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折々の記 2016 ④
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】04/17~ 【 02 】04/25~ 【 03 】04/27~
【 04 】05/01~ 【 05 】05/02~ 【 06 】05/04~
【 07 】05/05~ 【 08 】05/05~ 【 09 】05/07~
【 03 】04/27
04 27 パナマ文書、日本の人・会社400 お金の醜聞
日本企業・個人は 会社購入、香港業者が助言
04 28 タックスヘイブンの水割り 天声人語
03 09 籾井NHK会長の醜聞 籾井NHK会長、また不適切発言
02 13 国谷キャスター降板と後任決定の一部始終
参考記事:WEBRONZAクローズアップ現代・国谷さんの降板理由 WEBROZAの記事
国谷裕子さん、岸井成格さん…一連の降板騒動は偶然ではない WEBROZAの記事
[7]NHK問題にみる政権独裁化説 WEBROZAの記事
「集団的自衛権」菅官房長官に問う 2014/07/13 クローズアップ現代
04 27 (水) パナマ文書、日本の人・会社400 お金の醜聞
ICIJ提携記事 2016年4月27日
パナマ文書、日本の人・会社400
中国ビジネス関連、目立つ
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12330287.html
各国の指導者や親族らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用していた実態を暴いた「パナマ文書」のうち、日本に関係するデータを朝日新聞が分析取材したところ、事業者が中国でのビジネスに関し、英領バージン諸島に会社を設立していた事例が目立った。資産を運用する目的で個人が設立した事例も多かった。▼3面=税回避危うい利用
タックスヘイブンに会社を設立することは違法ではない。ただ、ネットで手軽に設立できることから名義貸しとみられる事例も目立つ。無断で名前を使われたケースもあるなど、危うさも浮き彫りになった。
パナマ文書は、会社設立の手助けをするパナマの法律事務所が作成した21万余の法人に関する電子ファイル。200余の国・地域に住所を置く延べ37万の株主や役員らの名前が含まれる。
南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が各国の提携報道機関とともに分析や取材を進めている。
株主や役員らのうち日本に住所があったのは約400。重複や外国人らしき名を除くなど精査した結果、日本企業は少なくとも約20社、日本人とみられる個人は約230人を数えた。
タックスヘイブンに会社を設立した理由を尋ねたところ、「資産や利益を移すため」「中国政府の規制を避けるため」「日系企業であることを中国の消費者に知られないようにするため」などの回答があった。
飲料大手の社長は2000年にバージン諸島の二つの会社の株主になっていた。広報担当者は「日本の税務当局に求められた情報は開示している。租税回避が目的ではない」と話す。大手警備会社の創業者2人の名前もあった。1992年、それぞれバージン諸島の別々の会社の株主に就いていた。同社の広報部は「租税回避の事実はない。法律専門家から意見を得た上で行われ、適法性も問題ない」と回答した。
ビジネスで活用する上場企業もあった。大手エンジニアリング会社はイラン企業からの依頼で、ガス処理プラント事業の合弁会社をバージン諸島に設立した。だが、米国によるイラン制裁の強化で事業は頓挫。出資は実現せず、登記も抹消したという。同諸島に3社を保有していた大手商社は「法人の設立や清算が簡単にでき、効率的な運営ができるため」という。
世界では50余の国で12人の現旧首脳を含む公職者140人がタックスヘイブンの法人に関わっていたことが判明、政治問題化している。日本では今のところ、公職者は見つかっていない。
ICIJは5月10日午前3時、パナマ文書に含まれる21万余の法人の名前、それらの役員、株主の名前などを公開する方針
3面=税回避危うい利用
日本企業・個人は 会社購入、香港業者が助言
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12330202.html
【図表】 パナマ文書からみえた日本人のタックスヘイブンの主な利用例
1 中国と取引がある会社や事業主がペーパー会社を設立するケース
⇒ 中国ビジネスの進出・撤退が容易
2 資産運用をしたい個人が設立するケース
⇒ 匿名性を保ち、海外投資。有利な税制も
3 ペーパー会社の株主として名義を貸したり、勝手に使われたりしていたケース
⇒ 脱税などの犯罪に悪用される恐れ
闇の中だった「タックスヘイブン」の利用実態を明らかにしたパナマ文書。日本関連データからは、海外でのビジネスや資産運用など様々な利用例が見つかった。転売されるペーパー会社を使う日本人も目立つが、過度な「節税」には落とし穴も待ち受けている。▼1面参照
◆ タックスヘイブンの会社を、中国ビジネスで利用するのはなぜか。
英領バージン諸島に会社を所有する貿易会社の社長(44)は「中国に進出しやすく、撤退しやすいためだ」と説明する。中国本土に投資しようとすると、「地域ごとに会社を設立しなければならず、会計基準や税制も日本とは違う。雇用法制も複雑ですぐに撤退できない」。このため、タックスヘイブンの会社を購入して使う手法が普及。「香港の会計士や弁護士もそう助言する」
◆ 香港には、登記済みのペーパー会社を転売する業者が多数あり、日本語でのやり取りも可能だ。
家具を輸入販売していた西日本の男性(62)は2011年、バージン諸島にある会社を十数万円で購入した。中国の取引先から、送金先の銀行口座を香港に作ってほしいと頼まれたからだ。ネットで大手銀行の口座付きのペーパー会社をあっせんする業者を検索。複数の社名が並ぶリストから選んで決めた。男性は「送金窓口として会社を購入しただけ。香港に法人を作るとお金がかかることもあり、安く済むタックスヘイブンにした」と話した。
関西の自営業の男性(64)は5年前、中国のある国営企業幹部から輸入代理会社の仕事を持ちかけられた。男性によると、幹部はロシアから重油を買い付ける際、輸入代理会社に仲介料を落として自分の懐に入れる計画だったという。
男性は、バージン諸島のペーパー会社をネットを通じて約10万円で購入。ペーパー会社にためた金は「幹部が直接香港に取りに来る」との約束だったが、中国景気の減速もあり、輸入話そのものが立ち消えになったという。
都内に本社がある美容グループは15年10月、カリブ海のアンギラ島に会社の法人を登記した。ちょうど北京で中国1号店の開店を準備していた頃で「日本の店であることがわかると、日本たたきが起きた際に標的になると懸念した」(担当者)。ただ、社内で反対意見が出て最終的に投資をやめた。今は「法人の登記だけが残った状態」という。
海外の税制に詳しい税理士は「バブル崩壊後、日本の富裕層がタックスヘイブンに資産保全の会社を作るようになった。ただ、最近はOECD加盟国が外国人の口座情報の共有に乗り出すなど監視の目は厳しくなり、利点は少なくなっている」と指摘する。(沢伸也)
◆ 調査受け2億円追徴課税
節税目的で、タックスヘイブンに会社を設立する事業主や個人は多い。ただ、思わぬ落とし穴もある。
「もうタックスヘイブンに会社は作らない」とこぼすのは、関西でアパレル会社を父から継いだ男性(56)。
08年、商社などとの取引を管理するペーパー会社をインド洋のセーシェルに家族らと共同で設立した。上海のコンサルタント会社に「国外取引は非課税」と勧められ「利用しない手はないと思った」。ペーパー会社には毎年約10億円の取引があった。当初、たまった利益は家族らに配当金で還元する計画だった。
仲介業者からセーシェルの会社の口座が近く凍結されると伝えられ、4年前、会社を香港に移転。その直後、日本で国税局の税務調査が入った。売り上げや仕入れ高の数字の矛盾から申告漏れを指摘されて、約2億円の追徴課税処分となった。
都内でアパレル業を営む男性(60)は朝日新聞の取材に「中国人の会社に名義を貸した」と打ち明けた。
バージン諸島に08年に設立された会社の役員になった。「知り合いの中国人から『香港に貿易会社を設立するので名前を貸してほしい』と言われて貸した」と話す。書類に署名はしたが、株主登録に必要なパスポートなどを提出した記憶はないという。男性は「中国人がドルを貯金するために、海外に会社を作ることは多い。この会社もそのためだったのでは」と推測する。
都内で外国為替証拠金取引(FX)の仲介業を営む男性(50)は「無断で名義を使われた」と憤る。
06年にバージン諸島で設立されたペーパー会社の役員に名前があった。資料には署名もあるが、「私の署名ではない」と否定した。
犯人の心当たりがないわけではない。約10年前、シンガポール在住の中国人から「一緒にビジネスをやろう」と持ちかけられて、合意書に署名もした。だが数カ月後に関係を清算した。
ところが、昨年暮れ、「別の業者のウェブサイトにあなたの会社の登録番号が載っている」と関東財務局から指摘された。また、ペーパー会社と同じ業者名を使って欧州のキプロスで集客しているともいう。男性はその業者に警告書を送ったが、まだ返事はない。(五十嵐聖士郎)
◆ データ40年分、今はない企業の名も
パナマ文書のデータは、1977年から2015年までに作られたものだ。個人を取材したところ、40年弱の間に転居などで連絡がつかない人も多かった。
企業では、今はなくなっている名前も見つかった。通信大手のソフトバンクグループでADSL事業などをてがけていた「ソフトバンクBB」(SBB)。ソフトバンクに吸収された同社は、07年にバージン諸島に合弁会社を設立。ソフトバンク広報によると、当時、中国の大手IT企業がネット事業を始めるにあたって協力を要請された。SBBの出資割合は35%で役員も出した。事業は軌道に乗らず、11年に全株を譲渡して撤退した。
数々の合併で話題を集めた「ライブドア」もバージン諸島に会社を持っていた。元執行役員の説明によると、中南米向けのサイトを運営しており、05年に約12億円で買収した。直後の06年、東京地検の摘発を受けてライブドアは上場廃止になり、清算された。バージン諸島の会社は07年に売却したという。
株主として個人名があったのは楽天の創業者、三木谷浩史会長兼社長。日本興業銀行を退職した直後の1996年、バージン諸島の会社に出資していた。朝日新聞社が楽天の広報担当者を通じて三木谷氏に伝えたところ、「20年前の話で、最初は会社名も覚えていないようだった」。パーティーか知人の紹介で、知り合った外国人から投資を持ちかけられ、約80万円を出資した。事業はうまくいかず、出資金の一部が戻ってきただけ。「利益を得たわけでも節税や脱税を目的としたわけでもない」という。(大谷聡、錦光山雅子)
◆ 情報公開「秘密」に風穴
パナマ文書の報道を主導する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、世界の政治家や富裕層、大企業がタックスヘイブンを利用して租税を逃れている実態を暴く調査報道を以前から重ねてきた。
2012年6月にICIJと提携した朝日新聞も当初からこの取材に参加。13年4月と14年1月に、ロシア副首相の妻、中国の習近平(シーチンピン)国家主席の姉の夫らとタックスヘイブンの関わりを報じた。さらに、大手会計事務所PwCのルクセンブルク法人から流出した内部文書を分析。これを基に、14年11月、国境を越える出資や融資にルクセンブルクの法人を介在させる高度に複雑な租税回避の手口を世界で一斉に報じた。
国境を越えた租税回避は、古くて新しい問題だ。個人や企業がタックスヘイブンを利用して「過度な節税」を図ると、各国は対抗して新たな国際課税ルールをつくる。すると、新たな「抜け穴」探しが始まる。そんな「いたちごっこ」が続いてきた。
日本は1978年にタックスヘイブン対策税制を創設。2年前には、国外に5千万円超の資産を持つ者が「国外財産調書」を提出する制度を導入してきた。
ただ、法人税をどれだけ課すか、課さないかは各国の主権に属する問題だ。外資を呼び込むために税率を低くするタックスヘイブンを完全になくすことは難しい。ある税理士は「税の抜け穴を全て塞ぐのは、世界が一つにならない限り不可能だ」と指摘する。
ICIJは、タックスヘイブンに関する報道を始めて3カ月後の13年6月、「オフショア・リークス・データベース」をネット上で公開した。タックスヘイブンにある法人とその役員、株主の名前、住所が無料で検索できる。
日本や米国の多くの州では、法人と代表者名、住所などの情報が公開されているが、タックスヘイブンでは情報の入手が困難。脱税や資金洗浄がはびこる一因となっている。
ICIJは公開データベースで「秘密の壁」に穴を開けることが、公益に資すると考えている。すでにデータベースには、日本の企業や個人の複数の名前が登録されている。これに、パナマ文書にある21万余の法人の名前などの情報を5月10日に追加登録して公開する。ICIJや朝日新聞は新情報が一般の人から寄せられることを期待している。(編集委員・奥山俊宏)
04 28 (木) タックスヘイブンの水割り 天声人語
【下平記】日本の大企業への法人税引き下げは、金融システムモンスターを十分承知しての策略だったのか、疑わしい疑念を感ずる。 言論の自由がどれほど大事なことか、報道の自由がどれほど大事なことか、いつも遅ればせで気づかされている。
▼「税金を払え、税金を払え」の大合唱が、ロンドンの街角に響いたという。数年前、大手薬局チェーンが、白衣で仮装した若者たちに取り囲まれた。税金の安いスイスに本社を移し、英国にほとんど納税していないとの抗議だった。矛先は銀行や飲食など多くの企業に向かった
▼そのかいあったかどうか、英国政府は税逃れ企業の追及を始めた。でもアメ玉も用意した。企業が他国へ行かないよう、法人税率を下げる。現在の20%を2020年には17%にすると決めた
▼「パナマ文書」により、税金がほぼゼロのタックスヘイブン(租税回避地)に注目が集まっている。同時に見逃せないのは、英国のように自国を租税回避地に近づけるかのような試みだ
▼蝶(ちょう)が蜜に誘われるように、米企業が英国に移ろうとする。あせる米国の政治家に、「こちらも引き下げを」との議論が高まる。オズボーン英財務相は先月、「英国が道を開く。他国はついてくればいい」と語った。引き下げドミノとなるか
▼スイスや英国に限らず、アイルランドなども法人税率は著しく低い。租税回避地がウイスキーのストレートなら、こうした国々は濃いめの水割りか。いずれにせよ酔いが回れば民主主義の基盤を崩す。企業として社会から恩恵は受けるのに、税負担は低めですむのだから。日本も引き下げが進む
▼弊害を抑えようと、国々が協調して税金を取るなどの案が、識者から出る。現実的かどうかは分からない。でも何もしなければ酔いは確実に回る。
古いニュースだが 2016年3月9日21時01分 籾井NHK会長の醜聞
籾井NHK会長、また不適切発言
民主・維新の会議で
http://digital.asahi.com/articles/ASJ39655VJ39UCVL01W.html?iref=recob
NHKの籾井勝人会長が9日、民主党と維新の党の統一会派による総務・地域主権合同部門会議での答弁で、先月と同じ聴覚障害者の蔑称を使い、発言を取り消す場面があった。
会議では新年度のNHK予算が話し合われた。「クローズアップ現代」の放送時間やキャスターの変更について、議員の一人が放送総局長の板野裕爾・専務理事に対して、会長に相談したかどうかを尋ねた際、籾井会長が「つんぼ桟敷で」と発言。すぐに謝罪し、発言内容を取り消したいと申し出た。
籾井会長は2月23日の衆院総務委員会の答弁でも、別の話題の中で同じ発言をして撤回している。部門会議に出席した別の議員は「先日委員会で謝罪したのはうそだったんですか」と批判した。
NHK「クロ現」 2016年2月13日 15時0分配信
国谷キャスター降板と後任決定の一部始終
川本裕司 | 朝日新聞記者、WEBRONZA筆者
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawamotohiroshi/20160213-00054354/
NHKクローズアップ現代キャスター国谷裕子さん(C)朝日新聞社
23年間にわたりNHKの看板報道番組「クローズアップ現代」のキャスターを務めてきた国谷裕子さんが3月17日を最後に降板する。続投を強く希望した番組担当者の意向が認められず上層部が降板を決断した背景には、クロ現をコントロールしたいNHK経営層の固い意思がうかがえる。
クロ現は4月から「クローズアップ現代+」と番組名を一部変え、放送時刻も午後10時からと深くなる。後任のキャスターにはNHKの女性アナウンサー7人が就くと、2月2日に発表された。ただ、7人の顔ぶれが決まるまで、「ニュースウオッチ9」の大越健介・前キャスターが浮上したり、最終局面で有働由美子アナの名前が籾井勝人会長の意向を反映する形で消えるなど曲折があったという。
複数のNHK関係者によると、黄木紀之編成局長がクロ現を担当する大型企画開発センターの角英夫センター長、2人のクロ現編集責任者と昨年12月20日すぎに会った際、国谷さんの3月降板を通告した。「時間帯を変え内容も一新してもらいたいので、キャスターを変えたい」という説明だった。
センター側は「国谷さんは欠かせない。放送時間が変われば視聴者を失う恐れがあり、女性や知識層の支持が厚い国谷さんを維持したまま、番組枠を移動させるべきだ」と反論した。しかし、黄木編成局長は押し切った。過去に議論されたことがなかった国谷さんの交代が、あっけなく決まった。
国谷さんには角センター長から12月26日、「キャスター継続の提案がみとめられず、3月までの1年契約を更新できなくなった」と伝えられた。
国谷さんの降板にNHKが動きを見せたのは、昨年10月下旬にあった複数の役員らが参加した放送総局幹部による2016年度編成の会議だった。
編成局の原案では、月~木曜の午後7時30分からのクロ現を、午後10時からに移すとともに週4回を週3回に縮小することになっていた。しかし、記者が出演する貴重な機会でもあるクロ現の回数減に報道局が抵抗し、週4回を維持したまま放送時間を遅らせることが固まった。
報道番組キャスターや娯楽番組司会者については、放送総局長の板野裕爾専務理事が委員長、黄木編成局長が座長をそれぞれつとめ部局長が委員となっているキャスター委員会が決めることになっている。番組担当者からの希望は11月下旬に示され、クロ現の場合は「国谷キャスター続投」だった。現場の意向を知ったうえでの降板決定は、NHK上層部の決断であることを物語っている。
現場に対しても「番組の一新」という抽象的な説明しかなかった降板の理由について、あるNHK関係者は「経営陣は番組をグリップし、クロ現をコントロールしやしくするため、番組の顔である国谷さんを交代させたのだろう」と指摘する。
その伏線となったのは、2014年7月3日、集団的自衛権の行使容認をテーマにしたクロ現に菅義偉官房長官に出演したときの出来事だった。菅長官の発言に対し「しかし」と食い下がったり、番組最後の菅長官の言葉が尻切れトンボに終わったりしたためか、菅長官周辺が「なぜ、あんな聞き方をするんだ」とNHK側に文句を言った、といわれる一件だ。
この件について、籾井勝人会長は7月15日の定例記者会見で、菅長官を出迎えたことは認めたが、「官邸からクレームがついた」という週刊誌報道については「何もございませんでした」と否定した。
国谷さん降板を聞いたNHK幹部は「官邸を慮(おもんぱか)った決定なのは間違いない」と語った。
クロ現のある関係者は「降板決定の背景にあるのは、基本的には忖度だ。言いたいことは山ほどある」と憤りを隠そうとしない。
国谷さん降板に利用されたのが、クロ現で2014年5月に放送された「追跡“出家詐欺”」のやらせ疑惑だった。15年11月6日に意見書を公表した放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会がフジテレビ「ほこ×たて」以来2件目という「重大な倫理違反」を認定した。
同じ内容の番組が、クロ現で放送される1カ月前に関西ローカルの「かんさい熱視線」で取り上げられていた。ところが、NHKの委員会名称は「『クローズアップ現代』報道に関する調査委員会」と、「かんさい熱視線」は対象としないかのように決められていた。
全聾の作曲家ではなかったことが発覚した問題で、NHKが14年3月に発表したのは「佐村河内氏関連番組・調査報告書」だった。最初に取り上げた番組は12年11月の「情報LIVE ただイマ!」、最も反響が大きかったのは13年3月の「NHKスペシャル」だった。また、93年にNHKが唯一やらせを認めたNHKスペシャル「奥ヒマラヤ 禁断の王国・ムスタン」では「『ムスタン取材』緊急調査委員会」となっていた。こうした例にならうなら、「クローズアップ現代問題」ではなく「出家詐欺問題」になるのが妥当といえた。
調査委員会の名称について、11月18日の定例会見で板野裕爾放送総局長は「とくに意図があるわけではない」と述べたが、クロ現を標的にした狙いを感じた向きがあったのは確かだ。あるNHK関係者は「委員会の名前については上層部の指示があった、と聞いている」と話す。
テレビ離れのなか、NHKも視聴率ダウンに直面している。4月からの新年度編成では視聴率の向上が大きな狙いだ。
その対策として考案されたのが、高齢者を中心に一定の視聴率をあげる19時からの「ニュース7」が終わる19時30分からの番組として、クロ現に代わり娯楽番組を並べ視聴者を逃さない作戦に出る。新年度の放送番組時刻表によると、月曜以降、「鶴瓶の家族に乾杯」、「うたコン」(新番組)、「ガッテン!」(同)、「ファミリーヒストリー」といった番組を20時台、22時台から前倒しした。高視聴率を誇る朝の連続テレビ小説の直後に放送される「あさイチ」も視聴率が好調といった手法をまねた、といわれている。
関係者によると、国谷さんの後任選びは難航。降板が決まった直後は、政治部出身の解説委員や大越前キャスターが浮上したが、「ニュースウオッチ9」のメーンキャスターが男性であることから、「男性キャスターが続くのは」と立ち消えに。
1月28日のキャスター委員会で女性アナ8人にいったんは決まった。ところが、発表前日の2月1日、報告を受けた籾井会長は8人に入っていた有働アナの起用に難色を示したという。最終的に久保田祐佳、小郷知子、松村正代、伊東敏恵、鎌倉千秋、井上あさひ、杉浦友紀の7人になった。
4日の定例記者会見で、「『クローズアップ現代+』のキャスターから有働アナを外すよう指示したのか」の質問に、籾井会長は「現場が決めたこと」と否定。重ねて「会長として意見や示唆は言わなかったのか」と問われると、「週4日で7人いれば十分と思う。(『あさイチ』に出演する)有働アナは夜もやると大変」と述べた。
番組タイトルは一部変更だが、現行の「クロ現」とは番組の構成や内容が大きく異なりそうだ。
参考記事:WEBRONZAクローズアップ現代・国谷さんの降板理由
川本裕司 朝日新聞記者、WEBRONZA筆者
大阪府出身。1981年、朝日新聞社入社、学芸部、社会部などを経て2006年から現職。放送、新聞、インターネットなどメディアと社会のかかわりをテーマに取材している。最近の連載記事として「原発とメディア」(12年2-3月)や「秘密保護法案」(12年10-12月)。10年から朝日新聞デジタルの解説サイト「ウェブロンザ」でも執筆。著書に「ニューメディア『誤算』の構造」、共著に「テレビ・ジャーナリズムの現在」「被告席のメディア」「新聞をひらく」「新聞と戦争」。
「クローズアップ現代」放送千回の頃の国谷裕子さん=1998年11月
1993年に始まり3700回を超える放送を重ねてきたNHKの報道番組「クローズアップ現代」。番組の顔だった国谷裕子キャスター(58)が3月で降板することが決まった。番組のスタッフは続投を強く望んだが、「番組一新」を理由にNHK上層部が降板を決断した。キャスター交代劇の本当の理由は別にありそうだ。真相に迫る。
テーマについての記事
【社会・スポーツ】 TBS「NEWS23」の岸井アンカーの降板理由
http://webronza.asahi.com/national/articles/2016041500007.html
この春、夜のニュース・報道番組でキャスターの交代が重なった。23年にわたり続いていたNHK「クローズアップ現代」の国谷裕子さん、12年間務めてきたテレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎さん、そしてTBS「NEWS23」の膳場貴子さんと岸井成格さんのコンビだ。中でも、市民団体から“偏向している”と名指しされ、その去就が注目を集めていた岸井さんが降板した理由は何だったのだろうか。(以下省略)
川本裕司 2016年04月18日
【社会・スポーツ】 国谷キャスター降板で番組コントロール狙う(下)
http://webronza.asahi.com/national/articles/2016011500006.html
NHKのあるプロデューサーは「国谷裕子さんあってのクローズアップ現代なのに」と、今回の降板を素直に受け止められていない。インターネット上でも国谷さん降板を惜し … [続きを読む](以下省略)
川本裕司 2016年01月20日
【社会・スポーツ】 国谷キャスター降板で番組コントロール狙う(上)
http://webronza.asahi.com/national/articles/2016011500005.html
23年間にわたりNHKの看板報道番組「クローズアップ現代」のキャスターを務めてきた国谷裕子さん(58)が3月17日を最後に降板する。続投を強く希望した番組担当者の意向が認められず上層部が降板を決断した背景には、クロ現をコントロールしたいNHK経営層の固い意思がうかがえる。
クロ現は4月から「クローズアップ現代+」と番組名を一部変え、放送時刻も午後10時からと深くなる。
NHK関係者によると、黄木紀之編成局長がクロ現を担当する大型企画開発センターの角英夫センター長、2人のクロ現編集責任者と昨年12月20日すぎに会った際、国谷さんの3月降板を通告した。「時間帯を変え内容も一新してもらいたいので、キャスターを変えたい」という説明だった。
センター側は「国谷さんは欠かせない。放送時間が変われば視聴者を失う恐れがあり、女性や知識層の支持が厚い国谷さんを維持したまま、番組枠を移動させるべきだ」と反論した。しかし、黄木編成局長は押し切った。過去に議論されたことがなかった国谷さんの交代が、あっけなく決まった。
国谷さんには角センター長から12月26日、「キャスター継続の提案がみとめられず、3月までの1年契約を更新できなくなった」と伝えられた。
国谷さんの降板にNHKが動きを見せたのは、10月下旬にあった複数の役員らが参加した放送総局幹部による2016年度編成の会議だった。
編成局の原案では、月~木曜の午後7時30分からのクロ現を、午後10時からに移すとともに週4回を週3回に縮小することになっていた。しかし、記者が出演する貴重な機会でもあるクロ現の回数減に報道局が抵抗し、週4回を維持したまま放送時間を遅らせることが固まった。
報道番組キャスターや娯楽番組司会者については、放送総局長の板野裕爾専務理事が委員長、黄木編成局長が座長をそれぞれつとめ部局長が委員となっているキャスター委員会が決めることになっている。番組担当者からの希望は11月下旬に示され、クロ現の場合は「国谷キャスター続投」だった。現場の意向を知ったうえでの降板決定は、NHK上層部の決断であることを物語っている。
現場に対しても「番組の一新」という抽象的な説明しかなかった降板の理由について、あるNHK関係者は「経営陣は番組をグリップし、クロ現をコントロールしやすくするため、番組の顔である国谷さんを交代させたのだろう」と指摘する。
その伏線となったのは、2014年7月3日、集団的自衛権の行使容認をテーマにしたクロ現に菅義偉官房長官が出演したときの出来事だった。菅長官の発言に対し「しかし」と食い下がったり、番組最後の菅長官の言葉が尻切れトンボに終わったりしたためか、菅長官周辺が「なぜ、あんな聞き方をするんだ」とNHK側に文句を言った、といわれる一件だ。
この件について、籾井勝人会長は7月15日の定例記者会見で、菅長官を出迎えたことは認めたが、「官邸からクレームがついた」という週刊誌報道については「何もございませんでした」と否定した。(以下省略)
川本裕司 2016年01月19日
【テーマ】 高市早苗総務相「電波停止」発言の危うさ
【文化・エンタメ】 古舘伊知郎さん降板とテレビ界の危うさ
国谷裕子さん、岸井成格さん…一連の降板騒動は偶然ではない
篠田博之 (月刊『創』編集長)
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2016010800009.html
◆ 「報道ステーション」は“普通のニュース番組”に?
年末のメディア界を襲った一番衝撃のニュースといえば「報道ステーション」キャスター古舘伊知郎さんの降板だろう。
週刊誌が報じているが、同番組は12月23日が年内最終放送で、終了後に毎年恒例の忘年会が開かれた。
朝まで飲んでいたスタッフも少なくなかったらしいのだが、それら関係者は翌日、ネットのニュースなどで古舘さん降板の発表を知り、愕然としたという。
『週刊文春』1月14日号「古舘『報ステ』降板 本誌だけが書ける全真相」によると、23日夜、古舘さんが忘年会を終えて帰宅したあと、篠塚浩取締役報道局長が、番組プロデューサーら幹部数人を呼んで、降板の話を伝え、「明日10時に発表する」と告げたという。
古舘さん本人が会見で明らかにしたように、既に2015年夏に局側に降板を申し入れていたというのだが、正式に決定したことは一部の役員にしか知らされていなかったようだ。
その後1月8日、テレビ朝日は、後任のメインキャスターに富川悠太アナをあてることを発表した。
久米宏さんの「ニュースステーション」や古舘さんの「報道ステーション」は、メインキャスターが歯に衣着せず権威権力にズバズバ物申すというのを売りにしてきたのだが、富川アナは局員だからそういう特性は薄れざるをえない。
現場を飛び回る富川アナの奮闘ぶりを好感を持って見てきた視聴者は多いと思うし、4月以降がんばってほしいとは思うのだが、今回の選択は、この番組が“普通のニュース番組”になってしまうことを意味するから、その点は残念だ。
局側としても、とりあえず富川アナで様子を見て、視聴率の動向などによって次の展開を考えようという方針なのだろう。
『週刊現代』1月16・23日号は「古舘伊知郎惜しまれずに退場」という少々意地悪な記事を掲げており、古舘さんは実はテレ朝では「裸の王様」で、辞めてよかったという声も多いと書いている。
確かに古舘さんはこだわりの人で、現場から上がってきた原稿を彼の一存でボツにしたりということもあったようだから、「ワンマンだ」と反発する声も報道局にあったようだ。
ただ、この記事が書いているように「『辞めてくれて清々した』という意見のほうが多い」というのはうがった見方ではないだろうか。古舘さんのこのタイミングでの降板については、たぶん局員や関係者もいろいろ複雑な思いで見ているに違いない。
◆ 「大変な綱渡り状態」の12年間
週刊誌やネットでは、古舘さんとテレ朝の早河洋会長との関係がぎくしゃくし始めたのが遠因だという指摘が多い。つまり早河会長が安倍政権寄りになったことで両者の関係にすきま風が吹き始めたらしいという見方だ。
たぶんそれは背景としてあると思うが、そういうことも含めて古舘さんとしては会見で「ものすごく不自由な12年間」だったと語ったのだろう。
2015年3月の古賀茂明さんの事件が要因と短絡的に捉えられることを怖れてか、古舘さんは、その件はいっさい関係ないと否定したが、あの事件で古舘さんのとった立ち位置は象徴的だった。
古賀さんが生放送中に爆弾発言を始めた時、古舘さんは必死に局の立場に立って事態収拾を図ろうとした。確かに番組のメインキャスターとはそういうものであるのだが、期せずしてそういう立場に立たざるをえなかった自身に、古館さんが不自由さを感じたのは確かだろう。
会見で「不自由な12年間でした」という発言の後にこうも述べていた。「言っていいことと、悪いこと、大変な綱渡り状態で、一生懸命頑張ってまいりました」
古賀さんの事件で明らかになったように、この1年余、安倍政権からの揺さぶりを受けて、テレ朝は揺れ動いていたから、そういう状況下で、局の顔という立場で発言を続けることに思うところがあったのだろう。
もう2年前から辞めることを考えていたという発言もあったが、たぶんこの1年余のテレ朝をめぐるいろいろな動きが背中を押したのは間違いないと思う。
◆ 「クローズアップ現代」と「NEWS23」
さて冒頭に古舘さんの降板を「衝撃のニュース」と書いたが、それは、このタイミングでのこの事件が大きな意味を持つ可能性があるからだ。
その後、放送時間が変わりリニューアルされるNHKの「クローズアップ現代」のキャスター国谷裕子さんの降板も報じられた。
こちらは局の上層部の意向によるものらしい。朝日新聞デジタルによるとこうだ。
《NHK関係者によると、クロ現を担当する大型企画開発センターは続投を強く求めたが、上層部は「内容を一新する」という方針を昨年末に決定。同センターを通じ、国谷さんにも契約を更新しない方針を伝えた。》(1月8日付)
籾井体制になって以降のNHK上層部の安倍政権への“すり寄り”を見ていると、いろいろな意味でごたごたして騒動の火種にもなった「クロ現」をそのまま続けるのは認めないというのが上層部の意向なのだろう。
そしてもうひとつ降板騒動が続いてきたTBS「NEWS23」のアンカー岸井成格さんについては、12月25日付の日刊スポーツが「降板することがわかった」と降板が決定したかのように報じ、ネットにはそれが拡散されている。
ただ、この日刊スポーツの記事は、降板をほぼ断定している割にはその根拠を示す記述がない。どの程度ウラがとれたものか不明なのだが、岸井さん降板という現実がないことを祈りたい。
岸井さんについては、降板を要求する右派論者らの意見広告が2015年11月に産経新聞と読売新聞に出たり、右派からの攻撃が激しくなっている状況が知られているから、実際に降板となれば、明らかに政治的意味合いを持ってしまう。
実際、ネトウヨと見られる人たちは岸井さん降板のニュースに喝采を叫んでいるようだ。こういう状況下で岸井さんを本当に降板させたら、TBSは歴史的禍根を残すと言ってよいだろう。
この1~2年間、安倍政権のメディア界、特にテレビ界への介入は激しさを増した。
TBSのリベラルな報道情報番組である「NEWS23」や「サンデーモーニング」には、番組放送後に右派からと思われる抗議が増えているという。そのなかでもこの間、大きな標的にされたのが岸井さんだ。
◆ 危険な「斟酌」や「忖度」の肥大化
考えて見れば、NHK、テレ朝、そしてTBSと、かつてテレビ界のリベラル派だったところにこの間、揺さぶりが集中し、期せずして今、キャスターらの降板騒動が起きているのは偶然ではないだろう。
もちろん政権からの揺さぶりというのは、人事や番組内容に直接物言いがついているという意味では必ずしもない。
例えば昨年春のテレ朝「報道ステーション」の古賀さんの騒動の時に指摘されたプロデューサー交替の例を思い起こせばよい。
※ 篠田博之「『報道ステーション事件』はメディア界の問題だ――安倍政権の『揺さぶり』にどう向き合うか」(WEBRONZA)
※ 山田健太「『報道ステーション事件』から浮かんだ3つの問題――自由な放送をいかに守るか」(WEBRONZA)
同番組の政権批判のトーンを引っ張っていたというこのプロデューサーを局側は交代させたのだが、その判断をする際に、政権からの攻撃を何とかかわそうという判断が働いたのは確かだろう。
風当たりがこれ以上強まって権力と真っ向から対立するのはまずいから、ちょっと目先を変えるためにプロデューサーを交代させようといった政治的判断だったかもしれない。
政権と真っ向対決でもなく頭を垂れるのでもなく、いろいろな政治的対処をしながら、今の安倍政権からの風圧に対応していこうという判断だろう。
ただ危険なのは、そういう「斟酌」や「忖度」が肥大化していくと、明らかに「委縮」につながっていくことだ。
私は世間で言われているほどテレ朝の早河会長が単純に安倍政権になびいているというよりも、面従腹背しながら政権からの風圧をどう避けるかという政治的判断をしていると考えたほうがよい気がするのだが、今のような状況下では、それはとめどなき後退につながっていく怖れがあることは指摘したいと思う。
◆ キャスターによる抗議会見が開けなくなる?
そういう流れのなかで、この間の一連のキャスター降板騒動を見ると、テレビ界をめぐる大きな動きと、明らかに連動しているように見える。
古舘さんの「報道ステーション」降板は、直接的には古舘さんの個人的問題なのだが、大きな影響をテレビ界に及ぼす可能性が無視できない。
「クロ現」の国谷さんや「NEWS23」の岸井さんの処遇をめぐっても、局の上層部が、政権や右派サイドからの風圧に対して「斟酌」を行う可能性は十分にある。
今回の一連の降板騒動が、安倍政権による揺さぶりを受けてきたテレビ界が変質していくきっかけとならなければよいのだが――。そういう不安をこの間の騒動の中で感じている人は少なくない。
テレビ界は、まさに今、どういう方向へ向かうのか岐路に立たされていると思う。
10年以上前、個人情報保護法案などメディア規制法と言われた法案に反対運動が起きた時、民放各局のキャスターによる抗議の会見が何度か開かれた。
フジテレビでキャスターを務める安藤優子さんが抗議声明を読み上げる一幕もあった。
しかし、この1~2年、秘密保護法反対運動などで開かれたキャスターの抗議会見には、日本テレビとフジテレビのキャスターは顔を見せなくなった。
結果的にTBSとテレ朝のキャスターが中心になったのだが、その2つの局がいま矢面に立たされ、揺れている。
次は、フジテレビがどうTBSがどうというのでなく、キャスターによる抗議会見そのものが開けなくなる状況が現実化しつつあるように思う。
NHK「クロ現」 2016年2月13日 15時0分配信
[7]NHK問題にみる政権独裁化説
小林正弥
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2014081200004.html
◆ 公共放送か、公放送か?
安倍政権は、NHKの会長、経営委員(作家・百田尚樹氏、埼玉大学名誉教授・長谷川三千子氏)や原子力規制委員会委員長などに次々と自分たちのお気に入りの人物を要職につけているとして批判を受けている。特にNHKの籾井勝人会長は、会長就任の記者会見で「政府が『右』と言っているものを、われわれが『左』と言うわけにはいかない」と述べて、批判を浴びた。
従来、NHKは公共放送と言われており、国営放送ではなかった。公共と公とを使い分ければ、「公」が国家や政府などの「お上」を意味するのに対し、「公共」とは日本というコミュニティに関わる人びと、「民」に関することを意味する。
だからこそ、NHKは税金で運用されているのではなく、人びとがNHKに受信料を払っているのである。この場合、「公共放送」は、政権から独立して自らの見識で公共的な放送を行うのだから、当然、政権に批判的な内容を放送することが可能である。
ハーバード白熱教室もNHKで放送されたように、筆者はNHKがしばしば良心的な、まさに「公共的」番組を作成してきたことを知っている。また、NHKの要請で、NHKの公共放送としてのあり方をめぐって白熱教室や討論を行ったこともある。だから、少なくともNHK内部に、まさに「公共放送」としての性格を深く認識した上で発展させようとしている人びとがいることを個人的にも知っている。
ところが、籾井発言のような発想になると、NHKは政権の意向に反する放送は行えないということになる。これは「国営放送」の発想であり、まさにNHKが「公共放送」ではなく「公放送」となることを意味する。
だから、籾井会長更迭を求めるNHK受信料支払い凍結運動が起きたり、NHK名古屋放送局の退職者21人で作る会から、NHK経営委員全員に籾井氏の適格性についての公開質問状が送られたり(6月6日)、さらにはキャスター・アナウンサー・プロデューサーなどを務めた退職者172人から経営委員会に籾井会長の辞任勧告か罷免を求める声明が出されている(7月18日)のである。
◆ 政治的圧力による公共的言論空間の萎縮
さらに集団的自衛権問題では、NHKの放送そのものについて問題が生じた。
7月3日に生放送されたNHKの「クローズアップ現代」に、菅義偉官房長官が出演し、集団的自衛権行使容認の閣議決定について国谷裕子キャスターが、「他国の戦争に巻き込まれるのではないか」、「憲法の解釈を変えていいのか」と質問した。すると、番組終了後に、「誰が中心になってこんな番組をつくったのか」などと安倍官邸が恫喝し、犯人さがしをして、籾井会長以下、上層部は平身低頭し、国谷キャスターは「すみません」と泣き出した、というのである(『フライデー』7月25日号)。
もしこれが本当ならば、内閣がNHKを自分の意向に従わせようとしていることになるから、まさしくNHKからは報道の自由が失われ、公共放送ではなく、公放送、つまり国営放送になってしまいかねないわけである。NHKの会長人事やこのような「事件」は、いずれも政権による政治的圧力の兆候と言えるだろう。
すでに、テレビなどでは政権に批判的な論客は出演する回数が減っているという見方もある。実際、様々な事情があるにしても、かつての久米宏や筑紫哲也、鳥越俊太郎の各氏のように切れ味鋭く政権を批判するキャスターはテレビにはあまり登場しなくなっている。
鳥越氏は秘密保護法の制定強行に関連して「僕は、安倍政権はファシズム化していると思う。ヒットラーと同じとは言わない。ヒットラーほどたいへんなシロモノとは思わないが、今やっていることは独裁だ」(2014年2月18日)と語っている。つまり、「安倍政権ファシズム化・独裁説」を述べているわけである。
そして、「僕自身、最近ではコメンテーターとしてテレビには出られなくなっています。……安倍政権なら日本の前途は明るいという空気のなかで、そうした空気に抗って政権を真っ向から批判するという芸当が、もはやテレビにはできなくなっているんです」(『週刊ポスト』2014年3月28日号)と述べているという。
さらに、コメンテーターでも、前稿でふれた森田実氏の他、古賀茂明、なかにし礼、森永卓郎の各氏のような批判的論客はあまりテレビに登場しなくなっている。
ここにはテレビ局の自主規制もありうるだろう。さらに、実際に政府が直接に報道機関に政治的圧力を加えてくるということになると、事態は非常に深刻になる。このような事態が放置されて進行すると、「物言えば唇寒し」という風潮が広がり、政権に批判的な言論や報道は大きな公共的なメディアから姿を消していきかねないだろう。
このようになれば、自由な情報の流通や言論はなくなり、公共的な言論空間は衰退せざるを得ない。これは、明らかに戦前を思わせるような暗い道である。
◆ 政権独裁化という批判――権力集中と野党の衰退
だから、先述の鳥越氏の批判をはじめとして、このような状況に対して、安倍政権は独裁や専制になりつつあるという批判がネット上などでは様々な形で現れている。
政権に批判的な『週刊金曜日』は既に2014年4月17日の臨時増刊号で、表紙に大きな安倍首相の顔を載せ、そこに「さらば、独裁者」「検証 暴走する安倍政権」という大きな文字をクロスさせて入れて、話題になった。日本では雑誌がここまで激しく批判的な表紙を使うのは珍しいからである。
現政権が憲法に反する「体制変革」を強引に進めているとすれば、確かに「独裁」という批判が現れるのも当然であろう。
実際、野党の衰退は目を覆いたくなるほどの惨状と言わざるを得ない。
辛うじて最大野党である民主党は、集団的自衛権行使容認に対して、閣議決定までに明確な賛否を表明できなかった。社共と生活の党は、明確な反対を表明しているが、国会内で勢力が小さすぎて、与党を掣肘することができない。第3極と言われた他の政党は、「みんなの党」も「日本維新の会」も分裂して、分裂したそれぞれの党の内の片方(「結いの党」と「日本維新の会」)は集団的自衛権行使問題についても立場が変化したりしていて、ほとんど野党として政府を牽制する役割を果たしていないと言わざるを得ない。
だから、籾井会長問題をはじめ首をかしげたくなるような問題が次々と起こっていても、問題の人物が辞職に追い込まれたりすることにはならないのだろう。ある意味では、このような事件が次々と起こるのは、政権の傲りと言えるかもしれない。
それに対して、何も野党が効果的な反撃を行えず、政権が思うがままに「体制変革」を進めていくという事態には、独裁化ないし専制化の兆候を看取する人がいても当然であろう。安倍政権に「平成の超然内閣」を連想したという論説 も、この1つの表れだろう。
独裁化ないし専制化によって、平和主義の放棄や、諸権利が脅かされるという危険が密かに進行しているという事態が、多くの人びとの「嫌な感じ」の示すところではないだろうか。
ただ、形式的に考えてみれば、与党協議が行われたということは、公明党の協力を必要としていることを意味しているから、まだ安倍首相や自民党の完全な独裁にはなっているとまでは言えないだろう。今後も選挙はまだ行われるのだから、日本が独裁的政治体制になったとも言えない。
それでは、この政権の性格は、政治学的にはどのように捉えられるべきなのだろうか? この問題を続稿で扱ってみよう。(つづく)
関連情報 2014/07/13 クローズアップ現代
「集団的自衛権」菅官房長官に問う
http://in-the-eyes-of-etranger.blogspot.jp/2014/07/blog-post_13.html
国谷裕子キャスター(番組キャスター)
原 聖樹氏(NHK政治部・記者)
管義偉氏(内閣官房長官・国家安全保障強化担当)
管官房長官に問う
国谷キャスター: ここからは集団的自衛権の行使容認について考えていきます。
従来の憲法9条の政府見解の解釈では武力行使が許容されるのは日本に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとされてきました。
政府は憲法9条の解釈を変更し、「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされ国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に必要最小限度の実力の行使をするのは憲法上許容される」という解釈を打ち出し、戦後日本の安全保障政策を大きく転換する閣議決定を行いました。
【図版】武力行使の3要件
1 日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し 日本の存立が脅かされ
国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
2 これを排除し日本の存立を全うし 国民を守るために他に適当な手段がないこと
3 必要最小限度の実力を行使すること
日本を取り巻く安全保障環境の変化が最大の理由だとしています。
憲法解釈の結論として許容されないとしてきた集団的自衛権を容認するという大転換。
政府は、あくまで安全保障政策の根幹を成す専守防衛、武力行使は自衛のために限るという方針に変わりはないとしています。
これまで世界の多くの戦争が自衛の名の下に行われてきたのも事実です。
憲法9条による徹底した平和主義が貫かれてきた歴史にはそうした背景もあります。
それだけにこの憲法9条の精神を貫くためにはより具体的な武力行使への歯止めが求められています。
重大な解釈の変更であるにもかかわらず閣議決定に至るまでの過程で国民的な理解、そして議論が深まっていないという声が多く聞かれます。
なぜ今、この大転換なのか。
集団的自衛権の行使容認は限定的だといっても果たして歯止めは利くのでしょうか。
集団的自衛権
“歯止め”をめぐって
ナレーション: 集団的自衛権の行使容認に強い意欲を示してきた安倍総理大臣。
昭和47年 政府見解
国民の生命 自由 及び幸福追求の権利が
根底から覆されるという急迫 不正の事態
歴代の政権は集団的自衛権について憲法9条の下では「持っているが、使えない」としてきました。
集団的自衛権の行使は許されないという憲法解釈が示されたのは昭和47年の政府見解でした。
当時、ベトナムではアメリカが集団的自衛権を行使し戦争を行っていました。
日本は、集団的自衛権を憲法上、どう位置づけるのか政府は国会で見解を求められます。
そのとき示されたのが自衛権の行使が許されるのは日本が侵害を受けた場合に限るとして集団的自衛権の行使は憲法上許されないという解釈でした。
武力行使の新たな3要件(当初案)
第1要件
日本か他国に対する武力攻撃が発生し これにより日本の存立が脅かされ
国民の生命 自由 及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること
今回、安倍政権はこの見解の中にあった文言を引用して「集団的自衛権の行使は容認できる」という逆の解釈を導き出します。
昭和47年の政府見解をもとに当初、自民党が公明党に示した武力行使の新たな3要件。
47年見解にはなかった「他国に対する武力攻撃」を加えることで集団的自衛権の行使を可能にする内容となっています。
武力行使の新たな3要件
第1要件
日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し これにより日本の存立が脅かされ
国民の生命 自由 及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
これに対し公明党は拡大解釈されかねないと懸念を示します。
集団的自衛権の行使にどう歯止めをかけるのか議論が続きました。
その結果、自民党が示した文案で「他国」とされていた文言を「日本と密接な関係にある他国」に修正。
また、「おそれ」とされていた文言を「明白な危険」に変えました。
(安倍総理の映像)
憲法の規範性を何ら変更するものではなく新三要件は憲法上の明確な歯止めとなっています
政府は、従来の政府見解の基本的な論理の枠内で導いた結論だとしています。
しかし、今回の閣議決定では自衛隊の任務がどこまで拡大するのか具体的なことは示されませんでした。
与党協議では当初シーレーン・海上交通路での国際的な機雷の掃海活動など8つの事例について議論しました。
しかし、自民党と公明党の間で考えの違いが表面化し結論は出ていません。
どういう場合に武力の行使が許されるのか。
時の内閣が総合的に判断するとされています。
なぜ いま
集団的自衛権なのか
◆他国を守るための戦争には参加しない?
国谷キャスター: 菅さん、この集団的自衛権行使の容認ですけれども、これは閣議決定によりますと、日本の自衛のための集団的自衛権の行使となるのであって、他国を守るための行使はしないというふうになっています。確認ですけれども、他国を守るための戦争には参加しないということですか?
管官房長官: それは明言してます。
◆なぜ今まで憲法では許されない、とされていたことが、容認されるのか?
国谷キャスター: それは明言されていると。ではなぜ、今まで憲法では許されないとされていたことが、容認されるというふうになったのかということなんですけども、これまでは日本の安全保障は、日米安保条約の下、強大な在日米軍こそが、日本を防衛する最大の強力な抑止力になっているという考え方だったわけですけども、その安全保障環境の変化によって、この日米安保条約でも抑止力が不足、集団的自衛権によって補わなくてはならない事態になったという認識なんでしょうか?
管官房長官: 今ですね、昭和47年の映像がありました。
当時と比較をして、42年間たってるんですよね。
例えば国際化、その間にどのぐらい進んだかですよね。
今、わが国の国民は、150万人の人が海外で生活をしているんです。
そして1800万人の人が、これ、海外ですね、旅行を含めて渡航してます。
そうした時代になりました。
そしてまた、わが国を取り巻く安全保障の環境というのは、極めて厳しい状況になっていることも、ここは事実だと思います。
そういう中にあって、どこの国といえども、一国だけで平和を守れる時代ではなくなってきたという、まずここが大きな変化だというふうに思います。 そういう中で、わが国としては、例えばですよ、これ、総理がこの政府の基本的な方針を決定をしたときに、記者会見で事例の一つとして申し上げましたけれども、総理自身が国民の皆さんの生命と平和な暮らし、そして国の安全を守るために、現在の法制度で、そこについて大丈夫かどうか、そして、もし変える必要があれば、最善のほうはどうかということを、安保法制懇というこのいわゆる安全保障の専門家の皆さんにお願いをしたんですね、当時。
そして、その報告書を受けて、今回、政府の基本方針というものを、与党の中で11回議論をして、政府としての基本方針というものを閣議決定をしたんですね。
そういう中で、やはりこの日米同盟、ここを強化をする。
強化をすることによって、抑止力、これが高まりますから、その抑止力を高めることによって、わが国が実際、この武力行使をせざるをえなくなる状況というのは、大幅に減少するだろうと、そういう考え方のもとに、今回、新要件の3原則というものを打ち立てたわけであります。
例えば、一つの例としまして、総理が言ったのは、例えば近隣諸国で武力攻撃があった場合、日本は国民、かつてはそんなに海外で生活していない、今は多くの人がいらっしゃいますから、その人たちを米軍に輸送をしてもらうということに、日米の間になってます。
その米軍の輸送船、これを現在の憲法では法人を避難するための輸送船ですけれども、現在の憲法では、わが国に武力攻撃が発生しなければ、日本の海上自衛隊は防護する、護衛することもできないんですよ。
ですから、果たしてそうしたことで、国民の皆さんの生命を守ることができるのかどうか。
そうしたことも含めて、この隙間のない法整備をするということが、やはり極めて今、重要だろうと。
政府にとって、まさに政府の…という考え方の中で、今回、この閣議決定をして、閣議決定をした後に、これから法案を作るんです。
法案を作るのに3、4か月、これ、かかると思いますから、国会で法案をまず、私ども政府案を作って、そしてそれを国会に提出する、その段階で、国会でこれは議論しますから、そこで徹底をして議論をする、慎重に議論をしたうえで、国民の皆さんにも理解をしていただける、そういう努力をしっかりしていきたいというふうに思ってます。
◆国際的な状況が変わったからといって、解釈を変更してよいのか?
国谷キャスター: 憲法の解釈を変えるということは、ある意味では、日本の国の形の在り方を変えるということにも、つながるような変更だと思うんですけれども、その外的な要因が変わった、国際的な状況が変わったということだけで、解釈を本当に変更してもいいんだろうかという声もありますよね。
管官房長官: これはですね、逆に42年間、そのままで本当によかったかどうかですよね。今、大きく国際化という中で、変わってることは、これ、事実じゃないでしょうか。
そういう中で、憲法9条というものを、私たちは大事にする中で、従来の政府見解、そうしたものの基本的論理の枠内で、今回、新たにわが国と密接な関係がある他国に対する武力攻撃が発生して、わが国の存立そのものが脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という、そういうことを形の中に入れて、今回、閣議決定をしたということです。
◆「密接な国」を、その時々の政権があらかじめ決めるのか?
国谷キャスター: その密接な国というのが、どういう国なのか。
当然、同盟国であるアメリカっていうのは、想像できるんですけれども、それはあらかじめ決めておくのか、それともその時々の政権が、これは密接な関係のある国だと決めるのか、これ、限定的な行使ということをきちっと守っていくうえでも、影響がある問題だと思うんですけれども。
菅官房長官: そこについては、同盟国でありますから、アメリカは当然であります。
そのほかのことについては、そこは政府の判断、時々のこれは状況によって判断していくということに、これはなってくるというふうに思います。
◆時の政権の判断で拡大解釈されるのでは、という懸念にはどう応える?
原記者: ちょっと懸念を持っている方の中では、時の政権の判断で、拡大解釈されるんじゃないかっていう懸念もあるんですけれども、その辺についてはどのように?
管官房長官: そこは、ここで、この新要件の3原則の中で、「わが国の存立が脅かされる」。「わが国」ですから。
【図版】武力行使の新3要件
1 日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し 日本の存立が脅かされ
国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
2 これを排除し日本の存立を全うし 国民を守るために他に適当な手段がないこと
3 必要最小限度の実力を行使すること
そして国民の生命・自由、そうしたものの幸福の権利が根底から覆されるという、ここで一つのしばり。
また国民を守るために、「他の適当な手段がないこと」。
さらに必要最小限度の実力行使。
ここで新3要件の中で、しっかりと歯止めがかかっているというふうに思います。
あくまでも「わが国、国民」であります。
◆「他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる事態」とは?
原記者: 他国への武力攻撃が発生して、これによって日本の存立が脅かされる事態というのは、これはなかなか具体的にイメージしにくいんですけれども、これはどういう事態、具体的に何かこう?
【図版】政府提示の集団的自衛権の事例
1 邦人輸送中のアメリカ輸送艦の防護
2 武力攻撃を受けている米艦防護
3 周辺事態等における強制的な船舶検査
4 米国に向け日本上空を横切る弾道ミサイル迎撃
5 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
6 アメリカ本土が武力攻撃を受け、日本周辺で作戦を行う米艦防護
7 国際的な機雷掃海活動への参加
8 民間船舶の国際共同護衛
管官房長官: 例えば先ほど一つ事例で申し上げましたけれども、かつて北朝鮮が、日本の領空をミサイル発射しましたですよね。
例えば日本海で、そうした兆候があると、そういう中で、アメリカの船舶と日本の船舶が警戒をしてたとしますよね。
そういう中でアメリカの船舶が攻撃をされた。
これは日本の安全のために出動してくれているわけですから。
現在の憲法解釈では、それ、相手に攻撃することは、日本の海上自衛隊はできないんですね。
それは日本が武力攻撃があって、初めてできるわけですから。
果たしてそれで日米同盟が維持することができるかということです。
ここはやはり、非常に問題がありますよね。
こうしたことについて、切れ目のない、この法整備をしっかりしていこうということなんです。
◆機雷除去には与党内で一致していなかったが、政府としての立場は?
原記者: 与党協議の中の具体的事例などでは、シーレーン、中東の例えば海上交通路ですね。
あのへんは必ずしも意見が一致していなかったわけなんですけれども、政府としては、どういう立場を取ってるんですか?
菅官房長官: ここは海洋国家ですからね、わが国。
わが国にとって、エネルギーだとか、食糧、こうしたものの輸入、この安全のために、やはりこの安全を確保するということは、極めてこれ重要だと思いますよね。
そういう中で、現在、ホルムズ海峡、あそこで原油の約8割が、あそこを通ってきておりますから、あそこでもし紛争が発生した場合、ここについては、機雷がまかれたような事態になれば、わが国の国民生活にとってこれは死活的な問題になりますよね。
こういう状況にあったときに、先ほど申し上げましたけど、3要件、新たな3要件が満たす場合に限り、ここは憲法上、機雷を除去するために、動くことは可能だというふうに思います。
集団的自衛権
“歯止め”は
◆他国の強力な支援要請があった場合、果たして断りきれるのか?
国谷キャスター: 本当に歯止めがかけられるのかということ、多くの人たちが心配していると思うんですけれども、非常にごく一部の容認だと。
そしてその歯止めがかかっているということは、政府のほうから聞こえてくるんですけれども、ただ憲法上、集団的自衛権の行使が容認されるとなりますと、非常に密接な関係にある他国が、協力に支援要請をしてきた場合、これまでは憲法9条で容認されないと、認められないということが、大きな歯止めになっていましたけれども、果たして断りきれるのかと。
菅官房長官: ここは、新要件の中に、わが国の存立を全うすると、国民の自由とかですね、そこがありますから、そこは従来と変わらないというふうに思ってます。
国谷キャスター: 断りきれると?
管官房長官: もちろん。
集団的自衛権
管官房長官に問う
◆日本独自のプレゼンス(存在感)が失われることはないか?
国谷キャスター: もう一つの心配はですね、この集団的自衛権の行使が容認されるようになれば、抑止力が高まる、そして国際紛争を抑止することができるというふうにおっしゃっているんですけども、ただ、これまで日本は、非常に慎重のうえに慎重を重ねて、例えばアメリカとの一体化をしないように、非戦闘地域での活動だけに限るといったことなどをして、アメリカが敵対されるような地域でも、日本独自の活動を行って、一種の存在感というのを得られてきたと思うんですけれども、今回はそれを失うのではないか、そうした日本のプレゼンスというものを、失うおそれというのはありませんか?
菅官房長官: それは全くないと思います。
私、申し上げましたように、日本と関係のある他国に対する武力攻撃が発生をし、「わが国の存立が脅かされ」て、そして「国民の生命、そして自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」ということで、しっかり歯止めかけてますから、そこは問題ないと思ってます。
◆集団的自衛権で第三国を攻撃したら、日本から攻撃したことになるのか?
国谷キャスター: ただ、集団的自衛権の行使が、密接な関係のある他国のために、もし行使した場合、第三国を攻撃することになって、第三国から見れば、日本からの先制攻撃を受けたということになるかと思うんですね。
それは戦争っていうのは、他国の、自国の論理だけでは、説明しきれないし、どんな展開になるか分からないという、そういう危険を持ったものですから。
菅官房長官: こちらから攻撃することはありえないです。
国谷キャスター: しかし…。
管官房長官: そこは。
国谷キャスター: しかし集団的自衛権を行使している中で、防護…。
菅元首相: ですから、そこは最小限度という、ここに3原則という、しっかりした歯止めがありますから、そこは当たらないと思いますよ。
◆東シナ海や南シナ海に対して今後、政府としてどう取り組んでいく?
原記者: 抑止力を高めるということは、緊張感も高まるということにつながると思うんですけれども、今、東シナ海ですとか、南シナ海では、現実問題として、日本というよりは、中国側の事情で、緊張感が高まっているわけなんですけれども、こういった問題に対して、今後、政府としてどういうふうに取り組んでいく考えですか?
菅官房長官: これはぜひご理解をいただきたいんですけど、わが国は10年前と比較をして、防衛力はマイナスです。
そして安倍政権になって、私たちが防衛費、よく軍国主義とか、他の国に言われるときありますけど、私たちは0.8%しか伸ばしてないんです。
そして昨年の暮れですね、防衛大綱というものを決定をしましたよね。
その中で、中期防衛計画というのは、現在と同じ5年間の防衛費というのは現在と同じぐらいですから、そこは明らかに日本の安全保障というのは、変わらないということが一つの証しじゃないでしょうか。
しかし、近隣諸国ですよ、10年で4倍になってる国さえあるじゃないですか。
そういう中で、2桁、まだ軍事費を伸ばし続けている国があります。
そういう意味において、やはりわが国の取るべき道というのは、やはり日米関係を強化して、抑止力を高めていく、このことを私たちは、今回、閣議決定をして、これから法案にするについて、法案を作るのに3、4か月と言いました。
これは約1年かかると思いますよ。
そういう中で、国会で審議をして、そこの日本の新3要件を含めて、国民の皆さんにしっかりとそれは理解をしていただくように、丁寧にこれから国会で審議をしていきたい、こういうように思っております。
◆不安や懸念は、払拭できるのか?
原記者: 不安や懸念というのはありますけれども、このへんは払拭できますか?
菅官房長官: ですから国会審議の中で、しっかりとこれは慎重に、一つ一つ、具体的なことを挙げながら、国民の皆さんに間違いなく理解をしていただけると、このように思っています。
以下、未記載部分追加
◆解釈変更という、原則の部分の不安や懸念は、払拭できるのか?
国谷キャスター: しかし、そもそも解釈を変更したことに対する、原則の部分での違和感や不安、というものをどうやって払拭していくか。
菅官房長官: ですから先程来から申し上げましたように、これだけなんがかんか42年間そのままでですね、どこの国でも、一国で平和を守る・・・(※ここで番組時間のため終了)
(追加参考)拙ブログ記事
「集団的自衛権は正しくも、必要も、抑止効果もない」
(巻末資料)各キーワード別の現在の報道
•「集団的自衛権」https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ie=UTF-8&ion=1&gws_rd=ssl#hl=ja&q=%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9&tbm=nws
•「集団安全保障」https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ie=UTF-8&ion=1&gws_rd=ssl#hl=ja&q=%E9%9B%86%E5%9B%A3%E5%AE%89%E5%85%A8%E4%BF%9D%E9%9A%9C&tbm=nws
•「日米同盟」https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ie=UTF-8&ion=1&gws_rd=ssl#hl=ja&q=%E6%97%A5%E7%B1%B3%E5%90%8C%E7%9B%9F&tbm=nws
•「集団的自衛権 閣議決定」https://www.google.co.jp/webhp?sourceid=chrome-instant&ie=UTF-8&ion=1&gws_rd=ssl#hl=ja&q=%E9%9B%86%E5%9B%A3%E7%9A%84%E8%87%AA%E8%A1%9B%E6%A8%A9+%E9%96%A3%E8%AD%B0%E6%B1%BA%E5%AE%9A&tbm=nws
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