料棒は格納状態にあったため、1~3号機のようなメルトダウンは免れた。その代わり燃料棒貯蔵プールには大量の瓦礫が落下しており、抜き取り作業をより困難なものにしている。

【「これまでの同社の危機対応」への不信】

 テレグラフ紙は、東京電力による英語解説動画を伝えている。動画は計画の周到さを謳っている。まず建屋を補強し、貯蔵プール内の瓦礫を撤去したうえで、プール内で燃料棒を特別製のカスク(密閉容器)に移し替える。燃料棒22本ずつを納めたカスクは道路または鉄道で恒久貯蔵プールまで、放射線を漏らすことなく輸送される。使用される各種クレーン類は東日本大震災規模の地震が再発しても耐えられる頑強なもので、ワイヤーの過負荷を検知する機能もある。燃料棒は持ちあげに耐えられるかの状態検査もされている、という。

 これに対しBBCは、燃料棒に損傷があっても遠隔検査では発見できていない可能性や、カスクの耐水性に問題があるなどで燃料棒が空中に露出する可能性を懸念する。燃料棒が水中から空中に露出すれば、過熱や放射線発生の危険がある。東京電力は、クレーンの能力には余裕があり、また衝突試験の結果、万一カスクを落としても変形はするかもしれないが密閉が破られることはない、と主張している。BBCは「これまでの同社の危機対応に大衆がここまで怒っている以上」、素直には信用されないだろうとの見方だ。

 カスク1杯分の抜き取りには7~10日を要するという。また経済産業省当局者によると、恒久貯蔵プールの想定寿命は10〜20年間とのことだ。

huffingtonpost
③のロ 汚染水 流出 福島原発から 海外紙はどう伝えた?
  福島原発、高濃度のセシウム検出をめぐる海外紙の報道

    http://www.huffingtonpost.jp/2013/07/11/fukushima_n_3582817.html

 原子力規制委員会は10日、福島第1原子力発電所の観測用井戸から高濃度のセシウムが検出され、汚染水が海洋に流れていた可能性がある事を発表した。規制委は、汚染水の流出は震災後2年以上にわたって続いていたとみている。
 東京電力9日、高濃度のセシウム134、137が検出された事を発表した。専門家はこの流出による健康被害を測定するのは難しいとしているが、これらは発がんリスクを高めるといわれている。
 規制委の田中委員長は、東京電力の提示するデータや対策へ難色を示しており、汚染水の流出に関しては、「早急に対応し、食い止めるべき問題」としながら、「今日明日にでも解決策を見いだすのが難しい問題」との見解を示しているという。
 東京電力は、田中氏の発言に対してコメントはしていない。

【東電の取り組みは限界?】

 東京電力はこれまで、隣接する海洋への汚染水流出を食い止めるべく、様々な策を講じてきた。
 現在、総容量350,000トンのタンクに汚染水を貯蔵している。ただ、現在貯蔵量は310,000トンに及ぶ。東電も政府関係者も、継続的な対処策ではないとしながらも、長期的な解決策はないとみている。
 また、3月に試運転が行われた多核種除去設備(ALPS)の開発がある。これは汚染水から最大750トン/日の放射物質の除去を可能とする。政府と東電によると、この設備は現在のところ順調に稼働し、汚染水からトリチウム以外の放射能物質を検出できないレベルまで除去しているという。なおトリチウムはセシウム等と違い、健康被害がないとされている。
 10日の会見で東電は、なぜここ数週間で放射能が多く検出されたのか分析中であると発表した事をニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。

【地元の、そして隣国への影響】

 福島第一原子力発電所の事故以来、近海での漁は禁止されている。昨年秋に、ある研究グループが発表した調査結果では、沖で採取した一部の魚からは高レベルの放射能が検出されたという。
 一方、日本政府のデータでは、原発近海で採取された魚の汚染レベルは低いとされていると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 東電は、4月に低量の放射能を含む水を海に流すための「地下水バイパス」の承認を申請しているという。今回発表された事実はその計画に反対する地元の漁師の助けとなるだろう、とロイターは伝えている。

 なお中国と韓国は汚染物質の流出に関心を寄せている。ただ10日、中国外務省の報道官は太平洋への汚染物質の流出の報道は知らなかったとコメントした。また韓国当局の職員は、自国で発売されている魚介類から、基準を超える汚染物質は検出されていない、と語った事をロイターは報じている。

③のハ 汚染水漏れ「福島の状況は深刻」英独の専門家
     ↓
      【福島原発の関連記事】の ② と同じ内容


huffingtonpost
③のニ 汚染水、タンク4か所以外に配管からも漏洩 東電、受け皿を置いて対策
    http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/01/fukushima_polluted_water_n_3853600.html

東京電力福島第1原発で放射能汚染水を保管しているタンクから水漏れがあった問題で、東京電力は9月1日、タンク間をつなぐ配管から90秒に1回、汚染水が滴下していることを確認したと発表した。配管内には約60リットルの汚染水がたまっているとみられる。時事ドットコムが伝えた。

滴下したのは「H5区画」のタンク2基をつなぐ配管部。300トンの汚染水漏れが発覚したタンクから南西に約100メートルの場所にある。福島第一原子力発電所の汚染水漏れ事故で、東京電力はタンク周辺から最大で毎時1800ミリシーベルトという高線量の放射線が観測されたと発表した。9日間前の測定から線量が急増していた。東電は配管下に受け皿を置くなどの対策を講じた。

タンク4か所から毎時1800ミリシーベルト「4時間浴び続ければ死ぬ」

東電は8月31日、敷地内タンク群の4か所で高線量を確認したと発表した。2か所はこれまでに高い線量が確認されていた場所だが、線量が上昇し、最大値は毎時1800ミリシーベルトだった。残りの2か所は今回、新たに判明した。

福島民報によると、線量が上昇した2か所は「H3」エリアのタンク群。22日の調査で同100ミリシーベルトの場所が同1800ミリシーベルト、同70ミリシーベルトの場所が同220ミリシーベルトになった。東電によると、前回は最大100ミリシーベルトまでしか測定できない機器で調べたため、以前から100ミリシーベルト超だった可能性もあるという。

近畿大学の伊藤哲夫教授(放射線生物学)は、毎時1800ミリシーベルトという水準について、「4時間浴び続ければ死というものしかなく、手当てしなければ、30日以内に100%の方が亡くなる」と述べ、非常に高いレベルだとの認識を示した。

東電によると、タンクの水位に目立った変化はなく、堰外への漏えいはないとしている。しかし、伊藤教授は汚染水を貯蔵するタンクの構造に問題があり、「すごく心配だ」と話す。漏えいの起きたタンクは鋼板の板をボルトで留め、接合部はパッキンで埋めた「フランジ型」と呼ばれる円筒型のタンク。

同教授は、「本来ならば溶接して非常に長く持つタンクを作るのが当然だが、汚染水がどんどん溜まるということで、急いでボルト締めのタンクを沢山作った」と指摘。寒暖で膨張したり収縮するため、シール部分が長期間もたないという欠点があり、「次から次へと漏えいしている」と分析する。さらに、丈夫な溶接型タンクに取り替えていく必要があり、東電に任せるのではなく、「金銭的、経済的に保証できる国が率先して指導すべき」だとの見解を示した。

タンク付近の排水溝からストロンチウム、トリチウム検出

また東電は1日、約300トンが漏えいした「H4」というタンク群に近い排水溝で、ストロンチウム90(法定基準は1リットル当たり30ベクレル)などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり920ベクレル検出されたと発表した。

47NEWSによると、検出されたのは「H4」南側の2本の排水溝が合流する付近。8月31日に水を採取した。22日の採取では580ベクレルで、上昇傾向にある。排水溝は直接、港湾外の海につながっている。

8月31日には、高濃度汚染水が漏れた地上タンクから約130メートル離れた地下水バイパス用の井戸で30日採取した水から、放射性トリチウム(三重水素)が最大で1リットル当たり900ベクレル(法定基準は同6万ベクレル)検出されたと発表している。2月に調べた水の検出値(同450ベクレル)と比べて倍増。

井戸は、原子炉建屋に流入する前の地下水をくみ上げて海に放出する地下水バイパス計画で掘った12カ所のうちの一つで、漏れたタンクから2番目に近い。

今回は2か所を検査した結果、タンクから最も近い井戸の水からも2月時点の5倍を超える同300ベクレルのトリチウムが検出された。

原発作業員「漏れる心配あった」 と証言

高濃度汚染水が漏れた問題で、約300トンが漏えいしたタンクの設置に携わった男性作業員が、1日までに共同通信の取材に応じ「次から次へとタンクを造らなければならなかった。品質管理より造ることが優先で『漏れるのではないか』との心配はあった」と証言した。男性は下請け会社の作業員として約2年前、タンク群の設置に携わった。



 11 10 (日) 許せない悪行 サイバー攻撃

朝日新聞デジタル> 記事 2013年11月10日05時00分
  脱原発団体にサイバー攻撃 33団体標的、一斉メール253万通
    http://digital.asahi.com/articles/TKY201311090598.html?ref=pcviewer

写真・図版サイバー攻撃の仕組み


 反原発や脱原発を訴える全国の市民団体に9月中旬から11月上旬にかけて大量のメールが一斉に送りつけられ、朝日新聞が調べたところ少なくとも33団体に253万通以上届いたことがわかった。専用のプログラムを使って操作された可能性が高く、特定の市民団体を狙った日本初のサイバー攻撃とみられる。▼39面=匿名の悪意満杯

 脱原発弁護団全国連絡会の共同代表で、市民団体の代理人の海渡雄一弁護士は、威力業務妨害容疑で刑事告訴を検討していることを取材に明らかにした。

 サイバー攻撃が確認されたのは、首都圏反原発連合(東京)など反原発・脱原発を訴える32の市民団体と「女たちの戦争と平和資料館」(東京)の計33団体。

 攻撃は9月18~19日に一斉に始まり、30日までの13日間で計210万通以上のメールが送りつけられた。「反原発教徒を皆殺しにしなければ世界平和はやってこない」といった文言が書かれたメールもあった。さらに10月24日~11月4日にも攻撃があり、2団体に43万通以上のメールが送りつけられた。

 朝日新聞が団体側から提供を受けた通信記録などを複数のセキュリティー会社に解析依頼したところ、メールマガジンや問い合わせ欄にアドレスを登録すると、登録確認のメールが返信される仕組みが悪用されたことがわかった。

 攻撃の手口は、(1)何者かがホームページなどで標的とする団体のメールアドレスを収集する(2)被害にあった別の団体の問い合わせ欄などに、攻撃用プログラムを使ってアドレスを1分間に2件から300件入力する(3)大量の登録確認メールが標的となった団体側に送られる、という流れだった。

 発信元のIPアドレス(ネット上の住所)をたどれなくする匿名化システム「Tor(トーア)」が使われていることも確認され、「DoS(ドス)攻撃」と呼ばれる活動妨害を狙ったサイバー攻撃であることがわかった。

 発信元を隠すトーアは、警視庁の国際テロに関する情報の流出事件などでも使われており、犯人の特定は困難とみられる。これまでのサイバー攻撃は、個人のネット銀行口座が狙われたり、機密情報や妨害目的で企業や省庁が標的になったり、というものがほとんどだった。

 (須藤龍也)

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  ①〈ZDNet Japan〉EMCのCISOが語る標的型サイバー攻撃対策(10/4)
  ②「やりとり」後に攻撃 新種のメール攻撃、国内で急増(8/22)
  ③〈日刊工業〉ソフトバンク・テクノ、標的型サイバー攻撃対策拡充−体制診断や復旧支援(7/9)
  ④〈日刊工業〉トレンドマイクロ、標的型サイバー攻撃を仮想環境で解析−企業向け、来月受注開始(7/3)
  ⑤〈BCN〉トレンドマイクロ、標的型サイバー攻撃の情報を集約して既存製品の防御能力を高めるツール(6/27)


①〈ZDNet Japan〉EMCのCISOが語る標的型サイバー攻撃対策(10/4)

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。今回は、米EMCのEdward Schwartz CISOと、米Cuncur TechnologiesのSteve Singh CEOの発言を紹介する。

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「標的型サイバー攻撃に対しては、予防だけでなく検知とその後の対応にも注力する必要がある」 - (page 1)

 EMCジャパンが9月30日、米EMCのセキュリティ部門RSAのバイスプレジデント兼CISO(最高情報セキュリティ責任者)であるEdward Schwartz(エドワード・シュワルツ)氏の来日を機に記者会見を開いた。同氏の冒頭の発言は、その会見で、標的型サイバー攻撃(APT)への対応について述べたものである。

 シュワルツ氏はこれまで情報セキュリティ分野で25年以上の経験を持ち、現在もCISOとして社内のセキュリティ対策を統括する一方、顧客企業のCISOにも幅広くアドバイスを行っているという。会見では、いま企業のセキュリティ対策で最も注目を集めているAPTをテーマに、最新事情を交えて自らの見解を語った。

 シュワルツ氏はまずAPTと企業の関係について、原因の大半は標的となる人物に起因する人間的要素が絡んでおり、セキュリティ部門が対処しきれるものではないからこそ脅威になっている、との見解を示した。

 同氏によると、具体的な攻撃手法としては、標的の人物に関係する内容でやりとりする「スピアフィッシングメール」、および標的の人物が関心を示すウェブサイトを改ざんしてマルウェアを感染させる「ウォーターホーリング(水飲み場型攻撃)」の2つで90%以上を占めるという。

 とりわけ水飲み場攻撃では、「外部でマルウェアに感染したコンピュータが企業のネットワークに接続され、侵入されるケースが多い」とし、侵入されるとマルウェアが動き出すとともに、攻撃者が企業のネットワーク内部にアクセスするための「バックドア」が埋め込まれる形になるため、対処が難しくなっていくと説明した。

 同氏によると、こうしたAPTに対しては、従来の予防型ソリューションだけでは限界があるという。「実際、米国の大手企業でもセキュリティ予算の7割が予防型ソリューションに充てられているが、こうした予算配分はもはや的外れだ」と指摘する。

 では、どうすればよいのか。その回答が、まさしく冒頭の発言である。同氏曰く、理想的なのは、予防、検知、検知後の対応にそれぞれ均等に投資することだという。

 せっかくの機会なので、あえてこんな質問をしてみた。「検知やその後の対応に注力するとしても、攻撃者とのいたちごっこは変わらないのではないか。APTの脅威を払拭する根本的な解決法はないのか」と。

EMCのCISOが語る標的型サイバー攻撃対策 - (page 2)

 同氏の答えはやはり「ノー」。ただし、「今やるべきなのは、検知やその後の対応を強化することだ。予防を含めてバランスよく対処することを訴求したい」と力を込めた。APTの脅威に対しては今後もタフな取り組みが求められそうだが、同氏のメッセージは耳を傾けるべきものだと感じた。

「新サービスを出張に関わるエコシステム全体に広げ、ビジネストラベル市場を革新したい」

 米Cuncur Technologiesの日本法人であるコンカーが9月17日、楽天トラベルと業務提携を結び、クラウド型出張・経費管理サービス「Concur Travel」日本語版サービスにおいて、楽天トラベルが提供する国内ホテル予約サービスとの連携機能を共同で開発することを発表した。

 冒頭の発言は、コンカーの社長、三村真宗氏や楽天トラベルの社長、山本考伸氏とともに発表会見に臨んだ米Cuncur Technologiesの創業者でCEOを務めるSteve Singh(スティーブ・シン)氏が、新サービスへの意気込みを語ったものである。

 両社では新サービスにおいて、国内最大級のホテル予約サイトである楽天トラベルの宿泊情報と、コンカーの出張管理クラウドを組み合わせることで、出張の多いビジネスマンにとって利便性が高く、企業においてもコストの可視化が可能となるソリューションを提供するとしている。

 Concur Travel日本語版は、出張予約・管理をサポートするサービスで、スマートフォンやPCから場所を選ばず社内規定に則った出張申請や航空券・ホテルなどの予約ができる。また、予約情報は自動的に経費管理サービス「Concur Expence」日本語版と連動して経費精算情報を生成できることから、出張に関わる全業務の効率化を図れるとしている。なお、楽天トラベルとの連携機能については今年内をめどに提供を開始する予定だ。

 楽天トラベルとの連携機能を含めた新サービスのさらに詳しい内容や特徴、業務提携の背景などについては関連記事を参照いただくとして、ここではSingh氏の発言に注目したい。

 Singh氏は会見で、「私たちはビジネス出張に関わるバイヤーやサプライヤーを1つのエコシステムとして考え、世界で初めて“The Perfect Trip”というビジョンを実現している」と自らのビジネススタンスを説明した。同氏が言うバイヤーやサプライヤーとは、ユーザーをはじめ交通機関、ホテル、旅行会社などを指す。その意味では今回の楽天トラベルとの提携もそのエコシステムの関係を深化させた格好といえる。

 「出張に関わるエコシステム」という発想がユニークだ。さまざまな業務フローを描いてみれば、「出張」のほかにもエコシステムを広げていける領域がありそうな気がする。そうした発想からまた新しいビジネスモデルが生まれるかもしれない。クラウドサービスはそれを具現化する有効な手段となるだろう。両社の会見でそんなことを考えさせられた。

②「やりとり」後に攻撃 新種のメール攻撃、国内で急増(8/22)

 【樫本淳】企業などが持つ情報を狙う「標的型メール攻撃」で、仕事の関係を装ったメールをやりとりして信用させた後に攻撃する「やりとり型」が、今年1~6月に33件あったことが22日、警察庁のまとめでわかった。この形の攻撃が国内で初めて確認された昨年1年間の2件から大幅に増えている。

 サイバー攻撃の被害実態を把握するため、防衛や原子力、宇宙関連の国内企業を対象に警察庁が2011年から行っている調査で判明した。

 やりとり型は、攻撃者が企業に、仕事や採用活動に関する内容を装ったメールを送付。担当者と何度かメールを交換して信用させた後、ウイルスに感染するファイルを添付したメールを送りつける。

 メールの文面は、33件のうち18件が社員の採用への応募や質問、9件が製品への質問など。感染させるためのファイルは、履歴書や質問書として添付されていた。すべて使い捨てのフリーメールアドレスを使って送られていたという。

 ある企業のケースでは、今年3月、「転職について質問があるのですが」とのメールが届いた。この企業では、ホームページに採用活動のためのメールアドレスを載せていた。メールの文面は違和感のない日本語で、差出人も日本人の名字だった。

 担当者が返信した数日後、「質問書を送る」とのメールが返ってきた。「問い合わせについて」という表題のファイルが2個添付され、ワープロソフトのワードを偽装したファイルにウイルスが仕込まれていたという。

 警察庁は、外部の不特定多数の人とメールをやりとりする場合は社内のネットワークから切り離したパソコンを使うよう、企業側に呼びかけている。

 警察庁のまとめによると、標的型メール攻撃全体では今年上半期に201件が確認された。前年の同時期に比べ351件減。昨年目立った複数の関係者にメールを送りつける「ばらまき型」が大幅に減少した。

     ◇

 〈標的型メール攻撃〉 仕事関係などを装ったメールを送りつけ、添付ファイルに仕込んだウイルスに感染させる手口のサイバー攻撃。感染すると強制的に外部のサーバーに接続され、情報を盗み取られるなどする。国内ではこれまでに、中央省庁や自治体、防衛関連など最先端技術を扱う企業が攻撃を受けている。

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③〈日刊工業〉ソフトバンク・テクノ、標的型サイバー攻撃対策拡充−体制診断や復旧支援(7/9)

 ソフトバンク・テクノロジー(SBT)は特定の企業や団体を狙う標的型サイバー攻撃の対策サービスを拡充する。企業の情報システムが不正プログラムに感染しているかどうか調べるサービスと、攻撃に対応する社内体制の診断サービス、攻撃による被害の復旧支援サービスを月内に始める。標的型サイバー攻撃が増加しており、新サービスを利用して情報セキュリティー対策を強化できる。今後3年間で100社への提供を目指す。

 SBTはコンピューターウイルス対策ソフトや外部との通信を管理するサーバのログ(履歴)をもとに、システムのウイルス感染の兆候を診断する。顧客からログの提供を受けて約1―2週間で分析する。料金は173万2500円から。

 社内体制の診断サービスは利用企業に情報セキュリティーに関連したヒアリングを実施。攻撃を受けた場合の情報漏えいや、ウイルス感染の経路特定などの対策状況を約1―2週間で報告書にまとめる。復旧支援サービスは、ハードディスク駆動装置(HDD)のレプリカを作成して分析し、ウイルスと思われる検体を提供する。利用企業が情報セキュリティー会社に検体をもとに定義ファイルを作成してもらい、自社の情報システムに適用する。料金は両サービスとも個別見積もり。

 SBTはゲームや電子商取引(EC)関連の企業、金融機関の利用を見込む。新サービスの提供を通じて、侵入防止システム(IPS)など、これまで販売してきたセキュリティー製品の拡販につなげる。

 標的型サイバー攻撃の手口が非常に巧妙で、被害を受けているのに気付きにくい。大手企業のグループ会社など中小企業が攻撃されるリスクも高まっている。

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④〈日刊工業〉トレンドマイクロ、標的型サイバー攻撃を仮想環境で解析−企業向け、来月受注開始(7/3)

 トレンドマイクロは標的型サイバー攻撃情報を集約・解析し、既存セキュリティー製品の防御能力を高める企業向け製品の受注を8月26日から開始する。顧客の利用環境に近い仮想解析環境で攻撃を解析し、危険性のあるURLやインターネット・プロトコル(IP)アドレスへの通信を自動的に遮断する。解析結果はデータベース(DB)として一元管理できる。1台の参考標準価格は3年保守版が1488万9000円、5年保守版1583万4000円。

 新製品は三つの主要機能を搭載しており、自社の既存セキュリティー製品と連携することでその機能を高める。脅威解析では一つの筐(きょう)体内に複数の仮想解析環境を構築し、1日約5万ファイルを処理できる。抽出した情報はDBに登録し、既存製品にフィードバックする。さまざまな攻撃特性に対して各企業ごとに最適な防御策をカスタマイズして提供する。

 トレンドマイクロはこの製品を含めた標的型サイバー攻撃対策製品で2016年までに年間売り上げ50億円を目指す。

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⑤〈BCN〉トレンドマイクロ、標的型サイバー攻撃の情報を集約して既存製品の防御能力を高めるツール(6/27)

 トレンドマイクロ(エバ・チェンCEO)は、刻々と変化する標的型サイバー攻撃の情報を集約し、同社の既存製品の防御能力を高める仮想解析型アプライアンス「Deep Discovery Advisor(DDA)」を、8月26日に発売する。

 連携する製品から不審なファイルや通信を収集し、ユーザー企業の環境に合わせてカスタマイズした仮想解析環境で動的に解析。不正と判断したURLやIPアドレスをデータベースとして自動的に蓄積・共有する。これによって、各製品が標的型サイバー攻撃で使用される不正な通信をブロックできるようにする。また、それぞれに発生した脅威の相関関係を洗い出し、攻撃の広がりや関連性を可視化する。

 「DDA」と連携できる製品は、エンドポイント保護の「ウイルスバスターコーポレートエディション」、サーバー保護の「Trend Micro Deep Security」、ネットワーク監視の「Deep Discovery Inspector」など。参考標準価格は、「ハードウェア3年保守版 新規」が1418万円/1台、「ハードウェア5年保守版 新規」が1508万円/1台。2016年までに年間売上げ50億円を目指す。(ゼンフ ミシャ)


朝日新聞デジタル> 記事(39面) 2013年11月10日05時00分
  匿名の悪意、満杯 1分にメール80通、
   「反原発教徒」 市民団体にサイバー攻撃

     http://digital.asahi.com/honshiimage/launcher.php?ap=OeDAKHKf6A9jLNt5vw71UnBkWzoXBciXMgjP5xgYiAwF9FWvlXGHr3XLtU3c0Tr%2BPNu0A0%2B7yQjxVR0HZrkn2VX%2BImOqzvfh4Y5qtFlBD0PWYDKyOnYOIh7wG4SGtfAFIsLjSoo3HdIlDk%2FODWhgFTXFfAdsspXMeoo8INbm1Ws%3D

写真・図版別の脱原発系団体のメールマガジンが悪用され、大量のメールを送りつけられた「福島原発告訴団」のパソコン=福島県三春町

 脱原発などを訴える市民団体を狙ったサイバー攻撃が明らかになった。送りつけられたメール253万通以上、悪意に満ちた文言もあった。だれが、何のために――。▼1面参照

 金沢市の「福島原発告訴団・北陸」。事務局長を務める林秀樹さん(62)が不審なメールに気づいたのは、9月19日だった。

 「ご賛同ありがとうございます」。パソコンを見ていると同じ件名のメールがみるみる増えていった。

 島根原発に反対の市民団体に賛同する御礼メール、東京の反原発団体のメルマガ登録の確認メール……。1分で80通のペース。自営業で仕事と兼用しているので、受信を止められない。

 送信が止まったのは9月30日。不審メールは約149万通に上った。「削除に追われ仕事にならなかった」。反原発運動に関わり40年近く。「大量のすしや高額請求書が届いた過去の嫌がらせを思い出した」

 「福島原発事故緊急会議」(東京)の海棠(かいどう)ひろさん(51)のもとには同じ文言のメール5千通近くが送りつけられた。「反原発教徒を皆殺しにしなければ世界平和はやってこない」と暴力的な言葉を浴びせかけられた。「人の感情がない。こんな妨害行為は初めてで、気持ちが悪い」

 犯人像について、取材に応じた市民団体の関係者はすべて、心当たりがないと首をかしげた。

 今回の攻撃では、問い合わせ欄などにメールアドレスを入力すると自動返信する仕組みが悪用され、一見すると標的にされた市民団体からメールが送られたような形になっていた。

 「反原発・脱原発系の団体同士の内輪もめを狙ったのか」。原発問題住民運動全国連絡センター(東京)の柳町秀一事務局長は憤る。

 メールの数が全体の6割超の「福島原発告訴団」は9月上旬、メディアへの露出が目立った。東京電力福島第一原発事故をめぐる東電幹部や政府関係者らの不起訴処分への抗議や、原発汚染水問題で東電幹部らの新たな刑事告訴。告訴団の地脇美和さんは推し量る。

 「反原発・脱原発系の活動をきちんとウオッチしている連中にも見える」

 ■市民団体、防御は手薄

 狙われた市民団体側にも「隙」があった。

 調査にあたった情報セキュリティー大手トレンドマイクロの岡本勝之さんは、サイバー攻撃で悪用されたメルマガ登録や問い合わせ欄に、攻撃プログラムを防ぐ「画像認証」を使えば防げた可能性を指摘する。

 画像認証とは、人が入力したかどうかを確認するため、画像に描かれた形のゆがんだ文字を見て、同じ文字を入力しないと登録できない仕組み。多くのネットサービスで採用しており、「原子力資料情報室」と「女たちの戦争と平和資料館」は攻撃後、画像認証を採り入れた。

 IT関連の仕事をしながら首都圏の反原発団体を支援する女性(36)は以前から危機感を持っていた。事務所にある1台のパソコンで支援者名簿作りからメールのやりとり、ウェブ作成まですべてやるからだ。

 「暗号化せずだれでも見られる状態のまま、名簿をメールで転送し合う。メールやウェブでウイルス感染し、情報を盗まれたら活動はできなくなる」

 米情報セキュリティー会社シマンテックの浜田譲治マネジャーは、サイバー攻撃の標的が大企業から中小企業にシフトしている現状を挙げ、「攻撃者は対策が弱いところを狙う」と説明する。「弱いと思われたら、攻撃者は必ず狙ってくる」

 (須藤龍也)

 ■「メール爆弾」90年代に流行

 今回使われた「DoS攻撃」は、サーバーに限界を超えるデータを送りつけ、動作停止を狙ったサイバー攻撃の一種だ。昨年9月、総務省や防衛省のサイトが閲覧しづらくなった時も中国国内から大量のデータが送りつけられた。尖閣問題との関連が指摘された。国際的ハッカー集団「アノニマス」が多用する攻撃手法でも知られる。

 今回と似た攻撃は、「メールボム」(メール爆弾)として1990年代に流行した。ほとんどが嫌がらせ目的だった。調査したネットエージェント(東京)の杉浦隆幸社長は、「古典的な攻撃で個人でも実行できるレベルだが、攻撃用プログラムを作るのは高い技術力がないと難しい」と話す。

 ■1万通以上のメールが送られた団体

  所在地と市民団体名             メールの数

【福島】福島原発告訴団           約14万7500

【東京】原発問題住民運動全国連絡センター       約1万
    首都圏反原発連合             40万以上
    再稼働阻止全国ネットワーク          約5万
    原発はいらない西東京集会実行委員会   2万9988
    たんぽぽ舎              25万2630
    山口あずさと原発ゼロにする会         約1万
    女たちの戦争と平和資料館       約1万5000

【石川】福島原発告訴団・北陸           約149万

【島根】さよなら島根原発ネットワーク     約3万6000     島根原発・エネルギー問題県民連絡会      約1万

【佐賀】玄海原発プルサーマル裁判の会         約2万

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【合計】(33団体)              253万以上