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折々の記 2016 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】田中宇     【 02 】田中宇     【 03 】田中宇
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特別編集 田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

【 06 】
2018/11~2019/4


 2019/04 15 (金) 国際ニュース解説        2018年11月22日から2019年04月15日まで

今月12日下平鼎ご逝去、15日座光寺JAでご葬儀。 生きてきた実績はどう残るのか、それぞれの胸三寸に残るのみ。 平成万葉集の歌にも年齢によるそれぞれの思いが短歌で放送されていた。 90代の人になるとそれなりの独特の内容になっていた。



◆イランの自信増大と変化
 【2019年4月12日】79年のイランのイスラム革命は、ソ連との冷戦体制が終わりそうだったので、代替的な第2冷戦の創設のため、米イスラエルの軍事諜報勢力(軍産)が誘発したものでないか。弱体化が予測された左翼でなくイスラム主義勢力に米国の敵を演じさせる必要があった。スンニ派は当時、米国の傀儡で敵になりたがらないので、イスラムとして異端なイランにやらせるしかなかった。米イスラエル諜報界は革命前のイランにかなり食い込んでおり、誘導策や意図的な政権破壊と転覆をやれた。

◆株はまだ上がる!?
 【2019年4月4日】金融崩壊は簡単に起きない。なぜなら、金融危機が起きたら、米日欧の中央銀行群が通貨を増刷して崩れ出した債券や株式を買い支えるQEを再発動し、2-3週間以内に相場を再上昇させるからだ。QEは麻薬中毒のような出口のない金融政策だが、米日欧の合計で一定額以上のQEが行われている限り、バブルが維持され、粉飾記事を出しまくるマスコミの協力もあり、バブルなど存在しないかのような仮想現実を人々に信じこませられる。これは短期的な延命にすぎず、最終的には大崩壊になる。


大統領の冤罪
 【2019年4月2日】 ニクソンは、ウォーターゲートビルへの不法侵入を指図した刑事犯罪があるので弾劾されたが、トランプは刑事犯罪が何もない。ロシアゲートは破綻した。軍産は、選挙前から今まで3年間トランプを精査したが訴追できる罪を見つけられないでいる。ニクソンは「大統領の犯罪」とされて辞めさせられたが、トランプは「大統領の冤罪」であり軍産に勝利している。トランプは、軍産支配や米国覇権の破壊というニクソンの遺業を継いでいる。

◆ロシアゲートとともに終わる軍産複合体
 【2019年3月29日】「ロシアゲート」は、トランプが犯罪者にされていく疑惑だったが、それが濡れ衣だったとわかった今、次は、米民主党本部やクリントン陣営・オバマ政権・米中枢の諜報界に巣食う軍産複合体・マスコミといった「軍産エスタブ民主党」の勢力が、ロシアゲートをでっち上げてトランプを潰そうとしてきたことが問題になりそうだ。「スパイゲート」と呼ばれているこの疑惑は、これまでの軍産の悪事を暴き、軍産が犯罪者にされていくものだ。ロシアゲートは今後、スパイゲートに変身していく。

失敗するためにやるベネズエラの政権転覆の策謀
 【2019年3月26日】 トランプがベネズエラの政権転覆にこだわるほど、ロシアや中国などが現政権への支持を強め、転覆を不可能にしていく。トランプは、ベネズエラを政権転覆するそぶりを見せ続けることで、ロシアや中国などがベネズエラの現政権をテコ入れせざるを得ないように仕向け、露中などが米国を押しのけてベネズエラの問題を解決していく多極化の流れを意図的に作っている。

◆ドルを犠牲にしつつバブルを延命させる
 【2019年3月24日】 米連銀がQEを再開したら一時的に金融と経済が再浮揚するが、やがて連銀のQEの威力が低下し、日欧ももうQEできず、大不況と金融危機が再来する。すでに自動車の売れ行きが世界的に悪化しており、世界不況再来の暗雲が立ち込めている。QEに向かわないと世界不況が必至だ。外国人投資家がドル建て資産を買わなくなる傾向も拡大している。救済策はQEしかない。QEとQTの間の行ったり来たりはこれで終わりだ。これからは「最期のQE」の時期に入る。

◆世界経済のリセットを準備する
 【2019年3月19日】 米単独覇権の意図的な崩壊と多極化・新世界秩序について、私と似た見立てをしている分析者が米国にいることに気づいた。alt-market.com を主宰するブランドン・スミス(Brandon Smith)だ。

世界からの撤兵に拍車をかけるトランプの米国
 【2019年3月10日】 トランプの今回の「費用プラス50」政策は、タイミング的に見ても、北朝鮮問題の解決や、米欧間の経済安保の亀裂拡大の中で出されている。これは、ドイツや韓国の対米自立心を扇動する、隠れた覇権放棄・多極化・世界からの撤兵策に見える。この策は、見てみぬふりをし続けている日本以外の国々に対して効き目がある。

◆トランプが米中貿易交渉を妥結?。その意味
 【2019年3月7日】中国との貿易品に高率の懲罰関税をかけて戦うぞと息巻いていた米トランプ大統領が、3月末に予定されている米中首脳会談を前に態度を急に緩和している。米中双方がある程度ずつ譲歩し、貿易戦争がとりあえず妥結することが内定しつつあると報じられている。対中貿易で好戦的だったトランプが、急に態度を緩和した理由は何か。一説には「中国との貿易戦争が米株式相場を下落させるので、株価をつり上げて大統領再選につなげたいトランプは、中国敵視をいったんやめて貿易で和解したのだ」といわれている。

◆ロシア、イスラエル、イランによる中東新秩序
 【2019年3月5日】イランやイスラエルは、中東覇権が米国からロシアに移る流れに呼応した動きを続けている。サウジアラビアやトルコなど他の諸国も同様だ。トランプが中東覇権放棄を進めているのに呼応してネタニヤフが米国よりロシアを安保的な提携先として選ぶ傾向を顕在化しているため、軍産(諜報界)がイスラエルの捜査当局を動かしてネタニヤフへの司法圧力を強めている。プーチンは、イスラエルとイランに挟まれて困ったりふりを演じつつ中東覇権を拡大している。

ハノイ米朝会談を故意に破談させたトランプ
 【2019年3月2日】 トランプの最終目的が覇権構造の多極化(米単独覇権体制の解体)であると考えると、トランプが米朝首脳会談を意図的に破談させた理由について深い読みができる。それは、金正恩が米国だけに頼って世界に敵視を解かせようとする今の米国中心の流れを、もっと多極型のものに変えるため、トランプはハノイ会談を破談させ、米国に頼れないので中国や韓国、ロシアなどに頼らざるを得ない状況に金正恩を追い込んだのでないかという考え方だ。今後、中国や韓国やロシアは、何とかして北制裁の一部解除を米国に了承させようとする。中国や韓国などががんばるほど、北問題の解決は米国主導から、多極型、とくに中国主導の体制に転換していく。

◆同盟諸国を難渋させるトランプの中東覇権放棄
 【2019年2月22日】トランプは、シリアやアフガニスタンからの米軍撤退を進める一方で、イランやアサドを敵視する策を続け、イスラエルやサウジアラビア、EUなどの同盟諸国に対し、イランなどを敵視しろとけしかけている。同盟諸国は、米国に頼れない状態でイランなどを敵視することを強要されている。米国が撤兵するなら危険なイラン敵視などやりたくないイスラエルやサウジは、目立たないように露中との関係を強化している。同盟諸国を難渋させるトランプの戦略は、米国の覇権縮小と多極化を加速している。

◆安倍がトランプをノーベル平和賞に推挙した理由
 【2019年2月20日】日本の軍産マスコミ官僚側は、安倍を揶揄中傷しつつも、安倍の独裁を認めざるを得ない。その理由は、安倍がトランプにすり寄り続けることで、日本は経済・貿易の面でトランプからあまり攻撃されず、今のところトランプは日本でなく中国やEUやカナダなどに貿易戦争を仕掛けている。日本の政権が安倍でなくもっと軍産官僚傀儡系だったら、日本はもっと早くトランプの貿易戦争の本格的な標的にされていた。

トランプの米露軍縮INF破棄の作用
 【2019年2月14日】 トランプのINF破棄は、EUを対米自立させたり、NATOを過激に運営して自滅させたりするための、覇権放棄・多極化のための策だ。EUが、軍事統合してNATOから自立しつつある今のタイミングで、トランプはINFを潰して米露の軍事対立や軍拡競争を再燃させ、その一方でNATO諸国に対し、軍事費を増やして米国と一緒にロシアと戦えとけしかけている。INFは、米国がロシア敵視の中距離ミサイルを欧州に配備することを禁じ、欧州が米露戦争の戦場になることを避けるための仕掛けだった。そのINFがなくなって米露対立が再燃する一方、欧州自身は対米自立に動いている。この状況下で米国が対露敵視を強めると、EUはそれに従わず、米国を見限って対米自立し、ロシアとの敵対を避けるようになる。

◆米朝と米中の首脳会談の連動
 【2019年2月8日】 朝鮮戦争を終結させるには、米国、北朝鮮、中国の3首脳が集まっている場所で、トランプが「戦争終結を望む」と提案するだけで良い。北と中国は、前からそれに賛成しているので、じゃあ今すぐここで終結を宣言しよう、という話にできる。朝鮮戦争は1953年に米国、北朝鮮、中国の3か国で休戦を調印している。休戦を終戦に切り替える署名を行えば朝鮮戦争は終わる。習近平が2月27-28日に本当にダナンまで来るのなら、そこで朝鮮戦争が終結する可能性が高い。米国との貿易戦争を終わらせるためだけなら、習近平はわざわざダナンに来ない。

◆次期大統領選:勝算増すトランプ、泡沫化する軍産エスタブ
 【2019年2月6日】 資本主義の権化だった米国で「共産革命」が起きている。大企業と資本家が政治家に敵視されている。民主党は「共産化」している。2大政党から追い出さる軍産エスタブは「野党」以下の「泡沫候補」にされていく。それを2大政党の外側で吸収しようとするのがスタバのシュルツの戦略だ。シュルツは20年の大統領選で負けるだろうが、同時に2大政党制の外側にシュルツの「軍産エスタブ中道党」が作られる。米政界は、草の根右派・孤立主義的な「トランプ共和党」と、左翼リベラル・反戦的な「左翼民主党」の2大政党と、シュルツの「軍産エスタブ中道党」が競い合う多党制に転換していく。

国民国家制の超越としての一帯一路やEU
 【2019年2月4日】 中国の「一帯一路」は前近代的で曖昧な「ネオ冊封体制」であり、現時点ですぐれた国際秩序でない。しかし現実の流れとして、このまま米国覇権が衰退していくと、中国から西アジア、南アジアにかけての国際秩序は一帯一路が支配的になる。それに、今のウェストファリアの国民国家体制には、英国とその後継覇権である米国・軍産が世界の多くの国々の政権中枢に入り込んで隠然と介入できる間接支配の機能が付帯されている。国民国家が世界の統一的な体制である限り、人類はテロ戦争や冷戦型の対立や戦争・軍拡から逃れられない。EUの国家統合は法治的で洗練されており、前近代な中国の一帯一路と対照的だ。しかし両者は、ウェストファリアの縛りから人類を解放する多極型の新世界秩序の試みであるという点で同類だ。

◆ドルを犠牲にしつつ株価を上げる
 【2019年2月1日】 今後、米連銀がQTをやめてQEに戻るほど株価は上がるが、同時にドルと米国の経済覇権の低下に拍車がかかり、金相場も上昇する。株価上昇と、米国覇権=ドルの維持の、どちらか一方しか選べない状況が、今年になって見えてきた新体制だ。エリート層など米国だけの長期の国益を考える人々は、株価よりドル覇権の維持を優先したい。半面、世界を多極化したいトランプは、米国のバブルを早めに潰すため株価を優先したい。投資家の圧倒的多数である、短期の株価で儲けたい強欲な人々も、株価優先だ。全体的に、ドルを犠牲にして株価上昇を維持する傾向が強くなっている。

◆英国のEU離脱という国家自滅
 【2019年1月28日】 戦後の冷戦は、英国の諜報界が米国に入り込んで米国の世界戦略をねじ曲げ続けた。2001年からのテロ戦争は、イスラエルの諜報界が米国に入り込んで米国の世界戦略をねじ曲げ、これに対抗して米国の諜報界の一部(ネオコンやトランプ)が親イスラエルのふりをしてテロ戦争を失敗させ、主導権を米国側に奪還した。これらと同様、英国がEU離脱で自滅しているのは、米国の諜報界が英国に入り込んで英国の戦略をねじ曲げている策略だと理解できる。英国を自滅させ、トランプによる世界多極化の動きを英国が邪魔できないようにしていると考えられる。

2度目の米朝首脳会談の意味
 【2019年1月16日】 トランプは、お得意の「軍産の覇権維持目的の敵視戦略を過激にやって軍産側をビビらせ、軍産側との暗闘で自らを優位にする」策略で中国の対米輸出品に懲罰関税をかける姿勢をとり、軍産の恐怖心を煽っている。トランプ政権は昨年末から、ベトナムで北朝鮮と首脳会談の準備交渉を行うと同時に、北京などで中国と貿易交渉を行なっている。米中貿易交渉の中で、中国側が譲歩する姿勢を見せたと報じられている。中国は、貿易交渉での譲歩の見返りに、米国が北の核廃棄より先に経済制裁を緩和することを認めるよう提案したのでないか、というのが私の推測だ。

◆米国「国境の壁」対立の意味
 【2019年1月15日】 トランプが米墨国境の壁建設にこだわるのは、3つの戦略の組み合わせだ。(1)米経済覇権体制の破壊。NAFTA潰しやTPP離脱、米中貿易戦争ともつながる経済的孤立化戦略。(2)民主党と共和党主流派(軍産エスタブ)が政府閉鎖の長期化を嫌って壁建設問題でトランプに譲歩した場合、トランプの政治力が強まり、次期大統領選挙でトランプの勝算が高まる。(3)民主党が譲歩せず政府閉鎖が長期化すると、米政界の混乱がひどくなり、米国(軍産)は覇権運営どころでなくなり、同盟諸国の米国離れや中露イランの台頭など多極化に拍車がかかる。

◆トランプのシリア撤兵戦略の裏側
 【2019年1月10日】 トランプはいったんシリアとアフガンからの撤兵を宣言した後、軍産やイスラエルからいろいろ言われて撤兵策を後退させ、「撤兵する」「やっぱりしない」「条件がある」「ゆっくりやることにした」「いや、やっぱり撤退したいんだ」「いやいや、やっぱり無理かも」と、姿勢を意図的に揺るがせている。こうすることで、軍産イスラエルとの決定的な対立を回避しつつ、敵方であるロシアやイランが「今が好機だから米国を追い出し、われわれの中東覇権を拡大しよう」と思うように仕向け、露イランをがんばらせて、中東の米覇権放棄と覇権多極化を進められる。

トランプと米民主党
 【2019年1月8日】 軍産はトランプとの政争に負けて弱体化した。そのため、民主党の政治家は軍産の傀儡になりたがらなくなった。こうした状況を作ったのは、軍産に果たし合いを挑んで勝っているトランプだ。民主党議員たちは、大嫌いなトランプのおかげで軍産の傀儡状態から解放された。民主党は、次期大統領選を戦う前からトランプの影響を受けている。

◆トランプは金融バブルを維持できるか
 【2019年1月2日】 トランプは軍事外交分野で覇権運営勢力である軍産複合体から実権を奪ってシリア撤兵など自分流を強行しているが、これと同じことが金融分野でも起きている可能性がある。トランプが連銀筋から金融政策の実権を奪い、トランプ流のバブル再膨張を進めるなら、今後再び株や債券が上昇しようとする動きになる。トランプは20年の次期大統領選で再選を果たすまで、株や債券の金融バブルを持たせたいと考えている。

世界から米軍を撤退するトランプ
 【2018年12月28日】 トランプは、シリアでの米イラン戦争を標榜して軍産をビビらせて弱体化し、中間選挙で共和党を握って政治力を強めた後、シリアとアフガンからの撤退、マティスの首切りをやって、軍産の戦略を破壊した。この手法は北朝鮮問題の時と同じだ。マティスは政権中枢に残った最後の軍産だった。「戦争をやめたくない」軍産は政権から一掃され、残っているのは「戦争を拡大するふりをしてやめていく」要員だ。トランプは来年、さらに反軍産的な独自の軍事外交戦略を打ち出すと予想される。

◆トランプのシリア撤退
 【2018年12月25日】 米軍がシリアを撤退すると、イスラエルがますます不利になる。「イスラエル第一主義」だったトランプがイスラエルを見捨てた、と米マスコミが批判しているが、実は違う。ネタニヤフは「米軍がいなくてもシリアにいるイラン系勢力を攻撃し続ける」と宣言しているが、この宣言は軍産への目くらましだ。実のところ、イスラエルはすでにロシアの仲裁により、シリアにおいてイラン・アサド・ヒズボラと隠然と和解して「冷たい和平」の状態に入っている。イスラエルはもうイラン・アサド・ヒズボラと戦わない。

◆債券金融崩壊の兆候
 【2018年12月23日】 12月は、リーマン危機以来初めて、米国で、ジャンク債の発売が1件もない1か月になることが確定的になった。米銀行界は今月、何件かのジャンク債の発行を予定していたが、債券相場が下落傾向で、今後のさらなる下落を見越した投資家たちは債券を買いたがらず、売れ行き不振のため、銀行界は発行を新年の来月に延期することにした。ジャンク債の売れ行き不振が続くと、不振が上位の債券に波及し、本格的な危機の再来になる。

自衛隊「いずも」空母化の意味
 【2018年12月20日】 「軍産=対米従属派」である官僚機構・防衛省は空母化に消極的だった半面、多極化対応=対米自立が必要と考える安倍政権の官邸・自民党は空母化に積極的だった。空母化は「トランプの覇権放棄を受けた、日本側のやむを得ない対米自立の一環」である。日本も中国もインドも、米国の覇権が衰退するので空母を持つことになった。米覇権衰退後の多極型世界では、大国どうしのちからが拮抗するので戦争になりにくい。「いずも」空母化は、意外にも、多極型になる今後の東アジアの国際社会を均衡させ安定させる策だ。

◆トランプの人事戦略
 【2018年12月16日】 米国の新任国連大使になるナウアートは未経験なので、露中敵視の姿勢をとりつつ外交的に頓珍漢な言動をたくさんやり、米国への国際信用を落とすだろうが、それはまさにトランプが欲していることだ。トランプは、覇権多極化の一環として国連を「非米化」しようとしている。ナウアートの国連大使就任は、軍産的に最悪の人事だが、トランプ的にはかなり良い人事だ。トランプが国連を侮辱しているのは事実だが、それは意図的な戦略だ。この人事は「失敗」でなく「成功」だ。

◆トランプ流の新世界秩序を見せたG20サミット
 【2018年12月7日】 南米ブエノスアイレスでのG20サミットは、外交のドタバタがとてもトランプ風だった。特質の一つは、中国やロシアといった他の「極」の諸大国との敵対を強めることで、それらの国々の立場を強化してやったことだ。とくに、貿易戦争の相手である中国との間がそうだ。トランプは、一連の米中貿易戦争のドタバタを通じて、中国が米国と世界の経済にとって最も重要な国であることを浮き彫りにしている。

◆米中どちらかを選ばされるアジア諸国
 【2018年11月29日】 11月17日のAPECサミットを機に、日豪や東南アジアなどのアジア諸国は、従来の「米中アジアが一体として仲良くする体制」を破壊されて「米国と中国のどちらか一方を選ばされる体制」に追いやられた。シンガポールの李顯龍首相が、そう発言している。この追いやり・体制転換は、米国が引き起こしたものだ。中国は「米国とも日豪亜とも仲良くしたい」と言っている。日豪亜と中国は、喧嘩腰の米国から距離を置かざるを得ない。

ゴーン逮捕で仏マクロンの謀略を潰した日本政府
 【2018年11月22日】 日産ルノーのカルロス・ゴーンの逮捕は、フランスのマクロン大統領の謀略を阻止するための、経産省が主導する日本政府による対抗策だ。仏政府はルノーの最大株主であり、マクロンは経済大臣だった時からルノーに経営介入して政治家としての人気取りに使ってきた。大統領になったマクロンは、提携関係にあった3社をルノー主導で合併し、ドイツ勢に対抗できる「世界最大の自動車会社」に仕立てるとともに、日本側2社のおいしいところをフランス側に吸い上げ、フランスの雇用拡大や経済成長につなげようとした。日本は、自国の国益を損ねるマクロンの謀略を阻止した。