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続折々の記 2020①
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】12/30~     【 02 】01/01~     【 03 】01/03~
【 04 】01/05~     【 05 】01/07~     【 06 】01/08~
【 07 】01/12~     【 08 】01/19~     【 09 】01/20~
――――――――――――――――――――――――――――――
【 09 】01/20~
  日米安保の岐路に立って   良心に従え
    ・「日本化」におびえる米国 金融政策は手詰まりなのか
     - 「ディープステート=影の政府」と、激しく攻撃するトランプ氏
    ・(日米安保)「還暦」安保、直面する課題 駐留経費・防衛協力
    ・(日米安保) 米政権「敵対国より同盟国に圧力」
  「疑惑国会」開幕   無責任時代か?
     - 疑惑、沈黙の首相 幕引き図る姿勢、露骨
     - 「税収は過去最高」まだ見通し 新規国債、決算ベースで増加も
     - 渦中の議員は 弁護士と相談のうえ、適切な時期に…
     - (社説)通常国会開幕 「説明放棄」は許されぬ
     - (社説)財政の健全化 目標実現の具体策を

   
 01 20 (月) 日米安保の岐路に立って     良心に従え

昨日は小諸の孫の誕生日でした。 朝5:30にはニュースを調べた。

新聞記事ではなくデジタルニュースに、下記のような非容体が出ていた。 開いてみると、アメリカの経済の考え方の流れが書かれている。 ずっと読み通してみると、日米安全保障条約の下、日本へ軍事関連で寄り掛かった考えが実行される気配がありありとわかるものであった。 この資料は保管しておかねばならない。 内容は次のとおりである。

朝日新聞デジタル > 記事

「日本化」におびえる米国 金融政策は手詰まりなのか

   ワシントン=青山直篤
   2020年1月20日 12時00分
   https://digital.asahi.com/articles/ASN1N3J30MDTUHBI00S.html?iref=comtop_8_05

経済インサイド

 米中貿易摩擦もいったん「ディール(取引)」に達し、株価が史上最高値を更新した米国経済。しかし株式市場が過熱する裏で、米国では「日本のような『停滞』に陥るのでは」という懸念がじわりと広がりつつある。様々な課題を抱えるとはいえ、底堅い成長を続ける米国がなぜ「日本化」を心配しているのか。

   これまでの「経済インサイド」 ➡

議長が直面する課題

 「私や私の同僚たちは、彼の模範から励ましを受けてきた」。昨年12月11日、米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でまず語ったのは、かつてのFRB議長への弔辞だった。

【写真・図版】朝日新聞のインタビューに応じるFRBのボルカー元議長=2012年11月10日、ニューヨーク、坂本真理撮影

 ポール・ボルカー氏。1970~80年代、「インフレ・ファイター」として華々しく活躍した、伝説的なFRB議長だ。FOMC直前の12月8日に死去し、ひとつの時代の終わりを印象づけた。パウエル氏は「ボルカー氏は、全ての米国人の利益になると信じた政策を遂行した」と悼んだ。

 FRBの政策のかじ取りは、米国経済はもちろん、世界経済も大きく動かす。79年に議長に就いたボルカー氏と、2018年に就任したパウエル氏。2人の金融政策上の課題はまったくベクトルが異なるが、「想定外」の事態に直面している点は似通う。

 ボルカー氏の就任時の70年代末、米国経済は不況に加え、オイルショックによる激しいインフレ(物価上昇)が重なり、「スタグフレーション」(不況下のインフレ)に見舞われた。不況下ではデフレになるのが当然だと考えられていた時代。ボルカー氏は批判を浴びながら金融引き締め策を進め、急激なインフレを抑え、米国経済を回復軌道に乗せた。

【写真・図版】宮沢喜一蔵相(当時)と会談するFRBのボルカー元議長(左)=1987年12月15日、東京都千代田区霞が関の大蔵省(当時)

 一方、現職のパウエル氏が向き合うのは逆に、一向に加速しないインフレだ。現在の米国経済は、低い失業率の下で景気は堅調。しかし、モノの値段はあまり上がらず、物価上昇率は1%台半ば。最近はFRBが目標とする物価上昇率2%を下回り続けてきた。

 もちろん、日本のように物価上昇率が0%台半ばで、デフレに逆戻りするリスクにさらされているような状況に比べればマシだ。しかし、米国としては低調な物価上昇率が、「謎」だと議論を呼び始めている。

ゼロ金利政策の限界

 好景気で失業率が低いうえ、物価もそれほど上がらない。いいことずくめのようだが、必ずしもそうではない。

 FRBのような中央銀行は、景気が低迷すると金利を下げて景気を刺激しようとする。低金利でお金を借り、投資する人が増え、景気が良くなれば金回りが良くなり、徐々に物価が上がる。そうなれば金利を引き上げて景気の過熱を抑える。

 中央銀行が操作できるのは「名目金利」。ただ、景気を刺激するために必要なのは、人々の予想する今後の物価上昇率(予想インフレ率)を差し引いた「実質金利」を下げることだ。低金利で景気も堅調なのに、物価が上がらず、将来にわたってそれが続くと多くの人々が予想するようになったらどうなるか。いくら実質金利を引き下げようとしても下げられず、効果が上がらなくなる。日本や欧州のように、「マイナス金利」まで導入すると、金利の引き下げも限界だ。これは「実効下限制約(effective lower bound=ELB)」と呼ばれる。

【写真・図版】3会合連続の利下げを決めた後、記者会見する米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長=2019年10月30日、ワシントン、青山直篤撮影

 米国はマイナス金利の導入までは至っていない。15年末にゼロ金利政策を解除し、利上げを続け、18年末には政策金利を「年2.25~2.50%」まで引き上げた。昨年1月に利上げの休止に転じ、その後利下げに転じたが、まだ政策金利は「年1.50~1.75%」とプラスを維持している。

 米国にとって、「ELB」はまだ遠い問題のように見える。しかしパウエル氏の認識は異なる。

 すでに利上げを休止した後の昨年6月4日。パウエル氏はシカゴでの講演で「金融メディアでもほとんど報道もされませんでしたが」と述べながら、99年にFRBが主催したある「会議」に触れた。

 「当時はまだ、(ボルカー氏らによる)『大インフレ』への勝利への記憶が真新しいころでした。しかし、(金融危機下でゼロ金利政策に入った)日銀がすでに当時、ELBの問題に苦闘しており、この会議で、低インフレが引き起こす多くの課題について議論が始まっていたのです。ただ、米国にとっては、ELBはまだ遠い問題でした」

 そのうえでパウエル氏はこう断言した。「いまでは我々も、ELBがもたらす課題にはっきりと気付いています。米国がELBに直面したときに、最良の選択をとれるよう備えることが我々の米国民への義務なのです」

米国にも迫る「崖」

 FRBは翌月の7月31日、約10年半ぶりの利下げを決定。その後も米経済は堅調だったのに、10月30日のFOMCまで3会合連続で利下げに踏み切った。米経済が好調にみえるなかで、「ELB」の「崖」へと近づいていく、リスクのある選択を進めた。

 この間もインフレは一向に加速せず、米個人消費支出の物価指数は昨年11月まで13カ月連続で、FRBが目標とする上昇率2%を下回った。

 「米経済も低インフレ・低金利が長引く『日本化』に陥りつつあるのか」。10月30日のFOMC後の記者会見で、筆者のこんな質問にパウエル氏は「我々のインフレの達成度は(達成にほど遠い)日欧などとは違っているが、強いデフレ圧力から免れているとも思っていない」と指摘。「我々が他国から学んだリスクは、インフレの低下の道筋に入ってしまうと抜け出すのが極めて難しいということだ」と答えた。「日本化」への静かな懸念が伝わる発言だった。

 パウエル氏のみならず、FRB高官や専門家の間で、低インフレへの関心は強まっている。昨年10月3日には、ワシントンのブルッキングス研究所で、「インフレは一体どうなったのか?」と題するシンポジウムが開かれた。

 冒頭で講演したFRBのイエレン前議長は、「FRBが2%の物価目標を慢性的に達成できないことによって、インフレ予想が下方にとどまった状態が続いてしまい、ELBにかかわる問題を悪化させ、著しいデフレリスクを引き起こしかねない。それが今日、考慮しなければならない問題だ」と改めて強調した。

【写真・図版】インフレについてのシンポジウムで講演するFRBのイエレン前議長=2019年10月3日、ワシントン、青山直篤撮影

背景には構造問題が

 トランプ政権の進めた大規模減税により、米経済は消費に牽引(けんいん)された好調を保ち、失業率も歴史的な低水準が続く。リーマン・ショック後、大規模な金融緩和と財政政策を続け、需要を膨らませてきたにもかかわらず、それでも景気が過熱しないとすれば、なぜなのか。

 先進国が21世紀に入り、構造的に続く「長期停滞」に陥ったからだ。そう唱えて注目されてきたのが、米財務長官やハーバード大学長を歴任したローレンス・サマーズ氏だ。昨年11月下旬に取材に訪れると、13年から訴えてきた自らの長期停滞論に、自信を深めているように見えた。

【写真・図版】インタビューに応じるローレンス・サマーズ元米財務長官=2019年11月21日、米マサチューセッツ州ケンブリッジ、青山直篤撮影

 「世界的に投資不足・貯蓄過剰に陥り、それが低金利とさえない成長、インフレ圧力の減退につながったという現実は、ほとんど誰もが認識している。08年の世界金融危機後の事態を短期的な落ち込みとみるのは説得力を失った。特にその後のインフレの動向を見れば、日本がこれまで経験してきたことがむしろ、いまの世界の典型を示していたのだということがはっきりした」

 驚かされたのは、日本が直面した問題の難しさを強く再認識しているようにみえたことだ。日本のバブル崩壊後の経済政策を巡っては、数々の「失敗」が指摘されてきた。サマーズ氏の米財務省での部下にあたるティモシー・ガイトナー元財務長官は日本の政策対応を詳細に分析し、米国版「バブル崩壊」ともいうべきリーマン・ショック後の対応に当たった。18年秋に取材した際には、「日本の政策決定者の戦略は非常に漸進的だった。もっと素早く金融システムの再建に動けば、より強力で持続的な回復に向かうと考えていた」と述べていた。

 サマーズ氏はこの点について、日本が長期停滞の先駆けだったことを踏まえ「欧米の政策担当者が日本に対して感じたある種の優越感は、当時思われていたほど妥当なものではなかったようだ」と指摘。「日本の失敗を繰り返す傾向もあった。景気が『正常』に戻ったと宣言したいばかりに、財政刺激が中途半端に終わり、低迷がぶり返すという失敗だ」と述べた。

金融緩和より財政拡張へ

 ELBにより、金融政策の効果がそがれてしまったいま、サマーズ氏が長期停滞への処方箋(せん)として説くのは、より積極的な財政政策だ。日本についても、金利低下で国債の利払い負担が減ることなどから「財政拡大が行き過ぎるリスクよりも、財政拡大が不十分であるリスクの方が大きい」と主張した。

 サマーズ氏とともに財政の復権を唱えてきた国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏も昨年6月の取材で、「日本銀行が長期金利を押し下げ続けると約束している」ため、投資家が財政赤字拡大を懸念して国債が売られるようなリスクは「取り除かれている」と指摘。積極的な財政出動を唱え、日本の昨秋の消費増税には反対する姿勢を示していた。

【写真・図版】インタビューに応じる、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストのオリビエ・ブランシャール氏=2019年6月10日、米ワシントン・ピーターソン国際経済研究所、ランハム裕子撮影

 ただ、注意しなければならないのは、日本の財政赤字は、公共工事などの積極的な投資によるものというより、急激な少子高齢化による社会保障費の増加が主因だということだ。財政拡大や金融緩和に積極的な左派のノーベル賞経済学者、ポール・クルーグマン氏でさえ、昨年2月のワシントンでの講演で、インフラ整備などの投資については国債発行でまかなえばよいとしつつ、社会保障充実に向けては富裕層への増税などが必要と指摘。「北欧レベルの福祉国家を望むなら、北欧レベルの(高い)税負担が必要だ」と強調した。野放図な財政が許されるわけではない。

【写真・図版】国際金融経済分析会合で発言する経済学者のポール・クルーグマン氏。右は日本銀行の黒田東彦総裁=2016年3月22日、首相官邸、仙波理撮影

 金融政策に限界が見え始め、財政拡張論が主流になりつつあるなかで、政府には、必要とあれば大胆な財政拡大にちゅうちょすべきではない一方、何が必要かを見極め、負担と受益について国民を説得できるだけの眼力と信頼がますます求められているのだ。

 そこで、長期停滞がもたらす根源的な「危機」の芽がのぞく。有権者と、その支払う税金で政策を実行する専門家集団としての政府の間で、信頼関係が断ち切られ、民主主義が機能不全に陥りやすくなることだ。

 戦後の先進国でみられたような高成長が実現できなくなり、大方の人にとっては生活が豊かになった実感がない。一方で、グローバル化の果実を一手に握り、信じられないほど富裕になった人もいる。

 カリフォルニア大学バークリー校のエマニュエル・サエズ教授の研究によると、米国の所得階層トップ1%の税引き前所得が全世帯所得に占める割合は80年代以降上昇傾向をたどり、18年は約22%を占めた。過去1世紀をたどるとU字カーブを描き、世界恐慌直前の1928年(23・9%)に迫る水準だ。金融資産などの財産に限れば、米国ではトップ1%が全体の3割超を保有している。

格差が政府への不信感に

 政府の経済政策が一向に豊かさにつながらない現実に業を煮やした人々は、政府への不信を強め、税金を払って財政を支えようという意欲を持ちにくくなる。

 そこに登場するのが、官僚たちを「ディープステート」(影の政府)と、激しく攻撃するトランプ氏のような政治家だ。


「ディープステート」を ディープステート の語で検索すると、


worldbeyondwar.org › shadow-government-controls-america-notes
影の政府によるアメリカの管理 - 注 - 戦争を超えた世界。 。 。

ディープステートは、アメリカの人々からの超国家主義(富裕層による政府)、政治的な機能不全および吸血鬼のような価値の抽出を表しています。 それは非常に深く根付いているので、それは変化に対してほとんど影響を受けませんが、それ自身の失敗(例えば、 ...


の一項がある。 クリックすると、


「Wold beyond war.org」
a global movement to end wars
https://worldbeyondwar.org/ja/shadow-government-controls-america-notes/

影の政府統制アメリカ - ノート
   読者サポート記事の記事
   Moyers&Company、2014のMike Lofgren著
   Russ Faure-Bracによるメモ2 / 25 / 2014



が表示される。 その記事は次の通りである。


1. 理論的に選挙によって支配されている施設として知られている目に見える政府があります。 正式な政治過程で表明されているように統治者の同意なしに米国を統治する、政府の要素と、最高レベルの金融および産業の一部との複合体であるTHE DEEP STATEもあります。 それは容赦なくしっかりと固定されていて、共和党と民主党の窮地の上に自由に浮かんでいます。

1. それは、

  政府機関  防衛部  州部  国土安全保障  CIA  ジャスティス部
  財務部  外国情報監視裁判所(司法)  いくつかの重要な連邦裁判所
  議会の指導者  国防情報委員会の何人かのメンバー  「民間企業」
  最高機密の許可を持つ854,000契約担当者
  政府機関に転向した、または転職した企業幹部
  ホワイトハウスアドバイザー  企業のロビイスト
  政治機械に現金を供給するウォール街  タンクエキスパートと思う
  シリコンバレーの企業

1. 深い州は「ワシントン合意」を信じています:経済の脱工業化、アウトソーシング、民営化、規制緩和、労働の商品化、そしてアメリカの例外主義(強制外交で世界中で活動する権利と義務)そして文明化された行動の国際的な規範を無視すること)

1. ディープステートは、アメリカの人々からの超国家主義(富裕層による政府)、政治的な機能不全および吸血鬼のような価値の抽出を表しています。 それは非常に深く根付いているので、それは変化に対してほとんど影響を受けませんが、それ自身の失敗(例えば、イラク、アフガニスタン、リビア、シリア爆弾へのかゆみ)から学ぶことはできません。

1. ディープステートは全知でも無敵でもありません。 テロの叫びへの対応の鈍化、中東での際限のないクワッドミアの公衆の疲れ、そして深遠国が必要とする静かで途切れのないキャッシュフローを制限しているティーパーティーによる予算削減への対応の衰退。

1. 歴史には、ソ連や東ドイツなどの強大な人々の変化をひっくり返す方法があります。 特大の権力を擁護している国家システムは、何も悪いことはしないと言ったり、(1)彼らの政治文化を実現することは化石化し、時代に適応することができないと言って反応した。

1. 国家の専門家は2つの野営地に分かれています:1)「衰退者」は改革不可能な壊れた機能不全のシステムを見ています、そして2)「改革者」は国家を好転させたいのです。
  ◾選挙の公的資金
  ◾政府機能のアウトソーシングの流れを逆転させる政府の「インソーシング」
  ◾財政的な操作よりも人間の労働を重視する税制
  ◾輸出投資資本よりも製造品の輸出を優先する貿易政策(?)。

1. 国家安全保障と企業の権力という双子の偶像は、私たちに何も提供するものがないという昔ながらの教義であることを私たちに伝えるために穏やかな自信を持っている図が必要です。 このように夢中にさせられて、人々自身は驚くべきスピード(急速に起こり得るボトムアップからの変化)でディープステートを解明するでしょう。



以上が「ディープステイト」の解説である。 田中宇がトランプを一定の距離を置いて評価している意味が納得できる。


 特に中央銀行は、金融政策という影響力のきわめて大きい政策手段を使い、浮かれ気味の景気を戒める「嫌われ役」でもある。政治家に直接の統制を受けないことは、公正な政策決定を導きやすい一方、世論からの支持基盤を欠く弱点ともなっている。

 「間抜け」「無知」「根性なし」「中国の習近平(シーチンピン)国家主席とどちらが悪いかわからないくらいの米国の敵」――。トランプ氏は18年夏以降、FRBのパウエル議長への中傷ともいえる批判を重ねるようになった。そんなトランプ氏への支持は底堅い。低成長の時代には、トランプ氏のような批判に世論が共鳴しやすいことも背景にある。

 パウエル氏はトランプ氏の発言に反応しない態度を貫き、中央銀行の独立を保つ、と強調してきた。ただ、18年末には19年中に2回の利上げを見込んでいたFRBは、19年に入り政策判断を緩和方向に急速に揺り戻し、結果的に3回の連続利下げを進めた。トランプ氏の言動が、利下げによる株価の上昇を望む金融市場の期待をあおり、結果的にトランプ氏の思惑に沿って動くようパウエル氏が追い込まれた面が強い。

 ボルカー氏とパウエル氏。就任時点で約40年を隔てた2人だが、一部の人々の短期的な利害ではなく、専門家集団として長期的な公益のためにどう働くかという中央銀行の課題は全く変わっていない。

 ボルカー氏は18年に出版した著書で、「米国内の根深い経済、社会、文化的な分断が、民主主義のプロセスに対する信頼をむしばんできた」として、民主主義社会の弱体化に強い懸念を表明。「洗練された技能と優れた判断力」を持つ官僚による「よき政府」の必要性を強調していた。さらに、12月8日に死去して数日後の12日には英紙フィナンシャル・タイムズが、ペーパーバック版に向けて準備されていた遺稿を掲載した。そこには、こう記されている。

 「金融政策は重要だ。しかし、それだけでは世界のリーダーシップは維持できない。我々は経済成長と平和な前途を支えるため、開かれた市場と、強い同盟国を必要とする。こうした建設的な米国の政策形成が、私の人生の大半を占めた。しかし、米国で今やそうしたものへの信頼は揺さぶられるばかりだ」

 ボルカー氏が「同盟国」として念頭に置いていた日本。課題の先進国として、今後どのような教訓を世界にもたらせるのだろうか。(ワシントン=青山直篤)


次は2面の記事である。

アメリカの経済から考えた行政方針を読み取ってみると、安倍総理がいつもやるお店開きの政治宣伝なのだが、世論誘導を狙ったメッキ演説で、「日米安保条約は不滅の柱」といいはじめた。 日米貿易交渉が始まっておよそまとまりついたとしてのメッセージ宣伝演説でお茶の間に紹介していた。 そして安保は平和にする政権担当者の責任だというのである。

軍事協定が平和への道のりだとは、とんでもない幼稚な考え方なのに。

2面(日米安保の現在地)1

「還暦」安保、直面する課題 駐留経費・防衛協力

   2020年1月20日 5時00分
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14332724.html?ref=pcviewer

写真・図版 【画像】2020年・日米同盟の主な課題

 米軍への基地提供に加え、米国の日本防衛義務を盛り込んだ改定日米安全保障条約が締結されてから、19日で60年を迎えた。トランプ米大統領との関係や、米中大国間競争時代の中国への対応など、「還暦」の節目となる今年、日米同盟が直面する課題は少なくない。

 「日米安保条約は不滅の柱。アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」

 安倍晋三首相は19日、日米安保条約60年の記念行事で、こうあいさつした。

 一方、トランプ米大統領は18日に発表した声明で、条約が果たしてきた役割をたたえつつ、「我々の相互安全保障への日本の貢献が、今後拡大し続けると確信している」と言及した。トランプ氏はかねて、日米安保条約について「不公平だ」と訴えてきた。

     *

 今年焦点となるのが、米軍駐留経費だ。現在の負担額を定めた協定は来年3月で期限切れとなるため、日米は今春から交渉を始める。

 「韓国は(米国の)同盟国であって扶養家族ではない」。米国務、国防両長官は16日、米ウォールストリート・ジャーナル紙への連名の寄稿で、米軍駐留経費負担交渉が難航する韓国に、強烈な不満を示した。

 米側は、日本にも大幅増額を要求する構えをみせる。日本側は、同盟は米軍の世界戦略にも貢献しているとし、過大な要求を牽制(けんせい)する方針だが、交渉は難航必至だ。

     *

 今春には中国の習近平(シーチンピン)国家主席が来日する予定だ。経済・軍事・技術で大きく台頭し、米国をも脅かす存在となった中国に、日本がどう接するかも焦点だ。

 日本の貿易相手国トップは中国で、経済的な結びつきも無視できない。米国内には安倍首相の対応が「中国に甘い」との批判もくすぶっており、日中首脳会談の行方も注目だ。

     *

 日米の防衛協力強化を進めてきた安倍政権下で、次の課題として浮上しているのが、日本が専守防衛の「盾」の役割を果たし、他国への攻撃という「矛」は米国が担う関係の変化だ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国による最新鋭の中距離弾道ミサイルや極超音速ミサイルの開発・配備が進み、日本も「矛」の役割の一部を担うべきだとの議論が、日米間で出始めている。

 また、米ロによる中距離核戦力(INF)全廃条約の失効を受け、米軍は陸上配備型の中距離弾道・巡航ミサイルのアジア配備を模索しており、日米の交渉が始まるかも注目だ。(編集委員・佐藤武嗣)

2面(日米安保の現在地)2

米政権「敵対国より同盟国に圧力」

   藤原帰一・東大教授
   2020年1月20日 5時00分
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14332724.html?ref=pcviewer

 トランプ米政権は、なぜ同盟国を軽視するのか。日米同盟はどんな事態に直面するのか。国際政治学者の藤原帰一東大教授に聞いた。

■力関係に差「脅せば譲歩」

 ――米国の国際社会での影響力をどう見ますか。

 「国際機構や条約の多くは、米国が主導して作ったものだ。それを自国の利益にならないから脱退するぞといった主張は驚きで、いぶかしい。貿易や軍事でなぜ米国が負担を負わねばならないのかという議論はかねてあったが、同盟国が米国の軍事力を利用するばかりで、米国の利益にならない、と公言する米政権が登場したのは初めてだ」

 ――トランプ大統領は日米安保条約を「不公平」と公言します。なぜ同盟国に厳しい態度をとるのでしょう。

 「脅せば譲歩するからだ。米国と同盟国の間には明らかに力の差がある。米政権は日本だけでなく、韓国や北大西洋条約機構(NATO)諸国にも軍事力を提供するのだからコストを払えと圧力をかけている」

 「敵対する国より、同盟国への圧力の方が容易なのは自明だ。トランプ氏のように上下関係しかない世界では、ボスの言うことは絶対だ。トランプ氏と親密な関係を結ぶということは、反対せずに平伏するだけだ」

 ――安倍首相の米国へのアプローチをどう評価しますか。

 「安倍首相はトランプ氏に正面から反対せず、独自の努力は行なった。米国が抜けた後も環太平洋経済連携協定(TPP)や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を進め、多国間の通商体制を、中国の習近平(シーチンピン)国家主席を誘い込みながら支えようとしている。トランプ氏の表立った反発もこれまで(には)ない」

 「だが、安全保障問題はそれでは済まないだろう。駐留米軍経費負担の交渉が今年あるが、深刻だ。日本の負担額をさらに増やして、駐留米軍の経費だけではなく『日本の安全確保の対価を払え』という話になると、同盟維持のコストは飛躍的に増大する」

■秩序維持、日本は米に促せ

 ――中国の台頭をどのように見ていますか。

 「中国が米国に代わる経済力を手にする可能性はある。だが、中国が米国に代わる役割を国際関係で果たしつつあるかといえば、そうではない。屈辱の時代を脱した中国が、これまで認められなかった権益を実現させることが目的だろう」

 「一方で、国際的なルールに基づく秩序づくりに協力している場面もある。米中の貿易問題では、中国はほかの国を巻き込んだ方が得策とみて、日本との関係を重視している」

 ――米中の大国間競争のなかで、日本はどうすべきだと考えますか。

 「米国は経済的にも軍事的にも依然大国だ。問題は米国が、自国の大きな負担の下での秩序維持から降りようとしていることだ。日本としては、その役割を引き続き担ってくれと米国に促すことだ」

 「一方で米国が経済で中国を抑え込むと日本経済も打撃を受ける。軍事では米国に中国と対抗してもらい、経済では米国、中国という二つのリスクをヘッジするため、日本は多国間秩序を強化していくべきだ」

    *

 ふじわら・きいち 1956年生まれ(28才の差=今63才)。東京大教授、同大未来ビジョン研究センター長。専門は国際政治学、比較政治学。

 01 21 (火) 日米安保の岐路に立って     マスコミへの声援

昨日に続いて、朝日の第一面は 『「疑惑国会」開幕』 大太の文字だ。

明らかになってきたアメリカの対日姿勢、それに毅然として反論の姿勢を持ち続けてほしいマスコミ、その意味で力強い声援を送りたい。

それを今日は大事だからここへ取り上げておきたい。 次のとおりである。

第1面記事

     「疑惑国会」開幕 
                  首相、「桜」・IR・閣僚辞任に触れず     -
                  五輪・パラ、何度も言及 施政方針

   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334441.html?ref=pcviewer

【画像】衆院本会議で演説をする安倍晋三首相=20日午後2時22分、杉本康弘撮影

 通常国会が20日、開会した。安倍晋三首相が「公私混同」と批判を受けている「桜を見る会」問題や政権が推進してきたカジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件など「疑惑国会」の様相を呈する中でスタートした。

 首相は20日に衆参両院の本会議で施政方針演説に立った。

 桜を見る会やIR汚職事件、首相が任命した元閣僚の辞任については一切、触れずじまいだったのと対照的に、今年開催される東京五輪・パラリンピックには繰り返し言及。「日本全体が力を合わせて、世界中に感動を与える最高の大会とする」と強調し、「国民一丸となって、新しい時代へと、共に踏み出していこう」と呼びかけた。

 しかし、与党内からは続発する問題を危惧する声もあがっている

 公明党の山口那津男代表は20日の参院議員総会で「国会のスタートは波乱含みだ」と指摘。桜を見る会について「国民は十分な説明が尽くされていないと感じている」、IRの汚職事件についても「国民の厳しい視線を感じざるを得ない」と発言した。

 この日、公職選挙法違反の疑惑が報じられた自民党の菅原一秀・前経済産業相、公選法違反容疑で事務所が家宅捜索を受けた河井案里・参院議員、河井克行・前法相も国会に登院した。いずれの議員も議員辞職を否定しつつ、詳しい説明をしようとはしなかった。

 朝日新聞社が昨年12月に実施した世論調査では、内閣支持率が38%で不支持率は42%。1年ぶりに不支持率が支持率を上回った。自民党総裁の任期は2021年9月で、衆院議員の任期は同年10月。通常国会の展開次第では、政権は求心力を失い、首相が衆院解散に踏み切るかどうかの判断にも影響する可能性がある。

 一方、立憲民主党や国民民主党などは昨年の臨時国会に続いて「統一会派」で臨む。立憲の枝野幸男代表は20日、「国会論戦を通じて、政権と社会の行き詰まりを明らかにしていく」と語った。(安倍龍太郎)

 ▼2面=疑惑に沈黙、4面=ファクトチェック、5面=首相演説全文、12面=社説、26面=被災地では

 ■施政方針演説(骨子)

  ・東京五輪・パラリンピックを最高の大会とする
  ・福島の本格的な復興・再生、東北復興の総仕上げに、全力で取り組む
  ・防災・減災、国土強靱(きょうじん)化を進める
  ・年金、医療、介護全般にわたる改革を進める
  ・戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する
  ・韓国は、元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国
  ・新時代の成熟した日中関係を構築する
  ・国のかたちを語るのは憲法。どのような国を目指すのか。
    その案を示すのは、国会議員の責任ではないか

2面=疑惑に沈黙 (時時刻刻)
疑惑、沈黙の首相 幕引き図る姿勢、露骨 通常国会
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334353.html

 相次いだ疑惑をどう説明するのか。国民から厳しい目が注がれる中、通常国会が開会した。ところが、首相は施政方針演説で一切触れず、渦中の議員たちも「捜査中」と口をつぐんだ。野党だけでなく与党内からも批判の声があがり、「疑惑国会」が幕を開けた。▼1面参照

 政権に不利な話題には一切触れない――。衆参それぞれ約40分ずつ行った首相の施政方針演説で浮かび上がったのは、首相のそうした姿勢だった。

 首相は、夏の東京五輪・パラリンピックや憲法改正に絡む部分では「新しい時代を切り拓(ひら)く」「世界の真ん中で輝く日本」などと高らかに語る一方、政権の負の側面である「桜を見る会」の問題や、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件などには言及しなかった。

 IRについては、独立性の高い管理委員会のもとで整備に取り組むと事業の継続を宣言。参院本会議では野党席から「逮捕者が出ても何も言わないのか」とのヤジが飛んだ。

 1年前の施政方針演説では、首相は統計不正について「国民の皆様におわび申し上げる」と謝罪した。しかし今年は、桜を見る会は「本年は中止し、予算計上していない」、IR汚職は「捜査中の個別事案」(いずれも西村明宏官房副長官)との理由から首相は言及しなかったのだという。

 政府は国会開会直前の17日、桜を見る会の招待者名簿の違法な管理などをめぐり、内閣府の歴代人事課長6人を厳重注意処分とした。指摘されているのは首相による公的行事の「私物化」だが、首相官邸幹部は「一番の問題は公文書管理の甘さだ」と主張。官僚の処分だけで幕引きを図ろうとする姿勢が、いよいよ露骨になっている。

 15日には広島地検が、官邸が主導して昨夏の参院選に擁立した河井案里参院議員の陣営に対する公職選挙法違反容疑で、案里氏や夫で前法相の克行衆院議員の関係先を捜索した。通常国会は「疑惑国会」の様相を帯びるが、首相と同様に、疑惑に関係する議員らも詳細な説明を拒み続ける。

 案里氏は20日午前、黒のスーツで記者団の前に立ったが「刑事事件になったので捜査に影響を及ぼさないことが一番」。克行氏も「捜査に支障を来してはならないので控える」。

 昨年10月に政治とカネの問題で経済産業相を辞任した菅原一秀衆院議員は、3カ月ぶりに記者団の取材に応じた。だが、告発されたことを理由に「当局から要請があれば真摯(しんし)に対応したい」と繰り返した。

 説明責任に背を向ける首相の姿勢に、ある副大臣は漏らす。「やましいことがないなら堂々と説明すればいい。それだけ敏感な話題ということか」(二階堂友紀、吉川真布)

■「実績」自賛、与党にも冷ややかな声

 通常国会は首相にとって、長期政権の総仕上げにふさわしい成果も問われる舞台となる。

 首相は演説で「7年間の外交実績」を自賛し「戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する。その正念場となる1年だ」と主張。計10回も「新しい時代」と繰り返し、改革姿勢を強調した。だが、党内からは「教科書通りの内容で、周りは冷めた気持ちで聞いていた。突っ込まれないようにという典型的な守りの演説だ」(麻生派議員)といった見方も上がった。

 首相は、最近の国会演説と同様、最後に憲法改正を取り上げ「国のかたちを語るもの。それは憲法。案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないか」と声を張り上げた。

 ただ、議場の空気は置かれた環境の厳しさを表していた。不祥事や疑念への説明を避けたまま改憲論議を促す首相の姿勢に、野党は批判を強める一方だ。公明党の山口那津男代表は演説後、記者団に「従来までの訴えと比べると、抑制的に現実的に一般論を述べられた」と、性急な改憲論議から一歩距離を置いた。自民幹部も「今国会で改憲論議が進展することはないだろう」と漏らす。

 来年9月の首相の党総裁任期が徐々に近づく中、今国会の論戦は「ポスト安倍」レースの行方にも影響する。首相の求心力が、その後の展開にも関わるからだ。この日の首相の演説をどう受け止めたか。ポスト安倍候補の言葉には、首相との距離感や立ち位置の違いがにじんだ。

 首相が路線継承を期待する岸田文雄政調会長は、東京五輪・パラリンピックの成功を強調した点を挙げ、「首相の強い思いがにじんだ演説ではなかったか。(自らも)歴史的な事業の成功に向け努力したい」と述べた。その上で、桜を見る会などの疑惑について「政治の信頼回復に向けて丁寧に説明していくことが大事では」と付言した。

 一方、首相と疎遠な石破茂元幹事長は疑惑に触れなかった演説について、「自分であれば違う判断をする」と指摘。今後の論戦の行方をめぐりこう皮肉った。

 「質問をかわすような答弁をした時には、国民の批判は非常に高くなることはよくご認識だと思う」(河合達郎)

■野党、統一会派で追及

 立憲民主党や国民民主党、社民党など野党は、昨年後半の臨時国会と同様、衆参両院で統一会派を組んで論戦に臨む。衆院120人、参院61人の勢力で、政権を徹底追及する。

 20日の衆院本会議の直前にあった統一会派の会合は、立憲と国民の控室を隔てる壁が取り外された大型の控室で初めて開かれた。立憲の安住淳国会対策委員長は、「桜を見る会」をめぐり違法な扱いが明るみに出た公文書管理の問題を引き合いに「立法府に身を置くものとして正念場の国会だ」と強調。野党間の合流協議が国会開会前に決着しなかったことを踏まえ、「油断せず職責を果たしたい」とも述べ、結束の必要性を訴えた。

 立憲や国民など野党は20日、IR事業の汚職事件を受け、「カジノ廃止法案」を衆院に共同提出。カジノをめぐる利権の構造の有無などもただす。「桜を見る会」や閣僚辞任をめぐる安倍首相の任命責任にも照準を合わせ、攻勢を強める考えだ。立憲の枝野幸男代表は同党の会合で「日本の新しい政治の第一歩を踏み出したという評価をしてもらえる1年にするため、全力を挙げて戦っていこう」と決意を語った。(今野忍)

4面=ファクトチェック
「税収は過去最高」まだ見通し 新規国債、決算ベースで増加も 施政方針演説
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334384.html?ref=pcviewer

【画像】新規国債発行額、減少続きではない

 ▼1面参照

 ■安倍晋三首相 「来年度予算の税収は過去最高となりました。公債発行は8年連続での減額であります」(20日、国会での施政方針演説)

■〈△〉説明不足

 「アベノミクス」や財政再建の成果を強調するあまり、誤解が生じかねない説明となっている。

 通常国会で審議される2020年度の当初予算案での税収見通しは、63・5兆円。政府は過去最高と説明しているが、あくまで現段階での政府による「見通し」に過ぎない。「過去最高となりました」と過去形で誇るのは言い過ぎだろう。

 税収を見通すことは難しい。19年度予算も、当初予算段階では過去最高となる62・5兆円の税収を見込んでいた。安倍首相は昨年の施政方針演説で、「来年度(19年度)予算における国の税収は過去最高、62兆円を超えています」と述べていた。だが、実際は、法人税などの落ち込みが響き、今国会の冒頭で審議される19年度補正予算案での税収見通しは、60・2兆円に下方修正された。過去最高を達成できない見込みだ。

 新規国債発行額に触れた後段も、不正確だ。

 毎年度の当初予算案を比べれば、8年連続の減少だが、収支が確定する決算ベースで見ると、決して「減少続き」ではない。16年度は、年度の途中に国債を追加発行。最終的な決算ベースでは、15年度の新規発行額を超えた。19年度の補正予算案でも赤字国債の追加発行を盛り込んでおり、18年度の発行額を超える見込みだ。経済対策の「大盤振る舞い」がその理由だ。

 同じ日の西村康稔経済再生相の経済演説では、新規国債発行額の減少に触れる際、「当初予算ベースでは」と言及している。前提条件に触れない首相演説では、財政再建が毎年確実に進んでいるかのように受け止められる恐れがある。

 20年度当初予算案では、「8年連続減少」を演出するため、無理をしている面もある。財政法上は半分以上を借金の返済にあてなくてはいけない18年度に余ったお金を特例法で全額、財源に繰り入れるなどした。(木村和規)

 ※ファクトチェック=政治家らの発言内容を確認し、その信憑性(しんぴょうせい)を評価するジャーナリズムの手法

渦中の議員は
渦中の議員は 弁護士と相談のうえ、適切な時期に…/捜査中、差し控えさせて
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334385.html?ref=pcviewer

 通常国会が20日召集され、公職選挙法違反をめぐる疑惑や、カジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件との関わりが疑われている議員らが登院した。渦中の議員は疑惑について、捜査中などを理由にこの日も内容は語らなかった。国会期間中を通じ、説明責任を問われていくことになる。

 昨年の参院選で陣営が選挙違反をした疑いで事務所が家宅捜索を受けた自民党の河井案里参院議員は同日、関口昌一参院議員会長らに国会内で現状を報告。報告後、案里氏は記者団に「私自身が今回の事案を十分に把握しきれていない。不十分な説明しかできず、世間の皆様も納得していらっしゃらないだろうと心苦しく思っている」と語った。

 昨年10月に法相を辞任した夫の克行衆院議員も国会内での取材に「政治不信を結果として招いていること、国会議員・法務大臣という要職にあった人間としておわびしたい」と頭を深く下げた。ただ、両氏ともに捜査中を理由に、詳細については語らなかった。

 秘書が選挙区の有権者に香典を渡していた疑惑などで昨年10月に経済産業相を辞任した菅原一秀氏は、約3カ月ぶりに報道陣の前に姿を現した。ただ、公選法違反容疑で告発されていることを理由に「適切な時期をみてしっかり説明させていただく」と述べるにとどめた。

 IR事業参入をめぐり、東京地検から任意の聴取を受けた議員6人は、いずれも関与を強く否定。事務所の家宅捜索も受けた白須賀貴樹氏は記者団の問いかけに、一連の疑惑を「(収賄容疑で逮捕された)秋元司先生の事件」と表現。「コメントを控える」と繰り返した。

■疑惑を持たれている議員の20日のコメント

 ◆公職選挙法違反疑惑

 <河井克行氏(法相を辞任)> 刑事事件として捜査が始まっており、影響を与えるようなことは慎むよう弁護士から言われているので、私の所感、考えを述べることは控えたいと存じます。捜査には全面的に協力させていただきます

 <河井案里氏(事務所に家宅捜索)> 刑事事件になりましたので、捜査に影響が及ぼされないことが一番。捜査の中で事実関係が明らかになっていくと存じます。一区切りがついたところでしっかりと皆様に説明をさせていただきたいと思います

 <菅原一秀氏(経済産業相を辞任)> 告発状が出されたと報道で聞いております。当局から要請があればしっかりお応えして、協力したいと考えております。その上で、弁護士と相談のうえ適切な時期に全容の説明をしていきたいと考えています

 ◆IR事業参入を巡る疑惑

 <白須賀貴樹氏(事務所に家宅捜索)> 秋元司先生の事件として今、捜査中の段階ですのでコメントは一切差し控えさせていただきたい

 <船橋利実氏(地検が任意聴取)> コメントを何度か出していますから、それをご覧下さい。それ以上、ありません

 <中村裕之氏(地検が任意聴取)> 献金は収支報告書にも記載し、適正に処理している。全容が解明され、潔白が証明されることを願っている(秘書を通じてのコメント)

 <岩屋毅氏(地検が任意聴取)> コメントはありません

 <宮崎政久氏(地検が任意聴取)> 金銭の授受は一切ありません。不正・不適切な行為も一切ありません。青天のへきれきです

 <下地幹郎氏(現金受領認める)> 僕がIRに関係していないことははっきりしている。国会でも疑惑の姿が出てくれば、もっともっと僕が関係していないことが分かると思う

 ※下地氏(維新を除名)以外は自民所属

5面=首相演説全文
安倍首相の施政方針演説(全文)
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334339.html?ref=pcviewer

この資料は5面一杯のものですから、URLを開いて読むこと。

12面=社説 その1
通常国会開幕 「説明放棄」は許されぬ
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334326.html?ref=pcviewer

 長期政権のゆがみを正し、政治や行政への信頼を回復するとともに、政策論議を深める。立法府がその本分を果たせるか、まさに正念場である。

 150日間にわたる通常国会が始まった。しかし、安倍首相のきのうの施政方針演説からは、そんな危機感はみじんも感じられなかった。

 東京五輪・パラリンピックの話題を随所に織り込み、「新しい時代」へ向けた「夢」や「希望」を語る一方で、「桜を見る会」やカジノ汚職、辞任閣僚の公職選挙法違反疑惑など、政権のうみと言うべき昨年来の問題には一切触れなかった。

 桜を見る会をめぐっては、首相による私物化への批判にとどまらず、招待者名簿の扱いが公文書管理法に違反していたことを政府自身が認めた。「国民共有の知的資源」とされる公文書のずさんな管理は、民主主義の土台を揺るがす。真摯(しんし)な反省や再発防止への決意すら語ろうとしないのはどうしたことか。

 カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入疑惑は、内閣府元副大臣の秋元司衆院議員が収賄容疑で逮捕されたほか、中国企業側が他の衆院議員5人にも現金を配ったと供述するなど、広がりを見せている。

 首相は演説で、問題などないかのように「厳正かつ公平・公正な審査を行いながら、複合観光施設の整備に取り組む」とさらりと述べた。政権が成長戦略の柱に掲げるIRの正当性が根底から問われているというのに、これで国民が納得すると思っているのだろうか。

 説明責任をないがしろにしているのは、首相だけではない。

 昨秋、秘書が有権者に香典を渡していた菅原一秀前経済産業相と、参院議員の妻に公選法違反疑惑が持ち上がった河井克行前法相が、ともに辞任に追い込まれた。両氏と河井氏の妻の案里議員はその後、国会を欠席したまま雲隠れを続けていた。

 先週になって、公選法違反容疑で関係先の家宅捜索を受けた河井夫妻が、菅原氏も国会初日のきのう、ようやく記者団の取材に応じたが、いずれも捜査への支障を理由に事実関係に関する説明を拒んだ。これまで機会はいくらでもあったのに、捜査は口実としか受け取れない。

 昨年の通常国会では、参院選への悪影響を懸念した政権の論戦回避が極まり、首相が出席した予算委員会の開会時間は第2次政権下で最短となった。秋の臨時国会も、桜を見る会の追及を振り切るため、政権は幕引きを急いだ。

 あすの衆院の代表質問から国会の論戦が始まる。政権の「説明放棄」を許さぬ、野党の力量が試される。

12面=社説 その2
財政の健全化 目標実現の具体策を
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334327.html?ref=pcviewer

 安倍首相の言葉からは、財政健全化を達成しようという本気度が伝わってこない。目標が形骸化しているのではないか。

 政府は、その指標となる基礎的財政収支(PB)の黒字化を2025年度に実現するとしている。

 第2次政権になってから7回の施政方針演説で欠かさず「財政再建」に触れたように、きのうの演説でも首相は「引き続き、25年度のPB黒字化を目指す」と宣言した。

 ところが、政府が先週公表した29年度までの新たな試算でも、期間中の黒字化は見えてこない。実質の経済成長率が第2次政権下での平均に近い1%程度を前提とした場合、25年度は国と地方を合わせて8・2兆円の赤字だ。

 実質で2%程度、名目で3%程度を上回る高めの成長率でも、達成は27年度と見込む。

 黒字化は、政策経費を借金に頼らずにその年度の税収などでまかなえることを意味し、政策の持続可能性を高められる。近い将来、高齢化で医療などの社会保障費が急増することや、高度成長期に建設したインフラの更新費が伸びることも見越して、設定された。

 しかし、目標は先送りの連続だ。いまの政権も発足時は20年度をめざしていたが、2年前に25年度へと先送りした。

 これに先立ち、政府の調査会が財政健全化を総括し、遅れている理由に「税収の伸びが想定より緩やか」「消費税率引き上げの延期」「補正予算の編成」の三つを挙げた。そのうえで、「経済変動の中にあっても、目標の実現を確実にする仕組みを構築すべきだ」と指摘した。

 首相自身が「負担を次の世代へ先送りすることのないよう」に、財政健全化を進めると公言してきた。ならば、先の総括を実行へと移すべきだ。

 「経済再生なくして財政健全化なし」という政権の方針は、どこまで結果を残してきたのか。経済を上向かせる努力は欠かせないが、経済再生を名目に組んだ補正予算が、不要不急の歳出を増やしていないか。高い成長を前提に、税収を大きく見積もっていないか。不断に検証する必要がある。

 実績に近い成長率をもとに、経済や財政を見通す。新たに取り組む政策があるのなら、優先順位が低い政策は絞りこむ。目標を確実に実現する具体策を示すことこそ、首相の責任だ。

 この国会では、今年度も編成された補正予算案を、いち早く成立させる方針という。「経済対策」としてあれこれ盛り込まれており、精査が必要だ。与野党は成立ありきではなく、審議を尽くさねばならない。

26面=被災地では
首相演説「五輪」を連発  被災地「復興と無理に結びつけてる」
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S14334485.html?ref=pcviewer

 20日に開会した国会で、安倍晋三首相の施政方針演説は、東京五輪・パラリンピックを意識した内容だった。聞く人の心にどう届いたのか。▼1面参照

 《力強く復興しつつある被災地の姿を、(中略)実感していただきたい》

 約40分間の演説で「オリンピック(五輪)」「パラリンピック」と計14回、口にした安倍首相。冒頭で強調したのが復興五輪の成功だった。

 聖火リレーのスタート地点となるスポーツ施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)は、2011年の東京電力福島第一原発事故後は対応拠点として使われ、昨年4月に全面再開した。小学生のサッカー大会が開かれるなどかつての姿を取り戻しつつあるが、12月には施設近くで高い放射線量の場所が見つかった。

 楢葉町の住職早川篤雄さん(80)は「元の姿は取り戻せていない。五輪の開催は歓迎だが、『復興』と『五輪』を無理やり結びつけている」と批判した。聖火ランナーを務める広野町のNPO法人理事長、西本由美子さん(66)は「第一原発の廃炉など重い課題もある。良い面と悪い面を平等に伝えて」と注文をつけた。

 《人類は4年ごとに夢をみる》

 演説の結びに引用したのは、1964年東京五輪の記録映画のラストシーンの言葉だった。記録映画のカメラマンを務めた映像制作会社長、山口益夫さん(87)は「半世紀前の言葉が使われ、うれしかった。(今夏の五輪・パラは)若者たちがめったにできない経験をする機会になれば」と話す。

 《新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか》

 安倍首相は今こそ改憲の議論を、と呼びかけた。憲法学者の南野森(しげる)・九州大教授は「五輪とからめて唐突に憲法の話が出ているが、同列に語られるべきものではない」と指摘。「情緒的にあおっているが、社会保障や悪化した日韓関係、『桜を見る会』の公文書問題は語られておらず、自分の過去の政策について反省が欠けている」と話した。