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折々の記 2016 ①
【心に浮かぶよしなしごと】

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  02 13 進む株安、黒田総裁は強気   株価激震の行方
  02 14 金融危機リスクが非常に高い   株価激震の行方

 02 13 (土) 進む株安、黒田総裁は強気     株価激震の行方

02 1002 11 に引き続いて、株価の激震は世界中の人々を不安の 坩堝つぼに陥れている。

今日の朝日新聞デジタルの中でDARKREDの文字の部分は留意したい部分です。 バックにはどんな思いがあるのか十分推量できるものは推量し、時間をかけて理解しなければならないと思われる個所です。

続いて今後の変化を注意深くチェックしていきたいのです。 黒田総裁や安倍総理の動きはモンスターの余波をどうしたらいいかの段階での対応方法の姿とみていいのではないかと思う。

果たしてどんな展開となるのだろうか?



朝日新聞 2016年2月13日05時00分
アベノミクス試練 進む株安、黒田総裁は強気
   「マイナス金利の影響ない」

      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12207315.html

写真・図版  【図版】左記の通り。
 【写真】省略(衆院財務金融委で質問に答える黒田東彦日銀総裁。左は麻生太郎財務相=12日、飯塚晋一撮影)

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」が大きな試練を迎えている。株高・円安をテコに企業の賃上げを実現し、デフレを脱却するという狙いに、金融市場の混乱が立ちはだかる。米国など世界経済の先行き不安の広がりに、日本銀行の金融緩和策も効果が薄く、世界的な政策協調による対応が頼みの綱(注、1)になってきた。

 「マイナス金利政策が影響しているとは全く考えていない」。日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は12日の衆院財務金融委員会で、この日の東京市場でも株安が進むなか、日銀の新政策との関係を否定する答弁に追われた。

 先月末に決めた新たな金融緩和策による株高・円安効果は、海外を主因とする市場の混乱ですでに帳消しになった。それでも黒田総裁は「(新政策の)効果は明瞭に出ている」と、世の中の金利水準が押し下げられて投資や消費が増える効果を強調。「直接に国民生活に大きなマイナスになるということは考えられない」などと言い切った。

 一方、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は11日の米議会公聴会で、「世界経済や市場の動向は金融政策のスタンスに影響を与えうる」と、3月の会合を前に利上げのペースを遅らせる可能性を改めて示唆したが、市場の混乱は収まっていない。利上げを強行すれば米景気を冷やすが、見送ったとしても「それほど米景気が弱いのか」との市場の思惑を招く。みずほ総合研究所の高田創氏は「2008年のリーマン・ショックのような大きな企業破綻(はたん)はないだろう」としつつも、「世界経済を先導する国がなくなってしまった状態」(注、2)と指摘する。

 東京都内の証券会社のディーラーはこぼす。「投資家は怖がって株に手が出せない。株安が止まる気配が見えず、車で言えば完全にスピード違反だ」(山下龍一、ワシントン=五十嵐大介)

 ■円高、賃上げにも影

 「1ドル=100円に行くかもしれない。いま考えても分からない(注、3)

 大手タイヤメーカー、横浜ゴムの野地彦旬(ひこみつ)社長は12日の記者会見でこう話した。同社が発表した16年12月期の想定レートは1ドル=120円。計画づくりの段階では「(121円の)15年実績よりも円安が進むと思っていた」(野地社長)。だが、12日の円相場は想定より8円近く円高の水準になった。同社では、円高が1円進むと営業利益が年1億円減る計算という。

 約3年にわたって続いてきた円安傾向が逆回転すれば、輸出企業の利益は急速にしぼむおそれがある。16年3月期に最高益を見込むトヨタ自動車も、円高が1円進むと年間の営業利益が400億円(注、4)押し下げられるという。

 本格化した春闘の賃上げ交渉にも、冷や水を浴びせそうだ。この日一斉に賃金改善の要求書を経営側に出した鉄鋼・重工メーカーの労働組合では、新日鉄住金の労組が16、17年度にそれぞれ前回要求額より500円多い月4千円の賃上げを要求。だが、要求書を受け取った同社の佐藤博恒・常務執行役員は「固定的、構造的な労務費増につながる施策は到底採り得る状況にない」と厳しい表情だった。

 トヨタ自動車労組の鶴岡光行委員長は12日の記者会見で、「会社はこうした急激な変化に危機意識を持ってくる。大変厳しい交渉になる」と語った。(伊沢友之、友田雄大)

 ■G20協調が焦点

 「我が国の経済の実態、足腰は極めてしっかりしている」。菅義偉官房長官は12日の記者会見でそう述べ、表向き強気の見方を崩さなかった。だが、安倍政権にとってアベノミクスによる株高や円安は、政権浮揚の「エンジン」。今夏に参院選を控え、政府高官は「これはリーマン・ショックに近い。中国発の金融危機だ」(注、5)と焦りを隠さない。

 実際、12日には、安倍晋三首相と日銀の黒田総裁が約5カ月ぶりに昼食をともにしながら会談。「世界経済の変調を受け、急きょセットされた」(首相周辺)。会談後、黒田氏は記者団に追加の金融緩和の可能性について問われ、「必要になればちゅうちょなく政策を調整する」と強調した。

 ただ、最近の金融市場の動揺は、中国経済の減速や原油安などの要因が絡み合い、日本政府や日銀の対応には限界がある。今月26、27日に中国・上海で開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での対応が、当面の焦点になる。

 「昨今の金融市場の状況をふまえた政策協調について検討を進めたい」。麻生太郎財務相は12日の会見で、各国と連携して対策を進める考えを示した。「市場の不安を払拭(ふっしょく)するようなメッセージを出したい」(財務省幹部)考えだが、各国の利害が絡み合うなか、明確で説得力のある具体策を打ち出すのは容易ではない。(鯨岡仁、石橋亮介)
(注、1)朝日新聞の記者はワシントンとの電話で状況判断をして、この記事を紙上に載せたのだろう。 マスコミでも金融激震の震源地はブラックモンスターのさしがねと判っているのだろうか。 判っていたとしても、書けば首が飛ぶからそれには触れず、お座なりの気の利いたような記事を書くのだろうか。

(注、2)みずほ総合研究所の高田創氏は金融政策を操るバックについて、知ってはいても言葉を濁してこの程度までの言葉ならいいだろうと判断しているのだろうか。

(注、3)横浜ゴムの野地彦旬(ひこみつ)社長はドルの崩壊がこれほどのスピードで襲いかかるとは考えていなかったのだろうか。 それとも、ドル崩壊を想定していなかったのだろうか。

(注、4)トヨタ自動車は、世界経済を動かしてきた大企業と政界癒着をイロハのイの一番として知っていた筈である。 株価1円の変化が年間営業利益が400億円というならば、金融システム変動がなぜ起こるのかあらゆる要因もわかっているに違いない。

(注、5)政府高官がいつまでも同じ次元でジタバタしていても規矩を正せない。 国民の被害責任を彼らは何ら請け負わないのだ。 政策決定の責任を選挙民と共有することはできないはずだ。 国民がこうむる負の代償をすべてうけとる覚悟があっての行動なのか?

 02 14 (日) 金融危機リスクが非常に高い     株価激震の行方

田中宇のニュースを開くと、ドル崩壊の波乱万丈の序曲が始まったとみていい。

人々の生活格差はますます大きくなる。 リーマンショックどころではない。 昭和初期のような不況に陥ると見たほうがいい。

すべての生活経費の節約が強いられる。 みんな貧乏な暮らしを覚悟したほうがいい。

どんな変化をたどるのか、克明に記憶しておいたほうが後々参考になる。



田中宇の国際ニュース解説
万策尽き始めた中央銀行
      http://tanakanews.com/160212bank.php

2016年2月12日   田中 宇

 私は以前から、日米欧の中央銀行が続けているQE(通貨大増刷による債券買い支え)など金融延命策がいずれ限界に達し、米国を中心とする金融システムがバブル崩壊し、ドルや米国債に対する信用が失墜し、米国の金融覇権が失墜するという長期予測を何度も書いてきた。08年のリーマン倒産以来、中央銀行による金融延命策の副作用として債券金利の低下、株価の高騰、円安ドル高、金地金相場の抑圧などが続いてきた。 (不透明が増す金融システム) (金融蘇生の失敗) (QEやめたらバブル大崩壊)

 だが、今年の正月以来、世界的に金融の混乱が加速し、それに対して日米欧の中央銀行が十分な対策(追加的な緩和策)をとれないことが明らかになり、混乱がさらに加速する事態になっている。ジャンク債の金利上昇、株価の下落、円高ドル安、金地金の上昇など、金融延命策の終わりを思わせる逆流の事態が起きている。私の予測の中の「延命策の限界露呈」が起こり、その結果「金融システムのバブル崩壊」が始まったと考えられる。 (ドルの魔力が解けてきた)

 年初来の世界的な金融混乱の加速については、1月13日の記事「ドルの魔力が解けてきた」に書いた。この混乱に対し、米国と欧州の中央銀行が打つ手を持たなかったため、日本銀行が対策を引き受け、1月29日に短期金利を下げて史上初のマイナス金利に踏み切った。このことは「日銀マイナス金利はドル救援策」に書いた。 (日銀マイナス金利はドル救援策)

 日銀がマイナス金利策を開始した時、私は、それによる株価押し上げや円安ドル高がしばらく続くのでないかと予測した。だが実際は、日銀がマイナス金利策を発表した後、日米の株価の上昇は2日間しか続かなかった。2月に入るとともに、日米とも株価が急落する傾向になっている。日銀のマイナス金利策の威力が大したことなかった理由は、世界の投資家が「日銀はもうQEを拡大できないので、次善の策としてマイナス金利をやった。QEは相場のテコ入れに効果があるが、マイナス金利は大した効果がない」と判断したからだ。欧州ではマイナス金利策が半年以上行われているが、利ざやの減少による銀行の経営悪化という悪影響が大きく、プラスの影響が少ない。 (Negative-Interest-Rate Effect already Dead, Central Banks Lost Control over Stocks)

 日銀は、自分たちの金融延命策を「バズーカ砲」と呼び、強さを誇示してきたが、いまや日銀の策の力は、バズーカ砲の水準から、短銃ぐらいの水準へと急速に低下した。いずれ水鉄砲ぐらいの威力にまで落ちそうだ。中央銀行による金融テコ入れ策の威力は、これまでより格段に落ちている。日銀は今後、金利をマイナスの方向に拡大していくかもしれないが、最初の一発が不振だったのだから、2発目以降も大した威力を持てないだろう。 (ECB unleash water pistols)

 年初来、為替相場で円高ドル安の傾向が復活していることも、日銀の金融延命策威力の低下を物語っている。14年秋に日銀がQEを急拡大して以来、QEが効果を上げるほど円安ドル高と株高になり、QEの効果に疑問が生じるほど円高ドル安と株安になる傾向が続いてきた。年初来の円高ドル安と株安の傾向は、QEに対して市場が疑問を呈していることを示している。市場の不信を払拭する策として、日銀がQEの拡大を実行できず、マイナス金利の開始でお茶を濁すことしかできなかったのを見て、市場は円高ドル安と株安を加速した。こうした為替相場の動きからも、日銀の威力の低下が見て取れる。 (Dollar falls against yen after Japan stops short of extra QE)

 米国の在野?の分析者が、なるほどと思えることを書いている。これまでは、世界的に不況がひどくなっても、投資家が「不況がひどくなると中央銀行群が緩和策を強めるので株高だ」と考えて株を買い増し、本来なら株安を招く悪いニュースが株高につながっていた。しかし最近、中銀群に追加の緩和策をやれる余力がなくなり、投資家はもう中銀に期待しなくなった結果、悪いニュースが文字どおりの悪いニュースとして受け取られるようになり、株価が下がっているのだという。日米などの株価は、この先4割ぐらい下落しても不思議でない。 (Central Bankers Losing Control, Now Bad News Is Actually Bad News.)

 中央銀行の金融延命力の低下を思わせるもうひとつの事態は、金地金相場の上昇だ。すでに何度も書いていることだが、金地金は、ドルや米国債を頂点とする債券金融システムの究極のライバルであり、リーマン危機後、中央銀行が金融延命策を強化した2011年以降、先物主導で相場を下落させられている。だが昨年末以来、世界不況や原油安の影響による株や債券の相場下落を中央銀行が止められない事態が露呈していくとともに、金相場が急速に反騰を始めている。 (Gold Price Chart) (Gold Soars To 12-Mo. High On Safe-Haven Demand As Markets Near Panic Mode) (操作される金相場) (通貨戦争としての金の暴落)

 これは一時的な上昇だろうか。そうでないと思われるふしがある。これまで金相場の下落を扇動してきた米金融界が、ここにきて金相場の上昇を相次いで予測しているからだ。バンカメのアナリストは、現在1オンス1240ドル代の金相場が、これから1375ドルか、ひょっとすると1550ドルまで上がりそうだとの予測を発表している。ゴールドマンサックスも、金相場がさらに大幅に上がると言っている。上昇傾向が今後も続く可能性が高い。 (Everyone Jumping On The Bandwagon: BofA Says To Stay Long Gold Until $1,375, "$1,550 A Possibility") (Scope For Gold To Extend Much Higher Than $1200 Over Time, Goldman Says)

 米国で連銀の策の裏側をよく見てきたロン・ポール元下院議員は昨年7月に「金地金が輝くのは、ドルが不換紙幣であることが完全に露呈した後だ」と述べ、米国の株価や債券バブルが崩壊し、ドルと米国債の基軸性が失われた後にならないと金相場は上昇しないという予測を発した。昨夏の時点で、米国のバブル崩壊の兆候はまだ存在せず、金相場の再上昇はかなり先の話だろうと私は書いた。しかし今、米国の株価や債券の相場が崩壊し始めるとともに、金相場が不気味な上昇を開始している。これはロンポールが言うところの「ドルが不換紙幣であることが露呈」していくドル崩壊の過程の始まりかもしれないと思える。ロイター通信ですら、中央銀行の信用失墜と金相場の上昇を関連づける記事を出している。 (金暴落はドル崩壊の前兆) (As Central Banks Dim, Gold Brightens)

 日銀のバズーカ砲は化けの皮がはがれ、水鉄砲になりつつある。他の中央銀行の「金融兵器」の状況はどうかといえば、米欧ともに怪しげだ。米連銀のイエレン総裁は2月10日、米議会で演説と証言を行ったが、世界経済は悪化しているが米経済は回復していると、相変わらずの主張を繰り返し、利上げ方向の政策をやめないと表明した。同僚である日欧の中銀が手がけるマイナス金利策については「効果があるかどうかわからない」と、否定的な見解を述べて突き放した。米金融界は、イエレンが利上げ姿勢を放棄して株価を反騰させてくれるのでないかという期待を裏切られ、失望売りで株価が急落した。 (Yellen warns global turbulence could hit growth)

 米国は、連銀も金融界も議会(共和党)も、マイナス金利にしたくないようだ。米国に資金を預けると利子がもらえるというのが、ドルの覇権の源泉であり、だからこそ昨年から連銀は時流に逆らって利上げ傾向に固執してきた。世界が大不況になったからといって、ドルの金利をマイナスにするわけにはいかない。議員がイエレンに対して「マイナス金利は違法じゃないのか。違法だろ」としつこく尋問し、合法性に関する疑問が完全に解けたわけでないという言質をイエレンから引き出している。米国は簡単に利下げに転じそうもない。 (Fed Chair Yellen Rattles Markets Citing Obstacles to Negative Rates) (Market Angry About Yellen's "Is NIRP Legal" Confusion)

 だが、連銀は日欧に頼れなくなっている。日銀のバズーカ砲は縮んでいる。欧州中央銀行が3月にQEを拡大するかもしれないという期待が金融界に渦巻いていると報じられていが、欧州中銀が「口だけ」であることは昨年から確認されている。欧州中銀は、マイナス金利のさらなる引き下げはやるだろうが、QE拡大はやらない。マイナス金利の長期化に伴い、欧州では現金廃止の政策が強められている。EUでは、5千ユーロ以上のやり取りを口座間取引で行うこと(現金取引の禁止)を義務づけるとともに、これまでの最高額紙幣である500ユーロ札の廃止をまもなく決定しそうだ。EUの盟主であるドイツが日本と似た現金社会で、これまで現金廃止の動きに反対してきたが、これ以上反対を続けられない事態になったようだ。マイナス金利が続くと、日本でも必ずや現金廃止論が勃興する。1万円札は非国民の持ち物であるかのようなプロパガンダが流布されるかもしれない。非国民は(素)敵だ。 (Scrap 500-euro banknote, EU anti-fraud chief says) (Harvard Economist Demands Ban On Big Bills To Make It "Harder On The Bad Guys")

 欧州も日本も、マイナス金利しかやれない。QEはすでに限界だ。中央銀行がQEの追加の買い支えの対象にできる債券がもう残っていない。今後、世界不況が加速し、追加の緩和策がどうしても必要になったら、それができるのは米連銀しかない。だが連銀は今後、再緩和(再利下げやQE再開)にしつこく抵抗し、遅すぎる時期になってようやく再緩和に踏み切り、市場を「遅すぎて効果がない」と失望させて終わる可能性が増している。 (Eurozone economists sceptical of more ECB asset purchases in 2016)

 世界不況は、今後まだまだ続くだろう。日米とも「景気回復」の歪曲報道は続くだろうが、実質的な不況は今後さらに悪化する。貧富格差も拡大が続く。米国では、長期国債と短期国債の利回りがほとんど同じになる「金利カーブのフラット化」が起きている。これは、この先景気が悪化して金利が下がる傾向だと予測し、利回りが高いうちに長期国債を買おうとする投資家が増え、長期国債の金利が低下しているからだ。債券市場も景気悪化を予測している。 (US yield curve narrows to 8-year low)

 米国で、泡沫候補だった共和党のトランプと民主党のサンダースが、両党の予備選挙の過程で他の主力候補たちを大きく打ち破って人気が急上昇している。その理由も、米国の一般市民の生活が悪化し、人々が貧富格差の拡大や米当局の経済政策に不満を持ち、それらの不満をすくいとるトランプやサンダースを支持しているからだ。米連銀の利上げ政策に反対する市民運動「Fed Up」も立ち上げられている。イエレンがこの先どこまで利上げ姿勢を維持して粘れるか(利上げ政策を撤回するのが遅すぎる事態になるか)が注目点になっている。 (Obama's true heir is Hillary Clinton. But that is a blessing for Bernie Sanders) (The next financial crash is coming. Which way will the world turn?) (Fed Up - Center for Popular Democracy)

 景気一般の悪化と合わせ、マイナス金利の拡大や金融相場の下落を受けた、世界的な銀行界の経営悪化も、今後さらにひどくなる。日銀のマイナス金利の開始で、世界的に銀行株の下落に拍車がかかった。マイナス金利が長引く欧州では、基礎体力が弱い中小銀行や、不良債権が多い銀行の経営破綻が、イタリアなどで連鎖している。世界最古(1472年創業)のイタリアの銀行「Monte dei Paschi di Siena」も破綻しかけている。 (Italy hit by banking crisis)

 世界最大のデリバティブ残高を持つドイツ銀行も破綻寸前だという見方が飛び交っている。ドイツ銀行が危ないという指摘は昨年からある。経営難なのは確かなようだが、米国の銀行界への懸念が強まる時に限って「ドイツ銀行が潰れそうだ」という指摘が出回る。米国の金融覇権を延命させるため、目くらましとしてドイツ銀行の危機を煽るプロパガンダが流布されている感じもする。米国のジャンク債を守るためにギリシャなど南欧の国債危機が扇動されてきたことを思い起こさせる。 (ユーロを潰してドルを延命させる) (Deutsche Bank is finished, Lehman Brothers 2.0)

 日米欧の金融界は、中銀群のマイナス金利に加え、原油安の煽りで米国のシェール石油産業の経営難がひどくなり、シェール産業のジャンク債を皮切りに社債の崩壊感が増していることの弊害も受けている。米国債の金利が低下する半面、ジャンク債の金利が上がり、バブル崩壊前に顕著になる金利格差(リスクプレミアム)の拡大が起きている。金利格差の拡大は、企業倒産の増加につながる(ジャンク債を低利で発行できれば倒産しない)。実体経済の景気悪化もあるので倒産企業が増え、貸し倒れの増加が金融界をさらに圧迫する。 (バブルでドルを延命させる) (国際金融の信用収縮)

 FT紙は先日「大きな金融危機が起きるリスクが非常に高い(the risk of a major storm is very high)」と現状を分析する記事を出した。この指摘はまったく当然だ。米金融覇権の失墜、世界体制の大転換が近づいている。 (Core long-term bond yields heading lower)


FT紙とは
      http://jbpress.ismedia.jp/category/ft
世界の金融市場が混迷を極め、経済の先行きに不透明感が増している。このコラムでは、金融、経済報道で突出した信頼性を誇る英フィナンシャル・タイムズ紙の記事をタイムリーに翻訳し、毎日1本お届けする。

ジャンク債とは
ジャンク債とは、格付けがBB以下の投機的要素が強い株のこと。通常、債権は格付け機関によって格付けがなされる。格付け機関によって、BBB以上の等級は「投資適格」に、BB、Ba以下の格付けの株は「投機的格付け」に分類されている。投機的格付けに分類される債権は一般にジャンク債(くず債)と呼ばれている。しかし一方で、「投機的格付け」の株は、株式に対する一年間の利益額(利回り)の高い社債であることからハイ・イールド債(高利回り債)ともよばれる。

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財部誠一の「ビジネス立体思考」 2016.01.20
中国経済大崩壊の危機が迫っている
      http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/100452/011900009/?P=1

 中国経済がのっぴきならない危機に陥っている。

 不況期には景気刺激策によって需要を拡大する従来の手法が通じない。2008年のリーマンショック直後、4兆元の景気刺激策で成し遂げた「V字回復の夢よもう一度」を期待する声もあるが、いまの中国にそんな余裕などあるはずもない。

* 中国国内からマネーが逃げ出している

 世界の工場として驚異的な高度成長を支えたのは、海外から流入した莫大なマネー(直接投資)だ。だが中国国内からマネーが逃げ出している。中国の外貨準備高は昨年、5千億ドル減り、23年ぶりに減少した。一説には中国からの資金流出額は月に1千億ドルを超えると言う。

「中国で稼いだ人民元を日本に持ちかえる手段は銀聯カードしかない。引き出し制限は1日1万元だったから、銀聯カードを複数使えば1年間に日本円で億単位のお金を海外送金できた。だが昨年9月、中国政府は引出しの上限を年間わずか15万元(約267万円)に制限。事実上、中国から資金が引き出せなくなった。昔の人民元に逆戻りだ」

 中国からの事業撤退を準備している日本人経営者の嘆きだ。

* バブル崩壊の予兆「キャピタルフライト」が始まっている

 昨年11月、IMF(国際通貨基金)は人民元をSDR(特別引き出し権)の構成通貨に採用した。ドル、ポンド、ユーロ、円と並んで、人民元を外貨準備として保有する国も増える可能性がある。

 中国はこれで人民元の国際化が一段と進んだと胸をはるが、国際化とは名ばかり。資本流出を食い止めるのに躍起だ。

 また通貨政策も中国は稚拙としか言いようがない。

 メガバンクの幹部はその一貫性のなさにあきれ顔だ。

「中国は昨年夏にはドル売り元買い介入の必死になったが、年明け早々には一転、元安目標を掲げる始末。稚拙だ。人民元安は資金流出ばかりか、海外からの投資も冷え込ませるのだから」

 キャピタルフライト(資本の逃避)はバブル崩壊の典型的な現象だ

* 中国経済が直面する構造的な問題

 バブルでさんざん膨れ上がった需要が雲散霧消し、死んだように動くなった過剰な生産設備と人員だけが取り残される。中国の鉄鋼生産は「余剰分が日本の粗鋼生産量の3倍」と言われるほど常軌を逸している。

 不動産の供給オーバー、過剰在庫も深刻だ。もはや需要を増やして、供給過剰を解消できる事態をはるかに超えている。祭りの後には激痛を伴う供給サイドの構造改革が避けて通れないのだ。

 あるエコノミストによれば中国はすでに構造改革に動き出しているという。

「習近平総書記は『中国経済が直面しているのは景気循環の問題ではなく、構造的な問題』であるため、従来通りの景気刺激策はもはや通用しないと力説した。習近平政権の最大の関心事は構造改革に移りはじめた」

 バブル崩壊後の構造改革がどれだけ厳しいか、我々日本人は身を持って知っているが、中国の構造改革は日本とは比べ物にならない異次元の困難を引き起こす。

* 中国共産党は構造改革ができない「構造」

「構造改革をやるというのは、イコール共産党をぶっ壊すということ。絶対にできないと思います」

 中国に精通するある事業家は、中国共産党は構造改革ができない「構造」になっているという。

「中国の主要な産業を担っているのは例外なく国営企業です。構造改革とは国営企業の整理、淘汰いがいの何物でもありません。国営企業のトップはみな共産党委員会の出身者であり、中国共産党の利権そのものです。それを排除することは絶対にできない」

 この事業家は1980年代から中国に滞在し、共産党の改革への取り組みとその失敗を見続けてきた。たしかに中国共産党内部でも国営企業改革はたびたび議論されてきましたが、根本的な改革には着手できずに来たという。

「国営企業改革は1990年代に当時の首相、朱鎔基さんから始まっています。株式市場の設立もじつは国営企業改革が目的だった。改革に必要な資金を市場から調達することだけしか考えていなかった。だから個人投資家の信用取引のルールもいい加減なもので、投資家保護の概念はいまもってない」

* 表面的な構造改革は新たな利権を生むだけ

 本来なら株を公開することで国営企業も市場原理にさらされ、いやでも構造改革の波にさらされるはずだが、社会主義体制の中で市場原理が働くはずがない。

 そうはいっても中国を代表するネットモール運営会社「アリババ」のような民間企業も出現してきたではないか、と思われる方もいるだろう。アリババはニューヨーク市場にも上場を果たし、共産党とは無縁の民間企業に見える。しかし実態は大きく異なると、前出の事業家は言う。

「中国共産党は出る杭を必ず叩きます。共産党と無縁ではいられません。アリババの創業者であるジャック・マーは浙江省の出身。浙江省はかつて習近平が党委員会書記を務めた所。国営企業とは対照的な民間のIT企業もまた政治臭が漂う。それが中国なのです」

 すべては共産党とともに、というのが中国の実状なのだ。中国のビジネスは国営企業でも、民間企業でも、すべて中国共産党の利権につながる。その利権をぶち壊すことなどできるはずがない。かりに表面的な構造改革の形をとることはできるかもしれないが、それはまた新たな利権集団を生むだけにすぎない。

* 中国が抱える究極のジレンマ

 構造改革か、中国共産党の崩壊か。究極のジレンマだ。当面、中国は一時的にとりつくろう弥縫策を繰り返すいがいに選択の余地はない。

 その結果、リーマンショックを超えるクライシスとなるのか、運よくソフトランディングをするのか。それはわからない。

 だがツケは必ず回ってくるというのが、歴史の教訓だ。

財部 誠一(たからべ・せいいち)

 1980年、慶應義塾大学を卒業し野村證券入社。出版社勤務を経て、1986年からフリーランスジャーナリスト。1995年、経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」設立。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして活躍。テレビ朝日系の『報道ステーション』、BS日テレ『財部ビジネス研究所』などに出演。近著に『メイド・イン・ジャパン消滅! 世界で戦える「製造業」をどう守るか』(朝日新聞出版)がある。
財部誠一のホームページはこちら。