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折々の記 2014 ④
【心に浮かぶよしなしごと】

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  04 13 教育2014の検索  
  04 10 「教育2014 学歴は変わるか」議論せよ、人とぶつかれ  浜田東大総長に聞く
  04 11 (教育2014反響編)現状を直視 課題と期待と  
       ① (教育2014 学歴は変わるか)反響編 現状を直視、課題と期待と(4/11)
       ② 飛び入学、広がるか 競争あおると批判、変化の兆し(4/3)

  04 14 世界新秩序 米中を追う  04 14 現在

 04 13 (日) 教育2014の検索  

教育2014の検索結果は次の通り

教育2014 長野)将来は弁護士・医師・研究者… 目標明確、1期生始動 朝日新聞-13 時間前
県立2校目の中高一貫校として諏訪市の諏訪清陵高付属中学がスタートし、5日の開校式には新入生80人が緊張した面持ちで並んだ。生徒たちはどんな目標を持ち、何を求めて5倍を超える難関をくぐり抜け、同校に入学したのか。その思いを ...

(教育2014 学歴は変わるか)反響編 現状を直視、課題と期待と asahi.com-2014/04/11
私たちの社会に根を張る学歴偏重の風潮から脱する動きを追い、3月30日付から1面や教育面で連載した「教育2014 学歴は変わるか」。多くのご意見やご感想がメールやファクスなどで寄せられました。主な声を紹介します。

(教育2014 学歴は変わるか)特別編 議論せよ、人とぶつかれ 浜田東大 ... asahi.com-2014/04/10
教育2014 学歴は変わるか)特別編 議論せよ、人とぶつかれ 浜田東大総長に聞く. 2014年4月10日05時00分. 印刷; メール. 面一覧. 1面 · 2面 総合2 ... 日本の教育に足りないものは何か、学歴社会は変わるのか。東京大の浜田純一総長に考えを聞いた。

教育2014 群馬)(6334を超えて)学校訪問、「先輩」とふれあう asahi.com-2014/04/10
教育2014 群馬)(6334を超えて)学校訪問、「先輩」とふれあう. 上田雅文. 2014年4月11日02時03分. 印刷; メール. 写真・図版 1年生が世話し、折り紙やかるたで楽しむ年長児たち=3月11日、前橋市朝倉町の上川淵小学校. 「学校は勉強するところです。

教育2014 新潟)消費増税、どうする?給食費 悩む自治体、分かれる対応 asahi.com-2014/04/10
8%への消費増税に伴い、県内の自治体では給食費を値上げするかどうか対応が分かれた。食材費が増えるために上げたい気持ちもあるが、来年には税率が10%にさらに上がる可能性がある。保護者も負担増を心配することから、各自治体 ...

教育2014 千葉)(授業拝見)偉人題材 産業発展考える asahi.com-2014/04/09
痛くない注射針や、米大リーグ選手のバット……。昨年度の授業、向井浩二先生(53)=現在は木更津市立馬来田(まくた)小=は5年生36人に、日本の職人が生み出した技術を紹介し、2枚の写真を黒板に掲げた。 1枚は地下鉄を建設中の ...

教育2014 福井)すべては生徒のため 福井工大福井高校 asahi.com-2014/04/07
プロ野球選手やバレーボールの日本代表選手、プロゴルファー、柔道選手らを輩出し、国公立大や難関私立大の合格者も多数にのぼる。「文武両道」を教育方針に掲げ、スポーツ分野だけでなく、進学指導や検定資格取得にも力を入れる。

教育2014 佐賀)(進学のかたち:8)短大苦戦 てこ入れ急務 朝日新聞-2014/04/08
2日、鳥栖市の九州龍谷短大の入学式。講堂に集った新入生は2学科で計84人。定員125人に対し、充足率は7割を切る。約400の座席は保護者や教員、来賓が座っても半分ほどしか埋まらず、後藤明信(みょうしん)学長は「私が専任講師 ...

教育2014 山形)本物の美 生徒と共に20年 山形工高 朝日新聞-2014/04/07
教育2014 山形)本物の美 生徒と共に20年 山形工高. 松本紗知. 2014年4月7日10時24分. 印刷; メール. 写真・図版 山形工業高校の一角に設けられている美術品の展示スペース=山形市緑町1丁目 · 写真・図版. 県立山形工業高校(山形市緑町1丁目)の ...

教育2014 熊本)(つながる学校:下)現場主義で6・3・3・4制超える 朝日新聞-2014/04/07
教育2014 熊本)(つながる学校:下)現場主義で6・3・3・4制超える. 聞き手・日高奈緒 ... 水俣工業高の元校長で、中高・高大連携に詳しい九州ルーテル学院大副学長の鋤崎(すきざき)勝也教授(教育経営学)に聞いた。 ――水俣工の校長 ...

教育2014 大阪)理数に特化、受験に力 堺市立堺高校 朝日新聞-2014/04/07
女子生徒が葉脈やカビの標本を光学顕微鏡で観察していた。「青いのがあった」「けっこうきれいやん」とにぎやかだ。彼女たちはサイエンス創造科の生徒で、いわゆる「リケジョ」(理系女子)の卵たち。 堺高校は2008年4月、堺市立の工業高校 ...

その他 多数



 04 10 (木) 「教育2014 学歴は変わるか」議論せよ、人とぶつかれ  浜田東大総長に聞く

    <http://digital.asahi.com/articles/DA3S11077012.html>

 日本の教育に足りないものは何か、学歴社会は変わるのか。東京大の浜田純一総長に考えを聞いた。

 ■東大改革で「社会はもっと変わっていく」

 世界の大学ランキング、たとえば「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」だと、東京大学は23位だ。ランキングは指標の取り方や重み付けに課題があるが、いまの指標だと、この順位にならざるを得ない。国際化の遅れは事実だし、アジアで1位とはいえ各国の大学が追い上げてきているという危機感もある。

 だが、東大がいま進めている教育改革は、ランキングを意識したものではない。グローバル化の時代に、学生をさらにしっかり育てたいという思いだ。東大生の力は、入学時だと、米のハーバードやマサチューセッツ工科大(MIT)と比べて遜色ないが、卒業時で逆転してしまうと聞く。それはなぜかを考える中で生まれてきた。

 改革は、新入生が1年休学して自主活動をする「FLY Program(フライ・プログラム)」や国内外の体験活動が既に動き出しており、主体的・双方向的な学習の強化とあわせて留学などをしやすくする4学期制が来年からスタートする。

 改革に踏み出してよかったのは、教育の内容や方法の充実に教員たちが前向きになっていることだ。

 秋入学も総長が突っ走れば実現できたが、現場が本当について来られるか議論し、ぎりぎりまで考えて段階を踏むことにした。一気に進めていたら今の改革の機運があったかどうか。判断は間違っていなかったと思う。

 日本の中で東大が変わる意味は大きい。入学試験は、どんな学生に来て欲しいかというメッセージだ。選抜の方法や高校時代の評価基準はもっと多様でいい。高校教育が多様になるきっかけにもなる。

 推薦入試はその試みの第一歩だが、ほんの風穴を開けた程度。当分100人規模で続けながらさらに多様な基準を考え、幅を広げたい。

 高校3年生の秋に半年早く入る「秋飛び入学」は、千葉大が今年度から導入するが、東大もどこかで議論する価値があると思う。例えば、中高一貫校は高校2年で大体の課程を終え、最後の1年間は応用の時期。その人を秋に採るのはおかしな話ではない。

 ただ、3年でしっかり教育しようという高校の立場や高卒資格を持たない学生の受け入れに伴う責任の重さは考えないといけない。

 日本の教育は、小さなところをいじるのではなく、思想自体がそのままでいいのか、もう一回、考え直した方がいいのではないか。

 僕らは明治維新以後、短時間でたくさんのことを学び、知識の量を増やすのに力を注いできた。その結果、教育水準は他国にひけをとらない地点まで来た。弱いのは議論する、表現する、社会といろいろな接点を持つ、という点だ。

 議論していると効率が悪い。講義だと100教えられるのに対し、議論だと30くらいだが、そこで培われた力こそ最後は効いてくる。

 知識を得ようと思えば、自分で本を読み、オンライン講座(MOOC)なども利用できる。教室では、良質な講義を受けるとともに、議論をしてほしい。

 世界を体験することも大事だ。言葉や考え方、生活の違う人にぶつかり、触れ合うことが刺激になる。

 効率のよい勉強をしないと東大に合格できないというジレンマは確かにある。ただ、寄り道が本当にマイナスなのか疑ってかかった方がいいだろう。日本は学歴社会で、そのトップは東大だといわれるが、形式的な権威は意味がない。

 世界でも、東大の知名度はハーバードと比べると低い。国際社会では、自分は何ができるかが評価の基準となってくる。学歴社会は簡単には消えない気がするが、東大に入ったことではなく、卒業できたことを誇りにできる仕組みにすべきだろう。そうすれば、社会はもっと実力本位に変わっていくに違いない。(編集委員・氏岡真弓、河原田慎一)

 04 11 (金) (教育2014学歴は変わるか)反響編 現状を直視 課題と期待と  

 私たちの社会に根を張る学歴偏重の風潮から脱する動きを追い、3月30日付から1面や教育面で連載した「教育2014 学歴は変わるか」。多くのご意見やご感想がメールやファクスなどで寄せられました。主な声を紹介します。

特集・教育2014トップ

■大学名出す必要があったか

 1回目の「これって、学歴フィルター?」では、企業が学生の採用にあたり、学歴をどの程度重視しているのかを描いた。冒頭、ある私立大の学生がネットで採用説明会への参加申し込みをしようとしたところ「満席」だったのに、別の私大の友人の場合は「満席」になっていなかったとのエピソードを紹介した。

 これについて、岩手県内の60代の男性は「(申し込みができなかった大学の)出身者としては気分が悪いです」と記した手紙を寄せた。その大学は「就活に不利だと思われてしまうかもしれない。『ある私立大学』とするなど大学名は伏せるべきだったのではないでしょうか」とも書かれていた。男性に連絡すると、「名誉を傷つけられたと思う人がいるかもしれない。学生や卒業生に対して、もう少し配慮してほしかった」と感想を話した。

 大学の実名を出して報じたことについては、このほかにも「傷ついている人が大勢いると思う。名前を出さなくてもよかったのでは」(50代女性)、「苦労して卒業した人もいる。配慮が足りない」(40代女性)など多くの批判的な意見が寄せられた。一方で「企業がそのような差別化をする現状にぜひくさびを打っていただきたい」(女性)との声もあった。

■卒業資格より技術の優遇を

 専門学校に進学する大卒者を取り上げた4月2日付「世間体より『やりがい』」について、名古屋市の大学名誉教授、山寺秀雄さん(90)は「教室で勉強するより、実技を通じて学ぶ方が得意な人も多いはず。そのような人に大卒という資格取得のために勉強を強いるのは、国にとっても損失では」と感想を寄せた。

 「工業高校や高専などを卒業して優れた技術を持った人を、大卒者と同様、あるいはそれ以上に優遇するような政策を、国や企業の経営者がとるべきではないか」と提案する。

 大卒後に専門学校に進んだ女性について、兵庫県の40代の会社員女性から「2度進学するのは考えようによってはぜいたくです。私はそう思い、専門学校を思いとどまりました」との体験談も寄せられた。

 3日付「飛び入学 広がるか」に対し、大阪府内の主婦(51)からは「根底にある考え方がオランダの教育のように『本人の才能や特性に合った教育が、子どもをより幸せにする』というものなら歓迎できるが、『トップを目指す』という目的であれば、一握りのトップになれず挫折する人を作り出すことにはならないか」と疑問の声が上がった。

 主婦は「いじめや虐待、不登校などの背景に、『何としても能力を高めなければいけない』という社会の考え方があるようにも感じる」としたうえで、「公教育は能力を伸ばすためだけでなく、将来、社会を形成してゆく同じ世代の仲間と学ぶ場でもあるはず。わざわざ制度を変えなくても、能力の高い人はそれなりに道を選んでいけるはずだと思う」と続けた。

 3月31日付「国際化遅れ 東大岐路」には「日本は海洋国家。貿易でしか生きていけない。そのために何が必要かを考えるべきだ。カリキュラムの中に1年留学を入れて5年制にするなどしてもいいかもしれない」(72歳男性)との声が寄せられた。

 朝日新聞教育取材班のフェイスブックにも、反響が届けられた。

 東京都品川区内の医師の女性が注目したのは、3日付「飛び入学 広がるか」のうち、一人ひとりの能力を生かす教育を進める必要性に触れた岩永雅也・放送大教授へのインタビュー。高い能力を持つ子どもについて「『特別な支援が必要だ』とはっきり書かれていて、留飲が下がる思いだった。このことが広く教育界に知れ渡る日が来ることを願ってやまない」との感想を書き込んだ。こうした子への支援について、「学校で理解を得るのは難しい現実がある」という。

     ◇

 正解がわかっている問題でゴールにたどり着く速さより、何が正解かわからない問題でよりよい道を探り出す力を養う――。経済や社会の急速な変化に伴い、教育が果たすべき役割も変化を迫られています。「教育2014」では、現状を見据えて課題を展望し、その解決につながる方策を今後も考えていきます。(取材班)

■企業側が認めぬ実態 克明に

 現役学生を含め、多くの方を傷つけたり、不愉快な思いを抱かせたりしたことについて、配慮に欠けていたと反省しています。大学名を出したのは、企業側が公には認めない「学歴偏重社会」の実態をなるべく克明に描き、現実を直視することから始めたいと考えたからです。

 高卒か大卒か大学院か、大学なら何大か。まず学歴を見て、どんな人か判断するという傾向は、私たちの社会に深く根を張っています。そんな社会で、学びの本質がゆがめられてはいないか、学歴やそれを生み出す入試に頼らない動きを追うことで、学歴偏重社会に風穴を開けたい――。取材班には、そんな問題意識がありました。

 政府の教育再生実行会議で進められている「6・3・3・4制」の見直しなどの学制改革の議論にもつながるテーマと考えました。

 同じ日の2面では、大学名によらない採用を始めた企業の動きも紹介しました。企業のグローバル化が進むなか、学歴偏重の風潮は今後、さらに揺れ動くとみられます。当事者の立場に気を配りながら、今後もこの問題を取り上げていきたいと考えています。

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   ① (教育2014 学歴は変わるか)反響編 現状を直視、課題と期待と(4/11)
   ② 飛び入学、広がるか 競争あおると批判、変化の兆し(4/3)

① (教育2014 学歴は変わるか)反響編 現状を直視、課題と期待と(4/11)

 私たちの社会に根を張る学歴偏重の風潮から脱する動きを追い、3月30日付から1面や教育面で連載した「教育2014 学歴は変わるか」。多くのご意見やご感想がメールやファクスなどで寄せられました。主な声を紹介します。

 ■学歴フィルター 大学名出す必要あったか
 1回目の「これって、学歴フィルター?」では、企業が学生の採用にあたり、学歴をどの程度重視しているのかを描いた。冒頭、ある私立大の学生がネットで採用説明会への参加申し込みをしようとしたところ「満席」だったのに、別の私大の友人の場合は「満席」になっていなかったとのエピソードを紹介した。
 これについて、岩手県内の60代の男性は「(申し込みができなかった大学の)出身者としては気分が悪いです」と記した手紙を寄せた。その大学は「就活に不利だと思われてしまうかもしれない。『ある私立大学』とするなど大学名は伏せるべきだったのではないでしょうか」とも書かれていた。男性に連絡すると、「名誉を傷つけられたと思う人がいるかもしれない。学生や卒業生に対して、もう少し配慮してほしかった」と感想を話した。
 大学の実名を出して報じたことについては、このほかにも「傷ついている人が大勢いると思う。名前を出さなくてもよかったのでは」(50代女性)、「苦労して卒業した人もいる。配慮が足りない」(40代女性)など多くの批判的な意見が寄せられた。一方で「企業がそのような差別化をする現状にぜひくさびを打っていただきたい」(女性)との声もあった。

 ■専門学校 卒業資格より技術の優遇を
 専門学校に進学する大卒者を取り上げた4月2日付「世間体より『やりがい』」について、名古屋市の大学名誉教授、山寺秀雄さん(90)は「教室で勉強するより、実技を通じて学ぶ方が得意な人も多いはず。そのような人に大卒という資格取得のために勉強を強いるのは、国にとっても損失では」と感想を寄せた。
 「工業高校や高専などを卒業して優れた技術を持った人を、大卒者と同様、あるいはそれ以上に優遇するような政策を、国や企業の経営者がとるべきではないか」と提案する。
 大卒後に専門学校に進んだ女性について、兵庫県の40代の会社員女性から「2度進学するのは考えようによってはぜいたくです。私はそう思い、専門学校を思いとどまりました」との体験談も寄せられた。

 ■飛び入学 挫折者生む懸念、浸透を望む声も
 3日付「飛び入学 広がるか」に対し、大阪府内の主婦(51)からは「根底にある考え方がオランダの教育のように『本人の才能や特性に合った教育が、子どもをより幸せにする』というものなら歓迎できるが、『トップを目指す』という目的であれば、一握りのトップになれず挫折する人を作り出すことにはならないか」と疑問の声が上がった。
 主婦は「いじめや虐待、不登校などの背景に、『何としても能力を高めなければいけない』という社会の考え方があるようにも感じる」としたうえで、「公教育は能力を伸ばすためだけでなく、将来、社会を形成してゆく同じ世代の仲間と学ぶ場でもあるはず。わざわざ制度を変えなくても、能力の高い人はそれなりに道を選んでいけるはずだと思う」と続けた。
 3月31日付「国際化遅れ 東大岐路」には「日本は海洋国家。貿易でしか生きていけない。そのために何が必要かを考えるべきだ。カリキュラムの中に1年留学を入れて5年制にするなどしてもいいかもしれない」(72歳男性)との声が寄せられた。
 朝日新聞教育取材班のフェイスブックにも、反響が届けられた。
 東京都品川区内の医師の女性が注目したのは、3日付「飛び入学 広がるか」のうち、一人ひとりの能力を生かす教育を進める必要性に触れた岩永雅也・放送大教授へのインタビュー。高い能力を持つ子どもについて「『特別な支援が必要だ』とはっきり書かれていて、留飲が下がる思いだった。このことが広く教育界に知れ渡る日が来ることを願ってやまない」との感想を書き込んだ。こうした子への支援について、「学校で理解を得るのは難しい現実がある」という。

 ■企業側が認めぬ実態、克明に 取材班から
 現役学生を含め、多くの方を傷つけたり、不愉快な思いを抱かせたりしたことについて、配慮に欠けていたと反省しています。大学名を出したのは、企業側が公には認めない「学歴偏重社会」の実態をなるべく克明に描き、現実を直視することから始めたいと考えたからです。
 高卒か大卒か大学院か、大学なら何大か。まず学歴を見て、どんな人か判断するという傾向は、私たちの社会に深く根を張っています。そんな社会で、学びの本質がゆがめられてはいないか、学歴やそれを生み出す入試に頼らない動きを追うことで、学歴偏重社会に風穴を開けたい――。取材班には、そんな問題意識がありました。
 政府の教育再生実行会議で進められている「6・3・3・4制」の見直しなどの学制改革の議論にもつながるテーマと考えました。
 同じ日の2面では、大学名によらない採用を始めた企業の動きも紹介しました。企業のグローバル化が進むなか、学歴偏重の風潮は今後、さらに揺れ動くとみられます。当事者の立場に気を配りながら、今後もこの問題を取り上げていきたいと考えています。
    ◇
 正解がわかっている問題でゴールにたどり着く速さより、何が正解かわからない問題でよりよい道を探り出す力を養う――。経済や社会の急速な変化に伴い、教育が果たすべき役割も変化を迫られています。「教育2014」では、現状を見据えて課題を展望し、その解決につながる方策を今後も考えていきます。朝日新聞社(取材班)

② 飛び入学、広がるか 競争あおると批判、変化の兆し(4/3)

 村上綾一(りょういち)さん(36)は算数の得意な子だった。小学校は授業中、時間をもて余し、教室の時計を見つめ、短針、長針の指す数字を暗算で掛け合わせていた。朝日新聞社

学制改革、狙いはどこに 特集・教育2014

 そんな経験から「コツコツ努力する亀ではなく、ドンドン跳ぶウサギを伸ばす教育を」と考えた。

 「理数系専門塾エルカミノ」を都内で開き、2年前から算数で「飛び級」を導入。いま、14人が飛び級で学ぶ。子どもらは言う。「学校の授業は退屈」「もっと上に挑戦したい」

 飛び級制度は、日本の小中高校では認められていない。同じ年度に生まれた子は、原則同じ学年で進む。

 そこに風穴を開けたのが千葉大だ。「特に優れた資質」の生徒に限って物理の研究者への道を開こうと1998年、高2が終わってからの「飛び入学」を受け入れ、「タテの多様化」を始めた。理工だけでなく、04年から文学部も加わった。

 導入当時、「受験競争をあおる」などの批判を受けたが、これまでに76人が入学。今年からは高2修了からではなく、高3秋から飛び入学する道も開く。

 千葉大に続いたのは私立の名城大(名古屋市)や昭和女子大(東京都)、成城大(同)、エリザベト音楽大(広島市)、公立の会津大(福島県)の5校。2014年度は日本体育大(東京都)が加わったが、昭和女子大が中止。全体の入学者は累計100人余りにとどまる。

 広がらなかったのは、なぜか。生徒にとっては「高卒の資格が得られず、大学を中退すると中卒になるのが響いている」と名城大理工学部の鈴木紀明教授。

 高校側も「3年を2年にするのは教育への影響が大きい」と反対が根強い。

 大学にも理由がある。

 文部科学省が06年、前年度に「飛び入学を検討中」と答えていた29大学50学部を調べた。何が導入の壁になっているかを聞くと、担当教員の確保の困難さなど「指導体制の整備」や、資質を判定する「選抜方法の難しさ」を挙げた学部がともに36%。「人格形成の観点から問題があると考える」など「教育面での課題」を挙げたのが22%だった。

 だが、ここに来て、変化の兆しが見え始めている。

 3月26日、京都大は医学部医学科で、16年度入試から飛び入学を導入すると発表した。東大から千葉大に移り、飛び入学を進めた原田義也東大名誉教授は「旧帝大の導入はインパクトがある。高校が生徒を囲い込み、有名大に送ろうとする流れも変わる可能性がある」とみる。

 静岡県の「高校と大学の連携・接続のあり方検討委員会」も今月、「静岡型飛び入学」を盛り込んだ提言を川勝平太知事に提出する。分野を農工商業や芸術、スポーツに大幅に広げ、早い段階で大学入試に合格できる「受験エリート」も含める。県は各大学と部会をつくり協議中だ。

 検討委の委員長で元東大総長の有馬朗人さんは、自らが戦前の学校制度で早期入学を経験。旧制中(5年制)の4年から旧制高校に入った。「英才だけでなく、秀才や技能に優れた子にも間口を広げ、自分のペースで学べるようにする時代だ」と話す。

■大学・院 進路を多様化  大学に入ってから学部を早期卒業したり、卒業せず大学院へ飛び入学したりする動きは広がっている。

 文科省によると11年度、54大学の305人が学部を早期卒業、50大学219人が大学院に飛び入学した。

 さらに進めるのが東京工業大だ。16年度から学部と修士課程のカリキュラムを一体化。学年にとらわれず、達成度を評価して進級させる。授業科目に番号をつけて体系化し、段階に応じて科目を選べるようにする。全体の5%しか飛び入学や早期卒業を認めていなかったが、条件を緩和して判断する。普通は学部入学後6年かかる修士号を最短4年でとることも可能にする。

 「早く進むことが狙いではない。学年にとらわれず、自分でカリキュラムを組み立てることで、人生を設計する力を育てたい」と丸山俊夫副学長は話す。

 長岡技術科学大(新潟県長岡市)と国立高等専門学校機構(東京都)も、高専と大学を一体で考える教育プログラムを試験的に始めた。高専で大学の単位を先取りし、大学編入後3、4年生で修士の単位を取り、修士を1年で早期修了できるように設計した。

 例えば高専で留学し1年遅く卒業した場合でも、高専、大学でそれぞれ大学、大学院の単位を先取りすれば、留学しなかった場合と同じ時期に大学院を修了することが可能になる。

 飛び入学を中止した昭和女子大も、カリキュラム改革を考えている。対象は同大付属高校の生徒だ。

 高校に籍を置きながら大学で単位を取る、飛び入学に似た方式は83年から優秀な3年生に認めてきた。これと大学の早期卒業を組み合わせて複数のコースを用意し、先取りで余った期間に長期留学するなど多様な進路を薦める。「早く入り早く出る」だけでなく、余った時間を活用してもらうのがねらいだ。

 「留学した場合、同級生と同じ年度に就職活動できないことをリスクと考える学生にも紹介したい」と保坂邦夫広報部長は話す。(編集委員・氏岡真弓)

■「みんな一緒」通用しない 岩永雅也・放送大教授

 戦後の日本は、同年齢の子どもが同学年の教育を受ける「横並び」の形式平等主義を貫いてきた。

 それが子どもを一斉に高学歴競争に駆り立て、高度経済成長を人材の面で支えたことは事実だが、一人ひとりの才能や個性を生かす教育には不向きだ。

 米国では大学進学に年齢制限はなく、正規学部課程に在籍する18歳未満の学生が約18万人(2011年)もいる。日本では、六つの大学で実施される飛び入学生は年間数人にとどまる。制度開始からの累積でもようやく100人ほどだ。

 千葉大の試みも、全科目高得点の秀才を評価する「学歴ピラミッド」を崩すまでの影響力はない。

 高い能力がある子どもには、障害のある子と同様、特別な支援が必要だ。グローバル化が加速するなか、「みんな一緒」がいいという価値観だけでは通用しなくなっている。今後は年齢より能力が一層問われることになろう。

 もちろん、注意すべき点もある。低年齢で無理な飛び級や飛び入学をすると、年齢相応に成長する時間が奪われる。同年齢の集団が壊れてしまう危うさや、教育格差に拍車をかける危険性も否定できない。

 それらに十分留意しながら、高校段階で教科単位の飛び級を試みるなど、能力を生かす教育を一歩進める時期に来ているのではないか。

 04 14 (月) 世界新秩序 米中を追う  04 14 現在

    <http://sitesearch.asahi.com/.cgi/sitesearch/sitesearch.pl?Keywords=%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%96%B0%E7%A7%A9%E5%BA%8F&Searchsubmit2=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&Searchsubmit=%E6%A4%9C%E7%B4%A2>

朝日新聞デジタル > サイト内記事検索結果 (2014/04/14現在)
    上記URLを開き、下記の①~⑧をクリックすると記事に移れる。

①(世界新秩序 米中を追う)巨大市場、なびくハリウッド(2014/04/11)
   (青島=石田耕一郎、ロサンゼルス=藤えりか) ▼12面=習外交の針路は (2面に続く)
   (世界新秩序 米中を追う)巨大市場、なびくハリウッド

②(世界新秩序 米中を追う)中国マネー、映画浸透 舞台・脚本、検閲配慮し変更(2014/04/11)
   (聞き手=藤えりか) (世界新秩序 米中を追う)中国マネー、映画浸透 舞台・脚本、検閲配慮し変更

③(世界新秩序 米中を追う)人民元の台頭、目指すはドル(2014/04/10)
   (編集委員・吉岡桂子、北京=斎藤徳彦) (10面に続く) (世界新秩序 米中を追う)人民元の台頭、目指すはドル

④(世界新秩序 米中を追う)対「ドル覇権」、悩む中国(2014/04/10)
   (編集委員・吉岡桂子、北京=斎藤徳彦、ワシントン=五十嵐大介) (世界新秩序 米中を追う)対「ドル覇権」、悩む中国

⑤(世界新秩序 米中を追う)太平洋の米軍、「敵」は中国(2014/04/09)
   (編集委員・加藤洋一、北京=倉重奈苗) (2面に続く) (世界新秩序 米中を追う)太平洋の米軍、「敵」は中国

⑥(世界新秩序 米中を追う)米、接近阻む中国に対抗(2014/04/09)
   (北京=倉重奈苗) (世界新秩序 米中を追う)米、接近阻む中国に対抗

⑦ 絡み合う不信と依存 アメリカ総局長・山脇岳志 中国総局長・古谷浩一(2014/04/09)
   その姿を「世界新秩序」で追いかけたい。 米中関係の実相を見極めることが、日本の針路を考えるうえで欠かせない、
   と思うからである。 絡み合う不信と依存 アメリカ総局長・山脇岳志 中国総局長・古谷浩一

⑧(世界新秩序 米中を追う)元国務長官の米中論 ジョージ・シュルツさん(2014/04/09)
   http://ajw.asahi.com/ (世界新秩序 米中を追う)元国務長官の米中論 ジョージ・シュルツさん



③(世界新秩序 米中を追う)人民元の台頭、目指すはドル 2014年4月10日05時00分

    <http://digital.asahi.com/articles/DA3S11077131.html>

 ルクセンブルクが、中国の通貨・人民元ビジネスに沸いている。「人民元は、これまで中国人の通貨を意味した。まもなく世界の人々の通貨となるはずだ」。グラメーニャ財務相は2月末、欧州の金融関係者300人を集めたフォーラムの開幕式で言い切った。自国を「欧州の人民元センターにする」とも語った。

 メルシュ欧州中央銀行専務理事は「人民元は米ドルに対抗する存在になる可能性がある」。中国の台頭に安全保障上の懸念が薄い欧州各国で、新興通貨の人民元を商売の種にしようとする動きが広がっている。

 3月28日、メルケル独首相は中国の習近平(シーチンピン)国家主席との間で、人民元で貿易や投資の支払いをしやすくするシステムをフランクフルトに作ることに合意した。3日後、英国と中国の中央銀行は、人民元取引の決済サービスに向けた合意書に署名。キャメロン英首相みずから旗を振る。

 中国はリーマン・ショック後、取引に使うドルの比率を下げることにした。一方、ウクライナ危機では、米国がロシアに金融制裁を連発し、基軸通貨保有国の強さを見せつけた。

 稼いだ貿易黒字が米ドルの形で国内に積み上がり、為替レートの変動で人民元の価値や国内企業の業績が振り回される事態を「いつかは脱したい」(金融当局者)との思いが、中国にはある。欧州諸国が誘致を競う「人民元詣で」は、ドル依存からの脱却を目指す中国の思惑と合致する。

 昨年暮れ、習氏の経済ブレーンとされる劉鶴氏が副主任を務めていた政府直属の研究所が「人民元を10年以内に国際通貨とし、一部の国の準備通貨(外貨準備として蓄える対象の通貨)にする」と提案。国際市場では「2020年までに外国との人民元のやりとりをドルや円なみに基本的に自由化するだろう」(英スタンダードチャータード銀行)との見方も広がる。

 09年までほぼゼロだった中国の貿易に占める人民元での支払いも、全体の2割まで伸びた。英金融大手HSBCは、その割合が15年に「3割を超える」と予測。そのとき世界で貿易の決済に使われる順位も現在の7位から急上昇し、英ポンド(3位)や日本円(4位)などを抜き、ドル、ユーロにつぐ3位になるとみている。

 中国は13年にモノの貿易で米国を抜き、世界一となったが、カネの世界では、米国の背中は遠い。国際舞台での人民元の歩みは、世界1、2位の経済大国の力関係を左右する。(編集委員・吉岡桂子、北京=斎藤徳彦)

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(世界新秩序 米中を追う)対「ドル覇権」、悩む中国

 ■人民元、国際化か保護か

 「人民元が国際化を急ぐことができたら、と切実に思う。ロシアではビザカードが使えなくなれば、中国の銀聯(ぎんれん)カードを使おうという声まであるのだから」

 中国現代国際関係研究院の陳鳳英・世界経済研究所長は、ウクライナ危機で目の当たりにした「ドル覇権」の力に焦りを見せる。米国が発動した制裁で、ロシアでは一部で、ビザやマスターのクレジットカードまで使えなくなった。

 平時は空気のように流通するドルが、有事となれば米国の主張をごり押しする武器となる。別の通貨との両替も、ドルを介しなければ成り立たない。中国は、この仕組みを「覇権」の源泉とみて、各国と通貨を直接交換できるシステムの構築に動いている。

 ドル資金が不足したときなどに自国通貨を融通し合う「通貨スワップ協定」も、この5年余りで23カ国・地域を相手に2兆5682億元(約42兆円)分を結んだ=図。リーマン・ショック後の韓国を皮切りに、アジア諸国や欧州に加え、ラテンアメリカなどにもスワップの輪を広げた。

 ただ、果敢なスワップ攻勢は、通貨としての人民元の不完全さも物語る。

 国際市場で人民元は、まだ調達しにくい。中国政府が人民元を投機に使われることを嫌い、貿易の支払いや目的が明確な投資に限って奨励してきたからだ。だからこそ、政府が必要に応じて供給するスワップが意味を持つ。人民元の「国際化」は、政府の手のひらの上にある。

 3月11日、「ミスター人民元」と呼ばれる周小川・中国人民銀行総裁の年1度の記者会見があった。人民元の国際化について問われた周氏は「やり残した宿題が多い」。数分間の答えで4度も「ゆっくり」「徐々に」と言葉を継ぎ、記者たちが期待した具体的な時期を示さなかった。

 人民元の国際化は、為替レートを市場に委ね、国境を越えたやり取りも自由化するといった改革が、避けて通れない。「自分たちの知らないところで使われ、価値が上下する事態を、人民元に望んでいるわけではない」。人民銀内部からはそんな声も聞こえてくる。

 ■巨大市場狙う米、改革迫る

 国際化を目指しつつ、ときに足踏みする。人民元の歩幅の小ささは、中国が抱く不安のあらわれだ。

 「通貨を自由に交換するということは、当局が経済のコントロールをやめること」(ルクセンブルクの金融開発機関のマッケル最高経営責任者)だからだ。

 市場に委ねる――。国有銀行を通じて政府の望む先へ資金を流し込む、中国のこれまでの「ルール」とは違う世界が待ち受ける。

 それをせかすのが、金融を基幹産業とする米国だ。米中戦略・経済対話や米中投資協定など、矢継ぎ早に作り上げた対話の場で「米国の金融機関に中国市場で平等な待遇を与えて欲しい」と繰り返してきた。

 昨年12月、北京での米中合同商業貿易委員会で、プリツカー商務長官、フロマン通商代表部代表、ビルサック農務長官を迎えた中国財務省の高官は、驚きを隠せなかったと振り返る。

 米国の閣僚級3人がいずれも、前月に終えたばかりの中国共産党の中央委員会第3回全体会議(3中全会)が打ち出した改革の具体策にまで触れてきたからだ。米国側の周到な研究ぶりがうかがえた。

 3中全会は、あらゆる産業分野での市場化をうたった。これまで国策で保護してきた企業を淘汰(とうた)もありうる荒波の中に放り込むことを意味する。起業や買収、整理といったすべての過程で資金を提供し、利ざやを稼ごうと手ぐすねを引くのが、米国が育ててきた銀行たちである。

 改革の「実験場」とされる上海自由貿易区に昨秋、外資系金融機関として進出一番乗りを果たしたのが米シティグループだった。「人民元取引を始め、自由化された業務では、我々が世界で築いてきた他行との優位を更に示すことができる」。シティ中国の裴奕根副頭取は力を込める。

 3月24日、米大手銀JPモルガン・チェースは方方・中国投資銀行首席執行官が辞任したと明らかにした。突然の辞任劇でささやかれたのは、同行が中国高官の子女を採用し、米監督当局が調査に乗り出した問題とのかかわりだ。米国での報道では、同様の調査を受けている機関としてゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの名も挙がった。米金融界に詳しい中国の研究者は「高官との関係をつくれば、営業の許認可をもらうにも、政策の情報を得るにもやりやすくなると期待したのだろう」と推測する。

 党や政府とのコネが物を言う「中国流」に染まってでも、米投資銀行は巨大市場の攻略をはかる。ただし、中国の「ルール」にひきずりこまれる事態までおきたことに、米国側はいら立ちも募らせる。

 米議会に委託された民間委員で構成する「米中経済・安全保障調査委員会」は毎年、中国の経済や安全保障についての報告書を議会に提出している。

 ビル・レインシュ委員長は、金融など中国に進出する企業から、知的財産の侵害や政府による現地企業への優遇策など、ビジネス環境への不満を多く聞くという。「制度に透明性がなければ、国が突然政策を変えてしまうのではないか、と懐疑的になる。人民元の国際化にしても、中国という国家に対する人々の信頼が必要だ」と話す。

 中国社会科学院米国研究所の王孜弘・米国経済研究室主任は「中国の金融機関には株主の期待する利益の最大化だけではなく、社会の安定を守る役割が党から課せられる。監督面での違いに、いつかはぶつかる」と難しさを説く。

 中国市場の利を求めたい米国と、世界へ飛び出すすべを学びたい中国。まだ力量の差がある双方の微妙なバランスの中、金融分野の開放は動き出した。だが、マネーが自由化への歩みを進めれば、やがては政府のコントロールを離れて流通する。米国が生んだその価値観を許容できるか。共産党の一党支配下にある中国に、その答えはない。(編集委員・吉岡桂子、北京=斎藤徳彦、ワシントン=五十嵐大介)



①(世界新秩序 米中を追う)巨大市場、なびくハリウッド(2014/04/11)

 ドイツ租借地の面影が残る中国山東省青島の郊外にある開発区は、微小粒子状物質PM2・5で白く煙っていた。ここでいま、「中国版ハリウッド」をつくる突貫工事が2年後の開業に向けて進んでいる。

 総工費約8500億円を投じる「青島東方影都」。中国の不動産会社、万達集団(グループ)が、野球スタジアム140個分の農村を買い上げ、最大1万平方メートルの撮影スタジオ30棟、3千人収容の大劇場、映画テーマパーク、商業施設、ホテル群などを建設する。

 同社員によると、起工式には、俳優のレオナルド・ディカプリオやニコール・キッドマンらハリウッドスターをはじめ、中国や米国の俳優約60人を約17億円かけて呼び寄せたという。

 万達の前身は、遼寧省大連市政府系の不動産会社。王健林会長(59)は軍を退役後、1980年代末に同社の経営を任された。国有地を安値で買い上げる手法で成功した。

 2000年代半ばに映画産業に進出。中国での興行収入のシェアは約15%で、首位を走る。12年には米国第2の映画館チェーン「AMC」を約2600億円で買収した。

 中国にはすでに、北京や浙江省などの数十カ所で映画撮影所が稼働し、年間700前後の映画制作数からすると飽和状態だ。

 それでも万達は、年間100本の中国映画と30本の外国映画の誘致をうたう。開発に携わる社員は「私たちはハリウッドを見据えている。狙いは全世界だ」と豪語する。別の社員は、幹部が社内で語った戦略を誇らしげに明かした。

 「海外の俳優や監督は青島に来ざるを得なくなる。世界の映画館で作品の客足を取れる上映時間を決める権限は、万達が握る」

 米映画界にとって、最大の海外市場は長らく日本だった。12年、中国の興行収入は2700億円を超えて日本を抜いた。20年には米国も抜くとユネスコの調査機関は指摘する。

 ハリウッドも中国になびく。タカラトミーの玩具から生まれた映画「トランスフォーマー」のシリーズ3作目「ダークサイド・ムーン」(11年)には、レノボのパソコンやTCLのテレビ、牛乳、Tシャツと中国の4ブランドが現れる。

 米大手広告会社の中国法人ディレクター、ジャニー・マー氏は「中国製品が自然に登場すると、中国の観客は喜ぶ」。シリーズ4作目では、九つの中国ブランドが登場する。

 プロデューサーのドン・マーフィー氏は「中国で上映されるためには、中国共産党とうまくやらなければならない。わかるだろう?」。中国で上映する映画は検閲を受ける。米国のソフトパワーの代表格といえるハリウッド映画が、表現の自由を制限する巨大市場に吸い寄せられている。(青島=石田耕一郎、ロサンゼルス=藤えりか)

▼12面=習外交の針路は
(2面に続く)



(1面から続く)2面
(世界新秩序 米中を追う)中国マネー、映画浸透 舞台・脚本、検閲配慮し変更 2014年4月11日05時00分

    <http://digital.asahi.com/articles/DA3S11078822.html>

 邦画「呪怨」などアジア映画のリメーク版を手がけた映画会社バーティゴ・エンタテインメントは、ロサンゼルス近郊の米映画大手ワーナー・ブラザーズのスタジオ内に本社がある。創業者のロイ・リー氏(45)は数カ月前、ここで中国人男性数人と向き合った。

 北京の映画会社の幹部たちだった。「中国のスタジオの傘下に入ってもいいというスタジオを探している」という通訳を介した買収の打診を、リー氏は断った。今はワーナーからの資金調達を見込める。

 中国マネーがハリウッドに浸透し始めている。「中国のワーナー・ブラザーズ」を目指して設立された北京の映画会社、華誼兄弟伝媒が3月、最大1億5千万ドル(約155億円)をハリウッドの新映画会社スタジオエイトに投じる、と発表した。アカデミー賞を主催する米映画芸術科学アカデミーは昨年、中国版ハリウッドを建設中の万達集団から、2千万ドルの寄付を受けた。

 脚本や配役も、中国の色に染まり始めている。ロサンゼルスに住む40代の映画監督は、近未来の日本を描いたSF小説を実写で撮るため資金集めに奔走していた昨年、3人のプロデューサーから「舞台を中国に変えたらいいじゃないか」と持ちかけられた。

 ブラッド・ピット演じる元国連職員が車を運転中、ラジオが「台湾で始まった狂犬病は12カ国に拡大」と報じ、ゾンビの大群が現れて街はパニックに――。米映画大手パラマウント・ピクチャーズが昨夏公開した「ワールド・ウォーZ」の一場面だ。「もとの発生地は中国だった」と、事情に詳しいプロデューサーは明かす。社の上層部が「中国はまずい」と差し替えた。

 北朝鮮軍が米本土を占領。若者たちがゲリラ戦を繰り広げる――。2012年に公開された映画「レッド・ドーン」は「非現実的」と米メディアに酷評された。中ロ連合軍の設定だったが、大幅に撮り直した。その費用は約100万ドルともいわれている。

 中華街の海鮮料理店主や店員を装ったエイリアンが主人公を襲い、反撃に遭って殺される。12年公開の映画「メン・イン・ブラック3」は、この場面が、中国での上映作品では見当たらない。英紙は「検閲で削除された」と報じた。作品は中国でヒットした。

 「中国に否定的な描写は入れられない。そんな萎縮効果が出ている」。ロイ・リー氏は語る。「どの大手スタジオも、映画の制作前に中国の検閲について考える。どうしたら受け入れられるか、とね」

 昨秋、ある日系俳優は「いける」と確信した。人気の連続テレビドラマが日本人役を探していると聞き、オーディションを受けた。日本で生まれ育ったのは自分だけ。「気に入ったよ」という英語のセリフや演技に手応えはあった。でも、選ばれなかった。自宅でテレビを見ていると、聞き覚えのあるセリフが耳に飛び込んできた。「気に入ったよ」。ドラマの舞台は上海。役柄は中国人だった。

 ■ブラピ、ハリソン、締め出し

 中国で放映される映画やテレビ番組を管理する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局(広電総局)には、大型スクリーンを備えた映写室がある。政府が選んだ検閲委員が、ここで上映の可否を決める。

 複数の委員経験者によると、総勢二十数人。中国共産党宣伝部や広電総局幹部のほか、大学教授や映画監督も加わる。顔ぶれは非公開。委員には「わずかな額」(現職委員)の報酬が支払われる。年間700本前後が制作される国産映画の検閲は毎週数日、午後に行われるという。警察モノなら公安部門、教育に絡むストーリーなら教育部門と、委員以外の政府関係者も同席する。上映の可否は投票で決める。

 年間約300本の国産映画を検閲してきた委員経験者によると、上映が認められないのは年間2~3作品、修正を求める作品数も「少ない」という。「映画制作者もばかではない。大金を投じた映画が上映できない事態は望まず、自己規制している」と指摘した。

 外国映画は、輸入本数も制限される。中国は01年の世界貿易機関(WTO)加入にともない、映画館で上映する外国映画の輸入枠を年間20本に倍増。12年には34本に増やした。旧作など年間30本前後も著作権を買い取る形で輸入し、映画館で上映する。ただ、日本では年間約500本、韓国では約300本の外国映画が配給されている。

 輸入は国有企業の中国電影集団が独占し、党と政府が思想統制のたづなを握る。同集団で10年間、外国映画の輸入に携わった周鉄東氏(51)は、米国や世界の映画祭で、年間800~1千本の外国映画を鑑賞。ハリウッドのアクション映画や冒険映画など、興行収入を見込める娯楽作品を中心に選んだと振り返る。「芸術性の高い作品の輸入は難しい。国内での配給は金もうけが狙いだから。検閲があるので、いいと感じた映画の輸入をあきらめた経験は多い」

 中国市場は一部の俳優も締め出す。ブラッド・ピットは、登山家と若きダライ・ラマ14世の交流を描いたジャン・ジャック・アノー監督の「セブン・イヤーズ・イン・チベット」に主演後、中国を訪れていない。俳優のリチャード・ギアやハリソン・フォードも中国と疎遠だ。ギアはダライ・ラマ14世を支援する財団に携わり、フォードは米議会証言で、チベット独立を支持した。

 しかし、アノー監督は一昨年の上海国際映画祭で審査委員長を務めた。記者会見で「(中国に)謝罪したのか」と聞かれ、「断じてない」。だが、続けた。「西側諸国は過ちを犯してきた。中国人がプエルトリコのことで干渉したら、米国人はどう思うか」。アノー監督はいま、この冬に公開予定の中仏合作映画を中国で撮影している。

 中国とのビジネスに詳しいプロデューサーのロブ・ケイン氏は「多くの映画人が恐れるのは、中国でビジネスができなくなること」と話す。別の米プロデューサーは「チベットや中国の人権問題を扱う映画はもうハリウッドから出てこないだろう」と言い切った。(ロサンゼルス=藤えりか、北京=石田耕一郎)

 ◆中国映画界の重鎮、謝飛(シエフェイ)監督(71)は1993年、「香魂女―湖に生きる」でベルリン国際映画祭の金熊賞(最優秀作品賞)に輝いた。一昨年、映画の検閲廃止を訴える書簡を公表している。スティーブ・マックイーン監督(44)の作品は3月、米アカデミー作品賞を受賞した。2人に中国の検閲について聞いた。

     *

 ■検閲は意味がない 謝飛監督

 私が検閲廃止を求めた書簡を公表したのは、検閲が中国の憲法に違反しているからだ。私がプロデューサーを務めた中国映画「風水」が、12年の東京国際映画祭にノミネートされたのに、配給元が出品辞退を宣言した。「(日本政府の尖閣諸島の国有化が)中国人の感情を傷つけた」からと。私は「日本車を破壊する行為と同じだ」と反対した。

 検閲の基準は、役人ごとに解釈が異なる。私はチベット族の男女の恋愛に時代の変遷を重ねた映画を監督したが、政府幹部は題材が「敏感だ」と、登場人物が互いを呼び合う呼称まで修正を求めた。

 私が教えた映画監督の賈樟柯氏、(カンヌ映画祭グランプリを獲得した)「鬼が来た!」で知られる姜文氏らは過去、何年間も映画の撮影を禁じられた。書簡公表後、若い世代は「自分たちができないことを老人がやってくれた」とたたえてくれた。

 いま、ネット上で海賊版の映画やテレビドラマが無検閲で流れている。私は検閲委員に「意味のないことは、やめなさい。時間の無駄だ」と言い続けている。

 中国に輸入される映画は米国の娯楽作品ばかり。文芸作品や米国以外の国の作品が入ってこない。

 90年代初頭には中国映画が国際映画祭で相次いで賞を獲得した。陳凱歌監督の「さらば、わが愛/覇王別姫」や張芸謀監督の「秋菊の物語」、私の作品などだ。その後、みなが娯楽作品づくりに走った。批判精神を持った映画は観客動員が見込めず、検閲も通らない。嘆かわしい。(聞き手=石田耕一郎)

     *

 ■価値認めて上映を スティーブ・マックイーン監督

 私の作品は、ぜひ中国でも上映してほしいが、(検閲の甘受は)難しい。私は、自分の子どもたちを決して切り刻んだりしない。私は、自分の映画をいかなる形でもカットされたくはない。編集の最終的な権限は、私にある。しかし、経済的な事情は理解できる。大手のスタジオが神経質になるのも分かる。

 素晴らしいことに、(アカデミー作品賞を受賞した)「それでも夜は明ける」はインドで、(ヌードの場面が出てくる映画としては)初めて検閲をパスした。彼らは映画に価値があることを認め、上映を許可した。中国も同じ措置をとってほしいと願っている。(聞き手=藤えりか)



▼12面=習外交の針路は
2014/04/11 国際 (12面) 世界新秩序・米中を追う

対米 習外交の針路は清華大研究院院長・閻学通氏に聞く

   閻学通氏
   1952年生まれ。北京の国際関係学院やカリフォルニア大学バークリー校などで学び
   清華大で対米専門家に。2010年に当代国際関係研究院の院長に就任した。新日中友
   好21世紀委員なども歴任し、中国国際関係学会副会長を始め兼任職も多数。

 中国の膨張と台頭で、変容する米中関係。習近平(シーチンピン)指導部は、いかなる外交を展開していくのか。中国の対米政策に影響力を持つ清華大学当代国際関係研究院の閻学通(イエンシュエトン)院長に聞いた。 ▼1面参照

『新型大国関係』、『衝突管理』がカギ

――中国の膨張が米中関係を変化させています――

「中国の影響力はまだ、主に経済である。つまり、購買力だ。今や世界は生産過多であり、主導権を握ることができるのは、買う側である。石油も自動車も飛行機もたくさん生産されるが、売れない。中国は急速に買う力を持ったことで、世界中から求められる存在になっている」
「なぜハリウッドが中国を求めるのか。中国が彼らの映画を買うからだ。経済から始まり、まだプロセスが必要だが、最後は中国の価値観が世界に影響を与えるようになる」

――人民元も、影響を強めています――

「日本の円が、外貨準備に使われる国際的な通貨とならなかった大きな原因は、日本の大きな貿易黒字にある。買うより売る方が多ければ、円は外に出ていかない。米国のドルが強いのはその貿易赤字のためだ。人民元も同じ理由で世界に広がる。将来の米中の競争の一つは、どちらがより多く輸入するかだ」

――米中は文化や経済の分野で衝突が不可避だと述べていますね――

「これは避けられない。1980年代、日本も企業文化の問題などで米国と衝突したでしょう。今後、米中間でこうした衝突は間違いなく増えていく」
「しかし、武力衝突は何とかして避けなければならない。これが『衝突管理』の考えであり、キーワードだ。米中の『新型大国関係』とは、文化や思想の衝突を管理することはないが、軍事上の衝突については避けるために管理しよう、という考えだ」

   『新型大国関係』、『衝突管理』がカギ
   中国の習近平指導部が提起した新たな2国間関係の概念。
     ① 対抗せず、衝突しない
     ② 互いに尊重する
     ③ 協力とウインウイン
   の三つを柱にした関係だと中国は説明する。オバマ政権は当初、この言葉に対する
   態度表明をしなかったが昨年秋から同政権高官が演説などで言及。米中首脳は3月
   同関係の構築を目指すことで一致した。ただ、両国の理解が同じものかどうかは明
   確でない。

偽りの友人関係

――これまでの2国間関係と新型大国関係の違いは何ですか――

「友好の程度に合わせて、中国には4種類の2国間関係がある。
   まずロシアなどとの『友好と協力の関係』
   フランスやドイツなどとの『普通の関係』
   その次に米国との『新型大国関係』があり
   最後に『対抗の関係』がある
それは今の日本との関係だ。新型大国関係は対決はしないが、競争する関係であり、友好度では普通の関係にも及ばない。対抗関係よりはましだという程度のものだ」
「今までのところ、米中の新型大国関係は『偽りの友人関係』の状態にある。でも、それは永遠にこのままであることを意味しない。新型大国関係であれば、偽りの友人でありながら、本当のライバルにもなりうる。協力を通じて米中間の競争を管理する。それが『新型』なのだ」

――今の米中関係を冷戦時代になぞらえて、「涼戦(クール・ウォー)」と呼ぶ人もいます――

「どうだろう。戦わないが、冷たい関係だった冷戦時代よりも、温度は上がったのだろうか。私に言わせるのならば、逆に寒くなったのではないか。凍りついてしまい、戦争ができない状態。『氷戦(アイス・ウォー)』だと思う」

米中二極化進む どちらにつくか

同盟国 自ら選ぶ

――習近平国家主席が進めようとしている外交とはなんですか――

「国家の尊厳の問題を解決する外交だ。中国の経済的な地位は上がったが、依然として、それにふさわしい国際的な尊敬を得られていない。例えば旅券でいえば、中国よりも日本の方が(渡航の自由度が高く)ずっと便利でしょう。中国は国内総生産(GDP)で日本を抜いているのに、だ」
「我々は友達が少ない。世界第2の経済大国なのに、米国に比べて友達が少ない。米国と同盟関係にある国は約40。我々は(事実上)0だ」

――だから、同盟関係が必要だとの主張ですね――

「中国が今後も非同盟政策を続けるなら、強大な軍事力を自分たちに向けることはないのかと思う国が出てくる。同盟を結ぶことで、周辺の『小国』に安全保障上の脅威を与えないと保証できる。同盟を結ばなければ、周辺国が怖がるのは当然だ」

――あなたの言う小国の方が、中国と同盟を結びたくないのではありませんか――

「彼らが結びたいかどうかは関係ない。中国が結びたいかどうかの問題だ。中国が金を出すのだから、保護されるのを嫌だという国はないだろう」

――昨年10月、習主席は「周辺外交工作座談会」を開き、周辺国との関係重視を打ち出しました――

「過去において、米国は中国の外交政策の重点中の重点だった。しかし、将来、周辺国が重点となる。例えば、米国とロシアの立場が違うとき、われわれは原則上はロシアの側に立つ。少なくとも米国の側に立つことはない。シリア問題がその典型例だ」

――日本との関係も周辺国外交の一つですか――

「中日関係は非常に重要だ。今、安倍政権との交流を拒絶するのは、それが両国関係の改善には役に立たないと考えるからだ」

海上ルール必要

――南シナ海でも米中衝突への懸念があります――

「米中は海上安全をめぐる管理ルールについて議論を始めている。中国が求めるのは、南シナ海だけではなく、全世界を範囲とした(米中間の)ルール作りだ。しかし、米国は『中国はグローバルな海軍大国ではない』として、これに応じたがらない」
「でも、時間がたてば、中国海軍はどんどん強くなり、艦艇も増える。米国は議論の範囲を南シナ海から東シナ海へ、更に太平洋へと拡大することに同意するに違いない」

――南シナ海問題で、東南アジア諸国は米中関係の変化に直面しています――

「東アジアだけでなく世界の多くの場所で、中国と米国は競い合っている。東南アジアの国々は中国と米国のどちらにつくかの選択を迫られている。今後、(米中の)二極化がさらに進めば、ますます多くの国がその選択を迫られる」

――選択はゼロサムですか――

   ゼロ‐サム【zero-sum】 合計するとゼロになること。一方の利益が他方の損失になること。

「仕方がない。国際的な枠組みは、一極化から多極化ではなく、二極化に進む。これは客観的な実力の変化によるものだ」

【取材を終えて】
強硬路線 中国に危うさ

閻学通氏と会ったのは、北京の頤和園近くにある清華大学の緑に囲まれたキャンパスであった。

習近平国家主席や胡錦濤前国家主席ら多くの共産党指導者を輩出した名門校は、米国との深いゆかりの歴史でも知られる。その前身は、19世紀末の義和団事件後、米国が賠償金の一部を中国に返却し、それを基に建てられた。

政府系シンクタンクの社会科学院などと並び、独自の対米外交政策を提言する同大の国際研究部門のトップである閻氏の主張は、これまで、中国の強硬派路線を代表するものと、海外では位置付けられてきた。

しかし、今や、習指導部の対外姿勢と、その主張の多くは重なる。これを支えるのは、習主席の主要な権力基盤であり、自らの力の増大によって、強気の姿勢をあらわにする軍部などからの声である。

「米国は日本の行為を警戒すべきだ。悪に対し、寛大に応じ、助長させてはならない」

常万全国防相は8日、訪中したヘーゲル米国防長官との共同会見で、「安倍政権」を名指しし、強い調子で言い放った。米中軍事交流の公開の場で、ここまで露骨に第三国の日本を批判し、米国に要求を出すのはこれまでにはなかったことだ。

閻氏はインタビューで自信たっぷりに、身振りも交えながら、こうした米中の力のバランスの変化を語った。

毛沢東時代には、中国という国を国際社会に認めさせるのが外交目標だった。鄧小平時代は、経済成長を最優先し、安定した国際環境の構築が重視された。それを転換させ、国際社会に中国への「尊重」を求めるのが、習外交である、と。

まさに、「中華民族の偉大なる復興」を掲げる習指導部の実際の言動と一致する説明である。

しかし、足元を見れば、中国では今、経済の減速に対する懸念が広がっている。深刻な「貧富の格差」や腐敗の蔓延など、共産党への庶民の視線が極めて厳しいのも事実だ。閻氏の主張は、日本を含む周辺国だけでなく、中国自らにとっても、一定の危うさをはらんだものである。

(中国総局長=古谷浩一)


【下平・コメント】

2014/04/11の12面「習外交の針路は」は、今までの記事であればどんな記事にしてもドラック&コピーができた。ところが、なぜかこの記事はコピーもドラックもできなかった。


籾井NHK会長の指示でもあるまいが、情報公開しなかったこととは違うが、何かの記事公開へのクレームがあったとしか考えられない。

政治家にとっては、自分たちの意向を逆なでするような記事です。

安倍政権の政策は、日中問題の指導者のこじれを引きおこし、心ある日本人の心をも逆なでするような幼稚で稚拙な思想としか目に映らない。そしてまた、国民の文化の自負も平和社会の実現の希望も無視した方向へ引っ張っていきそうです。

政権指導者は政治哲学をもっていない、と批判されても仕方あるまい。へたをすると日本歴史にとっても嫌な曲がり角になるかもしれません。