折々の記へ

折々の記 2016 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】田中宇     【 02 】田中宇     【 03 】田中宇
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【 07 】田中宇     【 08 】田中宇     【 09 】田中宇

特別編集 田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

【 04 】
2017/7月~12月


 2018/03 21 (水) 国際ニュース解説         七月から十二月まで

きょうは、2018年の3月21です。 長い間継続欄への書き込みをせず、折々の記へ取り上げたことがありました。

だが、日本の政治情勢が極度に乱れ始めているので、田中宇の国際ニュース解説でトランプ大統領の歩みと日本の歩みを比べながら、自分の考えを築いていこうと思いこの欄へ 2017年4月22日 から追加上程することにしました。

トランプは「アメリカ・ファースト」のキャッチフレーズでスタートした政権だったので、多分に誤解していたことが北朝鮮の核開発問題の経緯を見ていて、気づいたのです。

彼はアメリカの軍産を底流とした政権の方向が、自国をおかしくしたことに気付いていたから、それを修正しようとする考えが基本にあったと思える節があるからでした。

日本は、それとはお構いなくUSの時の権力を迎合している節があり、アメリカからの自立を真剣に考えなければ日本としてのアイデンティティが崩壊してしまうという憂いが多分にあると思うからです。

世界の平和を求める方向は、一国の国益を基にした覇権は不幸の世界へ進むことになりな寝ないことを察知し、トランプ以前から多極化の方向を打ち出していたことがわかってきました。

この変化は将に世界の政治と経済の方向を求めていく大変化の序曲がすでに始まっていることを意味していると思います。 確証はないにしても、やっぱり温故知新の大局的な見方をみんなで探っていてくことが、自分たちにとって緊急な課題であったことに気づきました。

これからの取り組む課題は、その一点に集中した分野のことでなければならないと考えています。

以上のことを以下の追加として書き残しておきます。


2016/10/04に書き残した記載部分

今までいろいろと報道データを見てきたが、田中宇の国際ニュース解説は世界のマクロニュースをつかんでいくのに一番安心を置いていいと思う。

それゆえ、一か所にデータを集中することとした。 このサイトは自動継続としてあるのでいつでも「お気に入り」サイトから「ニュース」続いて「田中宇の国際ニュース解説」をクリックし、読みたいタイトルの年月日を探して接続すれば、細かい解説が読めます。

或いはまた、このサイトの中で各解説概要の終りに「折々の記」とあるものは、それをクリックすると詳細解説が載せられています。

この「折々の記」へはデータの所在と主要記事を含めた感想が載せたりしてあります。

田中宇の国際ニュース解説


12月

◆覇権放棄を加速するトランプ
 【2017年12月30日】 トランプ大統領が放ったエルサレムをイスラエルの首都と認める宣言は、米政界に強い影響力を持つイスラエル右派(ユダヤロビー)を味方につけ、軍産複合体がトランプを潰せないようにした。トランプ再選の可能性が増している。同時にあの宣言は、世界中の国々が米国を主導役(覇権国)と認めなくなる傾向を誘発している。トランプは、途上諸国への支援金を打ち切る宣言をしたが、その空白を喜んで埋めるのが中国とロシアだ。米国覇権が崩れ、多極化が進む。エルサレム首都宣言は、米国の覇権放棄に拍車をかけている。

◆中国のアジア覇権と日豪の未来
 【2017年12月24日】 豪州政府は、アジアにおいて米国の覇権が退潮し、中国が米国に取って代わるでないかとの懸念を強めている。米国覇権の先行きに悲観的な豪州の学者ヒュー・ホワイトは、米国が中国との対決しても勝てないと悟って戦わずにアジアから出ていく傾向だ、豪州は強い同盟相手がいなくなり独自に核武装するしかないかも、と言っている。日本でも、権威ある分析者たちの間で、米国が日本を守らなくなるという懸念が強まっているが、日本政府はまだ対米従属一本槍の「シャバに出たくない囚人」を続けている。日豪でうまく組めるよう、早く努力を強めた方が良い。

安倍とネタニヤフの傀儡を演じたトランプの覇権放棄策
 【2017年12月20日】 トランプは、東アジアの戦略で安倍の言いなりで、中東の戦略ではネタニヤフの言いなりだ。米国は、世界を率いる立場にある覇権国なのに、主導役になることを放棄している。トランプは表向き、米国との同盟関係を強めたい日本やイスラエルの国策に全面的に乗り、これ以上ないぐらい日本やイスラエルの傀儡になりつつ、結果として、日本やイスラエルが米国に頼れない状況を作っている。これは意図的な戦略だ。トランプは米国の覇権放棄、覇権の多極化を目標としている。

◆米覇権延命と多極化の両極で戦う暗号通貨
 【2017年12月17日】 各種の暗号通貨のうち、ビットコインは、ドルの究極の敵である金地金潰しをやらされて米覇権延命派の傀儡と堕したが、中露が国家として計画している暗号通貨は、米国の好戦的な覇権策を迂回し無力化するための、多極化の道具として使われ始めている。当面はビットコインや覇権延命派が強いが、いずれ逆転していく。

◆中東和平の終わり。長期化する絶望
 【2017年12月14日】 米イスラエルとサウジは、パレスチナ人にガザだけで国家を作らせ、西岸や東エルサレムを放棄させ、それで中東和平の完了としたい。ヨルダン王政をうまく転覆してパレスチナ人を強制移住させたい。イスラム諸国は怒って非難決議を出したが、どうやら口だけだ。エルドアンの人気取りに使われて終わりそう。

トランプのエルサレム首都宣言の意図
 【2017年12月10日】 トランプのエルサレム首都宣言は、クシュナーとサウジMbSの若手2人にやらせた中東和平の失敗の末に発せられた。トランプは今回の和平策を、米国務省など外交専門家(米覇権主義勢力、軍産複合体)を徹底的に外して未熟な2人に任せることで故意に失敗させ、米国の国際信用を落とす覇権放棄策を進めた。トランプの宣言は、特に親米アラブ諸国にとって対米従属を続けられなくするものだ。今後しだいに親米アラブ諸国は、対米従属をやめて非米化せざるを得ない。さもなくば反米イスラム勢力に政権を乗っ取られる懸念が増す。

◆中国の覇権拡大の現状<1>
 【2017年12月5日】中国の覇権がじわじわ拡大し、米国の覇権がじわじわ縮小していく可能性がある。中国の覇権拡大について、大きな動きがある時だけ書いていくやり方だと事態を見誤りかねない。2-3か月に一度「中国の覇権拡大の現状」と題し、中程度の動きをオムニバス形式で綴り続けていくのが良いと感じた。今回はその1回目だ。

◆ビットコインと金地金の戦い
 【2017年12月1日】金融界は、ドルや債券、中銀群のQEのバブルを延命させるため、資金をビットコインに注入して高騰させ、ビットコインが金地金を潰しにかかるよう仕向け、金地金の相場が低いままの状態を長期化しようとしている。だが、いずれQEのバブルが崩壊すると、世界の覇権体制が国家臭の強い多極型に転換し、金地金に有利、ビットコインに不利な新世界秩序になる。

11月

ミャンマー「ロヒンギャ」問題の深層
 【2017年11月28日】 ミャンマー以外の国々で「ロヒンギャ人」と呼ばれているミャンマーのバングラディシュ国境沿いのラカイン州北部のイスラム教徒たちは、戦後ずっと、ミャンマーからの分離・バングラへの編入を目標に武装闘争してきた。「ロヒンギャ」問題は、ミャンマーが数多く抱える少数民族と中央政府との内戦の一つであり、一方的な虐殺でない。CIAなど米軍産とつながったサウジ王政のイスラム聖戦部門がロヒンギャを支援し、巧妙なプロパガンダ策であるカラー革命の手法で、ミャンマーを極悪な存在に仕立てている。欧米やイスラム世界の軽信的な市民らが乗せられて義憤に駆られ、スーチーを非難している。

◆イスラム国の滅亡、中東非米同盟の出現
 【2017年11月25日】イランは、自国の西側でレバノン、シリア、イラクを影響圏に入れ、自国の東側ではアフガニスタンでロシアや中国と協力し影響力を強めている。広大になったイランの影響圏は、中国の習近平が推進する「一帯一路」と重なっている。イランやロシアが安定化した地域で、中国がインフラ投資、復興事業を展開する。製造業や建設業は中国企業、エネルギーや軍事はロシア企業が担当し、使われる通貨は人民元だ。米国に依存しない「非米同盟」の地域として、中央アジアや中東が発展していく。

◆バブルを支えてきたジャンク債の不安定化
 【2017年11月21日】日米欧のQEで08年のリーマン危機から10年持たせ、さらにトランプの減税と規制破壊で2年持たせても、2020年にはすべてのバブル延命策が限界に達する。ちょうどトランプが再選されるころだ。トランプの再選後、習近平の任期が終わる2022年までの間に、米日欧の巨大なバブル崩壊が起こってドルの基軸性が壊れ、人民元やSDRの基軸制にとって代わられ、覇権が多極化する感じか?。そんなに長く延命できるのか?

サウジアラビアの自滅
 【2017年11月19日】 権力に登って以来、ずっと米国に騙され続けたサウジの皇太子MbSは、いずれ自国がかなり弱くなった後に、米国に騙されてきたことに気づき、安保戦略を米国に依存していたことの愚鈍さに気づくだろう。その後は、おそらく米国と距離を起き、ロシアや中国に今よりさらに接近し、イランとも和解していく。そうなることを予測しているかのように、中国の習近平は最近、サウジとの友好関係を強めると宣言している。

◆サウジアラビアの暴走
 【2017年11月15日】 サウジは、イランやヒズボラから直接的な脅威を受けていない。シリア内戦、イエメン戦争、カタール制裁、そしてレバノン内政においても、サウジは、イランとの影響圏拡大競争に負けた。若気の至りなサウジの皇太子は負けを認めたくないので、レバノンを空爆しようとしている。サウジはイエメンでも、港湾を封鎖して国際援助物資の搬入を妨害し、イエメンを餓死と疫病蔓延の状態に陥れている。いずれも、戦略的な合理性が全くなく、大量虐殺の戦争犯罪行為でしかない。

安倍に中国包囲網を主導させ対米自立に導くトランプ
 【2017年11月13日】 トランプは表向き、マスコミに対する演出・軍産に対する目くらましとして中国包囲網を演じながら、米国がTPPを離脱し、2国間貿易協定もやりたがらないことによって、日本など海洋アジア諸国を対米自立の方に追いやり、米国がアジアから出て行く中で、海洋アジアと中国が接近・協力していくよう仕向けている。トランプが安倍から借用して開始したインド太平洋戦略は、中国敵視に見せかけた、アジアの自立誘導策、世界の多極化策となっている。

◆サウジの接近で分割を免れたイラク、夢破れたクルド
 【2017年11月8日】 クルド人はまたもや国際政治の激変の中で使い捨てにされて自治を失ったが、イラクは、サウジが接近してきてくれたおかげで国家の分割を免れた。サウジがイラクのスンニ派地域の再建に投資しつつテロ支援をやめていくなら、中東全体が安定する。表向き、トランプがイランとサウジの戦争をけしかけているが、よく見ると、それと逆の動きになっている。

◆米朝核戦争の恐怖を煽るトランプ
 【2017年11月4日】 米国覇権の放棄を追求するトランプは、韓国の破滅につながる北との戦争をやると言い続けることで、韓国人の反米感情や対米自立心を煽り、韓国に対米従属をやめさせ、在韓米軍の撤退や、米韓軍事演習の中止、米韓軍事同盟の解消を韓国が米国に求めてくるように仕向けている。韓国は、安保面で米国と疎遠になるとその分、中国やロシアに接近し、韓国は中露と一緒に北朝鮮問題をプーチン案で解決しようとする。北は交渉に乗りやすくなり、北の問題は米国を外したかたちで解決していく。トランプは、韓国が安保面で米国から離れた時点で、北を先制攻撃すると言わなくなる。

世界資本家とコラボする習近平の中国
 【2017年11月1日】 習近平の一帯一路は「中国の夢の実現」であると同時に「投資家の夢の実現」である。一帯一路は、地政学的にタブーだったユーラシア内陸部の高度成長を、インフラ整備によって準備する。トウ小平以来の中国自体の高度成長が「投資家の夢の実現」の第1弾で、習近平による一帯一路は第2弾だ。中国共産党が投資家として機能しているともいえる。計画どおり2050年に中国(中露)が安定したアジアの覇権国になると、ユーラシア内陸部への国際的な経済テコ入れが完全に解禁され、地政学的な逆転が起きる。覇権の多極化が定着し、帝国と資本の百年の暗闘において資本側が逆転勝利する。

10月

◆中国の権力構造
 【2017年10月27日】 習近平の目標は、中国を国際台頭させ、安定したアジアの覇権国にすることだ。中国の弱点は、権力闘争によって不安定になりやすいことだ。トウ小平が作った集団指導体制はそれを改善し、権力の継承を制度化した。習近平は、自分が死んだ後も中国が安定した覇権国であり続け、未来の中国人たちに「今のすごい中国があるのは習近平のおかげだ」と思わせたい。そのためには、独裁者にならず集団指導体制を守らねばならない。米欧日マスコミの予測に反し、習近平は2022年の任期末で、党総書記と国家主席を辞めるだろう。

◆金融市場はメルトアップの後にメルトダウン
 【2017年10月25日】 以前の株式のバブル崩壊は、暴落(メルトダウン)の前に「メルトアップ」が起きている。株価の下落を引き起こす出来事が発生すると、その後、株が下がるどころか逆に上がる現象だ。株価上昇をマスコミが喧伝し、遅まきながら株で儲けたい一般市民が次々と株式口座を開設し、株価が下落したところでいっせいに買いを入れるために起きる。今回は9月以降、米国などでメルトアップが起きている。

北朝鮮危機のゆくえ
 【2017年10月21日】 政治経済面から考えて、トランプは北を先制攻撃しないが、政治経済の道理を無視して、先制攻撃を米軍に命じることはできる。トランプは今後、今にも先制攻撃しそうな感じを強めていく。韓国や中国や日本などの高官が「トランプが先制攻撃するはずがない」と高をくくっている限り、トランプは、道理を無視して北を先制攻撃する道を進む。そのうち高官たちが「トランプは本気かも」と不安に駆られ、対米従属や対米協調を続けるのを危険と感じるようになる。トランプの好戦策は、韓国を中露に合流させ(日本も隠然と合流)、中露主導・米国抜きの北問題の解決(5+1)を加速する。

◆NAFTAを潰して加・墨を日本主導のTPP11に押しやるトランプ
 【2017年10月20日】 トランプはメキシコとカナダ(加・墨)に厳しい条件を出してNAFTAを潰そうとしている。これはトランプの、米国覇権放棄(多極化)戦略の一つだ。加・墨は自国の貿易多様化のため、TPP11に期待している。いずれ米国主導のNAFTAがなくなり、日本(日豪)主導のTPP11が発足するだろう。

◆トランプのイラン核協定不承認の意味
 【2017年10月18日】 米議会は、イランを制裁した場合は米欧同盟に亀裂を入れ、イランを制裁しない場合は中東での影響力を低下させる。どちらにしても米国の覇権縮小になる。トランプのイラン敵視策は、トランプ自身がイランを嫌っているからやっているのではない。トランプは覇権放棄屋として、議会や軍産に、自滅的な覇権放棄の策をやらせている。

田中宇史観:世界帝国から多極化へ
 【2017年10月13日】 19世紀末以来、人類は百年以上、帝国と資本の相克・暗闘に翻弄されてきた。19世紀末に、大英帝国の運営者が、帝国の解体と市場化に全面賛成していたら、百年以上前に「歴史の終わり」が実現していただろうが、実際の歴史はそうならず、人類の近代史は丸ごと相克になっている。トランプは、帝国(軍産)の側と果敢に闘っているが、彼が相克を終わりにできるかどうか、まだわからない。

◆カタロニア独立を可能にするEUの多段階統合
 【2017年10月9日】 欧州統合が多段階方式に移行した場合、国家統合を早く進める独仏主導のA組への加入は厳しい条件が多く大変だが、統合をゆっくり進めるB組への加入は比較的簡単になる。スペインは、カタロニア問題をうまく解決できればA組に入り、うまく解決できない場合はスペインとカタロニアが別々にB組に入り、その後安定してカタロニアの方が優等生ならカタロニアだけA組に移るといったことが可能になる。EUの厳しい条件を嫌って離脱した英国も、EUのB組に入り直すことが可能になる。

◆中央銀行とトランプのバブル延命、その後出てくる仮想通貨
 【2017年10月5日】 中央銀行群とトランプが、QEや規制破壊によって巨大な金融バブルを維持している間は、安定した仮想通貨が出てこない。金融界によって乱高下させられる、アングラ民間なビットコインなどしかない。だが、いずれバブルが崩壊すると、その流れの中で、ドルに代わるいくつかの基軸通貨の仕組みの一つとして、IMFなどによって、安定した仮想通貨が立ち上がる。

クルド独立とイラントルコの合同戦略
 【2017年10月1日】 イラクとシリアにおいて、イランは、イラクのシーア派政権と、シリアのアサド政権を傘下に入れている。トルコは、イラクのスンニ派地域と、シリアのスンニ派(ISアルカイダの残党)を傘下に入れ、彼らの復興の世話をすることで影響圏拡大(新オスマン帝国戦略)をめざす。クルド人はイラクとシリアの両方で自治を拡大し、イランやトルコの言うことを聞くイラクのバルザニが、シリアクルドの野心やPKKの闘争を抑止する見返りに、イランやトルコから事実上の独立を認めてもらう。これが、今回のイラククルドの独立投票の背後にある大きな動きだ。

9月

◆日本の解散総選挙とQE北朝鮮トランプ
 【2017年9月29日】・・・小池や前原のまわりに、小沢一郎の影があることも気になる。小沢は、鳩山政権の時のような正攻法を繰り返す必要はない。安倍以上の右翼として振る舞い、右からの対米自立を目指す方が現実的ともいえる。安倍自身、すでに似たようなことをやっている。すでに米国には、覇権放棄につながる言動を活発にやっているトランプがいる。政権交代が起きても起きなくても、日本が右からの対米自立を進めていく流れは変わりそうもない。

◆トランプの新・悪の枢軸
 【2017年9月24日】 トランプ今後、悪の枢軸戦略を繰り返し進めようとするだろう。トランプが北朝鮮を先制攻撃するぞと脅すほど、中露や韓国は北朝鮮を説得し、プーチン案をやらせようとする。北朝鮮問題は米国抜きで解決され、朝鮮半島は米国の覇権下から離脱して中露の側に転じる。トランプがイランを敵視するほど、イランは中露やEUに支えられて台頭を続け、米国抜きの中東の国際秩序が出現していく。ベネズエラがドルでなく人民元建てで石油を売り始めることは、ドルの基軸通貨性を支えてきた「ペトロダラー」のシステムを崩していくことにつながる。

プーチンが北朝鮮問題を解決する
 【2017年9月20日】 プーチンが提案した北をめぐる経済協力案は、北が国連決議に従わないと進められない。米国が北を先制攻撃すると脅し、北は脅されるほど突っ張って核ミサイルの開発を進める現状が続くなら、経済協力も実現しない。だが、今回のプーチン案は、従来の米国と中国が主導してきた解決策と、大きく異なっている。それは、今回の案が北朝鮮に対し「米国に脅されても挑発に乗らず無視して、露中や韓国と一緒に、鉄道やパイプラインをつないで経済開発しようよ」と「米国無視」を持ちかけていることだ。従来の解決案は米中主導だったので、北は米国を無視できず、米国の挑発に乗らざるを得なかったが、プーチン案はそれと正反対だ。

◆シリア内戦の終結、イランの台頭、窮するイスラエル
 【2017年9月18日】 シリア南部では、米軍とその傘下の反政府勢力が撤退した軍事的な空白を、イランとその傘下のヒズボラなどシーア民兵団が、急速に埋めている。イスラエルは、味方をしてくれていた米軍や反政府勢力(アルカイダ)にシリア南部を去られてしまい、その空白を仇敵のイランやヒズボラに埋められ、脅威が急増している。しかし、ロシアがいるのでイランとイスラエルの戦争にはならない。

◆トランプの経済政策でバブルの延命
 【2017年9月14日】 今回トランプが民主党と組んで財政問題を解決したことからは、トランプが依然として大きな権限を持っており、軍産エスタブに負けていないと感じられる。トランプは、財政と税制において好きなようにやった後、連銀の政策も自分好みにねじ曲げていくだろう。ドッドフランクは無効にされ、連銀の利上げや勘定縮小は棚上げになる。銀行は高リスクな投資に走らされ、株や債券の相場は上昇し、引き続きバブル膨張を続ける。だが、それもいずれ終わる。バブルの維持が困難になり、やがて大崩壊する。

北朝鮮と日本の核武装
 【2017年9月10日】 北朝鮮の核ミサイルをめぐる米朝対立が激化する中、日本や韓国が独自の核兵器を持つことを許すべきだという主張を、米国の専門家が次々と出している。「日本の保守派は、核武装して、日本を対米自立した大国にしたい」「日本がやると、韓国や台湾も核武装する。日本はこっそり台湾の核武装を支援する」「北の核ミサイルの出現は、米国に、北との戦争か、アジア覇権の放棄か、二者択一を迫っている」「在韓米軍は、中国やソ連が米国の仇敵で、韓国が貧困国だった冷戦初期の遺物だ。日韓は、対米貿易黒字で大儲けしているのに、防衛を米国にやらせている」「核武装は日韓を台頭させ、アジアでの中国の一強体制が崩れて均衡する良い効果がある」

◆北朝鮮危機の解決のカギは韓国に
 【2017年9月8日】 米朝対立は、戦争にもならないし、和解にも至らない。落としどころがないまま、米朝双方の強硬な敵対姿勢が続いている。この問題をとくカギは米朝でなく、韓国が持っている。米韓軍事演習は、米国が凍結を拒否しても、韓国が凍結したいと表明すれば凍結になる。韓国の文在寅大統領は、民族自決や、北との和解を掲げて当選した。当選後、北に対して対話を提案したが、今回の米朝の対立激化の流れの中で、北に無視されている。もし今後、文在寅が、中露提案のダブル凍結案を支持し、米韓合同軍事演習を凍結すると宣言すると、それは緊張緩和と南北対話の実施につながる。

8月

トランプの苦戦
 【2017年8月31日】 トランプは転向していない。覇権勢力と取引している。今のところ、トランプを弾劾する罪も見当たらないので、彼が辞めさせられることはない。覇権派との闘いはまだ続く。今後、議会の共和党がトランプの経済政策を通すようになると、今回の取引はトランプにとってうまくいったことになる。逆に、10月になっても何も議会を通っていない場合、トランプと覇権勢力の関係が、また荒れることになる。

◆QEで進む金融市場の荒廃
 【2017年8月27日】 日本の金融市場は、QEを続ける日銀の独占状態となり、民間の自由市場として死んでいる。もはや「資本主義」でない。欧州も似た状態だ。世界的に、金融市場は民間投資家からの需給でなく、中銀群のQEでのみ支えられる「QE中毒」の傾向が増し、市場の荒廃・廃墟化が進んでいる。日欧中銀のQEは限界に近づいているが、縮小すると金融危機になる。日欧中銀は、QEを縮小するふりをして裏で続けている。

◆トランプの軍産傀儡的アフガン新戦略の深層
 【2017年8月25日】 これまでは、米国がタリバンとの和解を拒否し、脆弱なアフガン傀儡政府の維持に固執しつつ、アフガニスタンを軍事占領していたため、アフガニスタンに派兵していない中露イランの影響力には限界があった。だが、トランプが今回の演説で示した姿勢を今後も変えずに実践した場合、アフガン政府の側に立つ米国と、タリバンの側に立つ中露イランが、内戦終結に向けて交渉する展開がありうる。

バノン辞任と米国内紛の激化
 【2017年8月21日】 トランプ政権は、(1)貿易や外交の分野での覇権放棄・貿易圏潰し、(2)国内経済のテコ入れ、政権維持策としてのバブル延命、(3)米国社会を分裂させて支持基盤を拡大、の3つの戦線をたたかっている。今回は、共和党に阻止されている(2)を進めるためバノンが辞任し、バノンは政府外に戻って(3)の推進に注力することにした。(1)は、バノンがいなくても進められる。(2)が失敗して今秋、米政府閉鎖や金融危機が起きると、トランプの人気は下がるが、米国覇権の衰退に拍車がかかり、トランプやバノンの目標である米覇権の解体が進む。

◆北朝鮮問題の変質
 【2017年8月16日】 北朝鮮は、米国に敵視されるほど、核やミサイルの開発を急ぎ、米本土に到達すると称するミサイルを作ったり、グアム島を先制攻撃すると脅したりして、逆に米国にとって脅威になった。米国の単独覇権戦略上の「敵」とされた中小諸国の中で、実際のミサイル発射をともなう形で、米国を攻撃すると威嚇したのは、北朝鮮が初めてだ。米国自身は脅威を感じず、遠くの中小の勢力を敵として威嚇し、同盟諸国を対米依存にしておくのが、冷戦後の米国の世界支配の策だった。北朝鮮はその策に風穴を開け、米国に具体的な脅威を与え始めている。

◆北朝鮮の脅威を煽って自らを後退させる米国
 【2017年8月3日】 北朝鮮が核ミサイルの開発を続け、米本土に届くことが確実になり、命中精度も上がり、北が「在韓米軍を撤退しない場合、核ミサイルを米本土に撃ち込むぞ」と米国を脅し始めると、軍産にとってまずいことになる。米国は、北のすぐ近くに2万人規模の在韓米軍を駐留しているのに、自国を、北のミサイルの脅威から守れない。米国が北を先制攻撃したら、ソウルが破滅するのでやれない。北のミサイル技術が上がるほど、米国が在韓米軍を延々と駐留させていることが、米国自身と韓国の両方にとって、北の脅威の抑止でなく、逆に脅威を扇動している現実が、しだいに誰の目にも明らかになる。

7月

中国と和解して日豪亜を進める安倍の日本
 【2017年7月31日】 安倍政権は、米中のバランスをとりつつ、多極型の世界において重要になる、国際的な影響圏の設定をやろうとしていると感じられる。海洋アジア地域(日豪亜)に日本の影響圏を設定しつつ、それを持って、ユーラシア大陸に影響圏を広げる中国と、対等に協調していこうとしているように見える。その象徴はTPP11だ。

◆独立しそうでしないイラクのクルド
 【2017年7月26日】 イラク政府や、その宗主国であるイランは、口でこそ「イラク国家の統合が最優先」と言うが、本心では、イラクのスンニ派地域を分離してしまいたい。この状況に、自分たちの利得の機会を見出しているのが、トルコと、クルド自治政府だ。トルコ人もクルド人もほとんどがスンニ派だ。イラクのシーア派が、国内のスンニ派の世話をできないなら、代わりにクルド自治政府と、その後見人であるトルコがお世話しましょう、という話が、少しづつ進んでいる。

NATOを出ていくトルコ
 【2017年7月23日】 トルコと欧米の関係は悪化し続けているが、それでもエルドアンはNATOを離脱すると言わず、NATOにとどまっている。なぜなのか。考えられる理由は、まだ米国が覇権国である世界体制が完全に崩れ去ったわけでないので、米国側と、露中側の両方と有利に交渉できるよう、NATOに加盟したまま露中イランとの関係強化を進めていることだ。米欧と早々と縁を切ってしまうと、ロシアや中国に軽く見られて損をするので、同盟関係を建前的に残している。

◆官製ネズミ講と化した金融市場
 【2017年7月21日】 リーマン危機後、債券金融システムは、米連銀など中銀群のQEという生命維持装置で生きているように見せている。投資銀行やヘッジファンドなど、金融危機を起こして儲けるる勢力もいなくなり、その点で危機が起きにくくなった。だが同時に、金融界の天然の活性(強欲さ)の源泉だった彼らがいなくなり、市場の活性が失われた。市場は死んでいるのに、好景気なので相場が上がっていると、マスコミや専門家にウソの絵を描かせている。金融市場は、官製のネズミ講と化している。もはや、金融システムの活性は戻らない。強欲資本主義が懐かしい。QEをやめて万策尽きると、金融は本物の死を迎える。

◆リベラルとトランプ
 【2017年7月15日】 ブッシュ政権は、強制民主化(政権転覆)、単独覇権主義(同盟国不要論)など、リベラル軍産の戦略を過激にやって失敗しただけだったが、トランプはその戦略をバージョンアップして、リベラル軍産の戦略そのものを否定し、就任後、最初のG7やG20のサミットで、ドイツを筆頭とする同盟諸国が「トランプの米国とは一緒にやっていけない」と表明する事態になった。トランプの覇権放棄策・多極化策は成功している。

多極型世界の始まり
 【2017年7月10日】 トランプの覇権放棄は、短期的な現象でない。国際社会は、米国が単独覇権を立て直すことより、米覇権が崩れた結果としての多極型の世界をうまく運営していくことを重視するようになる。国際社会は米国に頼らずに世界運営をせざるを得なくなった。メルケルのEUや習近平の中国、プーチンのロシアなどが、トランプの米国に代わって主導役を担うようになり、多極型の世界運営が始まっている。

◆結束して国際問題の解決に乗り出す中露
 【2017年7月8日】 中露は、00年に上海機構を作って以来、ユーラシアの安定化を一緒に進めてきた。それをさらに一歩進め、米国が手を出して失敗した北朝鮮、シリア、アフガニスタンなどの再安定化を中露が手がけることで、その地域の覇権を米国でなく中露が持つようにして、多極化を進めつつ世界を安定させようというのが6月のプーチンの提案だった。習近平はこれに賛成し、今回の中露結束の新戦略が始まった。

◆理不尽な敵視策で覇権放棄を狙うトランプ
 【2017年7月4日】 多極型の国際社会を象徴するG20サミットが、7月7日からドイツで開かれる。それを前に米トランプ政権は、米国に代わってG20の主導役をやれそうな中国とドイツに対し、保護主義的な貿易紛争やその他の理不尽な敵対策を吹っかけて怒らせる策略を強めている。トランプの理不尽策は、他の諸大国を怒らせ、呆れさせて、世界のまとめ役を米国に頼めないから自分たちがやるしかないと考えるように仕向け、米国が覇権を放棄して世界を多極化へといざなう覇権放棄策だ。

中国の一帯一路と中東
 【2017年7月2日】 習近平が「一帯一路」の7つのルートのうちパキスタン経由の「中パ回廊」の建設を急ぐのは、回廊が中国とイランをつなぐからだ。イランは、ロシアと協力してシリア内戦を終わらせ、イランからイラク、シリア、レバノンまでの「イラン圏」「シーア派の三日月地帯」を構築している。イランは今後、この地域を安定化し、復興や経済発展を模索する。そこで必要になるのが、復興を実現する投資と物資だ。それを用意できる最大の勢力が中国だ。一帯一路によって中国とイラン圏との貿易や投資が強化されると、イラン圏の復興と発展が成功し、中国も利益を得る。