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折々の記 2014 ②
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 07】02/28

  02 28 ニュースから  2月28日 4時04分
       H2Aロケット23号機 打ち上げ成功  2014年2月28日04時04分
       アンネの志は破れない 高まる批判、本の寄贈も続々  2月28日
       「靖国参拝、中国喜ばせた」 アーミテージ氏、米で講演  2月28日
       いじめ摘発、昨年急増 小中高724人、87年以降最多  2月27日
  02 28 マイWEB新書  購入本
  02 28 新しい"万能細胞" STAP細胞 可能性と課題  分かりやすい解説


 02 28 (金) 今日のニュースから  

2014年2月28日04時04分
H2Aロケット23号機 打ち上げ成功

 H2Aロケット23号機が28日午前3時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。約15分後に搭載していた全球降水観測(GPM)衛星を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。H2Aの成功は17回連続で、成功率は約96%となった。

 H2Aはカウントダウンが「0」になると爆音を響かせ、発射場近くの海岸や砂浜をまばゆい光で照らしながら夜空を駆け上がった。約1分半で補助ロケットを分離。その後相次いで第1段、第2段ロケットを切り離しながら加速し、太平洋の約400キロ上空で、GPM衛星を分離した。

 GPM衛星は、複数の衛星で地球規模の降水量などを観測する計画を担うメーンの衛星。宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、米航空宇宙局(NASA)が共同開発した。得られたデータは、台風や豪雨など気象災害の予報精度の向上に生かされるという。

 H2Aロケットは今回、香川大、信州大、帝京大、鹿児島大、多摩美術大、大阪府立大、筑波大がそれぞれ開発した小型衛星7基も宇宙に運んだ。

 H2Aロケットは2001年に初飛行した日本の主力ロケット。昨年1月の22号機以来、約1年ぶりの打ち上げだった。03年の6号機が失敗して以降は成功が続いており、製造元の三菱重工業は高い信頼性を背景に、世界の衛星打ち上げ市場に積極参入する意向を明らかにしている。

H2Aロケット

H-IIA ロケット(エイチツーエー ロケット)は、宇宙開発事業団(NASDA)と後継法人の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発し、三菱重工が製造および打ち上げを行う、人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケットである。JAXA内での表記は「H-IIAロケット」で、発音は「エイチツーエーロケット」であるが、新聞やテレビなどの報道では、「H2Aロケット」または「H-2Aロケット」と表記され、「エイチにエーロケット」と発音される場合が多い。(検索すれば詳細がわかる)



2014年2月28日09時18分
アンネの志は破れない 高まる批判、本の寄贈も続々

 ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の悲劇を象徴する「アンネの日記」や関連本が、東京や横浜の図書館で300冊以上破られた事件で、卑劣な行動に対する批判が高まっている。一方で、「事件に負けず、本や表現の自由を守ろう」という動きも広がり始めた。

「アンネの日記」破損事件

「アンネの日記」破損被害相次ぐ 都内各地の公立図書館

 「アンネの日記」は、ユダヤ人少女アンネ・フランク(1929~45)が、ナチスの迫害を逃れ、家族らと隠れ住んだオランダ・アムステルダムでの13歳からの2年間の生活の記録で、世界記憶遺産に登録されている。被害が確認されたのは新宿、中野、杉並、豊島、練馬の各区と、東久留米、西東京の両市の公立図書館。

 練馬区では1月下旬、区立南田中図書館で来館者が気づき職員に伝えた。区内9館で計41冊が破られ、十数ページが引きちぎられたものもあり、警視庁に被害届を出した。貸し出しや返却時に本の状態を確認しており、館内で破られた可能性があるという。一部を買い直し、閲覧を続けている。

 杉並区内では113冊以上の被害が判明。西東京市でも1月24日以降、2館で計10冊以上が被害に。「補充したいが、中には絶版のものもある」という。

 10冊以上が被害に遭った東久留米市立図書館の岡野知子館長は「何らかの思想を持った人がやったことであれば、本を引っ込めてしまうのはよくない」と話し、被害を免れた本の貸し出しを続けている。(古城博隆、佐藤恵子)

■作家ら「切り裂くのは歴史知らぬ人」

 最も多くの被害があった杉並区に27日、アンネ・フランクに関連する書籍300冊が在日イスラエル大使館から寄贈された。本は都内各地の図書館で分け合う予定だ。

 ペレグ・レビ全権公使は「とてもショックだったが、大勢の方々から日本人として申し訳ないとのメッセージをいただき、ごく一部の人が起こしたことだと理解できた」と話した。田中良区長は「ヒトラーと手を結んだことは日本の歴史の汚点と私自身は思っている。行政としても毅然(きぜん)と対処する」と応じた。

 各地の図書館には、市民から関連本が続々と送り届けられている。都立図書館では24日以降で計141冊。うち137冊は、第2次大戦中に多くのユダヤ人を救った日本の外交官杉原千畝を名乗る人からだった。杉並区にも計27冊が届き、寄贈の申し出が寄せられた自治体も多い。

 自著が被害に遭った作家や図書館は憤りつつ、多くの人に読んでほしいという思いを改めて抱く。

 作家の小川洋子さんは、アンネの友人へのインタビューなどを手がけた対話集を破られた。「一人ひとりが抱える不満や葛藤と向き合う時に必要なのが文学のはず。それを否定する行為は表現する権利の抹殺にも等しい。海外でも報じられたことで、日本の国民性を疑われかねない事態になっている」と話した。

 自著「母と子でみるアンネ・フランク」が破られた作家の早乙女勝元さんは「人間とは何か、が詰まっているのが本。それを切り裂くのは歴史を知らず、想像力を欠いた人だ。ナチスは焚書(ふんしょ)した末に人間をガス室で殺し、焼いた。本の次は人間を切り裂くことにならないか」と心配した。

 舛添要一都知事もこの日の記者会見で「言論の自由に対する重大な挑戦。インターネット上で容認する発言をしている人がいるが許し難い。歴史に対する冒瀆(ぼうとく)だ」と述べた。

 杉並区立の図書館では一時、関連本を事務室内などに移したが、先週末から元の棚に戻した。担当者は「見えない場所に移せば、やった人の思惑通りになってしまう可能性がある」と話す。「自由に本を手にとれるのが図書館」(練馬区)、「多くの人たちに読んでほしい」(東久留米市)などの声も上がる。

 武蔵野市立図書館も従来と同じ棚に並べる。被害が広がる懸念もあるが、原島正臣館長は「本を守っていこう」と職員に呼びかけた。事務室には、「知る自由を保障するため、資料は原則、国民の自由な利用に供されるべきだ」と定めた「図書館の自由に関する宣言」が掲げられている。

■大使館に激励と謝罪1000件

 米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)のエイブラハム・クーパー副代表は26日、ワシントンの在米日本大使館を訪れ、広報担当者と面会した。その後、朝日新聞の取材に応じたクーパー氏によると、事件への懸念を双方で共有し、来年に東京と広島で開催を計画しているアンネ・フランク展について説明したという。

 「アンネの日記」を狙った事件は聞いたことがないといい、クーパー氏は「事件はアンネが象徴するものへの攻撃だ。日本がヘイトクライム(憎悪犯罪)とその対処について考える良い機会になる」と話した。

 事件は在京の各国外交団も注視している。外交官の一人は「これまで日本社会の空気まで問題視する国はなかったが、『どこまでこの問題が進むのか』と懸念が広がっている」と話す。

 一方、イスラエルでは、事件の報道は国外通信社の配信を引用した小さな記事にとどまり、冷静に受け止められている。同国外務省のヒルシュソン副報道官は「一つの出来事が日本政府や日本人の考えを反映しているとは考えない」と話す。

 在日イスラエル大使館には、一般市民らから千件を超える励ましや謝罪の電話やメール、手紙が届いているという。ルツ・カハノフ大使は朝日新聞の取材に対し、「日本人の温かい反応を得られ、犯人の意図とは逆の結果になった」。

 歴史認識の問題に詳しい高橋哲哉・東京大学大学院教授(哲学)は「国際社会は、首相の靖国参拝もふまえて、『日本は排外主義が強く、負の歴史を正当化する社会なのではないか』という疑念をもつだろう」との見方を示した。

    ◇

■犯行日時を絞り込みへ

 警視庁によると、東京都内で被害が確認されたのは新宿、中野、杉並、豊島、練馬の5区と武蔵野、東久留米、西東京の3市の計38図書館で計300冊以上。同庁は24日に捜査本部を設置、殺人や放火などを扱う捜査1課が中心となり、容疑者の特定を進めている。

 捜査本部が、関心を寄せるのが被害日時を絞り込めた杉並区立中央図書館だ。2月3日午後1時ごろ、職員が1階の外国文学コーナーにある「アンネの日記」1冊が無傷なことを確認していたが、休館日の6日に関連書籍も含めて調べたところ、「アンネの日記」など20冊が破られていた。

 捜査本部は、少なくとも「アンネの日記」は3日午後1時~5日の間に破られたとみて、防犯カメラの映像や、書籍に残った指紋などを解析している。蔵書検索をした可能性もあるとして検索履歴も調べる。

 被害書籍の多くは、手で斜めに破ったような痕跡が残っていた。被害は東京23区の西側に集中していることなどから、捜査本部は同一犯との見方を強めているが、被害が多く模倣犯の混在も否定できないという。

    ◇

 〈アンネの日記〉 ユダヤ人の少女アンネ・フランクが、ナチス・ドイツの迫害を逃れ、家族らとアムステルダムで隠れ住んだ約2年間について書き残した日記文学。アンネは1944年に逮捕され、その翌年、強制収容所で15歳の生涯を終えた。生きて戻った父親が戦後、日記を保管していた支援者から受け取って出版した。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2009年、貴重な文書や資料の保存のための世界記憶遺産に登録した。

 欧州では過去に極右思想をアピールする人物が「アンネの日記」の単行本を焼き、扇動罪などで起訴されたことがある。インターネット上では別人が書いた「偽物」だとする日本語の書き込みも見られる。

    ◇

■「日本社会の右傾化が背景に」

 排外主義的な動きに詳しい高千穂大の五野井郁夫准教授(国際政治学)の話 首相の靖国参拝が一定の支持を集めるような社会の右傾化が背景にあるのではないか。歴史や領土の問題で中国や韓国に日本がおとしめられたと感じ、戦後の歴史観を否定しようとする人もいる。ネット上ではそうした意見が広がっており、戦勝国側の価値観を全て否定しようという意見さえ出始めている。その延長線上で、敗戦国が反省すべき象徴とも言えるホロコーストに関する本が狙われたのではないか。「ユダヤ人虐殺がうそならば、南京事件や慰安婦問題だって全否定でき、日本は悪くないと主張できる」というゆがんだ発想かもしれない。様々な意見はあるだろうが、史実に基づいて議論していくのが開かれた社会だ。



2014年2月28日10時07分
「靖国参拝、中国喜ばせた」 アーミテージ氏、米で講演

 安倍晋三首相の靖国神社参拝について、米国のアーミテージ元国務副長官は27日、ワシントン市内での講演で、「中国を喜ばせたことは間違いない」と述べ、日本を非難する中国の外交活動を有利にする結果になったと指摘した。

 アーミテージ氏はブッシュ政権で国務副長官を務めた共和党の知日派重鎮。「靖国神社の問題は、日本の指導者が国全体にとって何が最善か判断することだ。しかし、中国の外交を後押しすることになったことは無視できない。これが私の参拝への反対理由だ」と話した。

 また、中国が「日本はカイロ宣言やポツダム宣言に基づく国際秩序を順守しない国だ」と日本を非難する主張を展開していることを指摘。「参拝が中国を喜ばせたことは間違いない。中国は各国に『自分の言った通りだろう』と言うだけでよかった」と述べた。

 このほか、韓国との関係では靖国神社よりも慰安婦問題の方が大きな問題だと指摘し、「慰安婦の問題にはきわめて心を痛めている。日本には人権や人間の尊厳について模範となる国であって欲しい」と話した。(ワシントン=大島隆)



2014年2月27日16時13分
いじめ摘発、昨年急増 小中高724人、87年以降最多

 いじめに絡む事件で全国の警察が昨年1年間に逮捕や書類送検、補導した小中高生は724人で、前年より213人(42%)増えたことが27日、警察庁のまとめで分かった。いじめ防止対策推進法施行に伴って今回からいじめの定義を変えたことによる増加分があるが、従来の定義でも606人に上り、1987年以降で最多だった。

 事件の数は前年より58%多い410件。従来の定義でも334件で、86年以降で最多。被害者は前年より50%多い381人(以前の定義で317人)で、統計がある91年以降最多となった。警察庁は「社会的関心の高まりを背景に、相談や通報が増えているのが要因」と分析している。

 摘発・補導された724人のうち、中学生が527人(143人増)で7割以上を占めた。小学生が88人(52人増)、高校生は109人(18人増)。

 容疑の種類別では、傷害237人、暴行218人、暴力行為70人、恐喝42人、強要27人など。裸の写真をネット上にばらまいたり、書き込みで侮辱したりといったネットを使った事件も25件あった。

 摘発・補導された子どもにいじめの原因や動機を複数回答で聞いた結果、「力が弱い・無抵抗」が37%と最多で、「いい子ぶる・なまいき」22%、「態度動作が鈍い」9%と続いた。

 被害者に、いじめを相談していた相手を尋ねたところ、保護者71%、学校の先生40%、警察などの相談機関22%、友人6%の順。16%はだれにも相談していなかった。(吉田伸八)

     ◇

 〈いじめ問題に詳しい藤川大祐・千葉大学教育学部教授の話〉 大津の事件以降、いじめへの対策を抜本的に見直して、いじめを見過ごさないようみんなで取り組んでいこうという社会的機運が高まり、学校と警察の連携も進んだ。事件数や摘発された子どもの増加はその表れのひとつ。起きてしまったいじめを発見し、対応していく点で対策は前進していると言える。今後は、いじめをどう防ぐかが課題だ。学校の授業などを通じて子どもたちの認識を深め、いじめを発生させないような取り組みを進めていくことが重要だ。

     ◇

 〈いじめの定義〉 2011年に大津市で起きた中学2年男子生徒の自殺などを受けて成立した「いじめ防止対策推進法」によると、「一定の人的関係にある子による心理的・物理的な影響を与える行為で、対象の子が心身の苦痛を感じているもの」。警察庁は従来、「特定の子に対する身体への物理的攻撃や、言動による脅し、いやがらせ、無視などの心理的圧迫を一方的に反復継続して加えることで苦痛を与えること」と定義していたが、昨年分からは「反復継続」がないケースも含めて、法律上の定義に合わせた。


 02 28 (金) マイWEB新書  購入本

折に触れて購入した「WEB新書」、製本して保存。

その一

01 米国を悩ませる尖閣問題  2014/01/14 16p
               アジアの政治情勢を不安定にした日本の政治
02 尖閣に始まり尖閣で退任  2014/01/04 11p
               全中国大使・丹羽宇一郎が危惧する日本の将来
03 疑惑の札束        2013/11/20 10p
               世界の金融首都・シティーの内側で何が起きているのか
04 富士山噴火、もうそこまで 2013/11/20 13p
               麓で始まった本気の避難対策
05 いまなぜ秘密保護法なのか 2013/09/18 28p
               危険な国の拡大解釈、脅かされる知る権利
06 「敵」を見つけたい人々  2013/04/28 15p
               在特会から「ナマポ」追及者まで

そのに

07 アベノミクスのメッキを剥ぐ2013/04/06 24p
               この先に見えた「バッドシナリオ」
08 石原ファミリーの落日   2014/04/05 11p
               愚痴る父・慎太郎80歳、ヤケ酒の理由
09 プロメテウスの罠〔2〕  2011/10/17 44p 
               研究者は辞表を出して現場に飛び込んだ
10 知られざる小沢検察審査会の「闇」  2010/10/22 7p
               検察特捜部の不可怪な存在 11 死に追い込まれた新人教師 2010/07/19 13p
               荒れる学級、孤立、苦悩、挫折…


 02 28 (金) 新しい"万能細胞" STAP細胞 可能性と課題  2014年01月31日

 NHK時論公論 <http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/180601.html>

理化学研究所の30歳の女性研究者が、これまでの常識を覆す研究成果を発表し、国内外のから注目されています。細胞にストレスを与えて、皮膚や筋肉など、どんな細胞にもなれる万能細胞を作り出すことに成功したのです。

万能細胞といいますと、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞を思い出す人も多いと思いますが、iPS細胞より、「簡単」に作り出すことができるなどの特徴があり、再生医療への応用が期待されています。

「STAP(スタップ)細胞」と名付けられたこの細胞の可能性と課題について考えます。

STAP細胞は、神戸市にある理化学研究所で研究ユニットリーダーをしている小保方晴子さんらの研究グループが作成しました。小保方さんは、趣味はペットとして飼っているカメの世話とショッピング、理科系の女子「リケジョ」の研究成果は、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載されました。
STAP細胞は、どんな細胞にもなれる万能性をもっています。
研究が注目されているのは、

▽細胞の再生の研究で、「多くの可能性」を持っていると期待されていること
▽ほとんどの研究者がこれまでの常識では考えられないとする、その「意外性」です。

STAP細胞は、どのようにして作られるのでしょうか。

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実験はマウスを使って行われました。マウスのリンパ球を取り出して、弱い酸性の液体に30分ほど浸して培養します。これだけで、万能性を持つSTAP細胞になったのです。
万能性を持つ細胞としては、ほかにiPS細胞があります。iPS細胞は、すでにヒトの細胞で作れるようになっていますが、ヒトの皮膚の細胞を取り出して、細胞にいくつかの遺伝子を送り込みます。すると、遺伝子の作用で、細胞が万能性を持つようになります。
いずれの細胞も、分裂して神経や筋肉、皮膚、肝臓の細胞などあらゆる細胞になる万能性があります。

では、STAP細胞の持つ「可能性」とは、どういった点でしょうか。

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▽まずひとつは、「簡単にできる」ということです。弱い酸性の液体につけるだけです。さらにiPS細胞は作るのに2~3週間かかりますが、STAP細胞は1週間ほどです。また「効率的」に細胞を作ることもできるといいます。
▽「発がん性」です。iPS細胞は、遺伝子を入れてつくるため、がんになりやすいことが課題となっています。STAP細胞は遺伝子を直接操作していないので、iPS細胞のような、がんになりやすいということはないと考えられます。

さらに、STAP細胞の特徴を詳しく見てみると、iPS細胞より、「高い万能性」を持った細胞と考えられています。
細胞が1つの受精卵という何にでもなれるものから、役割を持つ細胞になる様子を考えてみます。

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細胞は、受精卵から、分裂を繰り返して、ヒトでいうと60兆個の細胞で、からだ全体ができています。これを木の幹に例えると、受精卵が細胞分裂するにつれて、次第に、細胞の役割が決まっていきます。下から上に、役割が枝分かれして細かく決まっていくのです。そして、血管や皮膚、神経などの細胞になります。

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いったん役割が決まると別の役割の細胞にはなれません。例えば、「皮膚」の細胞が「すい臓」の細胞になるということはできないのです。ましてや、受精卵に近い状態に戻るということは、通常はできません。

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iPS細胞では遺伝子の力を使って、人工的に、いわば「無理やり」受精卵に近い状態に戻しているのです。
STAP細胞は、iPS細胞より、受精卵に近いところに戻っていると考えられています。
では、この研究の「意外性」とは、どのような点でしょうか。
いったん役割が決まった細胞が、受精卵に近い万能性を持つことは、植物の細胞で起きることは知られています。しかし、動物では、細胞の外の環境を変える程度のことでは、万能性を持たせることはできないと考えられていました。
実際、小保方さんの周囲の研究者も、にわかには研究結果を信じられなかったと話しています。また、ネイチャーに論文を投稿した際も、当初は「あなたは過去数100年に及ぶ細胞生物学の歴史を愚弄にしている」と指摘され、受け付けてもらえませんでした。論文が掲載されるまで、データが確かであることを示す実験を繰り返したということです。
その「細胞生物学の歴史」では考えられないようなことに、小保方さんたちの研究グループは、どうして気づいたのでしょうか。
小保方さんは、細胞が万能であるかどうかが、細胞の大きさに関係あるのではないかという点に注目して研究をしていました。

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その研究の中で細胞を細いガラス管に通す実験をしたところ、管を通った細胞の中から、万能細胞がみつかったのです。細胞生物学の常識からすると、もともと管を通す前に万能細胞が混ざっていたと考えがちです。しかし、小保方さんは、現象を確かめる実験を行って、管を通った後に万能細胞に変化していることを確認しました。
そして、狭い管を通すというストレスが、「万能」につながると考えました。
そこで、細い管とは別に、例えば細胞膜をこわす毒の刺激などのストレスを細胞に加えてみました。刺激が強すぎると細胞は死んでしまいますが、刺激を弱めると、毒などのストレスで一部の細胞は万能細胞になったといいます。いろいろなストレスを試した結果、弱い酸性の液体に浸すというストレスだと効率的に万能細胞になったのです。

今回の研究の重要性をまとめると、

▽iPS細胞のように遺伝子の力を使うといったことをしなくても、細胞には受精卵に近い状態になるという能力が潜在的に備わっている
▽その能力をストレスを与えることで引き出すことができるということを示したのです。

この研究は、再生医療の発展につながると期待されています。

▽がんになりにくいことから、臨床の応用しやすい細胞である可能性があります。
▽iPS細胞の研究とともにSTAP細胞の研究を進めることで、細胞がどのようにして万能性を獲得しているのかという、そもそもの謎の解明が進むかもしれません。

そして、現在は、マウスでの実験結果ですが、ヒトの細胞でこうしたことができれば、再生医療実現に大きく貢献することが期待されます。

一方、課題もあります。
ヒトの細胞でできるかという点もありますが、

▽ひとつは、細い管などのストレスを受けるだけで、なぜ万能細胞になるのかはわかっていません。

マウスの実験は、生まれたばかりのマウスで行っていて、大人のマウスではうまくいかないといいます。そのメカニズムの解明が必要です。

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▽そして、もうひとつ指摘しておきたいのは、生命倫理についてです。

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iPS細胞は様々な細胞が作れるといいますが、実は胎盤の細胞は作れません。これに対して、STAP細胞は胎盤の細胞になることもできます。STAP細胞は胎盤の細胞にも枝分かれでき、iPS細胞より受精卵に近い細胞だと考えられています。
STAP細胞は、万能性が高く、生命の源である受精卵に近いことから、その研究に生命倫理という観点から問題がないのかどうか。研究を進める中で、この点についても検討することが、今後求められると考えます。

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30歳の研究者による今回の研究成果。実験の結果が、たとえ数百年来の常識を覆すようなことであっても、先入観なしに正面から取り組んで、たどりつくことができたのは、その若さゆえだったのかもしれません。
iPS細胞と並ぶ、再生医療をけん引するような研究につながるよう期待したいと思います。
(中村幸司 解説委員)

※ 小保方 晴子
 <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E4%BF%9D%E6%96%B9%E6%99%B4%E5%AD%90>

小保方 晴子 (おぼかた はるこ、1983年 - )は、日本の細胞生物学者。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・細胞リプログラミング研究ユニット・ユニットリーダー[1]。外からの刺激で体細胞を初期化することにより、すべての生体組織と胎盤組織に分化できる多能性を持った細胞(STAP細胞)を作製する方法を世界で初めて確立したと発表した。

経歴[編集]
千葉県松戸市出身[2]。東邦大学付属東邦高等学校を経て、AO入試で早稲田大学理工学部応用化学科入学。2006年3月、早稲田大学理工学部応用化学科卒業。学部では微生物の研究を行っていたが、指導教授からのアドバイスで、早稲田大学大学院に進学すると専門分野を転向し東京女子医科大学先端生命医科学研究所研修生としてのちに論文の共著者となる大和雅之東京女子医科大学教授の指導の下、医工融合研究教育拠点である先端生命医科学センター (TWIns) にて[3]再生医療の研究を開始。早稲田大学大学院理工学研究科応用化学専攻修士課程修了、早稲田大学大学院先進理工学研究科生命医科学専攻博士課程修了。博士(工学)(早稲田大学)。学位論文「三胚葉由来組織に共通した万能性体性幹細胞の探索」(2011年3月)[4]。大学院在学中、ハーバード大学医学部のチャールズ・バカンティ教授の研究室に2008年から2年間留学。2011年より理化学研究所研究員。