折々の記へ
折々の記 2014 ⑥
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】06/08~ 【 02 】06/18~ 【 03 】06/22~
【 04 】06/27~ 【 05 】06/29~ 【 06 】07/06~
【 07 】07/11~ 【 08 】07/21~ 【 09 】08/12~
【 06 】07/06
07 06 (続)集団的自衛権 momo.491からつづく
(日本はどこへ 集団的自衛権:1) 既出 ⇒ 【 momo.491 】
(日本はどこへ 集団的自衛権:2) 米国に「ノー」言えるのか
(日本はどこへ 集団的自衛権:3) 政権追随、物言わぬ経済人
(日本はどこへ 集団的自衛権:4) 対日強硬派、利する危うさ
(日本はどこへ 集団的自衛権:5) 住民犠牲の安保、あり得ぬ
07 08 習主席、日本批判を強化 「侵略美化する者認めない」 2014年7月8日 盧溝橋事件77年、式典出席
歴史認識・移民、どう対応 2014年7月8日 日仏文化サミット
グローバル化「国家復活」導く 2014年7月8日 仏の人類学者・エマニュエル・トッド氏に聞く
07 09 日中開戦77年―歴史から学ぶべきは 2014年7月9日 (社説)
07 10 米中戦略・経済対話 南シナ海問題など討議
米中対話、激論は必至 南シナ海・サイバー攻撃焦点 北京であすから
中国管轄権「根拠あいまい」 米高官、南シナ海「9段線」に
経済でも主張対立 米「中国の改革遅い」/中「対米投資で差別」 … きょうから北京で対話 …
主権・サイバー、米中応酬 戦略・経済対話が閉幕 2014年7月10日
07 06 (日) (続)集団的自衛権 momo.491からつづく
(日本はどこへ 集団的自衛権:1) 既出 ⇒ 【 momo.491 】
(日本はどこへ 集団的自衛権:2)2014年7月3日 国際報道部長・石合力
米国に「ノー」言えるのか
安倍政権による集団的自衛権の行使容認について米政府は早速歓迎の声明を出した。ウクライナ危機に伴う米ロの対立、中国の台頭、中東の混迷で米国の一極支配は揺らいでいる。厭戦(えんせん)気分と財政難で内向き傾向が強まるなか、行使容認は同盟国にさらなる役割分担を求めたい米国の利害と合致する。その「利害」は同盟国日本にとって共有できるものなのだろうか。
米国が期待するのはアジア太平洋という「地域」にとどまらない「地球規模」の問題への一層の寄与だ。実際、最近の自衛隊海外派遣の主な舞台はインド洋(給油活動)やイラク、南スーダンなど中東からアフリカに広がる。
その中東ではいま、反欧米の国際テロ組織アルカイダの流れをくむ武装組織が勢力を急速に拡大。その指導者は対米テロの首謀者だったビンラディンの後継とも目される。米軍事外交の論客マケイン上院議員はこう語る。「我々(米国)に対する国家安全保障上の脅威になりつつある」
これまでなら対岸の火事だったかもしれない。だが、集団的自衛権の行使を容認したいま、米政府は問うだろう。「同盟国日本は何ができるのか」と。(極めて重要な課題)
安倍首相は「かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」という。だが、中国との緊張や朝鮮半島情勢を抱えるアジアで米軍頼みの日本が域外でどこまでノーといえるのか。これまで以上に大きな責任分担を求められる可能性もある。そのとき「必要最小限度」などの新3要件は本当に歯止めになるだろうか。
米国の「対テロ戦争」は宗教・民族間の対立を逆に激化させた。イスラム世界で反米感情は高まり、文明間対立の様相すら帯びる。
一方で軍事的な関与を拒んできた日本の対応は、アニメなどのソフトパワーとも相まって「親日派」を生み出してきた。昨年春、イラクのサマワを取材した私に反米強硬派の幹部は「自衛隊は武力攻撃の対象にしなかった」と語った。憲法の制約で民生支援に徹した自衛隊を米軍などの多国籍軍と区別していたためだ。
集団的自衛権や集団安全保障の枠組みで米国に加担したとみられれば、海外の邦人や企業が過激派の標的になる危険はさらに増す。6年後に東京五輪を控えた国内の安全にもかかわってくるだろう。それが「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」(安倍首相)ことにつながるとは思えない。
(日本はどこへ 集団的自衛権:3)2014年7月4日 編集委員・安井孝之
政権追随、物言わぬ経済人
経済同友会の終身幹事で「9条死守の覚悟」を終生見せた品川正治さんが生きていたら、今の経済界をどう叱っただろうか。
戦地で砲弾を受けた品川さんは「平和憲法」の下で経済を発展させる大切さを語り続けた。「戦争放棄した日本と世界中で戦争をし続ける米国と同じ価値観であるはずはない」。経済の力で各国と友好関係を築こうとした。(極めて重要な課題)
1990年代の半ば、品川さんら憲法を守ろうとする経済人と、91年の湾岸戦争を契機に日本も改憲し、紛争解決に貢献する「普通の国」に変わるべきだという経済人がせめぎ合った。
それが徐々に「普通の国」派が優勢に。世界各地で起きる紛争に企業人が巻き込まれる例も増え、中東から原油を運ぶ長い海路を守る必要もあった。戦後生まれの経営者も増え、安全保障観も変わっていった。
衆参の憲法調査会が報告書をまとめた05年、経団連は改憲を提言、集団的自衛権の行使も9条を見直し、認めるべきだと主張した。
だが、その後、経済界で安保論議は深まっていない。この間、民主党への政権交代もあり、議論が下火になった。しかもリーマン・ショックなど予期せぬ経済危機で、目の前の日々の対応に追われるばかり。天下国家に物申す経済人は少なくなった。
年初に安倍晋三首相は経済3団体の会合で、「最優先課題は経済の再生」と言い切ったが、半年後、大きな政治課題は集団的自衛権問題に変わってしまった。
経済団体幹部は「法人税減税が決まり良かったが、安保問題はもう少し後にして欲しかった」と漏らす。
経済の先行きには難問が続く。デフレから抜け出した時、市場にだぶついたお金は悪影響を及ぼさないか。消費税の再引き上げや医療、年金、介護など社会保障の抜本改革という高いハードルも待っている。
経済再生を最優先にして欲しい経済界には、何にしろ安倍政権に異を唱えるのは得策でない、という思いがある。それを見透かすかのように安倍政権は集団的自衛権の議論を急いだ。
榊原定征・経団連会長は6月下旬の会見で「国際情勢が非常に緊迫化している。議論は急ぐべきだ」と語り、安倍政権の方針を追認した。
かつて品川さんは「おねだりするな」と政権に近づく経済人らを批判した。だが、今や減税や規制緩和を進めてくれる安倍政権に苦言を呈する経済人は見あたらない。
(日本はどこへ 集団的自衛権:4)2014年7月5日 中国総局長・古谷浩一
対日強硬派、利する危うさ
東アジアは今、中国の台頭によって、劇的な変化を迎えている。(極めて重要な課題)
習近平(シーチンピン)指導部の拡張路線は、急激であり、地域の秩序を破壊しかねない膨張である。安倍晋三首相が集団的自衛権の行使容認の理由にあげた「安全保障環境の変化」は確かに存在する。
そもそも歴史上、東アジアに二つの世界的規模の大国が平和に共存したことはない。あつれきは今後も、さらに高まるに違いない。
しかし、ここで、私たちはもう一つの重たい現実を忘れてはなるまい。
「戦争はいやだ。(集団的自衛権には)反対」。戦中、日本に強制連行された元労働者の一人、張世傑さん(88)は北京の自宅で、そう短く語った。韓国からも、再び朝鮮半島に日本の軍靴が響くことは許さない、といった懸念の声が伝えられる。
今回の安保政策の転換によって、この地域の民衆レベルで「再び戦争をしようとしているのは日本である」といった警戒感が高まっているのは事実である。
「(戦争は)断じてあり得ない」と安倍首相が語っても、それは響かない。
日本の侵略や植民地支配の記憶は、今も深く刻まれている。当局の反日プロパガンダと片付けるわけにはいかない。慰安婦や靖国参拝といった歴史問題での安倍首相の言動に対する不信が、こうした感情をことさら敏感にさせている。
今月下旬に、日清戦争の開戦120年を迎える。人々が思い起こすのは、朝鮮半島にいる自国民の保護との名目で、日本軍が出兵していたという歴史である。
「日本の軍国主義は中韓両国に野蛮な侵略戦争を発動した」。4日、習氏は訪問先のソウル大学で訴えた。共産党政権は格好の口実を得た形で、来年の終戦70周年に向け、対日批判の宣伝を強めている。
こうした中国に対し、米国は「封じ込め」だけでなく、「協調」も進める。同盟国との関係強化で対中包囲網を形成しつつ、交流を深め、決定的な対立を回避しようとのしたたかなアプローチである。
安倍政権がやるべきだったのは、この地域の民の感情に気を使い、説明を尽くし、不信を解いていく努力ではなかったか。
日本への警戒の高まりは、かえって中国内部の対日強硬派を利する危うさをはらんでいる。十数億人に上る東アジアの人々を敵に回すような「抑止力」はむしろ、日本の安全を脅かしかねない。
(日本はどこへ 集団的自衛権:5)2014年7月6日 西部報道センター長・後藤啓文
住民犠牲の安保、あり得ぬ
沖縄では今、中国をにらんだ動きが目に見える形で進んでいる。
米軍嘉手納基地に今年1~4月、最新鋭のステルス戦闘機F22が配備された。昨年の配備期間は10カ月。ほぼ常駐に近い状態だ。潜水艦を追う哨戒機も最新型のP8Aへの更新が進む。
米軍だけではない。航空自衛隊は沖縄配備のF15戦闘機を今の1個飛行隊(約20機)から2個飛行隊に倍増させる計画で、自衛隊と民間が共用する那覇空港では沖合に新滑走路をつくる工事が始まった。陸自も離島への部隊配備の計画を進めている。
空自幹部はこう語る。「中国軍の近代化が進んでいるといっても、まだまだ勝負にならないレベル。今のうちに手出しされない態勢をつくらなければ」
戦後、沖縄に基地を築いた米軍はここを「太平洋の要石」と呼んで、ベトナムや中東など世界各地への展開拠点としてきた。その役割は、前線に部隊を送り込む後方拠点の側面が強かった。
集団的自衛権の行使容認で、日米の軍事的一体化が進むのは間違いない。日米が中国に向き合う時、沖縄はもはや後方ではなく、最前線だ。沖縄からみれば、本土の安全保障のために、自分たちだけが、米軍や自衛隊と最前線で同居する危険をかぶることにほかならない。
「70年も戦争がなかった本土の人にとって、平和は当たり前に存在するものかもしれない。だが、沖縄にとって戦争は過去のものではないんです」。嘉手納基地がある沖縄県嘉手納町の宮城篤実・前町長はそう話す。実際、沖縄では米国での同時多発テロ後、本土からの観光客が激減し、米軍基地では日本人警備員も銃の携帯を義務づけられた。
閣議決定後の会見で安倍晋三首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」と語った。だが、沖縄の人たちもまた国民であるはずだ。
米軍に守ってもらうが米軍を守ることはできない。その片務性の代わりに、在日米軍に基地を提供するのが、これまでの安保体制だった。集団的自衛権の行使容認で、片務性は解消されるはずなのに、今度は「日米一体運用」の拠点として沖縄の基地は維持される。
沖縄の自衛隊の軍事的役割は強化され、沖縄ばかりに負担を強いる構図は変わらない。
軍と行動をともにするなかで多くの民間人が犠牲となり、県民の4人に1人が死亡した沖縄戦から間もなく70年になる。住民を犠牲にする施策は安全保障とは言わない。
日米の役割を具体的に定める日米防衛協力の指針(ガイドライン)は年末をめどに改定される。沖縄をまた捨て石にすることは許されない。=おわり
この記事に関するニュース
「集団安保で武力」明記 集団的自衛権、政府が想定問答(6/28)
(集団的自衛権)集団安保、なお諦めず 機雷除去、自民抜け道模索(6/24)
(集団的自衛権)武力容認、底なし 政府・自民「集団安保でも」 敵地で戦闘の可能性(6/20)
(集団的自衛権)歪む、政権三角形 安保観、首相と幹事長にずれ(6/5)
(声)集団的自衛権、安保の枠逸脱(5/15)
安保掲げ憲法逸脱 法制懇の報告、全文入手 集団的自衛権「9条の範囲内」(5/14)
行使範囲「歯止め」不透明 集団的自衛権、安保法制懇報告書(5/14)
集団的自衛権「9条の範囲」 法制懇、憲法より安保優先(5/14)
杉原千畝神話の虚実
http://park6.wakwak.com/~y_shimo/momo.10008.html
07 08 (火) 習主席、日本批判を強化 「侵略美化する者認めない」 2014年7月8日 盧溝橋事件77年、式典出席
2014年7月8日
習主席、日本批判を強化 「侵略美化する者認めない」 … 盧溝橋事件77年、式典出席 …
日中全面戦争の発端となった盧溝橋事件から77年を迎えた7日、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が盧溝橋の式典で演説し、安倍晋三政権の歴史認識を念頭に日本を批判した。最高指導者のこの式典への出席は極めて異例。習氏は訪中したドイツのメルケル首相とも会談し、内外の世論工作を強める姿勢を鮮明にした。
「いまも少数の者が歴史の事実と戦争で犠牲になった命に目を向けず、時代に逆行しようとしている」
盧溝橋の中国人民抗日戦争記念館で行われた式典で、習氏は名指しは避けつつも、靖国神社参拝などに踏み切った安倍政権を牽制(けんせい)。「侵略の歴史を美化する者を、中国と各国人民は決して認めない」と強調した。
江沢民元国家主席や胡錦濤(フーチンタオ)前国家主席が終戦50周年や60周年の終戦記念日前後に同館を訪れたことはあったが、盧溝橋事件が起きた日の式典に最高指導者が参加するのは1987年の開館以来初めて。国営中央テレビが式典を生中継し、共産党機関紙の人民日報は1面に社説を掲げて安倍政権を批判。中国外務省当局者は「すべて党中央宣伝部が仕切っている」と明かした。
7日に向け、歴史資料を保管する中央とう案(とうあん)館も、中国で軍事裁判を受けた旧日本軍人45人の供述書などをサイトで公開。南京大虐殺を語り継ぐ遺族のデータベース化なども始まった。習指導部が「反ファシズム戦争勝利70周年」と位置づける来年に向け、安倍政権の歴史認識に対する批判のステージを上げた形だ。
日中間では最近、関係改善の兆しを感じさせる動きもあった。5月に訪中した高村正彦・自民党副総裁と6月の社民党の訪中団には、それぞれ党序列3位と4位の指導者が対応。11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を控え、日本側には「習指導部が強硬姿勢を転換しつつあるのでは」との見方も出た。しかし、習氏は先週訪れた韓国でも演説で対日歴史批判を繰り広げ、盧溝橋事件から77年の日を対日キャンペーンの機会として盛り上げた。
こうした動きは「歴史問題で安倍政権への妥協はありえない」(外務省幹部)との基本方針が変わっていない表れだ。中国の立場に一定の理解がある政治家や財界などとの交流を閉じない一因には、日本国内からも圧力をかけて安倍首相に歩み寄りを促したいとの思惑がある。
◆国際社会へ連携訴え 独、「肩入れ」避ける
習氏はこの日の演説で中国の抗日戦争を「世界反ファシズム戦争の東の主戦場」と表現し、米ロをはじめ国際社会への連携呼びかけを強める構えを示した。
7日は訪中しているドイツのメルケル首相が習氏ら中国指導者と相次いで会談。李克強(リーコーチアン)首相は「77年前の今日、日本軍国主義者が始めた全面的な侵略戦争に中国人民は立ち向かい、勝利した。歴史の教訓を記憶に刻むことで未来は切り開かれる」と語りかけた。
しかし、日中双方と経済の結びつきが強いドイツにとって、日中の歴史問題は「頭痛の種」だ。中国で、過去に向き合う戦後ドイツを「手本」とし「日本も見習うべきだ」との論調が強いのは承知しつつ、メルケル政権としては一方への「肩入れ」を避けたいのが本音。3月の習氏訪独の際、中国にベルリンのホロコースト記念碑視察を打診されたが断った。「第三国の外交目的に使われたくない」(独関係筋)ためだ。
メルケル氏は4月、ベルリンを訪れた安倍首相に来年の訪日を約束。今回の訪中直前の4日には安倍首相と電話をし、日本への配慮も示した。 (北京=林望、ベルリン=玉川透)
◆「歴史の問題化、役に立たない」 菅官房長官
菅義偉官房長官は7日午後の記者会見で、習近平国家主席による盧溝橋事件の式典での演説について、「いたずらに歴史問題を国際問題化することは、地域の平和と協力のためになんら役に立つものではない」と不快感を示した。菅氏は「平和国家としての我が国の歩みは国際社会に高く評価されている」と強調。「未来志向の協力関係を発展させる姿勢こそが、国家の指導者として求められるのではないか」と注文をつけた。
◆キーワード
<盧溝橋事件> 1937年7月7日夜、北京郊外の盧溝橋近くで演習していた日本軍に何者かが発砲したとして、翌朝から日本軍が北京周辺の中国軍への攻撃を開始した。事件後、戦線は中国各地に拡大。日中は全面戦争に突入した。
この記事に関するニュース
中国が日本批判「歴史学ぶべき」 菅官房長官発言に(7/9)
(社説)日中開戦77年 歴史から学ぶべきは(7/9)
日中開戦77年―歴史から学ぶべきは(7/9)
盧溝橋事件77年、習主席が日本批判 「侵略を美化」(7/8)
歴史問題への姿勢、国内外にアピール 習主席、ドイツで日本批判(3/30)
習主席、異例の日本批判 歴史問題で妥協しない姿勢(3/29)
習主席、ホロコースト記念施設訪れず 日本批判には含み(3/17)
2014年7月8日
歴史認識・移民、どう対応 … 日仏文化サミット …
日本とフランスの学者や文化人が、両国や世界の課題について語り合う「日仏文化サミット」(在日フランス大使館、日仏会館など主催、朝日新聞、ルモンドがメディア協力)が6月28、29日、東京都内で開かれた。「欧州と違い、日本と、韓国や中国との間で続く歴史認識を巡る対立をどうすべきか」「日本は、フランスのように移民を受け入れるべきか」――。専門家たちは率直に意見をぶつけ合った。
◆「欧州の和解、経済的理由も」遠藤氏 「国より人間に謝罪を」ポステルヴィネ氏
政治や外交問題を話し合う28日のシンポ「日仏が直面する地政学的課題」で話題になったのは、日中韓の対立と、その背後に横たわる歴史認識の違いだった。
6月6日、フランスで開かれたノルマンディー上陸作戦開始から70年の記念式典。オランド仏大統領、キャメロン英首相に交じって式典に参加したのは、メルケル独首相ら敗戦国の代表だった。
アジアでは、安倍晋三首相が2012年末に首相に就任してから、歴史認識を巡る対立を背景に日中、日韓のそれぞれの首脳会談は実現していない。欧州の専門家たちには、欧州とは対照的に、日中韓はいまだに「過去」を克服できていないようにみえるという。
こうした見方に、シンポジウムで真っ向から反論したのは北海道大公共政策大学院の遠藤乾教授(国際政治、欧州政治)だった。
遠藤教授が指摘したのは、欧州における「過去」の清算は、経済的な理由が引き金になったという点だ。
欧州では、「欧州石炭鉄鋼共同体」を1952年に仏や西独など6カ国が創設し、これがその後、欧州連合(EU)へと発展していった。この鉄鋼共同体の設立について、遠藤教授は「鉄鋼業に使う石炭を西独から得るためだった」と指摘。鉄鋼共同体は、冷戦下の政治経済上の戦略だったが、これが契機になって仏独の歴史面の和解が進んでいった、とみる。
遠藤氏は「(経済的な)打算だけではないが、反省や和解のモデルとしてだけ理解すると間違う」と問題提起した。
現在のアジアでの歴史認識を巡る対立については、遠藤氏は、戦後補償についての日本の姿勢が十分なわけではないとしつつも、「経済協力や謝罪などを日本は積み重ねてきている。それをフェアに評価し、その歴史の延長で、東アジアの和解のモデルをつくるべきだ」と訴えた。
これに対し、仏国際関係戦略研究所のパスカル・ボニファス所長は、まず欧州の和解プロセスについて、「独仏は第2次世界大戦の教訓と、ソ連への対抗のために和解し、歴史を乗り越えた。経済的理由だけではない」と反論した。
さらに、ボニファス所長は、日韓関係について、「日本が謝罪したのは事実だが、相手はそう思っていないと自覚していないことが問題だ」と語った。
パリ政治学院国際関係研究所のカロリーヌ・ポステルヴィネ教授は、タブーにとらわれず自国の歴史と向き合うべきだと主張し、「大戦中の対独協力政権について、仏では勇気を持って話し合った」と自国の取り組みに触れた。
従軍慰安婦問題については、「ネーション(国家)とナショナリズム(愛国心)の区別が必要だ。慰安婦問題で謝罪すべきかどうか、それぞれ各国が問題を抱えている。日本は国家としての韓国ではなく、人間である女性に対し謝罪するべきだ」と訴えた。
議論は、集団的自衛権を行使するための安倍政権による憲法解釈変更の動きや、政権がその先に目指す憲法改正にも及んだ。
ボニファス所長は、「憲法改正は緊張を生む。他国の意見を考えるべきだ。別の時代につくられた憲法を改正することはありうるが、タイミングの問題がある。他国にマイナスに受け取られないような物語が必要だ」と指摘した。
ポステルヴィネ教授も「防衛面での自立に問題はないが、説得力が必要」と語り、近隣諸国への説明や説得の重要性を訴えた。
東京大大学院の加藤陽子教授(日本近現代史)からは、対立が続く日中関係を巡り、フランスに対する要望も出た。
加藤教授は「フランスは日本にも中国にも信用されている。仏が中国に対してできることは、日本のいろいろな面を見るよう促すことだ」と話した。(石橋亮介)
◆「日本は内向きの心理傾向」トッド氏 「専門職受け入れ積極的に」清家氏
高齢化は日本とフランスがともに直面している課題だ。28日午後の「社会・人口学的変化」のセッションでは、人口減少に直面する日本にとって、カギを握る施策とみられている「移民受け入れ」をどうすべきか――が話し合われた。
人口をめぐる施策で、日仏の違いが際立つのが「移民」への態度だ。フランスは長年移民を受け入れてきた。日本は移民を受け入れておらず、「技能実習制度」で法的に十分な保護を与えないまま労働力として活用し、「人権侵害」という批判が絶えない。
フランスではいま、移民規制を訴える右翼政党が台頭するなど移民への風当たりは強い。ただ、移民を受け入れず、「技能実習制度」の拡大で労働力不足を補おうとしている日本政府とは根本的な違いがある。
シンポジウムでは、朝日新聞の大野博人・論説主幹が「日本では外国人労働者の問題が、あまり議論されない」と問題提起した。
「帝国以後」などの著作で、世界的に知られる歴史家のエマニュエル・トッド・仏国立人口統計学研究所研究員は「国の成功は移民の流入で計れる。米国がそうだ」として、日本も移民を受け入れるべきだと提案。「日本では不思議なくらい肌の色の違いに対する反応がある。日本は内向きの心理的傾向が深い。(このままでは移民を受け入れ始めた)韓国に人が流れる」と日本の問題点も言及した。
清家篤・慶応大塾長は、短期的には移民受け入れが大切だ、と指摘した。「大事なのは、(専門職などの)プロフェッショナルな人たちを積極的に受け入れること。一方で、(現状の)『未熟練の労働力、訓練生』という制度はよくない。日本人と同様に企業の中で能力開発をすればいい」と語った。
鬼頭宏・上智大経済学部教授(歴史人口学)は、日本では縄文や江戸時代など過去にも3回、人口減少期があったと紹介。いずれも稲作伝来や開国など「外国との交流」が再興の原動力となっており、移民受け入れは「国の形を変えるチャンス」ととらえた。
白波瀬佐和子・東京大大学院教授(社会学)は「移民には家族もいるので、教育を含めた地域の活動や、インフラの整備も必要になる」と指摘した。
これに対し、トッド氏は「外から来た人たちに社会になじんでもらうことは、難しいことではない」と応じた。(乗京真知)
◆原発の問題、日仏に相違
原発問題では日仏の専門家の意見は大きく異なった。日本側の参加者からは原発廃止論が出た一方、仏側からは脱原発は難しいとの意見が出た。
最上敏樹・早稲田大学教授は28日の討議で、「日本は福島の惨事を経験し、人類は原発から手を引くべきだと身をもって知った。世界に発信する義務がある」と語った。「この問題では日本は仏と違い、こちらに将来性があると率直に言い、共に人類の未来を考えればいい」とも言及した。
29日は、エネルギー問題そのものを討議するシンポジウムが開かれた。
佐和隆光・滋賀大学長は「日本で原発は絶対安全と政府も電力会社も言い続けてきたが事故は起きた。フランスには絶対安全神話はないはずだが、なぜ原発の社会合意が成り立つのか」と質問した。
仏自動車大手ルノーの元会長で、現在は日仏関係担当の仏外相特別代表を務めるルイ・シュバイツァー氏はまず、「フランスでは福島で起きたような地震は起きない」として、リスク環境の違いに言及。さらに、「フランスの世論の一方には、エネルギーを外国に依存してはならないという考えがある。原発は技術も、関わる人々の能力も高いので、そのためのリスクを受け入れられると考えられている」と説明した。(石橋亮介)
◆老いゆく国同士知恵出し合おう 国末憲人(論説委員・元パリ支局長)
1984年、朝日新聞社はフランス文化省との共催で初の「日仏文化サミット」を開催した。哲学者ジャック・デリダ氏、作家大江健三郎氏ら両国を代表する知識人らが集まり、日仏交流の可能性や文化貢献を巡って、東京と箱根で3日間議論を重ねた。
今回の日仏文化サミットに透けたのは、それからの30年間の両国と世界の変容ぶりだった。
80年代の冷戦期、参加者らの第一の関心は「核戦争の恐怖に対して日仏文化人が何をできるか」だった。経済力を背景に欧米に対して自信を持ち始めた日本と、国際社会での発言力拡大を目指すミッテラン社会党政権のフランス。両国からの参加者は、米ソ支配に代わる価値観を打ち出そうと試みた。
グローバル化が進む現在、東アジアで存在感を増した中国の動向に、日本の行動は大きく左右される。フランスも欧州連合(EU)の枠組みに縛られ、単独では何も決められない。日仏関係は、日本とフランスだけ見ても論じられなくなった。
そのような状況を、今回参加した顔ぶれが象徴している。かつて主流を占めた知日派フランス人、フランス通の日本人にとどまらず、国連やEUの専門家、ビジネスマンらに幅を広げた。フランス以外の国と長らくつきあってきた人もいる。
フランスも日本も、国際社会の中で単独では主役を張れなくなった。では、日本とフランスとが付き合う意義も薄れたのか。逆に、その必要性はますます高いと考える。
日仏はもはや、大幅な成長を期待できそうにない国だ。あくせく働くだけでなく人生を楽しむ余裕を見いだした国でもある。政治不信、少子化、エネルギー対策など、共通する課題も多い。静かに老いゆく国同士として、知恵を出し合い、共に取り組む場面は少なくない。肩ひじ張らず、対等で実務的な関係を築く時だ。
成熟した日仏が示す問題意識や模索の過程は、多くの国に手がかりを与えるだろう。今回のサミットを機に、その流れをさらに強めたい。
この記事に関するニュース
北朝鮮問題が焦点 日米韓首脳会談(3/26)
日米韓、25日に首脳会談 歴史問題避ける見通し(3/21)
(社説)日米韓会談 好機を無駄にするな(3/21)
日米韓会談―好機を無駄にするな(3/21)
2014年7月8日
グローバル化「国家復活」導く … 仏の人類学者・エマニュエル・トッド氏に聞く …
人、モノ、カネが国境を超えて自由に行き交う「グローバル化」が言われるようになって久しい。欧州では国家を超えた共同体の枠組みすら現実化している。ところが、フランスの人類学者で歴史家のエマニュエル・トッド氏は「今、復活しているのは国家だ」と指摘する。世界的なベストセラー『帝国以後』の著者の目に、日本とそれを取り巻く世界はどう映っているのか。
◆米に頼る日本
――日本では安倍晋三首相が、米国との同盟強化につながる集団的自衛権の行使容認を決断しました。
日本が中国の台頭に対抗するには、米国に頼るしかないということだろう。逆に米国は、自分たちの力を後ろ盾にしようとする国には軍事的な負担を求めている。米国から自立した欧州と異なり、日本はそれに応じるということだ。
――2002年に刊行された『帝国以後』で、米国の覇権の終わりと、米国からの欧州の自立を予言しました。そうなりましたか。
欧州の変質を見誤った。私は当時、米国の影響力から自立した欧州は、衰退する米国とは異なり、世界の安定を推進すると思っていた。だが、今は国際情勢の不安定要因だ。米国はむしろ相対的に安定している。
欧州はこの10年で、EUの加盟国が水平的につながる関係ではなく、経済大国ドイツが主導権を握る階層的な連合体になってしまった。統一通貨ユーロの存在が原因の一つだ。欧州危機で露見した通り、加盟国の経済力の違いが階層化を生み、さらにEU内部では他の加盟国への憎しみが募っている。
◆衰退進行の米
――『帝国以後』は間違っていたわけですか。
いや、米国の衰退は、私が予想していたより早く進んでいる。今の米国は、かつてのローマ帝国末期に非常に似た状況にある。ローマでは、帝国の軍事力を後ろ盾にした属領が強気の対外政策に出て、本国がその結果に翻弄(ほんろう)されていった。私が現代の属領として念頭に置いているのは欧州だ。最近のウクライナ情勢がわかりやすい例だろう。
欧州は「欧州軍」を持たないため、米国を後ろ盾として使いつつ、外交の主導権はドイツが握っている。しかし、ドイツの対ロシア外交は、伝統的につかず離れずの関係を維持しようとするため予測しづらく、米国の思うようにならない。ウクライナ問題は米ロ冷戦の再来と言われるが、その見方は誤りだ。不安定要因としての欧州の存在こそがこの問題の本質だ。
――5月の欧州議会選挙では、欧州統合を強く批判するEU懐疑派が議席を伸ばしました。フランスに割り当てられた議席を最も多く獲得したのも右翼の国民戦線(FN)です。
FNへの支持が伸びたのは、彼らの主義主張が広がった結果ではなく、欧州統合への民衆の抵抗感が原因だ。失業率が10%強で国民生活が厳しい時も、フランス政府はユーロを含めた欧州統合を優先しようと訴えた。民衆は「フランスがフランスでなくなるようなこと」を政府が推進していると受け止めた。政治家と民衆の感覚が乖離(かいり)していた。
――日本でも、街頭で「朝鮮人は出て行け」と叫ぶ在日韓国・朝鮮人へのヘイトスピーチなど、排外主義的な動きが生まれています。
日本の排外主義的な動きの背景は、外から見ていてわかりにくい。移民問題ならフランスにもあるが、長い間住んでいる人がなぜ今、問題になるのか。
――グローバル化によって、逆に国家や民族といったものが強く意識されているということでしょうか。
グローバル化によって、世界がアメリカ型社会に収斂(しゅうれん)されていくという見方もあったが、そうはなっていない。この10年で起きているのは、国家の復活、再浮上だ。米国、ロシア、ドイツ、中国……第2次世界大戦のころの大国が再び台頭している。
◆新しい課題も
――世界が「昔」に戻ったということですか。
違う。先進国では、少子高齢化の進行など新しい課題が生まれている。多数を占める中高年が若者にかかわる政策を多数決で決めてしまうのは、民主主義にかなっていると言えるのか。日本も直面している出生率の回復には、国家による中産階級世帯への支援が不可欠だが、こうした政策への支持をどのように取り付けるのか。再浮上した国家は、こうした課題に取り組む必要がある。
先進国はすでに消費社会の段階を終え、低成長時代に突入している。各国が直面する国内外の経済対立をどう克服するかが課題だ。グローバル化の進展は、一つの世界像への収斂ではなく、国内や国家間の対立が際立つ世界を意味する。今後も国家の時代は続いていくだろう。 (高久潤)
*
1951年生まれ。仏国立人口統計学研究所員。フランスのFN支持層の分析などを盛り込んだ共著『不均衡という病 フランスの変容1980-2010』や『世界の多様性』『自由貿易は、民主主義を滅ぼす』(いずれも藤原書店)など著書多数。
07 09 (水) 日中開戦77年―歴史から学ぶべきは
2014年7月9日(社説)
日中開戦77年―歴史から学ぶべきは
北京郊外で日中両軍が衝突し、全面戦争のきっかけとなった盧溝橋事件から77年。その記念日だった7月7日に、盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館で習近平(シーチンピン)国家主席が出席して大規模な式典があった。
毎年恒例の式典だが、最高指導者が演説するのは異例だ。「侵略の歴史を否定、歪曲(わいきょく)、美化しようとする者を中国と各国の人民は決して認めない」と習主席は述べた。安倍政権への批判であることは明らかだ。
中国共産党政権は90年代以降、「愛国教育」を強め、日本の侵略史を学校で詳しく教え、各地に記念施設を整備した。
一方、そんな政権の宣伝とは別に、日本軍の侵略当時の生々しい記憶を持つお年寄りがいる。遺棄化学兵器の処理のように現在進行中の案件もある。
ただ、日中関係が良好なときに中国側が歴史を前面に押し出すことはまれだった。
07年4月、来日した温家宝首相(当時)が国会で演説し、日本政府が過去に侵略被害国へのおわびを何度も表明したとして「中国政府と人民は積極的に評価する」と明言した。
その翌年に来日した胡錦濤国家主席(当時)は早大で「私たちが歴史を銘記することを強調するのは、恨みを抱え続けるためではなく、歴史を鏡とし未来に向かうため」と述べた。いずれも抑制的な発言だった。
当時に比べ、習政権の歴史問題をめぐる日本バッシングは際だっている。露骨な政治利用の姿勢には首をかしげざるを得ない。だが、日本側が感情的に反発しても悪循環に陥るだけで、事態は解決には向かわない。
日本にとって、今の中国の最大の問題は海軍や空軍の拡張だ。これらの動きに真正面から批判を加えるべきときに、侵略の歴史を否定するような言動でやり返したらどうなるか。
中国は日本に「歴史修正主義」のレッテルを貼り、自らの軍拡を正当化する理由として利用するだろう。習政権の強硬派は勢いづき、対日関係を修復しようという声は小さくなる。
国家間に横たわる歴史は、どちらか一方が独占できるものではない。
盧溝橋事件が起きたとき、日中両軍はすでに一触即発の状態だったというが、実は事件後に停戦協定を結んでいた。現場、そして両政府内にも、事態の不拡大を望む人々がいた。
それがなぜ全面戦争化したのか。歴史にこだわるならば、検証に値する当時の経緯を、日中の共有資産とするよう目指せないものだろうか。
【下平・記】
日中の険悪状況は、アメリカ従属の日本の姿勢が露わになったことに端を発している。 ことに尖閣の領土問題が日本の大人げないやり方であり、国民感情を荒立てる発端になっていた。 日本国民はその我儘勝手なやり方を無批判のうちに認めていた。
このことは国際関係においてはあってはならない手法であり、安倍の言う国際平和を目指すという言葉は、政治家としてマクロとしての国際関係把握があまりにも未熟なものの結果であったと言わざるを得ない。
07 10 (木) 米中戦略・経済対話 南シナ海問題など討議
9、10日に米中戦略対話 南シナ海問題など討議(7/1)
http://digital.asahi.com/articles/ASG7156MDG71UHBI021.html?ref=reca
米政府は6月30日、米国と中国の閣僚が安全保障や経済問題などについて話し合う「米中戦略・経済対話」を9、10日に北京で開催すると発表した。米国からはケリー国務長官とルー財務長官らが出席し、米中関係がぎくしゃくする原因となっている中国の海洋進出問題などを話し合う。
この対話は米中が毎年交互に開き、今年で6回目。中国側からは、外交を統括する楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と経済を担当する汪洋(ワンヤン)副首相が出席する。
米中は昨秋以降、中国の東シナ海や南シナ海で実効支配を強める動きなどをめぐり、お互いを非難することが相次いだ。5月には米司法省が、企業の情報を盗むため違法にコンピューターに侵入したとして中国人民解放軍の5人を起訴。中国は「捏造(ねつぞう)だ」と強く反発し、サイバー問題に関する米中作業部会の中止を一方的に表明するなど、影響が出ている。
米政府は、今回の対話でも米企業の情報を盗もうとする中国の「サイバースパイ」問題の解決を求める見通しだ。関与を否定する中国側が反発することが予想される。また経済の分野では、両国間の企業進出を促す投資協定などが取り上げられるとみられる。(ワシントン=奥寺淳)
この記事に関するニュース
中国・習主席が外交演説、海洋進出めぐり米国を牽制(6/29)
新型大国関係「中国と隔たり」 米国務次官補(6/26)
「中国軍、東・南シナ海有事に備え増強中」 米が分析(6/6)
中国の南シナ海での活動「一方的」 米国防長官が非難(5/31)
中国軍総参謀長、米を牽制 南シナ海問題「公平にみて」(5/16)
米中対話、激論は必至 南シナ海・サイバー攻撃焦点 北京であすから(7/8)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11229376.html
米中の閣僚が安全保障や経済の問題について話し合う「米中戦略・経済対話」が9日、北京で始まる。米国は、中国の海洋進出やサイバー攻撃について問題を提起する方針だ。中国が反発するのは必至で、これらの対立点をめぐっては厳しいやりとりもありそうだ。
両国のトップ級閣僚が現在と将来の課題を話し合うため毎年、米国と中国で交互に開いている。米国からケリー国務長官とルー財務長官が、中国からは外交を統括する楊潔チー(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)と経済を担当する汪洋(ワンヤン)副首相が出席。ケリー氏は、習近平(シーチンピン)国家主席とも会談するとみられる。
昨年夏の開催以降、米中間には、特に安全保障分野で、火種となるような出来事が相次いだ=表参照。中国は「新型大国関係」を唱え、米国と衝突を避けつつ対等な関係を目指すとするが、米政府内では最近、中国の意図を疑問視する声が強まっている。
ホワイトハウスで安全保障などを担当するローズ大統領副補佐官は1日、「領土紛争や海洋の安全に関する問題は(アジア)地域で主要なテーマになっており、今回の対話でも、もちろん話し合う」と強調。南シナ海における中国とベトナム、フィリピンとの領土紛争を念頭に、「大きい国が小さい国をいじめるような事態は見たくない」と述べ、中国に国際ルールに基づく問題解決を強く求める考えを明らかにした。
一方、中国の鄭沢光外務次官補は7日、記者会見を開き「ここ最近、海を巡る争いやサイバー問題で米国は誤った言動をとり、両国関係にマイナスの影響を及ぼしている」と主張した。
習政権も海洋をめぐる問題を「米中問題」と位置づける。南シナ海をめぐりベトナムやフィリピンが対中強硬姿勢をとる背景に、両国を支持する米国の存在があるとみているからだ。新型大国関係の構築で「米国が中国の国情と内外政策を客観的に認識するよう望む」(習主席)と主張し、領有権問題を含む「核心的利益」で譲歩しない中国の姿勢を米国に受け入れさせることを狙うとみられる。
米国は中国による米企業などへの「サイバースパイ」問題も重視。米司法省は5月、企業情報を盗むため違法にコンピューターに侵入したとして中国人民解放軍の5人を起訴したが、中国は「捏造(ねつぞう)だ」と反発した。
ローズ氏は「サイバー問題についても(今回)対話できると期待している」としており、企業の機密情報や知的財産を盗むのをやめるよう中国に求める方針だ。その一方で、「大切なのは両国の立場の違いを公の場ではっきり述べつつも、協力できる分野を探すことだ」とも強調。北朝鮮の核・ミサイル問題や気候変動などで協力を深めることを目指す考えも示した。(ワシントン=奥寺淳、北京=倉重奈苗)
この記事に関するニュース
経済でも主張対立 米「中国の改革遅い」/中「対米投資で差別」 きょうから北京で対話(7/9)
9、10日に米中戦略対話 南シナ海問題など討議(7/1)
安倍首相、急ぐ対中包囲網 アジア安保会議(5/31)
中国船の衝突動画、ベトナムが公開(5/10)
米、「緊張高める」と非難 中国公船、ベトナム船に衝突(5/8)
米中、尖閣問題で応酬 中国「妥協しない」 国防相会談(4/9)
「領土譲らぬ」「日本は同盟国」 米中国防相が火花(4/8)
中国管轄権「根拠あいまい」 米高官、南シナ海「9段線」に (7/9)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11231402.html
中国が南シナ海の大半の海域で管轄権を主張するときの根拠とする独自の境界線「9段線」について、米政権の高官は7日、「(根拠の)あいまいさが問題の解決を難しくしている」と語り、中国に対して国際法に従うよう求めた。9日から北京で始まる「米中戦略・経済対話」で、南シナ海の問題を提起する方針だ。
対話に出席するため北京に向かうケリー国務長官の特別機のなかで、同行するオバマ政権の高官が朝日新聞などの取材に答えた。
9段線について、中国は数百年前から南シナ海で漁をしていたなどとの論理を展開し、南シナ海の8割とも9割ともいわれる海域に管轄権が及ぶと主張している。範囲はフィリピンやマレーシア、ベトナムの沿岸近くまで及び、九つの線を結んだ形状から「牛の舌」とも呼ばれる。中国は近年、西沙や南沙などの諸島に「三沙市」や「軍事区」を設定し、港湾などの建設を進めている。
政府高官は、米国は領有権問題には立ち入らないとしつつ、「中国を含むすべての関係国は、国連海洋法条約などの国際法に基づいて主張を明確にすべきだ」と指摘。「あいまいな主張が事態を不安定にさせ、紛争につながっている」とも語り、当事者間で解決が難しい場合は、国際機関の仲裁も受け入れるべきだとの考えを明らかにした。
中国の海洋進出問題が対話でのテーマになるとする一方で、別の政府高官は「米中に立場の異なる問題はあるもので、(戦略対話では)米国の外交責任者や政策担当者が、かなりの時間をかけて中国の責任者と話ができる」と語り、中国に南、東シナ海の緊張緩和に向けた取り組みを促す考えを明らかにした。(北京=奥寺淳)
この記事に関するニュース
中国、南シナ海で新たに掘削 ベトナムが不快感(6/27)
(地球24時)中国、新たな埋め立て 南シナ海・南沙諸島(6/6)
「天声人語」(5/29)
中国漁船が体当たり、ベトナム漁船沈没 南シナ海(5/27)
ベトナム船沈没 南シナ海、中国船が体当たり(5/27)
ベトナム漁船、中国船に体当たりされ沈没か 南シナ海(5/26)
「極めてあいまい」 山口代表、集団的自衛権の行使条件(5/19)
フィリピン、現場写真を公開 南シナ海の中国滑走路建設(5/16)
経済でも主張対立 米「中国の改革遅い」/中「対米投資で差別」(7/9)
… きょうから北京で対話 …
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11231399.html
米国と中国の安全保障や経済を担当する閣僚が年1度、一堂に会する米中戦略・経済対話が9日、北京で始まる。覇権を競う安全保障分野に加え、今年は経済分野でも相手に注文をつける声が目立つ。溝を埋められるかは、世界経済をリードする「G2」が力を発揮できるかの試金石だ。
「私がいらだちを感じるのは、変化のペースだ」
ルー米財務長官は訪中前のイベントで中国の経済改革について問われ、不満をあらわにした。
昨年の対話で両政府は、企業がお互いの国への投資をしやすくする「米中投資協定」に本格交渉入りした成果を誇った。中国共産党が昨秋開いた中央委員会第3回全体会議(3中全会)も、大胆な自由化をうたう中長期的な経済改革策を打ち出した。市場開放にかじを切った中国の「変化」に米国でも期待が高まった。
ただ、中国の改革策は「2020年までに成果を出す」ことが目標だ。実際の歩みは慎重さが目立つ。
市場開放策を小出しにする中国の姿勢に対し、ルー氏は「米国の期待する分野が含まれていない」。投資協定は「合意まで少なくともあと数年かかる」(米政府関係者)とも言われる。
中国で「影の銀行」を含む巨額の貸し出しが住宅バブルを生んでいる問題についても、ルー氏は「改革は今後数年なら対応できるが、5年、10年先では困難な状況になる」。いら立ちが高まるのは、今や中国経済の失速が米経済にも大きな打撃を与えるほど結びつきが強まっているからだ。
米国の不満は、長年の懸案の人民元為替レートを巡っても再燃している。元がドルに対して割安だと、安い中国製品が流れ込み、米国の雇用や産業に打撃を与えるとの懸念だ。今年に入って人民元は対ドルで急速に下落。昨年1年間で値上がりした分を、わずか2カ月でかき消した。
米財務省は4月の外国為替報告書で、中国当局の元売りドル買い介入を指摘し、下落幅と速度が「先例がない」と批判した。
一方の中国。朱光耀財務次官は7日、「中国側も様々な要求を出している。米国の金融緩和政策をめぐる懸念も、その一つだ」と述べ、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を変える際、新興国への影響に気を配るよう求めた。
米国へ進出する中国企業が増えるにつれ、米当局によって企業買収や営業活動が規制されることへの批判も、近年は高まる一方だ。
政府系シンクタンク中国社会科学院米国研究所の王孜弘・経済研究室長は「経済の結びつきが単なる貿易から、工場などへの投資や金融部門の開放まで目指すにつれ、政治体制を含めた米中の違いが目立つようになる」と指摘している。(北京=五十嵐大介、斎藤徳彦)
この記事に関するニュース
米中対話、激論は必至 南シナ海・サイバー攻撃焦点 北京であすから(7/8)
人民元下落政策、「懸念生む」警告 米為替報告書(4/16)
主権・サイバー、米中応酬 戦略・経済対話が閉幕(7/10)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11235660.html?ref=pcviewer
北京で開かれていた「米中戦略・経済対話」が10日閉幕した。投資や為替を巡る分野で合意した一方、中国側は東シナ海や南シナ海の領土・主権の問題で「米側は一方の肩を持つべきではない」と批判するなど、米中が互いの主張をぶつけ合う展開となった。
◆投資や為替では合意
両国が「共通利益が大きい」と手を握りやすい経済分野を中心に、一定の進展があった。昨年の対話で本格交渉入りした米中投資協定は、年内に合意文書をまとめ、お互いが規制を残す分野のリスト(ネガティブリスト)についての交渉を来年の早い時期に始めることで合意した。
背景には、中国からの米国への直接投資が米国から中国向けを上回るほど伸び、米国に雇用を生む上でも存在感を増している事情がある。中国市場の門戸を開くためにも、米国が急ぎたい分野だ。
「良い知らせは(環境について)進展していることだ」。ケリー国務長官が共同会見で約3分をかけて語ったのは、温室効果ガスの削減に向けた技術協力などの環境面での合意だった。
米国内の関心が特に高い人民元レートを巡っては、中国が為替市場への介入を減らし、市場の動きに委ねた制度への移行を加速させる方針で一致した。ルー財務長官は「大きな変化だ」と胸を張る。
逆に中国側が成果として誇ったのは、米国が金融政策を考える上で、自国だけでなく「国際的な影響にも強く配慮する」との約束をとりつけたことだった。
ただし、為替や金融政策を巡るこうした合意は、いずれも国内で決定済みだった事項を確認しただけの色合いも強い。一方で中国が解禁を求める米ハイテク製品の輸出や、米国が望む金融分野の開放といった利害のぶつかる問題では目立った進展がなく、双方の溝の深さも浮き彫りとなった。
◆中国=東・南シナ海関与、反感 米国=「企業情報スパイ」批判
米中がともに譲らない場面も目立った。
「米側は客観的で公正な立場をとり、一方の肩を持たないことを求める」
中国で外交を統括する楊潔チー(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)は米中共同の記者会見で、東シナ海や南シナ海の問題についてこう語気を強めた。楊氏は中国の主権や海洋権益を守ると強調し、「関係する国との直接の話し合いで問題を解決する」と指摘。米国がこの問題に関与することや国際機関による仲裁に強い反感をにじませた。
中国は特にこの数年、南シナ海などで実効支配を強める動きを加速させてきたが、米国は中国と対立する日本やフィリピン、ベトナムといった国々の側を事実上支援しており、米中の溝は深まる一方だ。
これに対し、ケリー国務長官は10日夜、米側だけの会見を開き、「中国の行動が周辺国の懸念を生み出している」と批判。中国の周辺海域での振る舞いを「一方的」としたうえで、領有権などの争いは力によってではなく、国際法やルールに従うよう中国に求めた。
また、中国が対話を一方的に中断していたサイバー問題について、ケリー氏は「ざっくばらんに意見を交換した」と言葉を選びながら、問題を提起したことを明かした。盗んだ情報が中国の国有企業に流れ、商売に利用された「サイバースパイ」問題として米国内で中国批判が高まっており、対話でこの問題を持ち出す必要があったためだ。
ケリー氏は、中国によるサイバースパイの行為が米国企業のビジネスや競争力を傷つけている、と問題提起。「ハッキングで知的財産を盗むという行為は、革新や投資の意欲をそぐ」と中国を批判した。
ただ、この問題では楊氏も「サイバー空間を使って別の国の利益を侵すべきではない」と逆に中国も被害者だと切り返すなど、立場は食い違ったまま。
中国政府は、米司法省が5月に米企業の情報を盗むためコンピューターに侵入した罪で中国軍当局者5人を起訴したことに「捏造(ねつぞう)だ」(外務省)と強く反発。中国側はサイバー対話を一方的に中断した。楊氏は「対話を再開するためには、米国がその環境整備をするべきだ」と突き放した。
◆「欧米ルール」に中国対抗
今年で6回目を迎えた米中戦略・経済対話。「国際ルール」に従うよう迫る米国を、中国が「発展途上の国内事情」を理由にかわす構図に変化が出てきた。
中国は昨秋、東シナ海に突然、防空識別圏を設定したのに続き、今春にはベトナムと領有権を争う海域で石油採掘も始めた。「中国は、アジアの平和に寄与しようとしているのか、または秩序をひっくり返そうとしているのか」。6月下旬の米上院外交委員会の公聴会で、メネンデス委員長(民主)は不信感をあらわにした。
米国のいらだちの背景には、中国が欧米主導の国際秩序にあらがう新たな「ルールづくり」を各分野で見せていることがある。今回の対話で、米側が話し合いに強くこだわったサイバースパイの問題もその一例だ。中国には、サイバー空間に既存の国際法を適用し、サイバー攻撃を武力行使を伴う自衛権発動の対象にしようとする米国に強い警戒心がある。
6月、中国政府が国連に呼びかけ、北京で初めて開いたサイバー問題に関する国際会議。李保東外務次官は「一部の強大な国が、自国の利益のためにサイバー空間を都合良く使うのは許されない」と、新たな国際ルール作りを呼びかけた。
「新型大国関係の構築は、両国の国情を基礎にしたものであるべきだ」
習近平(シーチンピン)国家主席は今回対話の開幕式で強調した。中国の政治体制や価値観に根ざした独自の論理やルールを受け入れるよう迫る発言だった。
こうした中国に対し、11月に中間選挙を控えるオバマ政権は強硬姿勢を崩しにくい。しかし、中間選挙の直後に控えるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での首脳会議を見据え、関係を解きほぐしたいのは中国と一緒だ。
昨年の交渉入りで世界を驚かせた米中投資協定は今回、具体的な進展の時間目標の設定までこぎ着けた。
米国が日本などと進める環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は難航が続く。「早期の協定妥結」を唱えた習主席の呼びかけに応じるように米中が交渉を加速すれば、日本の頭越しに新たな経済のルールが登場する可能性もある。(北京=奥寺淳、五十嵐大介、倉重奈苗、斎藤徳彦)
◆キーワード
<米中戦略・経済対話> 中国経済の急成長を受け、米国側の呼びかけで2006年12月に始まった米中間の閣僚級による経済対話が母体。中国側に貿易不均衡や人民元改革などの問題解消を迫るのが米国側の主な狙いだった。09年4月の米中首脳会談での合意を受け、同年7月の対話以降、協議内容を安全保障など外交面に拡大。対話は米中間の最も重要な協議の枠組みの一つとなっている。
この記事に関するニュース
経済でも主張対立 米「中国の改革遅い」/中「対米投資で差別」 きょうから北京で対話(7/9) (安全保障を考える)米政権が見る東アジア ダニエル・ラッセルさん(7/5) 9、10日に米中戦略対話 南シナ海問題など討議(7/1) 実効支配拡大にくぎ 米、中国と立場の違い強調(6/27) 中国外務次官、ネット政策で米批判 「二重基準を適用」(6/5) 中国反論「信頼関係壊す」 サイバー攻撃、米が中国軍5人起訴(5/21) 中ロ蜜月、米に対抗 首脳会談、制裁反対を確認(5/21) 米国、中国軍関係者を起訴 サイバー攻撃で企業情報盗む(5/20)
【下平・記】 「米中戦略・経済対話」この動きは、上記キーワードで分かるように2006年末にアメリカの呼びかけで始まった。 これに対して「新型大国関係」は、中国の発想による呼びかけであった。 ここで注意したいのは、中国は世界の在り方をどう描いているのかを注視していくことである。 毎日新聞は次のように報じている。
毎日新聞 2014年07月09日
http://mainichi.jp/select/news/20140710k0000m030115000c.html
米中対話:新大国関係で相違 習氏「対抗、世界の災いに」
【北京・石原聖、ワシントン和田浩明】米国と中国の外務、経済担当閣僚らが意見を交わす第6回米中戦略・経済対話が9日、北京で始まり、習近平国家主席が開幕式での演説で「中国と米国が対抗すれば世界の災いになる」として「新型大国関係」の構築と主権の尊重を米国に求めた。オバマ米大統領も声明を出し、「実務的な協力と差異の建設的な管理に規定された『新型』の中国との関係を目指す」と表明。戦略・経済対話に合わせて双方のトップが米中関係についての見解を示すのは異例で、ともに「新型」という言葉を使ったが、定義の違いが浮き彫りになった。
習氏は今年が米中国交正常化から35年になることを強調し、関係強化を訴えた。昨年6月の米中首脳会談で自らが提唱した「新型大国関係」に繰り返し言及するとともに、「太平洋は両国を受け入れるのに十分な空間がある」と述べ、東シナ海や南シナ海での摩擦に米国が介入しないようけん制。「主権と領土、発展の道の選択を尊重すべきだ」とも述べ、対等な大国として接することを求めた。
これに対し、オバマ氏は声明で「歴史と文化が違う以上、常に意見が一致しないのは想定の範囲」と指摘。中国側が米国との共通認識になったと主張する「新型大国関係」の表現は使わないことで一定の距離を取りながら、具体的成果を目指す協力と政策の違いの管理を図る「新型」の関係を提案した形だ。
米中双方とも対立の回避で一致するが、中国は「新型大国関係」の構築によってチベットや南シナ海などの「核心的利益」を尊重するよう米国に求めている。一方、米国は対立解消に向け、国際的な責任を果たす行動を中国に促すことに力点を置いており、「新型」の関係を巡る溝は埋まっていない。
米国務省によると、9日の戦略・経済対話でケリー米国務長官は「習氏が何度も大国関係の新しい型について話すのを聞いた。だが、新しい型とは言葉ではなく行動によって定義される」との考えを示した。アジア回帰政策に「中国封じ込めの意図はない」と説明したものの、中国に「責任ある役割を果たす」よう求め、国際規範に従うことを促した。
ケリー氏はまた、「話さねばならぬ地域の安全保障問題がある」と指摘。「米中はライバルではなく地域の安保で協力すべきだ」と述べ、中国の要求する「影響圏」の相互尊重ではなく、アジアへの関与を明確にした。
米中二大国はふたたび戦争を想定しての政治経済は考えないだろう。 どちらも国民が承知しないし、勝ち目はない。 安倍総理は憲法改正を目指しているが、世界はそうした方向へは進まない。 アメリカと中国は、それぞれ何を求めて政策を進めようとしているか、そのことを詳しく見て日本の在り方を考えるべきだろう。