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続折々の記 2019②
【心に浮かぶよしなしごと】

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                春はあけぼの
                奢れる人も久からず

【 02 】03/29~

 03 29 (金) 春はあけぼの    素敵な感覚

平安時代中期に中宮定子に仕えた女房、清少納言により執筆されたと伝わる随筆。
生没年不詳で紫式部の源氏物語と並び称される平安時代中期の女流作家、清少納言により執筆されたと伝わる随筆。 鴨長明の『方丈記』、吉田兼好の『徒然草』と並んで日本三大随筆と称される。

これは平安文化、というより日本文化の花が開いた代表作品の一つと言ってもよい。 嫋(タオ)やかな感性、品格をもつ文章表現だと思う。 彼女の才能が優れ、秀(ヒイ)でていたことに驚きを覚えるし、その母親の子育てに感心する。 こんにちの文才ある人をもってしても、その発想と表現法には遠く及ばないと思われる。

初めの季節を現した作品をあげてみよう。
春は、あけぼの。 やうやう白くなりゆく山ぎは 少し明りて 紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は、夜。 月の頃はさらなり。 闇もなほ。 螢の多く飛び違ひたる。 また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。 雨など降るもをかし。

秋は、夕暮。 夕日のさして、山の端(ハ)いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。 まいて雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。 日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。

冬は、つとめて。 雪の降りたるはいふべきにもあらず。 霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎ熾して、炭もて渡るも、いとつきづきし。 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。
(現代訳)

春は、あけぼの(夜がほのぼのと明ける頃)の頃がよい。 だんだんに白くなっていく山際が、少し明るくなり、紫がかった雲が細くたなびいているのがよい。

夏は、夜がよい。 満月の時期はなおさらだ。 闇夜もなおよい。 蛍が多く飛びかっているのがよい。 一方、ただひとつふたつなどと、かすかに光ながら蛍が飛んでいくのも面白い。 雨など降るのも趣がある。

秋は、夕暮れの時刻がよい。 夕日が差して、山の端がとても近く見えているところに、からすが寝どころへ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽などと、飛び急ぐ様子さえしみじみとものを感じさせる。 ましてや雁などが連なって飛んでいるのが小さく見えている様は、とても趣深い。 日が沈みきって、風の音、虫の音など、聞こえてくるさまは、またいいようがない。

冬は、朝早い頃がよい。 雪の降ったのはいうまでもない。 霜のとても白いのも、またそうでなくても、とても寒いのに、火を急いでつけて、炭をもって通ってい くのも、とても似つかわしい。 昼になって、寒いのがゆるくなってくる頃には、火桶の火も、白く灰が多くなってしまい、よい感じがしない。

ここへきて、朝明けが日ごとに早まっている感じがする。 ああ、春が来た!

エンドウの苗を見ても、遅ればせに植えつけたニンニクの苗も、朝の見回りで見ていると日毎に伸びている。ああ、春が来たんだと肌身に感じる。

寒い!! ああ、冬なんだ!! それが季節が移り替わってくると、草や木は素早く季節の変化を感じとって目覚めてくるのがはっきりわかる。

この季節の変化を人よりも早く、フクジュソウやフキノトウはそれを感じて目を覚ましている。 桜前線の放送を聞いて私たちは春がきたことを知る。

清少納言の平安時代には、電気もラジオもテレビも無かった。 それで季節の変化については現代人より敏感にそれを感じていたに違いない。 百姓の人たちにしても季節の変化についての表現はいろいろと言い伝えられていた。

最近のテレビ「ボーっと生きてんじゃねーよ!」という、チコちゃんに叱られる!番組がある。 将(マサ)にそれは、お笑い番組ではなく自然との取り組み方の警告として受け止めていい内容でもある。 チコちゃんとは学びによって知恵を身につけたひとの総称だろう。

三月もいよいよ終わる。 季節の変化に応じて花見にかこつけて同級会や朋友会が計画されている。 九十台になっての顔出しはえらくなってきたけれど、人々のの交友を思うと礼を欠かないように努めたいと思う。 つまるところ感謝の一語に尽きる。 みんなに迷惑をかけてきたことを謝りたい。 生きるということは自分の足跡を残すことになるし、それは誰にとってもぶんをのこすことでもあり、感謝が土台になっている。

清少納言の表現には感謝する。


 03 30 (土) 奢れる人も久からず     森友問題

遂に地検は口を開いた !!

平家物語にいう「奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし」、諸行無常とはよく言ったものだと思う。

祇園精舎の鐘の声、どんな鐘の声だったのか?
   <https://pdmagazine.jp/works/heike-monogatari/>

諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽

諸行無常 いろはにほへどちりぬるを
是生滅法 わがよたれぞつねならむ
生滅滅已 うゐのおくやまけふこえて
寂滅為楽 あさきゆめみじゑひもせず

諸行は無常であってこれは生滅の法であり、生滅の法は苦である。
この生と滅とを滅しおわって、生なく滅なきを寂滅とす。
寂滅は即ち涅槃、是れ楽なり。

生滅の法は苦であるとされているが、生滅するから苦なのではない。生滅する存在であるにもかかわらず、それを常住なものであると観るから苦が生じるのである。この点を忘れてはならないとするのが仏教の基本的立場である。

鐘の音とは、諸行無常 ~~ 是生滅法 ~~ 生滅滅已 ~~ 寂滅為楽 ~~ と響いて聞こえるのだろう。

平家物語の冒頭部分は次のようである。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。

【現代語訳】
祇園精舎の鐘の音は、「諸行無常」、つまりこの世のすべては絶えず変化していくものだという響きが含まれている。沙羅双樹の花の色は、どんなに勢い盛んな者も必ず衰えるという道理を示している。世に栄えて得意になっている者がいても、その栄華は長く続くものではなく、まるで覚めやすい春の夜の夢のようだ。勢いが盛んな者も結局は滅亡してしまうような、風の前の塵と同じである。


今朝郵便箱から新聞を取り出し、開いて目に飛び込んだのは

 佐川氏ら10人、不起訴不当 森友問題、検察審が議決 の記事だった。

どうしてこんなことを記録しようとしたのか? それは、長い間 忖度(ソンタク) という言葉とその内容にウンザリしてきたからだ。

日本の政治の世界に安倍総理を取り巻く空気には、この忖度のかすみが色濃く取巻いてきた。 国民の多くはそうした感情を受けていたに違いない。

歴史の動きを見ていると、安倍総理の祖父は極東軍事裁判ではA級戦犯に登録されたが、東条英機の絞首刑の翌日投獄を解除されています。

ことの真実の経緯は五里霧中に迷うようで判明しない。

例えば、次のブログを見てみると彼に同調する立場と反発する立場を見ることになる。

安倍首相の「安保法制」妄執の背景に、敬愛する祖父・岸信介がA級戦犯を逃れるため米国と交わした裏取引きが!
A級戦犯岸信介の正体(3)
岸信介(wikipedia)


2019年3月30日05時00分

佐川氏ら10人、不起訴不当
   森友問題、検察審が議決 大阪地検、再捜査へ
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S13956938.html?ref=pcviewer

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却や財務省関連文書の改ざんなどをめぐる問題で、大阪第一検察審査会は29日、有印公文書変造・同行使などの容疑で告発され、大阪地検特捜部が不起訴処分とした佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長(61)ら計38人のうち、元局長ら計10人について「不起訴不当」とする議決書を公表した。議決は15日付。▼2面=改ざん「言語道断」、37面=議決要旨、39面=申立人ら評価

 検審は議決で「本件のように社会的に注目を集めた事件には、公開の法廷で起訴する意義は大きいのではないかと考える」とした。地検は議決を受けて再捜査、元局長らを罪に問えるか改めて判断する。だが、強制起訴につながる「起訴相当」議決と異なり、再び不起訴とした場合は2度目の審査は行われず、捜査は終結する。

 不起訴不当とされたのは、国有地売却問題をめぐる背任容疑については、当時の財務省近畿財務局管財部次長と統括国有財産管理官、上席国有財産管理官、国土交通省大阪航空局職員の4人。公文書改ざん問題をめぐる有印公文書変造・同行使容疑などでは、佐川元局長、理財局の当時の次長、総務課長、国有財産企画課長、国有財産審理室長、近畿財務局管財部長の6人。

 財務省近畿財務局管財部次長らは、ごみの撤去費用8億円余りを値引きした1億3400万円で国有地を森友学園に売却して国に損害を与えたとして背任容疑で告発されたが、特捜部は「撤去費の算定は不適正とまでは言えず、故意に損害を与える目的があったとは認められない」として不起訴としていた。

 議決は撤去費用について「業者の見積もり費用ほどの工事が必要か検証がなされていない」と指摘。森友学園前理事長の籠池泰典被告(66)からのクレームにさらされていた統括国有財産管理官が自己保身のため、学園側の希望価格に近づけるために売却価格ありきで値引きし、国有地を売り払ってしまう方向に動いたと推認できるとして再捜査を求めた。

 佐川元局長らが国有地売却に関する決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏らの名前を削除するなどした有印公文書変造・同行使などの容疑では、特捜部は当初の文書から根幹が変わったとは認められないなどとしたが、「社会的常識を逸脱し、相当大幅な削除がなされたことにより、原本が証明していた内容が変わってしまった」と指摘。改ざんなどの指示を否定する元局長の供述には信用性がなく、責任は重大だとした。また議決は、財務省が廃棄した学園側との交渉記録について、「公用文書と認められない」とした検察の判断を否定。公用文書毀棄(きき)罪にあたる疑いがあるとして、佐川元局長らの不起訴を不当とした。(一色涼、多鹿ちなみ)

 ■<視点>検察の捜査不足、鋭く指摘

 佐川・財務省元理財局長らを不起訴とした特捜部の処分を「不当」だとした今回の議決は、検察の捜査不足を鋭く指摘した。

 弁護士や大学教授らが相次いで申し立てた審査を担当したのは、有権者からくじで選ばれた11人の市民たちだ。だが独自に調べることはほぼなく、主に検察側の証拠資料を根拠に議決を導かねばならない。

 議決書には起訴をうながすような厳しい言葉が並びつつも、判断材料が足りないことへのもどかしさが感じられる。

 たとえば国有地売却では、大幅に値引きされる根拠となったごみの撤去価格が妥当だったかは、検察の検証不足だと批判した。政治家らの働きかけの影響は、不起訴の証拠だけでは「判断しがたい」として再捜査を求めた。さらに、公文書改ざんは社会的常識を逸脱した行為だと断じて、特捜部と市民感覚の「ずれ」を浮き彫りにさせた。

 国民のものであるはずの国有地や公文書がどう扱われたのか。特捜部は審査員の過半数が検察の判断に「ノー」を突きつけたことで導かれた今回のメッセージを正面から受け止め、再捜査を尽くすべきだ。(一色涼)


漱石の「草枕」に、 “ 智に働けば 角が立つ。 に 棹させば流される。意地を通せば 窮屈だ ” とある。 俚諺にも“ 出る杭は打たれる ”とか“ 雉も鳴かずば撃たれまい ” ともいい、目立ち過ぎると非難の的になる。

杭はでずば朽ちる ともいう。 いずれにしても先に立つ者は、“みんなの為になる” 心がけが要諦になる。

国政の責任者はなにを屋台骨にしたらいいのか。 究極は、家庭の責任者は何を屋台骨にしたらいいのか。 それにつきる。

愛を中核とし、和の世界を求める…… やさしく言えば仲良く元気で生きる、それを大黒柱とすればいい。

間違っていたら直せばいい、誰がそれを気付かせるのか。 気のついた人が言えばいい。 その通りだ。

それでも直らないとき、諸行無常の世界しかない!!

  “ 散るさくら 残るさくらも 散る桜 ”

知の及ばざることにこだわらない !!  てんでんこの世界へ雄飛すればいい。




【追加記事】▼2面

(時時刻刻) 文書改ざん「言語道断」 市民感覚、検察捜査に不満 森友問題
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S13956951.html

 学校法人森友学園(大阪市)をめぐる一連の問題で、財務省幹部らを不起訴とした大阪地検特捜部の判断の一部に、検察審査会が待ったをかけた。決裁文書の改ざんを、「一般市民感覚からすると許されない」と、強く非難した。問題発覚から2年余り。地検は再捜査を迫られ、国会での追及も続く。▼1面参照

 ■8億円値引き「疑問残る」

 「検察官においてさらなる捜査を尽くし、再考を要請する」

 大阪第一検察審査会が29日公表した議決書には、背任や有印公文書変造・同行使容疑などで告発された当時の財務省幹部や近畿財務局職員ら38人全員を不起訴にした大阪地検特捜部の捜査への不満がにじんだ。

 近畿財務局職員らが大阪府豊中市の国有地を、地中ごみの撤去費約8億2千万円などを値引いて1億3400万円で森友学園に売却し、国に損害を与えたとされる背任容疑。国側や検察は、2016年3月に学園側から「ごみが見つかった」として10億円にのぼる損害賠償請求の可能性をちらつかされていたため、約8億円の値引きは損害とは言えないなどとしていた。

 しかし、検審の議決はこの見解を「相当疑問が残る」と指摘した。

 学園は前年にも国の費用負担で、地中のコンクリートがらなどを取り除く工事を実施。ここで、生活ごみを撤去対象としなかった職員の「判断ミス」が、学園側の賠償要求や大幅値引きにつながったとする見方を検審はとった。そのうえで、「自己の判断ミスによる責任追及から解放されたいとの強い思いで、学園が希望する価格に近づけるため、売却価格ありきで値引きする方向に動いたのではないか」と分析し、職権で審査した国土交通省大阪航空局の職員らも含めて、値引き額の上乗せなどに関与した周囲の職員らへの再捜査も尽くすよう求めた。

 議決は、政治家の秘書らからの陳情や問い合わせにも言及し、「何らかの便宜を図ったとうかがえる証拠は認めなかった」としたが、「不起訴の記録にある証拠だけでは影響の有無は判断しがたい」と述べ、審査の根拠となる証拠が不足していたことを示唆した。

 ごみ撤去費の根拠とされたごみの深さや量をめぐっては、業者が作成した報告書などに疑念が相次ぎ、国会でも追及が続いている。この点に関し、「十分な根拠が確認できなかった」とした会計検査院と同様、特捜部が「いずれも正確性に問題がある」とみていたのに、小学校建設を前提とした客観的な試算をするなどの捜査をしなかったと指摘した。

 ■佐川氏の供述「信用できない」

 一方、公文書改ざんと交渉記録の廃棄をめぐっては「市民の常識」から検察の判断に疑問を投げかけた。

 検察は文書改ざんにかかわった関係者を不起訴とした理由について「(改ざん後も)文書の効用を失ったとはいえない」とし、交渉記録の破棄は「公用文書と認められない」などとしていた。しかし検審は「いったん決裁を完了した文書を修正する場合は、再度決裁を得るのが社会的常識だ」と説明。「決裁を経た文書を改ざんする行為は、一般市民感覚からすると、いかなる理由があっても許されず、言語道断」との付言をつけている。

 佐川宣寿(のぶひさ)・財務省元理財局長は改ざんなどへの関与をめぐり、「指示はしていない」と供述したとみられる。しかし、検審は部下の供述などを根拠に「信用できない」と判断。「具体的な指示はなかった」などとした財務省の昨年6月の調査結果より踏み込んだ形だ。

 検察捜査の不起訴理由を次々と否定した市民の判断。審査を申し立てた阪口徳雄弁護士は今後、地検に起訴を求める申し入れを検討している。「これで終わりということにはまだならない」と力を込めた。(畑宗太郎)

 ■「起訴相当」出ず、検察に安堵も

 大阪地検は取材対応の窓口となる地検ナンバー2の次席検事は対応せず、小橋常和・特捜部長名で「適切に対応する」とのコメントを出すにとどめた。

 「市民の判断も、起訴すべきだとまでは踏み込めなかったということだ」。検察審査会の判断が「不起訴不当」にとどまったことに、ある検察幹部は胸をなで下ろした。

 検察がもっとも懸念していたのは、より厳しい「起訴相当」の判断が出ることだった。起訴相当の場合は大阪地検特捜部が再び不起訴処分を出しても、もう一度、検察審査会が起訴相当を議決すれば、強制的に起訴される。検察は1回目の議決が起訴相当であれば、強制起訴に至る可能性が高いとみていたが、その可能性はなくなった。

 法務省や検察内では、捜査を始めた当初から、文書改ざんについては、契約金額など本質部分は失われていないなどとして「佐川氏らの立件は困難だ」との慎重論が根強いままだ。今回の市民の判断を受け、ある幹部は「まだ国民の理解が得られていないことを重く受け止め、再捜査を尽くすしかない」と述べる。一方、別の幹部は「我々としては捜査は尽くされたと思っている。そのうえで、有罪の立証は難しいと判断している」と強調し、起訴に否定的な見方を示した。

 ■野党「国会で真相究明」

 「文書改ざんは重大な問題であるということに変わりはない。引き続き組織の立て直しをしっかりやっていく」。ある財務省幹部は検察審査会の議決を受けてこう語った。一方、別の幹部は「想定の範囲内。この社会の雰囲気の中で(すべてを)『不起訴相当』とはしないだろう」。

 検察審査会の判断を注視していた財務省。「起訴相当」ではなかったことに安堵(あんど)の声も広がる。省内からは「土地取引で職員が利益を得たわけではないし、文書改ざんでもパソコンの中まで調べた。再び捜査しても新しい事実が出てくることはないだろう」(幹部)という声も出ている。

 菅義偉官房長官は会見で「検察当局においては、検察審査会の議決の内容を踏まえて、適切に対処する」とだけ述べ、具体的な言及は避けた。

 一方、野党は、不起訴不当の議決を踏まえ、後半国会でも森友学園問題の全容解明に向けて政府を追及していく方針だ。

 立憲民主党の辻元清美国会対策委員長は29日、朝日新聞の取材に「これ(不起訴不当)を突破口にして、さらなる闇の解明をしてほしい。首相官邸の関与も含め、予算委員会の集中審議を求めていかなければならない」と強調。国民民主党の玉木雄一郎代表も訪問先の京都市で「多くの人がおかしいと思うことがねじ曲げられてきたということだ。国会で真相究明する責任が出てきた」と述べた。

 ◆キーワード

 <検察審査会> 検察官の不起訴処分が正しいかを審査する。有権者からくじで選ばれた11人の審査員で構成され、審査は非公開で行われる。6人以上が不起訴が妥当だとすれば「不起訴相当」、6人以上がさらに捜査が必要だとすれば「不起訴不当」に、8人以上が起訴すべきだとすれば「起訴相当」になる。不起訴不当の場合、検察官が再捜査し、起訴か不起訴を判断する。起訴相当の場合は、再捜査の結果、再び不起訴になっても2回目の審査が実施され、改めて8人以上が起訴すべきだとすれば強制的に起訴される仕組みだ。


【追加記事】▼37面

森友問題、検察審の議決(要旨)
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S13956877.html

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省関連文書の改ざんをめぐる問題で、大阪第一検察審査会が出した議決の要旨は以下の通り。(肩書は当時)▼1面参照

 【大幅な値引きで売却したことについて、背任罪の判断】

 検察官は、(値引きの根拠となった)廃棄物の撤去処理費用について、合理的で適正である数値を確定的に立証することは困難であるとし、業者による撤去処理費用の見積額も不合理とは言えないとした。

 しかし、業者の見積もり内容ほどの工事が必要か否かの検証がなされていない。利害関係のない他の建設業者などの意見を参考に、客観性のある試算を行うなど、さらに捜査を尽くすべきではないかと考える。

 近畿財務局統括国有財産管理官は、国に財産上の損害が生じると考えていなかったのであれば、幹部職員らに詳細を説明し、その判断を仰いでいたと考えられる。これをしていないのは、事実を隠さなければ、国に損害が発生するとして売り払いを止められるとの認識があったからではないかと思われる。

 同上席国有財産管理官についても、金額が適正な対価ではないと認識し、大阪航空局の担当者にも地下埋設物の撤去費の積算金額を上積みするよう指示するなどしていた。同管財部次長は統括のやることを理解、黙認していたとも疑う余地が残る。

 不起訴記録にある証拠のみでは、政治家らによる働きかけの影響の有無については判断しがたく、この点についても検察官は、さらに捜査を尽くすべきと考える。

 【決裁文書改ざんについて、有印公文書変造・同行使罪の判断】

 検察官は罪の成立のポイントである決裁文書の作成権限の有無について、容疑者らに権限が全くないとは言い切れないというあいまいな判断しかしていない。

 容疑者らの作成権限は別としても、いったん決裁した文書を修正する場合は、再度決裁を了するのが社会的常識と考えられる。

 今回は常識を逸脱した行為がされており、一部の文書については大幅な削除により、原本が証明していた内容が変わってしまったと評価できることから、変造であると言わざるを得ない。

 佐川宣寿・理財局長は同局のトップで、本件行為は自身の国会答弁に起因したものである。実質的な指揮命令権を有しており、部下の供述などからも、指示していないという本人の供述に信用性がない。

 理財局総務課長は、佐川局長に最も近い立場にあり、財務省理財局内及び近畿財務局に伝達する役目を担うなど、中核的役割を果たしており責任は重大だ。

 国有財産審理室長も近畿財務局に指示を行うとともに作業を進めるなど深い関与が認められ、責任は重大だ。

 【事案終了とみなし、学園側との応接記録を廃棄したことについて、公用文書毀棄(きき)罪の判断】

 国有地貸し付けから売却に至るまでのやりとりから考えると、売買契約終了をもって事案終了とはいえない。容疑者らが「事案終了にあたる」と考えていたとしても、公文書の保管は国民の知る権利に応える目的があることからして、国会審議などで応接記録の存否が問題となった時点で残っている以上は、公用文書に該当すると考える。

 佐川局長は、部下の供述などからしても、指示していないという本人の供述に信用性がない。仮に具体的な指示がなかったとしても、その責任は重大。理財局総務課長は中核的役割を果たしており、審理室長は深い関与が認められ、責任は重大。理財局の指示で作業していた職員は、命令に逆らえなかったのではないかと感じとれることから、その責任は問えない。


【追加記事】▼39面

「再捜査、地検に重い責任」 申立人ら評価「検察審、踏み込んだ」 森友問題、不起訴不当議決
   https://digital.asahi.com/articles/DA3S13956957.html

 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、財務官僚をいずれも不起訴処分とした大阪地検特捜部の判断に、大阪第一検察審査会は厳しい言葉で再考を求めた。不起訴に不服を申し立てた関係者からは支持する声が相次いだ。強制起訴につながる「起訴相当」とはならず、法廷での真相究明を求める声も出た。▼1面参照

 「検察の捜査がおかしいとはっきり述べている。予想を超えた、より踏み込んだ意見だ」。不服を申し立てた弁護士グループの一人、阪口徳雄弁護士は29日夕、大阪市北区で会見を開き、そう評価した。

 検審は議決理由で、財務省の文書改ざんや交渉記録の廃棄について、「いったん決裁を経た文書について事後的に改変を行ったことは社会的常識から逸脱した行為」とし、「一般市民感覚からするといかなる理由があっても許されることではない」と断じた。阪口弁護士は「起訴相当の議決に必要な8人の同意は得られなかったのだろうが、実質的には『起訴すべきだ』、『再捜査すべきだ』との内容だ」と語り、大阪地検には「再捜査をきちんとして、国民に報告すべき重い責任を負った」と注文を付けた。

 検審に申し立てた上脇博之(ひろし)・神戸学院大教授は、議決が「公開の法廷という場で事実関係を明らかにすべく公訴を提起する意義は大きい」と指摘した点について、「起訴相当に限りなく近い、不起訴不当だ」と受け止めた。検審は地中のごみの撤去費用について「さらに捜査を尽くすべきではないか」とし、政治家らの働きかけの影響は「本件不起訴記録にある証拠のみでは判断しがたい」とした。

 上脇教授は「検察に不信の目が向けられている。起訴しないという結論ありきの捜査で、事実認定やストーリーを組み立てていたことを検審は見抜いたのではないか」と話した。

 国有地売却問題を追及してきた木村真・大阪府豊中市議は売却をめぐる背任容疑で告発していた。「前向きな判断と思う半面、起訴相当ではなかったことは残念。一般的な市民感覚でいえば、起訴相当になると思っていた」と悔やんだ。

 背任や証拠隠滅の容疑で告発していた醍醐(だいご)聡・東大名誉教授は「大阪地検は検審の指摘を重く受け止め、ゼロから捜査を尽くすよう、強く要求する」とのコメントを発表した。

 ■近財局OB「まっとうな判断」

 「公務員だった我々は、検察の処分を明らかな誤りと感じていた。市民がまっとうな判断をしてくれた」

 改ざんを「一般市民感覚からすると言語道断」とした検察審査会の議決を財務省近畿財務局OBの喜多徹信さん(70)は評価した。検審は、佐川宣寿・元理財局長ら財務省幹部を「不起訴不当」とする一方、改ざんの作業を担った現場の職員は「上からの命令に逆らえなかったのではないか」などと責任を問わなかった。喜多さんはこの点も「実感に近い」と話した。

 一方、土地の売却をめぐる背任容疑については現場職員らを「不起訴不当」とし、財務省幹部の責任は問わないとされた。喜多さんは、財務局が本省と相談し、学園に特例の貸し付けをしたところから土地取引が始まったと指摘。「現場だけの判断で売却できただろうか」と話した。政治的働きかけの影響の有無も含め、疑問を解消するために「再捜査したうえで公判で真相解明してほしい」と述べた。

 改ざん発覚後の昨年3月、財務局で国有地売買交渉の担当部署に所属していた男性職員が亡くなった。父親(84)は、佐川氏らが不起訴不当と議決されたことについて「検察が不起訴にして、終わったと思っていたけれど、少しは気持ちが救われました」と話した。

 ■検察の結論変わらない

 元検事の郷原信郎弁護士の話 不起訴不当でとどまった以上、検察が起訴に踏み切るとは思えない。検察は、検察審査会が判断理由として挙げた事実関係も把握した上で不起訴の判断をしており、再捜査で結論がひっくり返ることはないだろう。ただ、公用文書毀棄(きき)の容疑について財務省のトップクラスが不起訴不当とされた。法解釈の問題であるだけに、今後、裁判所の判断をあおぐために起訴すべきだという声が出てくれば、検察には不起訴の詳しい理由について説明責任が求められる。

 ■市民目線で判断の印象

 検察審査会で審査補助員の経験がある吉田繁実弁護士の話 市民目線の判断という印象が強い。背任容疑については、再調査すべき点を「政治家らによる働きかけの影響の有無」などと具体的に注文をつけており、検察も無視できないのではないか。一方、公文書の変造や毀棄(きき)については、外形的な事実が相当程度明らかになっている中、刑事責任を問えるかを地位や関わり方から素朴に判断している。ただ、これは事実の評価の問題なので、検察官の新たな結論につながる期待はあまり持てないと思う。