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折々の記 2014 ①
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】01/01~ 【 02 】01/02~ 【 03 】01/03~
【 04 】01/04~ 【 05 】01/07~ 【 06 】01/09~
【 07 】01/20~ 【 08 】01/21~ 【 09 】01/25~
【 06 】01/09
01 09 積極的平和主義とは……解せない国民
01 11 脊髄損傷、幹細胞で治療 札幌医大、国内初の治験発表
01 11 秘密法巡り与野党対決 通常国会、24日召集 野党、靖国参拝追及へ
01 11 拙速いさめる側近いないのか わたしの願い
01 13 中国防空圏、原案覆し膨張 強硬論受け、九州沖まで
01 13 中国、構想10年越し 防空圏、米軍機との事故契機 日本の尖閣国有化影響
01 13 秘密法反対「残りわずかな命を捧げる」
01 19 秘密法は立憲主義を守れますか 長谷部・杉田両教授対談
01 19 政権への不安は理解/恣意的運用防ぐ必要 教授2人対談
01 19 「知る権利」や情報公開をめぐる議論詳細 教授2人対談
01 09 (木) 積極的平和主義とは……解せない国民
積極的平和主義とは……解せない総理の政治姿勢、どこまで自分勝手なのか。
2014年1月9日
安倍首相、中国に反論 「私を批判する国、20年軍事費増大」 靖国参拝巡り
安倍晋三首相は8日のBSフジの番組で、昨年末の自らの靖国神社参拝を批判する中国を念頭に「私を軍国主義者と批判する国が毎年10%以上、軍事費を20年間増やし続けている」と批判。「誰かが批判するからそうしない、ということ自体が間違っている。当然の役目は果たしていくべきだ」と語った。無宗教の国立追悼施設の建設構想については「お金をかけて立派なものをつくって『今度はこっちですよ』ということが果たして成り立つか。慎重に検討していくべきだ」と否定的な見方を示した。
首相は靖国にまつられている戦死者の遺族の心情に触れ、「一国の指導者がお参りすることで自分の気持ちもいやされる。自分の夫は国のために戦ったんだという思いを持つことができる。だから靖国に参拝する」とも述べた。
2014年1月9日
自民「靖国参拝受け継ぐ」 今年の方針案、改憲にも意欲
自民党は8日、2014年の党運動方針案を決めた。「靖国神社への参拝を受け継ぐ」と明記し、党の憲法改正草案を説明する対話集会を開いて改憲の機運を高めることを狙うなど保守色の強い内容となった。19日の党大会で正式決定する。
靖国参拝について、当初案では「不戦の誓いと平和国家の理念を貫くことを決意し、靖国神社の参拝を受け継ぐ」と例年通りの記述だった。だが、7日の総務会で「靖国神社は不戦の誓いや国家の平和を祈るところではない」などの異論が出た。一方で「自衛隊員にもしものことがあった場合、靖国神社に奉る覚悟を示すべきだ」と表現を強めるよう求める声も出たため、石破茂幹事長に一任された。
最終的に「不戦の誓い」と「平和国家」の文言を削除し、「日本の歴史、伝統、文化を尊重し、靖国神社への参拝を受け継ぎ、国の礎となられた方々に対する尊崇の念を高め、感謝の誠を捧げ、恒久平和への決意を新たにする」との文言に落ち着いた。憲法改正については、「党是である憲法改正の実現に向けて、党全体として積極的に取り組む」と踏み込んだ内容にした。
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01 11 (土) 脊髄損傷、幹細胞で治療 札幌医大、国内初の治験発表
2014年1月11日
脊髄損傷、幹細胞で治療 札幌医大、国内初の治験発表
札幌医科大は10日、脊髄(せきずい)を損傷した患者自身の骨髄幹細胞を使って神経を再生させる臨床試験(治験)を始めると発表した。幹細胞を使う治療はさまざまな病気での研究が進行中で、脊髄損傷での治験は国内初。脊髄損傷はリハビリ以外に有効な治療法がなく、新たな可能性として期待されるが、効果やリスクなどの課題を指摘する声もある。
治験を実施するのは、山下敏彦教授(整形外科)らのグループ。患者から数十ミリリットルの骨髄液を採取して、主に骨や脂肪などの細胞になる「間葉系幹細胞」を分離する。2週間かけて1万倍に増やし静脈に点滴する。
グループは、間葉系幹細胞が脊髄の傷ついた部分に自動的に集まり、損傷した組織内で神経系細胞に分化して組織を修復する作用があると説明している。発表によると、ラットの実験では、運動機能の回復が確認されたという。
治験の対象は20歳以上65歳未満で損傷が部分的にとどまり、損傷から2週間以内の患者。2016年10月までに有効性を検討し、より多くの患者が参加する治験を経て、医薬品(細胞製剤)としての承認申請を目指す。
国内の脊髄損傷の患者数は約10万人と推定され、山下教授は「効果が確認できれば大勢の患者に明るい材料が提供できる」と話す。
幹細胞の再生医療はすでに民間クリニックなどでも広まっているが、安全性や有効性はまだ十分に確認されていない。
iPS細胞による脊髄損傷治療に取り組む岡野栄之・慶応大教授は「興味深い治療法だ。ただ、動物実験では幹細胞を静脈に入れても脊髄の傷ついた部分に十分に到達せず、細胞を入れ過ぎると肺の血管が詰まる危険もある。今回の治験で、こうした治療効果とリスクが評価できれば有意義だ」と話している。
(熊井洋美、阿部彰芳)
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難病研究者とiPS創薬 山中教授がネットワーク本格化(12/28) 次に掲載する
2013年12月28日
難病研究者とiPS創薬 山中教授がネットワーク本格化
【編集委員・田村建二】京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は27日、朝日新聞の単独取材に応じ、iPS細胞を使った難病の治療薬づくりを加速させるため、難病を研究する全国の医師らとネットワークをつくると明らかにした。来年度に完成する新研究棟を拠点に活動を本格化させる。
iPS細胞は、目的の組織などに変化させて移植する再生医療のほか、患者の細胞をもとに薬の候補を探す創薬にも使える。治療法がない難病は数百種類あるとされるが、iPS細胞を使った創薬の研究は欧米より遅れているという。
そこで、全国の難病研究者が京大に滞在してiPS細胞を扱う技術を学べるようにする。国の研究費に加え、患者や市民らから募った研究基金も活用する。山中さんは「再生医療に比べ、iPS創薬はあまり進んでいない。全国の先生たちと研究を強力に進め、難病の患者さんたちに成果を届けたい」と話す。
iPS細胞による再生医療は今年、高齢の目の病気の患者に組織を移植する初めての臨床研究が始まった。来年度以降はパーキンソン病や脊髄(せきずい)損傷といった病気やけがを対象とした研究も計画されている。
■創薬「iPSで強力に推進」
【小宮山亮磨、鍛治信太郎】難病を研究する医師らを全国から招き、iPS細胞の技術に習熟してもらう。1年前にノーベル医学生理学賞を受けた京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授が27日、新たな構想を明かした。「創薬をもっと強力に進めたい」との狙いがある。
iPS細胞研究には、文部科学省が2013年から10年間で計1100億円を助成する方針。ただ、山中さんは「国の支援はかなりの部分が再生医療。創薬は後回しになっている感もある」と語った。
整形外科医だった山中さんは、医療現場で多くの難病患者に出会ったことをきっかけに幹細胞研究へ転じた。難病のための創薬はいわば研究の原点だ。
患者の体からiPS細胞をつくって培養すれば病気の状態が再現できる。その状態を改善する化学物質を探せば、新薬開発につながる。研究所では筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの治療薬づくりにiPS細胞を使い、成果をあげつつある。
だが難病の数は多い。患者に還元するには、難病研究に取り組む多くの医師らにiPS細胞を使ってもらう必要がある。そのネットワークの拠点には京大構内に建設中の第2研究棟をあてる予定だ。「いろんな方がiPS細胞研究を始めるきっかけになる場所にしたい」と山中さんは強調した。
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2014年1月11日
秘密法巡り与野党対決 通常国会、24日召集 野党、靖国参拝追及へ
菅義偉官房長官は、10日の衆参の議院運営委員会理事会で、通常国会を24日に召集すると伝えた。会期は6月22日までの150日間。4月の消費増税を控え、安倍政権と与党は経済対策と位置づける今年度補正予算案や来年度予算案を早期に成立させる方針だ。一方、昨年の臨時国会で特定秘密保護法をめぐり政権・与党と激しく対立した民主党は、通常国会でも秘密法関連で追及を続ける。安倍晋三首相の靖国神社参拝も問題にする構えだ。
安倍政権は14日の閣議で24日召集を正式に決定する。自民、公明両党が衆参で過半数を確保して初の通常国会になる。菅氏は議運理事会で24日に今年度補正予算案と来年度予算案を国会に提出することも伝えた。
昨年12月6日に成立した秘密法は、1年以内の施行に向け政権と与党が準備を進めている。自民、民主、維新、公明、みんな、共産、生活各党議員は12~19日の日程でドイツ、英国、米国を訪れ、議会の監視機関などを視察する予定だ。視察を踏まえ、与党は国会が政府の秘密指定を監視できる国会法改正案を検討する。
これに対し民主党は、秘密法を「抜本的に改める」(海江田万里代表)と廃止法案を提出する。通常国会でも対立が続きそうだ。
召集前日の23日には東京都知事選が告示され、2月9日の投開票日までは都知事選を意識した国会論戦になりそうだ。民主党都連会長も務める松原仁・国会対策委員長は10日の会見で「『特急・安倍号』の暴走を食い止める」と述べた。
首相は、通常国会を「好循環実現国会」と位置づけたい考えだ。与党は5・5兆円の経済対策を盛り込んだ今年度補正予算案を2月上旬にも成立させ、来年度予算案も3月末までに成立させるスケジュールを描く。ただ、秘密法の採決強行への批判を受け、公明党の井上義久幹事長は首相に「丁寧な国会運営を心がけたい」と伝えた。
首相が悲願とする憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認も、この通常国会中に大きく動きそうだ。4月以降、首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が報告書を提出する見通しだ。行使容認に慎重な公明党との調整がつけば、政権が夏にも行使容認に踏み切る可能性がある。首相が、国会答弁で解釈変更に踏み込むかどうかが焦点となる。
民主など野党は10日の与党との国対委員長会談で、通常国会前に首相出席の予算委員会での閉会中審査を求めた。与党は応じない考えだ。民主など野党側は通常国会で秘密法に加え、靖国神社参拝や南スーダンの国連平和維持活動(PKO)での韓国軍への弾薬提供などを追及する構えだ。
臨時国会で継続審議となっている法案や条約もある。日トルコ原子力協定は、首相が「通常国会の最優先課題として取り組む」と7日の首脳会談で表明したが、日本維新の会や民主党の一部が反対している。
同じく継続審議の国家公務員制度改革関連法案は審議入りが予算成立後になる見通しだ。成立した場合でも幹部人事を一元管理する「内閣人事局」新設は当初予定の4月から後ろにずれこむ。
■通常国会で与党が成立を目指す主な法案・条約(協定)
◆日トルコ原子力協定
トルコへの原発輸出を可能に
◆国会法改正案(議員立法)
国会が政府の特定秘密指定を監視
◆公文書管理法改正案
閣議の議事録を作成し、一定期間経過後に公開
◆国民投票法改正案(議員立法)
憲法改正の手続きを定める
◆教育再生推進法案(仮称、議員立法)
教育基本法の趣旨に基づく学習指導要領や教科書の作成など
◆国家公務員制度改革関連法案
省庁の幹部人事を新設の「内閣人事局」で一元管理
■当面の主な政治日程
1月19日 沖縄県名護市長選投開票
21日 安倍首相、スイスでダボス会議出席(~23日)
23日 東京都知事選告示
24日 通常国会召集、首相施政方針演説
26日 首相、インド建国記念式典に出席の意向
2月9日 東京都知事選投開票
2月中? 2013年度補正予算案成立
3月中? 14年度予算案成立
4月1日 消費税率8%に引き上げ
4月中? 安保法制懇が集団的自衛権の報告書提出
6月22日 通常国会会期末
夏ごろ? 政権が集団的自衛権行使を可能にする解釈変更?
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(声)拙速いさめる側近いないのか(1/7) 次の枠組みで
共産、秘密法廃止法案提出へ 通常国会で(1/5)
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集団的自衛権「来年度以降の課題」 菅官房長官が初表明(12/17)
通常国会の召集、来月24日の方針 自民(12/17)
秘密法廃止、民主提案へ 通常国会(12/17)
日トルコ原子力協定、承認先送り 自公(12/3)
臨時国会「会期12月6日まで」 与野党国対委員長会談(10/7)
2014年1月7日
(声)拙速いさめる側近いないのか
編集者 村田道義(埼玉県 75)
「説明すれば理解してもらえる」。安倍晋三首相は特定秘密保護法が成立した後で、菅義偉官房長官は首相の靖国参拝後の米国の失望表明に対して、こうした趣旨の発言をしている。はたしてどうか。
秘密法は国民の知る権利と国家権力とがせめぎ合う性質のものだ。折り合う線引きは容易ではない。それを数の論理で力ずくで引いた後で、「丁寧に説明する」のでは国民は困惑するばかりだ。
靖国神社は先の戦争の精神的支柱で、主導者として裁かれたA級戦犯が合祀(ごうし)されている。首相参拝は政教分離に反する可能性があり、歴史認識への疑念を周辺国に抱かせ、緊張の火種になっている。
米国にとって、輸出市場である東アジアの平和は自国の経済復興のカギである。関係悪化を望むわけがない。失望声明は先を見越した布石だ。「同盟国だが日本を特別扱いしない」とのメッセージを内外に発信する必要があったのだろう。これに対し、説明を尽くす条理とはなにか。
安倍政権になり多年にわたる重要課題に拙速に白黒がつけられだした。それが首相の真意か。職を賭して諫言(かんげん)する忠臣はいないのだろうか。
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(声)靖国参拝を拒んだ私の祖母(10/25)
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安倍首相「痛恨の極み、今も」 靖国神社への不参拝(10/20)
【下平・註】
わたしの願い
政治をつかさどる人たちの“A級戦犯”に対する思索はどうなっているのでしょうか。
戦死した兵隊の親や兄弟の悲しみを、心の底で考えたことがあるのでしょうか。
平和と言いながら勝手な思考によって紛争になるような政治を仕組んできたのは政治家自身ではないのでしょうか。
この前の戦争についても、政治家のほとんど多くの人たちから戦犯合祀を非難する声が殆ど聞こえてこないのは何故なのでしょうか。
戦争で死んでしまった私の先輩は、日本を戦争に巻き込んでいった人たちの責任を追及できないのです。 再びこのような戦争をしないようにという思いも伝えることができないのです。
私は、その人たちのことを思うにつけ、戦争は 国民の平安を願うはずの政治家の人たちは、靖国神社の前で手を合わせるときも、亡くなった人たちの思いに気がつかないのでしょうか。 そうでなくても戦争が何をもたらすかは、十分理解できているはずです。
このようなことがよく理解できない人は、人を指導する値打ちのない人とは思いませんか。
理屈の上で平和を叫ぼうが、国民を悲嘆のどん底に追い込む戦争への道を進んではならないのです。
01 13 (月) 中国防空圏、原案覆し膨張 強硬論受け、九州沖まで
2014年1月12日【1面】
中国防空圏、原案覆し膨張 強硬論受け、九州沖まで
http://digital.asahi.com/articles/DA3S10921336.html?iref=comkiji_redirect
昨年11月に中国が東シナ海に設定した防空識別圏=キーワード=は、中国の領海基線から200カイリ(約370キロ)を範囲設定の目安とした軍研究機関の原案を採用せず、日本の九州沖合に寄せる形で範囲を拡大していたことが分かった。日本に対する習近平(シーチンピン)政権内の強硬論が反映されたものとみられ、防衛上の実務的な要請よりも政治的な意図が強くにじむ内容となっていた。▼2面=構想10年越し
複数の中国軍関係者や軍事研究者が朝日新聞の取材に対して明らかにした。
原案は昨年5月、空軍の幹部養成機関であり重要な研究機関を兼ねる空軍指揮学院(北京市)が軍上層部に提出。具体的な地図を盛り込んでおらず、範囲については領海基線から200カイリの排他的経済水域(EEZ)を目安としていた。さらに、実現が難しければ200カイリ線より中国側にあり、日本が主張する日中中間線付近まで縮小することも提案していた。
範囲策定の背景について、軍総参謀部の元幹部は「敵機を察知し、中国の領空に到達するまでに緊急発進で対応するには、少なくとも20分前後の時間を確保する必要がある。戦闘機の時速から計算して、約330キロの距離を確保するというのが防衛上の合理的なニーズだ」と話す。
だが、半年後の昨年11月23日に中国国防省が公表した防空識別圏は、東端が中国の200カイリ線を大きく越えて九州西岸側へ張り出していた。この点について、同省は朝日新聞に「東端は日本の九州から約130キロの地点にある。日本の防空識別圏が中国大陸に最も接近している地点も約130キロだ」と回答した。
中国側は防空識別圏の設定について「いかなる特定の国も対象にしていない」(外務省報道官)と繰り返してきた。だが、日本の防空識別圏が中国から最も近い地点で浙江省の沿岸から約130キロにあることから、日本への対抗措置として原案を修正したとみられる。
さらに、原案には航空機に対する飛行計画(フライトプラン)の事前提出要求は盛り込まれていなかった。だが、公表された際は領空に向かってくる航空機だけでなく、防空識別圏を横切るだけの航空機もフライトプラン提出の対象としていた。
今回、原案が修正された詳細な経緯は明らかになっていない。ただ、軍総参謀部だけでなく、習総書記を含む中国共産党最高指導部の裁可を経る中で、対日強硬論が強まったことがうかがえる。(北京=林望、倉重奈苗)
◆キーワード
<防空識別圏> 海洋に接する国・地域が防空のため独自に設定できる空域。領空(沿岸から約22キロの領海上空)よりも外側に張り出して設定されることが多い。領空に向かって空域内を飛ぶ航空機には飛行計画の事前提出が求められる。事前通告なしに空域内に侵入した航空機は、戦闘機による緊急発進(スクランブル)の対象となる。
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【2面】
中国、構想10年越し 防空圏、米軍機との事故契機 日本の尖閣国有化影響
中国防空識別圏をめぐる経緯
2001/04 南シナ海上空で米軍偵察機と中国軍戦闘機が衝突
中国軍で防空識別圏設置の声が高まる
2002/11 胡錦濤指導部が発足
2009/11 軍創設60周年の演説で空軍司令官が防空識別圏に言及
2012/09 日本の民主党・野田政権が尖閣諸島国有化
2012/11 習近平指導部が発足
2013/05 空軍指揮学院が防空識別圏の原案提出
2013/11 中国軍が防空識別圏の設定発表
中国が昨年11月に東シナ海に設定した防空識別圏は軍の長年の宿願だった。習近平(シーチンピン)体制の下で一気に実現に至った背景には、日本の尖閣国有化で国内の強硬論が勢いづいた事情がある。中国側の運用能力は評価が割れるが、着実に経験を積んでいる様子がうかがえる。▼1面参照
複数の政府系研究機関の幹部によると、中国による防空識別圏設定の発端は10年以上前にさかのぼる。2001年4月、南シナ海の公海上空で中国軍のF8戦闘機と米軍の電子偵察機EP3が空中接触し、中国機のパイロットが死亡した事件だ。
当時、中国側の抗議に対して米軍は「国際空域での飛行の自由」を正当性の根拠にした。中国軍の内部では「『飛行の自由』を口実に偵察に来る米軍機に対抗できる法的根拠を作るべきだ」との声が強まった。
02年の国防白書で、初めて「防空体制の建設」を盛り込んだ。この年、中国側が主催した国際学会に現役の中国軍幹部が出席。出席者によると、前年の接触事件に触れて、この幹部は「防空識別圏をいま検討している。設定はこれからだ」と語ったという。
その後、上海交通大の薛桂芳教授が07年に発表した論文で「日本の防空識別圏の最西端は、中国の浙江海岸からわずか130キロしかない」と指摘。この頃から日本の防空識別圏に対する不満が芽生えていたことがうかがえる。
09年11月にあった軍創設60周年の記念大会。当時、空軍司令官だった許其亮・党中央軍事委員会副主席は演説で、空軍の近代化とともに「防空識別圏の共通認識を作っていく」と強調した。
ただ、当時の胡錦濤(フーチンタオ)指導部は、軍の要請に慎重な姿勢を崩さなかった。防空識別圏の運用に必要な態勢が十分に整っていなかったという事情に加え、周辺諸国の強い反発を招くリスクを考慮したとみられる。
中国指導部の姿勢を大きく変えたのは、12年9月、民主党の野田佳彦前政権による尖閣諸島の国有化だ。領有権争いの「棚上げ」を建前とする中国政府は、日本による尖閣国有化を「現状の一方的な変更」(国防省報道官)と批判。「棚上げ」は崩れたとの立場から、尖閣諸島の上空を含む空域に防空識別圏を設定することを求める党や軍内の声が高まった。
外務省系シンクタンク、中国国際問題研究所の曲星所長は今月10日の会見で「自分がこうしたいから、こうする。これが日本の論理だ。中国も今は同じ理屈で動いている。防空識別圏に釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺を含めないことはあり得ない」と述べた。
尖閣国有化の直後に発足した習近平政権は、こうした国内世論にも押される形で領土や海洋権益の確保の必要性を強調。軍の体制強化にも乗り出した。
昨年5月に空軍指揮学院がまとめた原案は空軍司令部や軍総参謀部を経て、党中央軍事委員会や党中央国家安全指導小組などで協議され、党中央政治局常務委員らによる最高指導部にも上げられたとみられている。
この過程で強硬な意見が支持を得て、11月に開かれた党の重要会議、第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)までに防空識別圏の最終形が固まった。中国が防空識別圏の設定を発表したのは、3中全会閉幕から11日後。日本から約130キロの地点が基準になったことについて、ある研究者は「日本がやる以上のことはしないとの考慮もあった」と話す。
■運用能力、割れる評価
「線を引くだけでは何の意味もない。航空機や各種のレーダー、衛星の能力が高まり、実効性を確保できる態勢が整ったから設定した」。軍総参謀部の元幹部はこう語る。
防空識別圏設定の公表から6日後の昨年11月末、国防省は主力戦闘機のスホイ30と殲(せん)11が、空域に入った自衛隊のE767早期警戒管制機やF15戦闘機、米軍のEP3偵察機などに緊急発進(スクランブル)をかけたと発表した。
共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙、環球時報は独自情報として、E767とF15が航空自衛隊南西航空混成団所属だったとし、F15は那覇基地から飛来したと報道。中国の識別圏を「張り子のトラ」(英通信社記者)と運用能力を疑う国内外の世論に対し懸命に「宣伝戦」を繰り広げた。
複数の軍関係者によると東シナ海は南京軍区が管轄。防空識別圏の運用を担う主力戦力は殲10、殲11Bなどの戦闘機と空警2000などの早期警戒管制機とされる。軍諮問委員会元メンバーの一人は「軍は南京軍区に新鋭機を集中的に投入してきた」と話す。
中国の軍事事情に詳しいカナダの評論家、平可夫氏によると、殲10の作戦行動半径(軍用機が発進してから任務を遂行して帰還できる距離)は推定850キロ、殲11Bは1500キロに及び、早期警戒機のレーダーは300キロ先の相手機を捕捉する能力を持つ。「中国空軍の能力拡張の速度は日本を超える。識別圏の運用能力は整っているとみるべきだ」と話す。
ただ、中国の運用能力に疑問を示す声は多い。日本の防衛省関係者は「戦闘機の数は十分に備わっており、能力が上がっているのは事実」としながらも、「地上レーダーの能力には限界があり、早期警戒管制機もイスラエル製の最新鋭機の購入が米国の反対で頓挫し、性能で劣るロシア機をベースにしたものに頼っている」と話す。
管制機などが捕捉した情報を指令部門が受け取り、適切な基地から的確な方角に戦闘機を発進させる一連の判断と動作には経験が必要とされる。こうした運用能力にも、「中国空軍が日米のような能力を備えているとは思えない」(北京の外交筋)との見方が強い。
それでも、防空識別圏の設定で中国が運用の実績を積む舞台を得たのは事実だ。国防省は昨年末、防空識別圏設定からの1カ月で圏内でのパトロールが計51回に及び、延べ87機の戦闘機や早期警戒機が出動したと発表した。
軍総参謀部の元幹部は語る。「中国はいずれ、南シナ海や黄海にも防空識別圏を置く。我々は東シナ海で経験を積んでいるのだ」(北京=倉重奈苗、林望)
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01 13 (月) 秘密法反対「残りわずかな命を捧げる」
2014年1月11日
秘密法反対「残りわずかな命を捧げる」 瀬戸内寂聴さん
年内に施行される特定秘密保護法に対し、作家の瀬戸内寂聴さん(91)が「若い人たちのため、残りわずかな命を反対に捧げたい」と批判の声を上げた。10日、朝日新聞のインタビューに答え、自らの戦争体験から危険性を訴え、廃止を求めている。
表面上は普通の暮らしなのに、軍靴の音がどんどん大きくなっていったのが戦前でした。あの暗く、恐ろしい時代に戻りつつあると感じます。
首相が集団的自衛権の行使容認に意欲を見せ、自民党の改憲草案では自衛隊を「国防軍」にするとしました。日本は戦争のできる国に一途に向かっています。戦争が遠い遠い昔の話になり、いまの政治家はその怖さが身にしみていません。
戦争に行く人の家族は、表向きかもしれませんが、みんな「うちもやっと、お国のために尽くせる」と喜んでいました。私の家は男がいなかったので、恥ずかしかったぐらいでした。それは、教育によって思い込まされていたからです。
そのうえ、実際は負け戦だったのに、国民には「勝った」とウソが知らされ、本当の情報は隠されていました。ウソの情報をみんなが信じ、提灯(ちょうちん)行列で戦勝を祝っていたのです。
徳島の実家にいた母と祖父は太平洋戦争で、防空壕(ごう)の中で米軍機の爆撃を受けて亡くなりました。母が祖父に覆いかぶさったような形で、母は黒こげだったそうです。実家の建物も焼けてしまいました。
自分が死ぬと知りながら戦闘機に乗り込み、命を失った若い特攻隊員もたくさんいました。
私は「生き残っているのが申し訳ない」という気持ちを心の底に抱えて、戦後を生きてきました。だからこそ、戦争を再び招くような法律には絶対反対なのです。
日本人はあまり自分の意見を言いません。「お上の言うまま」という感覚が身についていて、「辛抱するのが美徳」とする風潮もあります。でも、もっと一人ひとりが、こういう風に生きたい、生きるためにこうしてほしいと心の欲求を口に出すべきです。その手段の一つがデモです。
ところが自民党の石破茂幹事長は、そのデモがテロ行為に結びつくとブログに書いた。むちゃくちゃな話です。国民の意見を無視する政治は民主主義ではありません。だから、もっと大きなデモが起きてもいいと思うのです。
いまは株価も上がり、景気が上向きに見えます。首相は自信を持って、憲法改正や集団的自衛権の行使容認に踏み込めると思っているのかもしれません。国民は景気だけを見ていてはいけません。危険性に気づかないといけません。戦争を経験している人はみんな、そう思っているはずです。
私は、残りわずかな命を秘密法反対に捧げます。でも、私たちのように戦争を生き残った一握りの人間たちだけだと、とても戦えません。若い人たちこそ、歴史の過ちをもう一度振り返ってみてほしい。そして、「これは間違っている」と立ち上がってほしい。(聞き手・神志那諒)
01 19 (日) 秘密法は立憲主義を守れますか
(特定秘密法から考える)
秘密法は立憲主義を守れますか 長谷部・杉田両教授対談
通常国会が24日に開会し、昨年12月に成立した特定秘密保護法は、引き続き主要なテーマのひとつとなる。この法律に賛成した長谷部恭男(はせべやすお)・東京大教授(憲法)と、反対の立場をとる杉田敦(あつし)・法政大教授(政治理論)に改めて、秘密法の論点は何かや、そこから見える日本の政治・社会の課題や展望について、語り合ってもらった。
杉田敦・法政大教授 長谷部さんはなぜ、秘密法に賛成されたのですか。
長谷部恭男・東京大教授 国を守るためです。単に領土を守るとか、国民の生命と財産を守るということではない。日本国憲法の基本原理である立憲主義を守るということです。
杉田 一般的にはその説明がわかりにくい。立憲主義とは通常、憲法をつかって権力を制限するものだと理解されていますが。
長谷部 世の中にはいろいろな考え方をする人がいて、しかも何が正しくて何が正しくないか、そう簡単に決着がつかない。多様な考えを持つ人たちが、何が正しいかをめぐって殴り合ったり殺しあったりすることなく、公平に暮らしていける枠組みをつくらなければならない。それが立憲主義の考え方。権力が制限されるのは、みんなを公平に扱う社会の仕組みをつくるためです。
しかし世界には今、中国や北朝鮮のように立憲主義の考えをとっていない国がある。私たちはそれらの国々から、憲法の定める自由で民主的な現在の政治体制を守らなければならない。そのために秘密法をつくり、特別に保護されるべき秘密が外に漏れないようにする必要があるのです。
杉田 日本では、権力は危ない、とにかく制限すべきだという考え方が強い。秘密法への批判の多くも、そういう権力観がベースになっていたと思います。しかし、権力の危険性はふまえつつも、同時に権力には、生活保障や安全保障など、広い意味でのセキュリティーを確保する積極的な側面もあることは確かです。
とはいえ、どうでしょう。板前さんが包丁を持っていても心配ありませんが、こわもての人が持っていると恐ろしいですよね。
長谷部 そうですね。
杉田 秘密法への反応もそういうことではないですか。法律は相互に関係し合っています。憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、安倍政権がめざす法制度改革の文脈に秘密法を位置づければ、不安も出てくる。情報が遮断された中で、いつの間にかとんでもない所に連れていかれるのではないかと。秘密法で国を守ろうとした結果、私たちの生活が脅かされるとすれば本末転倒ですよね。
(3面に続く)▼4面=運用は
(特定秘密法から考える)(1面から続く)
政権への不安は理解/恣意的運用防ぐ必要 教授2人対談
長谷部恭男・東京大教授 秘密法は民主党政権のもとで構想されたもので、民主党政権が提出していたらこれほど反発されなかった可能性が高いと思います。安倍政権の何が問題か。安倍晋三首相は昨年末、「国のために戦い、尊い命を犠牲にした御英霊に哀悼の誠を捧げる」と、靖国神社を参拝しました。
しかし私に言わせれば、靖国にまつられている人たちは、戦前・戦中の憲法体制を守るため、つまり今の日本とは「別の国」を守るために死んでいった。参拝は当然だという首相の論理は相当あやしい。「国を守る」といっても私と首相の言う意味はまったく違います。国を守るためと称して集団的自衛権の行使容認や、憲法改正を目指している安倍政権に多くの人が不安を抱くのは理解できる。私も集団的自衛権行使容認や憲法改正には反対です。
ただ、秘密法は、多くの先進諸国が持っているありふれた制度のひとつです。だから政権のありようとは別に、純粋に法技術的な観点から判断されるべきです。包丁の持ち主はいずれ代わるのですから。
杉田敦・法政大教授 法の種類にもよります。秘密法を使えば、有権者が政治的な判断をする際の前提となる重要な情報を、場合によっては60年間ずっと隠し続けられる。安倍政権が、例えば手形小切手法を改正しても不安にはなりませんが、秘密法もそれと一緒ということにはなりません。
機密保護や治安維持を目的とする法律は、私たちにセキュリティーをもたらす面がある一方、侵害する面がある。だからこそ中立・公平性の高い第三者機関をつくり、法律が恣意(しい)的に運用されていないかチェックさせる必要があります。
長谷部 第三者機関の意味は限られていると思います。情報に触れる人が増えれば機密保護という制度本来の趣旨が損なわれるし、専門性をもたない素人は何を特定秘密に指定すべきなのか判断できません。
◆キーワード
<秘密法と第三者機関> 秘密法は秘密指定の統一基準をつくる際、「識見を有する者の意見」を聴くと定めた。安倍政権は有識者による第三者機関「情報保全諮問会議」(渡辺恒雄座長)を設置したが、個別の秘密指定の内容をチェックするわけではない。首相はまた、法成立直前に「保全監視委員会」「独立公文書管理監」(ともに仮称)の設置も表明。だが、いずれも政府内に設置され、官僚主導の組織となりそうだ。
■杉田「条文あいまい、懸念招く」 長谷部「常識で判断、法律の前提」
杉田 第三者機関の限界は原発をめぐって露呈しました。事故以前にも専門家による原子力安全委員会という第三者的な組織がありましたが、実際には利害関係者の「ムラ」と化した。必要な対策も後回しにされ、結果として原発事故を防げませんでした。
そうした経緯を目の当たりにした私たちは、外部チェックの仕組みさえつくればいいと、単純に主張するわけにはいきません。かといって東京電力のような企業・業者や、機密にふれる官僚機構のような組織内部の規制だけに任せるわけにもいかない。今は決め手がない。だったら、できることを全部やるしかありません。
長谷部 理想の制度をめざして努力することは大切です。しかし、制度にはおのずと限界があることをわかった上でつくらないと、法や組織をつくったのに機能していないという批判の対象を、また一つ増やすだけになります。
杉田 秘密法の条文があいまいなことも、国民の不安を招いた。秘密の範囲が際限なく広がるのではないかと。また、立法過程で、知る権利や取材の自由に「十分に配慮」すると明記され、取材活動は「正当な業務」と位置づけられました。しかし当初は全く配慮されていませんでした。
長谷部 知る権利や報道の自由は憲法の原則なので、法律自体に書き込むかどうかはあまり意味がない。明記されてわかりやすくなったとは思いますが。
杉田 わかりやすさも大切です。憲法に書いてあるから法律には書かなくていいというのはあまりに法律業界の議論です。これだけ世論の反発を生んだのだから法律のつくり方も拙(つたな)かったと言わざるを得ません。
長谷部 しかし、政府が法案を提出した時には知る権利などの原則が盛り込まれたのに、「わかりにくい」と批判されました。
例えば秘密法22条2項では「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、(略)法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とする」となっていますが、「『著しく不当な方法』とは何かわからない」と批判された。正当な取材方法とは何か、法律にいちいち明確に書かないと理解できないほど、ジャーナリストのみなさんは「子ども」なのでしょうか。
法律とは総じてあいまいなものです。ガチガチに固めてしまうと、具体的な事例に適用した時におかしなことになるからです。例えば、住居侵入罪は「正当な理由」がないことが構成要件になる。正当な理由が何かは常識で判断されるという前提を抜きにしたら、法律は機能しません。
杉田 その常識が変えられてしまうという不安を今回、多くの人が持ったのではないですか。あいまいな書きぶりの法律が悪用されるのではと懸念するのは不自然でしょうか。
◆キーワード
<秘密法と「知る権利」> 国民の「知る権利」は、秘密法の当初の政府案にはなかったが、公明党の要求を受けて国会提出前に盛り込まれた。条文は「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」と明記。ただ、どの程度「配慮」されるのかは不透明で、たとえ「報道・取材の自由」に配慮したとしても、秘密を扱う公務員の側が厳罰を恐れて情報提供しなくなり、国民の知る権利が制約されるという問題点は解消していない。
■有権者、問われる自覚
長谷部 秘密法の運用基準づくりはこれからです。民主党への政権交代が挫折に終わり、自民・公明の連立へと政権が回帰した今、民主主義や選挙の意味とは何かが改めて問われています。安倍政権をつくったのは有権者であり、民主党政権を徹底的に批判したメディアです。「次」の選択肢の品質も考えないで、とにかく政権の首を切るということで良いのか。有権者の自覚も問われています。
杉田 今回のような事態で政治不信が広まると、政策論議の土台そのものが壊れてしまいかねない。政治が何を提案しても、まずは不信感が先に立つことになるからです。その意味でも安倍政権の責任は重い。
有権者の態度も問われます。秘密保護法への反対は盛り上がりましたが、これまで情報隠蔽(いんぺい)への感度は低かった。イラク開戦をめぐって時の政府が不正確な情報を出したことに、米英の有権者や議会は怒り、当時の責任者を激しく追及しました。怒る時にはしっかり怒る、主権者としての自覚が民主政治を支えるのです。=敬称略
■あるべき政治と社会を探る
昨年12月6日、根強い世論の反対や懸念を押し切って特定秘密保護法が成立した。だが、法の施行は公布から1年以内と規定されており、廃止や改正をめざす時間はまだある。国民の「知る権利」を守って社会を萎縮させないために、適正な法運用の仕組みが作られるよう、私たちは監視を続けていく。ただ、それだけでは十分ではない。
この国の政治や社会はどうあるべきか――。秘密法をめぐる議論の「その先」にあるこの問いを深めなければ、「何をやってもどうせ変わらない」という政治への諦めを育んでしまうかもしれない。そんな問題意識から、長谷部、杉田両教授に対談をお願いした。専門が違う2人の政治や社会の見方は異なり、秘密法への賛否も分かれた。
2人の静かな対談を読んでも、留飲は下がらないし、簡単には「答え」は得られないかもしれない。日々のニュースを追う新聞記者は、こんな遠回りは本来苦手だ。だから、あえて。政治や社会に対する理解を深め、どうあるべきかを考えることは、圧倒的な議席を背景に、憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、この国のかたちを大きく変えようとしている安倍政権と向き合うための大事な「足場」になるはずだ。(高橋純子)
■秘密法の骨子
◆行政機関の長が特定秘密を指定
◆指定の有効期間は原則60年。例外で「政令で定める重要な情報」など7項目は60年超
◆行政機関の長は秘密を扱う者に「適性評価」を実施
◆国民の知る権利の保障に資する報道・取材の自由に十分に配慮
◆秘密を扱う者が漏らした時は、10年以下の懲役
◆公布から1年以内に施行
◆朝日新聞は今後、月1回をめどに、両教授が秘密法から見えてくる課題や展望などを語り合う
対談企画「特定秘密法から考える」を掲載します。
(特定秘密法から考える)
「知る権利」や情報公開をめぐる議論詳細 教授2人対談
特定秘密保護法は情報公開の流れに逆行するのではないか――。長谷部恭男・東京大教授と、杉田敦・法政大教授による対談のうち、「知る権利」や情報公開をめぐる議論の詳細は次の通り。▼1面参照
杉田 秘密法が社会にもたらす萎縮効果は大きい。法によって処罰されるかどうかについて、最後は裁判所が判断するから大丈夫だと割り切ることは、普通の人にはできません。逮捕や裁判自体がものすごい負担ですから。
長谷部 悪用できないような法律は、実は善く使うことも難しい。法律とはもろ刃の剣です。悪用を防ぐためには、日々の実践によって慣行を積み重ね、裁判所による判例を積み重ねていくしかありません。例えばマスコミは「捜査関係者への取材によると」と事件報道していますが、これは厳密に言えば、警察官らが守秘義務を破ったことになり、地方公務員法違反です。でも逮捕されないのは慣行が確立しているからです。
なぜみなさん、そんなに自信がないのですか。戦前戦中と今は政治体制が全く異なるのに、秘密法ができたらお手上げだ、戦前戦中に戻ってしまうというのは極めておかしな議論です。
杉田 確かに国の体制は法律の条文だけではなく、慣行や判例の積み重ねによって成り立っていて「ここまでは大丈夫」という線が重要です。その点で、戦後日本の蓄積はある程度評価されるべきで、「秘密法で日本は一挙に戦前に回帰する」というような言い方は誤解を招きやすい。
ただし、戦後日本の政治体制で最もそういう蓄積がないのが情報公開の分野です。日本は機密が漏れる心配をするより前に、情報公開や公文書管理について制度の整備を進めるべきです。米国では一定の年限を越えたら、質量とも日本では考えられないほどの情報が公開される。
「沖縄密約」が典型ですが、米国の公文書で密約の存在が明らかになっても、日本政府は密約はないと否定し続けてきた。一定の年月が経過したら機密も含めて有権者に公開し、判断を仰ぐのが当たり前という慣行は日本ではまだ確立していません。こんな現状で機密保護だけを先行させるのはどう考えてもおかしい。
長谷部 文書管理や情報公開の制度は不十分かもしれないが、あることはある。その中で実践を重ねていくしかありません。そもそも秘密法ができたことで、情報公開の観点から何が悪くなると考えているのですか。
杉田 外交機密、防衛機密に加えて、テロ関係という言い方で警察や公安機関が握る機密も特定秘密に指定され、行政へのチェックが難しくなる点です。
長谷部 しかし、そういう情報はこれまでも表に出てきていませんよね。それに秘密法では、特定秘密に指定された情報は省庁間で共有することを前提に制度設計されていますから、外務省も防衛省も、本当に隠したい情報は秘密指定せずに手元に抱えると思います。
杉田 でも、役所はどうせ情報を隠すから同じだということにはなりませんよね。どうすれば必要な情報が適切に管理され開示されるようになるか。この際、一から出直す覚悟が必要ではないでしょうか。
長谷部 秘密法ができたから状況が悪くなるわけではないということです。いずれにしても秘密法の運用基準づくりはこれからの課題です。いま言えるのは、情報公開も秘密保護も、判例の蓄積も含めて実践を積み重ねる中でよりよい方向に持っていくしかない、ということです。=敬称略
◆キーワード
<沖縄密約問題> 1972年の沖縄返還をめぐり、日米間で交わされた秘密合意。米国側の情報公開や関係者の証言で存在が指摘されていたが、歴代自民党政権は否定し続けてきた。民主党への政権交代後、岡田克也外相(当時)が設けた有識者委員会は2010年3月、調査報告書を提出。「沖縄返還に伴い、本来、米側が負担すべき沖縄の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりする」との秘密合意を「広義の密約」と認定した。
2014年1月19日(日) 午後9:00~午後9:50(50分) NHKスペシャル「アルツハイマー病をくい止めろ!」 番組内容 認知症800万人時代と言われる今、アルツハイマー病の「予防」が注目されている。最先端の研究現場を訪ね、運動・睡眠などの生活習慣の改善や、新しい薬の可能性に迫る。 詳細 認知症に占める割合がおよそ7割と最も高く、発症者が急増しているアルツハイマー病。その「予防」が、注目されている。最新の研究で、アルツハイマー病が発症の25年前から始まり、進行していくメカニズムが浮かび上がってきたからだ。新薬の開発や、運動・睡眠などの生活習慣の改善の効果を探る研究が加速している。「宿命の病」から「予防できる病」へ。世界各地でアルツハイマー病に立ち向かう最先端の現場に迫る。 長野県飯田下伊那企業ガイド2014-2015 http://iidajob.com/ 六次産業に関連する検索キーワード 六次産業 https://www.google.co.jp/webhp?hl=ja&tab=ww#hl=ja&q=%E5%85%AD%E6%AC%A1%E7%94%A3%E6%A5%AD 農山漁村の6次産業化■ http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika.html 農林水産省-6次産業化の事例集等について http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/jirei.html 6次産業化 農林水産省■ http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/pdf/6jika_panf.pdf 6次産業化の推進について■ http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/pdf/251122hp.pdf 第6チャネル■ http://www.6-ch.jp/index.html 子ども・子育て支援法■ http://law.e-gov.go.jp/announce/H24HO065.html 脳のはたらき・こども期■ http://www.d6.dion.ne.jp/~hiudent/brain1.html 脳の仕組みと脳内物質の働き■ http://www.geocities.jp/eastmission7/b-system.html 脳と記憶について - 脳卒中を生きる■ http://www.saiken.jp/pg217.html 00 はじめに■ http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/01.pdf 01 「ほめる子育て・その1」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/02.pdf 02 「ほめる子育て・その2」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/03.pdf 03 「育てる」と「育つ」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/04.pdf 04 「母子関係の発達・その1」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/05.pdf 05 「母子関係の発達・その2」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/06.pdf 06 「夜泣き」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/07.pdf 07 「言葉の発達・その1」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/08.pdf 08 「言葉の発達・その2」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/09.pdf 09 「記憶のメカニズム」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/10.pdf 10 「記憶の発達」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/11.pdf 11 「視力と聴力の発達」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/12.pdf 12 「嗅覚と触覚と味覚の発達」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/13.pdf 13 「子どものうつとひきこもり」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/14.pdf 14 「対所行動ということ」 http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/15.pdf 15 おわりに http://www.jomf.or.jp/html/childcare_pdf/16.pdf 大脳皮質 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%84%B3%E7%9A%AE%E8%B3%AA