【目次へ】
  続折々の記へ
【心に浮かぶよしなしごと】

【習近平検索 01】     【日中韓一覧 02】     【習近平検索 03】
【夏の中国 04】     【日中折衝開始 05】     【日中折衝開始 06】
【日中折衝開始 07】     【日中折衝開始 08】     【日中折衝開始 09】

~【01】習近平検索(1)へ戻る~
 あ 習近平 朝日新聞検索【1】03/21~前 い 南北首脳会談【2】
 う 関税の争い【2】 え 日本外務大臣の認識【2】
 お 習近平 朝日新聞検索【3】06/04~前 か 風化する天安門事件【3】
 き 米中攻め合い【4】 く 戦略研究所(CIGS-01)【5】
 け 戦略研究所(CIGS-02)【6】 こ 戦略研究所(CIGS-03)【7】
 さ  し 
 し  す 
 せ  そ 
                    キヤノングローバル戦略研究所(CIGS-03)
                      [外交・安全保障] 研究主幹 宮家 邦彦
                          2018年11月 ~ 記事総覧
                      中国の「微笑」は戦術的秋波だ
【7】


 研究主幹 宮家 邦彦
  http://www.canon-igs.org/column/security/20181030_5325.html

[外交・安全保障]
  http://www.canon-igs.org/column/security/2018/
  11.01 中国の「微笑」は戦術的秋波だ
中国の「微笑」は戦術的秋波だ
産経新聞(2018年10月30日)に掲載

研究主幹 宮家 邦彦 外交・安全保障
    http://www.canon-igs.org/column/security/20181101_5331.html

 先週、安倍晋三首相が訪中し日中首脳会談を行った。本邦メディアの論調は大きく割れた。一時は最悪といわれた両国関係につき、朝日新聞社説は「ここまで改善したことを評価したい」、読売も関係改善を「首脳レベルで確認した意義は大きい」と書いた。日経は「正常な軌道に乗りつつある」、毎日も「それなりの成果が認められる」とし、東京ですら、日中の「不毛な歴史を繰り返してはならない」と結んでいる。

 これに対し産経の主張は一味違った。首脳会談の成果だとする関係改善は「日本が目指すべき対中外交とは程遠い。むしろ誤ったメッセージを国際社会に与えた」と手厳しい。会談の成果をどう見るべきか。筆者の見立てはこうだ。

前向きの評価は表面上の成果

 ①中国首脳の会談に失敗はない

 2000年秋から3年半、北京の大使館勤務を経験した。そこで学んだのは「中国との首脳会談は成功しかない」ということだ。理由はいたって単純、中国側は不愉快なことがあると首脳会談そのものを中止するからだ。されば中国が失敗する首脳会談などあり得ず、中国各紙の前向き報道も当たり前なのだ。産経を除く主要各紙の前向きの評価は表面上の成果に目を奪われた、ある意味で当然の結果だと考える。

 ②書かれない事項こそが重要だ

 勿論もちろん、一定の成果があったことは否定しない。安倍首相は「競争から協調へ」と述べ、対中政府開発援助(ODA)は「歴史的使命」を終えたが、日中企業の第三国での経済協力、ハイテク・知的財産に関する対話、ガス田開発協議の早期再開、円元通貨スワップ協定の再開など、経済分野で両国関係を進展させようとしている。それ自体は日本の経済界にとっても結構なことだ。

 問題は共同記者発表などで語られなかった事項である。そもそも今回の訪中で共同声明などの文書は発表されなかった。これは中国側が今回の合意内容に満足していないことを暗示している。勿論、その点は日本側も同様だろう。

問題は蒸し返される可能性も

 今回興味深かったのは、歴史、靖国、尖閣、南シナ海、一帯一路などについて対外的言及が殆ほとんどなかったことだ。外交・安全保障面では、両国の偶発的軍事衝突を避ける海空連絡メカニズムに関する会合や海上捜索・救助協定の署名が実現したものの、これで歴史問題などの懸案が前進したわけでは全くない。中国側がこれらに固執しなければ首脳会談は成功する。逆に言えば、中国側はいつでもこれらを蒸し返す可能性があるということだ。されば、今回の首脳会談が大成功だったとはいえない。

 ③戦略と戦術を区別すべし

 それでも今回の首脳会談は良かったと考える。振り返れば、安倍首相の最初の訪中は06年10月、「戦略的互恵関係」を旗印に小泉純一郎首相時代の日中関係を劇的に改善したのは安倍首相自身だった。ところが12年末に首相に返り咲くと、中国は同首相に尖閣問題で譲歩を迫り、世界各地で安倍孤立化キャンペーンを張った。

 しかし、14年以降主要国では安倍評価が高まり、逆に中国が孤立化していく。17年にトランプ米政権が誕生すると、中国の孤立化はますます深まり、さらに今年に入って米中「大国間の覇権争い」が一層激化している。現在、日中関係は戦略レベルで「安倍首相の粘り勝ち」であり、さすがの中国も対日関係改善に動かざるを得なかったのだろうと推測する。

潜在的脅威は今後も続く

 ここで重要なことは戦略と戦術の区別だ。中国にとって日本は潜在的敵対国であり、尖閣や歴史問題での戦略的対日譲歩はあり得ない。現在の対日秋波は日本からの対中投資を維持しつつ日米同盟関係に楔くさびを打つための戦術でしかない。一方、日本にとっても中国の潜在的脅威は今後も続く戦略問題だ。されば現時点で日本に可能なことは対日政策を戦術的に軟化させた中国から、経済分野で可能な限り譲歩を引き出すことだろう。

 現在日中間で進んでいるのはあくまで戦術的な関係改善にすぎない。こう考えれば、欧米と普遍的価値を共有する日本が、産経の主張が強く反対する「軍事や経済などで強国路線を突き進む中国に手を貸す選択肢」をうやむやにしているとまでは言えない。

 ④中国の面子めんつだけは潰せない

 中国との付き合いで最も難しいことの一つが「面子」の扱いだ。日中で面子の意味は微妙に違うようだが、公の場で中国人を辱めれば、思いもよらない逆上と反発を招くことだけは確かだろう。逆に言えば、公の場で中国人の面子を保つ度量さえあれば、彼らは実質面で驚くほど簡単に譲歩することが少なくない。その意味でも首脳会談は成功だったのではないか。

 勿論、これで中国が歴史、靖国や尖閣問題で実質的に譲歩するとは到底思えない。だが、米中関係が険悪であり続ける限り、中国は対日関係を維持せざるを得ない。しかし日本がこれを公式に言えば中国の面子が潰れる。日中関係は双方の智恵の勝負となるだろう。

設立の趣旨
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)について

    http://www.canon-igs.org/about/

キヤノンは、2007年、創業70周年を迎えました。「ライカに負けない国産の高級カメラを作る」という高い理想に燃えた若者によって創業されて以来、一貫して多角化と国際化を進め、今日の姿に至っております。人間尊重の理念のもとで自発・自治・自覚の三自の精神を心に刻みつけ、常に現在を見据えながら将来を見通してきたことが今日までのキヤノンの発展につながっていると考えます。

21 世紀の日本は、これまで以上にグローバル化の荒波に晒され、経済の不確実性が高まるとともに、統治構造の変革、少子高齢化、社会保障問題など、日本の将来の姿にかかわる重要問題が山積しています。世界に目を向けますと、途上国の発展が進む中で、食糧問題、環境問題など、これまで経験したことのない困難な問題が生じています。

日本と世界の未来を考えるうえで、現在をしっかり見据え、分析し、それに基づいて遠い将来を見通す眼が、今日ほど求められている時代はありません。

キヤノングローバル戦略研究所の設立にあたり、当研究所が将来への方向性とあるべき姿を的確に捉え、情報を発信し、日本と世界の将来への道筋を明らかにするとともに、そうしたセンスを磨いた優秀な人材の集う場となることを期待しています。そうした活動が日本と世界の繁栄に貢献し、人類社会の持続的な繁栄と人類の幸福に貢献するものと信じます。

これを実現するために、キヤノングローバル戦略研究所は、福井俊彦氏を理事長に迎え、その豊かな知識と経験により、研究所の活動をリードしていただくことをお願いしました。

キヤノングローバル戦略研究所が、今後日本と世界の発展に大いに貢献できることを期待するとともに、その活動に対し皆様の幅広いご支援とご協力をお願いする次第です。

キヤノン株式会社
代表取締役会長 CEO 御手洗冨士夫

CIGSビジョン討論 まとめ
2018.02.16 役員室から

    理事長 福井 俊彦  役員室から
    http://www.canon-igs.org/management/

人はどう動くか

 電車の中で、乗ってから降りるまでスマフォを操作し続けている人達を見て、かつて電車の中で書籍を読み耽っていた人達と較べて、どちらがより深い思索をしているのか、これが私の疑問の出発点である。

日本と世界の未来のために

「キヤノングローバル戦略研究所」はグローバルな視点から、現状を分析し戦略的な提言を発信していきます。それらを国の政策に反映させることで社会に貢献し、今後の日本と世界の発展に寄与することを目指していきます。

理事長挨拶

グローバリゼーションの時代にあって、日本経済を積極的に世界経済の中に位置付け、世界において日本がどうあるべきかという視点から、現状を分析し、戦略的な提言を発信していくことが求められていると考えています。

キヤノングローバル戦略研究所は、このような視点から、グローバルに活動し、グローバルな知識の交流を図っていくことに力点をおいています。

具体的な研究領域として、「マクロ経済」、「資源・エネルギー、環境」、「外交・安全保障」を当面の3つの柱としています。

「マクロ経済」の領域においては、広いパースペクティブにおいて、いかに健全な経済成長を図っていくことができるかを研究します。経済の成長力は西から東へと移っており、それとともにグローバル経済の担い手としての責任もアジアを中心とした世界に移りつつあります。その中で、どのような経済分析手法があるのか、どのような政策策定メカニズムが望ましいのかなどを研究していきます。また、セーフティネットにかかわる諸制度についても研究します。

「資源・エネルギー、環境」の領域においては、本質的には経済成長の制約要因となり得るこれらの問題を、グローバルな面からどのようにしたら成長に転化できるのかという動態的な捉え方に基づいて研究していきます。

「外交・安全保障」の領域においては、戦後日本が世界の安全保障において十分に果たしてこなかった責任を、緊急の措置・長期的にみた対応を含めて、今後どのように考えるべきかを研究します。

この他、米国、欧州、エマージング諸国(とくに中国)との知識の交流、日米中関係の分析などもやっていきます。

こうした活動を通じて、グローバルな知識のネットワークを構築するとともに、新たに生み出される様々な萌芽を次の世代にしっかりと受け継いでいきたいと考えています。皆様のご支援をお願いする次第です。

キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)の概要すべては http://www.canon-igs.org/ に出ている。