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忖度発言 (塚田一郎国土交通副大臣)
ゴーンの醜聞 C
【 04 】04/04~
04 04 (木) 忖度発言 国土交通副大臣
悲しい国会議員の質 !! 今に始まったことではないが、この悪癖はいつまで続くのか?
塚田副大臣 政府・自民にも更迭論
忖度発言「厳重注意」
2019/04/04
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13963840.html
本州と九州を新たに結ぶ道路事業の調査で、安倍晋三首相と麻生太郎副総理の意向を「忖度(そんたく)した」と発言し、撤回した自民党麻生派の塚田一郎国土交通副大臣(55)は3日、国会答弁で「我を忘れて事実と異なる発言をした。行政の信頼性をゆがめた」と陳謝した。菅義偉官房長官は塚田氏を厳重注意し、安倍首相は塚田氏の続投を明言したが、政府自民党内にも更迭を求める声が出ている。▼2面=「忖度」再び、10面=社説
塚田氏は北九州市で1日にあった集会で、自民党の吉田博美参院幹事長から「首相と副総理の地元事業なんだよ」と言われたことを紹介し、「国直轄の調査に引き上げた。私が忖度した」と発言した。3日の衆院厚生労働委員会では、発言が「事実と異なる」として改めて撤回し、陳謝。そのうえで昨年12月20日、国交省副大臣室で吉田氏と会談したことは認めた。
一方、吉田氏は3日、塚田氏が紹介した自身の言葉について「発言した事実はない」とするコメントを発表。ただ、会談に同席した同省関係者によると、道路事業が話題となり、吉田氏が塚田氏に「僕も一生懸命やるし、国の仕事だよね」などと陳情したという。
菅氏は3日の記者会見で、塚田氏に対し、2日午後に厳重注意したことを明かした。首相は3日の衆院内閣委員会で「まずは本人からしっかり説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」と述べ、続投させる考えを示した。
しかし、政府内には「辞めたほうがいい」(官邸幹部)、自民党内にも「国会で徹底追及される。辞めさせたほうがいい」(参院幹部)との声が出ている。立憲民主党など野党6党は3日、塚田氏の辞任要求で一致した。
塚田氏は参院新潟選挙区選出で当選2回。今夏の参院選で改選を迎える。
▼2面=「忖度」再び
かばう首相、選挙控え収拾急ぐ
統一地方選のさなかに飛び出した問題発言に、厳しい声が相次いだ。安倍晋三首相らの意向を忖度(そんたく)し、道路建設をめぐる利益誘導をしたと認める発言をした自民党の塚田一郎国土交通副大臣(55)。辞任論が与党内にもくすぶり、後半国会の焦点となりそうだ。▼1面参照
首相は、さっそくかばった。3日の衆院内閣委員会。塚田氏の罷免(ひめん)を求めた野党議員に対し「(塚田氏は)発言を撤回し、謝罪をした。しっかりと説明すべきで、そのことを肝に銘じて職責を果たしてもらいたい」。菅義偉官房長官も会見で「厳重に注意を行った」と述べ、辞任論から距離を置いた。
塚田氏の問題発言は、北九州市で1日夜にあった福岡県知事選の決起集会で飛び出した。自身が所属する麻生派を率いる麻生太郎副総理兼財務相が支援する候補の応援演説だ。
首相への忖度(そんたく)が指摘された森友学園問題を念頭に、「そんなこと実際ないんですよ。森友とか色々言われていますけど」と言いつつ、「でも私は忖度する」。副大臣室で面会した自民の吉田博美参院幹事長から「これは総理と副総理の地元の事業だ」と言われ、「分かりました」と応じたとのやりとりを披露した。
塚田氏は3日の内閣委で「事実と反するので発言は撤回した」と陳謝。吉田氏も3日、塚田氏が紹介した発言内容を否定し「九州・中国地方の経済成長や防災対策のために必要不可欠な道路と考え、整備推進を訴えた。総理に忖度して取り組んでいるわけでもない」と文書でコメントした。
塚田氏は昨年10月の内閣改造で国交副大臣に就任。言及した道路事業は「下関北九州道路」(下北道路)で、山口県下関市と北九州市を関門海峡をまたいで橋かトンネルで結ぶ構想。1998年に国の開発計画に盛り込まれたが、2008年に凍結。安倍政権時の17年度に地元自治体の予算と国の補助による事業化のための調査が再開され、19年度から国直轄調査になった。
自民幹部からも「辞任不可避の失言」との声が出るが、安倍政権は塚田氏の発言内容を「事実と異なる」と打ち消すことで早期収拾を図る考えだ。統一地方選前半の投開票が7日に迫り、夏に参院選を控えるなか、辞任が「アリの一穴」(自民幹部)となって政権の体力を奪うことを懸念しているためだ。
塚田氏自身が参院新潟選挙区からの立候補を予定し、「もともと厳しい情勢で、副大臣を辞めたら落選してしまう」(麻生派幹部)との事情も背景にある。自民党内からは「首相は麻生氏に気を使う。麻生派の議員を簡単に辞めさせられないだろう」との声も上がる。
野党の反発は収まらない。3日の衆院厚生労働委では、国民民主党の山井和則氏が「なぜウソをついたのか」と塚田氏を追及。塚田氏は「大勢が集まる会だったので、我を忘れて事実とは異なる発言をした」と釈明したが、山井氏は「自民党や政府がウソをついて選挙演説をして票を集めようとしているとしたら、絶対許せない」と批判した。野党6党派は塚田氏辞任要求で攻勢を強める構えだ。
与党内でも厳しい意見が相次ぎ、参院選で改選を控える議員を中心に「早く辞めさせた方がいい」との辞任論がくすぶる。公明党幹部は「(今国会が)ここまで順調にきて、怖いのは失言とスキャンダルだけだと(自民側に)言ってきたが、これはまずい。国会が荒れる」と嘆いた。
■森友・加計・統計でも問題視
塚田氏が口にした「忖度」は、安倍政権で繰り返し問題視されてきたキーワードだ。森友・加計学園問題が注目された2017年の新語・流行語大賞に選ばれ、今国会で話題となった毎月勤労統計の調査手法変更でも疑われた。
背景として指摘されるのは、安倍政権で進んだ官邸への権力集中。各府省庁の幹部人事を官邸直属の「内閣人事局」が握ったことに加え、長期安定政権となったことで安倍官邸は官僚の掌握を強める。その力関係の変化が「忖度」への疑念を生んだ。
学校法人「森友学園」への国有地売却問題では、学園が大阪府豊中市の国有地に新設予定の小学校の名誉校長に、首相の妻昭恵氏が一時就任していたことから、財務省が大幅な値引きを行ったのではないかと野党が追及。財務省が昭恵氏らの名前を削る公文書改ざん問題にまで発展した。
首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題でも、内閣府が「総理のご意向」などと文部科学省に伝えたとする文書の存在が発覚。選定プロセスに特別な計らいがあったのではないかと指摘する声があがった。
塚田氏の発言はそんな政権への疑念を再燃させる。
立憲民主党の初鹿明博氏は3日の衆院内閣委員会で、「森友・加計学園問題で忖度が問題視されてきた中での発言だ」と指摘し、こう批判した。「首相や麻生氏を忖度するかのような発言をした事実を、謝ってすませていいのか」
■塚田氏の主な発言内容
私は麻生太郎(副総理)命、一筋でやってきた。筋金入りの麻生派です。
私は新潟県連の会長をやってまして、地元も県議選、市議選がありまして、帰って応援しようと思っていたが、かわいい弟分の(自民麻生派の)大家敏志参院議員が「小倉に来て激励してくれ」と。渡世の義理には勝てません。麻生派は渡世の義理だけで生きています。ほとんどやせ我慢の団体。私はやせてませんが。私は夏に参院選があるが、自分の票を削って北九州に参った。
国土交通副大臣なので、ちょっとだけ仕事の話を。大家さんが吉田博美・自民参院幹事長と一緒に「地元の要望がある」と副大臣室に来た。下関北九州道路(の案件)です。
これは11年前に凍結されているんです。何とかせにゃならん。下関と北九州ですよ。よく考えてください。下関は誰の地盤ですか。安倍晋三総理です。総理から麻生副総理の地元でもある北九州への道路事業が止まっている。
吉田幹事長が私の顔を見て、「塚田分かってるな、これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」と。私、すごく物わかりがいいんです。すぐ忖度します。「分かりました」と。
そりゃ総理とか副総理がそんなこと言えません。そんなこと実際ないんですよ、森友(学園をめぐる一連の問題)とか、いろいろ言われてますけど。でも私は忖度します。この事業を再スタートするには、いったん国で調査を引き取らせていただく、と。今回の新年度の予算で、国で直轄の調査計画に引き上げました。
別に知事に頼まれたからやったわけじゃないですよ。大家敏志が言ってきた、そして私が忖度した、ということですので。
おそらく橋を架ける形で調査を進めて、できるだけ早くみなさまのもとに、橋が通るように頑張りたい。
▼10面=社説
塚田副大臣 不見識極まる忖度発言
政権中枢への忖度(そんたく)が行政の公平性をゆがめているのではないか。森友・加計問題などで、そんな厳しい視線が注がれるなか、こんなにも堂々と、忖度による利益誘導を認めるとは、驚き、あきれるほかない。
関門海峡で本州と九州を新たに結ぶ「下関北九州道路」をめぐる、塚田一郎・国土交通副大臣の発言である。
塚田氏は1日、北九州市であった福岡県知事選の自民党推薦候補の集会で、副大臣室を訪ねてきた自民党の吉田博美参院幹事長とのやりとりを紹介した。
吉田氏「塚田、分かってるな。これは総理の地元と副総理の地元の事業なんだよ」
塚田氏「分かりました」
塚田氏は「総理とか副総理がそんなこと言えません。でも、私は忖度します」と続け、事業化の調査費用を19年度予算から全額国の負担としたことを、自らの手柄のように語った。
塚田氏は2日、一連の発言は事実と異なるとして撤回・謝罪した。きのうの国会では、「首相、副総理の地元の案件だから特別な配慮をしたことはない」と釈明。吉田氏の発言についても、そのような趣旨のものはなかったと否定した。
しかし、それが本当だとしても、地元への利益誘導で支持者の歓心を買おうとした事実は消えない。臆面もなく「忖度した」と何度も集会で繰り返した振る舞いは、政治家として不見識極まると言わざるを得ない。
塚田氏が自ら辞任しないのであれば、安倍首相が速やかに更迭すべきだ。
しかし、首相はこの発言を軽く見ているようだ。きのうの国会でも「すでに撤回し、謝罪した。まずは本人からしっかりと説明すべきだ」とかばう姿勢に終始した。
忖度による政策判断などあってはならないと思っているのであれば、きちんとけじめをつけるのが当然ではないか。
横畠裕介内閣法制局長官が先月、国会答弁の撤回・陳謝に追い込まれたことがあった。
内閣に対する国会の監督機能についての野党議員の質問に、「このような場で声を荒らげて発言するようなことまでとは考えておりません」と皮肉まじりに答えたのだ。
全国民の代表である国会議員の質問に、閣僚は誠実に答える義務がある。ましてや、閣僚を補佐する立場の官僚が質問を揶揄(やゆ)することは許されない。しかし、参院予算委員長による厳重注意で済まされた。
安倍内閣はこれまで、数々の閣僚や官僚の問題発言を不問に付してきた。何を言おうとかばってくれるとなれば、おごり、緩みは決して改まるまい。
04 04 (木) ゴーンの醜聞 C 特別背任容疑
醜いゴーン !! この男の厚かましい態度、フランい精神文化を汚すものではないか?
ゴーンの醜聞
オマーン不正送金立件へ
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13963841.html?ref=pcviewer
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が、中東オマーンの日産販売代理店のオーナー側に日産の資金を不正に送金した疑いが強まったとして、東京地検特捜部が会社法違反(特別背任)容疑で立件する方向で検討していることが3日、関係者への取材でわかった。特捜部は、不正送金の一部を前会長が私的に流用したとみている模様だ。▼27面=ツイッターで「11日会見」の意向
特捜部は、サウジアラビアの実業家に日産の資金を不正送金したなどとして前会長を特別背任などの罪で1月に起訴。オマーンの販売代理店への送金に焦点をあて余罪を捜査していた。関係者によると、前会長は「送金は奨励金で、問題ない」と主張しているという。
関係者によると、ゴーン前会長は2012年以降、日産子会社の「中東日産」(アラブ首長国連邦)を通じ、オマーンの販売代理店に総額計3500万ドル(現在のレートで約39億円)を送金したとされる。原資はCEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」で、「販売促進費」名目で支出された。
この代理店のオーナーはゴーン前会長の長年の友人。前会長は09年1月、私的に3千万ドル(同約33億円)を借り入れていたという。
前会長は08年10月、約18億5千万円の評価損が生じた私的な投資契約を日産に付け替えたという特別背任事件で起訴されている。前会長は評価損が生じた際に新生銀から追加担保を求められていた。オーナーから約33億円を借り入れた翌月の09年2月に新生銀に約22億円を差し入れていたという。特捜部はオーナーから借りた金と担保の関係も調べている。
またオマーンの販売代理店のインド人幹部は15年以降、自らが大株主であるレバノンの「GFI」社に数十億円を送金。GFIは15~18年、ゴーン前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(約30億円)を資金援助するなどしていたという。GFIにはルノーからも多額の不透明な支払いがあったという。特捜部は、日産の資金がGFIを通じて、ゴーン前会長側に流出した疑いがあるとみて解明を進めている。
▼27面=「11日会見」の意向
ツイッターで意向表明
会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が3日、自身のツイッターのアカウントを開設し、「真実をお話しする準備をしています。4月11日木曜日に記者会見をします」と発信した。弁護団の弘中惇一郎弁護士も11日に会見したいとの意向を示した。東京地検特捜部が捜査を続ける中、実現すれば3月の保釈後初めての会見となる。▼1面参照
アカウントには、本人であることを示す認証バッジがついている。日本語と同じ内容を英語でもツイートした。弘中氏によると、保釈条件でパソコンの使用は弁護人の事務所に限定されている。事務所でネットに接続するのは問題ないという認識だ。
ゴーン前会長は、私的な損失を日産に付け替えるなどしたという会社法違反(特別背任)などの罪で1月に追起訴された。3月6日の保釈後、弁護団に会見を開く意向を示したが、会見での発言内容について慎重な検討を続けているという。
前会長は「海外のメディアにも来てほしい」と話しているほか、法的助言を求めるため、弘中氏の同席も要望しているという。
04 05 (金) ゴーンの醜聞 C 4回目逮捕
醜いゴーン !! 昨日の記事に続いて報道。
保釈から1カ月
5.6億円 自らに還流疑い
https://digital.asahi.com/articles/DA3S13965319.html?ref=pcviewer
日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、中東オマーンの販売代理店に送金した約5億6300万円の日産資金を自らに還流させたとして、東京地検特捜部は4日、ゴーン前会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。関係者によると、前会長は販売代理店の口座から、自身が実質的に保有する「GFI」社(レバノン)の預金口座に送金させ、自身に還流させていたという。▼2面=中東2ルート照準、31面=保釈中なぜ
前会長の逮捕は4回目。特捜部の事件で、保釈中の再逮捕は異例だ。
弁護団の弘中惇一郎弁護士は記者会見を開き、「合理性も必要性もなく逮捕に踏み切ったのは暴挙だ」と批判した。弘中氏によると、特捜部はこの日早朝、前会長が3月6日の保釈後に暮らしてきた東京都内の住居内で逮捕状を執行。家宅捜索で、裁判準備のための書類や前会長の妻の携帯電話、パスポートなどが押収されたという。弘中氏は「明らかな防御権侵害で弁護権侵害だ」と訴えた。ゴーン前会長も米国の代理人を通じて「容疑に根拠はなく無実だ」などとする談話を公表した。
特捜部などによると、ゴーン前会長は2015年12月~18年7月、日産子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金。うち計500万ドル(同約5億6300万円)をGFIに送金させていた疑いがある。特捜部は、前会長がGFIを実質的に保有していたとみて調べている。
SBAのオーナー、スヘイル・バウワン氏はゴーン前会長の長年の友人。SBAのインド人幹部がGFIの大株主となっている。GFIは15~18年、前会長の息子が米国で起業した会社に計2750万ドル(現在のレートで約30億円)を資金援助していたという。
特捜部は1月、サウジアラビアの実業家に日産の資金を不正送金した特別背任罪で前会長を追起訴した。サウジに加えて「オマーンルート」も立件することで疑惑の全容解明をめざす。
■オマーンルート、友人無言 「送金先」に現地で接触
2月上旬、中東オマーンの首都マスカット。民族衣装を身につけた老齢の男性が建物から出てきた。
「日産からどういうお金を受け取ったのですか?」「ゴーン氏個人とはどういう金のやり取りがあったのですか?」
男性は歩きながら、そう質問を投げかける朝日新聞記者をちらっと見ただけで一切答えなかった。運転手に促されてドイツ製の高級車に乗り込み、去った。
スヘイル・バウワン氏。現地の富豪で、日産と仏ルノーの販売代理店のオーナーを務める。中東レバノン育ちのゴーン前会長の長年の友人。今回の事件の「オマーンルート」で不正資金の送金先になったとされる。
記者は代理店や関連会社、自宅などを訪ねたが一切取り次いでもらえなかった。地元の有力者から、ようやく同氏が訪れる場所と時間を聞くことができた末の接触だった。
関係者によると、バウワン氏は、1月に起訴された「サウジアラビアルート」でゴーン前会長から不正送金を受けたとされる富豪ハリド・ジュファリ氏らとともに、日産社内で中東の「GF」(ゴーン・フレンズ)と呼ばれている。オマーン関連の会議を、中東諸国ではなくゴーン前会長がいるパリで開催し、ともに夕食を取るなど親密な関係だったという。
オマーンで1970年代から日産代理店だった会社関係者によると、2004年ごろに契約を突然打ち切られたという。不可解に思っていたところ、バウワン氏の会社が新たに代理店となった式典にゴーン前会長が出席した。「ゴーン氏が来るなんて」と驚いたといい、「それほど個人的なつながりがあるのだろう」と感じたという。
▼2面=中東2ルート照準 ゴーン前会長4回目逮捕
特捜、捜査の突破口に
【図版】中東をめぐるゴーン前会長の特別背任事件の構図
1月の追起訴から3カ月弱、3月の保釈から約1カ月。余罪捜査を続けてきた東京地検特捜部が、日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)の4回目の逮捕に踏み切った。慎重論もある中、中東を舞台とした「会社の私物化」の全容解明を目指す。▼1面参照
「ゴーン氏が自分のポケットに入れているというのは大きい。言い逃れできない」。早朝の逮捕劇を確認した検察幹部は、立証に自信を見せた。
東京地検特捜部の捜査は、1月に「サウジアラビアルート」の特別背任罪で追起訴した後、息を潜めていた。強力な新弁護団の結成で前会長は3月6日に保釈され、先行きはますます不透明になった。
それでも特捜部は、ゴーン前会長が中東各国の友人らに、CEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」を使って、多額の日産資金を私的に流していたのではないかという疑惑の全体像の解明にこだわった。
サウジルートは、ゴーン前会長が、巨額の評価損を抱えた私的な投資契約の信用保証に協力してもらった実業家に、謝礼などの意味合いで09~12年に計約13億円を支出したとの構図だ。
これに加え、より直近の12~18年ごろに計3500万ドル(現在のレートで約39億円)が支出されていたオマーンルートを立証すれば、「全体の話として裁判で立証でき、裁判所に良い印象を与えられる」(検察幹部)という計算だった。
■立証、高いハードル
だがオマーンルートのハードルは高かった。特別背任罪を立証するには、支出に経営判断としての合理性が全くなく、「自己の利益を図る目的」だったという証明が必要だ。オマーンの場合、支出先は日産車を現地で販売する代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)だ。前会長はSBAオーナーのスヘイル・バウワン氏と親密だが、「正当な販売奨励金だ」という反論を完全に崩す立証が求められた。
背任の疑いが濃いとみる約39億円のうち、確実に「ゴーン前会長に帰属する」とひもづけられる資金の特定がポイントになった。
だが中東各国に要請した捜査共助は回答がなく、金の流れを追うのに不可欠な銀行口座の捜査は難航。ある幹部は「オマーンは皆目分からない」と漏らし、検察上層部は「無理はしなくていい」とも指示した。
突破口となったのは、SBAの資金が流れたレバノンの投資会社「GFI」という「ペーパーカンパニー」の解明だった。
ゴーン前会長は株主にも名を連ねていないが、前会長が雇っていた現地の弁護士(故人)の事務所に登記されたGFIの実態を、関係者の証言や資料から把握。前会長がGFIを「実質保有」していると言えるまで、証拠を積み重ねた。
さらにGFIから、前会長の息子が米国に設立した会社への資金の流れも裏づけた。約39億円のうち、前会長個人にひもづけられた約5億6千万円に限って「前会長に還流した」と認定し、立件にこぎ着けた。
「実質保有」の意味を聞かれた東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事は4日の記者会見でこう指摘した。
「会社の意思決定にどう関与しているか。お金がどう使われているか。脱税事件でも、代表者はお飾りということはよくある」
ただ、バウワン氏ら当事者の捜査協力は得られていない模様だ。弁護側は「不十分な捜査だ」と訴えるとみられる。
■日産・ルノー、排除へ着々
4回目の逮捕を聞いた日産幹部は、11日に予定されていたゴーン前会長の記者会見の開催が難しくなったことを朗報と受け止めた。「日産が認定する不正は謀略だと連呼されると、日産のイメージがさらに悪くなる。会見はない方がいい」
日産は8日に臨時株主総会を開き、ゴーン前会長を取締役からも解任する予定だ。20年近く君臨したカリスマ経営者を完全に追放し、新体制づくりを加速させる構えだ。
会長職は廃止し、会長が兼ねていた取締役会議長には社外取締役を充てる。ゴーン前会長の不正を許してきた根本的な原因は前会長への権限集中にあったとの反省から、業務執行と監視の機能を明確に分ける。社外取締役を中心に役員人事や報酬を決める「指名委員会等設置会社」に移行する方向で準備を進めている。
仏ルノーも、ゴーン前会長との「決別」を着々と進める。ルノーは3日、ゴーン前会長が6月12日の株主総会で取締役も辞任すると発表。すべての役職から退くことになる。ゴーン前会長の報酬や支出をめぐる社内調査の最終調査結果も発表。ゴーン前会長がかかわった支出に「疑わしい」ものや「ルノーの倫理規定に触れる」ものがあったと明らかにした。4日の仏紙には「ルノーはゴーン時代を清算した」(フィガロ)といった見出しが躍った。
ルノーは来週、日産との提携20周年を祝う記念式典と、三菱自動車を交えた3社でつくる新組織の初会合をパリで開く。ゴーン前会長が3社の会長を兼ねていた旧体制と決別し、「新しい船出を印象づける」(ルノー関係者)ため、うみを出し切っておく必要があった。三菱自も6月の株主総会で、ゴーン前会長の取締役の職を解く方針だ。
▼31面=保釈中なぜ
保釈中に再逮捕、なぜ
【図版】ゴーン前会長の捜査などの経過
日産自動車前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が、3カ月超にわたって勾留された東京拘置所に再び入った。東京地検特捜部が4日早朝に踏み切った、会社法違反(特別背任)容疑での再逮捕。いったん保釈された被告の身柄拘束の是非は。▼1面参照
■「拘束して圧力」憤る 弁護側
「身柄拘束を利用して被告に圧力をかける人質司法だ」
4日午後、ゴーン前会長の4回目の逮捕を受けて急きょ開かれた記者会見で、弘中惇一郎弁護士は東京地検特捜部を痛烈に批判した。
前会長の弁護人として不満をあらわにしたのは、すでに起訴されている特別背任事件をめぐり、3月に「証拠隠滅や逃亡の恐れがない」として保釈が認められた経緯があるからだ。
弘中氏は、中東の日産子会社からの支出が問題になった今回の逮捕容疑が、すでに起訴されている事件と一連のものだと主張。「証拠隠滅のおそれがないと確認された被告を、一連の事件で再逮捕するのはあり得ない」と憤った。
特捜部が前会長の制限住居で実施した家宅捜索にも疑問を投げかけた。
弘中氏によると、前会長は保釈後の約1カ月間、公判に向けて弁護団と協議を重ねてきた。家宅捜索ではゴーン前会長の携帯電話、書類、ノート、日記のほか、妻の携帯電話やパスポートも押収されたという。公判対策への妨害だと批判し、「これが(再逮捕の)一つの目的だったのではないかと考えざるをえない」と訴えた。
前会長は3日、11日に記者会見を開く意思をツイッターで明らかにしていた。裁判所が勾留を認めれば、その機会は遠ざかることになる。再逮捕前の前会長が自らの主張を語る様子を収めた動画があるといい、弘中氏は会見で「公開する予定がある」と明かした。
■「保釈自体おかしい」 検察側
「1月に起訴した特別背任事件とは、送金先の会社も別であり、目的も違った全然別の事件だ」
東京地検の久木元(くきもと)伸・次席検事は4日の定例会見でこう述べ、逮捕の正当性を強調した。「逃亡の恐れや罪証隠滅の恐れがあった」
久木元氏はこう断言したものの、保釈中の被告を再び拘束することについては検察内でも慎重な意見があり、強制捜査か在宅で追起訴するかの検討がぎりぎりまで続いた。東京地裁が検察側の勾留延長請求を却下したり、保釈を認めたりするなど「異例」の判断が続いてきたからだ。
検察はこれまでの事件で一貫して証拠隠滅の恐れを主張。関係者との口裏合わせなどの危険があるとして、弁護側の保釈請求に反対し続けた。「保釈されることがおかしい。検察としてのやり方を通す」。ある検察幹部は逮捕に踏み切った理由をこう強調する。
今回の再逮捕は、今後の公判日程にも影響を及ぼすとみられる。争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きが5月23日に予定され、地裁は9月にも初公判を開きたい意向を示していたが、時期はさらに後ろ倒しになるとみられる。
■10億円の保釈金は
再逮捕されたことで、ゴーン前会長が裁判所に預けていた10億円の保釈保証金はどうなるのか。
前会長は3月6日、東京地裁の保釈決定を受けて保釈されたが、この決定はあくまですでに起訴された事件に対するものだ。別の事件で再逮捕されても保釈は続いた状態となっており、保釈金が取り上げられたり、返ってきたりすることはない。今後も保釈条件に違反しなければ没収されることはなく、起訴された事件の裁判が終われば保釈金は返ってくることになる。
一方、今回再逮捕された事件で起訴されて保釈を請求すれば、新たに保釈金を預ける必要がある。
■在宅で追起訴が筋
元裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授の話 法的には、「明らかに逮捕の必要性がない」と言えなければ逮捕状は出る。問題は請求した検察の判断だ。すでに相当の証拠を集めていたはずで、保釈されて公判準備が進んでいる最中に再逮捕するのは不当だ。必要があれば在宅で追起訴するのが筋であり、記者会見を控えたゴーン前会長や弁護団に対する妨害にしか見えない。
今後は「罪証隠滅や逃亡を疑う相当な理由」があるかを問う勾留の審査が山になる。保釈に至った経緯も踏まえ、勾留請求は却下されるべきだろう。
■保釈は別件の判断
元東京高検検事の高井康行弁護士の話 在宅で調べて起訴するのが捜査の基本だ。しかし、任意で取り調べてもゴーン前会長が否認するうえ、検察側の証拠の内容が伝わり、関係者との口裏合わせなど証拠隠滅が進む危険性があったと言える。立証に大きく影響するため、逮捕するしかなかったのではないか。
裁判所は証拠隠滅を疑う相当な理由がないとして保釈を認めたが、あくまですでに起訴された事件についての判断だ。再逮捕したのは捜査中の別の事件であり、証拠隠滅の恐れがないとは言い切れない。