07 28(火) 今までの教育問題のまとめ【その十二】 |
12 06(木) 続・(OECD)学力調査 |
読売新聞 ホーム>教育>ニュース (2007年10月31日 読売新聞) ニュース 中教審 学力低下を反省、小中学生の学力を強化 次の学習指導要領を審議してきた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は 30日、中間報告をまとめた。 授業、30年ぶりに増加 「ゆとり教育」による学力低下を反省し、小中学校では、主要教科の授業時間 を1割以上増やす一方、現行の指導要領から導入された総合学習の時間を削減す る。国際化に対応するため、小学5年から「外国語(英語)活動」の時間を創設。 「道徳」を教科に格上げすることは見送る。小中学校の授業時間が増加するのは 30年ぶりで、「ゆとり教育」からの方針転換が明確に打ち出された。 中教審は来年1月にも答申をまとめ、文部科学省が今年度内に学習指導要領を 改定。新指導要領は早ければ2011年度から実施される。 現行の指導要領は、学習内容の3割減や授業時間の短縮などによる「ゆとり教 育」を掲げ、小中学校では2002年度、高校は03年度から実施された。 しかし、学力低下への批判が相次いだため、今回の中間報告「審議のまとめ」 では、「授業時間を減らしすぎた」などと反省。 〈1〉全教科での言語力育成 〈2〉理数教育重視 〈3〉伝統文化に関する教育の充実 〈4〉道徳教育の充実 〈5〉小学校の英語活動 ――などを新しい目標に掲げた。 小学校の授業時間は、各学年とも週1、2コマ(1コマ45分)増やし、6年 間では現在より278コマ多い計5645コマに。特に増えたのは国語、算数、 理科、社会の主要4教科と体育で、中でも、算数と理科はともに16%増となる。 また、5年生からは、週1コマが英語活動に充てられることになった。 中学校では各学年とも週1コマ(1コマ50分)、3年間では、現在より 105コマ多い計3045コマとした。特に理科と外国語(英語)が増え、3年 間の授業時間はともに現在の33%増。英語は、国語、数学などを含め、教科の 中で最も授業時間が多くなる。 現在の指導要領で大幅に削減された学習内容も相次いで復活し、小学校算数で は「台形の面積」、中学校理科では「イオン」が加わる。一方、ゆとり教育の象 徴だった「総合学習の時間」は、小中学校ともに削減され、中学校の「選択教科」 も事実上廃止される。「道徳」については、「引き続き検討する必要がある」と して、教科化を見送った。 [解説]「詰め込み」と「ゆとり」折衷 戦後、日本の教育は「詰め込み教育」と「ゆとり教育」の両極端に振れてきた。 新しい学習指導要領は、「生きる力の育成」という現在の「ゆとり」と同じ理念 を引き継ぎつつ、授業時間は「詰め込み」時代の水準に戻すという、両者を折衷 した形になった。 今月24日に公表された全国学力テストの結果でも、日本の子供は思考力や表 現力に課題があることが明らかになっている。増加する授業時間を、受験を意識 した暗記中心の勉強に費やすのではなく、自分の考えを文章や言葉で表現させる 学習にあてる必要がある。 ただ、今回の「審議のまとめ」を詳しく見ると、中学英語が週3コマから4コ マになった理由について、ある文部科学省幹部が「私立の進学校の授業時間に近 づけるため、増やさざるを得ない」と明かすなど、根拠があいまいなものもある。 今後、文科省は指導要領の改定作業で、なぜ授業時間を増やし、何を学ぶかを、 学校現場に明確に示すべきだ。 (社会部 村井正美) YOL内関連情報 【ニュース】 日本、数学応用力が10位 読解力は15位に (2007年12月5日) 【ニュース】 新学習指導要領 実施前倒しへ (2007年11月10日) 【ニュース】 中教審 学力低下を反省、小中学生の学力を強化 (2007年10月31日) 【ニュース】 中教審「ゆとり」反省…異例の報告書 (2007年10月28日) 【ニュース】 「道徳」教科化見送り…中教審方針 (2007年9月19日) 【ニュース】 中学も授業10%増 主要5科と保健体育…中教審部会素案 (2007年8月31日) 【ニュース】 「言語力」全教科で育成…中教審方針 (2007年8月17日) |
朝日新聞 現在位置:asahi.com>社説 (2007年12月05日(水曜日)付) 国際学力調査―考える力を育てるには 二酸化炭素の排出量と地球の平均気温という二つの折れ線グラフを見せ、ここ から読み取れることを書かせる。 そんな問題が並んでいるのが、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調 査(PISA)である。学校で習った知識をどれぐらい覚えているかではなく、 知識の応用力や論理的に考える力を問うのだ。対象は15歳で、日本では高校1 年生が参加している。 06年の結果によると、OECD加盟国以外も含めた57カ国・地域の中で、 日本は科学的な応用力で6位、数学的な応用力で10位、読解力で15位だった。 最初の00年、前回の03年と比べると、順位はいずれも下がっている。参加 国が増えており、単純には比較できないとはいえ、学力低下に歯止めがかかって いないことはまちがいない。 PISA調査といえば、03年に数学と読解力が大幅に順位を下げ、学力低下 の論議を一気に高めた。文部科学省は導入して間もないゆとり教育を見直し、国 語や理科などの授業時間を増やして総合的な学習を減らすことを決めた。 問題は、このカジの切り方でよかったかどうかである。 今回の結果からは、日本の子どもの特徴について二つのことがいえる。 まず、フィンランドなどの上位の国と比べると、学力の低い層の割合がかなり 大きいことだ。この層が全体を引き下げている。これまでも様々な調査で、勉強 のできる子とできない子の二極化が深刻な問題と指摘されていたが、底上げの大 切さが改めて示されたわけだ。 もうひとつは、科学では、公式をそのままあてはめるような設問には強いが、 身の回りのことに疑問を持ち、それを論理的に説明するような力が弱い、という ことだ。 併せて実施したアンケートを読むと、その原因は授業のあり方に問題があるこ とがわかる。理科の授業で、身近な疑問に応えるような教え方をしてもらってい るかどうか。そう尋ねると、日本は最低レベルだったのだ。 自分で問題を設定し、解決方法を考えるという力に弱い。このことは科学の分 野に限らないだろう。 学力の底上げと応用力。二つの課題を克服するには、どうすればいいのか。 一人一人の学習の進み具合をつかみ、授業についてこられなくなったら、その つど手助けする。落ちこぼれをつくらないためには、きめ細かな後押しが要る。 応用力を育てるには、公式の当てはめ方などを機械的に教えるのではなく、そ の論理を子どもたちに自ら考えさせる。そんな授業が求められる。 いずれも、十分な教員の数とともに、その質を上げることが必要だろう。 単に授業時間を増やしただけでは、どうしようもないことは文科省も承知のは ずだ。応用力が問われているのは、文科省もまたしかりである。 |
01 08(火) 朝日の社説<教育問題> |
社説 2008年01月07日(月曜日)付 希望社会への提言(11)―「アポロ13号」に教育を学ぶ ・正解を急がず、競わせず、考える心を育てよう ・教育は投資、社会全体で知の劣化を食い止める ◇ この国の望ましい未来図を描いてみよう。そう考えて、昨秋からこの社説シリーズを続けてきた。新年は、教育から考えてみたい。 社会の豊かさは、何によって決まるのか。その土台となるのは、私たち一人ひとりが持つ力、知力だろう。日本は大丈夫か、と考えたとき、まず頭をよぎるのが子どもたちの学力危機である。 実話をもとにした映画「アポロ13」に、こんなシーンがある。 人類が初の月面着陸を達成した翌年の70年、月に向かったアポロ13号は深刻な船体トラブルに直面する。とくに、3人の宇宙飛行士が吐きだす二酸化炭素をどう換気するか。マニュアルには想定されていない事態だった。 地上スタッフが、宇宙船と同じ訓練用の船から使えそうなものをかき集める。刻々と限界が迫る中、試行錯誤しながら換気装置を手作業で作り、飛行士にその方法を伝えて無事帰還を果たした。 日本が低迷を続ける国際学習到達度調査(PISA)は「未来型学力」のテストと呼ばれる。いま何を知っているかではなく将来何ができるかを測る――。 調査をしている経済協力開発機構(OECD)の事務総長は、日本にこんな警告を発した。「知識を再現する学習ばかり続けていると、労働市場に出た時に必要とされる力が身につかない」 予期せぬ事態がおきた時、多くの情報から何を選び取り、どう生かすのか。宇宙飛行士の命を救ったのは「未来型学力」の果実ともいえるだろう。 学力世界一といわれるフィンランド。福田誠治・都留文科大教授は、その教育の神髄を二つあげた。 第一に、正解を先回りして教えない。 理科の授業では、まず実験だ。様々な現象を見させて、各自が仮説をたてる。自分とは違う意見にも耳を傾け、もう一度考えてみる。教師が理論を説明するのは一番最後だ。正解を先に教えると、その時点で思考が止まってしまう。 次に、他人と競わせないことだ。 競争させると、順位に関心が向いて、考えることへの興味がそがれる。テストは各自がどこでつまずいているかを確認し、補うためのものだ。考える力がつくとともに学力格差も少ないのは、この二つの理念と実践が成果をあげているからだ。福田教授はそう指摘する。 「競争させて順位をつけて、何かいいことがありますか」。フィンランドセンターのヘイッキ・マキパー所長は話す。「下の子はやる気をなくし、上の子は自分が優秀だと思いこむ。どちらの人生にとってもいい影響は与えないでしょう」 日本は、どうだろう。 学力危機は子どもに限ったことではない。大学生でも分数ができないと揶揄(やゆ)される。しょせんは試験でいい成績をとるために頭に押し込めた知識だ。のど元過ぎれば忘れてしまうのは当然か。 学力低下は、PISA調査で勉強への意欲が際だって低いことと分かちがたく結びついている。単なる知識の量で成績や入試の合否が決まってしまう。そんな貧しい教育の姿に、学力危機の核心があるのではないだろうか。 教室で学んでいることが現実の生活に、今後の人生につながっていく。そして、何よりも考えることが楽しいという手応えを感じさせることができるかどうか。そこが分かれ道になるだろう。 では、どうするか。 学力の質を転換させることである。 考える心を育てるには、授業を変えなければならない。未来型学力を育む教員の養成が急務だ。教科書をただ覚え込ませるのとは違って、相当の力量がいる。授業にも十分な準備が必要だ。 フィンランドでは、教師には原則的に修士号が必要で、実習も実践的だ。授業に専念する環境も確保されている。 大量の雑務に追われる日本からは別世界だが、授業と放課後の活動の分業など思い切った改革に踏み切るしかない。 もちろん、義務教育だけでは完結しない。高校、大学の入試やカリキュラムの改革も欠かせない。企業が求めているのも、知識のある若者ではないはずだ。 当然、相当な財源が必要になる。ただ、こうは考えられないだろうか。教育は未来への投資である、と。 教育が国の未来を決めることは、歴史が証明している。社会で自立できない子が増えることは、将来の社会保障費に影を落とす。逆に、優れた学力は経済力の向上にも貢献する。政治や行政の質とも決して無縁ではないだろう。 そもそもOECDがPISA調査を始めたのは、世界がグローバル化する中で豊かさを保つには、国民の知力の質を上げることが不可欠だと考えたからだ。 日本国民1人当たりの生産力が世界で低落傾向にあることは、PISAの結果と、見事に軌を一にしている。 この国の知的劣化を食い止め、反転させる。子どもの学力転換を、その一里塚と位置づけよう。 社会に出たら、教室で習った公式では解けない問題ばかりである。正解がわからない問いと向き合う力をつけることこそが、未来を拓(ひら)く教育の役割だろう。 希望の苗木を、幹太く育てたい。 |
01 11(金) 続・朝日の社説<教育問題> |