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続折々の記 2020①
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】12/30~     【 02 】01/01~     【 03 】01/03~
【 04 】01/05~     【 05 】01/07~     【 06 】01/08~
【 07 】01/12~     【 08 】01/19~     【 09 】01/20~
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【 02 】01/01~
    欲望のために国際間でのウソを言ったカルロス・ゴーン   慎むべき心得
       ・ゴーン被告、自家用機で29日出国か 関空発で1機確認
       ・ゴーン被告が日本出国か レバノン入り、海外紙「逃走」
       ・ゴーン氏側近「人質にする日本の司法から免れた」仏報道
       ・ゴーン被告の出国報道 検察幹部「事実把握していない」
       ・「日産社員が忍び込み…」ゴーン氏弁護団、無罪主張へ
       ・ゴーン氏追放、西川氏の大誤算 主導した改革は己の身に
       ・カルロス・ゴーン もたらした光と影

 01 01 (水) 欲望のために国際間でのウソを言ったカルロス・ゴーン     慎むべき心得

昨年暮れにこのニュースをTV放送で知って驚いた。 彼はウソを言って出国した。 モーゼの十戒八番目の 「隣人に関して偽証してはならない」 その意味する心は 「ウソを言ってはならない」 という教えに背いている。

人は人生の中で、考えてみるとウソやウソに類する場合があるが、最後の審判…両親に反しない問答で自分のすべてを公開することになる。

だから、モーゼはわずか10の戒めの中の八番目にこの教えを取り上げたものなのです。

彼は、自分の欲望のために、してはいけない国際間でのウソを言ったのです。

自戒したいことでした。

2019年12月31日20時31分朝日デジタル ①

① ゴーン被告、自家用機で29日出国か 関空発で1機確認

     https://digital.asahi.com/articles/ASMD054BMMD0UTIL016.html?iref=comtop_8_03
     2020年1月1日 朝日1面

 会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が、保釈条件で海外渡航が禁じられていたにもかかわらず、国籍を持つレバノンに逃亡したことがわかった。ゴーン前会長側は31日、「私はレバノンにいる」との声明を発表。日本の司法制度を強く批判し、「不正と政治的な迫害から逃れた」と行動を正当化した。日本とレバノンは容疑者の身柄引き渡しに関する条約を結んでいない。日本への身柄引き渡しは難しいとみられる。

   ゴーン被告が日本出国か レバノン入り、海外紙「逃走」 
       ➡②https://digital.asahi.com/articles/ASMD02GV9MD0ULFA001.html?iref=pc_extlink
   もたらした光と影
       ➡⑦https://www.asahi.com/special/carlosghosn/?iref=pc_extlink

 レバノンのジュレイサティ国務相は31日、同国メディアに対し、「ゴーン氏はフランスのパスポートとレバノンの身分証をもって合法的に入国した。日本を離れた経緯については情報がない」と語り、入国を認めた。レバノンはゴーン前会長の一族の出身国で、前会長自身も幼少期を過ごした。

 同国の治安当局者は31日、朝日新聞の取材に対して、前会長が30日午前5時にプライベートジェットでトルコから首都ベイルートに到着したと述べた。旅券はフランスのもので、名前は本名の「カルロス・ゴーン・ビシャラ」だったという。

 国土交通省大阪航空局関西空港事務所によると、29日夜に関西空港を発ってトルコのイスタンブールに向かったプライベートジェットが1機あるという。

 前会長の弁護人の弘中惇一郎弁護士は31日、報道陣に対し「こちらも寝耳に水でびっくりしているし、当惑している」と述べた。出国について「保釈条件に反すると考えざるを得ない」と話した。最後に会ったのは、12月25日の公判前整理手続きの際だったという。

 前会長は2018年11月に金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で東京地検特捜部に逮捕され、同法違反と会社法違反の罪で起訴された。

 前会長はレバノンに加え、出生国のブラジル、長く生活したフランスの3カ国の旅券を持つ。19年4月に保釈された際、条件として東京都内の定められた住居に住むことのほか、弁護人が前会長の全ての旅券を保管することが定められていた。

 東京地検は31日、保釈取り消しを東京地裁に請求。東京地裁はこれを認めた。保釈金計15億円は没収される。

 検察当局は今後、外交ルートを通じて身柄の引き渡しを求めていくとみられるが、レバノンでは国内法で、自国民を他国に引き渡さないと定めており、実現しない可能性が極めて高い。日本の刑事裁判は、原則として被告人が一審の公判に出廷する義務がある。このため、20年春にも始まる予定だった前会長の裁判は、開かれない公算が大きくなった。

 虚偽記載の罪については、共犯として日産前代表取締役のグレッグ・ケリー被告(63)と法人としての日産も起訴されている。両者の裁判は、今後も初公判に向けて争点や証拠の整理が進められるとみられる。

    ◇

 〈ゴーン前会長が起訴された4事件〉 金融商品取引法違反(①)と三つの会社法違反(②~④)の罪に問われている。①2010~17年度の「総報酬」が計約170億円だったのに、「既払い」の約79億円だけを報告書に記載し、「未払い」の約91億円を隠した②リーマン・ショックで約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を08年、日産に付け替えた③契約を自身に戻す際、30億円相当の信用保証に協力するなどしたサウジアラビアの友人に09~12年、日産の資金計約13億円を不正送金した④オマーンの友人がオーナーの販売代理店に17年と18年、日産の資金計約11億円を送金。半額を実質保有する投資会社に還流させた――とされる。

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  以上の関連ニュースは取り上げませんので、必要とすれば開いて参考にしてください



➡②
ゴーン被告が日本出国か レバノン入り、海外紙「逃走」

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が、国籍を持つ国の一つであるレバノンの首都ベイルートに到着したと、欧米メディアが30日に相次いで報じた。日本を出国した経緯など詳細は不明としている。ゴーン前会長は昨年11月に逮捕され、今年4月に東京都内に住むことなどを条件に保釈されていた。

 米紙ウォールストリート・ジャーナルは30日、事情を知る人物の話として、「ゴーン前会長は日本では公平な裁判を受けられないとして逃走した」と伝え、「政治的捕虜であることに疲れている」とも報じた。近日中にレバノンで記者会見を開き、日本を離れた理由などを説明する可能性があるとしている。

   ゴーン氏側近「人質にする日本の司法から免れた」仏報道
       ➡③https://digital.asahi.com/articles/ASMD03HW8MD0UHBI009.html?iref=pc_extlink
   ゴーン被告の出国報道 検察幹部「事実把握していない」
       ➡④https://digital.asahi.com/articles/ASMD03GQ5MD0UTIL005.html?iref=pc_extlink

 英紙フィナンシャル・タイムズ電子版は30日、ゴーン前会長と近い人の話として、29日夜にレバノンの空港に到着したと報じた。一方、仏紙レゼコーは30日にトルコ経由で入ったと報じている。両紙ともプライベートジェットでレバノンに入ったとの情報もあるとしている。

レバノン邸宅「本人はいない」

 一方、ベイルートにあるゴーン被告の邸宅前で30日、朝日新聞の現地助手が警備員にゴーン被告が在宅しているか尋ねたところ、「本人はいない」と否定された。

 ゴーン前会長は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と三つの会社法違反(特別背任)の罪に問われている。(ロンドン=和気真也、エルサレム=高野遼)

   関連ニュース

   「日産社員が忍び込み…」 ゴーン氏弁護団、無罪主張へ
       ➡⑤https://digital.asahi.com/articles/ASMBS43CRMBSUTIL01P.html
   ゴーン氏追放、西川氏の大誤算 主導した改革は己の身に
       ➡⑥https://digital.asahi.com/articles/ASMCK71NCMCKULFA00L.html

➡③
ゴーン氏側近「人質にする日本の司法から免れた」仏報道

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告がレバノンに入国したと報じられていることについて、仏紙フィガロは30日、被告の側近が「ゴーン氏は裁きや自身の責任から逃げようとしているわけではない。だが、日本で逮捕されて以来、自分を人質にしている(日本の)司法システムから免れたのだ」と語っていると報じた。

 同紙はゴーン被告が幼少期を過ごし、国籍を持つレバノンについて「ゴーン氏は多くの支援を期待できるし、彼を保護するような措置にも恵まれるだろう」と指摘し、今後、日本とレバノンの間で外交関係の緊張が生じかねないと指摘した。(パリ=疋田多揚)

➡④
ゴーン被告の出国報道 検察幹部「事実把握していない」

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)がレバノン入りしたと欧米メディアが30日に相次いで報じたことについて、複数の検察幹部は31日、朝日新聞の取材に「出国の事実を把握していない」と話した。

 ゴーン前会長は2018年11月に逮捕され、19年4月に東京都内に住むことなどを条件に保釈されていた。検察幹部の一人は「保釈条件の変更も聞いていない」とした。

➡⑤ 関連ニュース
「日産社員が忍び込み…」ゴーン氏弁護団、無罪主張へ

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)をめぐる一連の事件で、前会長の弁護団が24日、来春にも東京地裁で始まる公判で主張する予定の内容を公表した。記者会見した弘中惇一郎弁護士は「公訴(起訴)自体が違法、職権乱用であり、ただちに棄却されるべきだ」と捜査の違法性を強調。全ての事件について無罪を主張することを明らかにした。

 ゴーン前会長は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と三つの会社法違反(特別背任)の罪に問われている。弁護団は17日付で、主張内容を地裁に提出していた。

 会見で弘中氏は、日産が前会長による仏ルノーとの経営統合を懸念していたと指摘。「前会長を追放するため、検察と協力して事件を作り出した」と批判した。違法捜査の具体例として、「海外では検察が手を出せないため、日産の社員が色々なところに忍び込み、勝手に物を持ち出した」などと主張した。

 検察が前会長の部下2人と結んだ司法取引の違法性にも言及。西川(さいかわ)広人前社長が報酬を不正に受け取っていた問題を念頭に、「西川氏の不正に目をつぶり、日産の業務命令として部下2人に無理やり司法取引に応じさせた」とした。

 さらに事件化には日本政府の意向があったとし、「国策捜査としては一番大きい事件。日産をフランスに渡すまいという方針のもとでやられた」と述べた。

 役員報酬の虚偽記載事件については「(検察の主張する)未払い報酬は存在しない」と反論。特別背任についても、サウジアラビアの実業家への送金は「適正な報酬を支払っただけ」と主張した。オマーンの販売代理店を通じて日産資金を自らに還流させたとの指摘に対しては、「代理店から前会長に資金が支払われた事実はなく、還流自体が存在しない」と訴えた。

 関係者によると、虚偽記載事件の共犯に問われた前代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)も全面的に無罪を主張する方針。法人として起訴された日産は起訴内容を認める主張内容を地裁に提出したという。

 この日は、東京地裁で争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが非公開で開かれ、ゴーン前会長とケリー前代表取締役も出席した。

     ◇

 〈ゴーン前会長が起訴された4事件〉 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)と三つの会社法違反(特別背任)の罪に問われた。①2010~17年度の8年間の「総報酬」が計約170億円だったのに、「既払い」の約79億円だけを報告書に記載し、「未払い」の約91億円を隠した②リーマン・ショックで約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を08年、日産に付け替えた③契約を自身に戻す際、担保となる30億円相当の信用保証に協力するなどしたサウジアラビアの友人に09~12年、日産の資金計約13億円を不正送金した④オマーンの友人がオーナーの販売代理店に17年と18年、日産の資金計約11億円を送金。半額を実質保有するレバノンの投資会社に還流させた――とされる。

弁護側の主張の骨子

公訴(起訴)棄却の申し立て

・日産幹部はゴーン前会長を追放してルノーとの統合を阻止するために「不正」を探し、検察が不公正な調査結果を受け入れて捜査を始めた

・日産幹部2人の司法取引は、業務命令に従って合意したにすぎない。前会長を失脚させるのが目的で、真実を明らかにして適切な刑事訴追をするという法の趣旨に反した違法なものだ

・日産の従業員らを前会長の住居に侵入させて個人財産などを違法に押収するなど、日本国内外で違法な捜査をした。重大な違法捜査に基づく刑事訴追だ

役員報酬の虚偽記載

・「未払い報酬」は存在しない。役員報酬の個別開示制度が導入された2010年に報酬を大幅減額したが、この減額分を「未払い報酬」と検察がすり替えた

・本来受け取ることができたはずの報酬額や減額分を秘書室長が記録したが、前会長が別企業や日産と契約を結ぶ際に使うための「基礎資料」や「参考資料」にすぎない

日産に損失を付け替えた特別背任

・日産に損害を与えない契約であり、取締役会でその旨を決議した

・実際に損失が発生した際には前会長が負担しており、日産には一切損害を与えていない

サウジアラビアルートの特別背任

・サウジの実業家への送金は業務に対する報酬であり、信用保証とは無関係だ

・送金は社内の決裁を経て、複数の幹部によって承認された

オマーンルートの特別背任

・送金は販売代理店への販売奨励金だった。代理店から前会長や家族に金銭が還流した事実はない

・送金は社内の決裁を経て、西川広人・前社長ら複数の幹部によって承認された

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➡⑥ 関連ニュース
ゴーン氏追放、西川氏の大誤算 主導した改革は己の身に

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーンを東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年になる。世界に衝撃を与えた事件の裁判は来春にも始まる。

 ゴーンはすべての事件で無罪を主張している。弁護側は捜査の手続きそのものが違法だとして争点化する方針で、検察側と弁護側の全面対決となる。

 ゴーンに代わって経営トップにのぼりつめた社長の西川(さいかわ)広人も、自らの報酬不正の責任を問われて今年9月に辞任に追い込まれた。極秘に進めた社内調査をもとに特捜部の捜査に全面協力し、ゴーンを「追放」した日産にとっても、この1年は想定外の連続だった。

     ◇

 「おかしな会社があるぞ」。日産自動車が「ベンチャー投資」目的で2010年にオランダに設立した子会社「ジーア」に対し、社内では疑問の声がたびたびあがっていた。

 「投資活動を全然していない」「休眠法人ではないか」。設立の数年後にはこうした指摘が上層部に寄せられ、役員が「すぐ調査を」と指示していた。だが実態がつかめない。「その下にまた会社があって、仕組みが複雑すぎるんです」(当時の役員)。調査に関わった監査役(当時)も「手を尽くして調べても、よくわからなかった」と振り返る。

 暗礁に乗り上げた調査の突破口は「有力な内部告発だった」と複数の日産関係者は明かす。前会長カルロス・ゴーンの部下で法務部門を所管する外国人の専務執行役員が「これ以上、不正につきあわされるのはごめんだ」とジーア社の実態を監査役に打ち明けたというのだ。

 ベンチャー投資をするはずのジーア社は、リオデジャネイロやベイルートでゴーンが使う住宅の購入費や改修費を支払っていた。この専務執行役員はその後、司法取引に応じ、東京地検特捜部の捜査に全面協力することになる。

 監査役らは昨年春から、米法律事務所レイサム&ワトキンスと組んでゴーンの不正の調査に本格的に着手した。ゴーンはもちろん、社長の西川(さいかわ)広人にも知らせずに動き出した。それは、ゴーン側近の西川に知らせたら「どう反応するかわからない」(幹部)と警戒していたからに他ならない。

 監査役が証拠を示してゴーンの不正を西川に初めて説明したのは昨年秋。ゴーンが電撃的に逮捕された11月19日の1カ月前だった。すでに特捜部との間で司法取引の協議が進んでいた。幹部らは「全てが整った段階で説明した」と明かす。

 西川はこのころ、仏政府の要求を受け、連合を組む仏ルノーと日産の経営統合に意欲を示すようになったゴーンと対立。ゴーンに疎まれ、社長の座を追われそうになっていた。「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」のたとえ通り、「西川はゴーン降ろしに最後に乗っかった」(幹部)。

 11月19日午後10時。横浜市の日産本社で緊急記者会見に1人で臨んだ西川は「当然、解任に値する」と強調し、ゴーンとの決別を宣言した。それから1年足らず。自らも報酬不正で社長の座を追われることになろうとは、西川は思いもしなかった。この1年は多くの日産関係者にとっても誤算続きだった。

旗振った改革、辞任迫られる誤算

 「会社の仕組みが形骸化し、透明性が低い。ガバナンス(企業統治)の問題が大きい」。ゴーンが逮捕された昨年11月19日夜の記者会見で、日産自動車社長(当時)の西川(さいかわ)広人はゴーンの不正を長年見抜けなかった理由をそう説明した。

 その後の日産の動きは素早かった。3日後に臨時取締役会を開いてゴーンの会長職を解任。12月17日の取締役会で「ガバナンス改善特別委員会」を設置し、外部有識者から改善策の提言を受けることを決めた。

 逮捕直後から、ゴーンの不正を止められなかった西川の責任を問う声が社内外でくすぶっていた。カリスマのゴーンを「追放」して経営トップに就いた西川にとって、自らの求心力を高めるにはガバナンス改革という旗が必要だった。

 特別委は今年3月にまとめた報告書で、人事・報酬の決定権のゴーンへの集中が不正を招いた原因だと指摘。社外取締役の権限を強める「指名委員会等設置会社」への移行を提言し、日産は6月の株主総会で移行に必要な議案を提案した。

 仏ルノーが一時、この議案への投票を棄権する意向を示すと、西川は強く反発。改革の頓挫を避けたい日産はルノー出身者のポストを増やして人事面で譲歩し、なんとかルノーの賛成をとりつけた。経済産業省も、同省OBで社外取締役の豊田正和を通じて改革の実現を促した。

 だが、会社の形を大きく変える改革には「副作用」も伴う。「自分たちの思い通りの人事をすることができなくなりますよ」。日産から水面下で相談を受けた法務アドバイザーは「移行は危険だ」と伝えていた。

 懸念は現実のものとなる。ゴーンの不正を追及する急先鋒(きゅうせんぽう)だった西川自身の報酬不正が社内調査で判明。9月9日の取締役会では、取締役11人のうち7人を占める社外取締役の多くが西川に辞任を迫った。この時点での辞任を否定していた西川の外堀は一気に埋まった。旗を振って進めたガバナンス改革が機能した結果、自らが辞任に追い込まれたとは皮肉だ。

 社外取締役は「ポスト西川」選びも主導した。首脳人事の決定権を握る指名委員会が次期社長に指名したのは専務執行役員の内田誠。社内では西川の辞任後に暫定的に社長代行を務める山内康裕の昇格を期待する声が多く、取締役でもない内田の起用に驚く声もあった。

 指名委も6人中5人を社外取締役が占め、残る1人はルノー会長のジャンドミニク・スナール。スナールは他の社外取締役と水面下で人選を調整し、トップ人事に積極的に関わった。経営トップを自らの手で決められないもどかしさに、「結局、日産への影響力を強めたのはスナールではないか」と幹部は嘆く。

 来月1日に発足する内田新体制の前途は多難だ。今月12日に2020年3月期の業績予想を下方修正。ゴーンが進めた拡大路線の修正は難しく、純利益は前年比65・5%の大幅減益になる見込みだ。日産三菱・ルノーの3社連合に安定をもたらしていた「ゴーン1強」体制が崩れたいま、ルノーが経営統合を求めて再び圧力を強める可能性もある。

 「将来の展望や野心的な戦略がない。3社の関係がゆがんで成長が滞っている」。ゴーンは最近、知人にこう漏らし、日産の行く末を案じたという。=敬称略(大鹿靖明、久保智、笠井哲也)

来春にも公判、全面対決の構図鮮明

 ビジネスジェット機で羽田に到着した日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年。世界に衝撃を与えた事件は、来春にも始まるとみられる公判に向けた手続きが進む。検察、弁護側双方の大まかな主張が出そろい、全面対決の構図が鮮明となっている。

 ゴーン前会長は今年4月までに計4回逮捕され、役員報酬の未払い分を隠したとする金融商品取引法違反事件と、日産の資金を不正送金したなどとする会社法違反事件で起訴された。

 今月11日に記者会見した弁護団の弘中惇一郎弁護士によると、保釈中のゴーン前会長は弘中氏の事務所に通って裁判の記録を読むなどし、週に何回も弁護団と議論を重ねている。弁護団は前会長の認識や記憶を前提に、公判での主張を組み立てているという。

 弁護側は公判で予定する主張内容を10月17日に裁判所に提出した。すべての事件で無罪を主張するだけでなく、捜査の手続きそのものが違法だと争点化し、公訴(起訴)棄却を申し立てる方針を示した。裁判で公訴棄却が認められて確定した例はまれだが、主任弁護人の河津博史弁護士は「過去に例のないほど違法な捜査が行われた。単なる戦術ではない」と強調する。

 焦点の一つが、特捜部が日産幹部2人と交わした司法取引の違法性だ。本来は部下がトップの不正を明らかにする代わりに罪を減免されるようなケースが主に想定されている。弁護側は、日産の経営陣がゴーン前会長を失脚させる目的だったとし、「実質的な当事者は日産だ」と指摘。「2人は業務命令で司法取引したにすぎず、法の趣旨に反する」と主張する。これに対し、検察幹部は「弁護団の筋書きは根拠がなく妄想だ」と一蹴。「裁判所が違法性を認めるとは思えない」と自信を見せる。

 今後も公判に向けて証拠や争点を絞り込む公判前整理手続きが進められるが、弁護側は検察側が提出する供述調書の大半について、証拠採用に同意しないとみられる。このため、検察側は司法取引に応じた2人を含め多くの日産幹部を証人申請することが予想される。弁護側は西川前社長も一連の行為に関与したとして証人申請するとみられ、状況によっては公判が長期化する可能性もある。

 地裁は、金商法違反事件について初公判を来年4月にも開きたいとの意向を示している。審理は来年いっぱいは週3日のペースで隔週行う案も示しているという。ただ、会社法違反事件の審理については未定になっており、公判のスケジュールはなお流動的だ。

➡⑦ 

カルロス・ゴーン もたらした光と影

     https://www.asahi.com/special/carlosghosn/

【映像】カルロス・ゴーン もたらした光と影
     以下の映像は URL を開いてみること

日産自動車の経営再建を託され、仏ルノーから乗り込んだカルロス・ゴーン。業績を急回復させただけでなく、カリスマ経営者として日本の企業風土まで変えた。その男が11月、東京地検に逮捕され、日産会長の座も追われた。ゴーンが日本と関わった19年間の「光と影」を追った。

ゴーンの登場は日産だけでなく、日本の企業風土に広く「変革」をもたらした

【映像】送り込まれた男

約2兆円の有利子負債を抱えて破綻(はたん)寸前の状態に陥った日産自動車は1999年3月、仏自動車大手のルノーと資本提携した。

ルノーは、タイヤメーカー・ミシュランの米国法人とルノーで大リストラに辣腕(らつわん)をふるったカルロス・ゴーン(当時はルノー副社長)を、日産の最高執行責任者(COO)として日産に送り込んだ。

ゴーンは99年8月の朝日新聞のインタビューで、「5年以内に日産の再建を果たせなければ、失敗ということだ」と強調した。「有利子負債について日本企業は鈍感だった」とも述べ、それまでの日産の経営のあり方を暗に批判。負債の圧縮に最善を尽くす考えを示した。

【映像】日産リバイバルプランの概要   2018年12月7日 公開 四つ

   自社工場5工場閉鎖  人員2.1万人削減

   部品などの調達先50%削減  1.4兆円の有利子負債0.7兆円削減

ゴーンはこの年の10月、資本提携後にまとめた大胆なリストラ策「日産リバイバルプラン」を発表。三つの完成車工場と二つの部品工場を閉鎖して生産能力を大幅に縮小し、3年半かけてグループの人員の14%にあたる2万1千人を削減することが計画の柱だった。不動産など資産売却も進めて財務体質を改善し、「日産を完全復活させる」と宣言した。

「再建にタブーはない」と打ち出したゴーンのもと、日産は退路を断って再建への一歩を踏み出した。

【映像】村山工場跡地  と V字回復

「再建請負人」として送り込まれたゴーンは、「コミットメント」(必達目標)を掲げて改革を進めた。目標の達成を責任を負って約束するという意味だ。

2001年3月期に黒字に転換できなければ日産を去る――。自らそう宣言して改革を進めた。「コミットメント」はゴーン流経営の「代名詞」となり、模倣する経営者も相次いだ。

【映像】ゴーン就任前後の日産自動車の業績  グラフ

日産の00年3月期連結決算は、本業の不振とリストラによる特別損失の計上が響いて、純損益が6844億円の赤字に陥った。ゴーンは「負の遺産を一掃した」「一過性の赤字に過ぎない」と強調し、強気の姿勢を崩さなかった。00年6月には社長兼COOに昇格し、名実ともに日産のかじ取り役となった。

瀕死(ひんし)の状態だった日産に「緊急手術」を施したゴーン流改革は、結果となって表れた。01年3月期の純損益は3311億円の黒字に「V字回復」。ゴーンは記者会見で、「最初のコミットメントは達成された」と語った。

02年には「リバイバルプラン」の1年前倒しでの達成を宣言。03年には有利子負債を完済した。剛腕経営者・ゴーンの名は国内外にとどろいた。

【映像】往年の名車を再び世に出したのもゴーンだった  二枚

01年、米デトロイトでのモーターショーで「日産は戻ってきた。Zを復活させる」と「フェアレディZ」の復活を宣言。翌年、13年ぶりにフルモデルチェンジして発売し、日産再生のシンボルとなった。

排ガス規制をクリアできず、生産中止に追い込まれていた「スカイラインGT-R」の後継車「GT-R」も07年に発売し、納車まで数カ月待ちの人気となった。

日本の企業風土に風穴

ゴーン流経営の影響は自動車業界を支える関連産業にも及び、日本流の経営を変革する「劇薬」にもなった。

日産は1999年、鋼材や部品の調達先を絞って大量発注する代わりに、値下げを求める交渉に乗り出した。調達コストの低減を狙った取引先との冷徹な交渉は「ゴーン・ショック」と呼ばれ、日本の産業界を大きく揺さぶった。

【映像】日本の企業風土「ケイレツ」

自動車用鋼板の値下げを迫られた鉄鋼業界では、2002年に川崎製鉄とNKKが経営統合して、JFEホールディングスが発足。「ゴーン・ショック」がもたらした価格競争が、業界再編の引き金となった。

ゴーン流経営は、日本独特の「ケイレツ」にもメスを入れた。ゴーン社長(当時)が率いた日産は、系列企業の多くから出資を引き揚げた。その結果、系列企業では、日産以外の自動車メーカーとの取引を拡大したり、外資の傘下に入ったりする動きが広がった。

自動車メーカーを頂点に部品メーカーがピラミッドのように連なり、協力し合って開発や生産を進める「ケイレツ」は、親会社と下請けの密接な関係で成り立つ。閉鎖的な日本市場の象徴として、かねて海外から批判を浴びてきたが、ゴーンの登場によって変化を余儀なくされた。

【映像】ゴーン流経営は他にも【映像】

系列の解体以外にも、従来の日本型経営を打破する動きは広がっていった。大手企業で外国人をトップに登用する例は珍しくなくなり、社内の公用語を英語にしたり、賃金に成果主義を取り入れて年功序列型を見直したりした企業も多い。

【映像】「ゴーン流」の裏にあった負の側面。一枚  ゴーン自身にも捜査の手が迫っていた。

【映像】切り捨てられたもの  一枚

村山工場(東京)など5工場の閉鎖、2万1千人の人員削減、系列取引の見直し……。ゴーンがCOOとしてまとめた再生計画「日産リバイバルプラン」は、過去に例のないリストラ策だった。

徹底した合理化で仏タイヤ大手ミシュランや仏ルノーの業績を改善させて頭角を現し、「コストカッター」の異名をとる。リバイバルプランを発表した1999年10月の記者会見では、たどたどしい日本語でリストラ策への理解を求めた。

「どれだけ多くの努力や痛み、犠牲が必要となるか。私にも痛いほどわかっています」

日産は95年にも国内有数の完成車工場だった座間工場(神奈川県座間市)を閉鎖したばかりで、社内外に大きな衝撃が広がった。閉鎖された座間工場から村山工場への異動に応じ、2度目の工場閉鎖を通告された社員もいた。

日産リバイバルプランで示された人員削減

当時の労働組合幹部は工場閉鎖の報に、こう言って肩を落とした。

「座間工場の閉鎖の時も極めて大きな痛みを伴ったのに、我々は結果的に会社側の求めに応じた。その後もできる限りの協力をしてきた。にもかかわらず……」

改革の痛みを引き受けた人々はいま、有価証券報告書に役員報酬を過少記載したとして逮捕されたゴーンに何を思うのか。

いびつな3社連合

19年前にルノーから日産自動車に送り込まれたゴーン。2005年以降はルノーと日産の最高経営責任者(CEO)を兼務するようになり、両社を結びつける「接着剤」の役割を果たしてきた。独自開発の技術や企業風土へのこだわりが強い自動車メーカー同士の再編には「成功例」が少ないと言われるなか、日産とルノーの資本業務提携を維持し、世界的な自動車グループに育てた手腕を評価する声も多かった。

だが、ゴーンの失脚を機に、日産・ルノー・三菱自動車の3社連合の主導権を握ってきたルノーに対する日産社内の不満が顕在化してきた。日産はルノーの出資を受け入れて経営難を乗り切ったが、近年のルノーの業績は振るわない。それでも、ルノーが日産に43%を出資して議決権を持つ一方、日産のルノーへの出資は15%にとどまり、議決権もない。売上高も利益も上回る日産が、多くの利益をルノーに配当として納めてきた。

こうした「不平等条約の改正」が日産幹部の宿願となっているが、ルノーに15%を出資するフランス政府は、資本関係を見直したい日産に神経をとがらせている。

11月30日(日本時間12月1日)にはフランス政府側の要請で、3社連合の関係をめぐってマクロンと安倍晋三の日仏両首脳が会談した。ルノーと日産の関係は外交課題にもなりつつある。

疑われる私物化

「当社の代表取締役会長カルロス・ゴーンについて、社内調査の結果、本人の主導による重大な不正行為、大きく3点を確認いたしました」。ゴーン逮捕直後の記者会見で、日産社長兼CEOの西川広人が語った。 3点とは――。

①開示される実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していた②目的を偽って私的な目的で当社の投資資金を支出した③私的な目的で当社の経費を支出した、の三つだ。

3社連合の拠点と世界に散らばるゴーンの自宅

会見で詳細は明かされなかったが、関係者への取材から、さまざまな疑惑が浮かび上がってきた。

ゴーンは、世界各地に「自宅」を所有していた。レバノン・ベイルートやブラジル・リオデジャネイロで利用していた高級住宅は、日産が海外子会社を通じて購入していたことが判明した。

「家の価格は500万ドル(約5億6千万円)はくだらない」。ベイルートの邸宅を記者が訪ねると、地元不動産事情に詳しい人らはそう証言した。

左=リオデジャネイロの自宅、右=ベイルートの自宅

日産がゴーンの姉に対し、2002年から、年10万ドル(約1130万円)前後を支出してきたこともわかった。「アドバイザー業務」の契約を結んでいたが、実際には姉に業務の実態はなかったという。

ほかにも、不正の疑惑が事件を機に噴出した。

株価に連動する報酬の権利(約40億円分)を有価証券報告書に記載していなかった疑い。私的な投資の損失を日産に付け替えた疑惑……。

ある日産幹部は漏らした。「圧倒的な存在になりすぎた。公私混同、会社の私物化につながった」

突然の逮捕

容疑

国内外に衝撃を与えたゴーンの逮捕。だが事態は、半年以上前から水面下で進行していた。

日産社内で、ゴーンをめぐる不正な資金工作が告発されたのは、今年3月ごろ。情報は検察当局に寄せられ、6月にスタートしたばかりの「司法取引」制度を使った捜査が進められた。

東京地検特捜部が着目したのが、巨額の「報酬隠し」の疑いだった。

日本では09年度決算から「年収1億円以上」の報酬を得る上場会社の役員について、有価証券報告書に氏名と金額を記載するルールができた。ゴーンの報酬は毎年、「10億円」前後と記載されてきた。

ところがゴーンは、年に約10億円をさらに受け取るという合意を日産側と毎年交わしていた疑いが浮上した。「コンサル料」などの名目で、退任後にまとめて受け取る仕組みをつくっていたという。

特捜部は、10~14年度の5年間で、役員報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載したとする金融商品取引法違反容疑で逮捕状をとった。

勾留いつまで

11月19日夕、ビジネスジェット機で羽田空港に到着するのを待ち構え、特捜部はゴーンを逮捕した。

特捜部に逮捕されると、計20日間勾留されるのが通例だ。連日のように担当検事の取り調べがある。起訴された場合、ゴーンが否認を続けていると、勾留が長引くケースも考えられる。過去には100日以上勾留された事件も少なくない。

ゴーンは、自ら立て直した日産を私物化していたのか――。疑惑の解明は緒に就いたばかりだ。

3社連合の未来は

ゴーンが逮捕された3日後の11月22日。日産社長の西川広人は臨時取締役会を招集。ゴーンの会長職を解き、代表権を外すことを決めた。日産、ルノーと3社連合を組む三菱自動車も26日に臨時取締役会を開いて、同様の対応を決めた。

一方、ルノーは11月20日の取締役会でゴーンの会長兼CEO職の解任を見送り、CEOの暫定代行にCOOのティエリー・ボロレを充てる人事を決めた。日産・三菱自とルノーの間で対応は割れている。

日産側はゴーンの失脚をルノーの影響力をそぐ好機ととらえているが、思惑通りにことが運ぶかどうかは見通せない。

日産にとっては、ゴーンの後任人事が最初の関門になる。日産とルノーは1999年の提携時に、経営面で重要なポストをルノーから出すことを取り決めており、まずはルノーの影響力をそぐ人選ができるかどうかが焦点となる。

ゴーンの「完全追放」も関門だ。日産は早期に取締役からも外す方針で、臨時株主総会を開いて取締役の解任を決議する構えだ。だが、日産に43%を出資するルノーが議案に反対する可能性もあり、予断を許さない。

最大の難題は、ルノーとの資本関係の見直しだ。ボロレは「ルノーグループの利益と3社連合の持続可能性を守るという使命に集中し続ける」との声明を発表しており、日産側との溝が浮き彫りになってきた。

マクロンと安倍もアルゼンチンで会談し、マクロンは3社の関係が今後も維持されるよう求めた。3社連合の行方は、日仏両政府も巻き込んで混沌(こんとん)としている。
(敬称略)