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【 02】01/29

  01 29 おぞましい教育への考え方   
  01 31 刺激だけで新万能細胞 STAP細胞   


 01 29 (水) おぞましい教育への考え方  

朝日デジタル 朝刊 01月29日 水曜日 東京本社版 6:30現在

  (1面) 教委制度見直し本格化 政治主導、首長に権限 安倍政権
  (3面) 強まる「領土教育」 教科書指針に「尖閣・竹島は領土」
      (ニュースがわかる!)学習指導要領の解説、どう使われるの?
  (4面) 教委改革、応援団は維新・みんな 
        集団的自衛権と同じ構図に 改憲枠組み、見え隠れ
  (19面) 尖閣は「共有の道しるべ」
        山田慶兒さん、船乗りから見た島々の歴史探る

(1面) 教委制度見直し本格化
     政治主導 首長に権限


 安倍政権が教育委員会制度の見直しに本格的に乗り出した。安倍晋三首相は28日の衆院本会議で「現行の制度を抜本的に改革する」と表明。政治からの中立性を保ってきた教委の権限を自治体の首長に移し、政治主導の教育行政に変えるのが狙いだ。政権は3月にも関連法改正案を国会提出する構えで、実現すれば戦後教育の大転換になる。▼4面=応援団は維新・みんな

 自民党は28日、教委制度のあり方を議論する小委員会(委員長=渡海紀三朗・元文部科学相)を開催。自治体の教育行政の事務方トップである教育長について、教委が教育委員から選出する従来の方式を変え、首長が任命できるよう関連法の改正方針を確認した。教育行政に首長の意向を反映しやすくする狙いだ。

 現行制度では、首長は予算編成や教育委員任命などで教育行政に関わるものの、実務は教育長が担う。教育長は多くが公務員出身で、教育関係者や民間から選出される場合もある。教科書採択や教員人事、学校での教育内容などは首長の意向に左右されず、政治的中立性を高めるようにしてきた。一方、教委は非常勤の教育委員により運営され、2011年に大津市で起きたいじめ自殺問題では対応の遅さや責任の所在のあいまいさが批判された。

 自民党は12年9月に安倍晋三総裁が就任すると、教育再生実行本部を発足させ教育行政の見直しに着手。同年11月の中間とりまとめで、教委を「無責任な教育行政システム」と批判し、「首長が任命する教育長が責任者」「教委はその諮問機関」などとする見直し案を提案した。背景には、教職員労組が教育現場に一定の影響力をもつことを問題視し、選挙で選ばれた首長こそ民意を反映した教育行政を進められるとの考えがある。

 翌12月の衆院選を経て安倍政権が発足すると、安倍首相は実行本部長だった下村博文氏を文科相に起用。政府の教育再生実行会議を担わせ、中間とりまとめに沿った提言づくりを進めた。首相は会議の席上、首長の権限を強める意向を示した。

 政府の中央教育審議会は昨年末、地方教育行政の最終責任を教委から首長に移す改革案を下村氏に答申し、(1)首長が教育行政の大綱的な方針を策定(2)首長が任命・罷免(ひめん)する教育長が日常事務を執行(3)教委は大綱方針などを審議――などを求めた。「教育に政治的影響が及び過ぎる」との懸念から、教育長への指示機会を限るなど首長の権限に一定の歯止めをかけたが、戦後教育の根幹として1948年から続く教委制度の大転換につながるものだ。

 政権内には、教委が教育行政を担うことが、いじめ問題などに対処しきれない無責任体質につながっているとの考えがあり、中教審の答申もこの考えに沿う。

 自民党は2月4日から地方教育行政法や地方自治法の改正について公明党と協議に入る予定。安倍政権は3月にも通常国会に改正案を提出する考えだ。(池尻和生、岡雄一郎)

 ◆キーワード

 <教育委員会> 1948年、教育が政治に左右された戦前の反省から、政治権力が直接関与できないように作られた。初期は公選制だったが、政治的な対立の影響を受けやすいとして56年に地方教育行政法が成立し、任命制に。自治体の長(首長)に任命された原則5人の教育委員が、教員人事や使用する教科書など教育に関する方針や施策を合議で決める。

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(3面) 強まる「領土教育」
     教科書指針に「尖閣・竹島は領土」


 ■Teaching manuals modified to describe Senkakus, Takeshima as Japan’s territory:

The education ministry said Jan. 28 it has revised practice manuals for school curriculum guidelines to underscore the government’s position that the disputed Senkaku Islands and the Takeshima islets are integral parts of Japan’s territory.

The practice manuals are for junior and senior high school teachers. They are used in textbook screening and deciding how to instruct students at schools.

"As we are striving to develop human resources who can do well globally, it is only natural to teach students about our territories in a correct manner," education minister Hakubun Shimomura said at a news conference the same day.

The uninhabited Senkaku Islands in the East China Sea are controlled by Japan but also claimed by China, while the Takeshima islets in the Sea of Japan are administered by South Korea despite Tokyo’s claim that they are inherently Japanese territory.

The announcement will inevitably spark a backlash from Beijing and Seoul.

Earlier this month, the South Korean government called on Japan to retract its decision to describe the Takeshima islets as its territory.

"(The revision) is a problem of a different dimension from keeping friendly relations with neighboring countries," Shimomura said at the news conference. "We will provide polite explanations for both China and South Korea."

The new manuals state that the Takeshima islets and the Northern Territories off the coast of Hokkaido, which were seized by the Soviet Union at the end of World War II and are still controlled by Russia, have been "illegally occupied." The revised manuals also state the Japanese position that no territorial dispute exists with regard to the Senkakus.

In particular, manuals covering history lessons in junior and senior high schools require teachers explain to students that Japan integrated the Senkakus and Takeshima as its territory based on reasonable claims in line with international laws.

In conventional practice manuals, there was no mention of the Senkaku Islands. The old manuals for high schools do not touch on the Takeshima islets, either.

That prompted lawmakers, primarily from the ruling Liberal Democratic Party, to demand that students learn the government’s official stance over territorial issues with neighboring countries.

The new manuals also describe the Self-Defense Forces, effectively Japan’s armed forces, as working to protect the lives and safety of the people.

The modified manuals are expected to be first used in the screening of junior high school textbooks slated in April. Textbooks examined based on the new manuals will be available at junior high schools in fiscal 2016 and at senior high schools in fiscal 2017. By YUICHIRO OKA/ Staff Writer

     ◇

 文部科学省は28日、中学・高校向けの学習指導要領の解説に、尖閣諸島と竹島を「わが国固有の領土」と明記する改定をし、発表した。4月に始まる中学向けの教科書検定から適用され、中学は2016年度、高校は17年度に使用が始まる教科書に反映される。

 下村博文文科相が同日の記者会見で明らかにし、「グローバル人材を育成する中で、自国の領土について正しく教えるのは重要」と説明。「近隣国と友好関係を保つこととは別次元の問題で、中韓両国には丁寧に説明する」とも述べた。しかし、竹島(韓国名・独島)の領有権を主張する韓国政府は、すでに改定の撤回を求めている。

 学習指導要領の解説は、学校での指導や教科書編集の指針となるもので、文科省が指導要領に基づき編集している。今回の改定では、中学社会の地理と公民、高校公民で、北方領土と竹島、尖閣について「わが国固有の領土」と明記。北方領土と竹島は、それぞれ「ロシアと韓国に不法占拠されている」などと表記し、尖閣については「領有権問題は存在しないことを理解させる」とした。

 中学の歴史と高校の日本史では、竹島と尖閣について「わが国が国際法上正当な根拠に基づき、領土に編入した経緯も取り上げる」としている。

 従来は、尖閣について記述がなく、竹島も高校では記述がなかった。以前から自民党を中心に「日本の領有に関する正当な主張を教えるべきだ」との意見が根強く、改定に踏み切った。下村氏は、指導要領についても「反映されるべきだ」と述べ、同様の改訂が望ましいとの考えを示した。

 このほか、自然災害に関して中高の地理で、自衛隊や消防、警察などを挙げ、「人々の生命や安全確保のために活動していることなどにも触れる」と役割の記述を追加した。

 解説は通常、約10年ごとの指導要領改訂に合わせて改められ、それ以外の改定はまれという。2008年に中学社会の解説で竹島に関する記述を加えた際、韓国政府が駐日大使を一時帰国させるなど反発した。(岡雄一郎)

     ◇

 英文記事は、前日までの朝日新聞記事をベースに編集した海外読者向けの「Asia & Japan Watch(AJW)」の記事です。完全な対訳とは限りません。

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(1/8) 「家庭内野党」か「応援団」か
     発信続ける安倍首相夫人


 安倍晋三首相(59)夫人の昭恵さん(51)が独自色の強い発信を続けている。第2次安倍政権発足に伴いファーストレディーとして再登板し、脱原発や日韓友好、防潮堤見直しに取り組み、政権の政策に異論も唱える。昭恵さんの言葉で首相の方針が変わることはなかなかないが、政権2年目も発信し続けていきそうだ。

インタビュー詳報

 昭恵さんは昨年12月、自民党本部で東日本大震災の被災地の巨大防潮堤計画に関する会合に出席した。首相夫人が党会合で発言するのは異例。「景観が崩れ、環境も破壊される。もう一度考えてほしい」と計画見直しを主張し、帰宅した首相に「何とかならないの」と迫ったが、首相は「一度決まったものは変えるのが難しい」と答えたという。

 昭恵さんは2006~07年の第1次政権では「自分らしさがなかった」と振り返る。その後、地元・山口で稲作に挑戦したり、都内に居酒屋をオープンしたりといった試みを始めた。

 政権は原発再稼働に前向きだが、昭恵さんは「事故が起きると影響が大きい」と否定的で、再生可能エネルギーの新技術を研究する施設を新設するよう首相に提案した。講演では「私は家庭内野党」と語り、政権の原発輸出に苦言を呈す。

 首相が首脳会談の糸口をつかめない韓国との交流にも力を入れる。在日韓国大使館でキムチを作り、韓流ミュージカルをフェイスブック(FB)で絶賛。FBで「韓国との交流、ありえない」などと批判されたが、昭恵さんは「隣国ですので仲良くしていきたい」と書き込んだ。昭恵さんによると、韓国側から「来てほしい」と要請されたという。ただ、昨年末に首相が靖国神社参拝に踏み切り、実現は遠のきそうだ。

 最近では鳩山由紀夫元首相夫人や菅直人元首相夫人が「首相の言動や政策に意見を言っていた」(民主党関係者)。野田佳彦前首相夫人のようにあまり人前に出ない夫人も少なくない。

 周囲はどう見るか。脱原発で連携する環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「自民党の古さが、昭恵さんが表に出ることでソフトかのように錯覚させてしまう」。首相は扱いかねているかもしれないが、図らずも政権のイメージアップにつながっているというわけだ。首相は昨年5月、テレビ番組で「(彼女は)我が道を行っているが、ここ一番困ったときには力を合わせる」と評している。

 首相周辺は「家庭内野党というよりは自民党の部会みたいなもの。違う意見を持っていても、最後は選ばれた意見を尊重する」と解説する。昭恵さんは「主人に反発する人たちの意見もわかる」と説明する。首相に大きく方針転換させるまではいかないが、幅広い意見に耳を傾けるよう「つなぎ役」を自任しているようだ。(松井望美)

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(10/19) 昭恵さん「何言われようが隣の国」
      日韓交流への批判に


 【貞松慎二郎】安倍晋三首相夫人の昭恵さんが19日、下関市であった市女性団体連絡協議会(田中クゲヨ会長、10団体)の創立30周年記念式典に招かれた。先日、東京であった「日韓交流おまつり」に参加したのをインターネットの交流サイト・フェイスブック(FB)に投稿して一部で批判されたのに触れ、「何を言われようがお隣の国。特に下関は釜山と姉妹都市でもあり、本当に近い所なので、できる限り親しくしていけたらいいなと思う」と述べた。

 約120人を前に「世界に花ひらく女性の力」と題して、「まだまだ世界に比べると日本の女性たちの活躍の場は少ない。決定する所に、日本は女性がほとんどいない。女性の母性こそが色んなものを受け入れられる」と語った。

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(9/23) 安倍首相夫人FBに批判投稿相次ぐ
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 安倍晋三首相の妻昭恵さんが、21日の「日韓交流おまつり」に参加したとフェイスブック(FB)に投稿したところ、批判的な意見も含め数多くのコメントが寄せられた。昭恵さんは「色々な意見があると思いますが、隣国ですので仲良くしていきたい」と改めて投稿した。

 昭恵さんは、21日のイベントで大鍋のビビンバをかき混ぜた様子をその日のうちにFBで紹介。これに対し、「違和感がある」「不愉快だ」「韓国との交流、あり得ない」といったコメントが相次いだ。

 昭恵さんは同日中に、高円宮妃久子さまもイベントに臨席したことや、日韓友好への思いを再び投稿。FBには好意的なコメントも寄せられ、賛意を示す「いいね!」は22日夕までに1500件を超えた。

【下平・註】

‘神代でも 女でなけりゃ 夜は明けず’アメノウズメノミコトのフラダンスがなかったら、この世に闇が続いた。 その通りになりそうだ。 子供を産むのは女です。 子供の命を必死で守るのも女です。

世界に共通するこの真実に気がついたならば、女の議員を選んだ方がいいに決まっている。 女の総理大臣を選んだ方がいい。 女帝また然り。

男は。女の言うことを拳々服膺(ケンケンフクヨウ)すべし。



(3面)  学習指導要領の解説、どう使われるの?

 ◇教え方や教科書作成の参考にする。変更の影響は大きい

 コブク郎 学習指導要領の解説って、何?

 A 学習指導要領というのは、小中高校で教える内容や各教科の目標を国が大まかに示したもの。それをどう解釈すればいいのか、細かく説明したものが「解説」だ。全教科分あるよ。

 コ 内容が変わったの?

 A そう。中国、韓国と議論になっている竹島と尖閣諸島について、日本政府の考えをより強調して教えられるよう、「わが国固有の領土」と明記された。中学の社会、高校の地理歴史、公民が対象だ。

 コ 誰が解説を作るの?

 A 文部科学省の職員が専門の大学教授や現場の教師らの力を借りて、半年~1年くらいかけて作る。指導要領は中央教育審議会の委員が公開の会議で方針を決めるけれど、解説は指導要領をもとに省内で作業が進められるんだ。

 コ どんな内容?

 A 中学の指導要領は、A4判で100ページほどの冊子に全教科分が書かれている。それだけでは分かりづらいので、解説で意味や教え方などを項目ごとに詳しく説明している。中学社会だけで129ページもある。

 コ そうなんだ。

 A 中学社会だと、指導要領に「都道府県の名称と位置、都道府県庁所在地名も取り上げる」という項目がある。それについて解説は「所在地名を地図で確かめたり、自然や社会的条件という視点から各所在地の共通性を調べたりする学習が考えられる」と例示している。「覚えるだけの学習にならないように配慮する」とも書いてある。

 コ どう使われるの?

 A 学校の先生や教育委員会職員が教え方を考えたり、出版社が教科書を作ったりする時の参考にする。教科指導や教科書編集は指導要領に従うよう法令などで決まっている。教え方や教科書はおのずと解説に沿うことになる。変更の影響は大きいね。(岡雄一郎)

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(4面) 教委改革 応援団は維新 みんな
     集団的自衛権と同じ構図に


 安倍晋三首相が教育委員会制度の抜本改革を表明し、教育制度見直し問題が政権の枠組みに影響する可能性が出てきた。昨年の臨時国会で政権が模索した「自民・日本維新の会・みんな」の枠組みが見え隠れし、連立与党の公明党は警戒感を隠さない。首相が目指し、やはり公明が慎重な集団的自衛権の行使容認の「前哨戦」のような構図になってきた。▼1面参照

 「教委制度を思い切って廃止し、地方教育行政における責任体制を確立すべきだ」。28日の衆院本会議で日本維新の会の松野頼久・国会議員団幹事長がこう首相に迫ると、首相はわが意を得たり、とばかりに見直しに意欲を示した。

 背景には首相がめざす憲法改正に向け、維新やみんなの党との協力を模索してきたことが見え隠れする。伏線は民主党政権時代の2012年2月。当時野党で無役だった安倍氏は、大阪市で開かれた教育問題を考える集会で維新の松井一郎幹事長(大阪府知事)と同席した。

 国政進出を目指していた維新は当時、代表の橋下徹大阪市長と松井氏が大阪府、市で教委への政治的関与を強める全国初の条例制定を推進。集会で松井氏が「民意が生かされていない」と教委制度を批判すると、安倍氏は「条例は私たちの方向とまったく同じ」。これを機に安倍氏、菅義偉氏(現・官房長官)と橋下、松井両氏は連携を深めていく。

 安倍氏に近いみんなの党の渡辺喜美代表も12年末の衆院選公約に、教委設置を自治体判断に委ねる見直し案を明記し、首相の方針に賛同する。

 維新、みんな両党は昨年の臨時国会で特定秘密保護法案の修正協議に参加。両党が首相の支援勢力に加わる構図が見えてきた。

 一方、制度見直しに慎重な公明党には、首相が維新、みんなとの連携を優先するのではないか、との警戒感が強い。石井啓一政調会長は「教育の政治的な中立性が守れるか大いに疑義がある」と牽制(けんせい)する。自民党の文教族議員の一部にも、首長に権限を移すと教委の中立性を損ないかねないとの懸念から、教委に権限を残す案や、教育長と教育委員長を兼ねさせて首長の意向を反映させやすくする折衷案などが持ち上がっている。(池尻和生、大津智義)

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(19面) 尖閣は「共有の道しるべ」
      山田慶兒さん、船乗りから見た島々の歴史探る


 尖閣諸島の領有権問題が起こるはるか昔、船乗りにとって島々はどんな存在だったのか――。世界の科学技術史に詳しい京都大学名誉教授で龍谷大学客員教授の山田慶兒さん(81)が、『海路としての〈尖閣諸島〉 航海技術史上の洋上風景』で尖閣諸島の歴史的風景を伝えている。

 山田さんは、中国の医学や暦学、博物学などの研究で知られる。執筆のきっかけは、中国・明の提督、鄭和(ていわ)の航海技術への関心から。鄭和は1405年、大船団を率いて東南アジアを経てインド、東アフリカの沿岸諸国を歴訪した。鄭和は計7回の大航海を果たしたが、その航海に参加したと思われる船乗りが書き残した航海指針書の筆写本が英・オックスフォード大の図書館に残る。「この航海指針書に文献上初めて、後に尖閣諸島と呼ばれる島々の記録がある」

 当時使節たちが行き交っていた中国南部・福建―琉球航路の記述の中で、「釣魚嶼(魚釣島)」など三つの島が登場。福建側のどの港から出帆しても魚釣島を経由していることも分かる。

 清時代の航海指針書もこの三つの島に言及しており、山田さんは「当時の船乗りにとって島は航海の目印だったが、中でも尖閣諸島が特別な位置を占めていたことが分かる」という。

 中国と琉球の船乗りたちは海上で共通の危険に接するため、お互いの航海指針書を共有していたという。

 山田さんは「昔の船乗りの意識には国境のような壁はなく、航海指針書は共有の知的財産で、尖閣諸島などの島々も航海中の道しるべとなる共有財産だった。その歴史を知って欲しい。英知と勇気を持てば道は開けるはず」と話している。

 直接販売のみ。2625円(送料・税込み)。郵便振替で00910・1・93863 編集グループ〈SURE〉へ。電話は075・761・2391。(河野通高)



 01 31 (金) 刺激だけで新万能細胞 STAP細胞  

2014年1月30日05時00分 刺激だけで新万能細胞 理研、マウスで成功 STAP細胞

 理化学研究所などが、まったく新しい「万能細胞」の作製に成功した。マウスの体の細胞を、弱酸性の液体で刺激するだけで、どんな細胞にもなれる万能細胞に変化する。いったん役割が定まった体の細胞が、この程度の刺激で万能細胞に変わることはありえないとされていた。生命科学の常識を覆す画期的な成果だ。29日、英科学誌ネイチャー電子版のトップ記事として掲載された。▼2面=液に浸して25分、17面=会見の一問一答、39面=30歳大発見

■iPSより作製簡単

 理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー(30)らは新たな万能細胞をSTAP(スタップ)細胞と名付けた。STAPとは「刺激惹起(じゃっき)性多能性獲得(stimulus―Triggered Acquisition of Pluripotency)」の略称だ。

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)よりも簡単に効率よく作ることができた。また、遺伝子を傷つけにくいため、がん化の恐れも少ないと考えられる。

 作り方は簡単だ。小保方さんらは、マウスの脾臓(ひぞう)から取り出した白血球の一種のリンパ球を紅茶程度の弱酸性液に25分間浸し、その後に培養。すると数日後には万能細胞に特有のたんぱく質を持った細胞ができた。

 この細胞をマウスの皮下に移植すると、神経や筋肉、腸の細胞になった。そのままでは胎児になれないよう操作した受精卵にSTAP細胞を注入して子宮に戻すと、全身がSTAP細胞から育った胎児になった。これらの結果からSTAP細胞は、どんな組織にでもなれる万能細胞であることが立証された。

 酸による刺激だけではなく、細い管に無理やり通したり、毒素を加えたりといった他の刺激でも、頻度は低いが同様の変化が起きることも分かった。細胞を取り巻くさまざまなストレス環境が、変化を引き起こすと見られる。

 STAP細胞は、iPS細胞とES細胞からは作れない胎盤という組織にも育ち、万能性がより高く、受精卵により近いことを実験で示した。さまざまな病気の原因を解き明かす研究への活用をはじめ、切断した指が再び生えてくるような究極の再生医療への応用にまでつながる可能性がある。

 ただ、成功したのは生後1週間というごく若いマウスの細胞だけ。大人のマウスではうまくいっておらず、その理由はわかっていない。人間の細胞からもまだ作られていない。医療応用に向けて乗り越えるべきハードルは少なくない。  (小宮山亮磨)

■科学の常識覆す

 今回、報告されたSTAP細胞は、生命科学の歴史を塗り替えるものだ。

 たった1個の細胞にすぎない受精卵が、細胞分裂を繰り返しながら神経や筋肉などの役割に分かれ、赤ちゃんになる。このようにいったん体の各組織に分化した後の細胞は、元に戻る初期化を自発的に起こすことはない、というのが生命科学の常識だった。

 2012年にノーベル賞を受けた山中伸弥京大教授が作ったiPS細胞は、複数の遺伝子を加えて人工的につくった万能細胞であり、細胞が自発的に初期化してできたわけではない。

 一方、STAP細胞は細胞自体に触れることなく、取り巻く環境を少し厳しくするだけで、自発的な初期化を促し、成功した。

 厳しい環境にさらされた植物が自発的に初期化することは知られていたが、哺乳類ではあり得ないと考えられていた。

 STAP細胞作製の驚くほどの単純さに、ネイチャー誌は最初、論文を突き返した。「何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄(ぐろう)している」と激しい意見がついていたそうだ。この言葉こそ、小保方さんの発想が、研究の歴史を塗り替えるほど独創的である証しだろう。

 今後、人での再生医療への応用も視野に入れつつ、この発見を手がかりに、生命の神秘に迫ることができるだろう。(中村通子)

■「誇りに思う」 山中教授コメント

 京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は「重要な研究成果が、日本人研究者によって発信されたことを誇りに思う。人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞(万能細胞)が作られることを期待している」とのコメントを発表した。

 ◆キーワード

 <万能細胞> 筋肉や内臓、脳など体を作る全ての種類の細胞に変化できる細胞。通常の細胞は筋肉なら筋肉、肝臓なら肝臓の細胞にしかなれない。1個の細胞から全身の細胞を作り出す受精卵のほか、少し成長した受精卵を壊して取り出したES細胞(胚〈はい〉性幹細胞)、山中伸弥・京都大教授が作り出したiPS細胞(人工多能性幹細胞)がある。

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(2面)
(時時刻刻)万能細胞、新時代 STAP細胞、液に浸して25分で誕生

 ちょっとした刺激を加えればできる新型の万能細胞は、専門家も「信じられない」と驚き、一度は論文掲載を拒まれるほど常識を覆す大発見だ。将来の再生医療の道を開く可能性も秘めるだけに、重点分野として研究資金を投入した国にとって功を奏した形だ。ただ、競争の激しいこの分野を勝ち抜くには、課題も多く残されている。▼1面参照

 「今回の発表は、まったく新しい万能細胞です。私も最初は『信じられない』と思ったぐらい」

 英科学誌ネイチャーへの掲載に先立つ28日、神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)で開かれた記者会見。笹井芳樹副センター長はそう切り出した。

 ふつうの細胞に外部から刺激を与えるだけで、ひとりでにiPS細胞のような万能細胞ができてしまう。あまりに簡単で、あまりに常識破りな「STAP(スタップ)細胞」の作り方は、理研の小保方晴子ユニットリーダー(30)が糸口をつかんだ。2008年、早稲田大大学院から米ハーバード大に留学した直後。再生医療につながる幹細胞の研究をしていた時だった。

 いろいろな組織になれる幹細胞は、ふつうの細胞よりサイズが小さいという特徴がある。マウスの体から取ってきた細胞の中から小さい細胞だけをより分ければ、幹細胞を集められるのではないか。指導教授のアイデアに従い、細いガラス管に通して小さい細胞を選別する実験をしていた。

 内径0・03~0・05ミリのガラス管を通すと、確かに幹細胞のような細胞が出てきた。ところが、ガラス管を通す前の細胞の中には、幹細胞はまったく見つからなかった。

 ふつうなら、あるはずなのに見つけられないだけ、と考える。だが、小保方さんは違った。幹細胞が「より分けられている」のではなく、細いガラス管の中に押し込められるという刺激によって、幹細胞のような細胞が「作られている」のではないか――。現象をありのままに解釈した。

 毒を与えたり、熱したり、飢餓状態にしたり。様々な刺激を細胞に与えてみた。その中で最も効率よく作れたのが、弱酸性の液体に浸す方法。浸す時間は25分。細胞が死に瀕(ひん)すると変身するのでは、と考えた。

 だが、信じてもらうのは難しかった。いったんさまざまな組織になった細胞が、環境を変えるだけで幹細胞などに「初期化」される現象は、ニンジンなどの植物では知られるが、動物では絶対に起きないと考えられていた。iPS細胞などの万能細胞を作るには、遺伝子を人為的に働かせるなど、細胞の中身に手を加える操作が不可欠だった。

 自説を証明する共同研究者を求めて11年にたどり着いたのが、世界的な研究拠点の一つである理研CDBだった。最初は半信半疑だった研究者たちも、実験データを示すと「ほんまや……」。証拠をそろえて12年4月、ネイチャーに論文を投稿。「信じられない」と掲載を拒まれたが1年かけて追加の証拠をそろえ、13年3月、再挑戦した。厳しい注文や疑問に答えるため、掲載決定直前まで追加実験を続けた。

■臨床応用までには課題

 誰が実験しても、同じ結果が得られるのか。どの臓器からでも出来るのか。確認すべき課題は多い。

 京都大の中辻憲夫教授は、「再生医療への応用は、まだ何ともわからない」と指摘する。「人間の細胞でも(STAP細胞作りが)可能なのか。できた細胞株が安定しているのか、再現性があるのか、特に細胞の遺伝情報などの品質がどうか、気になる」

 これらの課題を乗り越えられるかが人への臨床応用に向けた焦点だ。理研の笹井副センター長は「論文が掲載されると、よーいドンで、世界中で競争が始まる」と話す。小保方さんは今回の実験の限界としてすべて生後1週間の若いマウスを使っていることを挙げる。成長したマウスでは、うまくいかなかったという。

 それでも、今回の成果が、再生医療に新たな道を開いたことは間違いない。

 慶応大の岡野栄之教授は、STAP細胞が胎盤へ変化できるという特性に注目する。ES細胞やiPS細胞ではできない。「他の万能細胞よりも、受精卵が持つ全能性に近い可能性がある。ヒト細胞でも同様に作れれば、医療への道も開ける」と期待を寄せる。

 理研によると、STAP細胞で期待できる臨床応用はいくつか考えられる。(1)イモリの足が切れても再生するように、人間の傷んだ組織がその場で再生する究極の再生医療(2)正常な細胞が、ストレスでがん細胞に変わる仕組みを根源から解き明かすことで、がん化を抑制する技術開発などだ。

 小保方さんは言う。「すぐ臨床につながらなくても、100年後の実りを信じて、今がんばります」

■国も研究を後押し

 今回の成果は国が生命科学を重視し、若手研究者を支援してきた延長にある。

 国は第2期科学技術基本計画(2001~05年度)でライフサイエンスなど4分野を重点化。再生医療はその柱の一つで、理研CDBも担い手として設立された。重点化は第3期計画(06~10年度)にも引き継がれた。09年には中心研究者1人に15億~60億円を配分する国のプロジェクト「FIRST」が始まり、再生医療分野で、山中伸弥・京都大教授が選ばれた。

 文部科学省は06年から若手研究者の自立支援にも着手した。小保方さんは昨年、29歳で理研CDBのユニットリーダーに就任。自前の研究予算を持ち、5人体制で研究を進める。若手が自分の「研究室」を持つ米国スタイルは少しずつ普及し始めている。

 課題もある。海外に留学する日本人は04年の約8万3千人をピークに6年間で3割減り、内向き志向が強まりつつある。基礎研究の充実も課題だ。日本では実利に結びつく応用研究が重視され、基礎研究費の割合は全体の15%で30年間ほぼ横ばい。一方、米国、フランス、韓国などは割合、伸び率とも、日本を上回る。

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様々な組織へ、高い分化能力 STAP細胞 小保方晴子リーダー会見

 生物学の常識を覆す新しい万能細胞「STAP(スタップ)細胞」が見つかった。研究の中心になった理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子(おぼかたはるこ)ユニットリーダー(30)は、英科学誌ネイチャーへの論文掲載に先立つ28日に会見し、報道陣の質問に答えた。主な一問一答は次の通り。▼1面参照

 ――なぜ細胞に外部から刺激を与える方法を思いついたのか。

 「(体の細胞から)小さい細胞を取り出す操作をすると幹細胞が現れるのに、操作しないと見られない。幹細胞を『取り出している』のでなく、操作(という刺激)によって『できている』と考えるに至った」

 ――生きている体の中でもSTAP細胞と同じような細胞の「初期化」が起こっているのか。

 「研究を進めているが、生体内ではストレスが加わっても完全な初期化が起きない。大きな変化が起きないように制御されているのではないか」

 ――どこが難しかったか。

 「全てが難しかった。誰も信じてくれない中で、説得できるデータをとるのは難しかった」

 ――STAP細胞は、ES細胞やiPS細胞よりいろいろな組織に分化できる能力が高いのか。

 「分化する能力についてはそう言い切れると思う」

 ――iPS細胞と比べ、染色体やDNAの損傷に違いはあるか。

 「STAP細胞では染色体に異常を起こさず初期化できている」

 ――がん化する可能性は。

 「大きな腫瘍(しゅよう)をつくる性質がない。がん化の可能性は低いのではないか」

 ――人のSTAP細胞は作れるのか。

 「(哺乳類で)共通した現象かどうかを調べるため、人の細胞やその他の細胞を使い実験している」

 ――再生医療への応用の可能性は。

 「今回はマウスの赤ちゃんの細胞を使った報告なので、条件が限られている。iPS細胞との関連を議論するのは早すぎる段階だ。数十年後、100年後の人類への貢献を考えて研究を進めたい」

 ――なぜ細胞はこんな仕組みを持っているのか。

 「単細胞生物にストレスがかかると胞子になったりするように、(多細胞生物である)私たちの細胞も、ストレスがかかると何とかして生き延びようとするメカニズムが働くのではないか。そういうロマンを見ている」

■従来方法との比較、様々な検討が必要

 <京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授の話> マウスの血液細胞に強いストレスを加えると多能性が誘導される(万能細胞になる)ことを示した興味深い研究であり、細胞の初期化を理解する上で、重要な成果である。医学応用の観点からは、iPS細胞のような細胞の新しい樹立法ともとらえることができ、人間でも同様の方法が可能だった場合、従来の方法と様々な観点から比較検討する必要がある。

■ネイチャー誌、異例の厳戒態勢 情報漏れ防止、事前告知に入れず

 STAP細胞の論文を掲載したネイチャーは、事前の情報漏れを防ぐため異例の統制を敷いた。一部報道機関が「解禁」前に報じたため、ネイチャーは予定の数時間前に統制を解除した。

 ネイチャーは日本時間で毎週木曜日発行。通常はその1週間前、翌週号の注目論文を紹介する告知文を、雑誌の発行前には報じないという「解禁付き」の条件で世界の報道機関へ配る。ところが、24日に出た今週号の告知文にはSTAP細胞の論文が入っていなかった。理研が同日報道機関に通知した会見予告でも、成果の概要や発表者、掲載誌名などが伏せられた。概要が明らかにされたのは27日になってから。理研によると、いずれもネイチャーからの指示。もし事前に情報が漏れて報道された場合は掲載を中止すると警告されたという。

 「解禁破り」が大騒ぎになった例に、1997年2月にネイチャーに掲載された「クローン羊ドリー」の論文がある。哺乳類で初めての体細胞クローン動物で、「クローン人間」に現実味を感じさせる発見だけに、英国の日曜紙が発行日前に記事にするとたちまち全世界で報じられた。今回もネイチャーはタブロイド紙や日曜紙を警戒し、告知を月曜日にずらしたという。(鍛治信太郎)

 <新型万能細胞(STAP細胞)の作り方>

 研究グループの説明によると、STAP細胞を作るには、まずマウスのリンパ球などの細胞をpH5・7、温度37度の液体に25分間浸す。8割の細胞は死ぬが、上澄みを取り除いてから培養すると、瀕死(ひんし)の状態を乗り越えて生き残った細胞のうち3分の1から半分がSTAP細胞になる。

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負けん気培養、30歳大発見 STAP細胞 小保方晴子さん

 いつも研究のことを考えています――。世界を驚かす画期的な新型の万能細胞(STAP〈スタップ〉細胞)をつくったのは、博士号をとってわずか3年という、30歳の若き女性研究者だ。研究室をかっぽう着姿で立ち回る「行動派」は、負けず嫌いで、とことんやり抜くのが信条だ。▼1面参照

 「やめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れないですが、今日一日、明日一日だけ頑張ろうと思ってやっていたら、5年が過ぎていました」

 28日、神戸市内の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターでの記者会見。無数のフラッシュの中、小保方晴子(おぼかたはるこ)さんはこれまでの日々を振り返った。

■化学畑から挑戦

 千葉県松戸市の出身。2002年、早稲田大学理工学部に、人物重視で選考するAO入試の1期生として入った。当時、面接で「再生医療の分野に化学からアプローチしたい」とアピール。ラクロスに熱中し、「日々、大学生の青春に忙しかった」というふつうの学生生活を送っていた。

 応用化学科の研究室で海の微生物を調べていたが、指導教官から「本当は何をやりたいか」を問われ、最初の夢を思い出し、大学院から、再生医療の分野に飛び込んだ。

 小保方さんを大学院時代に指導した大和雅之・東京女子医大教授は「負けず嫌いで、こだわりの強い性格」と話す。一から細胞培養の技術を学び、昼夜問わず、ひたすら実験に取り組んでいた。半年の予定で米ハーバード大に留学したが、指導したチャールズ・バカンティ教授に「優秀だからもう少しいてくれ」と言われ、期間が延長になったという。ここで、今回の成果につながるアイデアを得た。

 研究の成功に欠かせない特殊なマウスをつくるために、世界有数の技術をもつ若山照彦・理研チームリーダー(現・山梨大教授)に直談判。ホテルに泊まり込みながら半年以上かけて、成果を出した。

 今回の発見について、小保方さんは「あきらめようと思ったときに、助けてくれる先生たちに出会ったことが幸運だった」と話す。理研の笹井芳樹・副センター長は「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えをもっていた。真実に近づく力と、やり抜く力を持っていた」と分析する。

■かっぽう着愛用

 昨年、理研のユニットリーダーになった小保方さんは、自身の研究室の壁紙をピンク色、黄色とカラフルにし、米国のころから愛用しているソファを持ち込んでいる。あちこちに、「収集癖があるんです」というアニメ「ムーミン」のグッズやステッカーをはっている。実験時には白衣ではなく、祖母からもらったというかっぽう着を身につける。

 研究をしていないときには「ペットのカメの世話をしたり、買い物に行ったりと、普通ですよ」と話す。飼育場所は研究室。土日も含めた毎日の12時間以上を研究室で過ごす。「おふろのときも、デートのときも四六時中、研究のことを考えています」(野中良祐)

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