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折々の記 2015 ③
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  04 30 安倍首相米議会で演説 その一   

 04 30 (木) 安倍首相米議会で演説    

関連する報道内容

          ① 安倍首相、米議会で演説
          ② 演説の全文〈日本語〉
          ③ (社説)
          ④ (社説)
          ⑤ (時時刻刻)日米の和解強調
          ⑥ 3面=同盟アピール

          ⑦ 4面=Q.米議会両院会議で演説、なぜ実現?
          ⑧ 7面=TPP交渉の今後

          
          
          
          




2015年4月30日05時00分
① 安倍首相、米議会で演説
  先の大戦に「痛切な反省」 安保法制「夏までに成就」

     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731532.html

 訪米中の安倍晋三首相は29日午前(日本時間30日未明)、ワシントンの米議会上下両院合同会議で演説した。先の大戦への「痛切な反省」に言及し、戦後の日米の和解の歩みを強調。米国人の犠牲者に哀悼を捧げ、アジアの国民に「苦しみを与えた事実」を認めた。「侵略」や「おわび」という言葉は使わなかった。

 (2面=日米の和解強調、3面=同盟アピール、4面=両院会議演説とは、7面=TPP交渉の今後、12・13面=演説の全文〈英語と日本語〉)

 日本の首相が上下両院合同会議で演説するのは初めて。「希望の同盟へ」と題し、英語で約45分間行った。

 首相はワシントン市内の第2次世界大戦記念碑を訪問したことにふれ、大戦で日本軍の攻撃によって多数の米兵が犠牲となった真珠湾やフィリピンのバターン半島などの戦場に言及。「歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈(かれつ)なものだ。私は深い悔悟を胸に黙祷(もくとう)を捧げた」と述べ、「先の戦争に斃(たお)れた米国の人々の魂に深い一礼を捧げる」と表明した。

 さらに「戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ」と強調。そのうえで「自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。歴代総理と全く変わるものではない」と、従来の歴史認識を引き継ぐ考えを明らかにした。慰安婦問題には直接言及しなかったが、「紛争下、常に傷ついたのは女性」で、「女性の人権が侵されない世の中を実現しなくてはいけない」と訴えた。

 この演説は、先のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)での演説とともに、首相が夏に出す戦後70年談話につながるものとみられている。

 安全保障分野では、アジア太平洋を重視する米国のリバランス(再均衡)戦略を「徹頭徹尾支持する」と明言。海洋進出を強める中国を念頭に、太平洋からインド洋にかけての海を「自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」との考えを示した。

 また、今国会での成立を目指す一連の安全保障法制について、「自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟はより一層堅固になる。戦後、初めての大改革だ。この夏までに、成就させる」と決意を述べた。

 首相は自らが掲げる「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」という言葉を2回繰り返し、「日本の将来を導く旗印となる」と強調。日米同盟を「希望の同盟」と呼ぶよう提唱した。

 日米が主導してきた戦後経済発展の歩みについては、アジア太平洋に「いかなる国の恣意(しい)的な思惑にも左右されない、持続可能な市場をつくりあげなければならない」と主張。環太平洋経済連携協定(TPP)には「単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があることを忘れてはいけない」と訴えた。(ワシントン=村山祐介)

 ■対米・対アジア、二つの顔 論説副主幹・立野純二

 真珠湾攻撃の翌日、ルーズベルト大統領が「屈辱の日」演説をした。米議会の両院がそろう同じ演壇に日本の首相が初めて立った。

 「希望の同盟へ」と題した安倍首相の演説は予想通り、「未来志向」の言葉に満ちている。「侵略」も、「おわび」も、ない。

 そこから強くにじむのは、前世紀の日本の過ちが残した歴史のくびきを解こうとする安倍氏のかたくなな執念である。

 日米はともに「冷戦に勝利した」。もはや戦勝国でも敗戦国でもない、と言いたげだ。だが、その試みは逆に、戦後70年を経ても変わらぬ日米の構図を際だたせた感がぬぐえない。米国が求める日本の姿を懸命に演じる関係である。

 外交辞令に富む演説は、米議会には受け入れられるだろう。だがそこには、米国向けに心を砕く首相と、アジア向けには時に冷淡にも振る舞う首相の二つの顔の落差が浮かび上がる。

 かつて最も強い日米関係と言われたのは、小泉純一郎首相の時である。だが、当時は靖国神社参拝に米議員が反発し、両院演説の場は与えられなかった。

 同じ参拝をした安倍氏を厚遇したのは、米国でも中国への警戒感が高まっているからだ。安倍政権もそこを読んで、米国が手放しで評価するカードを切った。平和憲法の縛りをほどき、米軍と共にする行動の幅を広げる。日本の法改正が後回しになろうとも、対米関係の強化を優先した。

 米国との共通の利害を強調し、政治的立場を強めようとする手法は、戦後の日本外交のほぼ一貫した特徴だ。とりわけ、安倍氏の祖父、岸信介首相の姿は、今回の安倍氏と重なる。

 58年前の米上院での演説で岸氏は、共産主義陣営と闘う日本の決意をうたい、日米安保条約の改定にこぎつけた。当時の「反共」はいま、「対中国」に変わったが、対米関係を偏重する姿勢に変わりはない。

 当時の岸首相が訪米時に携えた懸案には、沖縄の返還問題もあった。米首脳らに対し、「私は国民感情を代表してすぐにも返還してくれと強いことを言った」と岸氏は記者団に語っている。そこは今回の安倍氏との大きな違いだ。

 対米関係というレンズを通してしか世界を見ない日本外交こそ、「戦後レジーム」ではないのか。侵略など国際的に広く共有された歴史認識への言及をひたすら避ける安倍氏の演説は、そんな皮肉を感じさせる。



2015年4月30日05時00分
② 安倍首相の米議会演説(全文)

 1 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731575.html

 訪米中の安倍晋三首相による米議会上下両院合同会議における演説「希望の同盟へ」は、以下の通り(日本政府発表の資料による)。

 ■希望の同盟へ はじめに

 議長、副大統領、上院議員、下院議員の皆様、ゲストと、すべての皆様

 1957年6月、日本の総理大臣としてこの演台に立った私の祖父、岸信介は、次のように述べて演説を始めました。

 「日本が、世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」

 以来58年、このたびは上下両院合同会議に日本国総理として初めてお話しする機会を与えられましたことを、光栄に存じます。お招きに、感謝申し上げます。

 申し上げたいことはたくさんあります。でも、「フィリバスター」をする意図、能力ともに、ありません。

 皆様を前にして胸中を去来しますのは、日本が大使としてお迎えした偉大な議会人のお名前です。

 マイク・マンスフィールド、ウォルター・モンデール、トム・フォーリー、そしてハワード・ベイカー。

 民主主義の輝くチャンピオンを大使として送って下さいましたことを、日本国民を代表して、感謝申し上げます。

 キャロライン・ケネディ大使も、米国民主主義の伝統を体現する方です。大使の活躍に、感謝申し上げます。

 私ども、残念に思いますのは、ダニエル・イノウエ上院議員がこの場においでにならないことです。日系アメリカ人の栄誉とその達成を、一身に象徴された方でした。

 ■アメリカと私

 私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼります。

 家に住まわせてくれたのは、キャサリン・デルフランシア夫人。寡婦でした。亡くした夫のことを、いつもこう言いました、「ゲイリー・クーパーより男前だったのよ」と。心から信じていたようです。

 ギャラリーに、私の妻、昭恵がいます。彼女が日頃、私のことをどう言っているのかはあえて聞かないことにします。

 デルフランシア夫人のイタリア料理は、世界一。彼女の明るさと親切は、たくさんの人をひきつけました。その人たちがなんと多様なこと。「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。

 のち、鉄鋼メーカーに就職した私は、ニューヨーク勤務の機会を与えられました。

 上下関係にとらわれない実力主義。地位や長幼の差に関わりなく意見を戦わせ、正しい見方ならちゅうちょなく採用する。

 ――この文化に毒されたのか、やがて政治家になったら、先輩大物議員たちに、アベは生意気だと随分言われました。

 ■アメリカ民主主義と日本

 私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。民主政治の基礎を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティズバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです。

 農民大工の息子が大統領になれる――、そういう国があることは、19世紀後半の日本を、民主主義に開眼させました。

 日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。出会いは150年以上前にさかのぼり、年季を経ています。

 ■第2次大戦メモリアル

 先刻私は、第2次大戦メモリアルを訪れました。神殿を思わせる、静謐(せいひつ)な場所でした。耳朶(じだ)を打つのは、噴水の、水の砕ける音ばかり。

 一角にフリーダム・ウォールというものがあって、壁面には金色の、4千個を超す星が埋め込まれている。

 その星一つ、ひとつが、斃(たお)れた兵士100人分の命を表すと聞いたとき、私を戦慄(せんりつ)が襲いました。

 金色(こんじき)の星は、自由を守った代償として、誇りのシンボルに違いありません。しかしそこには、さもなければ幸福な人生を送っただろうアメリカの若者の、痛み、悲しみが宿っている。家族への愛も。

 真珠湾、バターン・コレヒドール、珊瑚(さんご)海…、メモリアルに刻まれた戦場の名が心をよぎり、私はアメリカの若者の、失われた夢、未来を思いました。

 歴史とは実に取り返しのつかない、苛烈(かれつ)なものです。私は深い悔悟を胸に、しばしその場に立って、黙祷(もくとう)を捧げました。

 親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼を捧げます。とこしえの、哀悼を捧げます。

 ■かつての敵、今日の友

 みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。

 近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、おっしゃっています。

 「硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉をたたえることだ」

 もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のおじいさんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。

 これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。

 熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました。

 ■アメリカと戦後日本

 戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではありません。

 アジアの発展にどこまでも寄与し、地域の平和と、繁栄のため、力を惜しんではならない。自らに言い聞かせ、歩んできました。この歩みを、私は、誇りに思います。

 焦土と化した日本に、子どもたちの飲むミルク、身につけるセーターが、毎月毎月、米国の市民から届きました。ヤギも、2036頭、やってきました。

 米国が自らの市場を開け放ち、世界経済に自由を求めて育てた戦後経済システムによって、最も早くから、最大の便益を得たのは、日本です。

 下って1980年代以降、韓国が、台湾が、ASEAN諸国が、やがて中国が勃興します。今度は日本も、資本と、技術を献身的に注ぎ、彼らの成長を支えました。一方米国で、日本は外国勢として2位、英国に次ぐ数の雇用を作り出しました。

 ■TPP

 こうして米国が、次いで日本が育てたものは、繁栄です。そして繁栄こそは、平和の苗床です。

 日本と米国がリードし、生い立ちの異なるアジア太平洋諸国に、いかなる国の恣意(しい)的な思惑にも左右されない、フェアで、ダイナミックで、持続可能な市場をつくりあげなければなりません。

 太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはなりません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない。

 許さずしてこそ、自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、根づかせていくことができます。

 その営為こそが、TPPにほかなりません。

 しかもTPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があることを、忘れてはなりません。

 経済規模で、世界の4割、貿易量で、世界の3分の1を占める一円に、私たちの子や、孫のために、永続的な「平和と繁栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。

 日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し遂げましょう。

 2 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731572.html

 ■強い日本へ、改革あるのみ

 実は…、いまだから言えることがあります。

 20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。

 ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上がり、いまや66歳を超えました。

 日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。

 私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。

 世界標準にのっとって、コーポレート・ガバナンスを強めました。医療・エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身がやりの穂先となりこじあけてきました。

 人口減少を反転させるには、何でもやるつもりです。女性に力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。

 日本はいま、「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」のさなかにあります。

 親愛なる、上院、下院議員の皆様、どうぞ、日本へ来て、改革の精神と速度を取り戻した新しい日本を見てください。

 日本は、どんな改革からも逃げません。ただ前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。確信しています。

 ■戦後世界の平和と、日本の選択

 親愛なる、同僚の皆様、戦後世界の平和と安全は、アメリカのリーダーシップなくして、ありえませんでした。

 省みて私が心から良かったと思うのは、かつての日本が、明確な道を選んだことです。その道こそは、冒頭、祖父の言葉にあったとおり、米国と組み、西側世界の一員となる選択にほかなりませんでした。

 日本は、米国、そして志を共にする民主主義諸国とともに、最後には冷戦に勝利しました。

 この道が、日本を成長させ、繁栄させました。そして今も、この道しかありません。

 ■地域における同盟のミッション

 私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。

 日本は豪州、インドと、戦略的な関係を深めました。ASEANの国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていきます。

 日米同盟を基軸とし、これらの仲間が加わると、私たちの地域は格段に安定します。

 日本は、将来における戦略的拠点の一つとして期待されるグアム基地整備事業に、28億ドルまで資金協力を実施します。

 アジアの海について、私がいう三つの原則をここで強調させてください。

 第一に、国家が何か主張をするときは、国際法にもとづいてなすこと。第二に、武力や威嚇は、自己の主張のため用いないこと。そして第三に、紛争の解決は、あくまで平和的手段によること。

 太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければなりません。

 そのためにこそ、日米同盟を強くしなくてはなりません。私たちには、その責任があります。

 日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。

 この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。

 戦後、初めての大改革です。この夏までに、成就させます。

 ここで皆様にご報告したいことがあります。一昨日、ケリー国務長官、カーター国防長官は、私たちの岸田外相、中谷防衛相と会って、協議をしました。

 いま申し上げた法整備を前提として、日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組みができました。一層確実な平和を築くのに必要な枠組みです。

 それこそが、日米防衛協力の新しいガイドラインにほかなりません。昨日、オバマ大統領と私は、その意義について、互いに認め合いました。皆様、私たちは、真に歴史的な文書に、合意をしたのです。

 ■日本が掲げる新しい旗

 1990年代初め、日本の自衛隊は、ペルシャ湾で機雷の掃海に当たりました。後、インド洋では、テロリストや武器の流れを断つ洋上作戦を、10年にわたって支援しました。

 その間、5万人にのぼる自衛隊員が、人道支援や平和維持活動に従事しました。カンボジア、ゴラン高原、イラク、ハイチや南スーダンといった国や、地域においてです。

 これら実績をもとに、日本は、世界の平和と安定のため、これまで以上に責任を果たしていく。そう決意しています。そのために必要な法案の成立を、この夏までに、必ず実現します。

 国家安全保障に加え、人間の安全保障を確かにしなくてはならないというのが、日本の不動の信念です。

 人間一人ひとりに、教育の機会を保障し、医療を提供し、自立する機会を与えなければなりません。紛争下、常に傷ついたのは、女性でした。わたしたちの時代にこそ、女性の人権が侵されない世の中を実現しなくてはいけません。

 自衛隊員が積み重ねてきた実績と、援助関係者たちがたゆまず続けた努力と、その両方の蓄積は、いまやわたしたちに、新しい自己像を与えてくれました。

 いまや私たちが掲げるバナーは、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」という旗です。

 繰り返しましょう、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」こそは、日本の将来を導く旗印となります。

 テロリズム、感染症、自然災害や、気候変動――。日米同盟は、これら新たな問題に対し、ともに立ち向かう時代を迎えました。

 日米同盟は、米国史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢さを備え、深い信頼と、友情に結ばれた同盟です。

 自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。

 ■未来への希望

 まだ高校生だったとき、ラジオから流れてきたキャロル・キングの曲に、私は心を揺さぶられました。

 「落ち込んだ時、困った時、…目を閉じて、私を思って。私は行く。あなたのもとに。たとえそれが、あなたにとっていちばん暗い、そんな夜でも、明るくするために」

 2011年3月11日、日本に、いちばん暗い夜がきました。日本の東北地方を、地震と津波、原発の事故が襲ったのです。

 そして、そのときでした。米軍は、未曽有の規模で救難作戦を展開してくれました。本当にたくさんの米国人の皆さんが、東北の子供たちに、支援の手を差し伸べてくれました。

 私たちには、トモダチがいました。

 被災した人々と、一緒に涙を流してくれた。そしてなにものにもかえられない、大切なものを与えてくれた。

 ――希望、です。

 米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。

 米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。

 希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。

 ありがとうございました。



2015年4月30日05時00分 (社説)
③ 日米首脳会談 核廃絶へ、次は行動だ
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731462.html

 「広島、長崎の被爆70年において、核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こす」

 オバマ米大統領と安倍首相が、核不拡散条約(NPT)再検討会議に関して、共同声明を発表した。

 米国では原爆投下は正当だったという意見が根強い。そんな中、トップが核の非人道性に踏み込んだことは意義深く、核廃絶への一歩と評価したい。

 被爆国の日本は、もとより核廃絶の先頭に立つべき国だ。最大の核大国である米国と連携し、果たしうる役割は大きい。

 声明の背景には、NPTに基づく核不拡散体制が揺らいでいることへの危機感があった。

 非核保有国の間では、米ロ中英仏など核保有国の核軍縮のスピードが遅く、「核なき世界」への展望がいっこうに開けぬことへの不満が高まっている。

 日米両国はその実現に向けた努力を改めて宣言した。積極的に行動していく責任がある。

 声明は「即時に採らねばならぬ措置」として、米国とロシアの交渉を通じたいっそうの核削減をかかげた。さらに、議会の抵抗で米国が批准できていない包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効も挙げた。

 いずれも、当事国の米国がただちに着手すべき課題だ。

 ただ、楽観はできない。

 共同声明は、核軍縮はあくまで段階的に進められるべきだ、との考えを強調した。

 「核兵器は非人道的。だから国際法で明確に禁止しよう」とする一部の非核保有国の動きには距離を置くものだ。

 米国は核兵器を安全保障の根幹に据え、日本はその傘に依存する。にわかに非合法化に応じられないにしても、非核保有国側の失望は必至だ。

 NPT再検討会議では、核の非合法化が論点となりそうだ。日米としてもっと歩み寄る道を探ってもらいたい。

 一方で声明は、日米安保体制の核の傘のあり方には言及しなかった。

 オバマ政権は核兵器の役割低減に力を注ぐ。核保有の目的を「相手からの核攻撃の抑止」に限り、相手より先に核を使わないと約束する政策も視野に入れる。だが日本は核実験を繰り返す北朝鮮や、中国の核の脅威を理由に、「核の傘」の維持にこだわる方針を崩さない。

 核の脅しで身を守ろうとする発想を変えない限り、相手の核依存も変わるまい。

 核廃絶を実現するには「核の傘」からの脱却が不可欠だ。その具体的な道筋を、日本が率先して探っていく必要がある。



2015年4月30日05時00分 (社説)
④ 日米首脳会談 「和解の力」を礎にして
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731463.html

 戦後70年の日米首脳会談である。訪米した安倍首相とオバマ大統領がホワイトハウスで会談し、安全保障、経済の両面で、強い連携をうたいあげた。

 両首脳の共同声明では、こんな認識が示されている。

 「かつての敵対国が不動の同盟国となり、アジアや世界において共通の利益や普遍的な価値を促進するために協働しており、和解の力を示す模範となっている」

 70年前、米国を中心とする連合国との戦争に敗れ、占領された日本。そこから民主主義国として再出発し、憲法9条と日米安保条約を基盤に平和国家を築いてきた。

 その延長線上に、日米とアジアの未来を描けるか。まさに、和解の力が針路を定める原点でなければならない。

 両首脳が意識しているのは、大国化した中国の存在である。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の18年ぶりの改定は対中戦略の一環だ。

 両首脳が合意への決意を示した環太平洋経済連携協定(TPP)も、米国中心の国際秩序にいかに中国を組み込むか、という発想が根底にある。

 日米にとって中国は明確な敵ではない。経済の関係を深め、安全保障上の危機を回避するため、知恵を絞って向き合うべき相手である。必要なのは、やはり和解の力に違いない。

 今回の訪米で、米側が安倍首相の歴史認識に注目しているのも、そのためだ。米国や中国、韓国と共有できる歴史認識に立って、粘り強く地域の安定をめざすことが日本のリーダーには求められる。

 共同会見でオバマ氏は「日本の軍事力の展開にすぐに大きな変化があるとは思わない」と述べた。日米同盟の強化とあわせて「中国との軍同士の協力も強化したい」とも語った。

 同盟の目的は、地域の安定であり、中国と敵対することではない。そんな考えが鮮明に表れている。

 気がかりなのは、沖縄の普天間問題だ。辺野古以外の選択肢を模索しない両政府の姿勢は、日米安保の効果的な運用を妨げる可能性がある。

 首脳会談の開かれた28日は、沖縄にとって「屈辱の日」とされる。52年にサンフランシスコ講和条約で日本が主権を取り戻す一方、沖縄などが米国統治下に残された。首脳会談は沖縄を再び置き去りにする内容だったと言うほかない。

 この断絶を放置して同盟強化をうたってもむなしい。ここでも、和解の力が試される。



2015年4月30日05時00分 (時時刻刻)
⑤ 戦後の日米和解、強調 安倍首相、米議会両院で演説
     http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731552.html

 戦後70年の節目に訪米した安倍晋三首相が29日午前(日本時間30日未明)、歴代首相で初めて米議会上下両院合同会議で演説した。戦後日米の「和解」を強調し、安全保障や経済といったテーマで未来志向の関係構築を世界に呼びかけた。米国内の懸念もあるなか、「歴史認識」では踏み込んだ言及を控えた。▼1面参照

 ■祖父岸首相の演説引用

 「日本が世界の自由主義国と提携しているのも、民主主義の原則と理想を確信しているからであります」

 首相が演説冒頭で、58年前に祖父・岸信介首相が米議会で語った言葉から切り出すと、議場に集まった議員たちは総立ちで拍手を送った。首相が今回の演説に当たり、最も意識していたのが祖父だった。

 自由主義陣営と共産主義陣営の対立が激化していた当時、岸氏は「米国との提携こそ最重要だ」と強調。「日米関係の新時代の扉が開かれる」と演説した。そこに開戦への「おわび」はなく演説は「未来志向」で貫かれた。

 安倍首相も戦後70年の節目に迎えた今回の訪米で、周囲に米上下両院合同会議での演説に強い意欲をみせていた。演説の半ばで再び岸氏の言葉に触れ、「米国と組み、西側世界の一員となる選択」を「心からよかったと思う」と指摘した。

 演説は冒頭から、米国への親近感を前面に押し出した。「私個人とアメリカとの出会いは、カリフォルニアで過ごした学生時代にさかのぼる」と学生時代の思い出に触れた。

 政府は演説の実現に向け年明けからオバマ政権への打診を始め、米議会関係者にも接触した。3月上旬に首相のスピーチライターを務める谷口智彦・内閣官房参与が訪米して文面の調整に入り、帰国直後から演説内容の検討が始まった。今回の演説草稿には首相が何度も自ら手を入れた。

 日本との関係強化の好機とみたオバマ政権も演説実現に動き、ベイナー下院議長(共和党)が3月末、正式発表に踏み切った。だが、米政府や議会、メディアにも首相の「歴史認識」への懸念が出ていた。とりわけ合同会議は1941年の真珠湾攻撃を受けて、ルーズベルト大統領が対日宣戦を訴えた場所だ。

 演説では日米の「和解」の歩みを伝えることを重視し、首相は第2次世界大戦記念碑に刻まれた「真珠湾」や「バターン」といった戦場の名にもあえて言及。議場に硫黄島に上陸した米海兵隊中将と、日本側を率いた栗林忠道中将(後に大将)の孫の新藤義孝前総務相を招いた上で、「熾烈(しれつ)に戦い合った敵は、心の紐帯(ちゅうたい)が結ぶ友になった」とアピールし、日米の「和解」を演出した。

 ■歴史認識、米から牽制

 オバマ政権は、首相の歴史認識発言に神経をとがらせてきた。

 首相が靖国神社に参拝し、歴史認識をめぐる発言を繰り返すたびに、韓国は強く反発してきた。米の同盟国である日韓両国の反目は米の外交戦略を狂わせ、中国や北朝鮮を利することにもなりかねない。そこで、米国が首相に送り続けたメッセージは「和解」と「歴代首相による談話の継承」だった。

 4月上旬、日韓を歴訪したラッセル国務次官補は「(安倍)首相がきちんとした言葉と政治決断で過去の遺産に終わりを告げ、本当の和解を引き出せるよう励ましたい」と要請。国務省のサキ前報道官は「これまで村山富市元首相と河野洋平元官房長官が示した謝罪が、近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだった」と指摘した。

 また、オバマ政権内からは「首相の選択肢を狭め、身動きを取れなくしてしまうことは避けるべきだ」(政府高官)との声も上がった。かつての村山談話に盛り込まれた「植民地支配」や「侵略」、「おわび」など、具体的な文言を使うかどうかといったことには踏み込まずにきた。

 ただ、米国からの注文は首相による議会演説の直前まで続いた。

 首相は20日のBSフジの報道番組に出演し、村山談話や小泉談話に盛り込まれた「植民地支配と侵略」という言葉について、「もう一度書く必要はない」などと述べた。その直後、ローズ米大統領副補佐官は「米国は安倍首相に、過去の日本の談話と合致する形で歴史問題について建設的に取り組み、地域でよい関係を育んで緊張を和らげるよう働きかける」と牽制(けんせい)した。

 首相演説前日の28日には、米上院外交委員会が日米についての決議を採択した。決議は日米同盟の重要性をうたいながら、「安倍首相は、村山談話を含む歴代首相の歴史認識を維持すると繰り返し述べている」と念押しした。

 28日、日米首脳会談を終えて首相と一緒に共同記者会見に臨んだオバマ大統領は、南北戦争を経て米国に再び統一をもたらしたリンカーン元大統領に触れながらこう語りかけた。「リンカーンは、激しい紛争の後には和解が訪れると信じていた。過去は乗り越えられる」

 ■「安倍談話」にらみ準備

 今回の演説は首相がこの夏に出す戦後70年の「安倍談話」につながるものとされ、政権は周到な準備を進めてきた。

 2月には安倍談話に向けた有識者会議「21世紀構想懇談会」を立ち上げ、談話の方向性について具体的議論を始めた。3月末に演説が正式に決まると、菅義偉官房長官は「戦後70年の我が国の歩みを世界に発信する絶好の機会だ」と歓迎した。

 首相は訪米に先立つ4月下旬、ジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年首脳会議に出席。アジア・アフリカ地域の首脳らを前に演説し、第2次大戦を取り上げて「先の大戦の深い反省」に触れた。今回の演説でも、同様に「先の大戦に対する痛切な反省」に言及。さらに「自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」とした。

 首相の訪米や議会演説に対して、韓国系団体や韓国の国会議員らは反対の働きかけを強めた。だが、官邸はこうしたロビー活動について「米国内ではへきえきする空気がとても強い」と判断。アジアの「聴衆」を意識した言葉は必要最小限にとどめ、村山談話が表明した「侵略」や「おわび」といった言葉は使わなかった。(ワシントン=村山祐介、佐藤武嗣)

 ■ソフトパワー問われる日米 アメリカ総局長・山脇岳志

 今回の日米首脳会談には、二つの大きなテーマがあった。同盟強化と経済連携。両首脳が強く意識したのは、中国である。

 日米防衛協力の指針を改めるのは、南シナ海などで攻勢を強める中国を牽制(けんせい)する狙いもある。

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立についても、議論せずにはいられなかった。英独仏など57カ国が参加を表明、米国と日本は取り残された印象を与えた。

 中国が、軍事面のみならず、非軍事のアイデア、つまり「ソフトパワー」としても台頭しつつあることを象徴している。

 新アメリカ安全保障センター上級部長のパトリック・クローニン氏が注視するのは、その「物語性」である。「中国は、自らが未来の国である一方、日米を軍事力(ハードパワー)中心の過去の国にすぎないという印象を、世界に与えようとしている」

 日米の同盟強化は必要だが、軍事に注目が集まるのは「パーティーに銃を持ち込むようなもの」で、得策ではないという。実態は異なるのに自らをソフトパワーになぞらえる中国を利することになる、と。

 この首脳会談で、環太平洋経済連携協定(TPP)の日米交渉の妥結をアピールできたなら、与える印象は大きく異なるものになっただろう。世界の4割を占める経済圏で、環境や労働基準にも配慮した貿易ルール作りを主導することは、「中国対抗」を超え、世界的に広がりを持つ戦略になるからである。

 もし今後TPP交渉が漂流すれば、国際社会における日米のリーダーシップが問われることになる。

 今回の訪米で、もう一つ注目されたのは安倍首相の歴史認識である。

 安倍首相は、米議会での演説で、先の大戦に対する「痛切な反省」を表明し、「アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない」と述べた。歴代首相の歴史認識の継承も明らかにした。

 オバマ大統領は一連の歓迎行事で、携帯の「エモジ(絵文字)」から、ロボット、酒に至るまで、日本への親しみをちりばめた。

 日本の文化などのソフトパワー、平和国家としての戦後の歩みへの評価は高い。一方、安倍首相の「侵略の定義は定まっていない」といった過去の発言は、国際的なイメージを悪化させた。今後、発言のぶれをなくし、戦前の歴史を直視した上で戦後の成功を語ることが、日本のソフトパワーや外交力を高めることにつながるだろう。



2015年4月30日05時00分
⑥ 日米、同盟の意義アピール
    首脳会談・会見、何が語られたか
    http://digital.asahi.com/articles/DA3S11731494.html

 28日に首脳会談した安倍晋三首相とオバマ米大統領は、会談後の共同記者会見で、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定による同盟強化の意義をそろって強調した。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結にも、ともに意欲を示した。▼1面参照

   ■TPP

 TPPについて安倍首相は、会見で「なるべく早く国民的理解を得て、私とバラク(オバマ大統領)がリーダーシップを発揮して早期妥結を目指す」と明言。オバマ氏も「日米がTPPの2大経済国として、参加国を率いて迅速に合意に達したい」と、12カ国による早期合意に意欲を示した。

   ■AIIB

 オバマ氏は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、「我々は反対しているわけではない。借り手の国にとって良い結果をもたらすのなら支持する」と明言。一方で、「運営が悪ければマイナスの影響が出る」として、世界銀行など既存の国際金融機関と同等の透明性の確保を求めた。

 安倍首相は「持続性がないプロジェクトになれば、借り手の国にとって不幸な結果になる」と指摘。今後の対応について日米で協力しながら、中国側とも対話を続ける姿勢を示した。

   ■辺野古

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)については、安倍首相は首脳会談で、翁長雄志・沖縄県知事が名護市辺野古への移設に反対していることをオバマ氏に伝えた。日本政府によると、首相は「辺野古移設が唯一の解決策という自分の立場は揺るぎない」とも伝え、沖縄の理解を得るため対話を続ける考えを伝えた。オバマ氏は会見で「沖縄県の負担軽減を含めた米軍再編に取り組む」と話した。

 ■ガイドライン

 両首脳は、日米が戦後70年を経て、アジアだけでなく世界各地で諸課題の対処に協力する関係になったと強調した。

 ガイドライン改定については、オバマ氏は会見で「日本がアジア太平洋と世界で、より大きな役割と責任を果たすことになる」と歓迎。「我々は世界規模のパートナーだ」と訴えた。「我々は日本の軍事力がすぐに大きくなることを期待しているわけではない」とする一方で、また、過激派組織「イスラム国」(IS)支配地域からの避難民への人道支援や国連平和維持活動への参加などを評価し、「日本が引き続き新たな脅威に対応することを期待している」と話した。

 安倍首相も「日米は新たな時代を切り開いていく」と表明。ガイドライン改定や安保法制の見直しについて「『戦争に巻き込まれる』といったレッテル貼り的な議論が行われることは大変、残念だ」と話した。

 ■過去の克服

 太平洋戦争と戦後の日米関係について、オバマ氏は会見で、「日本は過去から困難な教訓を学び、平和を愛する国家になった」と指摘。安倍首相がアーリントン国立墓地を訪問したことに触れ、「過去は克服できること、かつての敵が最も緊密な同盟国になれることを安倍首相は示した」と語った。

 安倍首相は会見で、慰安婦問題で謝罪をするかどうかを問われ、「人身売買の犠牲になり、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々を思うと非常に心が痛む。河野談話を継承し、見直す考えはない」と答えた。

 ■対中・対ロ

 安倍首相は、中国を念頭に「いかなる一方的な現状変更の試みにも一致して断固反対する」と強調。オバマ氏も「我々は南シナ海における中国の埋め立てや建設活動への懸念を共有する」と表明した。尖閣諸島への日米安保条約の適用も改めて明言した。「秩序と平和を維持するための共通の取り組みに、中国を引き入れるようなやり方が必要だ」とも話した。

 ロシアへの対応で日米に温度差があるウクライナ情勢では、安倍首相が会談で「G7の連携を重視し、問題の平和的・外交的解決に向け、ロシアへの働きかけを含めて適切に対応していく」と説明。ロシアから招待されていた5月9日の対独戦勝70周年記念式典に欠席することをオバマ氏に伝えた。(ワシントン=五十嵐大介、村松真次、大島隆)