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続折々の記 2017⑥
【心に浮かぶよしなしごと】
【 01 】07/24~健康長寿 【 02 】07/25~健康長寿 【 03 】07/26~トインビー
【 04 】07/26~マハティール 【 05 】不死食事 【 06 】不死食事
【 07 】不死食事 【 08 】09/07~大腸がん闘病記 その一 【 09 】09/09~大腸がん闘病記 その二
折々の記 2017⑥
【 01 】~【 09 】内容一覧【01】 【02】 05/03 安倍首相 憲法改正し2020年施行目指す意向を表明
05/03 キッシンジャー 日本
・ ヘンリー・キッシンジャー momo.748.htmlで扱った資料
【03】 【04】 【05】 【06】 【07】 【08】 【09】
【 01 】07/24
07/24 面舵いっぱい「健康長寿」へ No.2 年寄の軌道修正
07 24 (月) 面舵いっぱい「健康長寿」へ 年寄の軌道修正
ニュースされている新聞紙上の言葉も放送界のいろいろのニュースも事実のことでしょう。 社会生活それ自身は玉石混交善悪入り乱れた事実が展開されているのだから、全体の動静を判断して自分の認識をもとうとしても判断の流れも常に軌道修正をしなくてはならない。
流れに掉させば流されると「草枕」に出ていたが、水の流れもいろいろとあるに違いはない。 棹さしたところの流れだけでは全体の流れを判断できないのは当然の論理である。 ことに政治の動きには飽きあきしてきている。 戦争を卒業しようとする根本の心掛けが全く見えてこない。 家庭の平和を実現する大前提なくして、地域の人々の生活も、村や県の人々の生活も、国や世界の人々の生活も、議論の方向が決まるはずがない。
しばらくは、この方面への意識を離れ「一人ひとりの健康長寿のためにはなにをしていったらいいか」へ意識を集中していきたい。
◆◆ No.59 かえるの会 2017/7/4 7:30(あれあいセンター) 資料
No.1
1 資料の はじめに 1枚 (3p)
2 大隅典子の仙台通信
井村先生の『健康長寿のための医学』 3枚 (4p)
3 ライフコース・ヘルスケア(検索名) 2枚 (7p)
4 特集 先制医療が目指すもの 井村裕夫氏 7枚 (9p)
5 胎生期から乳幼児期における栄養環境と
成長後の生活習慣病発症のリスク 8枚 (16p)
6 人口構造の変化(日本の人口ビラミッドの変遷) 2枚 (24p)
7 都道府県の平均寿命ランキング 3枚 (26p)
8 都道府県別の健康寿命ランキング 3枚 (29p)
9 都道府県の死亡率ランキング 3枚 (32p)
No.2
10 内閣府
少子化の現状
1 出生数、出生率の推移 2枚 (35p)
2 総人口の減少と人口構造の変化 1枚 (37p)
3 婚姻・出産等の現状 2枚 (38p)
4 結婚、出産、子育てをめぐる状況 6枚 (40p)
5 諸外国との国際比較 3枚 (46p)
11 『健康長寿のための医学』終章
健康長寿社会を実現するために
一人ひとりが主役の未来 2枚 (49p)
12 健康長寿ネット フレイルとは 2枚 (51p)
13 健康長寿ネット フレイルの原因 4枚 (53p)
14 健康長寿ネット フレイルの診断 7枚 (57p)
15 健康長寿ネット フレイルの治療 5枚 (64p)
No.3
16 健康長寿ネット フレイルのケア 3枚 (69p)
17 健康長寿ネット フレイルの予防 3枚 (69p)
18 大隅典子の仙台通信
脳と脂質:母親の偏った多価不飽和脂肪酸摂取は
仔マウスの脳形成不全と過剰な不安を引き起こす 5枚 (72〜76p)
10 内閣府
少子化の現状
1 出生数、出生率の推移 2枚 (35p)
2 総人口の減少と人口構造の変化 1枚 (37p)
3 婚姻・出産等の現状 2枚 (38p)
4 結婚、出産、子育てをめぐる状況 6枚 (40p)
5 諸外国との国際比較 3枚 (46p)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2014/26webgaiyoh/html/gb1_s1-1.html
1.出生数、出生率の推移 (出生数と合計特殊出生率の推移)
我が国の年間の出生数は、第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約200万人であったが、1975(昭和50)年に200万人を割り込み、それ以降、毎年減少し続けた。1984(昭和59)年には150万人を割り込み、1991(平成3)年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向となっている。
合計特殊出生率をみると、第1次ベビーブーム期には4.3を超えていたが、1950(昭和25)年以降急激に低下した。その後、第2次ベビーブーム期を含め、ほぼ2.1台で推移していたが、1975年に2.0を下回ってから再び低下傾向となった。1989(平成元)年にはそれまで最低であった1966(昭和41)年(丙午:ひのえうま)の数値を下回る1.57を記録し、さらに、2005(平成17)年には過去最低である1.26まで落ち込んだ。
なお、2012年は、1.41(前年比0.02ポイント上昇)となっており微増傾向ではあるものの、欧米諸国と比較するとなお低い水準にとどまっている。
2.総人口の減少と人口構造の変化 (50年後の我が国の人口)
「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」では、一般に将来推計人口として利用されている中位推計(出生中位・死亡中位)では、合計特殊出生率は、2010(平成22)年の実績値1.39から2014(平成26)年まで、概ね1.39で推移し、その後2024(平成36)年の1.33に至るまで緩やかに低下し、以後やや上昇して2030(平成42)年の1.34を経て、2060(平成72)年には1.35になると仮定している。このような仮定に基づいて試算すると、我が国の総人口は、2010年の1億2,806万人から長期の人口減少過程に入り、2030年の1億1,662万人を経て、2048(平成60)年には1億人を割って9,913万人となり、50年後の2060年には8,674万人になることが見込まれている。
第1-1-1図 出生数及び合計特殊出生率の年次推移
3.婚姻・出産等の状況 (未婚化・非婚化の進行)
2010(平成22)年の総務省「国勢調査」によると、25~39歳の未婚率は男女ともに引き続き上昇している。男性では、25~29歳で71.8%、30~34歳で47.3%、35歳~39歳で35.6%、女性では、25~29歳で60.3%、30~34歳で34.5%、35~39歳で23.1%となっている。さらに生涯未婚率を30年前と比較すると、男性は2.6%(1980(昭和55)年)から20.1%(2010年)、女性は4.5%(1980年)から10.6%(2010年)へ上昇している。
(晩婚化、晩産化の進行)
日本人の平均初婚年齢は、2012年で、夫が30.8歳(対前年比0.1歳上昇)、妻が29.2歳(同0.2歳上昇)と上昇傾向を続けており、結婚年齢が高くなる晩婚化が進行している。1980年には、夫が27.8歳、妻が25.2歳であったので、ほぼ30年間で、夫は3.0歳、妻は4.0歳、平均初婚年齢が上昇していることになる。
さらに、出生したときの母親の平均年齢をみると、2012(平成24)年の場合、第1子が30.3歳、第2子が32.1歳、第3子が33.3歳であり、前年に続いて第1子出産年齢が30歳を超えた。
第1-1-2図 年齢別未婚率の推移(男性)
第1-1-3図 年齢別未婚率の推移(女性)
第1-1-4図 生涯未婚率の年次推移
第1-1-5図 平均初婚年齢と母親の平均出生時年齢の年次推移
4.結婚、出産、子育てをめぐる状況 (結婚に対する意識)
第1回21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)及び第11回21世紀成年者縦断調査(平成14年成年者)について、両調査の第1回調査時点の20代既卒の独身男女の結婚意欲がある者の割合を性、正規・非正規別にみると、10年前に比べ女性は「正規」「非正規」ともに増加している。
第1-1-6図 性、正規・非正規別にみた20代独身者の結婚意欲ありの者の割合
(出産に対する意識)
国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国調査(夫婦調査)」(2011年)によると、夫婦にたずねた理想的な子どもの数(平均理想子ども数)は、前回の第13回調査に引き続き低下し、調査開始以降最も低い2.42人となった。また、夫婦が実際に持つつもりの子どもの数(平均予定子ども数)も、2.1を下回り、2.07人となっている。
理想の子ども数を持たない理由として、最も多いのが、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(60.4%)であり、年代別にみると、若い世代ほど割合が高くなる傾向がみられる。次に多いのが、「高年齢で生むのはいやだから」(35.1%)であり、年代別にみると、年代が高くなるほど、割合が高くなる傾向がみられる。
第1-1-7図 調査別にみた、平均理想子ども数と平均予定子ども数の推移
第1-1-8図 妻の年齢別にみた、理想の子ども数を持たない理由 (若い世代などの所得の伸び悩み)
子育て世代の所得分布をみると、20代では、1997(平成9)年には年収が300万円台の雇用者の割合が突出して最も多く、2012(平成24)年でも最も多いが、200万円台前半の雇用者とほぼ同じ割合となっている。また、30代では、1997年には年収が500~699万円の雇用者の割合が最も多かったが、2012年には300万円台の雇用者が最も多くなっている。
第1-1-9図 子育て世代の所得分布
(就労形態などによる家族形成状況の違い)
非典型雇用者の有配偶率は低く、30~34歳の男性においては、非典型雇用の人の有配偶率は正社員の人の半分以下となっているなど、就労形態の違いにより家庭を持てる割合が大きく異なっていることがうかがえる。
第1-1-10図 就労形態別配偶者のいる割合(男性) (依然として厳しい女性の就労継続)
女性の就労をめぐる環境をみると、出産1年前に仕事をしていた平成22年出生児の母のうち、出産前後に仕事をやめた母の割合は54.1%となっており、平成13年出生児の母の67.4%から13.3ポイント減少している。
一方、女性の就労意向については、パートや正社員など就労形態は異なるものの、何らかの形で働きたいという者の割合は86.0%となっている。
第1-1-11図 きょうだい数1人(本人のみ)の母の出産1年前の就業状況別にみた出産半年後の就業状況
第1-1-12図 妻の就労意向について
第1-1-13図 妊娠・出産前後に退職した理由 (子育て世代の男性の長時間労働)
男性について週60時間以上の長時間労働をしている人は、どの年代においても、2005(平成17)年以降ほぼ減少傾向にある。しかしながら、子育て期にある30代男性については、17.6%が週60時間以上の就業となっており、他の年代に比べ最も高い水準となっている。
第1-1-14図 年齢別就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合
5.諸外国との国際比較 (諸外国における出生率の状況)
主な国(アメリカ、フランス、スウェーデン、英国、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった。その後、1970(昭和45)年から1980(昭和55)年頃にかけて、全体として低下傾向となったが、1990(平成2)年頃からは、出生率の動きは国によって特有の動きをみせ、ここ数年では回復する国もみられるようになってきている。
我が国は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。家族関係社会支出の対GDP比をみると、我が国は、1.35%(2011年度)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べておよそ4割程度となっている。
第1-1-15図 主な国の合計特殊出生率の動き(欧米)
第1-1-16図 各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較
11 井村裕夫著『健康長寿のための医学』終章
健康長寿社会を実現するために 一人ひとりが主役の未来 2枚 (49p)
後半途中より抜き書き
http://park6.wakwak.com/~y_shimo/momo.671.html
健康長寿社会を実現するためには、医師、薬剤師、看護師などの医療提供者のみでなく、社会のあらゆるセクターの人々が、意識を変えていかなければならない。 医学の歴史が始まってからずっと、大部分の医師は人々が病気になるのを待って対応してきた。 また現在の健康保険制度も、病気の予防のために使用することは認めてこなかった。 そして一般の人々もまた、何らかの異常がない限り、医療機関は近づきたくない存在であった。
これに対してライフコース・ヘルスケアを実現するためには、医療提供者は従来のような受け身の姿勢ではなく、より積極的にコミュニティの中に入っていって、健康長寿の推進と必要に応じた先制医療の実現のために、先導的な役割を果たさなければならない。 そのためには、政府、自治体、企業、さまざまな団体(NPO法人など)、そして最終的には個人が、この動きに参加してみずからの健康を守り、健康な長寿を達成するために努力することが求められる。
すべての人が、病気のことは医療機関任せという姿勢を捨て、自覚と責任感を持って、この社会をあげてのパブリック・ヘルス実現のための体制に参加していくようにしない限り、健康長寿社会は実現できないし、私たちが直面しようとしている極端な少子高齢社会の困難な問題を乗り切ることはできないであろう。
政府に求められることは、疾患の治療から予防へと、より大きく舵(カジ)を切っていくことである。 現在、予防はすべて個人の負担であるが、医療提供者の積極的な予防あるいは先制医療への参加をうながすためには、予防に対する健康保険の適用を段階的に考えていくべきである。 予防が実現できれば、大変大きな医療費の削減が期待できる。 またあらゆる手段を用いて、予防の重要性を理解させる活動をするべきである。
さらに高齢者がフレイルから要介護状態に陥らないようにするためには、適切な食事と運動が必要である。 もちろん医療提供者側の協力が不可欠であるが、これを実現する主役は個人であり、コミュニティである。 自治体は市民のそうした活動を支援する体制を作るべきであろう。
こうした目標を達成するために、健康教育が何よりも必要であることは、くりかえし述べたとおりである。 小学校から大学まで、それぞれの発達の程度に応じて健康教育を実施しなければならないし、社会においてもさまざまな機会を通じて健康教育の普及に努めねばならない。 健康長寿社会は一人ひとりが主役であるという自覚と努力がない限り、実現できないものである。(以上で終章が終わる)
『フレイル』下記のURLから印刷可能
健康長寿ネット
健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。
12 健康長寿ネット フレイルとは 2枚 (51p)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/about.html
フレイルとは
フレイルとは、体がストレスに弱くなっている状態のことを指しますが、早く介入をすれば元に戻る可能性があります。高齢者のフレイルは、生活の質を落とすだけでなく、さまざまな合併症も引き起こす危険があります。フレイルの基準やフレイル状態になるとどのようなことが起きるかについてわかりやすくまとめます。
フレイルとは
フレイルとは、海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」に対する日本語訳です。「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などになります。日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。
フレイルは、厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」1)とされており、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。多くの方は、フレイルを経て要介護状態へ進むと考えられていますが、高齢者においては特にフレイルが発症しやすいことがわかっています。
高齢者が増えている現代社会において、フレイルに早く気付き、正しく介入(治療や予防)することが大切です。
フレイルの基準
フレイルの基準には、さまざまなものがありますがFriedが提唱したものが採用されていることが多いです。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。
1.体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
2.疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
3.歩行速度の低下
4.握力の低下
5.身体活動量の低下
フレイルには、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的な変化や社会的なものも含まれます。 次に、フレイル状態に至るとどのようなことが起きるか説明します。
フレイル状態に至るとどうなるか
フレイルの状態になると、死亡率の上昇や身体能力の低下が起きます。また、何らかの病気にかかりやすくなったり、入院するなど、ストレスに弱い状態になっています。例えば健常な人が風邪をひいても、体の怠さや発熱を自覚するものの数日すれば治ります。
しかし、フレイルの状態になっていると風邪をこじらせて肺炎を発症したり、怠さのために転倒して打撲や骨折をする可能性があります。また、入院すると環境の変化に対応できずに、一時的に自分がどこにいるのかわからなくなったり、自分の感情をコントロールできなくなることもあります。転倒による打撲や骨折、病気による入院をきっかけにフレイルから寝たきりになってしまうことがあります。
フレイルの状態に、家族や医療者が早く気付き対応することができれば、フレイルの状態から健常に近い状態へ改善したり、要介護状態に至る可能性を減らせる可能性があります。
具体的なフレイルへの介入方法に関しては、「フレイルの予防」の項目で説明します。
参考文献
1.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業) 総括研究報告書 後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究 研究代表者 鈴木隆雄
13 健康長寿ネット フレイルの原因 4枚 (53p)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/genin.html
フレイルと低栄養
高齢化が進む日本で、75歳以上の後期高齢者が要介護状態となる原因に、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)や転倒、サルコペニア※1、尿失禁らと並んでフレイルがあげられます。フレイルとフレイルの原因でもあるサルコペニアは低栄養との関連が強く1)、厚生労働省は平成28年7月20日、「平成28年度のモデル事業について 高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進(フレイル対策)」の中で、高齢期の疾病予防・介護予防等の推進として、フレイルに対するモデル事業の概要を示しています。
具体的な事業内容としては、低栄養、過体重に対する栄養相談や指導、摂食等の口腔機能低下に関する相談や指導、外出困難者への訪問歯科健診、服用する薬が多い場合の服薬相談や指導など、高齢者の課題に応じ、地域包括支援センター、保健センター、訪問看護ステーション、診療所・病院、歯科医院、薬局などから管理栄養士や歯科衛生士、薬剤師、保健師等が相談や訪問指導を実施します(図1)。
図1:高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進を示すフローチャート
図1:高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進(フレイル対策)のための事業イメージ2 )
フレイル対策が重視されるのは、フレイルが要介護状態になる危険が高い状態であると同時に、適切な介入や支援を行うことで健康を維持して、自立した生活を送れる状態でもあるからです。
※1 サルコペニア:
サルコペニアとは、加齢に伴う筋力の減少、又は老化に伴う筋肉量の減少のことを指します
フレイルの原因
フレイルは、以下のような加齢に伴う心身の変化と社会的、環境的な要因が合わさることにより起こります。
加齢に伴う活動量の低下と社会交流機会の減少
身体機能の低下(歩行スピードの低下)
筋力の低下
認知機能の低下
易疲労性※2や活力の低下
慢性的な管理が必要な疾患(呼吸器病、心血管疾患、抑うつ症状、貧血)にかかっていること
体重減少
低栄養
収入・教育歴・家族構成など
※2 易疲労性:
易疲労性とは、すぐに疲れてしまうこと、疲れやすいこと
フレイルの進行
加齢に伴う変化や慢性的な疾患によってサルコペニアとなり、筋肉量・筋力の減少によって基礎代謝量が低下すると、1日のエネルギー消費量が減って、食欲が低下し、食事の摂取量が減少して低栄養となります。
また、サルコペニアは、筋力の低下、易疲労性や活力の低下を引き起こし、身体機能の低下につながります。認知機能の低下など精神的な面の低下も加わると、活動量が低下し、社会的な側面も障害され、日常生活に支障をきたすようになります。
日常生活に介護が必要な状態となるとますますエネルギー消費量は低下し、食事量が低下して低栄養となる悪循環を繰り返しながら、フレイルは進行していきます(図2)。
図2:活動量の低下、食事量の低下、低栄養から悪循環に陥るフレイルサイクルを示した図
図2:フレイルサイクル4)改変
フレイルは、低栄養、転倒を繰り返すこと、嚥下・摂食機能の低下などの身体的側面と、認知機能の低下や意欲や判断力の低下、抑うつなどの精神的側面、家に閉じこもりがちとなって他者との交流の機会が減少する社会的側面とが相互に影響し合っており、身体的・精神的・社会的な多側面に総合的に働きかける必要があります(図3)。
図3:フレイルは身体的側面、精神的側面、社会的側面が相互に影響していることを示す図
図3:フレイルの多面性
中高年者では過栄養、肥満からなるメタボリックシンドロームが糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こし、死亡リスクを高くするため、生活習慣病の予防が大切となりますが、後期高齢者ではフレイルの原因となる身体機能や認知機能の低下に関連する低栄養への対策が重要となってきます。
厚生労働省は、メタボ対策からフレイル対応への円滑な移行が必要3)としており、生活習慣病の予防よりも生活習慣病の重症化の予防とフレイルの進行の予防が重要視されています。
参考文献
1.「日本人の食事摂取基準(2015年度)」策定検討会審議会資料 対象特性:高齢者 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
2.高齢者の保健事業のあり方検討ワーキンググループ審議会資料 資料5 平成28年度のモデル事業について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
3.在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ審議会資料 資料2-3 高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
4.4. Xue QL, Bandeen-Roche K, Varadhan R, et al. Initial manifestations of frailty criteria and thedevelopment of frailty phenotype in the Women's Health and Aging Study II. J Gerontol ABiol Sci Med Sci 2008;63:984-90. (外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
14 健康長寿ネット フレイルの診断 7枚 (57p)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/shindan.html
フレイルの診断
フレイルの統一された評価基準はなく、下記のFriedらの評価基準が一般的に用いられています。
1.体重減少
2.主観的疲労感
3.日常生活活動量の減少
4.身体能力(歩行速度)の減弱
5.筋力(握力)の低下
以上の5つの項目のうち、3項目以上該当した場合をフレイル、1~2項目該当した場合を前フレイル(プレフレイル)、該当項目が0の場合は健常となります1)。
日本では、2016年度に国立長寿医療研究センターで行われたフレイルの進行に関わる要因に関する研究によるフレイル評価基準は以下の表1のとおりです。
表1の5つの項目のうち、3つ以上該当する場合はフレイル、1~2つ該当する場合はプレフレイル、いずれにも該当しない場合は健常または頑健とする 2)。
表1:フレイル評価基準 2)
評価項目 評価基準 1.体重減少 「6か月間で2~3kg以上の(意図しない)体重減少がありまたか?」に「はい」と回答した場合 2.倦怠感 「(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする」に「はい」と回答した場合 3.活動量 「軽い運動・体操(農作業も含む)を1週間に何日くらいしてますか?」及び「定期的な運動・スポーツ(農作業を含む)を1週間に何日くらいしてますか?」の2つ問いのいずれにも「運動・体操はしていない」と回答した場合 4.握力 利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満の場合 5.通常歩行速度 (測定区間の前後に1mの助走路を設け、測定区間定5mの時を計測する)1m/秒未満の場合
フレイルの診断方法
2006年から近い将来、フレイルとなる高齢者を早期に発見して支援を行う介護支援事業の生活機能評価でフレイルの身体的、精神的、社会的側面を含む項目をチェックできる図1のような基本チェックリストが使用されています。
図1:厚生労働省の介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)にある基本チェックリスト
図1:基本チェックリスト 3)
生活機能評価は、基本チェックリストと生活機能チェック(問診、身体測定、理学的検査、血圧測定)、生活機能検査(身体検査、循環器検査、貧血検査、血液化学検査)から構成されています。
基本チェックリストでは、以下の1から4までのいずれかに該当する場合に介護支援事業の対象の候補となります3)。
1. 1 から20 までの項目のうち10 項目以上に該当する者
2. 6 から10 までの5 項目のうち3 項目以上に該当する者
3. 11 及び12 の2 項目すべてに該当する者
4. 13 から15 までの3 項目のうち2 項目以上に該当する者
フレイルのセルフチェック方法
フレイルの早期発見、早期介入のために、市民が主体となってフレイル予防に取り組んでいくために、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授によって、「フレイルチェック」が考案されました。
この市民による市民のための「フレイルチェック」は大きく分けて、簡易チェックと総合チェック(深掘りチェック)の2つで構成されています。
簡易チェック
最初の「簡易チェック」は、指で輪っかをつくり、ふくらはぎを囲んでチェックする「指輪っかテスト」(図2)と、身体的、精神的、社会的の3つの面(栄養、歯科口腔、運動、社会性、うつ、等)を評価できる11の質問からなる「イレブンチェック」(図3)で構成されています。
図2:フレイル簡易チェックの指輪っかテストを示す図 指で輪っかをつくりふくらはぎを囲んでフレイルかどうかチェックする。隙間ができる場合はフレイルの疑いがある。
図2:指輪っかテスト 4)
図3:イレブンチェック表。11項目の質問に対し「はい」「いいえ」で回答し、「はい」の場合は青色、「いいえ」の場合は赤色のシールを表に貼り付ける
図3:イレブンチェック 4)
1. ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心がけていますか
2. 野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか
3. 「さきいか」、「たくあん」くらいの固さの食品を普通に噛み切れますか
4. お茶や汁物でむせることがありますか
5. 1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか
6. 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか
7. ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか
8. 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
9. 1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしますか
10. 自分が活気に溢れていると思いますか
11. 何よりまず、物忘れが気になりますか
総合チェック
身体面や口腔機能、社会面、精神面を詳しく評価できる「総合チェック(深掘りチェック)」(図4)があります4)。
図4:栄養とからだの健康チェック(総合チェックシート)表 指輪っかテスト、イレブンチェックの他に口腔・運動・社会性についてチェックする。
図4:栄養とからだの健康チェック4)
フレイルチェック事業の全国展開
2015年度より、フレイルチェック事業が神奈川県茅ケ崎市で開始され、2016年度には神奈川県小田原市や厚木市、そして福岡県飯塚市などで開始されております。養成研修を受けた市民ボランティアのフレイルサポーターが主体となって、フレイルチェックを実施して、市民参加者の評価を行います。 そして、このフレイルチェックを軸として、半年単位で定期的にフォローアップしていき、その間の期間は市民自身が継続性のある本人に見合ったフレイル対策を取り組むこととなっております。市民が自ら身体面、精神面、社会面の多面性のあるフレイルに関心を持ち、予防の意識を持って健康的なまちづくりに取り組むことを目指しており、今後は全国的に展開されていく予定です。
図5:地域サロンにおけるフレイルチェック実施風景写真
図5:地域サロンにおけるフレイルチェック実施風景 引用:4)
フレイルに関するお問い合わせ先
フレイルに関してのお問い合わせは東京大学高齢社会総合研究機構までお願いいたします。
東京大学高齢社会総合研究機構
E-mail: info@iog.u-tokyo.ac.jp
健康長寿ネットで生活機能をチェック
健康長寿ネットの「介護予防のための生活機能チェック」で基本チェックリストを使って生活機能をチェックすることができます。運動機能・栄養・口腔機能・生活機能、・閉じこもり・認知症・うつのこれらの機能や症状についてチェックできます。
リンク 「介護予防のための生活機能チェック」
参考文献
1. 「日本人の食事摂取基準(2015年度)」策定検討会審議会資料 参考資料1 対象特性:高齢者 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
2. 長寿医療研究開発費 平成26年度 総括報告書 フレイルの進行に関わる要因に関する研究(25-11) 国立長寿医療研究センター(PDF)(外部サイト)(新しいウィンドウが開きます)
3. 介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウィンドウが開きます)
4. 平成27年度 老人保健健康増進事業等補助金老人保健健康増進等事業 口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案と検証(地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業 平成28年3月 東京大学 高齢社会総合研究機構 主任研究者 飯島 勝矢 (PDF)(外部サイト)(新しいウィンドウが開きます)
15 健康長寿ネット フレイルの治療 5枚 (64p)
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/frailty/chiryo.html
フレイルの治療法
フレイルの主な原因にサルコペニアと低栄養があげられます。サルコペニア対策には骨格筋の形成・維持に必要なタンパク質を十分に摂取する必要があります。特に骨格筋の基となり、タンパク質の合成を促し、分解を抑制して筋肉の形成を促す必須アミノ酸のロイシンが注目されています。
レジスタンス運動※も筋肉でのタンパク合成を促します。筋肉をつくるために最も効果的なのはレジスタンス運動の約1時間後にアミノ酸を摂取することであると言われています1)。
レジスタンス運動とアミノ酸摂取とを組み合わせた治療効果の有効性を検証する研究は日本や海外でも多く行われており、アミノ酸を経口補給することで歩行能力や筋力の向上に有効という報告2)や、ロイシンが多く含まれたアミノ酸サプリメントと運動を組み合わせた介入試験で筋力増強、筋肉量や歩行速度の強化に有効3)であることが示されています。
筋肉をつくるためにタンパク質の合成を促すには十分なエネルギー摂取も必要です。フレイル対策には筋肉の他に骨の維持も重要であり、カルシウムやビタミンDも積極に摂りたい栄養素です。
フレイル対策は、筋肉や骨をつくるための栄養素を食事から摂取することと、レジスタンス運動を行って筋肉の合成や骨密度の維持を図ることが重要です。
※ レジスタンス運動: 筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動1)
フレイルの進行を改善する方法
フレイルは多面的な要因が絡み合っているため、目立って表に見えている一つの症状だけで判断するのでは、全体に起こっている問題を捉えきれない恐れがあります。身体機能、認知機能、バランス機能、生活活動、精神面、栄養状態、周囲の環境など、色々な角度から対象者を捉え、総合的な機能評価を実施し、対象者を総合的に把握することが大切です。総合的な対象者の評価には、高齢者総合機能評価(CGA)が推奨されます。
CGAの実施で、現状の判断と今後の方針が立てられると、疾患の管理や具体的な生活での支援・介助を行うことができます。必要に応じて、専門医による診察、栄養士による栄養指導、理学療法士・作業療法士によるリハビリテーション、薬剤師による服薬指導、看護師による訪問看護、ヘルパーによる訪問介護など、他職種との連携によって予防を意識した包括的なケアを行うことが大切です。
高齢者自身で改善できる方法
バランスの良い食事
フレイル対策には、規則正しく、バランスの良い食事を摂ることを心掛けましょう。
1日の適切なエネルギー量の食事を1日3回に分けて摂ること
主食、主菜(肉・魚・卵・大豆製品)、副菜(野菜・キノコ・海藻類)、牛乳・乳製品、
果物をバランスよく摂ること
筋肉の素となるタンパク質(肉・魚・大豆製品)と骨を強くするカルシウム(牛乳・乳製品・
小魚)を含む食品を積極的に摂ること
十分な水分を摂ること
表1:高齢者(70歳以上)の推定エネルギー必要量表
区分 男性 女性 身体活動レベル Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ エネルギー(kcal/日) 1,850 2,200 2,500 1,500 1,750 2,000
表2:身体活動レベル
身体活動
レベル日常生活の内容 Ⅰ(低い) 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 Ⅱ(ふつう) 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、
あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合Ⅲ(高い) 移動や立位の多い仕事への従事者、あるいは、スポーツ等余暇
における活発な運動習慣を持っている場合
表3:高齢者(70歳以上)のたんぱく質の食事摂取基準
男性 女性 推定平均
必要量
(g/日)推奨量
(g/日)目標量
(中央値)
(%エネルギー)推定平均
必要量
(g/日)推奨量
(g/日)目標量
(中央値)
(%エネルギー)50 60 13~20
(16.5)40 50 13~20
(16.5)
おすすめのレジスタンス運動
自分の体重を抵抗として行えるレジスタンス運動は自宅で簡単に行うことができます。
スクワット(図1)
図1:おすすめのレジスタンス運動のスクワットの仕方を説明するイラスト
1.両足を肩幅に開いて立ち、椅子の背や机などを持ちます。
2.背中が丸くなったり、踵が浮いたりしないように、お尻を下にまっすぐ落とします。
3.太腿の前に力が入っていることを意識しながらゆっくり10回行います。
上体起こし(図2)
図2:おすすめのレジスタンス運動の上体起こしの仕方を説明するイラスト
1. 両膝を立てて仰向けに寝ます。両手は頭の後ろで組みます。
2. おへそを覗き込むように頭を持ち上げます。
3. お腹に力が入っていることを意識しながら、ゆっくり10回繰り返します。
ランジ(図3)
図3:おすすめのレジスタンス運動のランジの仕方を説明するイラスト
1. 片足を前に出し、膝を曲げて体重をかけていきます。
2. 1の状態からゆっくり元に戻します。足を入れ替えて交互に10回行います。
<B>参考文献
1. レジスタンス運動 e-ヘルスネット情報提供(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
2. 「「日本人の食事摂取基準(2015年度)」策定検討会審議会資料 対象特性:高齢者 3-3-5.たんぱく質並びにアミノ酸の介入研究 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
3. 「日本人の食事摂取基準(2015年度)」策定検討会審議会資料 日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
4. 「日本人の食事摂取基準(2015年度)」策定検討会審議会資料各論「エネルギー」 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
5. 平成27年度 老人保健健康増進事業等補助金老人保健健康増進等事業 口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案(地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業 事業実施報告書 平成28年3月東京大学 高齢社会総合研究機構主任研究者 飯島勝矢 フレイル予防パンフレット(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)