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折々の記 2016 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】田中宇 【 02 】田中宇 【 03 】田中宇
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【 07 】田中宇 【 08 】田中宇 【 09 】田中宇
特別編集 田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか
【 02 】
2016/7月~12月
10 05 (水) 国際ニュース解説 七月から十二月まで
今までいろいろと報道データを見てきたが、田中宇の国際ニュース解説は世界のマクロニュースをつかんでいくのに一番安心を置いていいと思う。
それゆえ、一か所にデータを集中することとした。 このサイトは自動継続としてあるのでいつでも「お気に入り」サイトから「ニュース」続いて「田中宇の国際ニュース解説」をクリックし、読みたいタイトルの年月日を探して接続すれば、細かい解説が読めます。
或いはまた、このサイトの中で各解説概要の終りに「折々の記」とあるものは、それをクリックすると詳細解説が載せられています。
この「折々の記」へはデータの所在と主要記事を含めた感想が載せたりしてあります。
田中宇の国際ニュース解説
12月
◇欧州の難民危機を煽るNGO
【2016年12月29日】 リビアからイタリアへの地中海をわたる経済難民(不法移民)の流入を、欧州のNGO群が支援している。リビアのマフィアがアフリカ全土から勧誘して有料で連れてきた不法移民をリビア沖の領海の外れまでゴムボートで運び、それをNGOの船が引き取ってイタリアの港まで運び、NGOが欧州の難民危機を扇動している。難民流入が増えるほど「欧州リベラルエリート層の最後の希望」である独メルケル首相の人気が下がり、EU各国の反エリートな極右極左勢力が政治台頭する。
◆トランプの就任を何とか阻止したい・・・
【2016年12月26日】米大統領選でのトランプの当選後、軍産複合体・諜報界・マスコミ・民主党が結託し、何とかトランプの大統領就任を阻止しようと動いている。いくつかの州で再開票が行われたが、結果は変わらなかった。12月19日の選挙人投票で、トランプへの投票が義務づけられている選挙人を翻心させる試みも行われたが失敗した。ロシアが偽ニュースの対米発信や民主党幹部のメール暴露によって不正にトランプを優勢にして勝たせたとする報告書を諜報機関CIAが出したが、主張は根拠が薄い。CIAはオバマに命じられ、トランプ敵視の自滅策をやらされている。
◆アレッポ陥落で始まった多極型シリア和平
【2016年12月23日】ロシアは、全員テロリストと化したシリアの反政府勢力のうち、武器を捨てる勢力を正当な野党とみなすメカニズムを作り、反政府勢力とアサド政権の和解交渉を露トルコイランの主導で進めている。和解交渉はカザフスタンの首都アスタナで開かれる。アスタナ会議には、これまで停戦会議を主導してきた米国や国連が呼ばれていない。米欧国連はアサド打倒に固執し、内戦を悪化させただけだ。米国や国連は、腹いせに「アサドの軍が虐殺をやった」と歪曲的・針小棒大に騒ぎ、その裏でロシア主導の現実的なシリア和平が静かに進んでいる。ロシアは、アフガニスタンでも米国抜き・露中イラン協調の新たな内戦終結策を開始し、覇権の多極化を進めている。
◇トランプのポピュリズム経済戦略
【2016年12月17日】 レーガン主義の元祖であるスティーブン・ムーアが「共和党がレーガン主義の党だった時代は終わる」「共和党は、レーガンの保守主義でなく、労働者を重視するトランプのポピュリズムの政党にならねばならない」と主張している。トランプが、選挙戦で掲げた政策をそのまま大統領として実行し、共和党がそれを党の長期政策として受け入れると、今後の共和党が「ポピュリズムのトランプ労働者党」になる。これがうまくいくと、トランプは再選され、議会も共和党の優勢が続く。
◆トランプの経済ナショナリズム
【2016年12月13日】 トランプは、これまでの覇権運営優先・国内実体経済の発展軽視の風潮を破壊し、米国の覇権を放棄する代わりに、国内実体経済の発展を最優先する経済ナショナリズムをやろうとしている。覇権優先の体制下で、意図的に諸外国に無償供与されてきた「米国民に商品を売る権利」を、米国民を雇用する米企業の手に引き戻そうとしている。米国が意図的にないがしろにしてきた国内産業の振興を進め、外国勢でなく米国の(国際企業でなく)土着企業を儲けさせる政策が奏功すると、米経済は意外な成長を始める。成長が始まれば、大規模なインフラ整備が超インフレにつながらず、むしろ成長を後押しする。
◆見えてきたトランプの対中国戦略
【2016年12月11日】 トランプは、一党独裁や民主活動家弾圧、南シナ海、台湾、チベット、ウイグルなど、これまで米国が中国の問題点として批判してきたことを全てすっ飛ばし、全く問題ないと言っている。トランプは、米中は世界の2大経済大国であり、世界で最も大事な二国間関係なのだから、米中関係を早く改善することが必要だと述べている。
◇プーチンとトランプがリビアを再統合しそう
【2016年12月8日】 リビアは、シリアと並び、オバマ政権の失策の象徴である。だがリビアは今後、トランプがプーチンと協力することで、再統合を成し遂げる可能性が見えてきている。ロシアがリビア東部の軍勢を支援すると、リビア内戦は、西部の優勢から東部の優勢、同胞団の優勢から反同胞団の優勢へと転換する。ロシア軍がリビア東部のベンガジに基地を作る予定との指摘もある。リビアの多くの勢力が、シリア内戦を成功裏に終結させつつあるロシアがリビア内戦も仲裁することを歓迎している。これまで西部のムスリム同胞団を支援していた米国は、トランプの就任とともに東部の反同胞団な勢力を支援するようになり、ロシアと歩調を合わせる。
◆進むシリア平定、ロシア台頭、米国不信
【2016年12月7日】 露シリア軍は、シリア全土のアルカイダをイドリブに追い込んで集める作戦だ。シリア各地の町や村で、シリア軍の攻撃を受けて追い出されたアルカイダの多くはイドリブに移動している。露シリア軍は、しばらくイドリブを放置する予定だ。露アサドは、アルカイダを穏健派と故意に誤認し続ける米政府を逆なですることを避けつつせず、イドリブ以外のシリアの安定化や再建を加速できる。トランプは「シリアに穏健派などいない。米政府は馬鹿げた誤認をしている」という趣旨の発言を繰り返しているので、いずれ米政府の誤認は解消される。そうしたら、露シリア軍がイドリブのアルカイダを掃討するだろう。
◆OPEC減産合意の深層
【2016年12月4日】 OPECとロシアが15年ぶりに減産協定を決めた。だが、ロシアもイランもサウジも減産する必要がない。増産の一部をあきらめるだけだ。「減産」という言葉が報じられるだけで原油相場が急騰した。イランとサウジは少し歩み寄り、それを実現したロシアの覇権が上昇した。石油価格の再上昇は、ロシアのプーチンから米国のトランプへの、カネのかからない「就任祝い」にもなっている。
◇偽ニュース攻撃で自滅する米マスコミ
【2016年12月1日】 米マスコミの多くは10年来、歪曲報道が増え質が低下している。マスコミの質が落ちるほど、米非主流派のニュースサイトが、多くの人に頼りにされている。それらをまるごと偽ニュースとみなすワシントンポストの記事は、ライバルをニセモノ扱いし誹謗中傷することで、自分らマスコミを有利にしようとする意図が見える。だが、今回のような過激で稚拙なやり方で非主流派メディアを攻撃し続けるほど、マスコミ自身の信頼がさらに下がり、知名度が低かった非主流派メディアへの注目度や信頼性を逆に高めてしまう。
11月
◆マスコミを無力化するトランプ
【2016年11月29日】 トランプの戦略は、バノンが経営する反エスタブ・反リベラルな右派ニュースサイトであるブライトバートを、エスタブ・リベラルなマスコミに噛みつかせ、戦わせる策だ。マスコミは、バノンを「差別主義者」「危険人物」と酷評しているが、バノンは権力を背にしており、いずれマスコミは沈黙・黙従する。エリートなマスコミは、これまで軽蔑してきたやくざで反主流な言論サイトと戦わされて消耗した挙句、トランプに媚を売って屈服せざるを得なくなる。
ラジオデイズ・田中宇「ニュースの裏側」・・・トランプ勝利の背景と今後の展開 購入
◆トランプ・プーチン・エルドアン枢軸
【2016年11月27日】 ドナルド・トランプは、まだ大統領に就任していないのに、シリアやイラクでISISやアルカイダを退治する国際軍を米露主導で編成することについて、現職のオバマ政権をすっ飛ばし、すでにロシアやトルコなどと協議している。米露土の3人のワルガキ独裁者の枢軸が標的とするのはISカイダだけでない。3人はもうひとつ「欧州のエリート支配体制」を共通の標的にしている。ドイツのメルケル首相が体現しているEUの体制を、3人は壊そうとしている。
◇中国の台頭容認に転向する米国
【2016年11月22日】 トランプの国際政治顧問であるウールジー元CIA長官が「中国がアジアの現秩序に挑戦しない限り、トランプの米国は中国の台頭を容認する」と題する論文を出した。題名が意味するところは「中国は、日韓の対米従属を容認せよ。東南アジア諸国や豪州を無理に中国側に引き入れず、米国と中国の両方と仲良くしようとするのを受け入れよ。中国がそれらのアジアの現在の国際政治秩序を守るなら、トランプの米国は、中国の一党独裁や非民主制を批判しないし、中国が世界の中で台頭していくことを容認する。この交換条件は明文化されず、不文律として具現化される」というものだ。
◆中央銀行の独立を奪う米英
【2016年11月15日】 中央銀行の政府からの独立を不文律として守り、世界的な規範として育ててきたのは米英だ。米国は、世界各国の政府に中央銀行への介入を許さない一方で、米連銀が世界各国の中央銀行を支配する中銀ネットワークを強化し、金融覇権体制の土台としてきた。今回、米英が自国の中銀の独立を剥奪し始めたことは、覇権システムの改定を意味しそうだ。
◆トランプとロシア中国
【2016年11月14日】 トランプが、ロシア敵視を不合理だとしてやめようとしている一方で、中国敵視を合理的と考えて続けるということがあるだろうか。米中関係は、米露関係よりも、はるかに経済や金儲けが絡んでいる。ロシア敵視をやめるのがトランプにとって自然な目標だとしたら、中国敵視をやめるのも自然な目標だ。米国が中国敵視を続けないなら、中国敵視を前提の価値観として維持されている日韓への米軍駐留や、日韓の対米従属に対する支持・支援も、米国がやめていくことの中に入る。就任直後のトランプは日韓の対米従属を支持・賞賛しても、それがずっと続くとは考えにくい。
◇米国民を裏切るが世界を転換するトランプ
【2016年11月11日】 トランプの経済政策は、ブッシュ親子やレーガンの共和党政権がやってきたことのごたまぜの観がある。トランプは選挙戦で貧困層の味方をしたが、就任後の政策が金持ち層の味方になるだろう。彼は、クリントンより規模が大きい詐欺師だ。米国内的にはそういうことだが、世界的には、レーガンが「冷戦を終わらせた人」であるように、トランプは911以来続いている米国の軍産支配を終わらせるか、弱体化させるだろう。
◇トランプ当選の周辺 【2016年11月9日】
◆トランプが勝ち「新ヤルタ体制」に
【2016年11月6日】 私が最近注目したのは「トランプが米大統領になると、ロシアのプーチン、中国の習近平との間で、これからの世界秩序に関するサミットを行い、米露中の影響圏の再配置が行われるだろう」という予測だ。これが正しいとしたら、大統領選でトランプが勝つと、世界は「新ヤルタ体制」と呼ぶべき新たな状況に転換する。米国が「非米側」に転向してしまうことでもある。
◆土壇場のクリントン潰し
【2016年11月3日】 米大統領選に関し、クリントンを勝たせる方向で、多くの情報歪曲が行われてきた。だが結局のところ、土壇場になってクリントンの誇張された優勢がはがれ落ちる劇が演じられ、実勢に近いところへと世論調査が軟着陸している。
◇イスラエルのパレスチナ解体計画
【2016年11月1日】 イスラエルは、ヨルダンに対する影響力を増強したうえで、ヨルダンが、西岸のバレスチナ自治政府を傘下に入れるかたちで「合邦」することを望んでいる。西岸地域は、イスラエルがパレスチナ人の居住地を分割し、幹線道路を分断するように入植地を作りまくった結果、地理的な統合性を失い、国家として機能できなくなっている。入植地によって寸断され、ぼろぼろになった西岸をヨルダンに押し付けるのが合邦の策略だ。
10月
◆不正が濃厚になる米大統領選挙
【2016年10月26日】 米政界にとって大事なことは「(実は談合や不正に満ちた「2党独裁」である)2大政党制のシステムを壊さず維持すること」だ。不正の結果として落選した候補者がとことん選挙不正と戦ってしまうと、2大政党の談合体制に回復不能な亀裂が入りかねない。だから、不正の指摘をしつこく続ける議員や党員は、自分の党の上層部から圧力をかけられ、主張をやめざるを得なくなる。プロのベテラン政治家であるサンダースは、2大政党制の不文律を重んじて、自分が不正に落とされても文句を言わなかった。だがトランプは違う。不文律など破ってやると、最初から宣言している。
◆モスル奪還めぐる米国の意図
【2016年10月23日】 米軍やイラクが開始したモスル奪還戦について「米国は、モスルを奪還してISをイラクからシリアに追い出し、これから露シリア軍との戦いになりそうなシリア東部にISを結集させて負けないように強め、ISがシリア軍に勝ってアサド政権を転覆するところまでやらせたい」という解説が出ている。米政府は以前から何度も「間もなくモスル奪還戦に入る」と宣言し、ISに対し「シリアに逃げ込むなら今のうちだ」という信号を送り続けた。米国は、イラクにいる9千人のIS兵士が無事にシリアに移動できるよう、安全回廊を用意してやった。
◇米選挙不正と米露戦争の可能性
【2016年10月18日】 クリントンが(不正によって)当選すると、シリアで米露が交戦して敵対を急増させうる。米国内で挙国一致を強要する戦時体制が強まり、トランプが火をつけた反軍産運動を潰せる。経済面でも、当局が相場をテコ入れする策をおおっぴらにやれる。米露の直接交戦は核戦争に直結しやすく非常に危険だが、余裕がなくなった軍産は、人類を核戦争の危機に直面させることをいとわず、米露交戦に踏み切るかもしれない。
◆多極派に転換する英国
【2016年10月16日】 世界運営を200年やってきた英国の上層部は、ふつうの諸国の上の方と異なり、自国のことだけでなく、世界の政治経済システム、覇権構造の改善を考えて実践している。EU統合の加速と、もっと広域で見た場合の「多極化」は、短期的に英経済の損失や米英覇権の喪失というマイナスを生むが、長期的には世界を安定させ、(今のような金融バブルでなく実体的な)経済発展につながる。
◆米覇権の行き詰まり
【2016年10月10日】 トランプが当選したら軍産複合体の危機だ。だから軍産(マスコミや議会)は、必死でトランプを蹴落とそうとしている。だが、草の根からの強い人気を維持するトランプを落選させるのは難しい。投票日が近づくにつれ、トランプ潰しの動きが露骨になり、米国の民主主義がおかしなことになっていると、より多くの人が気づく。軍産の延命のあがきが、米国に対する国際信用の基盤になっていた民主主義を破壊しようとしている。
◇フィリピンの対米自立
【2016年10月5日】 ドゥテルテが、国内の既存の支配層が持っていた隠然独裁的な権力を破壊し、彼なりの「真の民主化」を進めていく方法として、対米従属からの離脱や、中露との協調強化がある。対米従属を国策に掲げる限り、ドテルテよりアキノ家など既存の支配層の方が米国とのパイプがはるかに太く、ドテルテはそのパイプに頼らざるを得ないので、権力構造が従来と変わらない。だが逆に、対米自立して中露などに接近すると、その新たな体制の主導役は、新規開拓を手がけたドテルテ自身になり、既存の支配層の権力を枯渇させられる。
◆米司法省が起こしたドイツ銀行の危機
【2016年10月3日】・・・米司法省は、米国内の大手銀行に和解金を払わせた際、静かに事を進め、今回のドイツ銀に対してのような大騒ぎを誘発していない。今回の件は、米国からドイツや欧州勢に対する意地悪に見える。意地悪だとしたら、簡単に交渉が終わって安い和解金で決着せず、最終的な和解金が予測の範囲内だとしても、そこに行きつくまでの交渉が長引く。交渉が難航するほど、金融システム危機への発展やトランプの勝利が現実のものになっていく。
9月
◆シリアでロシアが猛攻撃
【2016年9月30日】 ロシアは、今回の米露主導の停戦が、シリアでの最後の米露協調の試みであると考えていた。それが米政権内の好戦派の妨害で失敗し、ロシアは「米国はISカイダを擁護するばかりで戦う気がない。米国と協調しようとする限り、シリア内戦を終わらせられない」と結論づけた。ロシアは米国に気兼ねするのをやめ、シリア政府、イラン系勢力と協力し、本気のテロリスト退治に乗り出した。それが、9月27日からの東アレッポへの猛攻撃の意味だ。ロシアは、オバマの任期末までにシリア全土から反政府武装勢力を一掃する気だ。
◆優勢になるトランプ
【2016年9月27日】 9月26日のトランプとクリントンの討論会の勝敗は、私が見るところ、おおむね互角だ。クリントンの場合、互角でしかないのはまずい。クリントンの売りは、知識と経験、政策立案の上質さだ。討論でトランプの無策や無知、粗野、偏見性を十分に引き出せればクリントンの勝ちだった。討論が互角なら、これまで何十年も政策立案の業界にいて今の米国の悪い状況を作ったクリントンより、政界の常識を打ち破って出てきたトランプにやらせた方がいいという話になる。互角の討論は、クリントンの現職性によるマイナスを差し引くと、トランプの優勢につながる。
ラジオデイズ・田中宇「ニュースの裏側」・・・中国が「アメリカナイズ」をやめたわけ
◇中国を世界経済の主導役に擁立したIMF
【2016年9月22日】 中国の台頭が目立っているので、世界を多極化することや、中国がアジアの覇権勢力になることが、以前からの中国の国家戦略だったかのような印象を受ける。だが実際はそうでなく、IMFが中国人民元の国際化やSDR入りを希望し、中国が多極化の推進役になることを、IMFが中国に押し売りしたのが実情だ。
◆シリア内戦がようやく終わる?
【2016年9月18日】 中東において、スンニ派の雄であるサウジは常に多数派で、数の力で押せばいいだけだ。対照的に、シーア派のイランと、ユダヤ人のイスラエルは常に少数派だ。表向きの数の力が弱いので、裏で外国に傀儡勢力を作っることで劣勢を補ってきた。アルカイダやISは、自分たちを支援するサウジを「金づる」としてしか見ていない。イランは、傘下の勢力に尊敬されているが、サウジは嫌われている。これがサウジの弱点になっている。
◆得体が知れないトランプ
【2016年9月16日】 トランプが当選後どんな政策を実際に進めるか不透明だ。政策の詳細を明言せず、大きな裁量を残したまま当選を狙っている。民主主義に反しているが、軍産や石油利権など圧力団体の介入を受けずに大統領になれば、ゆがんだ政治から脱却できる。その一方でトランプは、自身の発言と食い違う方針の軍産や石油利権の代理人を顧問に招き入れ、選挙を邪魔されないようにしている。その結果、トランプは得体の知れない候補になっている。
◆アウンサンスーチーと中国
【2016年9月14日】 00年代になり、中国政府がインド洋に出るルートなどミャンマーの地政学的な利点を重視するようになると、ミャンマーの内政的な安定が中国にとっても重要になり、中国側がミャンマーの少数民族を儲けさせ武装させて軍政との内戦を維持・扇動し、ミャンマーを不安定なままにしておく従来の構図が、好ましくないことに変質した。この変質の上に、中国がミャンマー軍政とスーチーの和解を後押しする今の流れが出てきた。
◇定着し始める多極化
【2016年9月10日】 中国もロシアも、自分から米国の覇権を倒して奪取しようと動いているわけでない。米国が中露を敵視し続けつつ、好戦的に世界秩序を壊し続けるので、仕方なく「もうひとつの国際秩序」を構築しているだけだ。米国が中露敵視をやめて、中露の協力も得つつ、米国覇権体制を維持する動きをもっと早くやっていたら、多極化など必要なかった。しかし、もう遅すぎる。
◆ロシアと和解する英国
【2016年9月7日】 英国が敵視をやめると、世界中のロシア敵視が雲散霧消し、露敵視に立脚していたNATOや欧米、英米の同盟関係、米国の欧州ユーラシア支配も、脆弱化・有名無実化してしまう。メイ政権の英政府は、そのあたりの意味を十分に知っている。だからこそ、できるだけ目立たないように対露和解を進めようとしている。
◆さよなら先進国
【2016年9月4日】 QEやマイナス金利が限界に達し、金融危機が再発すると、米日欧とも経済が大幅に悪化し、相対的に新興諸国に追いつかれ、「先進国」はまるごと「先進」でなくなる。「さよなら先進国」である。そのような中で、米国覇権が崩壊し、多極化が進む。中銀群の延命策は、いずれ必ず限界に達し、その際に必ず金融危機が再燃する。だから、この非常に暗い未来像は、非常に高い確率で具現化する。
8月
◇中東和平に着手するロシア
【2016年8月30日】 プーチンが中東和平に乗り出す理由は「イスラエルに恩を売る」ことに加えて「欧米が延々と失敗し続けた中東和平をプーチンが短期間に成功させ、世界を驚嘆させ、ロシアの国際信用を引き上げる」ことがある。ロシアに頼って自国の長期的な安全を確保したいネタニヤフは、ロシア主導の新たな中東和平を成功させてプーチンに花を持たせる何らかの策をすでに考えているのでないか。
◆米大統領選挙の異様さ
【2016年8月28日】 米大統領選挙の異様さトランプの健闘は、彼の政治力が異様に強いから起きているのでない。911以後の米政界が、好戦的な覇権主義をやりすぎて失敗した結果、軍産の支配力が潜在的に弱くなり、それにトランプが便乗して大成功している。もし今回の選挙でクリントンが勝ち、とりあえず軍産の支配が維持されても、軍産の低落傾向は今後も変わらないので、2020年や24年の大統領選挙に、トランプの手法を真似た反軍産の強力な第2第3の候補が出てきて、いずれ軍産系の候補を打ち破る。トランプは今年勝っても負けても、米政界の状況を不可逆的に大きく変える。
◆いずれ利上げを放棄しQEを再開する米連銀
【2016年8月24日】 いずれ中銀群による超緩和策の相場上昇力が減り、投機筋が作る相場の下落力が増し、相場が崩れる。利回り上昇がジャンク債から米国債にまで波及し、グリーンスパンが指摘するデフレから超インフレへの劇的な転換が起こる。そうなる前に、米連銀は利上げをやめてQEを再開して相場をテコ入れする。だが米国のQE再開(QE4)は、危機の再発を1-2年先送りするだけだ。
◇オバマの核先制不使用宣言
【2016年8月22日】 長期的に対米従属からの脱却傾向である英仏と対照的に、日本は、対米従属を続けられなくなることをいやがって、オバマの核先制不使用に反対している。日本政府は、核廃絶を希求しているように見せかけてきたが、実のところ核廃絶など望んでおらず、ブッシュの米国が核の先制使用を振り回し、北朝鮮が脅威を感じて核武装する事態を歓迎していた。オバマの主導で世界が核先制不使用を宣言すると、北朝鮮や中国との緊張が緩和され、米国が「米軍がいなくても日本は自衛できる」と考える流れになり、在日米軍が撤退傾向となり、対米従属を続けられなくなる。だから日本はオバマの核先制不使用の計画に反対している。戦後日本の平和主義は対米従属のためのものであり、偽善だった。
◆すたれゆく露中敵視の固定観念
【2016年8月20日】 ロシアやトルコは敵味方の関係に固執せず、現実主義で動いて中東を安定化している。対照的に米国は、敵味方関係に固執し、露中イランなどに対する固定観念的な敵視から米国自身を解放できず、失敗している。これは米国が下手くそだからでなく、敵が強いままの方が軍産複合体の優勢が保たれるからという、意図的なものだ。しかし失策が続いた結果、米国は覇権を維持する余力を失う一方で、中露イランやトルコなど非米諸国が台頭し、米国の中に、中露などへの硬直した敵視をやめて協調し、世界戦略の負担を減らすべきだという、現実主義の考え方が出てきている。
◇ロシア敵視とドーピング
【2016年8月18日】 マクラーレン報告書は、ロシアをまるごとリオ五輪から締め出す目的が先走った「拙速」の観がある。このため、IOCや各種目の国際連盟を納得させることができず、陸上と重量挙げ以外の分野でロシア選手の出場を許す結果になった。独ARDの番組と昨年11月のWADA報告書は、ロシア政府にとって反論不能な強い論拠を持ったものだったが、今年のNYタイムスの記事とWADAマクラーレン報告書は、米国主導のロシア敵視策が目立ちすぎて稚拙さが露呈し、成功しなかった。
◆ロシア・トルコ・イラン同盟の形成
【2016年8月15日】 プーチンは、クルドをえさにエルドアンを引っ張り込むことで、トルコという、NATOにとって大事な「南の守り」を、欧米側からロシア側に転向させることに成功した。トルコの協力により、シリアの戦後の再建、イラクのテロ排除、非米化、安定化もやりやすくなった。トルコの仲間入りを機に、ロシア、トルコ、イランの3カ国の同盟関係が一気に強化されようとしている。シリア周辺だけでなく、北のコーカサスでも3カ国による安定化策が開始されている。
◆米大統領選と濡れ衣戦争
【2016年8月4日】 軍産複合体がロシアなどに濡れ衣をかけて敵視し、クリントンが軍産の敷いた路線に沿って大統領になり、濡れ衣戦争を続けようとしている。対照的にトランプは、軍産の濡れ衣戦争を中止し、軍産そのものを無力化し、ロシアと協調し、軍産が育てて強化したISISを倒そうとしている。軍産に楯突くトランプは、軍産傘下のマスコミなどに非難酷評されるほど有権者の支持を集める仕組みを体得している。軍産は危機感を強め、ヒステリックになっている。軍産バブルと、中央銀行バブルの同時崩壊が近づいている。
7月
◆米国の緩和圧力を退けた日本財務省
【2016年7月31日】 黒田の日銀や日本財務省は、QEやマイナス金利の悪影響をこれ以上看過すると、金融機関の経営難による金融危機や、日本国債に対する信用失墜(金利高騰)など破滅的な事態になりかねないと判断し、QEを軟着陸的に縮小し、金利をプラス(ほぼゼロ)に戻していく姿勢に転じることにしたようだ。軟着陸がうまくいくかどうか非常に危ういし、転換するにはもう遅すぎるかもしれない。だが、遅すぎても転換を試みた方がましだ。
◇中東を反米親露に引っ張るトルコ
【2016年7月26日】 エルドアンは、欧米の一部になることを目指してきたトルコのこの百年の世俗リベラル主義への信奉を丸ごと破壊し、百年間使われていなかったイスラムに基づく政治社会システムを再導入する試みをやろううとしている。そのための大胆な策として、今回のクーデター騒ぎが使われている。
◆米覇権への見切りとトルコのクーデター
【2016年7月22日】 EUと英国、トルコは、たがいに離別したり喧嘩したりしているくせに、全員が、米国覇権の下にいることをやめて、多極化に対応する動きを開始している。この流れは冷戦終結よりも大きな動きになっていく。冷戦終結は、米国の支配領域が世界の半分(西側)から全部になった動きだが、今回のは、その米国の世界支配が崩れ、BRICSなどいくつもの地域覇権国が立ち並ぶ、人類上初めての世界体制へと転換していくものだ。
◆英離脱で走り出すEU軍事統合
【2016年7月20日】 EUがNATOから自立するのは、表向き、NATOの軍事費の大半を出してきた米国に頼りすぎて申し訳ないのでEUも軍事費を増やすことにしたという話になっているが、同時にEUは「NATOから独立した軍事戦略を持つ」と言い始めている。EUの世界戦略は「米国と健全な関係を保つためにも、EUの軍事力の統合と強化が必要だ」と書いているが、これは要するに、米国(NATO)の傘下にいると、過激な好戦策を突っ走る米国に追随する不健全な状態が続くので、NATOから自立することにした、と読める。
◇逆効果になる南シナ海裁定
【2016年7月17日】 米国と並ぶ大国を自称する中国は、当然ながら裁定を無視する。中国は、米国の真似をしただけだ。裁定を無視されても、米国は中国を武力で倒せない。EUなど他の大国は、米国に求められても中国を非難しない。EUは多極化を認知し「大国(地域覇権国)どうしは喧嘩しない」という不文律に沿って動き始めている。中国が、米国と並ぶ地域覇権国であることが明らかになりつつある。米国は、過激な裁定を海洋法機関に出させることで、中国を、自国と並ぶ地域覇権国に仕立て、多極化、つまり米単独覇権体制の崩壊を世界に知らしめてしまった。気づいていないのは日本だけだ。
「折々の記」
◆腐敗した中央銀行
【2016年7月13日】 自爆的な任務を子分たちに押し付けて親分だけ生き永らえようとする米連銀の不正行為は、米日欧全体の中央銀行の腐敗を加速した。雇用統計やGDPを粉飾し、QEの資金で株価をテコ入れして、経済が好転しているかのように見せることが横行している。腐敗が最もひどいのが米国と日本だ。日銀自身は不健全なQE急拡大に反対したが、対米従属の日本政府が日銀総裁の首をすげ替えてQE拡大に踏み切った。不正はどんどん拡大し、日銀による株価つり上げが常態化した。
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◆外れゆく覇権の「扇子の要」
【2016年7月12日】 EU離脱可決とチルコット報告書は、英国が米国の世界戦略に影響を与えて覇権体制を永続化する従来の世界秩序の終わりを象徴する2つの動きだ。諸大国を米国の下に束ねていたハトメが外れるほど、諸大国は自国の地政学的な利益に沿って動く傾向を強めると同時に、諸大国がBRICSやG20や国連などのもとで安定を確保する多極型世界体制への移行になる。米国自身も米州主義へと動いていく。
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◇加速する中国の優勢
【2016年7月8日】 EU離脱を可決した後の英国は、中国だけでなく、インドや他の旧英連邦諸国、米国などと貿易協定を結ぼうとしている。英上層部が最も期待するのはインドでなく、中国との関係強化だ。その理由は、中国が、きたるべき多極型世界の大国間ネットワークであるBRICSやG20においてリーダー格で、短期の経済利得より長期の地政学的利得を考えて動いているからだ。英国は、近現代の世界システムを創設した国だ。英国が本気で中国の世界戦略の立案運営に協力するなら、中国にとって非常に強い助っ人になる。
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◆欧米からロシアに寝返るトルコ
【2016年7月4日】 エルドアンは、ロシアと仲直りする際の「おみやげ」として、難民危機を極限までひどくして、EUを解体に押しやったのかもしれない。外交専門家のダウトオール首相を辞めさせ、難民問題でのEUとの交渉を潰しつつ、外交政策の「常識外れ」をやるフリーハンドを得たエルドアンは、そのうち折を見てNATOからも離脱するかもしれない。EUを壊してロシアに再接近したやり口から見て、エルドアンは、トルコが抜けるとNATOが潰れるような仕掛けを作ってNATO離脱しかねない。
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