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折々の記 2016 ⑤
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 08 】05/23

  05 23 命の発生を目で見る   もの凄い迫力
  05 24 南海トラフ 四国や東海の沖合で特にひずみ
         2016年(平成28年)5月24日 火曜日
  05 24 田中宇の国際ニュース解説 ⑭
         金融の流れ金融システムの大転換序曲

         金融システムの大転換序曲
  05 24 日本の貧困   不平等の拡大?

 05 23 (月) 命の発生を目で見る     もの凄い迫力

NHK鈴木奈穂子さんの放送で見ました。
「わァーッ! 凄い」
それは鶏卵の孵化成功の映像だったのです。 この映像は生命の始まりを、映像ではなく、自分の目で確かめることができることを意味していました。 田原教諭の指導の下で生徒たちが実験をしていたのです。

この方法を自分でできることになれば、0歳教育への理解が確実になってきます。 そうした意味で、老生は驚嘆しました。


  容器の中で黄身と白身がヒヨコに成長!!
    殻を割った卵の中身からニワトリを孵化させる実験に成功!!

      http://commonpost.info/?p=73863

殻を割ったニワトリの卵の中身を透明な容器に入れてヒヨコに孵化させる実験に千葉市の高校教諭が成功しました。この方法をは、実験で使う卵を死なせずに孵化の様子を詳しく観察する学校の授業などに応用できると期待されています。

実験に成功したのは、千葉市中央区にある県立生浜高校の田原豊教諭(60歳)です。

高校の生物の授業では殻を割ったニワトリの卵を使ってヒヨコに孵化する様子を観察しますが、成長の過程で死んでしまうため田原教諭は命を奪うことなく観察ができないか30年間にわたって実験を続けてきました。

田原教諭が実験を続けた結果、殻を割った卵の中身を通気性のよいラップフィルムやプラスチック製のコップで作った容器に入れ温度や湿度をある条件に保つことで孵化させることに成功しました。

この方法で、去年6月に初めて誕生したヒヨコは順調に成長しており、孵化の成功率も50%を超えるようになったとのこと。

この実験をまとめた論文は高校の生物の教諭で作る日本生物教育会で最高賞の「金賞」が贈られることになりました。田原教諭は「貴重な卵が割れた場合でもこの技術を使うことで命を救うことができると思う」と話しています。

黄身と白身がヒヨコに成長する様子を観察できれば、発生についての理解が深まりそうですね。


いまこのNHK放映を調べていますが、そのままのものが見つかりません。 でも、次のサイトを見れば、およそのことが分かります。
殻を割った卵からひよこを孵化させることに成功!
  http://matome.naver.jp/odai/2137588106039353801

殻を割った卵の中身から 孵化させる実験に成功
  視聴回数 67,365 回 1分22秒
  https://www.youtube.com/watch?v=AatIa86mfkQ
               
 05 24 (火) 南海トラフ 四国や東海の沖合で特にひずみ
         2016年(平成28年)5月24日 火曜日

科学がすすみ、いろいろと諸現象の理解が進むことになった。 神戸淡路の震災、東北大震災そして今回の熊本大分地震、災害列島といわれ地震、雷、火事、親父、地震と雷はメイファーズとしてきた。


NHKニュース WEB
南海トラフ 四国や東海の沖合で特にひずみ
      2016年(平成28年)5月24日 火曜日
      http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160524/k10010532451000.html?utm_int=all_side_ranking-access_002

【画像】この画像は動画になっており、クリックすると解説を視聴できる。

巨大地震の発生が予想される南海トラフでは、四国や東海の沖合などで特にひずみがたまっていることが、海上保安庁が行ったGPSを使った海底の地盤の観測で明らかになりました。こうした詳しい解析が行われたのは今回が初めてで、専門家は想定される巨大地震の揺れや津波の大きさをより詳しく予測するうえで重要だと指摘しています。

東海から西の太平洋にある南海トラフでは、陸側のプレートの下に海側プレートが沈み込んでひずみがたまり続け、過去に繰り返し巨大地震が発生しています。国は今後、30年以内にマグニチュード8から9の巨大地震が発生する確率が60%から70%としていますが、震源域が海底のため、どこでひずみがたまっているか詳しく分かっていませんでした。
海上保安庁は平成18年度から9年間かけて、南海トラフの15か所の海底にGPSの観測点を設置して海底の動きを直接調べ、どこにひずみがたまっているか解析を進めてきました。海側のプレートは年間におよそ6センチ沈み込んでいるとみられ、陸側のプレートの動きが大きいほど、プレートどうしの結びつきが強くひずみがたまっていることを示します。
その結果、四国の沖合や東海地方の遠州灘の沖合では、陸側のプレートは海側とほぼ同じ年間におよそ6センチずれ動き、特にひずみがたまっているほか、紀伊半島の周辺の沖合でも、年間およそ5センチとひずみがたまっていることが分かりました。このうち四国沖では、海側のプレートが沈み込み始めている浅い領域も含まれ、大きくずれ動くと高い津波が発生するおそれがあるとしています。
一方、宮崎県の沖合の日向灘では、陸側のプレートがずれ動く大きさは年間に3センチ前後で、体に揺れを感じないゆっくりとした地震によって、ひずみが解放されている可能性があるとしています。
調査を行った海上保安庁の横田裕輔さんは、「海底を直接観測することで、ぼんやりとしていた南海トラフのひずみがどこで蓄積されているかが詳しく分かってきた。将来の地震の起こり方を考えていくうえで重要な情報で、今後も観測を続けていきたい」と話しています。

専門家
「巨大地震の揺れや津波予測に重要なデータ」

今回の結果について、地震の専門家は想定される巨大地震の揺れや津波の大きさなどをより詳しく予測するための重要なデータだと指摘しています。

政府の地震調査委員会の前の委員長で、東京工業大学の本蔵義守名誉教授は「これまでより解析結果の信頼度がはるかに高く、南海トラフでの巨大地震で発生する強い揺れや、津波の高さの予測がより正確なものになることが期待される」と話しています。
一方、過去の南海トラフの巨大地震はこれまで、四国沖から和歌山県南方沖を震源域とする「南海地震」、三重県南東沖から遠州灘を震源域とする「東南海地震」、それに遠州灘から静岡県の内陸部を震源とする「東海地震」がそれぞれ起きたり、連動して起きたりしてきたと考えられています。今回の解析では、ひずみがたまっている領域は四国の南の沖合のごく浅いところまで広がっていたほか、東南海地震の震源域ではひずみがたまっているところがまだらに分布し、東海地震の震源域では沖合にひずみがたまっているなど、震源域ごとに特徴が異なる結果となりました。
本蔵名誉教授は今回の結果を受けて、「南海」「東南海」、それに「東海」という区分を前提としてきたこれまでの地震の想定について、今後、改めて検討が必要になると指摘したうえで、「今回は観測できていない領域もあり、今後、海底の観測点をさらに増やし、長期的に監視していくことが必要だ」と話しています。

 05 24 (火) 田中宇の国際ニュース解説 ⑭ 金融の流れ
         金融システムの大転換序曲

前々から国の借金を紙幣増発で操作してきていることに関し、いろいろ危惧していた。 これは正常な方法ではなく、守銭奴の金銭操作の駆け引きであり、国民の生活のためではない。

安倍総理の三本の矢という言葉は、国民に煙幕を張るものであり米国の思惑どおりの政策としか思えなかった。 きょう田中宇の国際ニュース解説の「金融を破綻させ世界システムを入れ替える」を手にしてみて、いよいよ‘金融システムの大転換序曲’が始まると思う。

やはり、基本的には金本位制の金融システムを基軸にした体制となるに違いないだろう。



2016年5月20日
金融を破綻させ世界システムを入れ替える
      田中宇の国際ニュース解説
      http://tanakanews.com/160520dollar.php

 米日欧の中央銀行群の行き詰まりが深刻になっている。中銀群の主導役である米連銀(FRB)は、2008年のリーマン危機後、金融救済策としてQE(債券の買い支え)やゼロ金利といった超緩和策をやったが、それは14年に限界に達した。そのため米連銀は、超緩和策を欧州中央銀行と日本銀行に肩代わりさせ、米連銀自身は金利を上げていく策に転じた。しかし、昨年来の世界不況の悪化の中で、米連銀は金利を上げ続けていくことが困難になっている。 (St. Louis Fed Slams Draghi, Kuroda - "Negative Rates Are Taxes In Sheep's Clothing") (Say Goodbye to the Fed You Once Knew) (万策尽き始めた中央銀行)

 日欧の中銀も、さらに緩和策を強めて相対的に米国側を押し上げてやらないドルを防衛し切れないが、緩和策はもう限界にきている。ゼロ金利策は、もっと強いマイナス金利策に発展しているが、それはむしろ金融界の儲けを削いでいる。日銀は、マイナス金利とQE(民間金融界の重要な投資先である日本国債を日銀が買い占めること)をこれ以上強めると日本の民間金融界が破綻しかねないので、4月末の理事会で新たな緩和策を打ち出せなかった。 (Bank of Japan Keeps Policy Unchanged; Yen Rises) (Japan Inc revises yen forecasts) (Japan's "Coma Economy" Is A Preview For The World)

 米連銀は、4月の理事会で、世界と米国の景気の減速がひどいので利上げを続けにくくなっているという方向の議論を展開した。市場は、もう連銀は利上げできないと感じ、ドル安(円高)、債券高(金利安)、株安(不景気)の傾向になった。だが5月17日、米連銀の2人の高官(地方連銀総裁)が「6月の理事会で利上げについて真剣に討議する」「今年中に2-3回の利上げがありうる」という趣旨の発言を放った。 (利上げできなくなる米連銀) (Fed officials Williams, Lockhart stress that June meeting is 'live')

 連銀はまだ利上げする気だという見方が一気に市場で強まった。これは「やるかも」と言ったあと「やらないかも」と言うことで、やった場合の影響を事前に市場に織り込む連銀の策だろう。連銀が世界不況対策よりドル延命を優先して利上げを続ける可能性はある。だが、世界的に景気の悪化が続く中、連銀の無理な利上げによって米経済の悪化に拍車がかかったり、ジャンク債市場が崩壊する可能性が増している。今年に入り、原油安の長期化で、米国のシェール石油産業で資金難からの企業倒産が増えている。利上げは倒産急増と債券破綻の引き金を引きうる。 (米連銀はQEをやめる、やめない、やめる、やめない) (ジャンク債から再燃する金融危機) (Oil Bankruptcies Continue) (The riskiest energy companies are defaulting at a record rate)

 中央銀行の任務は、短期金利の上げ下げや資金の出し入れによって、金融システムの健全性を維持することだ。だが今の米日欧の中央銀行は、リーマン危機後の米国(を中心とする先進諸国)の金融システムを延命させる策を長くやりすぎて力を使い尽くし、任務を果たせなくなっている。金利はもうほとんど下げられないし、資金供給も限界だ。日欧の中銀がQEをやめたら、米日欧で債券と株の暴落が起き、金融システムが再び危機に陥る。誰も、その危機を救えない。すでに、米日欧の中銀群は「詰んで」いる。 (Dudley sees gaps in Fed's emergency lending powers)

 金融界では、まだ日常業務が平然と行われている。しかし、この日常が終わるのは時間の問題だ。次に大きな金融危機が起きたら、対策の中心は、当局による救済(ベイルアウト)でなく、預金封鎖や債務不履行などの自助努力(ベイルイン)になる。欧米諸国は、ベイルイン関連の法整備を進めている。 (Canada to introduce 'bail-in' bank recapitalization legislation) (Oostenrijk beveelt bail-in van gefaalde bank, een premiere voor Europa)

 米英の投資銀行は、今年から大幅な減益となっている。QE中毒になった金融市場は、自分の力で儲ける仕掛けを失っており、日欧の中銀が限界に達してQEの威力が低下するとともに、投資銀行の儲けが減っている。投資銀行はリーマン前、既存の預金融資型の銀行より何十倍も儲けていた。QEは、その投資銀行を構造的に死滅させた。金利がゼロやマイナスなので、既存型の銀行も世界的に経営難だ。金融は儲からない、つまらない瀕死の業界になった(英銀行協会の会長がリーマン危機の直前に予測したとおりになった)。 (Wall Street Is Falling Off A Cliff, And The Bottom Is A Long Way Down) (米英金融革命の終わり) (Goldman's profits tumble 56% as revenue dives) (The death of investment banking as we know it? Bring it on)

 株式市場では、資金の流出が始まっている。米国では、大きな買い勢力として残っているのが企業の「自社株買い」だけになっている。自社株買いの総額は今年1-3月に前年同期比31%増だったが、新たな自社株買いの枠の設定が34%減だった。自社株買いは、まず企業が自社株買いを宣言して上限額の枠を設定し、その後一定期間かけて買っていく。買い支えの枠の設定が減ると、何カ月かたって買い支え自体が減る。 (Stocks Prepare to Crash As the Last Buyer Stops Buying) (US companies step up share buybacks in first quarter of 2016)

 米日欧の中銀が続けているQEやゼロ金利策が、出口のない、いずれ行き詰まる策であることは、以前から指摘されていた。私も何度か記事にしている。金融システム危機に際し、一度や二度、単発的に、値が下がって売れなくなった破綻債券の巨額の買い支えを行うことは、市場の凍結した部分を取り除き、残った部分を蘇生する効果がある。だが長期にわたって中銀が債券を買い支え続けるQEは、市場をQE依存体質にしてしまい、QEをやめたら危機が再発する。元地方連銀総裁のフィッシャーは「QEは麻薬だ」と看破している。連銀内には当初から、QEを短期間に終わらせるべきだという声があった。 (ドル自滅の量的緩和策をやめられない米国) (金融蘇生の失敗) (バブルでドルを延命させる) (Former Fed President: "Living In Constant Fear Of Market Reaction Is Not How You Manage Central Bank Policy")

 結局、米連銀はQEを日欧に肩代わりさせて自らの破綻を防いだが、救済されている側の金融市場はいまだにQE依存なので、日欧がQEをやめたら危機が再発する。日欧の中銀がQEをやめる時は、日欧が金融破綻する時か、対米従属をやめる時(日本は前者、EUは後者を選ぶ)だろうが、その後は再び米連銀がQEとマイナス金利をやらねばならず、それも1-2年で限界に至るだろう。QEは、金融市場を麻薬中毒にして殺すだけでなく、米日欧の中銀をも破滅に追い込んでいる。 (Citi Asks: "Are Investors Beginning To Price In QE4?")

 日銀や欧州の中銀は、QEが悪政と知りつつ、自分たちが従属している米国覇権体制を守るために仕方がないと考えて自殺的なQEとその代替策であるマイナス金利に手を染めたのだろう。だが米連銀だけは、もっと能動的な立場だ。なぜ米連銀は、行き詰まりが最初から見えていたQEを始めたのか。いずれ実際の金融大危機が起きたら、マスコミは「米連銀の上層部はQEの問題点に事前に気づかなかった」と「解説」しそうだ。だが、市井の分析者(田中宇とか)でも前からわかっていたことを、金融界の中枢にいる連銀上層部が知らなかったとは思えない。QEは「未必の故意」的な失策である。 (What tools does the Fed have left? Part 1: Negative interest rates) (QEやめたらバブル大崩壊)

 世界や国家や企業といったシステムの運営者が自分のシステムを破壊するとしたら、それは別のシステムと入れ替えようとする時だ。国際秩序(世界システム)や国家のような、大きくて自走的なシステムを入れ替える場合、構成員全体の同意を得て民主的に入れ替えを進めるのはまず無理だ。今のシステムに対して影響力を持つ人々(エリート)の多くが入れ替えで損をするので、彼らが猛反対して入れ替え計画を潰しにかかる。既存のシステムを助けるふりをして破壊し、壊れたので仕方なく新たなシステムと入れ替える形をとった方がうまくいく。 ('Our economic system is designed to fail' - Ron Paul)

 08年のリーマン危機から現在までの流れを見ると、この「既存のシステムを助けるふりをして破壊し、壊れたので仕方なく新たなシステムと入れ替える形」があちこちに垣間見える。そもそもリーマンブラザーズを倒産させる必要はなかった。リーマンの前後に破綻したベアースターンズやAIGは、当局の救済や他行による合併により、金融システムにあまり負担をかけずに処理されている。リーマンを倒産させたので、債券金融システムのかなりの部分が凍結(取引不能化、紙屑化)した。当時、米投資銀行界は共食い的に他行を潰しにかかり、リーマンはその犠牲になった。 (米金融界が米国をつぶす)

 リーマン危機の源泉は、前年のサブプライム危機(債券バブルの崩壊)だが、このバブルも事前に危険性が指摘されていた。当局が注意深い政策をとっていれば、崩壊をもっと小規模にできた。米当局者には金融界の元幹部が多く、事実上、金融界が米当局(財務省、連銀、SECなど)を運営している(日本は当局の官僚が金融界より上位にいるが、米国は金融界が当局より上位にいる)。米金融界は、自分で作った金融システムを自分で運営している。バブルを破裂させずに維持して儲け続けられたのに、それをせず、稚拙にバブルを拡大させて崩壊させ、崩壊後の策としてシステムを中毒にして破滅に追い込むQEをやった。 (アメリカ金利上昇の悪夢)

 しかもリーマン倒産で米金融覇権が揺らいだとたん(米金融界の代行勢力である)米当局は08年秋に「ブレトンウッズ(米経済覇権)体制の終わり」を言い出し、世界の経済政策を決める最上位の意思決定機関を、それまでのG7サミット(米英覇権体制)から、米国の言うことを聞かない中国やロシアなどBRICSが強い多極型のG20サミットに取って代わらせた。これまでG7の事務局として機能してきたIMFは、G20の事務局として機能することになった。ドル崩壊に備えるかのように、ドルを代替する基軸通貨としてIMFのSDRを使う構想も出された。 (「ブレトンウッズ2」の新世界秩序) (G8からG20への交代)

 しかしその後、米連銀がQEを始めたので、金融システムは延命した。リーマン危機で生じた問題がすべて解決したかのような見解が席巻し、SDRがドルに取って代わる話も消え、日本のマスコミでは、世界経済の中心が依然としてG7であるかのような報道が蔓延している。米金融界には、米国覇権の永遠の延命を望む勢力と、米覇権を壊して他のシステムに入れ替えたい勢力の両方が存在・相克しているようだ。入れ替え派がリーマン危機を引き起こし、入れ替え後の新システムとしてG20やSDRを用意したものの、米覇権延命派がQEを開始して既存の金融システムを延命させ、入れ替えの流れを阻止したと考えられる。

 しかしその一方で、G20の主導役の一つであるBRICSは、米国覇権の機関であるIMF世銀体制に取って代われるBRIC開発銀行や、日米主導のADBに取って代われる中国主導のAIIBなどを創設し、世界システム入れ替えの準備を進めた。中国の人民元がSDRを構成する通貨に仲間入りしたことで、SDRも再び注目されている。その一方で、既存の金融システムを延命させるQEは、長期的には金融システムをQE中毒にして破滅に追い込む機能を持っている。QEは、米連銀内の入れ替え派が、延命派のふりをして設置した破綻誘導策だった可能性がある。 (IMF世銀を動かすBRICS)(日本をだしに中国の台頭を誘発する)

 今の米連銀は、何とかして利上げをして金利水準を健全な2%前後に戻そうとしている。そこからうかがえるのは、QEが入れ替え派が仕掛けた破綻誘導策であることを気づいた延命派が、破綻への道を食い止めて逆行しようとしていることだ。しかし、この延命派の破綻食い止め策としての連銀の利上げ策は今、世界不況の進化とともに行き詰まっている。 (Japan's Keynesian Death Spiral - How Central Planners Crippled An Economy)

 ニューヨーク連銀の総裁(William Dudley)は最近、基軸通貨(reserve currencies、備蓄通貨)の種類が増えることは世界の金融システムの安定に寄与するので良いことだと、人民元のSDR入りをふまえて述べている。ドル基軸通貨つまり経済覇権の多極化は、現実として受け入れざるを得ないことになっているが、同時に言えるのは、これまで単独基軸通貨(単独覇権)として機能してきたドルの威力が減退する中で米国の当局者が基軸通貨の多極化を容認しすぎると、ドルの威力の低下に拍車をかける自滅行為になってしまうことだ。 (Fed's Dudley: More Reserve Currencies Would Make for Stronger Financial System) (BIZARRE NY Fed Prez: Let's Kill the US Dollar as the Sole Global Reserve Currency)

 G7からG20への世界の中心の移転、ドルからSDRに基軸通貨を移行する構想などを見ると、入れ替え派が狙う入れ替え後の新たな世界システムは、米国(米英)の単独覇権でなく、米国、EUと中国、ロシアなどBRICSが並び立つ多極型のシステムであることがわかる。金融システムだけでなく、国際政治の分野でも、米国は、イラク侵攻の未必の故意的な失敗や、シリアの安定化(内戦終結)をロシアに任せたことなど、覇権の運営を過度に稚拙にやって自国の国際信用を失墜させた後「失敗したので仕方なく」という口実で覇権をシアや中国などに分散譲渡し、世界を多極型システムにいざなっている。 (アメリカの敗戦)

 米国覇権の中枢で多極化を望む勢力(入れ替え派)は、なぜ多極化を望んでいるのか。それは私にとって、イラク侵攻後、国際政治における米国の未必の故意的な失策の連続に気づいた時から続く、10年来の疑問だ。私なりの答えは「(大英)帝国と資本の百年の暗闘」だ。G7は、大英帝国(列強システム)を現代風に衣替えしたものだ。18世紀から2度の大戦まで覇権国だった英国は効率重視で、フランスやドイツなどを誘い、欧米日の列強が談合しつつ世界を分割支配する「国際社会(外交界)」を作り、英国(もしくはその傀儡)がその社会の「調整役」「議長国」として機能することで、英国の覇権を隠然と維持してきた(外交界は詐欺業界)。戦後のG7やNATO、冷戦構造は、米国が覇権国だが英国勢が黒幕として米国の戦略決定に影響を与えており、英国の隠然覇権の延長にある。 (資本の論理と帝国の論理) (多極化の本質を考える)

 米国は、2度の大戦に参戦して英国を勝たせる見返りに、英国から覇権を譲渡してもらった。米国は、英国より資本家の主導性がはるかに強い。資本家は、帝国の維持よりも、世界的な資本(経済成長)の最大化を重視する。帝国が、世界経済の加速を促進している限り、資本と帝国の相克はないが、帝国が成熟し、覇権の維持が全体の成長を阻害するようになると、資本側が帝国を隠然と破壊しようとし始める。 (資本主義の歴史を再考する)

 英国から覇権をもらった米国はまず、国際連盟で「1カ国1票」の完全な国際民主主義体制を作ろうとしたが、議長役の英国がそれを隠然と阻止した。英国と談合する欧州諸国に期待できない米国は、ロシアや中国など新興諸国も誘って、第二次大戦後、多極型の国連安保理の常任理事国体制を作った。だが、これも英国が冷戦構造を作って米政界を引っ張り込み、無力化した。

 米国はその後40年かけてようやく冷戦を終わらせたが、同時期に英国は米金融界を誘い、金融主導の新たな覇権構造を創案した。債券や株、デリバティブなどの金融で巨額の資金を作り、米英の言うことを聞く諸国に儲けや経済発展を与え、反米的な諸国を破綻させる仕組みだ。米国はこのシステムを25年謳歌(甘受)したが、00年の株急落あたりから行き詰まり感が増大し、リーマン危機からQEに至る、資本側による破壊行為が起こされるに至った。資本の側から見ると、米国の覇権とかG7の世界秩序は、帝国が、新興市場や途上国の経済成長を犠牲にして延命するための邪魔な装置になる。 (冷戦後の時代の終わり)

 IMFのラガルド専務理事時は最近「グローバル・リセット」という言葉を演説でよく使う。米国の在野の分析者は、これを見て、IMFが米国の覇権崩壊と新たな世界政府(G20)の台頭を歓迎しているととらえている。IMFや世銀の内部は、米覇権延命派とリセット派(システム入れ替え派)との暗闘の場になっている。この暗闘の中で日本の権力機構は、最後まで対米従属を続けたいゴリゴリの米延命派だ。日本では、多極化やグローバルリセットに関する分析がほとんど行われていない。 (What Will The Global Economy Look Like After The "Great Reset"?)

 資本家というと、株や債券、デリバティブなどで儲ける人を想像しがちだ。だが、今続いている資本と帝国の暗闘の中で、資本の側はむしろ株や債券、デリバティブのシステムを破壊している。これらの金融システムは80年代以降、金融化した米英覇権の力の源泉になってきたため、覇権構造を転換するなら、いずれ復活するにしても、少なくともいったんは破壊する必要がある。 (The Global Economic Reset Has Begun)

 こうした状況と、前回の記事で書いた、中国の権力中枢が「権威人士」として人民日報で繰り返し宣言している「株や不動産は、UやV字型でなく、L字型の展開になる(昨年から下落したまま、この先ずっと上がらない)。いずれ変わるが、1-2年では(相場の低迷が)終わらない」という言葉を重ねると興味深い。中国の権力中枢は、米国中心の金融システムや米国の金融覇権がこれから崩壊していくことを予期している。中国政府は、危機の前に株価を反騰させてしまい、危機発生で再び株が暴落して中国経済を痛めるより、このまま低い水準の横ばいで次の世界危機を乗り切る方が良いと考えて、株価の上昇に何度も冷水を浴びせかけていると考えられる中国は、覇権の転換に際して金融が混乱することを予期している。日本は何も気づかず、日銀が株を買い支えて釣り上げる不正を漫然と続けている(金融バブルと闘う習近平) (The Tokyo Whale Is Quietly Buying Up Huge Stakes in Japan Inc)

 また中国政府は、国内の民間と当局の金地金の備蓄量を増やし、人民元を金本位制を意識した通貨制度にし始めている。株や債券が世界的に大幅下落し、ドルが基軸性を失っていくと、富を備蓄する方法として金地金に対する重視が強まる。株や債券や預金は、金融市場や銀行や国家に対する信用が必須な備蓄方法だが、金地金の価値はそうした信用に依拠していない。米国覇権という、世界最大の信用が崩れていく中で、金地金の重要性が増していくだろう。中国は、すでに金地金の重要さに気づき、人民元と金地金を結びつけた政策を始めている。対照的に、日本では何も行われていない(暴かれる金相場の不正操作)(多極化への捨て駒にされる日本) (Will the inflation scaremongers be proved right?)

 05 24 (火) 日本の貧困     不平等の拡大?

安倍政権の大企業優遇政策、経営者の言うがままの非正規雇用、日本のアンバランスは今に始まったものではない。 大企業の業績を上げて日本の津々浦々にいたる国民全体が良くなる。 そんな当てもない言葉のままに今日(コンニチ)を迎えている。 そして、ピケティの言うように格差は広がる。

この現状をどうしたらいいのか。 生産の配分はどうしていったらいいのか。 殺人と破壊をもたらす戦争終結をどう図ったらいいのか。 国家間の政治の調整はどう図っていったらいいのか。 こうした課題に夢を持って当たるには何を基本にしていくのがいいのか。 絆の平和の基盤はどう描けばいいのか。 大事な課題が目の前にある。



NewSphere 更新日:2016年5月19日
アメリカの論理で説明できない日本の貧困
      背景にあるのは不平等の拡大?
      http://newsphere.jp/national/20160519-1/

 1980年代の初めまでは、他国から見た日本は平等主義で、貧困のほとんどない国と思われていたらしい。ところが、日本の貧困率は以後次第に上昇し、海外の識者を驚かせている。特に心配されるのが子供の貧困の増加だが、数字が示すのは単なる貧しさではなく「不平等」だと、海外メディアは指摘している。

今や日本人は貧しい国民?

 ストーニー・ブルック大学の経済学准教授、ノア・スミス氏は、日本の貧困率が上昇していることに注目する。同氏はブルームバーグ・ビューに寄稿し、ユニセフが発表した調査で、子供の貧困を測る主要な指標の少なくとも一つにおいて日本がアメリカを抜いてしまったとし、貧困レベルの上昇は、さまざまな日本の負の経済トレンドに当てはまり、多くの日本人が経済的に苦しんでいる真実を表すと述べる。

 貧困の理由は様々だが、アメリカの保守派の間では、咎められるべきは個人の行いだという考えが一般的だと同氏は言う。働かない、犯罪を犯す、未婚で子供を産む、ドラッグに手を出すなどの問題が減れば、貧困は減るという意見だ。一方リベラル派は、労組を弱め、企業福祉を止めてしまったフリーマーケット(自由市場)政策を責めているという。

これまでの理論で説明できない日本の貧しさ

 ところが、日本の場合は、このような説明が当てはまらないと同氏は言う。日本の失業率は低く、勤労意欲も高い。犯罪率も低く、一人親世帯もアメリカの25%に比べ全体の3%ほどと少ない。ドラッグ使用率も最近は増えたものの、アメリカに比べればずっと低く、米保守派の論理では説明がつかない。

 では、フリーマーケット政策が影響したのかと言えば、そうでもない。小泉政権以来、低賃金、非正規の雇用が増えたとはいえ、大きな政策変化はなく、特に政府の正規従業員保護への厳しい政策に代わりはないとスミス氏は指摘する。労組についても、法的に大きな変化はなく、労働争議もまれなことから、こちらも主因にはなり得ないとしている。

 結局、スミス氏は、日本人の経済的苦境の原因は、生産性の低さと、国際競争の影響ではないかと見ている。特に、日本は保護主義的であり、国内市場を保護してきたが、アジアのライバル、またアメリカの革新的な企業との国際競争には苦戦し、得意の電子機器や自動車などでも、利益は薄くなっていると説明する。結局これが労働者の懐に跳ね返っており、他国で見られるのと同様に、貧しい者はますます貧しくなり、金持ちの利息配当金による収益が増え続けていると述べている。

相対的貧困は不平等の指標

 スミス氏の日本が貧困に陥っているという意見に対し、ロンドンのアダム・スミス研究所のフェロー、ティム・ウォーストール氏は、ユニセフの子供の貧困率が表すものは相対的貧困であり、絶対的なレベルの貧困以下で暮らす日本人が増えているということではないと指摘。ユニセフが今回の調査で測っているのは「不平等」だと述べる(フォーブス誌)。

 これはエコノミスト誌も指摘している部分で、ユニセフの調査は子供の相対的貧困率であり、手取りの世帯所得を世帯人数で調整し、中央値の50%以下を貧困と定義した上での数字だ。調査によれば、日本の子供の相対的貧困率は1985年には11%だったが、2012年には16%まで上昇し、OECD諸国の中でも上位に入るという。日本における豊かな家庭と貧しい家庭の子供のギャップは、アメリカよりも顕著で、メキシコやブルガリアとそう変わらないレベルだと指摘されている(エコノミスト誌)。

 日本の非正規雇用はすでに雇用全体の5分の2を占め、夫婦両方がそうである場合は特に経済的に厳しいこと、また、貧困にある子供の3分の1がシングルマザーに育てられていることも、エコノミスト誌は問題視している。日本の貧困家庭の子供達は、途上国のように飢餓にあるわけではないが、1日のうちまともな食事が給食しかない、電気、水道、ガスが止められたため公衆便所で体を洗う、お金がないため放課後友達と出かけたり、塾に行ったりすることができないと、その実態が説明されている。

 すでに政府はソーシャルワーカーの数を増やしたり、一人親家庭の児童扶養手当増額を決定したりしている。これについて、首都大学東京の阿部彩教授は、離婚したシングルマザー自身を責める声が多かった自民党がここまでしたのは驚きだ、と述べている(エコノミスト誌)。

 エコノミスト誌は、政府は高齢者よりも若者を助ける政策を打ち出しているというイメージを作り上げようとしているが、子供の窃盗、売春、劣悪な生活環境などが新聞の見出しを飾るなか、対応は容易ではないだろうと指摘している。

※本文中「日本の子供の貧困率がアメリカを抜いてしまった」は「子供の貧困率」ではなく「子供の貧困を測る主要な指標」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(5/24)(山川真智子)