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  04 28 ①日米防衛協力のための指針   (ガイドライン)について

 04 28 (火) 「日米防衛協力のための指針」    (ガイドライン)について

安倍首相の渡米によって戦争肯定の右傾化がいよいよ始まる

    ① 日米同盟の本質、転換 防衛指針、18年ぶり改定地球規模に協力拡大(4/28)
    ② ガイドラインってなに? 日米防衛協力のための指針改定(4/28)
    ③ (時時刻刻)安保法制を既成事実化 国会論議、置き去り 日米防衛指針改定(4/28)
    ④ (社説)日米防衛指針の改定 平和国家の変質を危ぶむ(4/28)
    ⑤ 日米同盟の本質、転換 自衛隊の米軍支援、地球規模に(4/28)
    ⑥ 新たな日米防衛協力のための指針全文(新ガイドライン)(4/28)
    ⑦ 離島防衛を日米協力に明記 新ガイドライン5分野に拡大(4/24)
    ⑧ 日米防衛協力のための指針に関するトピックス



2015/4/28 ニューヨーク=今野忍
① 日米同盟の本質、転換 防衛指針、18年ぶり改定地球規模に協力拡大
   http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727955.html

 日米両政府は27日午前(日本時間同日深夜)、米ニューヨークで外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開き、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)について、18年ぶりの改定に合意した。日本が集団的自衛権を使うことを盛り込み、米軍への後方支援の地理的制限もなくした。安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」を反映し、自衛隊の米軍への協力を地球規模に拡大する内容で、自衛隊のあり方が根本から変わる。

 (2面=論議は置き去り、4面=防衛指針とは?、5面=新たな指針全文、14面=社説、38面=官邸の前で抗議)

 2プラス2には、日本から岸田文雄外相と中谷元・防衛相、米国からはケリー国務長官とカーター国防長官が出席した。カーター氏は2プラス2後の共同記者会見で、ガイドラインについて「日本自身の安全保障の姿勢も変わってきている。アジアと世界中で協力が可能になる」と述べた。中谷氏も「新たな段階に進んだ日米同盟を世界に示すことができた」と語った。

 日米両政府は今回の改定にあたって、軍備増強を進め、海洋進出を活発化させる中国を念頭に置いた。新ガイドラインでは、日本が直接攻撃された場合の協力で、尖閣諸島を念頭に離島防衛での協力を新たに盛り込んだ。離島の不法占拠など、武力攻撃には至らない「グレーゾーン事態」を含む平時の協力も拡大した。平時から緊急事態まで「切れ目のない形で、日本の平和及び安全を確保する」とも言及した。

 2プラス2終了後に出される「共同発表」では、尖閣諸島が日米安保条約の範囲に含まれることを確認。一方で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)について、同県名護市辺野古への移設が「唯一の解決策」であるとした。

 新ガイドラインのもう一つの特徴は、自衛隊が地球規模で米軍に協力できる仕組みにすることだ。

 新ガイドラインは、日米協力の範囲を「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域」とした。これまで自衛隊が米軍を後方支援する範囲を朝鮮半島有事など日本周辺に事実上制限していた「周辺事態」を削除。自衛隊が米軍の海外での戦争を後方支援する範囲について、地理的制限は設けず世界中に拡大した。

 新ガイドラインは、安倍内閣が昨年、集団的自衛権行使を認めた閣議決定を基本としている。

 日本が集団的自衛権によって武力行使することを前提にした「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」の項目では、機雷除去、弾道ミサイル攻撃への対応、強制的な船舶検査などを盛り込んだ。日本が直接攻撃されていなくても、自衛隊が米軍とともに武力行使することが可能になり、自衛隊と米軍の一体化が格段に進むことになる。

 自衛隊と米軍の役割分担などを決める協議の場である「調整メカニズム」は日米間の合意でいつでも設置できるようにした。新たな領域として、宇宙・サイバー空間での協力も盛り込んだ。(ニューヨーク=今野忍)

 ■<解説>安保条約の枠、超える

 今回の指針改定は、カーター米国防長官が「日米同盟を一変するものだ」と語るように、日米安全保障条約の事実上の改定といえるほどの内容だ。

 日米安保条約は、第5条で米国に日本防衛の義務を課す。一方、第6条で「極東の平和と安全」に寄与する目的で、日本の米軍への基地提供義務を定める。

 実際、78年の最初の指針は「日本有事」、97年に改定された指針では朝鮮半島有事を想定した。日本政府はいずれも「極東」の範囲を超えないと説明した。

 過去の政府見解では「極東」を「フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域」としてきた。しかし、今回は、地理的制約を取り払い、「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域」と地球規模での協力をうたった。これは安保条約の枠組みを超える内容だ。

 新指針は、安倍内閣が昨年、集団的自衛権行使を認めた閣議決定によって協力範囲が拡大した。しかし、この根拠になる安保法制はまだ国会で審議すらされていない。安保条約は、自衛隊が専守防衛の「盾」、米軍が打撃力としての「矛」を提供する役割を規定したと言われてきた。集団的自衛権行使で、日本も「矛」の一翼を担うとすれば、これも安保条約の枠組みを大きく変えることになる。

 安倍晋三首相にすれば、台頭する中国に対応するために、手間のかかる安保条約改定や国会審議を待てないということなのかもしれない。だが国民の安全に関わる重大な問題だ。首相は同盟の将来像をどう描いているのか、国民に正面から説明する責任がある。(ニューヨーク=今野忍、ワシントン=佐藤武嗣)

 ◆キーワード

 <日米防衛協力のための指針(ガイドライン)> 日本が他国に攻撃されたときなどの自衛隊と米軍の具体的な役割分担を決める政策文書。日米両国の閣僚間で合意するもので、条約のような国会承認は必要とされない。ただ、米国との国際約束になるため、日本の安全保障の枠組みに大きな影響を与えてきた。1978年、旧ソ連の侵攻に備えて初めてつくられ、冷戦後の97年の改定では、朝鮮半島有事を想定した。

この記事に関するニュース

  ② ガイドラインってなに? 日米防衛協力のための指針改定(4/28)   ③ (時時刻刻)安保法制を既成事実化 国会論議、置き去り 日米防衛指針改定(4/28)   ④ (社説)日米防衛指針の改定 平和国家の変質を危ぶむ(4/28)   ⑤ 日米同盟の本質、転換 自衛隊の米軍支援、地球規模に(4/28)   ⑥ 離島防衛を日米協力に明記 新ガイドライン5分野に拡大(4/24)
  米軍への協力、質量とも拡大 日米ガイドライン、改定のポイント(4/24)   自衛隊の機雷掃海、明記へ 日米防衛指針、改定の骨子判明(4/21)   日米防衛指針の骨子判明 機雷除去・離島防衛を明記(4/20)   機雷除去、日本周辺以外も 日米、防衛指針改定へ(4/9)
  日米防衛協力、世界規模に 米、アジア重視・中国に対抗(4/9)
  日米、機雷除去の地理条件撤廃へ ホルムズ海峡を想定(4/9)
  安保政策、根底から転換 自衛隊の海外活動拡大へ(3/21)



2015年4月28日
② ガイドラインってなに? 日米防衛協力のための指針改定
   http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727974.html?iref=reca

 18年ぶりに改定された「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)とはどういうものなのか。一問一答形式で読み解いた。▼1面参照

 ■もとは防衛の役割決める文書

 Q ガイドラインってそもそも何なの?

 A もともとは日本が外国から攻められた時、同盟国の米軍と自衛隊がどんな協力をして敵を排除するのか、その役割分担を約束しておく文書だよ。

 Q 米国は日米安全保障条約で日本を守ってくれる約束だったよね。ガイドラインと条約は別のもの?

 A 1960年に結ばれた今の安保条約は、米国が日本を守る代わりに、日本が米軍に基地を提供するのが基本だ。ガイドラインは条約には書かれていない日米の軍事協力の内容をまとめたもので、78年に日米が合意した。東西冷戦の時代、旧ソ連が日本に攻め込んでくると想定し、米軍と自衛隊がどうやって一緒に戦うかを決めたんだ。

 ■「米と約束」理由に法整備も

 Q 条約ほどの重みはないってこと?

 A そうとも言えない。ガイドラインは条約と違って、国会での承認手続きはなく、両政府が法的な義務を負うこともない。でも日本政府はこれまで、ガイドラインで米国と約束したことを理由に、安全保障の法律を見直したり自衛隊を整備したりしてきたんだ。

 Q これまで内容を見直したことはあるの?

 A 改定は今回が2回目で、最初の改定は97年。冷戦が終わったけれど、90年代には北朝鮮の核開発疑惑や弾道ミサイル発射実験があり、その脅威に備えるためだった。朝鮮半島での戦争を想定し、日本が直接攻撃されていなくても、自衛隊が米軍の活動を後方で手伝う内容が盛り込まれた。

 Q 今回の見直しはどんな内容なの?

 A 政府は、平時から戦争までのあらゆる状況で「切れ目のない対応」をめざすと説明している。平時でも敵の攻撃が予想される状況(グレーゾーン)や、日本の危機に直結する場合に自衛隊が集団的自衛権を使う場合でも、日米が軍事的に助け合うことができるようになった。範囲も日本周辺に限定せず、自衛隊は世界中で米軍の後方支援ができるようになった。さらに宇宙空間やネット空間の安全を守るための協力も盛り込まれた。(今野忍)

 ■<考論>政府方向性、国民意識とずれ

 植木千可子・早稲田大教授(国際安全保障) 多くの国民は今回の見直しについて、日本人の命や領土がよりしっかりと守られるために必要だと考えていたのではないか。しかし、新ガイドラインは自衛隊が米軍と国際的な安全保障協力へ踏み出すもので、日米政府の方向性と国民の意識にはずれがある。

 台頭する中国を念頭に「切れ目のない対応」を掲げているが、事態が緊迫した際の判断基準が明確でない。日米両政府は、中国がどんな行動をしたら許容できないのか。その一線をはっきりさせることが、誤認に基づく状況悪化の抑止につながる。米中間では海上での衝突を防ぐ安全行動規範の覚書があるが、日中間にはない。日中双方の信頼を醸成するためには、日本政府が中国にも丁寧な説明をしていくべきだ。平時における武器等防護が明記されたが、自衛隊には明確な交戦規定がない。現場の自衛官が判断するのか、政府が判断するのかなど不明瞭な点が多い。(聞き手・三輪さち子)

 ■<考論>世界の安保、役割果たす機会

 日本国際問題研究所のマルタ・マクレラン・ロス客員研究員 前回見直しの1997年以来、安全保障環境は大きく様変わりした。新ガイドラインで日米同盟は運用面でも強化されることになる。米国は日本に、地球規模の安全保障問題でより緊密なパートナーになってもらうことを期待している。米国は軍事予算の削減問題に直面しているが、国際社会で積極的な役割を求める声はなお強い。日本は経済面でも、途上国援助の面でも世界で主導的立場にあり、地球規模の安全保障問題でもっと大きな役割を果たす能力もある。今回の見直しは、日本がこれから地球規模の安全保障にもっと深く関わる機会になるだろう。

 米国が日本に対し、将来的にどんな要請をするかを予測するのは難しい。過去の事例に照らせば、米国が日本に期待するのは、湾岸戦争時の後方支援やアフガン戦争時の米艦への給油活動のような活動だろう。ただし、いかなる要請についても、実行すべきかどうかは、日本自身が国内法に基づいて、ケース・バイ・ケースで判断すべきことだ。(聞き手・園田耕司)

 ■2プラス2共同発表(骨子)

 日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)共同発表の骨子は次の通り。

 【積極的平和主義】 米国は、(集団的自衛権行使を認めた)昨年7月1日の閣議決定、防衛装備移転三原則、特定秘密保護法など、日本の最近の重要な成果を歓迎し、支持する

 【尖閣諸島】 尖閣諸島が日本の施政下にあり、日米安保条約の適用範囲に含まれることを再確認

 【普天間】 普天間飛行場の代替施設を辺野古に建設することが、運用上、政治上、財政上、戦略上の懸念に対処し、普天間飛行場の継続使用を回避する唯一の解決策であることを再確認


2015/4/28 (時時刻刻)
③ 安保法制を既成事実化 国会論議、置き去り
   日米防衛指針改定

   http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727904.html

 「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の改定は、安倍政権が掲げる「積極的平和主義」の名のもと、自衛隊の活動範囲を大きく広げる内容だ。少しでも自衛隊に支えてほしい米国と、中国もにらんで米軍との「一体化」を図る日本の思惑が一致した形だ。だが、国会での議論は置き去りだ。▼1面参照

 日米両政府は、27日の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、新たなガイドラインで「強化」された日米同盟が「アジア太平洋地域の平和と安全の礎」として役割を果たすとの方針で一致した。

 しかし、新ガイドラインは、憲法と日米安全保障条約という日本の安全保障の二つの礎を、国民的な議論なしに根本から転換するという問題をはらむ。

 「ガイドラインを国会にも国民にも説明なく、米国で合意してくる。憲法解釈の変更も含まれるというのは前代未聞。国民無視で理解できない」。民主党の岡田克也代表は24日の記者会見で、こう批判した。

 ガイドラインで日米が約束した内容は、自民、公明両党が事実上合意した新たな安全保障法制そのもの。政府与党は5月下旬に国会で審議を始める考えだ。つまり、国会で全く審議していない法案を前提に、ガイドラインを作り上げた。

 ガイドラインは日本が集団的自衛権を使う項目を盛り込む。米国が長く日本に求めてきたことだ。安倍内閣は昨年、集団的自衛権の行使を認める閣議決定をした。憲法の解釈を一内閣の判断で変えるもので、この点もまだ、本格的な国会審議はされないまま、ガイドラインに反映される。

 また、ガイドラインは、「日本と極東の平和と安全の維持」という日米安保条約の大前提を踏み越えている。

 前回の1997年のガイドライン見直し後に作られた周辺事態法は、自衛隊の活動範囲を事実上「日本周辺」におさめる地理的制約があった。しかし、今回は、「周辺事態」という概念を廃止し、自衛隊の米軍への協力を地球規模に拡大させる。例えば、中東地域を担当する米中央軍を自衛隊が支援する場面も想定される。

 そもそも、ガイドラインは「あくまで政策文書にすぎない。両政府に立法上、予算上、行政上の措置を義務づけないものだ」(防衛省幹部)。しかし、実態は、ガイドラインが米国との「国際約束」となり、国会承認が必要な安保条約を事実上、超えるほどの意味を持つ。防衛相経験者は「米国が一番嫌がるのは、日本がやれるというから期待したのに『やっぱりできません』と断られることだ」と語り、ガイドラインの履行は、日本の義務として突きつけられていると明らかにする。

 前回のガイドライン改定にかかわった柳沢協二・元内閣官房副長官補は「前回の改定は、憲法と日米安全保障条約という枠の中だった。今回は憲法の解釈を変え、日米安保条約の範囲も超えている。事前に法案を含めた国会での議論が必要だった」と批判する。(三輪さち子)

 ■米「切れ目ない協力」期待

 「今日は日本の能力を打ち立てる、自らの領土だけではなく、その他のパートナーに手を差し伸べることができるようになる、歴史的な転換点だ」

 ケリー米国務長官は27日、2プラス2後の記者会見で、ガイドライン改定の成果をこう強調した。

 自衛隊の活動範囲を広げようとする安倍政権の方針は、米国にとっても渡りに船だった。米国が求めたのは、世界に展開する米軍の後方支援などを通じて、自衛隊がその役割の一部を肩代わりすることだ。新指針についてカーター米国防長官は「米軍と自衛隊が切れ目なく協力する場面を拡大する」と期待を示す。

 米国が、今回の改定で最も評価するのが、これまで原則「日本周辺」に限定してきた日米防衛協力の地理的制約を撤廃したことだ。米国防総省高官も「最も重要な要素」としてこの点を挙げ、「周辺事態でしかできなかったことが、世界規模でできるようになる」と強調する。

 日本に期待を寄せるのは、オバマ政権が進める「アジア太平洋リバランス(再均衡)」と呼ぶアジア重視政策があるからだ。経済・軍事両面で存在感を増す中国に対し、地域や国際社会の秩序づくりに参画するよう「協力」を促す一方、敵対的行動をとれば、軍事的牽制(けんせい)も含めて「競合」するという「協力と競合」の政策だ。軍事面で中国を牽制する際のパートナーが日本というわけだ。

 米国が最近、特に日本へ期待を寄せるのが南シナ海の監視活動だ。シーア米国防次官補は新指針に関し、「北東アジアだけを意味せず、東南アジアや南シナ海も含まれる」と述べ、南シナ海での日本の協力に期待感を示した。

 新指針でも「平時からの協力措置」で、地理的範囲を限定しない形で、自衛隊と米軍が「警戒監視、偵察活動」で協力すると規定した。米側は「日本海域を越えた偵察活動をよりしやすくなる」(国防総省高官)と海上自衛隊の警戒監視活動を当て込む。しかし、日本は「日本から遠く離れた南シナ海での監視活動は現実的ではない。尖閣防衛も手薄になる」(防衛省幹部)と慎重だ。

 「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は昨年7月の閣議決定で、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に踏み切った。米国は行使を禁じてきた日本の姿勢を「同盟の障害」と指摘してきただけに、これを歓迎。新ガイドラインでは「米国または第三国」への攻撃に日米が協力して対処することが明記された。

 米側が、集団的自衛権を使う具体的な任務として期待するのが、ペルシャ湾のホルムズ海峡などで、日本が停戦前でも機雷掃海できる枠組みができたことだ。混迷を深める中東などで紛争が起きれば、ただちに海自が機雷掃海で支援にあたることも期待する。

 また、イラクへの陸上自衛隊派遣のような国連平和維持活動(PKO)の枠組みを超えた自衛隊の海外派遣についても、そのつど、特措法を作らなくてすむ恒久法ができることで、「日本の後方支援をあてこんだ戦略が練れる」(米軍関係者)と踏む。(ワシントン=佐藤武嗣)

 ■対中国、連携アピール

 2プラス2は「尖閣諸島が日米安保条約の範囲に含まれる」と再確認し、ガイドラインでは新たに「離島防衛」が盛り込まれた。

 今回で3回目となるガイドライン策定が過去2回と大きく違うのは、日本から持ちかけた点だ。日本が狙ったのは、中国とせめぎあう尖閣諸島の防衛で「いかに米国の関与を明確に引き出すか」(外務省幹部)だった。民主党政権末期の2012年、尖閣防衛に米国を巻き込むことを狙って、日本が米国に提案した。

 自衛隊の軍事力を活用して国際社会の役に立とうとする「積極的平和主義」を掲げて政権の座に戻った安倍晋三首相は、この方針を引き継ぎ、発展させた。尖閣諸島への米軍の関与を求めるのと同時に、自衛隊が米軍と協力して世界中で活動できる環境作りに精を出した。閣議決定を反映した安保法制見直しと新ガイドラインは「車の両輪」だった。

 日本政府関係者によると、日米はガイドライン改定のために、極秘の図上演習を繰り返したという。日米の外交・防衛の当局者と自衛隊と米軍の制服幹部が少人数で集まり、具体的な事例を想定して図上で部隊を動かす演習だ。テーマは極秘とされたが、尖閣諸島など離島や東シナ海での中国との衝突が含まれていたと見られる。そこで問題点を洗い出し、日米の役割分担を整理し直した。

 新ガイドラインに「離島防衛」を盛り込んだことについて、防衛省幹部は「一番の成果」と評価する。念頭に置くのは、中国に対し日米が連携していることをアピールすることだった。

 日本政府には、90年代の湾岸戦争で日本が多国籍軍に130億ドルを支出し、停戦後には機雷除去もしたのに国際社会から評価されなかった「湾岸トラウマ」がある。安倍首相も「お金の援助だけでは世界に評価されない」とトラウマを共有している。外務省などには、日本が将来、集団安全保障に参加することを実現したいとの狙いもある。

 米国は当初、日中の紛争に米軍が巻き込まれる事態を強く警戒していた。日米の軍事協力を強調しすぎて日中の緊張をあおるのは避けたいのが本音だった。

 しかし、中国は最近、交通・貿易の要衝の南シナ海への海洋進出を急速に進め、フィリピンやベトナムなどとのあつれきをいとわない強硬な姿勢だ。

 このため、オバマ政権は尖閣問題も含めて日本と足並みをそろえることは「中国を牽制するためにもいいメッセージになる」(米軍関係者)と踏んだ。

 ただ、新ガイドラインは「離島防衛」を掲げたものの、米軍の役割は自衛隊の作戦の「支援」「補完」とされ、改定前と変わらない。有識者には、有事の際の米軍の役割が明確でないとの指摘もある。(ニューヨーク=今野忍、村松真次)


2015/4/28 (社説)
④ 日米防衛指針の改定―平和国家の変質を危ぶむ
   http://digital.asahi.com/articles/ASH4W3DNQH4WUSPT004.html?iref=reca

 実に18年ぶりの「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)改定である。

 日米両政府が今後の安全保障政策の方向性を確認する新指針には、「切れ目のない」「グローバルな」協力がうたわれ、自衛隊と米軍の「一体化」が一段と進む。憲法の制約や日米安保条約の枠組みは、どこかに置き忘れてきたかのようだ。

 これまでのガイドラインは、1978年に旧ソ連の日本侵攻を想定し、97年には周辺事態を想定して改定された。今回はさらに、次元の異なる協力に踏み込むことになる。

 改定の根底にあるのは、安倍政権が憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認に踏み切った、昨年7月の閣議決定だ。それを受けた安保法制が今国会の焦点となる。

 その審議を前に、新指針には早々と集団的自衛権の行使が反映されている。自民党と公明党との間で見解の割れる機雷掃海も盛り込まれる。

 対米公約を先行させ、国内の論議をないがしろにする政府の姿勢は容認しがたい。

■戦後日本の転換点に

 「積極的平和主義」のもと、国際社会での日本の軍事的な役割は拡大され、海外の紛争から一定の距離を置いてきた平和主義は大幅な変更を迫られる。

 それはやがて日本社会や政治のあり方に影響を与えることになろう。戦後日本の歩みを踏み外すような針路転換である。

 その背景には、大国化する中国に対する日本政府の危機感がある。

 ――軍事的に日本より中国は強くなるかもしれない。それでも、中国より日米が強ければ東アジアの安定は保たれる。緊密な日米同盟が抑止力となり、地域の勢力均衡につながる。

 そんな考えに基づき、より緊密な連携機能を構築して、共同計画を策定。情報収集や警戒監視、重要影響事態、存立危機事態、宇宙やサイバー空間の協力など、日本ができるメニューを出し尽くした感がある。

 だがそれが、果たして唯一の「解」だろうか。

 中国の海洋進出に対して一定の抑止力は必要だろう。だがそれは、いま日本が取り組むべき大きな課題の一部でしかない。経済、外交的な手段も合わせ、中国という存在に全力で関与しなければ、将来にわたって日本の安定は保てない。

 軍事的な側面にばかり目を奪われていては、地域の平和と安定は守れまい。

■あまりにも重い負荷

 新指針が示しているのはどのような日本の未来なのか。

 まず多額の防衛予算を伴うはずだ。5兆円に近づく防衛費は自衛隊が海外での活動を広げれば、さらにふくらむ可能性が大きい。財政健全化や社会保障費の削減を進めながら、防衛費の大幅な拡大に国民の理解が得られるとは考えにくい。

 自衛隊員への負荷はいっそう重いものとなる。

 特に、戦闘現場に近づく活動が見込まれる陸上自衛隊には、過酷な任務が待ち構えている。海外で治安維持の任務にあたれば、銃を撃ったり、撃たれたりする危険がつきまとう。とっさの判断で現地の人を撃つ場面がないとは言い切れない。

 国際社会で日本の軍事的な関与が強まれば、それだけテロの危険も高まるだろう。

 近年は、警備の手薄な「ソフトターゲット」が攻撃される例が目立つ。外交官やNGO関係者ら日本人対象のテロを、より切実な問題として国内外で想定しなければならない。

 将来的には、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで自衛隊が米軍の後方支援に派遣される可能性もゼロとは言えない。南シナ海では、すでに米軍が警戒監視などの肩代わりを自衛隊に求め始めている。

■問われる方向感

 メニューを並べるだけ並べながら日本が何もしなければ、かえって同盟は揺らぐ。米国から強い要請を受けたとき、主体的な判断ができるのだろうか。

 安倍政権の発足から2年半。日本の安保政策の転換が急ピッチで進められてきた。

 安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(NSC)を創設し、国家安全保障戦略(NSS)を初めて策定。特定秘密保護法が施行され、武器輸出三原則も撤廃された。

 新指針では、「政府一体となっての同盟としての取り組み」が強調されている。政府が特定秘密保護法の整備を進めてきたのも、大きな理由の一つは、政府全体で秘密を共有し、対米協力を進めるためだった。

 安倍政権による一連の安保政策の見直しは、この新指針に収斂(しゅうれん)されたと言っていい。

 だが、国内の合意もないまま米国に手形を切り、一足飛びに安保政策の転換をはかるのは、あまりにも強引すぎる。

 戦後70年の節目の年に、あらためて日本の方向感を問い直さなければならない。


2015/4/28日03時33分 ニューヨーク=今野忍
⑤ 日米同盟の本質、転換 自衛隊の米軍支援、地球規模に
   http://digital.asahi.com/articles/ASH4S5FLDH4SUTFK00N.html

 日米両政府は27日午前(日本時間同日深夜)、米ニューヨークで外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開き、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)について、18年ぶりの改定に合意した。日本が集団的自衛権を使うことを盛り込み、米軍への後方支援の地理的制限もなくした。安倍晋三首相が掲げる「積極的平和主義」を反映し、自衛隊の米軍への協力を地球規模に拡大する内容で、自衛隊のあり方が根本から変わる。

   日米防衛指針

 2プラス2には、日本から岸田文雄外相と中谷元・防衛相、米国からはケリー国務長官とカーター国防長官が出席した。カーター氏は2プラス2後の共同記者会見で、ガイドラインについて「日本自身の安全保障の姿勢も変わってきている。アジアと世界中で協力が可能になる」と述べた。中谷氏も「新たな段階に進んだ日米同盟を世界に示すことができた」と語った。

 日米両政府は今回の改定にあたって、軍備増強を進め、海洋進出を活発化させる中国を念頭に置いた。新ガイドラインでは、日本が直接攻撃された場合の協力で、尖閣諸島を念頭に離島防衛での協力を新たに盛り込んだ。離島の不法占拠など、武力攻撃には至らない「グレーゾーン事態」を含む平時の協力も拡大した。平時から緊急事態まで「切れ目のない形で、日本の平和及び安全を確保する」とも言及した。

 2プラス2終了後に出される「共同発表」では、尖閣諸島が日米安保条約の範囲に含まれることを確認。一方で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)について、同県名護市辺野古への移設が「唯一の解決策」であるとした。

 新ガイドラインのもう一つの特徴は、自衛隊が地球規模で米軍に協力できる仕組みにすることだ。

 新ガイドラインは、日米協力の範囲を「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域」とした。これまで自衛隊が米軍を後方支援する範囲を朝鮮半島有事など日本周辺に事実上制限していた「周辺事態」を削除。自衛隊が米軍の海外での戦争を後方支援する範囲について、地理的制限は設けず世界中に拡大した。

 新ガイドラインは、安倍内閣が昨年、集団的自衛権行使を認めた閣議決定を基本としている。

 日本が集団的自衛権によって武力行使することを前提にした「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」の項目では、機雷除去、弾道ミサイル攻撃への対応、強制的な船舶検査などを盛り込んだ。日本が直接攻撃されていなくても、自衛隊が米軍とともに武力行使することが可能になり、自衛隊と米軍の一体化が格段に進むことになる。

 自衛隊と米軍の役割分担などを決める協議の場である「調整メカニズム」は日米間の合意でいつでも設置できるようにした。新たな領域として、宇宙・サイバー空間での協力も盛り込んだ。(ニューヨーク=今野忍)

     ◇

 〈日米防衛協力のための指針(ガイドライン)〉 日本が他国に攻撃されたときなどの自衛隊と米軍の具体的な役割分担を決める政策文書。日米両国の閣僚間で合意するもので、条約のような国会承認は必要とされない。ただ、米国との国際約束になるため、日本の安全保障の枠組みに大きな影響を与えてきた。1978年、旧ソ連の侵攻に備えて初めてつくられ、冷戦後の97年の改定では、北朝鮮の核開発疑惑やミサイル発射実験を踏まえて朝鮮半島有事を想定した。今回は18年ぶりの改定となる。


2015年4月28日 (新ガイドライン)
⑥ 新たな日米防衛協力のための指針全文
   http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727791.html

 日米両政府が27日に合意した新たな日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)の全文は次のとおり。▼1面参照

 ■1 防衛協力と指針の目的

 平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和及び安全を確保するため、また、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう日米両国間の安全保障及び防衛協力は、次の事項を強調する。

 ・切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応

 ・日米両政府の国家安全保障政策間の相乗効果

 ・政府一体となっての同盟としての取り組み

 ・地域の及び他のパートナー並びに国際機関との協力

 ・日米同盟のグローバルな性質

 日米両政府は、日米同盟を継続的に強化する。各政府は、その国家安全保障政策に基づき、各自の防衛態勢を維持する。日本は「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」に基づき防衛力を保持する。米国は引き続き、その核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じ、日本に対して拡大抑止を提供する。米国はまた、引き続き、アジア太平洋地域において即応態勢にある戦力を前方展開するとともに、それらの戦力を迅速に増強する能力を維持する。

 日米防衛協力のための指針(以下「指針」という)は、二国間の安全保障及び防衛協力の実効性を向上させるため、日米両国の役割及び任務並びに協力及び調整の在り方についての一般的な大枠及び政策的な方向性を示す。これにより、指針は、平和及び安全を促進し、紛争を抑止し、経済的な繁栄の基盤を確実なものとし、日米同盟の重要性についての国内外の理解を促進する。

 ■2 基本的な前提及び考え方

 指針並びにその下での行動及び活動は、次の基本的な前提及び考え方に従う。

 A 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)及びその関連取極(とりきめ)に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。

 B 日本及び米国により指針の下で行われる全ての行動及び活動は、紛争の平和的解決及び国家の主権平等に関するものその他の国際連合憲章の規定並びにその他の関連する国際約束を含む国際法に合致するものである。

 C 日本及び米国により行われる全ての行動及び活動は、おのおのの憲法及びその時々において適用のある国内法令並びに国家安全保障政策の基本的な方針に従って行われる。日本の行動及び活動は専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。

 D 指針はいずれの政府にも立法上、予算上、行政上またはその他の措置をとることを義務付けるものではなく、また、指針はいずれの政府にも法的権利または義務を生じさせるものではない。しかしながら、二国間協力のための実効的な態勢の構築が指針の目標であることから、日米両政府がおのおのの判断に従い、このような努力の結果をおのおのの具体的な政策及び措置に適切な形で反映することが期待される。

 ■3 強化された同盟内の調整

 指針の下での実効的な二国間協力のため、平時から緊急事態まで、日米両政府が緊密な協議並びに政策面及び運用面の的確な調整を行うことが必要となる。

 二国間の安全保障及び防衛協力の成功を確かなものとするため、日米両政府は、十分な情報を得て、様々なレベルにおいて調整を行うことが必要となる。この目標に向かって、日米両政府は、情報共有を強化し、切れ目のない、実効的な、全ての関係機関を含む政府全体にわたる同盟内の調整を確保するため、あらゆる経路を活用する。この目的のため、日米両政府は、新たな、平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を強化する。

 A 同盟調整メカニズム

 持続する、及び発生する脅威は、日米両国の平和及び安全に対し深刻かつ即時の影響を与え得る。日米両政府は、日本の平和及び安全に影響を与える状況その他の同盟としての対応を必要とする可能性があるあらゆる状況に切れ目のない形で実効的に対処するため、同盟調整メカニズムを活用する。このメカニズムは、平時から緊急事態までのあらゆる段階において自衛隊及び米軍により実施される活動に関連した政策面及び運用面の調整を強化する。このメカニズムはまた、適時の情報共有並びに共通の情勢認識の構築及び維持に寄与する。日米両政府は、実効的な調整を確保するため、必要な手順及び基盤(施設及び情報通信システムを含む)を確立するとともに、定期的な訓練・演習を実施する。

 日米両政府は、同盟調整メカニズムにおける調整の手順及び参加機関の構成の詳細を状況に応じたものとする。この手順の一環として、平時から、連絡窓口に係る情報が共有され及び保持される。

 B 強化された運用面の調整

 柔軟かつ即応性のある指揮・統制のための強化された二国間の運用面の調整は、日米両国にとって決定的に重要な中核的能力である。この文脈において、日米両政府は、自衛隊と米軍との間の協力を強化するため、運用面の調整機能が併置されることが引き続き重要であることを認識する。

 自衛隊及び米軍は、緊密な情報共有を確保し、平時から緊急事態までの調整を円滑にし及び国際的な活動を支援するため、要員の交換を行う。自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、おのおのの指揮系統を通じて行動する。

 C 共同計画の策定

 日米両政府は、自衛隊及び米軍による整合のとれた運用を円滑かつ実効的に行うことを確保するため、引き続き、共同計画を策定し及び更新する。日米両政府は、計画の実効性及び柔軟、適時かつ適切な対処能力を確保するため、適切な場合に、運用面及び後方支援面の所要並びにこれを満たす方策をあらかじめ特定することを含め、関連情報を交換する。

 日米両政府は、平時において、日本の平和及び安全に関連する緊急事態について、おのおのの政府の関係機関を含む改良された共同計画策定メカニズムを通じ、共同計画の策定を行う。共同計画は、適切な場合に、関係機関からの情報を得つつ策定される。日米安全保障協議委員会は、引き続き、方向性の提示、このメカニズムの下での計画の策定に係る進捗(しんちょく)の確認及び必要に応じた指示の発出について責任を有する。日米安全保障協議委員会は、適切な下部組織により補佐される。

 共同計画は、日米両政府双方の計画に適切に反映される。

 ■4 日本の平和及び安全の切れ目のない確保

 持続する、及び発生する脅威は日本の平和及び安全に対し深刻かつ即時の影響を与え得る。この複雑さを増す安全保障環境において、日米両政府は日本に対する武力攻撃を伴わない時の状況を含め、平時から緊急事態までのいかなる段階においても切れ目のない形で日本の平和及び安全を確保するための措置をとる。この文脈において、日米両政府はまた、パートナーとの更なる協力を推進する。

 日米両政府はこれらの措置が各状況に応じた柔軟、適時かつ実効的な二国間の調整に基づいてとられる必要があること、及び同盟としての適切な対応のためには省庁間調整が不可欠であることを認識する。したがって、日米両政府は、適切な場合に次の目的のために政府全体にわたる同盟調整メカニズムを活用する。

 ・状況を評価すること

 ・情報を共有すること、及び

 ・柔軟に選択される抑止措置及び事態の緩和を目的とした行動を含む同盟としての適切な対応を実施するための方法を立案すること

 日米両政府はまた、これらの二国間の取り組みを支えるため、日本の平和及び安全に影響を与える可能性がある事項に関する適切な経路を通じた戦略的な情報発信を調整する。

 A 平時からの協力措置

 日米両政府は、日本の平和及び安全の維持を確保するため、日米同盟の抑止力及び能力を強化するための、外交努力によるものを含む広範な分野にわたる協力を推進する。

 自衛隊及び米軍はあらゆるあり得べき状況に備えるため、相互運用性、即応性及び警戒態勢を強化する。このため、日米両政府は、次のものを含むが、これに限られない措置をとる。

 1 情報収集、警戒監視及び偵察

 日米両政府は、日本の平和及び安全に対する脅威のあらゆる兆候を極力早期に特定し並びに情報収集及び分析における決定的な優越を確保するため、共通の情勢認識を構築し及び維持しつつ、情報を共有し及び保護する。これには、関係機関間の調整及び協力の強化を含む。

 自衛隊及び米軍は、おのおののアセット(装備品等)の能力及び利用可能性に応じ、情報収集、警戒監視及び偵察(ISR)活動を行う。これには、日本の平和及び安全に影響を与え得る状況の推移を常続的に監視することを確保するため、相互に支援する形で共同のISR活動を行うことを含む。

 2 防空及びミサイル防衛

 自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル発射及び経空の侵入に対する抑止及び防衛態勢を維持し及び強化する。日米両政府は、早期警戒能力、相互運用性、ネットワーク化による監視範囲及びリアルタイムの情報交換を拡大するため並びに弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図るため、協力する。さらに、日米両政府は、引き続き、挑発的なミサイル発射及びその他の航空活動に対処するに当たり緊密に調整する。

 3 海洋安全保障

 日米両政府は航行の自由を含む国際法に基づく海洋秩序を維持するための措置に関し、相互に緊密に協力する。自衛隊及び米軍は、必要に応じて関係機関との調整によるものを含め、海洋監視情報の共有を更に構築し及び強化しつつ、適切な場合に、ISR及び訓練・演習を通じた海洋における日米両国のプレゼンスの維持及び強化等の様々な取り組みにおいて協力する。

 4 アセットの防護

 自衛隊及び米軍は、訓練・演習中を含め、連携して日本の防衛に資する活動に現に従事している場合であって適切なときは、おのおののアセットを相互に防護する。

 5 訓練・演習

 自衛隊及び米軍は、相互運用性、持続性及び即応性を強化するため、日本国内外双方において、実効的な二国間及び多国間の訓練・演習を実施する。適時かつ実践的な訓練・演習は、抑止を強化する。日米両政府は、これらの活動を支えるため、訓練場、施設及び関連装備品が利用可能、アクセス可能かつ現代的なものであることを確保するために協力する。

 6 後方支援

 日本及び米国は、いかなる段階においても、おのおの自衛隊及び米軍に対する後方支援の実施を主体的に行う。自衛隊及び米軍は日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品または役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(日米物品役務相互提供協定)及びその関連取り決めに規定する活動について、適切な場合に補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これらに限らない後方支援を相互に行う。

 7 施設の使用

 日米両政府は、自衛隊及び米軍の相互運用性を拡大し並びに柔軟性及び抗たん性(攻撃に耐える能力)を向上させるため、施設・区域の共同使用を強化し、施設・区域の安全の確保に当たって協力する。日米両政府はまた、緊急事態へ備えることの重要性を認識し、適切な場合に、民間の空港及び港湾を含む施設の実地調査の実施に当たって協力する。

 B 日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処

 同盟は、日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対処する。当該事態については地理的に定めることはできない。この節に示す措置は、当該事態にいまだ至ってない状況において、両国のおのおのの国内法令に従ってとり得るものを含む。早期の状況把握及び二国間の行動に関する状況に合わせた断固たる意思決定は、当該事態の抑止及び緩和に寄与する。

 日米両政府は、日本の平和及び安全を確保するため、平時からの協力的措置を継続することに加え、外交努力を含むあらゆる手段を追求する。日米両政府は、同盟調整メカニズムを活用しつつ、おのおのの決定により、次に掲げるものを含むが、これらに限らない追加的措置をとる。

 1 非戦闘員を退避させるための活動

 日本国民または米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要がある場合、各政府は、自国民の退避及び現地当局との関係の処理について責任を有する。日米両政府は、適切な場合に、日本国民または米国国民である非戦闘員の退避を計画するに当たり調整し及び当該非戦闘員の退避の実施に当たって協力する。これらの退避活動は、輸送手段、施設等の各国の能力を相互補完的に使用して実施される。日米両政府は、おのおの、第三国の非戦闘員に対して退避に係る援助を行うことを検討することができる。

 日米両政府は退避者の安全、輸送手段及び施設、通関、出入国管理及び検疫、安全な地域、衛生等の分野において協力を実施するため、適切な場合に、同盟調整メカニズムを通じ初期段階からの調整を行う。日米両政府は、適切な場合に、訓練・演習の実施によるものを含め、非戦闘員を退避させるための活動における調整を平時から強化する。

 2 海洋安全保障

 日米両政府は、おのおのの能力を考慮しつつ、海洋安全保障を強化するため、緊密に協力する。協力的措置には、情報共有及び国際連合安全保障理事会決議その他の国際法上の根拠に基づく船舶の検査を含み得るが、これらに限らない。

 3 避難民への対応のための措置

 日米両政府は、日本への避難民の流入が発生するおそれがあるまたは実際に始まるような状況に至る場合には、国際法上の関係する義務に従った人道的な方法で避難民を扱いつつ、日本の平和及び安全を維持するために協力する。当該避難民への対応については、日本が主体的に実施する。米国は、日本からの要請に基づき、適切な支援を行う。

 4 捜索・救難

 日米両政府は適切な場合に、捜索・救難活動において協力し及び相互に支援する。自衛隊は日本の国内法令に従い、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、米国による戦闘捜索・救難活動に対して支援を行う。

 5 施設・区域の警護

 自衛隊及び米軍はおのおのの施設・区域を関係当局と協力して警護する責任を有する。日本は米国からの要請に基づき、米軍と緊密に協力し及び調整しつつ、日本国内の施設・区域の追加的な警護を実施する。

 6 後方支援

 日米両政府は、実効的かつ効率的な活動を可能とするため、適切な場合に、相互の後方支援(補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これらに限らない)を強化する。これらには、運用面及び後方支援面の所要の迅速な確認並びにこれを満たす方策の実施を含む。日本政府は、中央政府及び地方公共団体の機関が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。日本政府は、自国の国内法令に従い、適切な場合に、後方支援及び関連支援を行う。

 7 施設の使用

 日本政府は、日米安全保障条約及びその関連取極に従い、必要に応じて、民間の空港及び港湾を含む施設を一時的な使用に供する。日米両政府は、施設・区域の共同使用における協力を強化する。

 C 日本に対する武力攻撃への対処行動

 日本に対する武力攻撃への共同対処行動は、引き続き、日米間の安全保障及び防衛協力の中核的要素である。

 日本に対する武力攻撃が予測される場合、日米両政府は日本の防衛のために必要な準備を行いつつ、武力攻撃を抑止し及び事態を緩和するための措置をとる。

 日本に対する武力攻撃が発生した場合、日米両政府は極力早期にこれを排除し及び更なる攻撃を抑止するため、適切な共同対処行動を実施する。日米両政府はまた、第4章に掲げるものを含む必要な措置をとる。

 1 日本に対する武力攻撃が予測される場合

 日本に対する武力攻撃が予測される場合、日米両政府は、攻撃を抑止し及び事態を緩和するため、包括的かつ強固な政府一体となっての取り組みを通じ、情報共有及び政策面の協議を強化し、外交努力を含むあらゆる手段を追求する。

 自衛隊及び米軍は、必要な部隊展開の実施を含め、共同作戦のための適切な態勢をとる。日本は、米軍の部隊展開を支援するための基盤を確立し及び維持する。日米両政府による準備には、施設・区域の共同使用、補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これらに限らない相互の後方支援及び日本国内の米国の施設・区域の警護の強化を含み得る。

 2 日本に対する武力攻撃が発生した場合

 a 整合のとれた対処行動のための基本的考え方

 外交努力及び抑止にもかかわらず、日本に対する武力攻撃が発生した場合、日米両国は、迅速に武力攻撃を排除し及び更なる攻撃を抑止するために協力し、日本の平和及び安全を回復する。当該整合のとれた行動は、この地域の平和及び安全の回復に寄与する。

 日本は、日本の国民及び領域の防衛を引き続き主体的に実施し、日本に対する武力攻撃を極力早期に排除するため直ちに行動する。自衛隊は、日本及びその周辺海空域並びに海空域の接近経路における防勢作戦を主体的に実施する。米国は、日本と緊密に調整し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し及び補完する。米国は、日本の防衛を支援し並びに平和及び安全を回復するような方法で、この地域の環境を形成するための行動をとる。

 日米両政府は、日本を防衛するためには国力の全ての手段が必要となることを認識し、同盟調整メカニズムを通じて行動を調整するため、おのおのの指揮系統を活用しつつ、おのおの政府一体となっての取り組みを進める。

 米国は、日本に駐留する兵力を含む前方展開兵力を運用し、所要に応じその他のあらゆる地域からの増援兵力を投入する。日本は、これらの部隊展開を円滑にするために必要な基盤を確立し及び維持する。

 日米両政府は、日本に対する武力攻撃への対処において、おのおの米軍または自衛隊及びその施設を防護するための適切な行動をとる。

 b 作戦構想

 1 空域を防衛するための作戦

 自衛隊及び米軍は、日本の上空及び周辺空域を防衛するため、共同作戦を実施する。

 自衛隊は、航空優勢を確保しつつ、防空作戦を主体的に実施する。このため、自衛隊は、航空機及び巡航ミサイルによる攻撃に対する防衛を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

 米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

 2 弾道ミサイル攻撃に対処するための作戦

 自衛隊及び米軍は、日本に対する弾道ミサイル攻撃に対処するため、共同作戦を実施する。

 自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル発射を早期に探知するため、リアルタイムの情報交換を行う。弾道ミサイル攻撃の兆候がある場合、自衛隊及び米軍は、日本に向けられた弾道ミサイル攻撃に対して防衛し、弾道ミサイル防衛作戦に従事する部隊を防護するための実効的な態勢を維持する。

 自衛隊は、日本を防衛するため、弾道ミサイル防衛作戦を主体的に実施する。

 米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

 3 海域を防衛するための作戦

 自衛隊及び米軍は、日本の周辺海域を防衛し及び海上交通の安全を確保するため、共同作戦を実施する。

 自衛隊は、日本における主要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における艦船の防護並びにその他の関連する作戦を主体的に実施する。このため、自衛隊は、沿岸防衛、対水上戦、対潜戦、機雷戦、対空戦及び航空阻止を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

 米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

 自衛隊及び米軍は、当該武力攻撃に関与している敵に支援を行う船舶活動の阻止において協力する。

 こうした活動の実効性は、関係機関間の情報共有その他の形態の協力を通じて強化される。

 4 陸上攻撃に対処するための作戦

 自衛隊及び米軍は、日本に対する陸上攻撃に対処するため、陸、海、空または水陸両用部隊を用いて、共同作戦を実施する。

 自衛隊は、島嶼(とうしょ)に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。このため、自衛隊は、着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦、水陸両用作戦及び迅速な部隊展開を含むが、これに限られない必要な行動をとる。

 自衛隊はまた、関係機関と協力しつつ、潜入を伴うものを含め、日本における特殊作戦部隊による攻撃等の不正規型の攻撃を主体的に撃破する。

 米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

 5 領域横断的な作戦

 自衛隊及び米軍は、日本に対する武力攻撃を排除し及び更なる攻撃を抑止するため、領域横断的な共同作戦を実施する。これらの作戦は、複数の領域を横断して同時に効果を達成することを目的とする。

 領域横断的な協力の例には、次に示す行動を含む。

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、おのおののISR態勢を強化し、情報共有を促進し及びおのおののISRアセットを防護する。

 米軍は、自衛隊を支援し及び補完するため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができる。米軍がそのような作戦を実施する場合、自衛隊は、必要に応じ、支援を行うことができる。これらの作戦は、適切な場合に、緊密な二国間調整に基づいて実施される。

 日米両政府は、第6章に示す二国間協力に従い、宇宙及びサイバー空間における脅威に対処するために協力する。

 自衛隊及び米軍の特殊作戦部隊は、作戦実施中、適切に協力する。

 c 作戦支援活動

 日米両政府は、共同作戦を支援するため、次の活動において協力する。

 1 通信電子活動

 日米両政府は、適切な場合に、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互に支援する。

 自衛隊及び米軍は、共通の状況認識の下での共同作戦のため、自衛隊と米軍との間の効果的な通信を確保し、共通作戦状況図を維持する。

 2 捜索・救難

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、戦闘捜索・救難活動を含む捜索・救難活動において、協力し及び相互に支援する。

 3 後方支援

 作戦上おのおのの後方支援能力の補完が必要となる場合、自衛隊及び米軍は、おのおのの能力及び利用可能性に基づき、柔軟かつ適時の後方支援を相互に行う。

 日米両政府は、支援を行うため、中央政府及び地方公共団体の機関が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。

 4 施設の使用

 日本政府は、必要に応じ、日米安全保障条約及びその関連取極に従い、施設の追加提供を行う。日米両政府は、施設・区域の共同使用における協力を強化する。

 5 CBRN(化学・生物・放射線・核)防護

 日本政府は、日本国内でのCBRN事案及び攻撃に引き続き主体的に対処する。米国は、日本における米軍の任務遂行能力を主体的に維持し回復する。日本からの要請に基づき、米国は、日本の防護を確実にするため、CBRN事案及び攻撃の予防並びに対処関連活動において、適切に日本を支援する。

 D 日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動

 日米両国が、おのおの、米国または第三国に対する武力攻撃に対処するため、主権の十分な尊重を含む国際法並びにおのおのの憲法及び国内法に従い、武力の行使を伴う行動をとることを決定する場合であって、日本が武力攻撃を受けるに至っていないとき、日米両国は、当該武力攻撃への対処及び更なる攻撃の抑止において緊密に協力する。共同対処は、政府全体にわたる同盟調整メカニズムを通じて調整される。

 日米両国は、当該武力攻撃への対処行動をとっている他国と適切に協力する。

 自衛隊は、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に対処し、日本の存立を全うし、日本国民を守るため、武力の行使を伴う適切な作戦を実施する。

 協力して行う作戦の例は、次に概要を示すとおりである。

 1 アセットの防護

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、アセットの防護において協力する。当該協力には、非戦闘員の退避のための活動または弾道ミサイル防衛等の作戦に従事しているアセットの防護を含むが、これに限らない。

 2 捜索・救難

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、戦闘捜索・救難活動を含む捜索・救難活動において、協力し及び支援を行う。

 3 海上作戦

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、海上交通の安全を確保することを目的とするものを含む機雷掃海において協力する。

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、艦船を防護するための護衛作戦において協力する。

 自衛隊及び米軍は、適切な場合に、関係機関と協力しつつ、当該武力攻撃に関与している敵に支援を行う船舶活動の阻止において協力する。

 4 弾道ミサイル攻撃に対処するための作戦

 自衛隊及び米軍は、おのおのの能力に基づき、適切な場合に、弾道ミサイルの迎撃において協力する。日米両政府は、弾道ミサイル発射の早期探知を確実に行うため、情報交換を行う。

 5 後方支援

 作戦上おのおのの後方支援能力の補完が必要となる場合、自衛隊及び米軍はおのおのの能力及び利用可能性に基づき、柔軟かつ適時に後方支援を相互に行う。

 日米両政府は支援を行うため、中央政府及び地方公共団体の機関が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。

 E 日本における大規模災害への対処における協力

 日本において大規模災害が発生した場合、日本は主体的に当該災害に対処する。自衛隊は、関係機関、地方公共団体及び民間主体と協力しつつ、災害救援活動を実施する。日本における大規模災害からの迅速な復旧が日本の平和及び安全の確保に不可欠であること、及び当該災害が日本における米軍の活動に影響を与える可能性があることを認識し、米国は、自国の基準に従い、日本の活動に対する適切な支援を行う。当該支援には、捜索・救難、輸送、補給、衛生、状況把握及び評価並びにその他の専門的能力を含み得る。日米両政府は、適切な場合に、同盟調整メカニズムを通じて活動を調整する。

 日米両政府は、日本における人道支援・災害救援活動に際しての米軍による協力の実効性を高めるため、情報共有によるものを含め、緊密に協力する。さらに、米軍は、災害関連訓練に参加することができ、これにより、大規模災害への対処に当たっての相互理解が深まる。

 ■5 地域の及びグローバルな平和と安全のための協力

 相互の関係を深める世界において、日米両国は、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和、安全、安定及び経済的な繁栄の基盤を提供するため、パートナーと協力しつつ、主導的役割を果たす。半世紀をはるかに上回る間、日米両国は、世界の様々な地域における課題に対して実効的な解決策を実行するため協力してきた。

 日米両政府のおのおのがアジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和及び安全のための国際的な活動に参加することを決定する場合、自衛隊及び米軍を含む日米両政府は、適切なときは、次に示す活動等において、相互に及びパートナーと緊密に協力する。この協力はまた、日米両国の平和及び安全に寄与する。

 A 国際的な活動における協力

 日米両政府は、おのおのの判断に基づき、国際的な活動に参加する。共に活動を行う場合、自衛隊及び米軍は、実行可能な限り最大限協力する。

 日米両政府は、適切な場合に、同盟調整メカニズムを通じ、当該活動の調整を行うことができ、また、これらの活動において三カ国及び多国間の協力を追求する。自衛隊及び米軍は、円滑かつ実効的な協力のため、適切な場合に、手順及びベストプラクティスを共有する。日米両政府は、引き続き、この指針に必ずしも明示的には含まれない広範な事項について協力する一方で、地域的及び国際的な活動における日米両政府による一般的な協力分野は次のものを含む。

 1 平和維持活動

 日米両政府が国際連合憲章に従って国際連合により権限を与えられた平和維持活動に参加する場合、日米両政府は、適切なときは、自衛隊と米軍との間の相互運用性を最大限に活用するため、緊密に協力する。日米両政府はまた、適切な場合に、同じ任務に従事する国際連合その他の要員に対する後方支援の提供及び保護において協力することができる。

 2 国際的な人道支援・災害救援

 日米両政府が、大規模な人道災害及び自然災害の発生を受けた関係国政府または国際機関からの要請に応じて、国際的な人道支援・災害救援活動を実施する場合、日米両政府は、適切なときは、参加する自衛隊と米軍との間の相互運用性を最大限に活用しつつ、相互に支援を行うため緊密に協力する。協力して行う活動の例には、相互の後方支援、運用面の調整、計画策定及び実施を含み得る。

 3 海洋安全保障

 日米両政府が海洋安全保障のための活動を実施する場合、日米両政府は、適切なときは、緊密に協力する。協力して行う活動の例には、海賊対処、機雷掃海等の安全な海上交通のための取り組み、大量破壊兵器の不拡散のための取り組み及びテロ対策活動のための取り組みを含み得る。

 4 パートナーの能力構築支援

 パートナーとの積極的な協力は、地域及び国際の平和及び安全の維持及び強化に寄与する。変化する安全保障上の課題に対処するためのパートナーの能力を強化することを目的として、日米両政府は、適切な場合に、おのおのの能力及び経験を最大限に活用することにより、能力構築支援活動において協力する。協力して行う活動の例には、海洋安全保障、防衛医学、防衛組織の構築、人道支援・災害救援または平和維持活動のための部隊の即応性の向上を含み得る。

 5 非戦闘員を退避させるための活動

 非戦闘員の退避のために国際的な行動が必要となる状況において、日米両政府は、適切な場合に、日本国民及び米国国民を含む非戦闘員の安全を確保するため、外交努力を含むあらゆる手段を活用する。

 6 情報収集、警戒監視及び偵察

 日米両政府が、国際的な活動に参加する場合、自衛隊及び米軍はおのおののアセットの能力及び利用可能性に基づき、適切なときは、ISR活動において協力する。

 7 訓練・演習

 自衛隊及び米軍は、国際的な活動の実効性を強化するため、適切な場合に、共同訓練・演習を実施し及びこれに参加し、相互運用性、持続性及び即応性を強化する。また、日米両政府は、引き続き、同盟との相互運用性の強化並びに共通の戦術、技術及び手順の構築に寄与するため、訓練・演習においてパートナーと協力する機会を追求する。

 8 後方支援

 日米両政府は、国際的な活動に参加する場合、相互に後方支援を行うために協力する。日本政府は、自国の国内法令に従い、適切な場合に、後方支援を行う。

 B 三カ国及び多国間協力

 日米両政府は、三カ国及び多国間の安全保障及び防衛協力を推進し及び強化する。特に、日米両政府は、地域の及び他のパートナー並びに国際機関と協力するための取り組みを強化し、並びにそのための更なる機会を追求する。

 日米両政府はまた、国際法及び国際的な基準に基づく協力を推進すべく、地域及び国際機関を強化するために協力する。

 ■6 宇宙及びサイバー空間に関する協力

 A 宇宙に関する協力

 日米両政府は宇宙空間の安全保障の側面を認識し、責任ある、平和的かつ安全な宇宙の利用を確実なものとするための両政府の連携を維持し及び強化する。

 当該取り組みの一環として、日米両政府はおのおのの宇宙システムの抗たん性を確保し及び宇宙状況監視に係る協力を強化する。日米両政府は能力を確立し向上させるため、適切な場合に相互に支援し、宇宙空間の安全及び安定に影響を与え、その利用を妨げ得る行動や事象についての情報を共有する。日米両政府はまた、宇宙システムに対して発生する脅威に対応するために情報を共有し、また、海洋監視並びに宇宙システムの能力及び抗たん性を強化する宇宙関係の装備・技術(ホステッド・ペイロードを含む)における協力の機会を追求する。

 自衛隊及び米軍はおのおのの任務を実効的かつ効率的に達成するため、宇宙の利用に当たって引き続き、早期警戒、ISR、測位、航法及びタイミング、宇宙状況監視、気象観測、指揮、統制及び通信並びに任務保証のために不可欠な関係する宇宙システムの抗たん性の確保等の分野において協力し、かつ政府一体となっての取り組みに寄与する。おのおのの宇宙システムが脅威にさらされた場合、自衛隊及び米軍は、適切なときは、危険の軽減及び被害の回避において協力する。被害が発生した場合、自衛隊及び米軍は、適切なときは、関係能力の再構築において協力する。

 B サイバー空間に関する協力

 日米両政府はサイバー空間の安全かつ安定的な利用の確保に資するため、適切な場合に、サイバー空間における脅威及び脆弱(ぜいじゃく)性に関する情報を適時かつ適切な方法で共有する。また、日米両政府は適切な場合に、訓練及び教育に関するベストプラクティスの交換を含め、サイバー空間における各種能力の向上に関する情報を共有する。日米両政府は適切な場合に、民間との情報共有によるものを含め、自衛隊及び米軍が任務を達成する上で依拠する重要インフラ及びサービスを防護するために協力する。

 自衛隊及び米軍は、次の措置をとる。

 ・おのおののネットワーク及びシステムを監視する態勢を維持すること

 ・サイバーセキュリティーに関する知見を共有し、教育交流を行うこと

 ・任務保証を達成するためにおのおののネットワーク及びシステムの抗たん性を確保すること

 ・サイバーセキュリティーを向上させるための政府一体となっての取り組みに寄与すること

 ・平時から緊急事態までのいかなる状況においても、サイバーセキュリティーのための実効的な協力を確実に行うため、共同演習を実施すること

 自衛隊及び日本における米軍が利用する重要インフラ及びサービスに対するものを含め、日本に対するサイバー事案が発生した場合、日本は主体的に対処し、緊密な二国間調整に基づき、米国は日本に対し適切な支援を行う。日米両政府はまた、関連情報を迅速かつ適切に共有する。日本が武力攻撃を受けている場合に発生するものを含め、日本の安全に影響を与える深刻なサイバー事案が発生した場合、日米両政府は緊密に協議し、適切な協力行動をとり対処する。

 ■7 日米共同の取り組み

 日米両政府は二国間協力の実効性を更に向上させるため、安全保障及び防衛協力の基盤として、次の分野を発展させ及び強化する。

 A 防衛装備・技術協力

 日米両政府は、相互運用性を強化し、効率的な取得及び整備を推進するため、次の取り組みを行う。

 ・装備品の共同研究、開発、生産、試験評価並びに共通装備品の構成品及び役務の相互提供において協力する。

 ・相互の効率性及び即応性のため、共通装備品の修理及び整備の基盤を強化する。

 ・効率的な取得、相互運用性及び防衛装備・技術協力を強化するため、互恵的な防衛調達を促進する。

 ・防衛装備・技術に関するパートナーとの協力の機会を探求する。

 B 情報協力・情報保全

 ・日米両政府は、共通の情勢認識が不可欠であることを認識し、国家戦略レベルを含むあらゆるレベルにおける情報協力及び情報共有を強化する。

 ・日米両政府は緊密な情報協力及び情報共有を可能とするため、引き続き、秘密情報の保護に関連した政策、慣行及び手続きの強化における協力を推進する。

 ・日米両政府はまた、情報共有に関してパートナーとの協力の機会を探求する。

 C 教育・研究交流

 日米両政府は、安全保障及び防衛に関する知的協力の重要性を認識し、関係機関の構成員の交流を深め、おのおのの研究・教育機関間の意思疎通を強化する。そのような取り組みは、安全保障・防衛当局者が知識を共有し協力を強化するための恒久的な基盤となる。

 ■8 見直しのための手順

 日米安全保障協議委員会は適切な下部組織の補佐を得て、この指針が変化する状況に照らして適切なものであるか否かを定期的に評価する。日米同盟関係に関連する諸情勢に変化が生じ、その時の状況を踏まえて必要と認める場合には、日米両政府は適時かつ適切な形でこの指針を更新する。


2015年4月24日 今野忍 
⑦ 離島防衛を日米協力に明記 新ガイドライン5分野に拡大
   http://digital.asahi.com/articles/ASH4R758RH4RUTFK01K.html

 日米両政府が今月末に改定する「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の概要が分かった。「切れ目のない日米協力」をうたい、日本防衛のために日米が協力する分野を、これまでの3分野から、5分野に拡大する。尖閣諸島を念頭に「離島防衛」を明記し、日本が攻撃の阻止や奪還作戦を行い、米軍は支援するとの役割分担も明らかにする。

 新ガイドラインは、日米が27日にニューヨークで外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開き、正式合意する。与党が安全保障法制の見直しで基本合意した内容に基づくが、安保法制が国会で審議されるより前に、日米防衛協力の具体像が決まることになる。

 1997年に作った今のガイドラインは、①平素②日本が危なくなりそうな「周辺事態」③日本が戦争状態になる「日本有事」の三つの分野で協力事項を定めている。新ガイドラインでは「平素から武力攻撃事態に至るまで切れ目なく協力、共同で対処する」と明記する。そのうえで、これまでの3分野を撤廃し、①平素からの協力②日本の平和と安全に対する潜在的な脅威への対応(重要影響事態)③日本に対する武力攻撃事態への対処行動④集団的自衛権行使を前提とした日本以外の国への武力攻撃に対する行動⑤日本での大規模災害での協力、の5分野に作り直す。

 「日本への武力攻撃への共同対処」には、中国公船が領海侵入を繰り返す尖閣諸島を念頭に「離島防衛」を明記する。自衛隊は陸上攻撃の阻止を主体的にするとし、仮に離島が占拠された場合は、「自衛隊は奪還するための作戦を実施」し、米軍は「支援・補完」すると役割分担も明らかにする。一方で、偶発的な衝突を避けるため、日米共同演習などを通じて対応能力を相手側に認識させる「日米共同柔軟抑止選択肢(FDO)」を新設する。

 集団的自衛権行使の一部容認を認めた武力行使の「新3要件」に基づいて日米が協力することを明記。米艦などを守る「アセット(武器など)防護」、捜索・救難、機雷除去、強制的な船舶検査、後方支援などを盛り込む。安倍晋三首相が意欲を示す停戦前の中東・ホルムズ海峡での機雷除去も想定している。

 一方、新ガイドラインでは「地域を超えたグローバルな日米協力」もうたう。米国が世界中でかかわる国際紛争で、自衛隊が後方支援を行うことが主な狙いだ。さらに、新たな協力分野として、宇宙、サイバー空間での協力も掲げる。

 また、事態に応じて素早く対応できるように、日米の役割分担などを決める協議の場である「調整メカニズム」をいつでも設置できるようにする。(今野忍)

■新日米ガイドラインの骨子

●日米調整機能の強化

 ①同盟の調整メカニズム
 ②運用調整の強化
 ③共同計画の策定

●日本の平和・安全の切れ目のない確保

 ①平素からの協力措置
 ②日本の平和と安全に対する潜在的な脅威への対応
 ③日本に対する武力攻撃への対処行動
  A武力攻撃が予測される場合
  B武力攻撃が発生した場合
 ④他国への武力攻撃に対する行動(集団的自衛権行使)
 ⑤日本の大規模災害対応での協力

●グローバルな日米協力

 ①国際的な活動の協力
 ②2カ国・多国間の協力

●新たな領域の日米協力

 ①宇宙での協力
 ②サイバー空間での協力


2015/4/28
⑧ 日米防衛協力のための指針に関するトピックス
   http://www.asahi.com/topics/word/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%8C%87%E9%87%9D.html

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※ 上記以外での調べ方

コトバンク
   > ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
   > 日米防衛協力のための指針とは
     https://kotobank.jp/word/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%8D%94%E5%8A%9B%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%8C%87%E9%87%9D-159061