折々の記 2016 ④
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 01 】04/17

  04 17 熊本地震   自然の大災害
  04 18 熊本地震   自然の大災害
  04 22 熊本地震   自然の大災害
       耕論 災害とコミュニケーション  現場のニーズに沿う支援か
       デジタル教科書解禁  2020年度の導入めざす
       天声人語  井山名人が七冠独占

 04 17 (日) 熊本地震     自然の大災害

朝日新聞デジタル>タイムライン>熊本地震 を開くと、(4月14・15日)と(・16日以降はこちら)、(・特集ページはこちら)に区分されて、時刻系列による【タイムライン記事】が詳しく報告されています。

ここには4月14日午後9時21分ごろの震度7の地震が発生から、4月15日までの朝日新聞が編集した記事が逐次載せられています。



朝日新聞デジタル > タイムライン > 熊本地震  2016/04/17
① タイムラン記事
      (4月14・15日)
      http://www.asahi.com/special/timeline/20160414-kumamoto-earthquake1/?sort=asc

   更新:2016年4月17日04時57分
   ▼新しい順 ▲古い順

<まとめ>
  ・ 14日、熊本で最大震度7の地震が発生
  ・ 震度7を観測したのは熊本県益城町
  ・ 震度7の地震は東日本大震災以来
  ・ 16日には震度6強の揺れを観測
  ・ 16日が本震、14日夜以降の地震は前震(気象庁)
  ・ 死者計41人に、阪神大震災級のM7.3

  ・ 16日以降はこちら
  ・ 特集ページはこちら

2016年4月14日(木)21時26分熊本など
   震度7の地震が発生
   4月14日午後9時21分ごろ、熊本県を中心に強い地震があり、熊本市で震度7を観測した。もっと詳しく

2016年4月14日(木)21時29分熊本市内
   画像  地震発生後、外に出た人たち=14日午後9時29分、熊本市内、福岡亜純撮影

以下略


きのう殆ど一日中熊本地震ニュースを視聴していました。 東日本の大震災に匹敵するような大自然の猛威の前におびえる人々を目にして、落涙を禁じえなかった。 恐ろしい魔の手に襲われたように心の底から震えあがりました。 悲惨に打ちひしがれます。 震災に出会っている人々の心は、どれほど怖かったことでしょうか、はかり知れません。

朝日新聞デジタル > 記事 2016/04/17
② 熊本・大分、強震続発 「本震」M7.3阪神級
      死者41人、9万人超避難
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12314438.html?ref=pcviewer

【画像】・山肌や崖が崩れ落ち国道57号を分断。阿蘇大橋も崩落した
      =16日午後3時2分、熊本県南阿蘇村、本社ヘリから、河合真人撮影
    ・熊本地震の主な被害 16日午後8時現在(地図表示)

 16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする強い地震があり、熊本市や同県南阿蘇村などで震度6強を観測した。推定マグニチュード(M)は7・3。阪神大震災(1995年)級で、気象庁は一連の地震の「本震」とする見解を示した。14日の地震について専門家は被害が局所的と指摘していたが、16日に相次いだ余震の震源域は熊本地方から阿蘇地方や大分地方にも広がり、被害が拡大した。

 本震後に、他の地域で別々に規模の大きな地震が発生し、気象庁も異例の事態という見解だ。熊本県阿蘇地方では、16日午前3時台にM5・8の地震が2回発生。大分県中部でも午前7時すぎにM5・3の地震が起きた。

 14日の被害が主に熊本県に限られていたのに対し、今回は熊本、大分、福岡、佐賀の各県で建物倒壊や土砂崩れなどが発生。熊本県警によると、16日午後8時55分までに熊本県で32人の死亡が確認された。14日以降の死者は41人となり、重傷者は184人にのぼる。

 熊本県の南阿蘇村や西原村は16日未明の地震で甚大な被害が出た。南阿蘇村では東海大学農学部の学生らが住むアパートが倒壊して約10人が一時下敷きになったほか、地震で阿蘇大橋が崩落。西原村でも住宅の倒壊で死者が出た。

 熊本県内では他の自治体でも被害が相次ぎ、県警の16日午後4時現在のまとめでは、110番通報は生き埋めや下敷きが44件、家屋倒壊の閉じ込めが123件、火災が9件。熊本市消防局は同日午後5時までに同市中央、東、南、北の各区と益城(ましき)町で計6人を心肺停止状態で救急搬送した。

 熊本県内で死亡した41人のうち、身元が判明した39人の大半は家屋倒壊による圧死や窒息が原因だった。

 被害の広がりに伴い、いったん減少した避難者数も再び急増。同日午後2時半現在で、約9万2千人が計686カ所の避難所に身を寄せている。

 九州電力によると、14日の地震後は停電が1万4500戸から1万2300戸まで減っていた。ところが本震後の16日午後5時現在で約10万4千戸が停電。水道施設では、熊本市をはじめ、県内で約37万3600戸が断水している。

 熊本県以外にも被害は広がり、一部損壊などの建物の被害は福岡県で206件、大分県13件、佐賀県1件などで、各県でけが人も出た。気象庁によると、熊本県などでは、17日明け方にかけて雷を伴って激しい雨の降るおそれがある。

 ■14日以降の地震回数

   震度7    1
     6強    3
     6弱    3
     5強    1
     5弱    6
       4   54
    3~1  279
       計347
    (16日午後11時現在。14日の震度7の地震以降。気象庁調べ)


朝日新聞デジタル > 記事 2016/04/17
③ (天声人語)山岸章さん逝く
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12314444.html

 どうせ拾った命。これからは付録の人生だ――。敗戦を迎えた時の山岸章(やまぎしあきら)さんの気持ちは、当時の多くの日本人と重なっていたことだろう。海軍の特攻要員として九州の航空基地にいた

▼遺書を書いて髪の毛と爪を封筒に入れろと、上官から言われた。来年の正月に生きているだろうかと同期で話せば「ダメだろう」とみなが答えた。身内への汚名をおそれ脱走もできない。異常な状態を体験したことが、後の「捨て身戦法」につながったと著書で述べている

▼若くして労働運動に加わり、NTTの前身である電電公社の労組トップにのぼりつめた。総評と同盟で対立していた労働運動の統一に心血を注ぎ、1989年の連合結成にこぎつけた。そこから政界再編を仕掛けた労働界の巨人が、86歳の生涯を閉じた

▼連合会長時代は「政治に偏りすぎだ」と言われたが、「政治も労組の任務の一つ」と意に介さなかった。各党と渡り合い、非自民の細川連立政権をもたらした

▼日本の労組の組織率は、70年代から低下の傾向にある。弱まりつつある影響力を束ね、一世一代の大立ち回りをしたのが山岸さんだったのだろう。統一した頃の連合の存在感は絶大で、自民一党支配を破る起爆剤となった

▼しかし、その後の労働運動を十分に起爆することはできなかった。政権が企業に賃上げを求めるような昨今に、生前の山岸さんが苦言を呈していた。「まるで安倍首相が連合会長を兼務しているようだ」。無念さは、いかばかりであったろう。


 04 18 (月) 熊本地震     自然の大災害


朝日新聞デジタル > 記事 > 熊本地震  2016/04/18
熊本、11万人避難 死者42人・不明10人前後
      食料や水、行き渡らず
      http://www.asahi.com/special/timeline/20160414-kumamoto-earthquake1/?sort=asc

写真・図版  土砂崩れで倒壊した宿泊施設の周辺で、行方不明の宿泊客2人を捜索する警察官や自衛隊員ら
        17日午前10時25分、熊本県南阿蘇村、本社ヘリから、河合真人撮影

 熊本県を中心に相次いでいる地震で、警察は17日、同県南阿蘇村で安否確認のできない人が10人前後いることを明らかにした。家屋が倒壊した現場などでは捜索が行われ、同村では1人が心肺停止状態で見つかり、その後、死亡が確認された。揺れの大きな余震も続いており、県内では約11万人が避難生活を余儀なくされている。17日午後9時50分までに県内で確認された死者は42人、重傷者は201人となった。

 気象庁によると、熊本県内で震度7が観測された14日夜の地震以降、マグニチュード(M)が3・5以上の地震は17日午後1時半までに165回発生した。1995年以降の地震で最多という。

 熊本県によると、地震で全壊した住宅は少なくとも400棟に上り、阿蘇地区に集中。半壊や一部破損などを含む住宅被害は2千棟以上になった。

 余震も続いているため、自宅に帰れない人も多く、同県によると、17日午後2時半現在、小中学校など計723カ所に約11万人が避難。避難者の数は熊本市(人口約74万人)が最も多く、約5万人と県内の避難者の半数近くを占めている。道路の不通などで物流網が乱れ、水や食料が十分には行き渡っていない避難所もある。大分県内では約1千人が避難した。

 熊本県内では、ライフラインの寸断も続き、17日午後3時現在で熊本市や益城(ましき)町、西原村など県内の約27万戸で断水が続いた。うち約18万5千戸を占める熊本市では18日中の完全復旧をめざすという。

 九州電力によると、17日午後11時現在で県内の3万5400戸が停電しているが、被害の大きい阿蘇地区などを除き、18日未明までに復旧する見通しだ。都市ガスの西部ガスが供給する熊本市など県内10万5千戸でガスの復旧のめどが立っていないが、LPガスについては、一部自治体以外はほぼ復旧しているという。

 交通機関の乱れも解消していない。JR九州は一部を除いて18日も熊本県内での在来線の運転を見合わせる。脱線した九州新幹線の運転再開のめどは立っていない。熊本県内と各地を結ぶ高速バスも高速道の不通で運転を見合わせている。熊本空港も空港ビルが壊れて閉鎖している。

 学校関係では18日、校舎の損壊や鉄道などの運転見合わせにより、県内の公立小中高校の約7割にあたる計389校が休校する。


 04 22 (金) 熊本地震     自然の大災害


朝日新聞デジタル > 記事 > 熊本地震  2016/04/22
熊本、大雨、新たな避難指示
      停電ほぼ解消、断水続く
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12322297.html

写真・図版  南阿蘇村の避難所から大津町の避難所へ移ったものの、すでにいっぱいで別の避難所に再び移動
         することになり、警察官に手助けされバスに向かう住民
         21日午後1時28分、熊本県大津町の町総合体育館、竹花徹朗撮影

 熊本県を中心に甚大な被害をもたらした一連の地震発生から1週間を迎えた21日、同県内では大雨警報や洪水警報が発令された。23市町村が少なくとも約29万人に避難指示や避難勧告、避難準備情報を出し、避難先を変更した被災者もいた。南阿蘇村では安否不明者の捜索がいったん中断された。

 ▼2面=支援手探り、3面=住宅支援急ぐ、11面=半導体 見えぬ回復、16面=社説、17面=耕論、34面=文化財の復旧は、38面=我が家が怖い、39面=避難所転々

 21日午前2時~午後7時50分の降雨量は、南阿蘇村で112ミリを記録。地震によって土砂災害が起きる恐れがあるとして出されていた避難指示に続き、一部地域に新たに避難指示が出され、同村河陽の高野台地区では同日未明、24時間態勢で続けられてきた捜索が中断された。同じ時間帯に益城(ましき)町では89ミリ、熊本市で75・5ミリなど、まとまった雨を観測。同市北区の小学校の避難所は隣接する壁が崩れる恐れがあるとして閉鎖され、避難者約400人は別の公共施設へ移った。南阿蘇村立野では、避難所が土砂災害に巻き込まれる恐れが強まったとして、約130人が隣の同県大津町にある体育館に移った。

 熊本県などによると、21日現在の地震による死者は48人。これとは別に、避難生活の疲労などが原因の「災害関連死」の疑いがある死者が10人いる。県は20日には11人としていたが、修正した。熊本県内には21日午後1時半現在、39市町村に650カ所の避難所があり、計約9万人が避難している。県内の住宅被害は全壊1495棟、半壊1377棟となっている。

 県内では電力が21日までにほぼ復旧。ガスは10万戸超で止まったままで、水道も一部で断水が続く。

 JR九州は21日、新水俣―鹿児島中央間のみで運行している九州新幹線について、早ければ23日にも博多―熊本間で運行再開するとの見通しを明らかにした。

 一方、県は21日、県内全域で被災者生活再建支援法を適用することを決め、市町村で手続きを始めた。住宅の被害程度に応じ、世帯ごとに50万~100万円を支給するほか、住宅建設や賃貸住宅を借りる際に50万~200万円を支給する。

 益城町では21日、災害ボランティアセンターが開設され、全国から訪れた200人が避難所での食事の準備や清掃に携わった。22日には熊本市でもセンターが開設される予定だ。

 気象庁は21日、一連の地震の名称を「平成28年(2016年)熊本地震」にすると発表した。

 ■被害状況(九州全県)

 <人の被害> 

     死者       48人
     関連死疑い   10人
     安否不明     2人
     負傷者    1159人
     避難者  9万242人

 <建物>

     全壊・半壊 2872棟

 (21日午後6時半現在。警察、熊本県などの発表を元に作成。死者、災害関連死疑い、安否不明、建物は熊本県内)


耕論
 災害とコミュニケーション 
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12322156.html?ref=pcviewer

現場のニーズに沿う支援か 片山善博さん(慶応大学教授〈元総務相、前鳥取県知事〉

 現場、つまり市町村と中枢部の意思疎通がとれているのかが気になります。

 災害が起こるのは地域。どこで被害が出て、道がどう通じていて、寸断されたらどうする、どこに自主避難所があるのかといった現場の情報は市町村にしか分かりません。

 市町村は非力だといわれます。確かに、行政改革の負の側面で職員を減らしているので対応力は落ちているでしょう。だからこそ、県や近隣から人を送るなど、市町村の要望に応じた支援が必要です。

 心配しているのは、現場の情報に対応する仕組みができていないのではないかという点です。政府もほかの自治体も、数十万食を送るとか、うちは全国に先駆けて何々隊を送ったとか、その善意からの支援が現場の求めに応じたものになっていればいいのですが。(先回りして早めに物資などを送る)「プッシュ型」支援は、災害に際して、政治家が批判をされたくないという強迫観念、できれば得点を稼ごうとしている側面がないでしょうか。

 かつてのソ連の計画経済のような方式ではうまくいきません。現場からのニーズ、要望を受け止め、それに基づいて支えなければなりません。情報はいわば血液です。

 私が知事になって2年目に経験した震度6強の鳥取県西部地震の際は、地震発生直後に災害対策本部を立ち上げてずっと居続け、2カ月ほど知事室には戻りませんでした。県幹部に加え、自衛隊や当時の建設省の出先の方も来てくれ、一緒に対処しました。

 「役所ごとの縦割り」に陥らないためには、出先機関も一緒に現場の情報を聞き、問題を把握するのが一番良いんです。テレビ会議は一度もありませんでしたが、彼らが、それぞれの本庁に連絡してくれました。

 実は、メディアの方も最初から最後までずっと出入り自由でした。「ガラス張りの災害対策本部」と言った人がいましたが、間にはガラスすらなかったのです。記者会見を開かなくても、素早く必要な情報を伝えていただけました。

 日本初になった個人の住宅の再建支援に取り組むことを決めたのも、実際に町役場の職員から涙ながらの訴えを受け、被災した方たちとお話をしたからです。個人の資産に公費で支援することはハードルが高かったのですが、すぐに霞が関に出向き、「財政上のルールでできない」「憲法に違反する」という国を説得して、一律300万円の支給を決め、記者会見して発表しました。会見はそれぐらいでした。

 まず、何よりも現場からの情報を重視する。県や国は市町村の代わりに何かをするのではなく、市町村を下支えることに徹するのが肝要です。(聞き手・池田伸壹)

     *

 かたやまよしひろ 51年生まれ。旧自治省を経て鳥取県知事、総務相などを歴任。著書に「市民社会と地方自治」「日本を診る」など。


デジタル教科書解禁
 災害とコミュニケーション
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12322295.html

文科省、2020年度の導入めざす

 小中高校で使われる教科書について、文部科学省はデジタル化を解禁する方針を固めた。紙をデジタルにすることで、音声や動画機能を持つ補助教材と一体で学べる利点があるという。2020年度からの導入をめざす。22日、有識者会議に案として示す。

 紙の教科書と同じ内容の電子データを「デジタル教科書」とし、タブレットやパソコン端末などを使って授業を受ける。デジタル化することで、文字を拡大して色をつけたり、一部を切り出して保存したりできる。文字が見にくいなど障害のある子どもたちが使いやすい教科書とするのも目的の一つだ。

 デジタルの補助教材と組み合わせることで、英語の発音を聞いたり、人体内の食べ物の動きを動画で見たりできるのも利点。インターネットに接続し、わからないことをその場で調べることも可能だ。こうした「追加機能」は国の検定対象とせず、各市町村の教育委員会などの判断で教科書会社が追加する形にする。

 どの程度使うかは教委が決める。文科省は、1教科全てをデジタルで学ぶのではなく、追加機能が役立ちやすい一部の単元などでの使用を想定している。

 一方、コスト面が課題になりそうだ。文科省は端末などに必要な費用を無償化しない方向で検討。自治体が全額補助しなければ、各家庭の負担となる可能性がある。すでに教科書の内容をタブレット端末に移し、音声や動画機能を持つデジタル教材はあるが、端末代を含めて10万円以上となるケースもあるという。ネットを使う際は、不適切な情報に触れさせない工夫なども求められる。

 文科省は来年の通常国会をめざし、教科書を紙の本であることを前提とする学校教育法などの改正案を提出したい考えだ。(高浜行人)

【下平・記】ウヒャー ! もう4年後だ !!  0歳教育での対応も忙しいことになった !!


天声人語
 災害とコミュニケーション 
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12322294.html

井山名人が七冠独占

 その天才少年の囲碁を最初に見たときの驚きを、石井邦生九段が著書に記している。6歳の彼は盤の向こうに手が届きにくそうで、イスから立って打つ。その早いこと。相手の一手に間髪入れず打ち返し、大人を次々と破った

▼弟子にすると決めるが、住み込みも通いも難しそうだと、行き着いたのが電話回線を通じたネット対局だった。距離はあっても、濃密な指導。ネット時代の申し子といえる26歳の井山裕太名人がおととい、史上初の七冠独占を決めた

▼「打ちたい所へ打つ」のが信条という。ときに相手の強い所に踏み込む危険を冒す。負けが決まったかに見えて、勝負をひっくり返す。その逆転力は今回も、十段戦の挑戦者を決める一戦で発揮された

▼旧タイトル制で六冠を達成した故坂田栄男九段は「碁はマラソンのようなものである」と書いた。序盤、中盤、終盤のそれぞれにいくつかのヤマがあり、最後まで勝負が分からないことも多い。井山名人も持久走を一つずつ制してきた

▼しかし世界はまだその先にある。日本勢に抜きんでた実力があった時代はすでに遠く、中国勢や韓国勢に水をあけられる。「究極的には世界で一番強くなりたい」と言う井山名人に、期待が高まる

▼人工知能も、競争相手に加わる。先月は世界最強のプロ棋士の一人を負かし、衝撃が広がったばかり。脳科学者の茂木健一郎さんの「井山名人ならば、最強の人工知能にも勝てるかもしれない」との言葉はいまや、最高のエールかもしれない。


井山7冠達成
 災害とコミュニケーション 
      http://mainichi.jp/articles/20160421/k00/00e/040/241000c

師匠の石井邦生九段「ずぬけた才能」

 関西在住の棋士が7冠独占を果たした意義を、井山の師匠の石井邦生九段(74)に語ってもらった。【新土居仁昌】

 出会ってちょうど20年。振り返れば、井山は勝手に強くなった。私は「名伯楽」と呼ばれることがあるが、型にはめ込まず、才能をつぶさなかったのがよかった。

 棋士の人数や対局のレベルなど、現在でも東京にはかなわない。昔はさらに差が大きく、私や井山が所属する日本棋院関西総本部は長い間タイトルを取れず、関西棋院にも大きく遅れ、最弱だった。

 私より1年早く入段(プロ入り)した林海峯(りんかいほう)九段(73)=名誉天元=は六段に昇段した1960年に関西総本部から東京本院に移り、大活躍した。周りに強い人がいなければ、よほどの天才でない限り、トップに立てるものではなく、「東高西低」の時代が続いた。

 ただ、今は最新戦法を入手する手間などの情報格差はなくなった。井山も約1000局の「ネット対局」で基本を鍛えた。それでも、関西にいながら頂点を極めたことは、ずぬけた才能を示している。

 国際棋戦でもある程度の実績を上げ、井山は世界一強いと思っているが、7冠を達成したこれからが真価を問われる。