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折々の記 2016 ④
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】04/17~     【 02 】04/25~     【 03 】04/27~
【 04 】05/01~     【 05 】05/02~     【 06 】05/04~
【 07 】05/05~     【 08 】05/05~     【 09 】05/07~

【 07 】05/05

  05 05 立憲主義を取り戻す時   座標軸 論説主幹 根本清樹
  05 05 憲法、改憲発議求める集会   市民共闘の力
       立憲 対 非立憲 : 下   憲法を考える
       おばちゃん語訳 機嫌よう暮らしたい   憲法を考える
       議論正面から 憲法改正の是非   護憲派・改憲派、各地で集会
       10代、教育を受ける権利、施設からの進学困難「矛盾」   憲法への思い
  05 05 円急騰、一時105円台 1年半ぶり円高水準ドルの不安定        止まらぬ円買い   アメリカのあおりを受けて
  05 05 香港と日本の報道界   天声人語
  05 05 労働力、移民でしのぐ 外国人政策、ドイツは   人口減にっぽん 海外から考える:中
  05 00    
         

 05 05 (木) 立憲主義を取り戻す時     座標軸 論説主幹 根本清樹

流石、論説主幹は安倍政権のやり方を的確に評価し主張している。 私たちは 根張 り強く憲法の平和主義を守らなければならない。


2016年5月3日 (座標軸)
立憲主義を取り戻す時
      論説主幹・根本清樹
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12339830.html

 喫茶店や居酒屋での勉強会はクイズから始まる。「国民は憲法を守らないといけない。○か×か?」。正解は×――。

 「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、憲法を楽しく学ぶ催しを全国各地で続け、5月3日を前に「憲法カフェへようこそ」を出版した。なぜ×が正解なのか、新著に説明がある。

 法律は国民が守らなければならないが、憲法は違う。憲法は、国民が首相や大臣、国会議員などの為政者に守らせる約束事。作用する向きが正反対なのだ。

 憲法には政治権力がしていいこと、いけないことが書いてある。権力を憲法で縛り、暴走を防ぎ、国民の基本的人権を守る。こうした「立憲主義」の思想をもっと知ってほしい。若手弁護士の会の共同代表を務める黒澤いつきさんらは、そんな思いで活動を続ける。

 ◆非立憲的な執政ぶり

 憲法が公布されて今年11月3日で70年。歳月は重ねたが、立憲主義が本来の機能を果たしているとは到底言えない現状である。「非立憲」的と形容するしかない安倍政権の執政ぶりが、憲法の掲げる「人類普遍の原理」を傷つけている。

 憲法の縛りを何とか解き放ちたい。この点で、政権の姿勢は一貫してきた。

 発足直後から憲法96条の改憲要件を緩めようと模索し、批判を浴びて引っ込めた。普通の法律改正より厳格な手続きが必要なのは、時の権力を拘束する立憲主義からすれば当然だろう。

 安保法制では強引さが際立った。(1)9条の下では集団的自衛権は行使できない(2)この解釈は時の政権が自由に変更できる性質のものでない(3)行使を認めるには条文を改正するほかない。こうして長年にわたり三重に施されてきた錠を、安倍政権は一挙に解いた。

 憲法にもとづく臨時国会召集の要求を拒む。一票の格差是正で最高裁の判断に従うのを渋る。言論の自由や批判の自由を軽んじる。「権力分立」も「人権保障」も、およそ憲法の縛りというものに頓着がない。

 そのような政権が、憲法に緊急事態条項を書き込むことに関心を寄せている。自民党の改憲草案によれば、内閣への権限の集中と、国民の人権の制限がセットである。縛りからの歯止めなき解放に至らないか、極めて危うい。

 ◆民主主義に潜む危険

 衆院選でも参院選でも勝利し、国民に信任されたではないか。首相はそう自負しているのかも知れない。正当に多数を握ったのだから何でもできるという発想だとすれば、それこそ非立憲的というほかない。

 民主主義は優れた仕組みだが、多数派の専横に陥る危険も潜む。選挙が独裁者を生むこともある。立憲主義は民主主義にも疑いの目を向け、「数の論理」の横行や少数派の切り捨てに待ったをかける。その役割を忘れるわけにはいかない。

 首相はこの夏の参院選で改憲を訴えるという。立憲主義をさらに傷つけることを許すのか。立憲主義を取り戻し、立て直すのか。主権者である私たち国民が、答えを出すしかない。


 05 05 (木) 憲法、改憲発議求める集会     市民共闘の力

集団自衛権は違憲とする学者、労働組合、学生団体設立の市民連合、野党共闘、私が心配し続けた静かにしていた良心的国民が一つに結集された。 良心発露の結集の力を国民に示してくれるようになった。 うれしいニューです。


2016年5月4日 朝日新聞
憲法、攻防 参院選にらみ集会 「改憲発議求める」「市民共闘で阻止」
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341430.html

 安倍政権が憲法改正に意欲を示すなか、憲法施行から69年となった3日、東京や大阪など各地で憲法を考える集会が開かれた。夏の参院選を前に、改憲派が、改正の発議に必要な3分の2議席の確保をめざす政権を後押しする一方、護憲派はそれを阻止するための野党共闘を主張。改憲の是非をめぐる攻防が展開された。

 ▼2面= 連載「憲法を考える」 、11面= おばちゃん語訳語る 、26面= 議論正面から 、27面= 10代、憲法への思い

 東京・有明の広域防災公園で開かれた護憲派の集会には、約5万人(主催者発表)が参加。旧総評系や全労連系の労働組合や、参院選での野党共闘を支援するため学生団体「SEALDs(シールズ)」などが設立した「市民連合」が集まった。

 市民連合の呼びかけ人、山口二郎・法政大教授は「野党と市民がまとまれば勝てる。参院選に向けてうねりを起こそう」とあいさつ。参院選1人区で野党共闘を進める民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちの4党の党首も出席し、民進党の岡田克也代表は「安倍(晋三)首相がめざす憲法9条の改正を絶対阻止しよう」と訴えた。

 東京・平河町の砂防会館別館であった改憲派の集会には、約1100人(主催者発表)が出席。有識者でつくる民間憲法臨調と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の共催で、同臨調代表のジャーナリスト、桜井よしこさんは改憲について「緊急事態条項を入れるところから出発するのがよい」と主張した。

 安倍首相もビデオメッセージを寄せ、「新しい時代にふさわしい憲法を自らの手で作り上げる、その精神を広めていくための取り組みに力を尽くしたい」と語った。集会の最後には、参院選を踏まえ、改憲の発議を求める声明が読み上げられた。

 一方、公明党の山口那津男代表は3日、愛知県東海市の街頭演説で憲法について「やたらに変えることはない。本当は法律や予算をつくっていくことが大事」と述べた。


2面=連載「憲法を考える」
(憲法を考える)立憲vs.非立憲:下 中野晃一さん・内田樹さんに聞く
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341419.html

 このシリーズでは、護憲VS.改憲でなく、立憲VS.非立憲という「レンズ」を用いて、日本の現在に目をこらしてみた。(上)では、小選挙区制導入後、数の力で「決められる政治」に突き進んでいく軌跡をたどり、(中)では、経済のグローバル化が、国民の権利を守る立憲主義と衝突する現状を点描した。そして今回、このような現状と問題意識について、2人の識者に語ってもらう。▼1面参照

 ◆非立憲的な政治、世界に拡散 上智大教授・中野晃一さん

 戦後の日本において、立憲主義という言葉は忘れられ、憲法論争はもっぱら、9条を中心に、護憲か改憲かで行われてきました。

 ところが、グローバル化の進展とともに、強い指導者が求められ、選挙で選ばれた時の政府が何でも決めていいというような、非立憲的な政治手法が広まった。さらに、安倍政権のもと、改憲勢力が非立憲ないし「壊憲」勢力に変貌(へんぼう)したことで、立憲主義が再び見いだされました。

 ただ、立憲主義の危機は日本だけではありません。そもそも近代的な立憲主義は、国を単位として、政治や経済の秩序をつくる中で出てきた考え方です。

 それが冷戦後、経済や安全保障のあり方が、国という枠組みを越えてしまったため、憲法秩序が極めて成立しづらい状況になり、非立憲的な政治が世界中に広がっています。米国や西欧で対テロのために市民の人権が制約されるようになっているのもその一例です。

 非立憲化と同時に、ナショナリズムなどの情念を喚起して人々を動員する政治も世界的潮流です。国の財政はどこも厳しい。もう、金をばらまいて国民をまとめられないなか、国としての一体感を保つために、情念を使った動員への依存が進んでいます。各国で極右政党が選挙に勝利しているのはそのためです。

 日本でも、小泉純一郎首相が構造改革を唱え、新自由主義的な経済政策を進める一方で、靖国参拝にこだわった。安倍晋三首相もその流れの中にあります。

 経済のグローバル化に対応するため、政治も、新自由主義的な企業モデルに変質していきます。少数意見や弱者への配慮、熟議を嫌い、トップダウンでの「決められる政治」をめざす。「私が最高責任者」という安倍首相の言い方はまさに、CEO(最高経営責任者)そのものです。

 ◆小選挙区制、乏しい選択肢

 有権者はさながら、選挙の時だけ呼んでもらえるお客様です。政策や実績を見て「商品」を選び、評価は次の選挙で下してね、と。いい商品は売れる、悪い商品は淘汰(とうた)される。一見フェアですが、実際は、小選挙区制では「商品」の選択肢が少ない上に、死票が多い。マーケットがゆがんでいるのです。

 小選挙区制は結局、A党かB党かを選ぶのではなく、政権党に○か×をつける戦いになる。×をつけられたくない政権党は、優れた政策で支持を広げる「正攻法」より、報道に圧力をかけたり、野党を分断したり、自分たちに有利なように民主主義の「土俵」を作りかえた方が手軽で早いと考えがちです。安倍首相がここまで非立憲的な振る舞いをしているのも、そういう理由だと思います。

 小選挙区制導入には、二大政党が政権交代を繰り返すことでチェック・アンド・バランスをきかせるという発想がありましたが、民主党が壊れたら見事に何もなくなった。二大政党ありきで進んだ政治改革をもう一度見直し、多様な言論や政治的オプションを維持できる制度に変えていく必要があると思います。

 (聞き手 論説委員・坪井ゆづる、藤原慎一)

     *

 なかの・こういち 1970年生まれ。上智大国際教養学部教授。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。著書に「右傾化する日本政治」。

 ◆国家運営、ビジネスとは違う 神戸女学院大名誉教授・内田樹さん

 グローバル企業の論理は、国民を主権者とする国家のあり方とは、基本的に相いれないものです。

 国境を越えて活動しているので、それぞれの国の法律や言語、商習慣や判例が違うのは困る。雇用条件も労働者の規格も同じ、という均質化した社会が最も望ましいのです。

 例えば日本企業の場合、自分たちは韓国や中国と戦っているというストーリーを組み立て、労働者を解雇しやすくしろ、労働者は低賃金でも我慢しなければならない、と要求している。そうした論理は、国民主権をむねとする立憲主義ともぶつかることになります。

 自民党の改憲草案では、現行憲法で人権を制限する「公共の福祉」という言葉が削られ、「公益及び公の秩序」に置き換えられていることに注目すべきです。

 「公共の福祉」という言葉は、「民の安寧」というラテン語からきています。安寧は、健康や安全、幸福、豊かさなど様々なものをさす。そのせいで「公共の福祉」では曖昧(あいまい)すぎるという議論もあります。

 しかし、曖昧であるがゆえに、実際に個人の基本的人権を制限するには、情理をつくして説得し、多数の理解を得ないといけません。民主主義の訓練のために、あえて多義的な概念を最上位に置いていると考えるべきです。

 これに対し、草案は「公益」や「公の秩序」により私権を制限できるようにするものです。企業が活動しやすい国をつくると言っているようです。経済成長を重視し、事実上の一党独裁で国の方針を決めるシンガポールのような国をめざしているとしか思えません。

 ◆失政おかせば、責任は無限

 国家の運営は、ビジネスとは全然違います。株式会社はつぶれたら、出資した人間が損することが責任のすべてです。だが、国家は、外交や国防、食料、エネルギーなどの基本的な戦略で失政をおかせば、その責任は無限に続きます。

 日本の場合は、先の大戦に負けたことで、米軍がいまだに国内に軍事基地をもち、北方領土もロシアが占領している。ときのエネルギー事情によってつくられた原発で事故が起き、国土の一部が住めなくなってしまった。憲法改正もそうですが、首相が辞めれば済む問題ではないのです。

 そもそも日本国憲法は、本質的なもろさを持っています。日本人が自分たちの手で獲得したのではなく、連合国軍総司令部(GHQ)の草案をもとにつくられたからです。憲法を制定した「日本国民」という主体が、当時は存在していなかった。実質的な意味を込めるには、努力し続けなければなりません。

 日本は人口減少時代に入り、右肩上がりの成長は見込めない。成長よりもどうやってフェアに分配するかを考えないといけない。

 「成長より分配」という議論が先進国を中心に出てきているのも、経済のグローバル化が格差を広げている実感があるからでしょう。憲法を守りたいと思うならば、行き過ぎたグローバル化には「待った」をかけるしかありません。

 (聞き手 編集委員・堀篭俊材)

     *

 うちだ・たつる 1950年生まれ。思想家(フランス現代思想)で、武道家。「日本辺境論」「街場の共同体論」など著書多数。


11面=おばちゃん語訳語る
(憲法を考える)機嫌よう暮らしたい 大阪国際大学准教授・谷口真由美さん
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341317.html

 憲法のことはよくわかりませんが、それが何か? いえいえ、あなたの生活と将来にかかわることなので、知っておきましょうよ。フェイスブック上に「全日本おばちゃん党」というグループを作っている谷口真由美さんは、「おばちゃんでもわかる」を切り口に憲法を語っています。ええこと、書いてあるようやで、と。

 ――いろいろ議論のある憲法ですが、身近に感じられないという声をよく聞きます。

 「『よくわからない』という人が多いので、大阪おばちゃん語に訳してみました。条文が全部で9条しかないと思っている人が結構おられます。『憲法ってどこにあるの? 国会の金庫の中?』と聞かれたことも実際にあります。ほんなら、まずはおばちゃんと一緒に読んでみましょうかと」

    ◇

 【日本国憲法前文】 日本国民の皆さんは、まっとうな選挙で選ばれた国会議員をとおして政治にもちゃんと参加しなはれや。よその国の人らとも仲良うしながら、日本のすみずみまで自由であることがええなぁって思ってますねん。(中略) もう戦争はしやしまへんってきっぱり決めましてん。そのためには、主権は国民にあるってちゃんと宣言しときますな。(後略)

    ◇

 「目指す国の姿が書いてある前文の主語を、『私』に置き換えて読んでみて下さい。そうすれば、一人ひとりが主権者であること、憲法に書かれていることに責任を負っていることを自覚できます。自覚しないまま、憲法を論じてはいけないと思います」

 ――改憲や護憲を語る前に、「知憲」から始めるということですね。

 「そこから始めないと憲法に失礼ですよ。変えるか変えないか。主語を自分にして社会に責任を持とうとしない限り、自分で判断できるようにはなりません。そのためには学ぶしかありません」

 「ここ数年、憲法にかかわる時事ネタに困らなくなり、隔世の感があります。絶対に変えてはいけないとは思いませんが、変え方と変える人と変えるタイミングがぜんぶズレてしまったらどうなるのか。その危うさが常にあります」

 「議論に欠けているのは、次の世代の人たちが今より良くなるようにという視点です。憲法の恩恵を私たち以上に受けられるように、憲法は使っていかないといけない。権利が拡大され、それによってしんどい人が減るのであれば、変えればいい。けれども、改憲を言う人たちは、権利を制限する方向で進んでいます」

    ■     ■

 ――人権のことを「ええもんみたいやで」と説明しています。

 「みなさん当たり前のこととして人権を享受しているのに、気がつかないまま過ごしている。義務教育を受けられるのも、人からむやみに殴られないのも、人権が規定されているおかげです」

    ◇

 【11条】 国民は、すべての基本的人権をもってますねん。基本的人権っちゅうのは、人が生まれながらにしてもってる権利(自然権)のことですねんわ。(中略)いまの私らにも、将来の世代の子らにも永久の権利として与えられまんねんで。

    ◇

 ――人権を主張する人は、敬遠される。そんな空気を感じます。

 「『人権を主張してうまくやった人が、得をしている』という誤解が広がっているからです。一方で、人権といえば何でも認められるようなことを言う人がいますが、それも間違っています」

    ◇

 【12条】 この憲法が国民に保障してる自由とか権利は、みんなで普段から絶え間なく努力することで持ち続けていかなアカンねんで。ほんで、私らもこれを自分のためだけにつこたらアカンねん。ひとさまにご迷惑おかけせーへんようにつかわなアカンねんで。自分だけが大事とか言うてたらアカンねんで。

    ◇

 「人権というものは、守ろうとしなければあっさり奪われてしまいます。人類の自由獲得の歴史を顧みるまでもありません。不利益を受ける方向で制度が変更されるときに、それを感知するアンテナが重要です。そのアンテナがどうも鈍ってしまっています。国民の知る権利を狭めた特定秘密保護法が成立し、運用の改善もみられないのは、一つの例でしょう」

 「12条の後半は、公共の福祉のことです。自分と同じく憲法で自由と権利を保障されている『ひとさま』と利害が衝突した場合、それを調整するよりどころです」

 ――公共の福祉は本来の意味と違って、国や地方自治体の行為に個人が譲歩する場面という捉え方が広がっていませんか。

 「まさにその点が気になっています。自民党の改憲草案ではさらに進んで、『公益及び公の秩序に反しない限り』に変えています。秩序を問題にするのは統治や管理をする側です。不寛容になっている社会の中で公の秩序を持ち出されることは、ものすごくこわい。何でもありのとても寛容な社会で秩序も必要だといわれたら、『たしかにね』となるのですが」

 「個人の行為を縛る制限条項は、できるだけ少なくしておかないといけない。それが人権にとっても大事なことだからです。個人の権利を制限する方向に憲法を向かわせることは危険なことです」

    ■     ■

 ――望ましい出生率を奨励したり、3世代同居の優遇策を始めたり、私的な領域に国家が踏み込んできているように感じます。

 「産むか産まないか。性と生殖に関する権利は、13条の幸福追求権から読み取れるのですが、国家の介入がずっと続いています。昭和30年代は産児制限の音頭を取り、今は産んでくれ、それから働いてくれと」

    ◇

 【13条】 どなたはんも、個人として生きていかはることを大切にしまっせ。いのちに自由、ほんで幸せを追い求めていく権利は、他人さんにご迷惑をおかけせーへん限り、法律つくるときにも、政治をする上でも、もっとも大切にしていきまっせ。

    ◇

 「なにが幸せかは、一人ひとりが決めること。幸せの形を国家が決めようとすることに抵抗していくのも、幸福追求の権利です」

 「刑法には堕胎罪がまだ残っています。レイプは親告罪で、被害者が届け出ないと捜査をしてくれません。女性に厳しかった明治時代の法律が残っていることは、憲法に照らし合わせると問題です」

    ■     ■

 ――そもそも、どうして「おばちゃん」なのでしょうか。

 「機嫌よう暮らしたいと思いませんか? 隣に困っている人がいたら助けてあげる、誰かのために労力をいとわず何かをしてあげる。そういったおせっかい感や、他者への配慮を、『おばちゃん』ということばに込めています」

 「残念ながら、私たちの暮らす社会はどんどん不機嫌で不寛容になっています。生活保護バッシングや過剰な自己責任論、ヘイトスピーチ。『社会は支え合い』ということばが、空々しい状況です」

 「『おばちゃん』と正反対の存在が、『オッサン』です。ありがとう、ごめんなさい、おめでとうを言えない人たちです。政治の世界も力のある組織もいまだ『オッサン』が中心。そのことに『おばちゃん』は憤っています」

 ――区別して批判することで誰かの人権を軽んじていませんか?

 「どんなに嫌いな人であっても、その人が不当な扱いを受けたら声をあげて守ろうとする。これがおばちゃんマインドであり、実は人権の本質です。同じことができる男性を、『おっちゃん』と呼んでいます。できない女性ですか? それは『オバハン』です」

 「対話の機会を作っていきたいです。こちらからは、弱者に対するまなざしを持ってと呼びかけたい。お互いケアが必要な人間だという共通理解を持てたら、足の引っ張り合いからくる社会の息苦しさは改善します。『生きてるだけで丸もうけ』と確認しあえたら、周囲から思うように認めてもらっていないことで不機嫌になっている人たちは減るはずです」

 ――おばちゃん語訳で憲法を身近なものにした先に必要なものは何でしょうか。

 「人々の意識が憲法に追いついていないところがあります。読んでいくと自律した個人が像を結ぶのに、そうした人に嫌悪感を覚える人が多い。それが女性だと特にそうなりますよね。自律した個人の集合体による、自律した社会。施行から69年ですが、まだそこにはたどりついていません」

 「憲法は、人々が暮らしやすくするためのものです。ですから憲法の精神に照らし合わせておかしなことがあれば、面倒くさくても声をあげなくてはなりません」

 「そのためにも、おばちゃん目線で『オッサン政治』にツッコミをいれていくことが大事だと思っています。目を凝らしながら、機嫌よう暮らしていきたいです」

 (聞き手・北郷美由紀)

    *

 たにぐちまゆみ 1975年生まれ。専門は国際人権法、ジェンダー法。大阪大学で12年続く憲法講義が人気。著書に「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」など。


26面=議論正面から
憲法改正の是非、正面から 護憲派・改憲派、各地で集会
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341372.html

 憲法記念日の3日、各地で開かれた集会では、憲法改正の是非が正面から論じられた。参院選を控え、護憲派は改憲に向けた動きに危機感を強める一方、改憲派は憲法改正発議の実現をめざす。

 ◆護憲派「戦争を絶滅させよう」

 東京・有明で開かれた護憲派の集会では、戦争を知る世代から若者まで、多くの参加者が登壇し、憲法への思いを語った。

 101歳のジャーナリスト、むのたけじさんは車いすに乗って参加し、「無様な戦争をやって残ったのは憲法9条。9条こそが70年間、国民や他国民の誰をも戦死させなかった」と語った。戦争取材の経験を踏まえ、「戦争を殺さなければ、人類は死ぬしかない。戦争を絶滅させよう」と訴えた。

 安全保障関連法に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基(あき)さん(23)は、会場の参加者と一緒に「憲法守れ!」と声をあげた。憲法が定める個人の権利などについて「70年の不断の努力が支えてきた。こんなところで終わるわけはない」と語った。

 登壇者の話を聴いていた千葉県の主婦小林弘子さん(72)は、両親から東京大空襲の被災体験を聞いて育った。「平和を守ってくれた9条が改憲勢力によって変えられてしまうのでは」と不安を抱く。埼玉県川口市の無職の男性(39)も「(改憲の)入り口を許すと最終的には戦争につながってしまうかもしれない」と話した。

 集会では、市民団体「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」が、法の廃止を求める約1200万筆の署名が集まったことを報告した。

 宇都宮市での集会にも400人以上が参加。参院選での野党共闘を訴える声があがった。

 ◆改憲派「緊急事態条項を急げ」

 改憲派の団体「民間憲法臨調」と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が東京都内で催した「公開憲法フォーラム」。3日に発表された声明では、有事に政府の権限を強める「緊急事態条項」の創設を「喫緊の課題」と位置づけた。

 登壇した下村博文・自民党総裁特別補佐は「憲法9条があるから戦争に巻き込まれずにすんだと、信仰のように感じている方があまりに多い」と主張。緊急事態条項については東日本大震災を例に「国会議員の任期は憲法に規定されているので、法律で例外を規定できない。緊急事態が起きたら特例で任期を延ばす」と述べた。

 福島県郡山市の原正夫・前市長は東京電力福島第一原発事故後の経験に触れながら「改憲を行い、緊急事態条項を設け、原子力災害の事案についても明記すべきだ」と訴えた。集会では「国民の会」が呼びかけてきた憲法改正の賛同者が700万2501人に達したことも報告された。新憲法制定を掲げる「日本会議」が主導する同会は、1千万人を目標に賛同者を募っている。

 3日には、別の改憲派団体「新しい憲法をつくる国民会議」も東京都内で大会を開き、約400人(主催者発表)が参加した。大災害への備えとして現憲法に「国家非常事態対処規定」を盛り込む必要性を訴えた。札幌市での「美しい日本の憲法をつくる道民の会」の集会では、田下昌明・共同代表が「参院選に勝ち、憲法改正の扉を堂々と開けていこう」と語った。


27面=10代、憲法への思い
10代、憲法と出会った 教育を受ける権利、施設からの進学困難「矛盾」
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341414.html

 憲法論議が高まるとみられる今夏の参院選では、「18歳選挙権」が初めて導入される。10代の高校生らは憲法にどんな思いを抱いているのか。学校のこと、地元のこと、アルバイトのこと。身近な問題に憲法を重ねる若者たちがいる。▼1面参照

 ◆施設からの進学困難「矛盾」

 【教育を受ける権利(憲法26条1項)】

 「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」

    ◇

 名古屋市の小林爽夏(さやか)さん(18)は3日、岐阜県へ向かった。今春まで17年過ごした同県の児童養護施設の職員や友人らに会うためだ。

 4月に名古屋文化短大に入学し、大好きなメイクを学ぶコースを専攻した。鏡が並んだ教室でメイクを落とす練習をしたり、顔立ちが他人に与える印象について学んだり。「毎日がすごい楽しい」

 両親の離婚で1歳から施設に入った。アイシャドーなど、施設職員の化粧品を触るのが好きだった。嫌な部分を隠し、ちょっときれいになれるメイク。百貨店の化粧品売り場の美容部員に憧れるようになった。

 施設は原則18歳で出なければならないが、学費や生活費を頼れる人はいない。進学か、就職か。迷い続けた。施設の8割の子が進学希望だが、実際に進学するのは2割ほど。学費を払えず退学する例もある。それでも、「後輩に進学の道もあると伝えたい」。利子付きの奨学金を借り、アルバイトでも稼ぎながら学ぼうと思い定めた。

 その矢先、昨年冬に施設の園長から、返済の必要がない日本財団の給付型奨学金のことを聞き、応募してみた。面接などを経て合格。月10万円が支給され、学費も出してもらえる。「本当に奇跡です」

 憲法26条は、どこかで耳にした記憶がある。「教育を受けたくても受けられない子がいるから、現実とは矛盾した文章だな」。施設の子たちのことを考えるとそう思う。「政治家には、もっと子どもの声も聞いてほしい」

 ◆「ブラックバイト」、対抗できた

 【勤労者の団結権(憲法28条)】

 「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」

    ◇

 千葉県船橋市の高校3年、條大樹(じょうだいき)さん(17)は3日午後、4月から始めたアルバイト先の飲食店でホールに立った。

 以前はショッピングモールの和食チェーン店でバイトをしていた。研修は無給で、靴代は給与から天引き。「おかしいな」と思った。

 昨年6月に参加した憲法を考える集会で、高校生が団体交渉でバイト先の待遇を改善させたことを知った。集会で出会った労働組合・首都圏青年ユニオン(東京)のスタッフらに同席してもらい、自分のバイト先と団体交渉をした。会社側は、靴代の支給などに同意し、全社的に賃金算定を改善することも約束した。

 「憲法28条があるおかげで、僕でも勝てた」。昨年8月には仲間の高校生と「首都圏高校生ユニオン」を結成。長時間労働などを強いる「ブラックバイト」に対抗する活動を続ける。

 テスト前にバイトを休めなかったり、深夜に1人で働かされたりした高校生は少なくない。「辞めるなら代わりを連れてきて」「辞めたら求人用の広告費を天引きする」と迫られたり、セクハラを受けたりした例もある。「自分のバイト環境がブラックだと知らない人が多い。高校生でも、声を上げれば変わることを知ってほしい」

 ◆沖縄と本土、隔たりある

 【法の下の平等(憲法14条1項)】

 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又(また)は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

    ◇

 沖縄県北中城(きたなかぐすく)村の高校2年、上地周(うえちあまね)さん(17)宅の向かいには、米軍キャンプ瑞慶覧(ずけらん)が広がる。隣の宜野湾市には、市街地に囲まれた米軍普天間飛行場もある。

 小中学校では、米軍機が上空を飛ぶたびに、騒音で授業が中断した。安全保障のために米軍基地が必要だという主張は、ある程度わかる。でも、日本にある米軍専用施設の7割以上が沖縄に集中する現状は受け入れられない。普天間飛行場を同県名護市辺野古に移設する国の計画にも反対だ。

 沖縄では2014年の知事選で、辺野古移設に反対する翁長雄志氏が当選した。憲法は「国民主権」をうたう。「日本国民でもある県民の思いに反して、国が勝手に移設を進めるのはどうなのかな。本当に民主主義なのかな」。14条が規定する「法の下の平等」についても、疑問が膨らむ。「本土の人と沖縄の人は本当に平等ですか?」

 今年3月、東京で18歳選挙権を考える高校生らの催しに参加し、辺野古移設について議論した。「沖縄に基地は絶対必要」「県外に移せばいいの?」といった意見も出た。沖縄戦や米軍統治の歴史を、本土の人はほとんど知らないと思った。

 今夏、本土の高校生を沖縄に招くイベントを計画中だ。「もっと沖縄のことを知ってほしい」。沖縄の問題を、日本全体で考えて欲しいと願っている。

 (伊東和貴、佐藤恵子)


 05 04 (水) 円急騰、一時105円台 1年半ぶり円高水準     金融政策の失敗?

金融政策の失敗?

田中宇の情報でドル崩壊が前から叫ばれており、アメリカの言うとおりの紙幣増発に関した金融政策の不用意が現われだしたのと違うのか?



2016年5月4日
円急騰、一時105円台 1年半ぶり円高水準
      ドル不安定の序曲か?
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341431.html

 3日の外国為替市場は、ドルを売って円を買う動きが強まり、円相場は一時1ドル=105円台半ばまで上昇し、2014年10月以来約1年6カ月ぶりの円高水準となった。▼ 4面=止まらぬ円買い

 3日は東京市場は祝日で休みだが、海外市場で円買いが進み、シドニー市場で1ドル=105円台に突入し、ロンドン市場で一時、105円台半ばをつけた。その後値を戻し、ニューヨーク市場では主に106円台前半で取引されている。

 日本銀行が先月28日に追加の金融緩和を見送った後、円高が加速している。

 米国の1~3月期実質国内総生産(GDP)が市場予想を下回り、早期の利上げ観測が遠のいたこともあり、3日までの6日間で、対ドルで6円ほど円高が進んだ。米政府が日本の為替政策を監視対象に含めたことで、「日本が為替介入をしにくくなり、円買いを後押ししている」(証券系アナリスト)との見方も出ている。

 黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は2日、独フランクフルトで「今のような円高は(日本)経済に好ましくない影響を与える恐れがある」と述べ、投機的な円高を牽制(けんせい)した。しかし、市場では「これまでの発言の範囲内」(信託銀行の為替担当者)と受け止める見方が多い。


4面=止まらぬ円買い
連休中、止まらぬ円買い 背景に「介入困難」の見方
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341348.html

 日本の大型連休中に、海外市場で円買いが止まらない。3日には一時、約1年6カ月ぶりとなる1ドル=105円台半ばまで円高が進んだ。連休中は取引に参加する企業などが少なくなり、短期的な利益を狙う投機筋の思惑で為替の値動きが一方向に振れやすくなっている。▼1面参照

 日本政府は「急激な円高、円安にはいろんな手段をとる」(麻生太郎財務相)と強調しているが、今月下旬に主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を控えて、通貨安競争を招きかねない為替介入に日本政府が踏み切れると見る向きは多くない。

 米財務省が、日本など5カ国・地域の為替政策を監視すると外国為替報告書に明記したことで、「為替介入は難しいとみて、海外勢が攻めている状況だ」(みずほ証券の鈴木健吾氏)との見方も広がる。

 三井住友信託銀行の瀬良礼子氏は「一気に100円台まで円高が進むなど、よほど急激な動きがないと介入はできないだろう」と話す。大和証券の亀岡裕次氏は「連休中は105円をめぐる攻防が続くのではないか」とみる。(久保智)


 05 05 (木) 香港と日本の報道界     天声人語

      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341424.html

▼ひと昔前まで、香港の新聞や雑誌は「報道の自由」の旗を高く掲げ、中国共産党や財界の不正に果敢に切り込んだ。だが近年は様子が違う。本土の影響が強まり、親中派の意向が経営陣の顔ぶれや報道内容に色濃く表れるようになった

▼先月末、ある香港紙の編集幹部がいきなり解雇された。租税回避の実態をあばいたパナマ文書を詳報した当日のことだ。あの文書には党中央が神経をとがらせている

▼ラジオでは、鋭い政府批判で人気の司会者が降板させられた。「香港政府が局に圧力をかけた。放送免許更新という魔の呪文に局がひざまずいた」と司会者は明かした。親中派企業は占拠デモの参加者ら民主派に近いメディアへの広告を急減させた

▼驚いたことに先日発表された国際調査では、そんな香港よりも、日本の方が「報道の自由」度が低いと判定された。世界180の国と地域を調べた国際NGO「国境なき記者団」が、香港を69位、日本を72位とした

▼上位には北欧や西欧の国が並び、下位には独裁国が目立つ。西欧中心の見方ではないかと思うものの、72位という順位には記者として自責の念を抑えがたい。報道の将来を思うと、焦燥感がこみ上げる

▼それにしても、昨今の自民党議員らによる居丈高な物言いは、やはり常軌を逸している。担当相が放送局に電波停止をちらつかせ、議員が報道機関を懲らしめる策を勉強会で披露する。あの種のふるまいがなければ、日本がここまで評判を落とすことはなかっただろう。


 05 05 (木) 労働力、移民でしのぐ 外国人政策、ドイツは     人口減にっぽん 海外から考える:中

      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12341346.html

 3月中旬、ドイツのベルリン中央駅前広場で、二つのデモが向かい合った。難民の受け入れに前向きなメルケル首相に「退陣!退陣!」と叫び声を上げるデモ隊と、難民を歓迎する旗を掲げ、「ナチスは出ていけ」などと叫ぶデモ隊だ。

 フォルカー・ヘーゲルさん(51)は難民受け入れ反対の側のデモに参加していた。だが、「移民」には反対ではないという。「働かない人が増えるのは困るが、移民はオーケーだ。ドイツは外国人と暮らしてきたし、私は排外感情を持っているわけではない」

 難民受け入れをめぐってドイツ国内の世論は二分しているが、働くことが前提の移民の受け入れには、ドイツ国民の間に広い合意がある。

 ドイツが移民受け入れにかじを切ったのは2000年代。少子化で労働力不足が顕著になったためだ。

 05年に58万人だった移住者は、14年には134万人に。今や移民を背景にする人口はドイツ全体(8100万人)の2割を占める。

 ポーランド出身で、家の改築などを手がけるピョートル・グゾフスキーさん(42)もその一人だ。95年から庭仕事などの出稼ぎを重ね、11年にはドイツ南部のミュンヘンに定住し、建築事務所を構えた。「故郷の村は映画館まで50キロ。仕事は200キロ離れた街にしかなかった。ドイツで車を持てたし、いい生活ができるようになった」と話す。

 ドイツが移民国にかじを切る節目になったのは、05年の「移民法」の施行だ。しかし、当初から移民受け入れで国論が一致していたわけではない。

 議会に移民法案を提案したシュレーダー政権(98~05年)は、「移民が職を奪う」といった社会の懸念にも直面し、当時メルケル氏が率いた最大野党は「移民の制限」を主張した。移民法案は03年、野党が多数を占めていた連邦参議院でいったん否決された。

 その後、各会派が参加する両院協議会で妥協に向けた協議が続いた。職場が決まっていない外国人の受け入れを制限することや、治安対策を厳しくすることなどの修正を盛り込み、04年の与野党党首会談でようやく合意した。

 ドイツの移民政策に詳しい近藤潤三・愛知教育大名誉教授は「人口が減るという危機感が共有されていた。小選挙区中心の日本と違い、政権が安定しやすいドイツの政治が、長期的課題に取り組むことを可能にした」と指摘する。

 ◆出生率、なお低迷

 ただ、ドイツの出生率は1・3~1・4程度と日本並みに低迷している。仕事と子育ての両立に悩む女性が多い状況も日本と似る。

 ミュンヘンに住む外科医のアリス・ヘルシャーさん(34)は1月に長女を出産し、現在育休中。「10年以上の医師のキャリアを無駄にしたくない」と半年後の復職を目指すが、当直もこなす男性と同じ働き方はできず、当面はパート勤務になる。授業が午前中で終わる「小学校の壁」も待ち構える。

 子1人あたり毎月200ユーロ(2万5千円)弱の子ども手当など、給付は比較的充実しているが、「託児施設を増やさなかったため女性が働きにくく、高学歴の女性ほど出産を諦める傾向が強い」(連邦人口研究所のユルゲン・ドルブリッツ調査部長)と指摘されている。

 メルケル首相は13年、「1歳以上の子どもは託児施設に入ることができる」とする権利を法律で保障。2歳以下の子のうち、託児所など預け先がある割合はここ数年で改善したが、それでも15年は3割にとどまる。数年以内に4割以上に引き上げる方針だ。

 ◆<視点>日本の場当たり策、持続困難

 産業構造や出生率など、日本とドイツは似たところが多いが、外国人に対する政府の姿勢はまるで違う。

 移民法で「表玄関」から外国人を受け入れるドイツでは、ドイツ語授業や職業訓練など、働く外国人への手厚い支援がある。いずれ税や社会保障の「支え手」にもなってもらう狙いがあるからだ。移民の本格受け入れ後もドイツ経済は堅調で、14年の失業率は5%にとどまる。財政も健全で、「移民が仕事を奪い、財政を悪化させる」との懸念は、少なくともドイツでは杞憂(きゆう)だった。

 一方の日本は、移民は入れないという原則を崩さないまま、国際貢献の名目で外国人を受け入れる「技能実習生」を、実際には低賃金で隷属的に働かせるようなやり方が横行している。

 日本で確実に人口減が進むことを考えれば、移民を受け入れるか、人口減に合わせて経済も縮む社会を受け入れるか、どちらかの選択になるはずだ。

 場当たり的に外国人を働かせ、移民は入れずに経済成長も追うような政策が長続きするとは思えない。(疋田多揚)


 05 01 (日)      






      
      



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