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続折々の記 ①
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】02/11~     【 02 】02/13~     【 03 】02/15~
【 04 】02/16~     【 05 】02/17~     【 06 】02/21~
【 07 】02/23~     【 08 】02/28~     【 09 】03/01~

【 09 】03/01

  03/01 28日のニュースから   治安維持法の前例
        (1) 「共謀罪」法案、自公了承へ   条文に「テロ」表記なし
              ・ 「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
              ・ 条文に「テロ」表記ない共謀罪、どう見る?
        (2) 蓮舫氏ピンチ「30年原発ゼロ」表明断念   党内も反発
              ・ 蓮舫氏、「2030年原発ゼロ」表明を断念 連合に配慮
              ・ 「30年原発ゼロ」連合会長が批判 民進、党内でも賛否

 03 01 (水) 28日のニュースから     治安維持法の前例



(1)「共謀罪」法案、自公了承へ
   条文に「テロ」表記なし
      2017年3月1日05時11分
      http://digital.asahi.com/articles/ASK2X52PDK2XUTFK00M.html

写真・図版 【図版】「共謀罪」法案、処罰される場合は

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案について、自民、公明両党は28日、政府案を了承する方針を固めた。政府は早ければ3月10日に閣議決定する。対象は91の法律で規定した277種類の罪。当初の政府案より対象を削減したため、公明も容認した。政府は呼称として「テロ等準備罪」を使っているが、条文にテロの表記はない。

「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名➡
条文に「テロ」表記ない共謀罪、どう見る? 識者に聞く➡

 自民、公明は28日、それぞれ会合を開き、法案の事前審査を始めた。政府の説明に注文は出たものの、法案に対する異論はなく、早ければ来週中にも党内手続きを終える。政府は両党の了承を経て閣議決定し、今国会に提出。会期末は6月18日で、直後に東京都議選が告示されるため、政府・与党は会期の延長はせず、会期内での成立を図る方針だ。

 ただ、実際の法案審議は2017年度予算案成立後の4月以降になる。天皇陛下の退位をめぐる法整備を優先した場合は、さらに審議入りが遅れることも予想される。また、世論にも慎重意見があるうえ、国会での金田勝年法相の答弁が二転三転するなど批判を浴びており、法案審議が政府与党の描くように進むかどうかは不透明な要素もある。

 法案にある正式な罪名は「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」の罪。政府は、テロ対策の強化を法整備の目的に掲げ、「テロ等準備罪」と呼んできたが、法案にはテロリズムの定義も文字もない。このため世論対策に過ぎなかったとの批判を招きそうだ。

 適用対象となる「組織的犯罪集団」は「結合関係の基礎としての共同の目的が別表の罪を実行することにあるもの」と定義。過去の法案では「共謀」としてきた犯罪の合意は「計画」と言い換え、グループの誰かが「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」という「準備行為」を行うことを要件に加えた。

 当初案では法定刑が4年以上の懲役・禁錮の罪で676種類に上っていた対象犯罪は、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定されるものに限定し、法案の「別表」で定めた。刑法、組織的犯罪処罰法のほか、競馬法、自転車競技法、文化財保護法、自衛隊法、水道法、商標法、道路交通法、所得税法、貸金業法、消費税法、会社法も含まれる。

 公明の漆原良夫・中央幹事会長は28日の会合で「要件は非常に厳格化されている」と評価。自民の会合では「277残したものが必要か自信を持って言えるよう準備してほしい」と法務省への注文が出た。一方、民進党は現時点で反対の姿勢を打ち出している。(久木良太)



「共謀罪」法案、対象となる法律と罪名
      2017年3月1日05時13分
      http://digital.asahi.com/articles/ASK3102FVK2XUTIL05K.html

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案の全容が判明した。対象は91の法律で規定した277の罪。政府の分類では、「テロの実行」に関するものはこのうち110罪にとどまる。277の罪名は次の通り。

     ◇

 【刑法】内乱等幇助(ほうじょ)▽加重逃走▽被拘禁者奪取▽逃走援助▽騒乱▽現住建造物等放火▽非現住建造物等放火▽建造物等以外放火▽激発物破裂▽現住建造物等浸害▽非現住建造物等浸害▽往来危険▽汽車転覆等▽あへん煙輸入等▽あへん煙吸食器具輸入等▽あへん煙吸食のための場所提供▽水道汚染▽水道毒物等混入▽水道損壊及び閉塞(へいそく)▽通貨偽造及び行使等▽外国通貨偽造及び行使等▽有印公文書偽造等▽有印虚偽公文書作成等▽公正証書原本不実記載等▽偽造公文書行使等▽有印私文書偽造等▽偽造私文書等行使▽私電磁的記録不正作出及び供用▽公電磁的記録不正作出及び供用▽有価証券偽造等▽偽造有価証券行使等▽支払用カード電磁的記録不正作出等▽不正電磁的記録カード所持▽公印偽造及び不正使用等▽偽証▽強制わいせつ▽強姦(ごうかん)▽準強制わいせつ▽準強姦▽墳墓発掘死体損壊等▽収賄▽事前収賄▽第三者供賄▽加重収賄▽事後収賄▽あっせん収賄▽傷害▽未成年者略取及び誘拐▽営利目的等略取及び誘拐▽所在国外移送目的略取及び誘拐▽人身売買▽被略取者等所在国外移送▽営利拐取等幇助目的被拐取者収受▽営利被拐取者収受▽身の代金被拐取者収受等▽電子計算機損壊等業務妨害▽窃盗▽不動産侵奪▽強盗▽事後強盗▽昏酔(こんすい)強盗▽電子計算機使用詐欺▽背任▽準詐欺▽横領▽盗品有償譲受け等

 【組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律】組織的な封印等破棄▽組織的な強制執行妨害目的財産損壊等▽組織的な強制執行行為妨害等▽組織的な強制執行関係売却妨害▽組織的な常習賭博▽組織的な賭博場開張等図利▽組織的な殺人▽組織的な逮捕監禁▽組織的な強要▽組織的な身の代金目的略取等▽組織的な信用毀損(きそん)・業務妨害▽組織的な威力業務妨害▽組織的な詐欺▽組織的な恐喝▽組織的な建造物等損壊▽組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等▽不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為▽犯罪収益等隠匿

 【爆発物取締罰則】製造・輸入・所持・注文▽幇助のための製造・輸入等▽製造・輸入・所持・注文(第1条の犯罪の目的でないことが証明できないとき)▽爆発物の使用、製造等の犯人の蔵匿等

 【外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律】偽造等▽偽造外国流通貨幣等の輸入▽偽造外国流通貨幣等の行使等

以下 行を詰める
 【印紙犯罪処罰法】偽造等▽偽造印紙等の使用等
 【海底電信線保護万国連合条約罰則】海底電信線の損壊
 【労働基準法】強制労働
 【職業安定法】暴行等による職業紹介等
 【児童福祉法】児童淫行
 【郵便法】切手類の偽造等
 【金融商品取引法】虚偽有価証券届出書等の提出等▽内部者取引等
 【大麻取締法】大麻の栽培等▽大麻の所持等▽大麻の使用等
 【船員職業安定法】暴行等による船員職業紹介等
 【競馬法】無資格競馬等
 【自転車競技法】無資格自転車競走等
 【外国為替及び外国貿易法】国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなる無許可取引等▽特定技術提供目的の無許可取引等
 【電波法】電気通信業務等の用に供する無線局の無線設備の損壊等
 【小型自動車競走法】無資格小型自動車競走等
 【文化財保護法】重要文化財の無許可輸出▽重要文化財の損壊等▽史跡名勝天然記念物の滅失等
 【地方税法】軽油等の不正製造▽軽油引取税に係る脱税
 【商品先物取引法】商品市場における取引等に関する風説の流布等
 【道路運送法】自動車道における自動車往来危険▽事業用自動車の転覆等
 【投資信託及び投資法人に関する法律】投資主の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
 【モーターボート競走法】無資格モーターボート競走等
 【森林法】保安林の区域内における森林窃盗▽森林窃盗の贓物(ぞうぶつ)の運搬等▽他人の森林への放火
 【覚せい剤取締法】覚醒剤の輸入等▽覚醒剤の所持等▽営利目的の覚醒剤の所持等▽覚醒剤の使用等▽営利目的の覚醒剤の使用等▽管理外覚醒剤の施用等
 【出入国管理及び難民認定法】在留カード偽造等▽偽造在留カード等所持▽集団密航者を不法入国させる行為等▽営利目的の集団密航者の輸送▽集団密航者の収受等▽営利目的の難民旅行証明書等の不正受交付等▽営利目的の不法入国者等の蔵匿等
 【旅券法】旅券等の不正受交付等
 【日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法】偽証▽軍用物の損壊等
 【麻薬及び向精神薬取締法】ジアセチルモルヒネ等の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等の製剤等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の製剤等▽ジアセチルモルヒネ等の施用等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等の施用等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽営利目的のジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸入等▽ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等▽麻薬の施用等▽向精神薬の輸入等▽営利目的の向精神薬の譲渡等
 【有線電気通信法】有線電気通信設備の損壊等
 【武器等製造法】銃砲の無許可製造▽銃砲弾の無許可製造▽猟銃等の無許可製造
 【ガス事業法】ガス工作物の損壊等
 【関税法】輸出してはならない貨物の輸出▽輸入してはならない貨物の輸入▽輸入してはならない貨物の保税地域への蔵置等▽偽りにより関税を免れる行為等▽無許可輸出等▽輸出してはならない貨物の運搬等
 【あへん法】けしの栽培等▽営利目的のけしの栽培等▽あへんの譲渡し等
 【自衛隊法】自衛隊の所有する武器等の損壊等
 【出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律】高金利の契約等▽業として行う高金利の契約等▽高保証料▽保証料がある場合の高金利等▽業として行う著しい高金利の脱法行為等
 【補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律】不正の手段による補助金等の受交付等
 【売春防止法】対償の収受等▽業として行う場所の提供▽売春をさせる業▽資金等の提供
 【高速自動車国道法】高速自動車国道の損壊等
 【水道法】水道施設の損壊等
 【銃砲刀剣類所持等取締法】拳銃等の発射▽拳銃等の輸入▽拳銃等の所持等▽拳銃等の譲渡し等▽営利目的の拳銃等の譲渡し等▽偽りの方法による許可▽拳銃実包の輸入▽拳銃実包の所持▽拳銃実包の譲渡し等▽猟銃の所持等▽拳銃等の輸入に係る資金等の提供
 【下水道法】公共下水道の施設の損壊等
 【特許法】特許権等の侵害
 【実用新案法】実用新案権等の侵害
 【意匠法】意匠権等の侵害
 【商標法】商標権等の侵害
 【道路交通法】不正な信号機の操作等
 【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律】業として行う指定薬物の製造等
 【新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法】自動列車制御設備の損壊等
 【電気事業法】電気工作物の損壊等
 【所得税法】偽りその他不正の行為による所得税の免脱等▽偽りその他不正の行為による所得税の免脱▽所得税の不納付
 【法人税法】偽りにより法人税を免れる行為等
 【公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に関する法律】海底電線の損壊▽海底パイプライン等の損壊
 【著作権法】著作権等の侵害等
 【航空機の強取等の処罰に関する法律】航空機の強取等▽航空機の運航阻害
 【廃棄物の処理及び清掃に関する法律】無許可廃棄物処理業等
 【火炎びんの使用等の処罰に関する法律】火炎びんの使用
 【熱供給事業法】熱供給施設の損壊等
 【航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】航空危険▽航行中の航空機を墜落させる行為等▽業務中の航空機の破壊等▽業務中の航空機内への爆発物等の持込み
 【人質による強要行為等の処罰に関する法律】人質による強要等▽加重人質強要
 【細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律】生物兵器等の使用▽生物剤等の発散▽生物兵器等の製造▽生物兵器等の所持等
 【貸金業法】無登録営業等
 【労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律】有害業務目的の労働者派遣
 【流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法】流通食品への毒物の混入等
 【消費税法】偽りにより消費税を免れる行為等
 【日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法】特別永住者証明書の偽造等▽偽造特別永住者証明書等の所持
 【国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律】薬物犯罪収益等隠匿
 【絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律】国内希少野生動植物種の捕獲等
 【不正競争防止法】営業秘密侵害等▽不正競争等
 【化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律】化学兵器の使用▽毒性物質等の発散▽化学兵器の製造▽化学兵器の所持等▽毒性物質等の製造等
 【サリン等による人身被害の防止に関する法律】サリン等の発散▽サリン等の製造等
 【保険業法】株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
 【臓器の移植に関する法律】臓器売買等
 【スポーツ振興投票の実施等に関する法律】無資格スポーツ振興投票
 【種苗法】育成者権等の侵害
 【資産の流動化に関する法律】社員等の権利等の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
 【感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律】一種病原体等の発散▽一種病原体等の輸入▽一種病原体等の所持等▽二種病原体等の輸入
 【対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】対人地雷の製造▽対人地雷の所持
 【児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律】児童買春周旋▽児童買春勧誘▽児童ポルノ等の不特定又は多数の者に対する提供等
 【民事再生法】詐欺再生▽特定の債権者に対する担保の供与等
 【公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律】公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者による資金等を提供させる行為▽公衆等脅迫目的の犯罪行為を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等
 【電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律】不実の署名用電子証明書等を発行させる行為
 【会社更生法】詐欺更生▽特定の債権者等に対する担保の供与等
 【破産法】詐欺破産▽特定の債権者に対する担保の供与等
 【会社法】会社財産を危うくする行為▽虚偽文書行使等▽預合い▽株式の超過発行▽株主等の権利の行使に関する贈収賄▽株主等の権利の行使に関する利益の受供与等についての威迫行為
 【国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律】組織的な犯罪に係る証拠隠滅等▽偽証
 【放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律】放射線の発散等▽原子核分裂等装置の製造▽原子核分裂等装置の所持等▽特定核燃料物質の輸出入▽放射性物質等の使用の告知による脅迫▽特定核燃料物質の窃取等の告知による強要
 【海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律】海賊行為
 【クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律】クラスター弾等の製造▽クラスター弾等の所持
 【平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法】汚染廃棄物等の投棄等



条文に「テロ」表記ない共謀罪、どう見る? 識者に聞く
      聞き手はいずれも後藤遼太
      2017年3月1日05時22分
      http://digital.asahi.com/articles/ASK3101SMK2XUTIL05J.html

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案について、どう見たらいいのか。政府は呼称として「テロ等準備罪」を使っているが、条文にテロの表記がないことも判明した。2人の識者に聞いた。

■乱用や萎縮効果生むだけ 落合洋司氏

 ――現行法でテロ対策にどんな不備があるのか。

 「平和な日本で急にテロの危険性が出ている」というわけではない。今までも事件は起きていたし、対策立法もある。爆発物取締罰則や銃刀法に細かい規定があるし、殺人予備罪や凶器準備集合罪、破壊活動防止法もある。テロ対策の立法が不十分とは思わない。不安をあおって強引につくろうとする姿勢は疑問だ。

 ――公安検事の時代、共謀罪の必要性を感じたか。

 まったくない。そもそも、情報を収集、集約してテロ防止に生かす体制が十分に整っていないので、たとえ共謀罪があったとしても地下鉄サリン事件も松本サリン事件も防げなかっただろう。

 「どこかでテロを企てている人はいませんか」状態で法改正をしても絵に描いたモチですらない。残るのは拡大解釈や乱用、過剰な取り締まりや萎縮効果だ。

 ――「準備行為」「組織的犯罪集団」という要件を加えて限定しているのか。

 今までの共謀罪と大差ない。例えば「組織的犯罪集団」。オウム真理教だってヨガ教室からだんだんとテロ組織になっていったが、どの時点で認定するかはあいまいで、解釈で決められる危険性がある。そういう「灰色」の部分において、市民団体や労働組合、反基地運動が犯罪集団と認定されることはあり得る。

 ――現行刑法の「予備罪」では防げない事例があると政府が説明している。

 本来、予備は有形無形、直接間接、色々含まれる。安倍晋三首相や金田勝年法相が「予備罪だけでは不十分」という主張の論拠とした昭和42年の東京高裁判決(1961年、旧軍人らによるクーデター計画を摘発した「三無事件」の判決で、破防法を初適用した)は、従来の流れから外れた判例。それをわざわざ持ってきて「予備は限定的だからテロ等準備罪は必要」というのは詭弁(きべん)だ。そもそもこの事件は、現行法で対処できた事例。予備について裁判所が限定的に説明した箇所だけピンポイントで取り上げるのはおかしい。

 ――政府が挙げる事例にはどう対処するか。

 化学薬品テロは、薬品を入手した時点で殺人予備罪が適用できる。予備罪の共謀共同正犯を認めるのが判例で、現行法で対処が可能だ。ハイジャックはチケット予約の段階で殺人予備罪やハイジャック防止法の予備罪で対処すればいい。サイバーテロは個別的な対応をすれば足りるだろう。

 ――捜査段階で乱用される危険性は。

 起訴の段階では厳密に証拠を見るだろうが、その前の捜査段階では「相当の嫌疑」があれば令状は出て捜査はできる。そして、捜査機関が何をもって「組織的犯罪集団」「準備行為」を認定するかはあいまいだ。肝心のテロ犯罪はほとんど検挙できないまま、捜査機関が「使える」法律ができれば、適用対象は広がる。

 ――市民生活への影響は。

 このまま共謀罪法案が成立した場合、テロと無縁の犯罪が広い範囲で対象になり得る。治安立法というのは、過剰なものが存在すればどうしても乱用の恐れが増す。必要なものだけをきちんと活用するのが望ましい。テロ対策の美名の背後に隠された市民生活の自由に対する脅威や危険性を認識しなければならない。

 ――国際組織犯罪防止条約締結のためには共謀罪の新設が必要と政府は言う。

 (法律をつくる理由である)立法事実は極めて薄弱で、現実的な必要性というより条約締結のため国内法を整備したいだけ。条約が「共謀罪か参加罪」の新設を求めているなら、参加罪を新設すればいい。取り締まり対象になる結社と、結社への関与の仕方の2段階で客観的に絞りをかければ、共謀罪よりむしろ処罰対象は明確になると思う。

     ◇

 《おちあい・ようじ》 東京地検公安部など検事時代に、国松孝次・警察庁長官狙撃事件やオウム事件などを担当。退官後に弁護士。

■テロ起きてからでは遅い 椎橋隆幸氏

 ――政府は、国際組織犯罪防止条約締結のため「テロ等準備罪」を新設すると説明している。

 条約を結べないと犯罪人引き渡しや捜査共助も難しくなる。人、物の移動が自由になっている今、日本だけテロと無関係だと言えるのか。条約が「共謀罪か参加罪を新設せよ」と要請しており、条約の核心的な部分となっている。共謀罪はどうしても必要な条件だ。

 ――政府は条約締結の必要性は主張しつつ「テロ準備罪は共謀罪ではない」と説明する。締結のために「共謀罪」が必要なのでは。

 一般人にはつじつまが合わないように見えるかもしれない。「共謀罪」と言うと、いかにも内心の自由が侵されるのではと思われるので、避けたかったのだろう。テロ等準備罪は以前の共謀罪の延長線上にある。しかし、「準備行為」を明文化したので、性格は変わったと言える。

 ――過去3度廃案の共謀罪とテロ等準備罪は別物か。政府は「テロ等準備罪を共謀罪と呼ぶのは誤り」と主張している。

 違いを強調しすぎる必要はない。テロ等準備罪は今までの共謀罪の延長線上にあるが、要件を厳格にして対象犯罪を大幅に絞った。「立法の狙いがテロ関連犯罪の抑止、摘発にあると考えれば、テロ等準備罪と呼んでもおかしくない」と説明すればいい。

 ――条約は「4年以上の罰則のある犯罪」を対象とすることを要請している。これより対象犯罪を絞っても大丈夫なのか。

 条約が「4年以上の罰則のある犯罪」としているので、原則的にはそこは守るべきだ。ただ、国内法との整合性もあるので、合理的に説明できる範囲であれば絞り込んでも理屈は通る。そうして対象犯罪数を絞れば、条約の核心的な部分に違反することにはならないし、他国からも理解されると思う。

 ――日本が批准している国連のテロ関連13条約ではテロ対策に足りないか。

 足りないというのが国際的な要請ではないか。国際的な人身売買や薬物犯罪は現行制度では事前に処罰できない。被害者になるのは女性や高齢者、子どもたちだ。国際会議のたびに言われている。

 ――人身売買などの対策が目的であれば、テロ対策とは違うのでは。

 確かに条約も財産目的の犯罪としているが、多くの場合テロ犯罪は経済的利益と関わっている。純粋に政治的、宗教的目的だけではテロはできない。

 ――日本の刑法は既遂処罰が原則で、事前処罰は例外。一般的な共謀罪導入は構造的に無理があるのではないか。

 おっしゃるとおり、日本の刑法は結果を中心に考える体系だ。しかし一定の重大犯罪には従来から予備、陰謀の規定があり、導入することが不整合とも言えない。重大な結果が出てからでは取り返しのつかない場合が相当あり、危険性も高まっている。伝統的な体系とは違っても、実行前の段階で処罰できると評価していい。時代が変わった。

 ――拡大解釈の恐れは。

 「組織的犯罪集団」「準備行為」という要件を加えて対象犯罪も絞れば、乱用を防げる。準備行為が無ければ証拠は収集できないし、法執行機関の現状を見れば、証拠が無いまま起訴することは考えられない。

 ――捜査段階での乱用の恐れも指摘されている。

 裁判官による令状発布という事前審査も有効に働いているし、検察や裁判所まで含めて考えると恣意(しい)的な法執行はできないだろう。テロ等準備罪ができたからといって、捜査機関の捜査方法は変わらないと思う。通信傍受の拡大などを懸念する声もあるが、今のところは大丈夫だと思う。

     ◇

 《しいばし・たかゆき》 中央大法科大学院教授(刑事訴訟法)。2002~03年、共謀罪を審議した政府の法制審議会部会の委員を務めた。(聞き手はいずれも後藤遼太)



(2)蓮舫氏ピンチ 「30年原発ゼロ」表明断念
   党内も反発
      関根慎一 2017年3月1日01時07分
      http://digital.asahi.com/articles/ASK2X4JCNK2XUTFK00C.html?iref=comtop_8_04

写真・図版 【図版】民進・蓮舫代表の「2030年原発ゼロ」をめぐる発言

 民進党の蓮舫代表が「2030年原発ゼロ」方針について、3月12日の党大会での表明を断念した。脱原発を求める世論よりも支持母体の連合を優先したことに対し、さっそく党内の脱原発派や共闘を組む野党から批判の声が上がった。蓮舫執行部は国会での重要法案の判断や東京都議選を控え、危機に瀕(ひん)している。

蓮舫氏、「2030年原発ゼロ」表明を断念 連合に配慮

 「30年ゼロ」の表明断念が一斉に報道された28日午前、蓮舫代表は党会合に出席。参院予算委員会での審議に向けて「一致団結して臨んでいきたい」とあいさつしたが、原発には触れなかった。会合では、党大会で正式決定する活動方針案を了承。そこにも「30年ゼロ」の文言を盛り込まず、「一日も早く原子力発電に依存しない社会を実現することを目指す」などと従来方針を記しただけだった。

 党エネルギー・環境調査会は同日、役員会を開き、論点メモで以前に盛り込んだ「30年原発ゼロ」を削除。新たに「原発ゼロ基本法案(仮称)」の法案化検討が盛られたが、これも賛否が割れた。

 連合は、蓮舫氏の方針転換を歓迎。幹部は「支持されない理由はもっと大きなところにある。脱原発だけでは支持率が上がらない」と語った。

 おさまらないのは、蓮舫氏に期待を寄せてきた「脱原発派」だ。逢坂誠二衆院議員は「年限を切ることで原発ゼロの姿勢が明らかになる。党大会で発信されないなら残念だ」と失望感をあらわにした。党幹部の一人も「あぜんとしている。連合にそこまで気を使う必要があるのか」と憤る。

 蓮舫氏自ら党大会での発信を掲げながら、実現できなくなった経緯にも批判が集まる。荒井聰元国家戦略相は「簡単にコメントすると、どういう反作用が起こるのか、(執行部で)十分議論していなかったのではないか」と指摘した。

■共闘野党からも失望感

 「脱原発」は、安倍政権への対抗軸を示し、野党共闘の旗印になりうる政策。自由党の小沢一郎代表は蓮舫氏との会食で直接、当初の決意を聞いていただけに、28日の記者会見では「民進党の特色が表れた状況ではないか」と皮肉った。社民党の又市征治幹事長も同日の会見で「残念だ。国民世論は圧倒的に脱原発だ」と語った。

 蓮舫執行部は昨秋の発足以来、衆院2補選で大敗。新潟県知事選で脱原発の世論をつかめずに出遅れ、「カジノ解禁法」では一転して自民と採決に合意するなど腰が定まらず、反転攻勢の糸口が見えない。今後は天皇陛下の退位をめぐる法整備や、「共謀罪」法案で力量が問われるだけに、ベテランは「すべての判断で『大丈夫だろうか?』と疑念を抱くほど危機的だ」と頭を抱える。(関根慎一)



蓮舫氏、「2030年原発ゼロ」表明を断念 連合に配慮
      関根慎一 2017年2月27日23時44分
      http://digital.asahi.com/articles/ASK2W62X3K2WUTFK00Z.html

 民進党の蓮舫代表は27日、3月の党大会での「2030年原発ゼロ」方針表明を断念した。視察先の福島県飯舘村で記者団に「年限はメディアがこだわっている。私たちは中身にこだわりたい」と語った。党内の意見集約が進まず、支持母体の連合の猛反発に配慮した形だ。

   「30年原発ゼロ」連合会長が批判 民進、党内でも賛否➡

 蓮舫氏はこの日、飯舘村長らと意見交換。その後、記者団に「将来的にゼロが可能だとはこれまでも訴えてきた。その思いを共有、認識できる大会にしたい」と述べた。野田佳彦幹事長も同日の記者会見で「決まっていないことを言うことは出来ない」と明言した。

 これまで蓮舫氏は3月12日の党大会で「一定の方向性」を打ち出すと表明。自らエネルギーに関連する産業別労働組合を回って理解を求めてきた。党エネルギー・環境調査会も蓮舫氏の指示のもと、2月に従来の党公約「30年代ゼロ」から前倒しして、「原発ゼロ基本法案」(仮称)に「30年ゼロ」を明記する方向で検討に入っていた。

 これに対し、連合が猛反発。電力などの労組出身議員からも「結論ありきの議論はおかしい」と異論が相次いだ。蓮舫氏としては、党勢低迷を打開するため、党大会で「30年ゼロ」を表明することで、安倍政権に対する明確な対立軸を打ち出す好機と位置づけたい考えだったが、連合系の激しい抵抗をおさえきれなかったようだ。次期衆院選前までの集約を目指すが、今回の表明断念で、逆に党内多数の脱原発派の反発は必至。蓮舫氏の求心力は一層低下しそうだ。(関根慎一)

「30年原発ゼロ」連合会長が批判 民進、党内でも賛否
      2017年2月23日05時00分
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12809435.html

 民進党の支持母体である連合の神津里季生会長は22日の記者会見で、同党執行部が検討する「2030年原発ゼロ」に対し、「深刻な疑問を持たざるを得ない」と改めて批判した。

 蓮舫代表の執行部は原発ゼロの時期について、従来の「2030年代」から「30年」への前倒しを検討。神津氏は「30年代自体がかなりハードルが高い。廃炉をどうしていくのかなど裏打ちがなく、いきなり30年とはどういう状態を指しているのか」と指摘した。

 一方、民進は22日、エネルギー・環境調査会(玄葉光一郎会長)の2回目の全議員会合を開催。出席者約70人のうち二十数人が発言し、30年ゼロへの賛否が割れた。蓮舫氏が3月12日の党大会で打ち出そうと検討しているのに対し、連合傘下の電力総連出身の小林正夫参院議員が「雇用などの問題をどうするのか、先に検討すべきだ。党大会は総選挙に向けて結束を図る決起集会にしないといけない」と反対。超党派議連「原発ゼロの会」世話人の阿部知子衆院議員は30年ゼロに賛成した上で「再稼働もやめるべきだ」と主張した。(関根慎一、贄川俊)