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折々の記 2013 ⑥
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】10/15~     【 02 】10/25~     【 03 】10/27~
【 04 】10/30~     【 05 】11/09~     【 06 】11/11~
【 07 】11/14~     【 08 】11/17~     【 09 】11/21~

【 07 】11/14

  11 14 原発「即ゼロ」首相に迫る
         小泉発言、政権を挑発 原発ゼロ―決断の環境「郵政よりいい」
         原発避難者ら不信と歓迎 会見で「原発ゼロ」
  
  11 14 (天声人語)秘密を扱う者は丸裸に  
  11 14 「知る権利、侵害の恐れ」 有識者から指摘
         (秘密保護法案)安全保障、秘密狭めるべきだ
         前泊博盛氏 秘密、極力限定すべきだ
  秘密保護法案審議
  11 14 良寛和尚辞世の句  
  11 00 COP19 日本の新目標に批判相次ぐ
         11月16日 COP19 日本の新目標に批判相次ぐ
         11月16日 環境NGOが日本に「特別化石賞」
         11月15日 温室効果ガス 3.8%削減の目標を決定
         11月13日 COP19 環境NGOが交渉進展を訴え
         10月01日 「どう向き合う?地球温暖化」


 11 14 (木) 原発「即ゼロ」首相に迫る 小泉元首相会見「決断すればできる」

朝日新聞デジタル> 記事 2013年11月13日05時00分

 小泉純一郎元首相(71)は12日、日本記者クラブで会見し、「首相が決断すればできる権力、それが原発ゼロの決断だ」と安倍晋三首相に原発即時ゼロの方針を打ち出すよう迫った。原発再稼働や核燃料サイクルに反対の立場を表明。世論の支持が広がれば、安倍政権が原発政策をまとめる上で、無視できなくなりそうだ。▼2面=政権を挑発、▼38面=道筋は

 小泉氏は会見で、原発ゼロの時期について「即ゼロがいい」と明言した。原発の再稼働については「そんなに多くは再稼働できないだろう。しかも、再稼働するとまた核のごみも増えていく」と反対の立場を鮮明にした。核燃料サイクル政策について「どうせ将来やめるんだったら今やめた方がいい」と中止を求めた。

 原発をめぐる今の政治状況について「野党は全部原発ゼロに賛成だ。自民党の賛否は半々だと思っている」との見方を示した。そのうえで、「首相が決断すれば、反対論者も黙る」と強調。「結局、首相の判断力、洞察力の問題だ」と述べた。

 エネルギー確保の代案を出さずに原発ゼロの主張をするのは無責任だとの指摘に対しても「原発ゼロという方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を出してくれる」と反論した。

 さらに、小泉氏は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場について「技術的に決着している。問題は処分場が見つからないことだ。10年以上かけて一つも見つけることができない。これから政治の責任で見つけなさいというのが、(原発)必要論者の主張。よっぽど楽観的で無責任だ」と述べた。

 小泉氏の発言について、菅義偉官房長官は12日の記者会見で、改めて原発を活用する政策を続ける考えを示した。ただ、安倍政権は発電量に占める原発比率をはじめ、原発に将来どこまで依存するか、方針を決められていない。

 政界引退後も発信力のある小泉氏の発言で「原発ゼロ」の世論に再び火がつけば、原発再稼働を織り込んだ政権のエネルギー政策に批判が高まる可能性もある。

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▼2面=政権を挑発
  小泉発言、政権を挑発
     原発ゼロ―決断の環境「郵政よりいい」 記者会見


 「安倍首相が原発ゼロにすると方針を決めれば、反対派はもうできません。反対は」

 記者会見に臨んだ小泉元首相の冒頭発言は1時間に及んだ。その中で安倍首相を名指しすること6回。現役時代のように大きな手ぶりを交えながら、歯切れ良く安倍氏に決断を迫った。

 安倍首相は9日のBS朝日の番組で「いま(原発)ゼロと約束することは無責任だと思う」と批判。「政治の師匠」(安倍首相)とも仰ぐ小泉氏の考えを受け入れる気配はない。

 小泉氏は「弟子」の姿勢を見越してか、会見では、安倍首相への硬軟を織り交ぜた訴えが続いた。

 「原発ゼロ」発言をめぐっては、高レベル放射性廃棄物の処分について批判が根強い。「これからメドをつけられると思う方が楽観的で無責任すぎる」と反論。一方で、原発ゼロについて「壮大な事業だ。夢のある事業。自然を資源にする事業だ。それに首相の権力をふるうことができる。こんな運のいい首相はいない」と説いた。

 話題は在任中の最大の山場だった郵政民営化にも及んだ。2005年の通常国会で法案は参院で否決。小泉氏は「郵政民営化の時よりも、はるかに環境いいですよ」と指摘。「野党は全部、原発ゼロに賛成。反対は自民党だけだが、本音を探れば賛否は半々だと思いますね」

 小泉氏の発言には「脱原発」を掲げる野党から「私たちとも接点がある」(志位和夫共産党委員長)と賛同の声があがる。衆参両院で過半数を握る与党に、攻め手が見いだしにくい野党には格好の材料だからだ。

 ただ、与野党ともに真意はつかみかねている。小泉氏は会見で新党結成や脱原発派との連携を提案されたと明かしたが、「それぞれの立場でやった方がいいんじゃないか」と述べるにとどまった。

 では、「原発ゼロ」をどう実現させるのか。小泉氏が会見で一貫していたのは、それをできるのは首相という権力者しかいないとの確信だった。小泉氏はこう力を込めた。

 「結局、首相の判断力、洞察力の問題だと思いますが、いずれにしても、そういう方向にかじを切ってもらいたいなと思います」

 ■原発政策、自民内に異論も

 「小泉さんは、信念に基づいて発言をし続けていると思いますよ」

 小泉氏の会見終了から約1時間後。菅義偉官房長官は会見で語った。「政府として責任あるエネルギー政策を推進していくことがきわめて大事だ」と繰り返した。

 東京電力福島第一原発事故の対応に追われる政権にとって、「脱原発」を迫る小泉氏は厄介な存在だ。政権は、安全性が確認された原発は再稼働する方針。経産省が近くまとめるエネルギー基本計画でも、原発活用を前提にする方向で、すぐに政策転換できる状況にはないのが実情だ。

 「必要論者」と指摘された側も黙ってはいない。小泉政権で官房長官を務め、原発の再稼働を進める議員連盟の会長を務める細田博之幹事長代行は12日、「一石を投じたことは評価するが、正しくない結論だ。石炭火力への依存は温暖化を大きくする。世界の流れは感覚的なものではなく科学的なものだ」と断じた。

 だが、小泉氏の発信を無視してばかりもいられない。石破茂幹事長は「(政権・与党は)原発依存度を下げていく。めざす方向性は一致している」と言及。党内で小泉氏の過去の発言の検証にとりかかったものの、正面から反論しようという動きは見られない。

 一方、小泉氏が「賛否半々」と指摘したように、原発事故後、自民党内にも政権の原発政策に疑問を持つ議員が増えつつある。以前から脱原発を主張する河野太郎衆院議員だけでなく、都市部の当選1回生の若手議員らが中心だ。まだ存在感を示すほどではないが、国の核燃料サイクルを見直す勉強会を立ち上げ原発政策の見直しを議論している。

 ■電力、強い危機感

 「どういう根拠で発言しているのか。日本のエネルギー事情を理解した上での発言とは思えない」

 大手電力の幹部は12日夕、困惑を隠さなかった。電力業界は、発信力がある小泉氏の「原発ゼロ」発言に危機感を強めている。

 大手電力10社の2013年9月中間決算は、5電力が経常黒字となり改善が目立った。ただこれは、電気料金を値上げした効果だ。

 業績を改善しようと、各社は原発再稼働を急ぐ。原発が1基動けば、火力発電の燃料費を年間1千億円規模で減らすことができ、利益が増えるからだ。電力大手幹部のなかには、再稼働できない状態が続けば、電気料金の再値上げが必要だと強調する声もある。

 そんななかでの小泉発言に、電力大手は戸惑う。10月末の決算会見で、東電の広瀬直己社長は小泉発言について「そういうお考えは小泉元首相だけではないわけで、それ以上はない」と素っ気なく答えるにとどめた。

 ただ、経済界全体でみれば、原発再稼働で一枚岩ではない。今年3月の政府の産業競争力会議では、三木谷浩史・楽天会長やローソンの新浪剛史社長は、原発再稼働に慎重な姿勢だった。今後、こうした声が強まる可能性もある。

 小泉氏の原発ゼロ論は、皮肉にも経済界が火を付けた面もある。きっかけは、フィンランドにある原発ごみの高レベル放射性廃棄物最終処分施設「オンカロ」の視察だ。8月、評論家の田中直毅氏の声がけで、日立製作所、東芝、三菱重工業の原発メーカー3社の幹部らが同行した。そこで小泉氏は、最終処分がいかに難しいかを知り、「原発ゼロ」への思いを強くした。

 小泉元首相の姿勢を、原発メーカーのある関係者は複雑な思いでみつめ、原発を推進する安倍政権にすがる姿勢をみせる。「現政権は原子力に対する覚悟がある。冷静な対応をしてもらえるだろう」

 ■原発議論、広げる契機に

 《解説》小泉元首相の発言が注目されるのは、多くの人が感じるもやもやした思いを代弁しているからだ。想像を絶する原発事故が起きたのに、何も変わらないまま、事故と被災者を忘れたかのような空気が流れ始めている。「変えなくてはダメだ」と多くの人が思っている。

 今後のエネルギー政策について、政府はどの程度原発に依存するか明確にしていない。事故から2年8カ月。なし崩しで原発の再稼働の準備が進められている一方で、被災者はいまだに中ぶらりんの状態だ。いつ帰郷できるのか、もう帰郷できないのか、はっきりしない。

 小泉氏はフィンランドの高レベル放射性廃棄物処分場を視察したことがきっかけで考えを固めたという。世界3位の原発大国の日本では、すでに多くの使用済み燃料がたまっている。小泉氏が主張するように、すぐに原発をゼロにしたとしても、解決にはけた違いに大きな仕掛けが必要だ。

 表で議論しないまま物事を決める、今の日本の政治のやり方に、小泉氏が自分の影響力を自覚して「ノー」を突きつけた。発言の後ろには多くの共感がある。議論を社会全体に広げるべきだ。(竹内敬二)

 ■小泉元首相の会見での発言(要旨)

 小泉純一郎元首相が12日に行った記者会見の要旨は以下の通り。

 【原発ゼロ】読売新聞に小泉原発ゼロ発言を批判する記事があった。ゼロにした後どういう代案があるのか。原発ゼロという方針を政治が出せば、必ず知恵のある人がいい案を出してくれるというのが私の考えだ。国会議員だけではなく、専門家の知恵を借りれば、想像できないような代替エネルギーが確保できるのではないか。

 原発推進論者は、核のごみの処分は技術的に決着している、問題は処分場が見つからないことだと言う。ここからが私と違う。必要論者はメドをつけるのが政治の責任ではないかと言う。私の結論はこれから日本で核のごみの最終処分場のメドをつけられると思う方が楽観的で無責任すぎる。

 首相が決断すればできる権力、それが原発ゼロの決断だ。私の郵政民営化のときよりも、はるかに環境がいい。野党は全部、原発ゼロに賛成だ。原発ゼロ反対は自民党だけだ。もし安倍首相が原発ゼロにすると決めれば、反対派はもう反対はできない。

 しかも壮大な事業だ。夢のある事業。自然を資源にする事業だ。それに首相の権力をふるうことができる。こんな運のいい首相はいない。これは結局、総理の判断力、洞察力の問題だと思うが、いずれにしても、そういう方向にかじを切ってもらいたいなと思います。

 【中国】私が辞めた後、首相は一人も靖国神社に参拝していない。それで日中問題はうまくいっているのか。首脳会談できているのか。そうじゃないと分かっただろう。靖国参拝を批判する首脳は中国、韓国以外いない。中国には今の安倍首相の対応でいい。

 【沖縄】沖縄の基地負担軽減、日本の安全保障、海洋国家日本としてメガフロート(海に浮かべる人工の浮島)を真剣に政府が検討した方がいい。

 【質疑応答】

 ――原発ゼロの時期は?

 即ゼロがいいと思う。再稼働をするにしても、そんなに多くは再稼働できないだろう。しかも、核のごみも増えていく。最終処分場が見つからないだろう。だったらすぐゼロにした方がいい。

 ――核燃料サイクルも含めて?

 もちろん。どうせ将来やめるんだったら今やめた方がいい。

 ◆安倍政権の原発政策の選挙公約(2013年)

 【エネルギー政策】
   ・多角的な供給構造を確立
   ・原子力技術の輸出支援を強化

 【最終処分場】
   ・高レベル放射性廃棄物の研究開発を加速

 【再稼働】
   ・安全性は原子力規制委員会の判断に委ねる
   ・地元自治体の理解が得られるよう最大限努力

 【代替エネルギー】
   ・今後3年間で再生可能エネルギーの導入促進



▼38面=道筋は
  小泉さん、道筋は?
      原発避難者ら不信と歓迎 会見で「原発ゼロ」


 福島県双葉町から福井県坂井市に避難している学習塾経営の川崎葉子さん(63)は、小泉氏の主張に懐疑的だ。「今それを言えば世間に受けるだろう。いいとこ取りじゃないか」

 自宅は東京電力福島第一原発から約3キロ、帰還困難区域に入る。12日には一時帰宅した。荒れた我が家に戻るたびに心がふさぐ。小泉氏は首相時代、原発を推進してきた。「そこまで言うなら、これまでを反省し、具体的に原発停止までどういう道筋にするかを語って欲しい」

 小泉氏は、フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」の視察をきっかけに考えを変えたという。ここには「核のゴミ」が10万年も埋められる。

 東電の元役員の一人は、「勘のするどい人だから現地で処分の大変さを感じたのだろう。しかし、原子力は国のありようにもかかわる多元的、複合的な問題で、シングルイシューではない。郵政とは違う」。

 「原発銀座」と言われる福井県敦賀市。全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)の会長も務める河瀬一治市長は12日、取材に「即時原発ゼロ」を求めたことについて「無責任」と言い放った。「急に止めたら(原発関連で働いている住民の多くが)生活できない。地元をほったらかしにした発言だ」と批判した。

 一方、反原発運動を続けてきたNPO「原子力資料情報室」の山口幸夫共同代表(75)は、小泉氏の「転向」を歓迎した。「額面通りに受け止めたい」

 原発を推進してきた学者や技術者で、その後に原発反対に転じた人を何人も知っている。自身もオンカロのドキュメンタリー映画を見て、「地下深くに10万年も埋める」事業の不条理さを感じた。「あとは若手・中堅の議員たちがどう受け止めるかに期待したい」

 ■潔い「転向」は評価する 自説を変え批判された中谷巌さん

 経済学者の中谷巌さん(71)は1年半ほど前、あるパーティーの席で小泉元首相が関西電力幹部に「原発は人類の将来のために良くない」とはっきり主張していたのを覚えている。

 中谷さんは5年前、構造改革推進を唱えたそれまでの自説を変え、著書「資本主義はなぜ自壊したのか」などで、行きすぎた新自由主義を是正するよう訴えて「転向」と批判された。

 「誰でも気づきがあれば考え方も変わる。身の安全には黙っている方がいいが、世の中がゆがむと気づいた時、自分の考えは間違いだったと表明することも意味がある。小泉氏は、立場が不安定になるのにもかかわらず、潔く脱原発を訴えた。その点は評価したい」という。

 ■一点突破は大したもの かつて批判した小林よしのりさん

 作品で脱原発の立場を鮮明にしている漫画家の小林よしのりさん(60)は「自分は構造改革では小泉氏の政策を批判したが、脱原発に関しては立派な主張だと思う。思い込んだら絶対に曲げない一点突破のパワーは大したものだ」と評する。特に再生エネルギーへの夢を語る小泉氏の言葉に共感するという。

 小林さんは、従来の脱原発運動などにも注文をつける。「脱原発派は昨年の総選挙で分裂して失敗した。『小泉政権で格差が拡大したから、小泉氏の意見は信じられない』という偏狭なことを言わず、共闘するべきだ。ただ、小泉氏は高齢で、今さら自分が政治に絡もうとは考えていないのでは。現職の自民党議員の行動に注目したい」

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朝日新聞デジタル> 記事 2013年11月13日05時00分
  (天声人語)秘密を扱う者は丸裸に

 これは冗談なのだろうか。本紙が入手し、きのう報じた「身上明細書」という書類がある。防衛秘密をあつかう自衛隊員について、任務に適格かどうかを調べるため本人に書かせるものである。その記入例に登場する架空の人名を見て驚いた▼本人は「保全太児(ほぜんたいじ)」、兄は「保全完璧(かんぺき)」だ。ところが音信不通の兄は「保全厭蔵(いやぞう)」、離婚した元妻との間の子は「秘密広芽(ひろめ)」とされる。つきあいの途絶えた親族はいかにも好ましからざる名前にする。なんとも評しがたいセンスである▼「秘密出版」なる会社を自己都合で退社、という職歴の記入例はだめとされる。給与面の不満とか具体的に理由を書け、とある。交友関係も飲み友だち、交際相手などと細かく書かせ、その住所まで記入させる。住所を把握して何に使うのか▼隊員の上司が書くと思われる「調査票」という書類もある。隊員は正直か、異性関係はだいじょうぶか、借金の取りたてはないか、特定の外国をしばしば訪れていないか、虚言癖や特異な趣味嗜好(しこう)はないか。いずれも本人に確認せずに記入する▼凄(すさ)まじい徹底ぶりである。秘密を扱う者は丸裸にする。場合によっては携帯の通話記録を見る。うそ発見器にかける。親類縁者や友人知己にも目を光らす。人権もプライバシーも捨て去れということだ▼特定秘密保護法ができれば、新たな「適性評価」が役所の取引先の企業人にも及ぶ。空気の薄い社会にならないか。やりすぎは慎むと政権はいうが、知れたものではない。

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朝日新聞デジタル> 記事 2013年11月14日05時00分
  「知る権利、侵害の恐れ」 有識者から指摘 秘密保護法案審議

 特定秘密保護法案を審議中の衆院国家安全保障特別委員会で13日、参考人の有識者が国民の「知る権利」や法案の必要性をめぐり、意見を表明した。上智大の田島泰彦教授は「『知る権利』や『取材・報道の自由』を侵害する危険性がかなり高い」と批判した。▼4面=国会論戦、38面=体験から問う

 同法案は国の安全保障の情報を漏らした公務員らへの罰則を最長で懲役10年に厳しくする。田島氏は「情報源が萎縮する。取材しても有用な情報が出なくなる。『知る権利』が制約を受ける」と指摘した。

 早大の春名幹男客員教授(元共同通信社記者)も「可能な限り秘密を少なくし、国民の『知る権利』にこたえてほしい」と主張。法案では30年を超える秘密指定は内閣の承認を得るとしたが、「外部の有識者の見解を聴く機会を設けるのが妥当だ」と述べた。

 東大大学院の長谷部恭男教授は「特別な保護に値する秘密を政府が保有している場合、みだりに漏洩(ろうえい)が起こらないよう対処することには、高度の緊要性が認められる。十分に合理的だ」と必要性を述べた。長谷部氏は民主党政権時代の「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」の委員だった。

 法政大の永野秀雄教授は「法案に賛成」と明言。「知る権利の利益は報道・取材の自由で実現され、国民の知るところになる。この規定に賛成する」とも述べた。

 自民が長谷部氏、民主が田島氏、公明が永野氏、維新が春名氏の出席を求めた。

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▼4面==国会論戦
  (秘密保護法案)安全保障、秘密狭めるべきだ

 長谷部恭男・東大大学院教授 法案は様々な批判がされている。特別な保護に値する秘密などないという立場も理論的にはあり得るが、常識的ではない。制度を整備することは合理的だ。他の国でも類似の制度は少なくない。

 田島泰彦・上智大教授 行政機関の一存で秘密指定されると、知る権利が制約される可能性が強い。特に日本は平和主義の観点から、安全保障の情報に厳しいチェックが求められる。そういう情報は出来るだけオープンにし、秘密を狭めていくべきだ。

 春名幹男・早大客員教授 正当な報道の自由を厳格に保障することと、秘密指定期間が外れた文書は公開することの2点を目標に掲げてほしい。公文書管理法と情報公開法の改正も取り組んでほしい。

 永野秀雄・法政大教授 法案に賛成。民主党提出の情報公開法改正案は、制度的不備があり、臨時国会では成立しえない。米国のような司法府での秘密保全制度がないまま、改正案を施行することはできない。

 ■秘密のまま廃棄、取り返しつかぬ 担当記者はこう見た

 特定秘密の文書が公開されないまま、捨てられてしまうのではないか――。13日の参院国家安全保障特別委の質疑で、そんな疑念が頭をよぎった。

 「廃棄した事実すら明らかにしない。闇から闇で、歴史の検証ができない」。社民党の福島瑞穂氏が批判した。森雅子・秘密保護法案担当相が「保存期間が満了したら、通常の公文書と同じように、歴史的価値があれば公文書館に移管され、そうでないものは首相の同意を得て廃棄される」と答弁したのを受けてのことだ。

 これでは、時の首相が「歴史的な価値」がないと判断すれば、廃棄できることになる。法案に国民の「知る権利」が盛られていても、文書がなくなれば何が秘密だったのかも知ることができない。

 この日の衆院特別委でも、参考人の春名幹男・早大客員教授が「秘密指定が外れた文書は必ず公開を。知らない間に廃棄されると、民主主義がどこにいったかわからなくなる」と懸念を表明した。

 膨大な文書すべてを残すべきだとは思わないが、捨てられてしまったら秘密は永遠に明らかにならない。法案成立を急げば取り返しがつかないことになる。そんな思いを強くした。 (岡本智)

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▼38面=体験から問う 2013年11月14日05時00分
  前泊博盛氏 秘密、極力限定すべきだ
     (秘密保護法案 体験から問う:8)


前泊博盛氏 写真・図版  在日米軍の権限などを定めた日米地位協定。その解釈を記した外務省の機密文書を2004年にスクープした後、外務官僚から「日米関係に重大な悪影響を及ぼす」と抗議されました。その文書を外務省が作成10年後に改訂した「増補版」も報じ、なぜ彼らが秘密にしたのかが分かりました。

 文書は地位協定の解説書で、文面からわかったのは、行政の判断で米兵の事件の裁判権を行使しなかったことや米軍機の飛行訓練区域のあいまいな取り決めなどのおかしさを、日本政府自身が認識していたということ。秘密にしたのは外交に支障が出るからでなく、国民にばれると困ると考えたからでしょう。

 文書には「秘 無期限」のスタンプが押されていました。そんなスタンプがあるのがおかしいのですが、特定秘密保護法ができたら再び秘密指定されないかと心配しています。

 米新型輸送機オスプレイの事故率も「性能にかかわる」と秘密にならないか。何が秘密かがわからなくなると、恣意(しい)的な運用で、政府に批判的な人や政敵も葬れるようになるのでは。

 国の情報は原則開示し、秘密は厳しく限定すべきです。情報が出なくなり、デマや情報操作が様々な戦争の引き金になった歴史を忘れてはいけません。

 国民に情報を知らせない法律は極力、持たないほうがいいのです。(聞き手・河村克兵)

     *

 まえどまり・ひろもり 沖縄国際大教授 1960年生まれ。84年、琉球新報社入社。文化、社会、東京報道、政経各部の記者や編集委員などをへて、10年に論説委員長。11年に退職し現職。

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 11 14 (木) 良寛和尚辞世の句


裏を見せ 表を見せて 散る紅葉
良寛和尚辞世の句です


『良寛の晩年の楽しみは、彼を師と慕う貞心尼との歌のやりとりだったという。 良寛危篤の知らせを受けた貞心尼は急ぎ駆けつける。 臨終までの一週間、心を尽くして良寛の世話をした。 その間、歌を詠み交わした。 良寛は自分の作ではないが今の心境をあらわしているとして次のような歌を詠んだ。

   「裏を見せ 表を見せて 散る紅葉」

自分をひらひらと裏も表も見せて散っていく紅葉に例えている。 死に行く自分のことでもあり、「裏を見せ表を見せ」というのは四十歳年下の貞心尼に自分の裏も表も何一つ隠さず見せてきたことをいっているのであろう。』

これは、京都教育大学 奈良女子大学 などで教えている、岸見一郎さんの見事な解説である。

  http://plaza.rakuten.co.jp/kishimi/52000



「裏を見せ表を見せて散る紅葉」は誰の句か。また何という本に載っているか。 この句は、もともと谷木因が詠んだ「裏ちりつ表を散つ紅葉哉」という句を良寛が作り直したもので、『はちすの露』に収録されている。 【調査過程】 ■『評解名句辞典』(麻生磯次 小高敏郎共著 創拓社 1990)など、俳句に関する辞典類を調べてみるが見つからない。また、季語の辞典で「紅葉」の項を探すが、この句は出ていない。 ■質問者が高僧の言葉ではないかと話していたので、『仏教故事名言辞典』(須藤隆仙著 新人物往来社 1982)『仏教比喩例話辞典』(森章司編 東京堂出版 1987)などを調べてみるが、こちらにも記載されていない。 ■『故事・俗信ことわざ大辞典』(尚学図書編集 小学館 1982)など、ことわざに関する辞典類を調べてみるが、見あたらない。 ■インターネットで見つからないだろうかと、検索サイトで「裏」「表」「紅葉」をキーワードとして検索したところ、良寛の句として紹介しているサイトがあった。 ■『良寛事典』(加藤僖一著 新潟日報事業社出版部 1993)や良寛の句集を見るが、記載されているものが見つからない。ようやく『校注良寛全句集』(谷川敏朗著 春秋社 2000)に、「諸本から削除した良寛の句」として記載されているのが見つかり、出典は貞心尼の『はちすの露』であることが分かった。 ■『「はちすの露」を読む』(喜多上著 春秋社 1997)を見ると、この句は谷木因の「裏ちりつ表を散つ紅葉哉」によっているとの『良寛歌集』(角川文庫)の解説があり、病床にあった良寛が、他人の句を「自分らしく口あたりのよい明快な句に仕立てなおした」ものであると書かれていた。谷木因は美濃の俳人で、松尾芭蕉と親交があり、この句は元禄13年の『一幅半』に掲載されているとのことだった。
 11 16 (土) COP19 日本の新目標に批判相次ぐ


COP19 日本の新目標に批判相次ぐ
  11月16日 COP19 日本の新目標に批判相次ぐ
  11月16日 環境NGOが日本に「特別化石賞」
  11月15日 温室効果ガス 3.8%削減の目標を決定
  11月13日 COP19 環境NGOが交渉進展を訴え
  10月01日 「どう向き合う?地球温暖化」


ニュース詳細 11月16日 5時2分   COP19 日本の新目標に批判相次ぐ 地球温暖化対策として、日本政府が決定した温室効果ガスの新たな削減目標について、温暖化対策を話し合う国連の会議、COP19に参加している先進国や途上国からは、これまでの目標より削減する数値が大幅に低くなっていることから批判の声が相次ぎました。 政府は温暖化対策として、2020年までに温室効果ガスの排出量を2005年と比べて3.8%減らすという新たな目標を15日決定しました。 今回の目標は、国内の原発がすべて停止していると仮定していて、1990年と比べると25%削減するというこれまでの目標に比べて大幅に数値が低くなるうえ、1990年より排出量は3.1%増加することになります。 これについてCOP19では、EU=ヨーロッパ連合の代表が「各国の取り組みを前進させようという会議での議論に明らかに逆行するものだ」と指摘したほか、中国政府の代表が「落胆を言い表すことができない」と述べるなど、先進国や途上国から厳しい批判の声が上がっています。 日本政府の代表団で、外務省国際協力局の南博参事官は「新しい目標に厳しい反応が出ることは予測していた。われわれとしては否定的な影響を全体の交渉に与えないように努力していきたい」と話していました。 . 各国の批判 南太平洋の島国フィジーの代表は、「日本など先進国が以前、約束したとおりに温室効果ガスの削減を進めていないことに失望しています」と日本の姿勢を強く批判しました。 ブラジルの代表は、15日に開いた記者会見で「先進国の一部の国がこれまでの目標を撤回したことを注視する必要がある」と述べ、日本がこの問題により野心的に取り組むよう働きかけていくとしています。 EU=ヨーロッパ連合の代表も、「今回の会議では2020年までの削減目標も大きな焦点となっている。日本の新たな目標は各国の取り組みを前進させようという会議の議論に明らかに逆行するものだ」と指摘し、途上国だけでなく先進国からも批判の声が上がっていました。 [関連ニュース] ・ 温室効果ガス 3.8%削減の目標を決定 (11月15日 12時18分) ・ 温室効果ガス 削減の新目標決定へ (11月15日 5時6分) ニュース詳細 11月16日 5時2分   環境NGOが日本に「特別化石賞」 ポーランドで開かれている地球温暖化対策を話し合う国連の会議、COP19で、これまでより数値が大幅に低い温室効果ガスの削減目標を決めた日本に対し、交渉に後ろ向きだとして、環境NGOのグループから「特別化石賞」が贈られました。 「化石賞」は世界各国のおよそ850の環境NGOで作るグループが、「最も交渉に後ろ向きな対応をした」と判断した国や地域に皮肉を込めて、COPの会期中、毎日贈っています。 このグループが日本時間の15日午後、COP19の会場で会見を開き、2020年までに温室効果ガスを2005年と比べて3.8%削減するとした新たな目標を決めた日本に対し、「化石賞」よりさらに交渉に後ろ向きだとされる「特別化石賞」を贈ることを発表しました。 理由について、このグループは、日本の削減目標の数値が1990年と比べて25%削減するというこれまでの目標より大幅に低くなったうえ、1990年より排出量が増加する目標で交渉に悪影響を与えるおそれがあるためだとしています。 日本には、ここ数年開かれたCOPで毎回「化石賞」が贈られていますが、会期中に「特別化石賞」が贈られたのは初めてです。 これについて日本政府は、「新しい目標について中身が正確に伝わっていないと思われるので、理解を得られるよう説明に努めていきたい」と話しています。 今回のCOPでは、オーストラリアやポーランドなどにも「化石賞」が贈られています。 [関連ニュース] ・ COP19 環境NGOが交渉進展を訴え (11月13日 7時1分) ニュース詳細 11月15日 12時18分   温室効果ガス 3.8%削減の目標を決定 政府は地球温暖化対策に関する閣僚会合を開き、原発事故のあと見直しを進めてきた温室効果ガスの削減目標を、2020年までに2005年と比べて3.8%の削減とすることを決めました。 これまでの数値目標から大幅に低くなっているため、各国から厳しい反応が相次ぐことが予想されます。 会合には、安倍総理大臣や石原環境大臣らが出席し、温室効果ガスの排出量について2020年までに2005年と比べて3.8%減らすという新たな目標を決定しました。 政府は、これまで1990年と比べて25%減らすという削減目標を掲げていましたが、原発事故の影響で達成することができなくなったため見直しを進めてきました。今回の目標は、国内の原発がすべて停止していると仮定していて、1990年と比べると排出量は3.1%増加します。 石原大臣は、ポーランドで開かれている温暖化対策の国連の会議、COP19でも説明する方針ですが、数値目標がこれまでより大幅に低くなっているため、各国から厳しい反応が相次ぐことが予想されます。 安倍総理大臣は会合の中で「エネルギーミックスが検討中で、あくまで現時点の目標だが、実現に向けて対策を実行してもらいたい」と述べました。 一方、政府は15日の会議で、途上国への支援として2015年までの3年間に官民合わせて160億ドル(日本円にしておよそ1兆6000億円)を拠出することなども決めました。 これは、途上国側が先進国側に対して求めている金額のおよそ40%を占めているということで、政府は、こうした資金面の支援などを通じて後退した目標への批判をかわしたい考えですが、各国から理解を得られるかは不透明な状況です。 . 石原環境大臣「野心的な目標だ」 政府が15日に決定した温室効果ガスの新たな削減目標について石原環境大臣は、閣議のあとの会見で「原子力発電の活用の在り方を含めたエネルギー政策が検討中であることを踏まえて、現時点でできうるかぎりの目標値として策定した。再生可能エネルギーの導入の拡大などを総合的に進めることで、今の政権が掲げている経済成長を遂げつつ、最大限の努力によって実現を目指す野心的な目標だ」と述べました。 一方で、これまでの数値目標より大幅に低くなっていることについて「原発の稼働がゼロなのだから誰が計算してもこうなるのではないか。原発事故を受けて目標を早く取り下げていれば、こういう事態にはならなかったのではないかと思う。今後、エネルギー政策の検討の進展を踏まえて、さらなる確定的な目標を設定する」と述べ、将来、エネルギー政策が決まったあと、削減目標を見直す考えを明らかにしました。 ニュース詳細 11月13日 7時1分   COP19 環境NGOが交渉進展を訴え 地球温暖化対策について話し合うCOP19の会場では、台風で壊滅的な被害を受けたフィリピンの政府代表の発言に共感した国際的な環境NGOのメンバーがハンガーストライキを始め、各国の政府に温室効果ガスの削減に向けた交渉を進展させるよう訴えました。 ポーランドで開かれているCOP19の初日の会合では、台風30号の直撃で壊滅的な被害を受け、多くの犠牲者が出たフィリピンの政府の代表、ナデレブ・サニョさんが「私たちは、この異常気象を変えることができる。この会議がそのための場として永遠に記憶されるようにしよう」と涙ながらに訴えたうえで、会議で成果が出るまでは何も口にしないとして、ハンガーストライキを行う考えを示していました。 この発言に共感した国際的な環境NGOのメンバーおよそ30人もハンガーストライキを始め、会場の一角で「私たちはフィリピンと共にいる」とシュプレヒコールを上げて、各国の政府に交渉を進展させるよう強く訴えました。 ハンガーストライキは、会議の期間中行うということです。 サニョさんは「世界の皆さんがわれわれへの連帯の気持ちを示してくれたことに非常に感激している。交渉で意義のある成果が得られるまで行動を続けていきたい」と話していました。 [関連ニュース] ・ 環境NGOが日本に「特別化石賞」 (11月16日 4時57分) NHK時論公論 「どう向き合う?地球温暖化」 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/168946.html

時論公論 「どう向き合う?地球温暖化」2013年10月01日 (火) 

室山 哲也  解説委員

●オープニング
ここ2、3日のニュースで「地球温暖化」という言葉を久しぶりに聞いた方は多かったのではないでしょうか?特に震災以降、私たちの関心は、防災やエネルギーに集中し、「温暖化」を忘れたかのような状態でした。しかし、先週金曜日、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が、6年ぶりの報告を出し、「地球温暖化」が、深刻な状況に陥っていることが、改めて分かりました。
今夜は、地球温暖化の現状をまとめ、この問題にどう向き合っていくべきかを考えます。
 
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●IPCC5次報告で何がわかったか?
今回の報告の内容をざっくりいうと、「温暖化は悪化し」「原因のCO2濃度も上昇を続け」「北極や南極などの氷の消失が進み」「海水面が一層上昇した」ということです。そして温暖化の原因を「人間活動である可能性が極めて高い」と、前回よりも強い言葉で表現しました。
 
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「異常気象の世界的進行(猛暑、高潮)」
 
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異常気象について触れたのも特徴です。今年の夏、日本や世界で異常気象が頻発しました。日本の猛暑や大雨をはじめ、各国でも様々な被害が出ました。

IPCC5次報告は、「このまま温暖化が進むと、世界のほぼ全域で、極端な高温が増え、中緯度の大陸と、熱帯で、極端な雨が頻繁に降るようになる可能性が非常に高い」と指摘しています。この発言は、地球温暖化が、単なる気温上昇にとどまらず、複雑な気候変動や気象の混乱を生み出すことを示しています。
 
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これは世界の平均気温です。1880年から2012年までに、すでに0.85度上がっています。
 
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温暖化の原因のCO2濃度は、上昇し続け、今年5月9日、アメリカハワイで、日平均濃度が400ppmを超えるという記録が出ました。人類が大量のCO2を出し始めた産業革命前の、280ppmから4割も増加しています。
IPCCは、「今後、温室効果ガスを減らす、有効な対策が取られなかったら、今世紀末に、地球の平均気温は、最大4.8度上がる」と予測しています。4.8度の気温差は、東京が奄美大島並みの気温になることを意味しています。
 
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温暖化が進むと、海水が暖かくなって膨張するため、水面が上昇します。今回の報告では、「このまま温暖化が続くと、今世紀末には、この20年間と比べて最大82センチ海面が上昇する可能性が高い」としています。この数字は6年前の報告よりも大きく、南極とグリーンランドの氷床が、温暖化で海に滑り落ちる分が、海面上昇につながったことが反映されています。
環境省によると、日本の場合、海面が65センチ上がると、全国の砂浜の8割が消失します。
 
「北極の海氷消滅」
 
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温暖化の影響が、特に大きいのが、北極海です。去年の海氷面積は、1980年に比べて、半分以下、史上最少となりました。
 
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写真を見ると海の様子も激変しています。氷の質も、年を超える「多年氷」から、一年ごとにできては消える「1年氷」に変わっています。IPCC5次報告は「CO2削減の対策を取らなければ、今世紀半ばまでに、夏の北極海の氷は消滅する可能性が高い」と警告しています。
 
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北極海の氷は、南極の氷とともに、太陽光線を反射し、地球全体の気候を安定させています。しかし、氷がなくなると、太陽光線で海が直接暖められ、さらに氷が溶けるという悪循環に陥ります。
また、氷が減少すると、逆に日本では寒波が増える傾向もあります。
 
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最近、北極海の氷が解け、船が通れる航路があらわれはじめました。今までよりも短い距離で外国に行けるため、各国の船が集中し、一大交通ルートになろうとしています。また、北極海周辺は資源の宝庫で、世界の25%の石油や、30%の天然ガスがあり、採掘競争が始まる可能性もあります。もし人類が、北極海に殺到し、無制限に化石燃料を掘り出し、今までと同じように燃やしつづけたら、大量のCO2が放出され、温暖化がさらに加速される悪循環が始まってしまいます。北極圏は、私たち人類の文明の在り方を考える、象徴的な場所になりはじめています。
 
●出てきた新たな課題
実は、研究者たちを悩ませているデータが、一つあります。それは、この15年、地球平均気温の上昇がそれほど伸びていないという現象です。
 
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CO2濃度や海面が上昇しているのに、なぜそれほど気温が上がらないのか?
地球温暖化そのものへの疑問とか、CO2の増加と地球温暖化との関連を否定する声すら出はじめる中、IPCC5次報告は、この点についても説明しています。

(VTR)
これは、東京大学が発表した、海水温度の変化です。上が海面、下は700mよりも深い層の水温です。温暖化に伴って、まず、海面の温度が上がっていきますが、20年ほど前から、海の深い層でも、水温が上がってきています。東京大学は、「地球温暖化であがった大気の熱の一部が、海洋の深いところにも吸収されはじめているのではないか」と見ています。これはある意味、海の深いところの水が、地上の温暖化を食い止めてくれている形です。しかし、研究者によると、この現象は、10年~20年の間隔で繰り返されているため、今後、再び温暖化が加速する可能性があるとしています。

このように、地球温暖化は、私たちの想像を超えた、複雑なメカニズムで、揺れ動きながら進行しています。
 
●温暖化にどう向き合うか?
私たちは、地球温暖化にどのようにむきあい、行動していけばいいのでしょうか?
 
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まずなによりも、温室効果ガスそのものの排出を減らし、温暖化の原因を取り除く必要があります。そのためには、省エネを進め、再生可能エネルギーの育成、天然ガスなどCO2排出が少ないエネルギーへのシフトが大切です。

最近、指摘がされはじめているのは、温暖化の被害そのものに対する対策の必要性です。残念ながら、温暖化は止まらず、このままでは、高潮や猛暑などで、何らかの被害が出ることを覚悟しなければなりません。高温に耐える農作物の品種改良も急務です。影響を受けやすいのは、対応力の弱い開発途上国です。
日本は先進国の一つとして、国内だけでなく、弱い立場の国々への配慮もしていく必要があります。
今年11月、地球温暖化を食い止めるための国際会議COP19がポーランドで開かれます。日本は、原発事故後、エネルギー政策の方向性をまとめきれず、温暖化対策を明確に打ち出せていません。
今回のIPCC報告は、私たち人類を取り巻く温暖化の深刻さを、改めて浮き彫りにしました。地球温暖化に対して、私たちがどう向き合い、克服していけばいいのか。その姿勢を、いまあらためて考えなおすべき時だということを、もう一度、自らに言い聞かせる必要があります。
 
(室山哲也 解説委員)