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折々の記 2016 ⑧
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】田中宇     【 02 】田中宇     【 03 】田中宇
【 04 】田中宇     【 05 】田中宇     【 06 】田中宇
【 07 】田中宇     【 08 】田中宇     【 09 】田中宇

特別編集 田中宇の国際ニュース解説
世界はどう動いているか

【 07 】
2019/4~2019/12

 2020/05/04 (月) 国際ニュース解説        2019年4月21日から2019年12月31日まで

◆トランプ式の核廃絶
 【2019年12月31日】トランプは、核廃絶や軍縮の枠組みを米国中心でなく、露中やEUが米国抜きで軍縮を進める多極型の新体制に移行させようとしている。米国(米英・軍産)は、永久に解決しない対立を各地に残置して世界を分割支配してきたが、露中など今後の多極体制を動かす諸大国は、米国に比べて国力が小さいのでストレートに問題を本当に解決し、世界を安定化して安上がりに運営したい。トランプは露中などに対米自立的な軍縮体制を作らせようとしているが、それは対米自立的な軍縮体制の方が、既存の米国覇権型の軍縮体制よりも、長期的にみて実現の可能性が高いからだ。

米英諜報界内部の暗闘としてのトランプのスキャンダル
 【2019年12月27日】3つのスキャンダルを見ると、親トランプ系が反トランプ系をだまして稚拙な証拠を使ってトランプを攻撃する戦略をとらせ、反トランプ系による稚拙な攻撃に対してトランプ側が反撃して反トランプ系を潰すやり方で、反トランプ系の自滅を招いたという仮説が成り立つ。マスコミや学術界など知的な権威筋が反トランプ系(国際主義リベラル派)に牛耳られており、彼らはトランプを悪く言う方向の歪曲報道・善悪不正操作しかやりたがらないので、稚拙な根拠でトランプを悪く言うように仕向け、それにトランプ側が反撃して反トランプ系を潰す形にした方がやりやすい。

◆眠れるトルコ帝国を起こす
 【2019年12月24日】トランプの覇権解体策に際し、エルドアンのトルコは、中東の覇権の一部を担わせるのに格好な国際野心を持っている。トランプや、ネオコンに引きずられた米議会がトルコを怒らせるほど、エルドアンは「トルコ帝国の復活」をやりやすくなり、この百年あまり眠らされていたトルコ帝国が起こされて中東覇権の再獲得を目指し、世界の覇権構造の多極化に貢献する。トランプが嫌うNATOを、エルドアンとプーチンが組んで破壊してくれる。

【12月22日・短信】米国のポンペオ国務長官は来年辞任して秋の上院議員選に出る。すでに地元カンサスで選挙活動らしきものを開始。上院議員を1期やったあと、24年大統領選に出てトランプの後継者を狙うつもりか。12月20日に国務副長官に昇格した対北朝鮮交渉担当のビーガンが次の国務長官になる。ビーガンが昇格してもトランプ政権が北との交渉を大幅に進めるとは考えにくい。(関連記事)

◆WTOを非米化するトランプ
 【2019年12月19日】トランプがWTOを機能不全に陥れた後、EUと中国が緊急の話し合いを持ち、WTOに、機能不全にされた上級委員会に代わる紛争解決の新機構を作る方向で話がまとまった。先進諸国の代表であるEUと、新興諸国の代表である中国が、米国抜きでWTOの紛争解決機構を立て直そうとしている。トランプのWTO潰しは、よく報じられているような「自由貿易体制の破滅」でなく「自由貿易体制の非米化・多極化」を引き起こしている。

イスラエルとトランプの暗闘
 【2019年12月12日】トランプは、イスラエルをできるだけ長く自分の側に巻き込み続けようとする。イスラエルを野放しにするとロシアや中国にすり寄り、イスラエルがこれまでの米国覇権を牛耳ってきたように多極型の世界も牛耳り、恒久的な混乱や対立構造を植えこんでしまうからだ。安定した多極型世界を実現したいトランプと背後の資本家層は、イスラエルをできるだけ長くトランプの側に巻き込み、ロシアや中国とのつき合いを最小限にさせ、多極化に適応できない状態にしたい。資本家層は、英国をEU離脱騒動で頓珍漢な自滅状態にさせているが、これも形成されつつあるまだ脆弱な多極型世界を英国が破壊・支配せぬようにする防御策だろう。

◆2020年の世界転換の数々
 【2019年12月9日】最近、世界の政治経済のいくつかの分野で状況の転換が起こりそうになっている。来年にかけて、それらの転換が確定的になっていきそうだ。ちょうど年末なので、これを来年の予測として書くことにした。私から見ると、全体として「裏」でなく「裏の裏」が事態の本質になっている。

◆キッシンジャーが米中均衡を宣言
 【2019年12月4日】米元国務長官のヘンリー・キッシンジャーが「中国の台頭により、米国はもう中国を倒せない状態になっている。米国は世界的な単独覇権を維持できなくなった。米国と中国は競争しつつ共存していかざるを得ない。米中の完全な和解はないだろうが、決定的な対立もできない。米国が覇権維持のため中国を倒そうとすると、米中間が第二次大戦よりもひどい戦争になる。米国は単独覇権体制をあきらめねばならない。これは恒久的な状態だ」という趣旨を発言した。

米民主党の自滅でトランプ再選へ
 【2019年12月1日】民主党の軍産エスタブや金融界の中には「民主党の左派を大統領にするぐらいなら、トランプが大統領になったほうがマシだ」と考えている勢力が多く、彼らがマスコミの中傷記事やスキャンダル発掘によって民主党の左派の統一候補を弱体化させ、トランプを勝たせてしまう展開がありうる。ブルームバーグは、バイデンを潰すためにトランプ側が放った刺客かもしれない。トランプ自身、以前は民主党支持だったのが右転向して共和党を乗っ取ってしまった。

◆イラクやレバノンの反政府運動がスンニとシーアの対立を解消する
 【2019年11月26日】イラクとレバノンの反政府運動の隠れた本質についての私の仮説は「トランプの傘下に入った米諜報界が運動を扇動している運動なので、多極化と米覇権低下につながる動きでないか」というものだ。今回、エジプトのムーサ元外相(元アラブ連盟事務局長)が「イラクでもレバノンでも、反政府運動を通じてスンニ派とシーア派の対立が消えていく。今から2-5年後には、中東やアラブ諸国がこれまでと全く違った地域になっているだろう」と述べている。スンニとシーアの対立は米国の中東覇権維持のために維持されている構造で、対立が消えると中東が対米自立して多極化が進む。

◆中国が米国に代わって日韓北を仲裁する
 【2019年11月22日】韓国は最近、3つの危機を抱えている。米軍駐留費の分担金の急増をめぐる米国との対立、諜報共有協定などをめぐる日本との対立、米朝交渉の停滞による北朝鮮の好戦策復活の可能性だ。これらはいずれも、米国に代わって中国が問題解決しそうな流れになっている。中国は、韓国と安保協定を拡大し、日中韓サミットを開いて日韓を仲裁し、米朝に代わって中朝の交渉が北核問題を解決する可能性も増している。中国は米国に代わり、日韓や北朝鮮を動かす東アジアの地域覇権国になっていく。

地球温暖化問題の裏の裏の裏
 【2019年11月18日】温暖化対策の中心となる事業として国連で議論されている「緑の気候基金」は「2酸化炭素の排出を減らす」ためと喧伝されているが、実は排出を減らすものになっていない。国連で議論されている地球温暖化対策を主導するのは「欧米」であるように見えるが、実は「中国」だ。中国は2009年のCOP15でオバマ大統領から主導役を委譲されて以来、温暖化問題を主導している。

歪曲が軽信され続ける地球温暖化人為説
 【2019年11月15日】専門家の中には、ひどい状況を変えるべきだと思っている人々もいる。世界の学者500人が連名で「気候変動で危機が起きることはない」と題する書簡を国連に出した。書簡の概要は以下のとおりだ。IPCCの気候変動のモデルは欠陥の多い不適切なものだ。実際の温暖化の傾向はモデルの予測の半分以下で、こんな未熟なモデルを使って政策を立てるべきでない。何兆ドルもの温暖化対策は浪費で、世界経済を破壊する危険な行為だ。気候変動が人類の危機につながるという人為説の主張は間違っており、科学でなく政治に基づいた動きだ。もっと科学的にやるべきだ。2酸化炭素は人類に有益な存在だ。莫大な金をかけて2酸化炭素を減らすのはやめるべきだ。温暖化がハリケーンや洪水や干魃を増やしていると考えられる統計的な根拠もない。

◆NATOの脳死
 【2019年11月14日】トランプは、EUに対米自立の好機を与えるために覇権放棄や同盟破壊をやっている。NATOの脳死を指摘した今回のマクロンの発言は、EU上層部が対米自立したがっていることを象徴している。だが、EU内には冷戦時代から受け継がれた軍産傀儡勢力がまだ多く残っており、彼らが邪魔をしているのでEUは対米自立できない。マクロンの発言は、現状に対する苛立ちの表明でしかない。とはいえ、日本にはそれすらない。対米自立したくない日本の官僚機構は、自分たちが世界の状況に無知になるよう仕向け、日本のマスコミは国内のくだらない話ばかり流す。日本人は世界の動きからわざと遅れている。これは上からの意図的な策略なので今後も是正されない。日本も国をあげて脳死状態だ。

◆インチキが席巻する金融システム
 【2019年11月11日】米連銀は、QEがバブル維持のための不健全な策だということを隠すインチキをやってきたが、不健全なのでQEが限界に近づくと、別のバブル維持策をインチキな理由をつけてやらねばならなくなっている。そのため、これまで不況を好況に見せかけてきたインチキを転換し、不況であることを認めた上で「不況だから政府の財政出動が必要だ」という新たなインチキを始めようとしている。インチキの百花繚乱になっている。

中国が好む多極・多重型覇権
 【2019年11月7日】米国の覇権の自滅が目立たないように進む中で、米国の覇権衰退によって世界各地に作られた覇権の空白を中国やロシアが埋めていく「多極化」の傾向が進んだ。この多極化は、表向き米国が単独覇権体制を全世界的に維持している中でこっそり進んでいるので、中国やロシアは、表向き米国の従属国である諸国に対し、中国が経済面、ロシアが安保面で支援して中露の覇権下に入れている。しだいに多くの国が、表向き米国の覇権下にとどまりながら、実質的に中露の覇権下にも入るという「多重型」「両属」の体制が作られてきた。

◆トランプのシリア撤兵の「戦略的右往左往」
 【2019年11月4日】 シリア撤兵をめぐるトランプの右往左往は、中東の政府と人々の反米感情をあおり、国際社会に「米国は覇権国として失格だ」と思わせて、米国覇権の失墜と多極化を扇動するための意図的な策略だ。中東の人々は、何十年も続いた米英の石油利権目的の汚い謀略に怒っている。シリアから撤兵すると見せて油田を略奪したトランプの策は、絵に描いたような石油目的の汚い謀略だ。アルタンフの基地温存も、シリアを撤退した米軍がイラクにとどまったことも、米国の汚い中東支配の典型だ。これらをわざとやることで、トランプは米覇権への信用や好感を意図的に引き下げている。

人類の暗い未来への諸対策
 【2019年10月28日】資産課税は米国的でない。UBI(ベーシックインカム)の所得保障も社会主義的な考え方だ。MMTも「大きな政府」の推進なので米国(共和党)的でない。それなのに米国で資産課税やUBIやMMTが堂々と語られているのは、それらを検討対象に入れないと、米国が戦後、世界的に作った大量生産・大量消費の経済システムを維持できないからだ。UBIやMMTは、きたるべき巨大なバブル崩壊後の「人類の暗い未来」に対する対策として考えられている。

◆隠れ金融危機の悪化
 【2019年10月25日】 米国で9月後半から大手銀行が米国債の担保と引き替えでも中小銀行に融資したくない「レポ市場の凍結」がおきている。いったん連銀が介入するとみんな連銀から借りたがり、凍結に拍車がかかった。米銀行界は相互信用が失われたままの大変な危機だ。金利低下で銀行の利益は減る一方で、信用失墜は今後もずっと続く。最終的には世界の銀行の半分がつぶれる。マスコミなど権威筋は危機をほとんど報じず、事態を過小評価した後、黙っている。「隠れ金融危機」がどんどん悪化している。

プーチンが中東を平和にする
 【2019年10月23日】トランプ米大統領による米軍のシリア撤退は、米国からロシアへの中東覇権の大規模な移譲を引き起こしている。私が驚いているのは、覇権移譲の速度が意外と速くしかも広範囲であること、英米のマスコミでこの覇権移譲を指摘するところが意外と多いことだ。覇権移譲が意外と速いのは、米議会でのトランプ弾劾の動きと関連しているかもしれない。

◆米軍シリア撤退は米露トルコの国際政治プロレス
 【2019年10月17日】 クルドは米軍産の傀儡でなくロシアが守ってやれる非米的な勢力になり、米軍に代わって露イランがクルドを守るようになる。米国はトランプの希望どおり、シリアの覇権をロシア側に委譲する。トルコはいずれロシアの仲裁でシリア政府と和解する。トルコ軍はクルド地域以外の北シリアにしばらく進駐し、ISIS残党の面倒を見る。このような覇権移転をやるために、トルコは米露と談合しつつ北シリアに侵攻した。米軍のシリア撤退の騒動は、米露トルコが「戦争」を演じつつ、実は米覇権放棄や多極化のシナリオに沿って動いている「国際政治プロレス」だ。

◆米連銀のQE再開
 【2019年10月14日】 9月中旬に米連銀(FRB)がレポ市場に介入した直後から、民間銀行がどんどん群がってきて連銀依存が急拡大し、民間銀行どうしで融資したがらなくなる事態が起きた。連銀のレポ市場介入は逆効果だった。銀行界の連銀依存が急拡大したので、連銀は介入を拡大せざるを得なくなり、今回の事実上のQE再開に踏み切らざるを得なくなった。今後、依存症からの離脱に失敗した人が依存症に逆戻りした時の事態の破綻のひどさと同じことが、米金融界に起きる。今回始まったQE4はおそらく、トランプが再選される来秋の大統領選挙を越えて続く。QEの資金で来年まで株や債券のバブルが維持されるが、中長期的には暴落に至る。

自分の弾劾騒動を起こして軍産を潰すトランプ
 【2019年10月10日】ウクライナ疑惑の騒動は、諜報界のトランプ配下のエージェントたちが民主党をたぶらかして濡れ衣だとすぐにばれる自滅的な弾劾騒動をやらせ、トランプ自身でなく、本当にウクライナ側から不正な政治献金をもらっていた民主党のバイデン元副大統領・次期大統領候補の汚職捜査へと発展させようとしている。

◆米国の多極側に引っ張り上げられた中共の70年
 【2019年10月4日】 近現代のすべての期間にわたって、英米単独覇権体制の永続を望む軍産(英国)は、超大国になる潜在力を持つ中国の恒久的な分裂・不安定化・封じ込めを望んできた。対照的に多極側は、門戸開放宣言や孫文支援以来、資本の論理に基づき、長期戦略として世界経済の成長維持のため、中国だけでなく、ユーラシア内部など軍産に抑止されてきた地域の安定と発展を望んできた。近現代の戦争や国際対立の多くが、軍産と多極側の暗闘の要素を持っている。

◆トランプを強化する弾劾騒ぎ
 【2019年9月29日】  今回の弾劾騒ぎにおいて、トランプの違法疑惑(ウクライナ政府への不当な圧力)よりも、バイデンの汚職疑惑の方が確定的かつ悪質だ。バイデンは、オバマ政権の副大統領だった2014年に、米政府からウクライナ政府への経済援助への見返りとして息子のハンター・バイデン(弁護士)をウクライナのガス会社の役員に就任させて報酬を出させた。トランプの疑惑は弾劾に相当するほど悪質でない。弾劾に至らない場合、民主党への信頼が崩れ、来年のトランプ再選が決定的になる。すでに民主党諸候補の中でバイデンの人気が下落している。トランプが強化されている弾劾騒動は、民主党や軍産を騙すため、米諜報界の隠れ親トランプ派(隠れ多極派)が画策したと考えられる。

トランプと露中がこっそり連携して印パの和解を仲裁
 【2019年9月25日】トランプの米国と、プーチンのロシアと習近平の中国が、こっそり協力・連携しつつ、インドとパキスタンの和解を仲裁し続けている。この動きは、米国がアフガニスタンでタリバンと停戦・和解して米軍を撤退する計画と連動している。トランプは米軍を撤退し、アフガニスタン再建の主導役を中国やロシア、イランの側に委譲する。中露は、インドとパキスタンを和解させ、印パにも米軍撤退後のアフガン再建に協力してもらいたい。米英などの軍産複合体は、覇権を多極化するこの構想に猛反対しており、構想を進捗を妨害するため、インド政界の右派をけしかけて8月にカシミールの自治剥奪に踏み切らせ、印パ対立を激化させた。

◆トランプ中東覇権放棄の大詰め
 【2019年9月24日】 サウジ王政はイエメン戦争で苦戦し、フーシ派に反撃されて製油所を破壊されて窮地に陥り、米国との関係をあきらめてイランと和解せざるを得ない状況になった。中東は、イラン、イラク、シリア、レバノンといった「イラン陣営」と、サウジ、UAE、トルコといった「非米諸国への鞍替え組」、それからエジプトやヨルダン、パレスチナといった「いずれムスリム同胞団の国になる諸国」に分類され、従来型の対米従属の国がなくなっていく。イスラエルも米覇権衰退後に「非米諸国への鞍替え組」に入る。今回のサウジの製油所に対する攻撃は、こうした「トランプ中東覇権放棄の大詰め」の始まりを告げるものだ。

◆金融危機を無視する金融界
 【2019年9月20日】 米国の金融システムが、隠されたかたちで危機の様相を強めている。金融危機がいつ顕在化しても不思議でない。具体的には、今週起きているレポ金利の高騰と、先週起きたクァント崩壊だ。いずれもリーマン危機で起きたことが10年後の今、繰り返されている。米連銀と、金融界やマスコミの大半は、今起きている危険な事態を無視・軽視している。

さよなら香港、その後
 【2019年9月17日】 淘大商場の愛国派の集会は、民主派が少し前に同じ場所で開いた集会への報復だ。3日前、このショッピングモールで民主派の集会があり、そこに通りがかった愛国派の教員が民主派に批判的な態度をとったため殴られた。この光景は動画でネットで拡散された。14日の民主派敵視の集会は、殴った民主派を非難し、殴られた教員、李先生を支持する集会だった。そこに民主派がやってきて批判的な態度をとり、喧嘩が発生し、警官隊が呼ばれた。民主派は、自分たちを弾圧する香港警察を強く嫌い、民主派の集会では警察非難のコールが何度も繰り返される。民主派を嫌う愛国派は、これに対抗して自分たちの集会で「警察ガンバレ」「警察支持」のコールを繰り返す。無数の五星紅旗が振られる中での警察隊のショッピングモールへの入場は、1949年に中国の村に入場する人民解放軍さながらだった。

◆さよなら香港
 【2019年9月11日】 今回の香港の運動は「中共の勝ち・香港と軍産英の負け」で終わる。トランプの台頭によって米英諜報界の「軍産つぶし」が進み、香港だけでなく、カラー革命の構図自体が消失していく傾向にある。「さよなら香港、さよならカラー革命」。それは人類にとって、歓迎すべき「良いこと」である。戦争や、政権転覆による国家破壊が行われなくなる。

◆世界中がゼロ金利に
 【2019年9月8日】 米国がQEを再開し、米日欧の全体をQEとゼロ金利の状態にすることで、資金がドルから逃げずに超緩和策をやれるようにするのが中央銀行群の意図だ。世界中がゼロ金利なら、資金の逃げ場がなくなってドルの基軸性も落ちないとの考えだ。ゼロ金利を世界的に徹底させていく間、パンパンに膨れた金融バブルを維持できる。ゼロ金利なら、国債をいくら発行しても利払いの財政負担がゼロだ。しかし、そんな無限の大金持ち状態を続けていると、どこかの時点で債券の買い手がつかなくなる。投資家は、買った債券を売れないかもしれないことに気づくと買わなくなる。債券金融システムの崩壊が起きる。

日韓対立の本質
 【2019年9月6日】 日韓の諜報協定の破棄について「日韓が安保関係を強化して対米自立する方向性が破棄されて65年体制以前のハブ&スポークに戻り、日本が韓国抜きで米国との関係を深める(より強く対米従属できる)ので日本にとって良いこと」という考え方が、軍産傀儡の日本人の頭にある。この考えは浅はかだ。トランプの目的は米国覇権の解体であり、韓国だけでなく日本も米国の傘下から外されていく。トランプが韓国との安保体制を解体する目的は、韓国を米国の傘下から切り離し、朝鮮半島の全体を中国の傘下に押しやり、在韓米軍を撤退するためだ。

◆イスラエルのはしごを外すトランプ
 【2019年8月31日】 米国がイランと戦争しない姿勢を強めているのに、イスラエルはイランと戦争することを前提に、アラブ諸国のイラン系民兵団の拠点を空爆している。この空爆で米国をイランとの戦争に引っ張り込めるなら、イスラエルの策は合理的だが、実際はむしろ逆に、アラブ諸国が米イスラエルを非難し、イランとの対立を戦争でなく外交で解決したいとアラブや欧州の親米諸国が考える傾向に拍車をかけている。米国と関係なく、イスラエルがイラン側に戦争を仕掛けることなどない。イスラエルが今回イラン系民兵団を空爆したのは、イスラエル自身が考えた戦略でなく、米国側からそそのかされたからだろう。

◆基軸通貨の多極化を提案した英中銀の意図
 【2019年8月25日】 英中銀カーニー総裁の演説が、これまでの指摘を超えている点は「ドル単独基軸をこれからも維持し続けると、ドル(米国)だけでなく全世界に、超低金利による経済の不安定化などの害悪が及ぶ。早くドル覇権をやめて通貨制度を多極化すべき」と主張した点だ。これまでの同種の指摘は「ドルと債券のバブル崩壊がいずれ起きる」といった警告に基づいていたが、カーニーは「歴史的に見て、今のような広範な超低金利は、戦争時か、大きな金融危機の時か、銀行制度が激変する時にしか起こらない」と指摘し、株や債券の暴落、経済指標の大幅な悪化といった金融危機の顕在化が起きないまま、すでに大きな金融危機が実質的に発生していることを認めている。

崩れない911公式論
 【2019年8月23日】 911の公式論は、健全な洞察力や情報分析の努力があれば、不合理なものと見抜ける。911公式論の不合理が見破れれば、QEや地球温暖化人為説、イラン露中への濡れ衣敵視など、他の歪曲的なプロパガンダの不合理も見えてくる。911以後の米国の世界戦略は不合理が多く、米国を知るほど米国に対する疑いやが増す「知米は疑米」の構造になっている。911事件は「疑米」の原点だ。対米従属のみの日本では「疑米」の姿勢が「良くないもの」「反米」「陰謀論」としか見なされず、人々は米国の本質や覇権構造について何も知らない。これは今後日本の「弱さ」となる。

◆イスラエル傀儡をやめる米政界
 【2019年8月21日】 トランプはイスラエルに「民主党に味方するな」と圧力をかけ、イスラエルはそれに従わざるを得なかった。民主党からの批判が強まり、イスラエルはトランプに頼らざるを得ず、トランプの策に乗せられてイスラエルは今回さらに民主党と対立してしまい、トランプにしか頼れない傾向がさらに強まった。米国ではイスラエルが支持する候補が勝つ傾向があり、来年のトランプ再選の可能性が強まっている。しかもトランプは、米政界でのイスラエルの影響力を下げ、覇権放棄と多極化を達成している。巧妙だ。

対米従属と冷戦構造が崩れる日本周辺
 【2019年8月16日】 7月23日に、中国とロシアの爆撃機などの編隊が、日韓の係争地で韓国が実効支配している独島(竹島)の領空を初めて侵犯し、韓国軍機がロシア軍機に近づいて猛烈に警告射撃した事件は、それ自体が、露中の意図など、政治的に興味深い分析のネタの多いものだった。日本海は「中露の海」になった。事件自体よりも驚きだったのが、事件後、米国のエスパー新国防長官が、事件について語るときに竹島を「(日韓の係争地でなく)韓国領」であるとさらりと言ったことだ。そしてさらに驚きなのは、日本政府がこの発言に関して米国に修正を求めず、米国防総省がその後何の言い直しもせず「竹島は韓国領」ということが国際的に確定するのを日本政府が容認していることだ。

◆ブレトンウッズ、一帯一路、金本位制
 【2019年8月14日】7月17日、世界銀行主催の「ブレトンウッズ会議75周年」の会合に参加したフランスのルメール財務相が「ブレトンウッズ体制は、もう限界にきている。体制を改革して国際金融秩序を立て直さないと、この体制は正統性を失って消えていき、代わりに(中国が主導する)一帯一路・新シルクロードが新たな世界体制になってしまう」と表明した。ルメールの発言は、2つの意味で興味深い。一つは、国際金融システムが現時点ですでに08年のリーマン危機並みの危険な状態になっていると認めたこと。もう一つは、ブレトンウッズと一帯一路が同列に並べられている点だ。

◆トランプのドル潰し
 【2019年8月10日】今回の米国の利下げは、米連銀がこれまでのドル基軸の延命のための利上げやQTをしてきた状態から、金融バブル維持のための利下げやQE再開へと転換していく始まりになるという予測が出ている。この転換は、トランプの意向に沿っている。パウエルや連銀の主流派は、ドルの基軸性を維持するために利上げ傾向とQTを維持したい。トランプが連銀が無理やり利下げさせたので、米当局に対する投資家からの不信が拡大し、今年中に株の暴落などバブル崩壊が再来する可能性がある。連銀は追加の利下げやQTの終了に踏み切らざるを得ない。

目くらましとしての日韓対立
 【2019年7月24日】 最近の日韓の対立激化は、米国の覇権が低下し、日本も韓国もこれまで敵だった中国やロシア、北朝鮮に対する敵視をやめていかねばならない中での「目くらまし」として機能している。日本は今後、対米従属できなくなり、これまで日本国民をプロパガンダ漬けにして敵視させてきた中国・ロシア・北朝鮮と和解協調していかねばならない。日本政府は、中露北と和解しようとすると、政府自身がばらまいた中露北敵視のプロパガンダによって批判される。そのため安倍政権は、まず官僚でなく官邸がマスコミを牛耳れるようプロパガンダのシステムを変更した上で、マスコミなどを扇動して目くらましとして韓国への敵視を強める一方で、マスコミに中国批判をやめさせつつ、安倍は習近平の中国にすり寄る戦略を目立たないように続けている。そのうち、ロシアや北朝鮮についても同じことをやるだろう。

◆終わりゆくロシア敵視
 【2019年7月20日】 ウクライナ問題がロシアの優勢で解決し、独仏とロシアが和解を進めていくのをしり目に、トランプはいずれ、ロシアの天然ガスをドイツに運ぶ建設中の海底パイプライン「ノルドストリーム2」がロシアの脅威を拡大しているのにドイツがそれを容認していると言って、ドイツやEUを経済制裁する。ロシアでなく米国から天然ガスを買えと言う。これは従来型(英国式)のロシア敵視策に見えるが、実はそうでなく、ドイツやEUが米国の命令に反逆・無視するように仕向け、欧州を親ロシアと対米自立に追いやる覇権放棄策だ。

◆米国が英国を無力化する必要性
 【2019年7月13日】 米国の覇権放棄と「非英化」は今後、広範囲な影響をおよぼしていく。米英の両方で、諜報界が権力を維持するための談合体制だった2大政党制が崩壊していく。米国は軍事費を減らし、世界から米軍を撤退していき、戦争しない国になる。ロシアや中国が米国の敵でなくなる。在日と在韓の米軍駐留は数年内に終わりが見える。「英国系」の外交官の地位が下がる。ジャーナリズムやマスコミへの信用失墜が加速する。英米金融覇権体制だった債券金融システムがバブル崩壊によって潰れていく。などなど。

ユーラシアの非米化
 【2019年7月8日】 トランプから貿易戦争をふっかけられて非米傾向を強め、ロシアと結束して上海機構を率いる習近平の中国は、長期国際戦略として「一帯一路」を進めている。アフガニスタンは一帯一路の中心的な対象地域だ。中国は必然的に、アフガニスタンの安定と経済発展の主導役になる。トランプが今後進めそうなアフガン撤兵は、まさに習近平を助ける策だ。習近平は、米国が手を引いた後のアフガニスタンやパキスタン、イランなどの安定と成長を引き受けることで、トランプの覇権放棄を助けている。トランプと中露イランは敵対を演じつつ、裏でこっそり連携して多極化を進めている。

◆ドルを破壊するトランプたち
 【2019年7月5日】 覇権放棄屋のトランプは、ドルの覇権を終わらせてSDRなど別の基軸通貨体制に置き換えることを提唱する金本位制論者のシェルトンを米連銀に送り込み、すでに限界に達しているQEを米連銀に再開させたり、ドルの信用失墜につながるゼロ金利策を再来させようとしている。

◆ロシアがイスラエル・イラン・アラブを和解させていく
 【2019年7月1日】 6月24-25日に米露イスラエルの安保担当高官がエルサレムに集まった安保会議は、米国の退潮とロシア・イランの台頭の中で、今後のイスラエルの国家安全をどう守っていくのかを検討する、歴史的・地政学的に重要な会議だった。今後、米国の中東覇権がさらに消失し、ロシアの中東覇権が拡大する。ロシアは、イスラエルとイランの間だけでなく、イスラエルとアラブ諸国の敵対、その中心であるパレスチナ問題、そしてイランとアラブ諸国との敵対関係も、解消する方向で仲裁していきたい。これらの敵対関係はいずれも、中東の覇権国だった米英・軍産複合体が支配維持のために扇動してきた。米国の覇権低下とともに、敵対関係も崩れていく。

板門店で電撃の米朝首脳会談
 【2019年6月29日】 大阪でG20サミットに出ているトランプ米大統領は明日6月30日に韓国に移動し、北朝鮮との境界線である板門店まで行くが「その時に金正恩に挨拶したい、金正恩がこのツイートを見ているなら明日板門店まできてくれ」と先ほど(6月29日朝)ツイートした。トランプは、急に思いついたように演じているが、これは周到に準備された話に違いない。金正恩は明日、板門店に来る。3回目の米朝首脳会談が電撃的に行われる。

◆金相場抑圧の終わり
 【2019年6月27日】 QEが本格化して以来、金相場は1オンス1350ドル以下に抑圧されてきた。だが今回、トランプのしつこい挑発にようやく乗った中国がロシアに接近し、中露が結束して米国とドルの覇権を抑止することにした。それには金相場を抑圧から解いて上昇させ、金地金の力を強める必要がある。中国は6月20日に金相場を上昇させて抑圧から解放した。この仮説に基づくなら、米国側が金相場を1350ドルに向けて再下落させた場合、中国当局が金相場に介入して1400ドル以上に保つと予測される。

中露に米国覇権を引き倒させるトランプ
 【2019年6月24日】 トランプの登場まで中露は、自分たちが米国より弱いうえ、覇権をとるとコストもかかるため、米国の覇権を抑止してユーラシアの覇権を中露がとる「覇権奪取」の姿勢をとらなかった。だがトランプは就任後、覇権の放棄策や自滅策をとり続け、中露がユーラシアにおいて米国の覇権を奪取するハードルが大幅に下がった。米国の無茶苦茶を傍観して迷惑を被るより、米国から覇権を奪ってしまった方が手っ取り早くなった。覇権放棄屋のトランプは、中露のために、米国覇権を引き倒しやすい状況を作ってやった。

◆フェイスブックの通貨リブラ:ドル崩壊への道筋の解禁
 【2019年6月22日】 リブラの創設は、米国上層部の覇権運営勢力が、ドルが基軸通貨としての機能を喪失していくことを認めたことを意味する。リブラの創設は、ドル崩壊への道筋の「解禁」である。同様に、6月上旬に中露が結束してドル基軸制の引き倒し戦略を宣言したことも、米国側がドル崩壊への道筋を解禁したことを反映している。6月19日からの金相場の高騰と、金価格決定権が米国から中国に移る感じも、ドル崩壊への道筋の解禁である。これらの話は多分すべて連動している。

◆S400迎撃ミサイル:米は中露イランと戦争できない
 【2019年6月20日】 ロシア製の高性能な迎撃ミサイルS400が、世界中の非米・反米諸国に配備され始めている。S400は米軍の攻撃をかなりの割合で迎撃できるため、米国が中露イラン側に対して戦争を仕掛けると犠牲が大きすぎる状態になっている。米国は、もう中露イラン側と戦争できない。対米従属=官僚独裁の維持のため、日本のマスコミや専門家はいまだに「米国は天下無敵だ」と喧伝するが、それは間違いである。

安倍イラン訪問を狙って日系タンカーを攻撃した意図
 【2019年6月15日】 トランプは、安倍を誘導してイランに行かせたうえ、安倍のイラン訪問中に起きた日本系タンカーへの攻撃を無根拠にイランのせいにしたことで、日本を従来型の対米従属一本槍から引き剥がし、ロシアやイランや中国がつどう多極型の陣営に押しやったことになる。安倍は、最後までトランプの米国に楯突かないだろうが、それと同時に、ロシアやイランや中国の側とも静かに協調を深めていくことになりそうだ。

◆米国の覇権を抑止し始める中露
 【2019年6月13日】習近平がロシアを訪問してプーチンとの結束を誇示した。これは「トランプが米国の覇権を放棄するなら、中露が米国以外の主要諸国を誘って、経済と安保の両面で、米国抜きの国際協調的な新世界秩序・多極型覇権体制を作ろう」という宣言だ。経済面では今後、米国から経済制裁や懲罰関税を課せられる諸国に対し、中露が「対米従属の経済構造をあきらめてこっち側と協力しませんか」と誘う。安保面では、イラン核問題、パレスチナの中東和平、北朝鮮核問題など紛争解決の主導役を、米国に任せず露中が手がける傾向が増す。

◆米中百年新冷戦の深意
 【2019年6月9日】 トランプは、中国を勝たせ、従来の米覇権体制を自滅的に解体して多極化するために、米中新冷戦をやっている。今年のビルダーバーグ会議で、ポンペオら米国勢は「中国と百年の冷戦をやる」と欧州側に通告したようだが、米中新冷戦は百年も続かない。今から5年後のトランプの2期目の終わりぐらいには、米連銀の再QEが限界に達し、ドルと米国覇権が崩壊し、多極化が進んで米中新冷戦が終わりそうだ。

中東インド洋の覇権を失う米国
 【2019年6月7日】米軍がインド洋の支配権を失いかねない事態が起きている。非米化する国連総会が最近、インド洋最大の米軍基地があるディエゴ・ガルシア島から米軍を追い出そうとする決議(英国にモーリシャスへの周辺諸島の引き渡しを求める要請)を行った。島はインド洋の真ん中にあり、米軍がアジア太平洋地域と中東インド洋地域を行き来する際に必須の場所だ。アフガニスタン侵攻やイラク戦争でも活用されてきたこの島を使えなくなると、米軍はインド洋の最重要拠点を失い、軍事覇権の低下に拍車がかかる。

◆貿易世界大戦
 【2019年6月1日】 トランプは突然、中国だけでなくメキシコに対しても貿易戦争を吹っかけ、貿易戦争の戦域を大きく広げた。米政府は同時に、EUとの貿易交渉も頓挫させている。ドイツや日本、韓国などを含む、対米貿易黒字が大きい諸国に対し、懲罰関税をかけていく。トランプは貿易戦争の相手を全世界に広げていく。「トランプ対世界」の「貿易世界大戦」が起こりつつある。

◆先進諸国は国民の知能を下げている?
 【2019年5月28日】 90年代から、先進諸国の経済構造は、産業主導から消費主導に転換した。世界は米英中心の債券化による金融システムの大膨張・バブル化の30年間を経験し、人々の高いIQが望ましい製造業など産業の利潤による経済発展でなく、世界的な金融バブルの分配を受けた消費の増加が経済成長を支えるようになった。消費者は、高いIQを必要としない。宣伝に乗せられて消費を増やす低能な人が多いほど、消費社会が繁栄する。90年代以降、先進国の支配層にとって、国民のIQは高くない方が良いものになった。だからIQが低下傾向になったのでないか。

スパイゲートで軍産を潰すトランプ
 【2019年5月27日】 ロシアゲートが濡れ衣であることが確定した以上、濡れ衣の元となった諜報をでっち上げた米諜報界は、大統領であるトランプを敵視する不正な態度を持っていたことになる。トランプは、米国の諜報界をまるごと不正な存在とみなし、彼らを無力化する「改革」を断行しようとしている。軍産がトランプを潰そうとした「ロシアゲート」は、トランプ側の巻き返しと今回の反撃開始により、トランプが軍産の反逆・不正行為(自分への濡れ衣攻撃)を取り締まって「改革=無力化」する新段階に入っている。この新段階は「スパイゲート」と呼ばれている。

◆習近平を強める米中新冷戦
 【2019年5月24日】 習近平の独裁を嫌がる中共中央のリベラル派はこれまで、米国と対立すると経済成長が鈍化するので良くないと言い、貿易交渉の不成功をやんわりと習近平のせいにしてきた。だが今や、米国に譲歩すべきだと主張するリベラル派は「利敵行為をするスパイ」と言われかねない。米中が新冷戦になったおかげで、中共内でリベラル派が弱まり、習近平が棚ぼたで毛沢東の衣をかぶって強くなっている。トランプは習近平を強化している。

◆「ドル後」の金本位制を意識し始めた米国と世界
 【2019年5月19日】 トランプが指名した5人の連銀理事候補のうち3人が、金本位制を提唱していた。金本位制が良い、と表明することは、今の金融システムはインチキです(王様は裸です)と表明するのと同じであり、米議会・金融界・マスコミにとって仇敵・反逆者である。トランプ自身、バブルを過激に膨張させて崩壊を前倒しし、バブル崩壊や覇権喪失・多極化を早めたい。トランプはこの魂胆の一環として金本位制論者を連銀理事に就けようとしてきた。金本位制論者は、膨れ上がっている金融バブルのさらなる膨張を扇動し、ドル崩壊後に金本位制を導入せざるを得なくなる事態を作ろうとする。

イラク戦争の濡れ衣劇をイランで再演するトランプ
 【2019年5月16日】 イラク戦争は、やるべきでない濡れ衣の戦争をやってしまった「悲劇」だった。対照的に、今回のイランとの戦争劇は、濡れ衣の戦争をやろうとしてやらないで終わり、軍産を巻き込んだ政治的なドタバタ劇にするトランプ流の隠れ多極主義の「喜劇」として演じられている。「歴史は繰り返す。最初は悲劇として、2回目は喜劇として」とマルクスが書いたそうだが、トランプはまさに「2回目の喜劇」を担当している。トランプは、北朝鮮やベネズエラに対しても同種の策略で、好戦的かつ喜劇的な歴史劇をあちこちで繰り返している。

◆まだ続くシェール石油のねずみ講
 【2019年5月14日】 世間は、楽観的なシェール革命の神話をまだみんな信じている。だが昨年来、世界は実体経済が不況の様相を強め、金融システムもバブル膨張がひどい。今後、世界が不況になるほど石油が下がり、シェール石油は赤字になる。いずれ金融バブル崩壊も起き、シェール産業の調達金利が高騰する。シェール石油のねずみ講は、破綻する運命にある。だが、破綻はまだ先だ。トランプはイランと敵対して石油下落を防ぎ、FRBをQEに引き戻して金利上昇を防ごうとしている。

◆戦争するふりを続けるトランプとイラン
 【2019年5月12日】 トランプは、イランを潰す気がないどころか、イランを中露とくっつけて台頭させる隠れた目的のためにイラン制裁を強めている。イランは、制裁で失う分より多くのものを中国や周辺諸国との関係強化によって得ていく。米国の覇権が低下するほど、米国の脅迫を無視してイランから石油を輸入する国が増え、それがまた米覇権低下と多極化を加速させる。トランプもイランも、この流れを踏まえた上で、好戦的な演技を続けている。

世界経済を米中に2分し中国側を勝たせる
 【2019年5月10日】 トランプは、これまで米国を中心に一体的だった世界経済から中国とその影響圏を除外し、世界経済を米国側(米国と同盟諸国。米欧日など)と、中国側(中国と非米・反米諸国)とに2分して、米国側が中国側を敵視する新冷戦の戦略を採り始めている。これは表向き、米国のライバルで、一党独裁や人権侵害の問題を抱えている中国を経済制裁して封じ込める戦略だ。しかしトランプの裏の意図は、世界経済を2分した後、巨大な金融バブルの崩壊を誘発して米国側を覇権ごと潰す一方、中国側の実体経済をできるだけ無傷で残すことで、米単独覇権体制とそれを動かしてきた軍産複合体を消失させ、世界の経済成長(バブルでない部分)を維持したまま覇権体制を多極化する「隠れ多極主義の戦略」にある。

多極化への寸止め続く北朝鮮問題
 【2019年5月6日】 北朝鮮問題の解決には、国連安保理が、中国とロシアの主導により、直通列車や工業団地再開に必要な対北経済制裁の一部解除を決議するとともに、米国にも国内法で規定している北制裁の一部解除を求めることが必要だ。イランなど他でのトランプの覇権放棄的なやり方からして、米国は、国内法による北制裁を一部解除するのを拒否するだろう。米国は、国連安保理の北制裁一部解除には反対しない。その結果、国連は米国を無視する形で南北間の直通列車や開城工業団地の再開に道を開く。これが今後のありうべきシナリオだ。

多極化の目的は世界の安定化と経済成長
 【2019年4月29日】 今後しばらく、軍産による最後っ屁的な混乱策が続き、きたるべき米金融界のバブル崩壊で世界経済もしばらく混乱するが、長期的に見ると、世界は多極化によって安定に向かう。非米諸国の成長が世界経済を牽引するようになる。

英国をEU離脱で弱めて世界を多極化する
 【2019年4月21日】 最終的には、英国がEUからの離脱を撤回するか、今よりソフトな離脱で終わる可能性が高いが、そこに至るまでにはまだ時間がかかり、その間に米国ではトランプによる覇権放棄が進み、ロシアや中国、イランなどの台頭が進展して覇権の多極化も進む。英国が離脱騒動を卒業できるころ、世界は今よりずっと多極化が進んでいる。