折々の記 2016 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】

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特別編集 田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

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2016/1月~6月


 10 04 (火) 国際ニュース解説         一月から六月まで

今までいろいろと報道データを見てきたが、田中宇の国際ニュース解説は世界のマクロニュースをつかんでいくのに一番安心を置いていいと思う。

それゆえ、一か所にデータを集中することとした。 このサイトは自動継続としてあるのでいつでも「お気に入り」サイトから「ニュース」続いて「田中宇の国際ニュース解説」をクリックし、読みたいタイトルの年月日を探して接続すれば、細かい解説が読めます。

或いはまた、このサイトの中で各解説概要の終りに「折々の記」とあるものは、それをクリックすると詳細解説が載せられています。

この「折々の記」へはデータの所在と主要記事を含めた感想が載せたりしてあります。


6月
◆英国より国際金融システムが危機
 【2016年6月29日】 人々が「金融危機なんか起きない」と思っている間は、債券への信用が保たれて金利が上がりにくい。だからマスコミや金融界は、グリーンスパンやBIS、安倍晋三らによる金融危機への警告をかたくなに無視する。しかし、英国ショックや大銀行倒産などが起きると、一時的に信用が大きく失墜し、各国当局がそれらのショックを乗り越えられなくなると金融危機になる。危機が再来し、金利上昇がジャンク債から米国債にまで波及すると、グリーンスパンが予言する「デフレ(マイナス金利)から超インフレ(金利高騰)への突然の転換」が起きる。

◇英国が火をつけた「欧米の春」
 【2016年6月27日】 英国の国民投票は、英国と欧州大陸、そして米国という「欧米」の民衆が、エリート支配に対して民主的な拒否権を発動する事態の勃興を示している。英BBCは、国民投票前に「英国でEU離脱が勝つと、米国でトランプが勝つ可能性が高まる」「米英の状況は似ている」と報じた。かつてエジプトやバーレーンなどで、民衆が為政者の支配を拒否して立ち上がる「アラブの春」が起きたが、それはいま欧米に燃え広がり「欧米の春」が始まっている。

◆英国の投票とEUの解体
 【2016年6月22日】 EU残留を問う英国での国民投票を前に、欧州の大陸側では、EU統合を推進してきた上層部の人々が、英国の投票結果にかかわらず、すでにEUは政治経済の統合をこれ以上推進するのが無理な状態になっている、と指摘し始めている。

◆リーマン危機の続きが始まる
 【2016年6月16日】 日欧の中央銀行は緩和策を過激化している。世界の金利を史上最低に落とさないと、米国のジャンク債などが投資家の信用を失って買われなくなり、リスクプレミアムが急騰してしまう状態に、すでになっているのでないか。日欧の中銀が必死に自分たちを弱くしているので状況が緩和され、危機として認識されていないだけで、すでにドル崩壊、リーマン危機の再来、多極化につながる米覇権の瓦解が始まっているのでないか。

◇英国がEUを離脱するとどうなる?
 【2016年6月13日】 英国はEUを離脱すると、スコットランドに独立され、北アイルランドも紛争に逆戻りする。国際金融におけるロンドンの地位低下も不可避だ。欧州大陸では、EUへの支持が半分を切っている国が多いなか、英国が国民投票でEU離脱を決めると、他の諸国でも「うちでも国民投票すべきだ」という主張が強まり、相次いで国民投票が行われて離脱派が勝ち、EUが解体しかねない。そうした懸念はあるが、逆にだからこそ、英国で離脱派が勝ったら、英国がEUの政策決定に口出しできなくなることを利用して、独仏は全速力で財政や金融などの面の国家統合を進めようとすると予測できる。

◆いずれ始まる米朝対話
 【2016年6月9日】 自己資金なので好き勝手に言えるトランプは、ロシアや北朝鮮と話し合いたいと言いまくっている。ヒラリーはトランプの外交姿勢を酷評するが、内心うらやましいと思っているはずだ。彼女自身が大統領になったら、好戦派から現実策に静かに転換し、トランプと似たことをやりたがるだろう。次の米大統領が誰になっても、米朝の交渉が始まるのでないか。何も始まらない場合、北の核武装が進み、制裁だけして放置する米国の対北政策の破綻がますます露呈する。いずれ誰かが米国を代表して北との話し合いを始めざるを得ない。

◆バブルをいつまで延命できるか
 【2016年6月6日】 米日欧の中央銀行や政府の最近の姿勢からは、どんな手を使ってもバブルを再崩壊させないという強い意志が感じられる。マイナス金利やQEは永久に続けねばならない。やめたら株やジャンク債が売れなくなり、危機が再発する。年金や生保は給付金を払えず減額が長期的に不可避だ。日欧政府は、景気テコ入れの効果があるとウソをついてQEやマイナス金利策をやっているが、景気は改善されずウソがばれている。だが、もし選挙で政権が交代しても、QEやマイナス金利をやめられない。やめたら金融崩壊、経済破綻だからだ。

◇米国と対等になる中国
 【2016年6月4日】 世界のシステムが米国と中国で並立化するほど、米国は、中国とその傘下の国々を制裁できないようになる。米中は相互に、相手を倒すことができない関係になっている。中国は、米国と対等な関係になりつつある。軍事面では、南シナ海でいずれ中国が防空識別圏を設定し、米国がそれを容認する時が、米中が対等になる瞬間だ。中国は、国際社会のあり方を大きく変えている。
「折々の記」


5月
◆オバマの広島訪問をめぐる考察
 【2016年5月31日】 日本の権力を握る官僚機構は、軍産複合体の一部だ。軍産の言いなりになるように見せて、最終的に軍産を弱めるのがオバマの策だから、今回の広島訪問についても、安倍の人気取りの道具に使われるように見えて、最終的に軍産の一部である日本政府に打撃を与える何らかの意味がありそうだ。
「折々の記」

◆G7で金融延命策の窮地を示した安倍
 【2016年5月28日】 米国の求めに応じ、財務省の黒田を日銀総裁に送り込んで過激なQE拡大をやらせたのは安倍自身だ。その安倍が今回、G7サミットの議論で「リーマン級の危機再発が近い」という見解を主張した。この主張が意味するところは、日銀の過激なQEがすでに限界に達しており、ドイツの財政出動など新たな延命策が追加されない限り、国際金融システムを延命できなくなってリーマン級の危機が再発するぞ、という警告だったと考えられる。
「折々の記」

◇中東諸国の米国離れを示す閣僚人事
 【2016年5月24日】 ナイミ石油相の解任は、米国の金融界や石油産業との「果し合い」に注力するという、サウジ権力者の決意表明である。同様に、イスラエルで親露極右のリーベルマンが国防相に就任することも、イスラエル権力者の米国離れを物語っている。

◆金融を破綻させ世界システムを入れ替える
 【2016年5月20日】 世界や国家といった巨大システムの運営者が自分のシステムを破壊するとしたら、それは別のシステムと入れ替えようとする時だ。国際秩序や国家のような、大きくて自走的なシステムを入れ替える場合、構成員全体の同意を得て民主的に入れ替えを進めるのはまず無理だ。今のシステムに対して影響力を持つ人々(エリート)の多くが入れ替えで損をするので、彼らが猛反対して計画を潰しにかかる。既存のシステムを助けるふりをして破壊し、壊れたので仕方なく新たなシステムと入れ替える形をとった方がうまくいく。
「折々の記」

◆金融バブルと闘う習近平
 【2016年5月16日】 世界経済における米中の談合体制が終わったのは14年秋、米連銀がゼロ金利策をやめることを決め、QEを日欧に肩代わりさせ、利上げの方向性を打ち出した時だった。米国の金利上昇は中国の調達金利の上昇につながり、設備投資や株のバブル崩壊を招きかねない。習近平は、経済現場の幹部たちの反対を押し切り、設備投資の縮小や、株価の下落誘導の政策を開始した。中国の上層部での経済政策をめぐる暗闘を示す人民日報の「権威人士」の記事の裏に、米国のゼロ金利資金で中国が設備投資バブルを膨らませる米中談合の破談がある。

◇トランプ台頭と軍産イスラエル瓦解
 【2016年5月11日】 トランプが席巻した結果、共和党で見えてきたのは、これまで合体して共和党や米政界を支配してきた「軍産」と「イスラエル」が、別々の道を歩み出して分裂している新事態だ。軍産はNATO延命のためロシア敵視の道を暴走しているが、イスラエルは隠然と親ロシアに転じている。この傾向は長期的で、今後常態化する。軍産イスラエルが米国を支配した時代の終わりが来ている。トランプは、軍産イスラエルのプロパガンダ力の低下を見破り、大統領に立候補して国民の支持を集め、軍産を破壊した。米国は民主主義が生きている。

◆潜水艦とともに消えた日豪亜同盟
 【2016年5月6日】 潜水艦の機密を共有したら始まっていたであろう「日豪亜同盟」について、日本は、中国敵視と対米従属の機構としてのみ考えていたのに対し、豪州は米中間のバランスをとった上での、対中協調・対米自立も含めた機構と考える傾向があった。この点の食い違いが埋まらず、豪州は日本に潜水艦を発注しないことにした。日本ではこの間、豪州との戦略関係について、中国敵視・対米従属以外の方向の議論が全く出てこなかったし、近年の日本では、対中協調や対米自立の国家戦略が公的な場で語られることすら全くないので、今後も豪州を納得させられる同盟論が日本から出てくる可能性はほとんどない。「日豪亜同盟」のシナリオは、日本の豪潜水艦の受注失敗とともに消えたといえる。
「折々の記」


4月
番外 タックスヘイブンの醜聞
 金! 金! 金! 凡欲の醜さ

舎利子みよ!!  この体たらく!!
漱石があえて忌避するとした金の醜聞が世界中を席巻している。
  ① NHK NEWS WEB 特集  「パナマ文書」何を明らかに
  ② 朝日新聞デジタル  サイト内記事検索結果 ⇒ パナマ文書
  ③ 朝日新聞デジタル  新聞記事検索結果 ⇒ パナマ文書
  ④ ニュースフィア  パナマ文書に対する海外の反応一覧
  ⑤ ニュースフィア パナマ文書が流出!  世界最大級のリーク、パナマ文書とは?
  ⑥ togetter (社会、社会問題)  パナマ文書
  ⑦ shanti-phula.net (Home、時事ブログ)  パナマ文書に出ている日本人がヤバすぎる!!
     〜パナマ文書の破壊力は、核爆弾に相当〜
  ⑧ トレンドサーチ  パナマ文書とは?

「折々の記」

番外 ああ、許すまじこの政治!!
 (変わる安全保障)法施行

アメリカに前もって約束していた集団的自衛権にまつわる「安全保障法」の法的施行を実施したことをお土産として、安倍総理はアメリカへ行きました。
国民世論を無視し、憲法学者に反対されてもなお、濁流に身を任せた。 だが、日本国憲法第九条に示されている恒久平和の精神を踏みにじった罪は許していいはずはない。
人類の理想に反する喧嘩、破壊、殺人を公然と認める政治は、文化を築きあげた人々の努力を無視した考え方であり、平安を願う庶民は猛反発しなければならないのです。
この時期の新聞をだいじに、証拠として残しておきたい。
  (変わる安全保障)法施行:上 違憲の疑念、残し施行 安保法
  安保法、施行 集団的自衛権容認、専守防衛を転換 違憲批判、参院選争点
  (変わる安全保障)法施行:下 PKO、政権の思惑は

「折々の記」

番外 隠れ多極主義
 田中宇の国際ニュース解説⑪ 隠れ多極主義

隠れ多極主義と覇権主義という言葉が国際情勢の理解の上で使われている。 一般用語ではないから、多極主義者と覇権主義者とはいったい誰を指しているのだろうか。 具体的な氏名を上げないと理解しにくい。
だが、この区別は戦争ゃ紛争が何故どこで起きているのか。 マスコミを操る陰の権力行使者はだれなのか。 或いは陰の組織の動きはどう動いているのか。
プロパガンダを操るブラックモンスターの組織活動はどのように実行に移されているのか。
ISの実態はどう動いているのか。
日本国憲法の平和主義は砂上の楼閣に過ぎないのか。 ユネスコの崇高な精神のバックボーンは、世界に通用しないのだろうか。

「折々の記」

◇911サウジ犯人説の茶番劇
 【2016年4月29日】 911に対する米当局の関与を完全隠蔽する米議会が、サウジ当局の関与だけを示唆したがるのは、サウジに対する嫌がらせをしたいからだ。911をめぐる政治劇の中で、サウジをことさら悪者にするのは、おそらくイスラエル系の勢力からの圧力だ。イスラエルとサウジは、米国の中東戦略の立案過程においてライバルどうしだ。オバマ自身、サウジとイスラエルが米国の中東戦略をねじ曲げていると嘆いている。
「折々の記」


「折々の記」

◆IMF世銀を動かすBRICS
 【2016年4月25日】 BRICSの発言力が強まる今後のIMFは、QEやマイナス金利策の行く末にある大危機の発生を止められないものの、大危機が起きて米国中心の金融と通貨のシステムが再崩壊した後の国際金融システムを再構築することはできる。リーマン危機の直後、G20がG7に取って代わり、IMF世銀がG20の多極型経済体制の運営事務局になることが決まった当時、ドルに代わる基軸通貨体制としてIMFのSDRを使う案が出された。これまで「SDRなど使い物にならない」と一蹴される傾向があったが、いずれドル基軸の崩壊感が強まると、SDRを使うしかないという話になる。
「折々の記」

◆暴かれる金相場の不正操作
 【2016年4月19日】 米連銀がNYで金相場を積極的に不正操作し始めた以上、ロンドン金相場の不正操作の体制は必要なくなった。ロンドンの不正操作体制は、時代遅れになった後、当局の捜査対象となった。時代遅れになったからといって、これまで何十年も黙認してきたロンドン金相場の不正操作を、捜査して不正を暴露する必要はない。米当局は、自分で新たな不正操作を開始した上で、古い不正操作の体制を犯罪として検挙するという、おかしなことをやっている。
「折々の記」

◇欧州の対米従属の行方
 【2016年4月15日】  トランプが指摘するまでもなく、軍産はとっくに時代遅れだが、なかなか潰れず非常にしぶとい。その原因は、米国側でなく、同盟国の側にある。欧州や日韓といった同盟諸国はこの間、でくのぼうのように、無茶苦茶な米国(軍産)に従属し続けてきた。その理由として、米国に逆らったら政権転覆や経済制裁を受けるという恐怖心もあるだろうが、それ以上に大きいと考えられるのが、米国が無茶苦茶でも見て見ぬふりをして、世界の運営(覇権)を米国に任せておいた方が楽だという同盟諸国側の怠慢さ(現実主義)だ。
「折々の記」

◆利上げできなくなる米連銀
 【2016年4月13日】 挺身的なドル救済策として日欧が何か奇策を今後やれるとしたら、それは欧州でなく日本だ。安倍政権は、日銀がQEで買い支えた日本国債の一部について、償還までの長さを無期限に延長し、名目インフレ値より低い固定金利を設定して事実上のゼロ金利にすることによって「ゼロ金利の永久債」に転換する「国債の帳消し」を検討しているという。
「折々の記」

◆ナゴルノカラバフで米軍産が起こす戦争を終わらせる露イラン
 【2016年4月7日】 ロシアとイランは、シリアで結束してテロ組織を攻撃してアサド政権を守る安定化策をやって成功しつつあり、同様の結束で、ナゴルノ・カラバフ紛争を解決しようとしている。米国の軍産が引き起こす国家破壊を露イランが阻止して解決に持っていく構図が、シリアに続いてコーカサスでも繰り返されている。露イランがアゼルバイジャンのアリエフ大統領を説得して紛争の再燃を防げれば、その後のコーカサスは米国でなく、露イランの影響下に入る傾向を強める。
「折々の記」

◇世界と日本を変えるトランプ
 【2016年4月2日】 オバマとトランプの世界戦略はよく似ている。両者とも、米国が軍事で国際問題を解決するのはもう無理と考え、米国に軍事的解決を求めてすり寄ってくる同盟諸国にうんざりし、好戦策ばかり主張する外交専門家(=軍産)を嫌う反面、ロシアを評価している。オバマは、世界的な米覇権の退却と多極化の流れのうち、中東とロシアの部分だけぐんぐん進めた。世界の残りの、欧州とロシアのNATOの部分、中国と日韓朝などアジアの部分などについては、トランプが次期大統領になって継承して進めると考えると、スムーズなシナリオとして読み解ける。
「折々の記」


3月
◆テロと難民でEUを困らせるトルコ
 【2016年3月29日】 昨夏までの冷戦構造的な「トルコ(NATO、軍産、米欧)=善、ロシア=悪」の構図は、ロシアの半年間のシリア軍事支援を経て、今や逆の「ロシア=善、トルコ=悪」に転換している。今回ヨルダン国王の発言が報じられ、トルコが意図的に難民危機やテロをを引き起こしていることが暴露されたことは「トルコ=悪」の構図に拍車をかけ、ロシアの有利に拍車をかけている。トルコが引き起こした難民危機はEUを標的にしたものだが、EU自身はトルコが属する軍産やNATOの傘下から出られず、トルコを非難することもできず、不甲斐ない状態だ。

◇軍産複合体と闘うオバマ
 【2016年3月23日】 オバマ・ドクトリンを一言でいうと「中東からの米国の撤退」になるが、ドクトリンの記事はもっと別の読み方もできる。それは、オバマが大統領の7年間に、いかに軍産複合体と熾烈に格闘(暗闘)してきたか、ということだ。人類全体の善悪観を操作する権限を保持する軍産複合体との闘いは、正攻法で勝てない。戦後、繰り返し挙行されてきたのが、軍産が好む形だけの戦争を過激にやって泥沼のひどい戦争へと悪化させ、挙国一致で戦争をやめる策に転じたついでに他の諸大国に地域覇権を移譲して世界を多極型に転換し、軍産を無力化するという、回りくどい策だった。オバマも7年間それをやり、仕上げの時期に入っている。

◆中東を多極化するロシア
 【2016年3月16日】 米国覇権で食っている「外交専門家」たちは「多極型覇権なんてうまくいかない。大国間の対立激化で破綻する。覇権は単独体制しかない」と言うが、ロシアがシリアの停戦をまとめ、中東全体を安定化に導こうとしている現状を見ると、米国の単独覇権体制より、ロシアや中国が形成しつつある多極型の体制の方がうまくいくことがわかる。

◆ロシアとOPECの結託
 【2016年3月10日】 OPEC内の中小の産油諸国は「米国勢を追い詰めるのは結構だが、自分たちを財政破綻に追い込まない程度にしてくれ」と、ひどくなる原油安の中で嘆願している。これを放置すると、OPEC内のサウジの指導力が低下しかねない。そこに助け舟を出したのがロシアだった。

◇西岸を併合するイスラエル
 【2016年3月8日】 イスラエル政府は、レヴィ報告書を正式な政府の立場として受け入れていないが、パレスチナ人から土地を奪うことを合法化する報告書の提案は次々と具体的な政策になり、具体化の過程は間もなく一段落する。近いうちに、イスラエルが西岸でパレスチナ人の土地を奪うことが「合法的」なこととして加速する事態になる。

◆北朝鮮の政権維持と核廃棄
 【2016年3月6日】 懸念されるのは、金正恩が最終的に米国や韓国との緊張緩和に進む気があるかどうかだ。緊張緩和すると、北の政権が持たなくなるかもしれない。金正恩は、緊張緩和よりも政権維持を優先し、せっかく米国が核問題解決のハードルを大幅に下げているのに、難癖をつけてそれを受け入れない可能性がある。

◆中国経済の崩壊
 【2016年3月3日】 中国が米国の金融延命策に協力する構図が崩壊したのが、14年秋からの米連銀のQE終結・利上げ政策の開始だった。米国が引き締めに転じたため新興市場への投資が流出し、中国の設備投資のバブルが崩壊した。しかし中国は崩壊が先に始まっただけで、いずれ米国の金融危機が、中国の経済危機を抜くだろう。
「折々の記」

◇ニクソン、レーガン、そしてトランプ
 【2016年3月1日】 ニクソン(共和党)からレーガン(共和党)への、アイデアリストが稚拙に(故意に)失敗した末にリアリストが席巻する隠れ多極主義的な展開が、ブッシュ(共和党)の911から今後(2020年ごろ?)にかけて繰り返されるとしたら、共和党のトランプがリアリストの外交戦略を掲げて次期大統領を狙うことは歴史的な意味がある。ロックフェラーや傘下のCFRが歴史の繰り返しを演出したいなら、次の大統領をクリントンでなくトランプにするシナリオだ。
「折々の記」


2月
◆シリアの停戦
 【2016年2月23日】 ISISとヌスラ戦線というテロ組織2派がアサド政権軍に勝っていた間は、反政府勢力のほとんどが2派の傘下にいた。だが昨秋から露軍の支援を受けてアサド軍が盛り返し、今では2派の方が敗北寸前まで追い込まれ、傘下にいた多くの勢力が離反し、アサド政権の側に寝返っている。今回の停戦は、この寝返りに拍車をかけるための、ロシアとアサドの策略だ。

◆ジャンク債から再燃する金融危機
 【2016年2月21日】 米国の社債市場を悪化させている原油安と世界不況は、今後も続く。原油相場は上がらない。米エネルギー産業の債券危機はひどくなる。ジャンク債の金利は上昇傾向だ。当局による株価操作も繰り返されるうちに効力が減じ、株式と社債の両方で崩壊傾向が強まる。リーマン危機の時は、QEという延命策があった。だが今後の金融危機は、その延命策が尽きたところで発生する。
「折々の記」

◇米欧がロシア敵視をやめない理由
 【2016年2月17日】 米国だけでなく欧州諸国の上層部でも、EU統合派(親露派)と対米従属派(反露派、軍産)が暗闘している。米国に勧められて統合を始めた欧州は、米国に嫌われてまでEU統合を押し進めたいと思っていない。だから、米国の反露策が非常に理不尽でもそれにつき合い、EU統合を遅延させてきた。しかし、欧州が米国の傘下でぐずぐずしているうちに、米国の世界戦略はどんどん理不尽になり、欧州にとって弊害が増えている。シリアでは、大量の難民の発生と欧州への流入を止められず、EU統合の柱の一つである国境統合(シェンゲン条約体制)が破綻しかけている。ウクライナでの欧露対立で、対露貿易に頼ってきた東欧の経済難が進んでいる。
「折々の記」

◆万策尽き始めた中央銀行
 【2016年2月12日】 今年に入って世界的に金融の混乱が加速し、それに対して日米欧の中央銀行が十分な対策(追加的な緩和策)をとれないことが明らかになり、混乱がさらに加速している。ジャンク債の金利上昇、株価の下落、円高ドル安、金地金の上昇など、金融延命策の終わりを思わせる逆流の事態が起きている。私の予測の中の「延命策の限界露呈」が起こり、その結果「金融システムのバブル崩壊」が始まったと考えられる。
「折々の記」

◇サウジアラビア王家の内紛
 【2016年2月6日】 サウジ王政の最上層部の内紛は「親馬鹿な国王のわがまま」を超えた、国家戦略の行方をめぐる政争である。ナイーフ皇太子が対米従属派で、サルマン副皇太子(と父親のサルマン国王)は対米自立派であり、米国の覇権が低下するなか、サウジがどこまで米国の支配につき合い続けるかという国家戦略をめぐる戦いだ。ナイーフが次期国王になると、日本と同様、衰退する米国にどこまでも付き従っていく可能性が高い。対照的に、若いサルマンが王位を継ぐと、サウジは対米自立していき、多極型の世界体制のもとで、中露やイランと並ぶ地域大国として振る舞う傾向を強める。

◆日銀マイナス金利はドル救援策
 【2016年2月3日】 米連銀が日銀に求めていることは「ドルと米国債、米金融システム)へのテコ入れ」だ。日米間の金利差の拡大、ドル高円安、日本から米国への資金流入などが起きるなら「まともな」マイナス金利策でなくてもよい。日銀が実際にとった策は「マイナス金利」のイメージだけが喧伝され、銀行が日銀に預ける当座預金の金利はプラスのままという、銀行の経営に配慮する内容となった。
「折々の記」


1月
◆英国がEUに残る意味
 【2016年1月27日】 きたるべき米国の金融崩壊は、世界的な金融危機や不況を引き起こすが、長期的に最も国力が低下するのは米国自身だ。英国は、米英同盟を国家戦略にできなくなり、EUに残るしかなくなる。こうなってから英国がEUと交渉しても何も引き出せず、EU内で今よりずっと低い地位しか与えられずにEUに吸収されてしまう。だから英国は、米国が金融危機を再発する前に、早くEUと交渉し、できるだけ有利なかたちでEU残留を決めたい。
「折々の記」

◇見えてきた日本の新たな姿
 【2016年1月23日】 安倍政権は昨年後半から、対米従属から微妙に外れる新戦略を、目立たない形ながら、次々ととっている。(1)日豪での潜水艦技術の共有化(2)従軍慰安婦問題の解決で再開された日韓防衛協定や北朝鮮核6カ国協議(3)安部首相による日露関係改善の試み(4)中国の脅威を口実とした東シナ海から南シナ海に向けた自衛隊の諜報活動(日本の軍事影響圏)の拡大、などである。
「折々の記」

◆ドルの魔力が解けてきた
 【2016年1月13日】 中国を筆頭とする実体経済の悪化、米シェール産業の行き詰まり、中央銀行群の金融テコ入れ策の弾切れなど、いくつもの危険な動きが激化している。米国など先進諸国の株や債券がいつ不可逆的に暴落しても不思議でない。英国の銀行は最近、顧客に対し「手持ちの株や社債を早く売却した方が良い。パニック売りの状態になってからでは遅い」と忠告している。モルガンスタンレーやバンカメも、似たような警告を発している。
「折々の記」

◇北朝鮮に核保有を許す米中
 【2016年1月11日】 オバマと同じ民主党の、クリントン政権の国防長官だったウィリアム・ペリーが驚きの提案をした。「北はすでに核兵器を持っており、廃棄させるのは不可能。現実的な新たな目標は、北に核を廃棄させるのでなく、北が開発した核を封じ込めることだ。(1)北にこれ以上の核兵器を作らせない(2)これ以上高性能な核兵器を作らせない(3)核技術を他国に輸出させないという『3つのノー』を新たな目標にすべきだ。この目標は中国とも協調できる内容で、米中で6カ国協議を再開できる」
「折々の記」

「金融世界大戦」の中国語訳が台湾で出版されました(晨星出版社。訳:蕭辰倢)
◆イランとサウジの接近を妨害したシーア派処刑
 【2016年1月6日】 サウジ王政の上層部は、軍産複合体とつながった親米派と、イランやロシアとの協調関係を作っていきたい非米派が、ずっと暗闘している。イランやトルコと組んでイラクのスンニ派地域を安定させる計画に乗り、バグダッドの大使館を再開したのは非米派の策だろう。そして、ニムル師を処刑してイランとの関係を悪化させ、イラク安定化計画を妨害したのは親米派の策だと考えられる。
「折々の記」

◇日韓和解なぜ今?
 【2016年1月4日】 慰安婦問題がなぜ今解決したのかという問いは、オバマ政権がなぜ今日韓に和解しろと圧力をかけたのかという問いだ。オバマは、任期最後の年である今年、北朝鮮の核開発問題を解決したいので、まず米国の力で最も簡単に解決できる日韓の和解を実現したのでないか。今回、米国からの圧力による慰安婦問題の解決、日韓安保協定の再交渉が始まったことは、2011-12年の「米国が出ていく流れ」の再開になるかもしれない。
「折々の記」



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