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折々の記 2017 ②
【心に浮かぶよしなしごと】

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【 03 】01/30

  01 30 30日のニュース
        (1) 拘束・搭乗拒否280人 米大統領令で入国禁止 連邦裁、送還認めぬ仮処分
        (2) (トランプの時代)空にも「壁」米混迷 「イスラム教徒標的」大統領否定
        (3) 英首相に国内から不満 訪米中、難民政策批判避ける
        (4) 米ロ、IS対策で一致 独仏は排外姿勢に懸念 電話会談
        (5) 「2度の大戦、米は同盟国」プーチン氏 米ロ電話会談
        (6) 而今…指ふるることのみばかり思えただ…道元禅の悟り
        (7) (トランプの時代)工場移転介入、称賛と不安 米ラストベルト
        (8) (ここに注目!)セルビアが宣伝列車 目覚める民族主義
        (9) 「カナダは難民を歓迎する」 トルドー首相、ツイート
        (10) 壁建設、イスラエル首相絶賛 メキシコ、拒絶と失望表明
        (11) 「米大使館、エルサレムに」 イスラエル首相
        (12) 米軍増強へ大統領令 即応性・核戦略見直し要求
        (13) (声)深刻ないじめ、みんなで共有を
        (14) 米国を覇権国からふつうの国に戻すトランプ



 01 30 (月) 30日のニュース     



(1) 拘束・搭乗拒否280人 米大統領令で入国禁止 連邦裁、送還認めぬ仮処分

 トランプ米大統領が出した、中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令が、世界に混乱を広げている。米国に入国できずに拘束されたり、飛行機に搭乗拒否されたりした人は約280人に上った。各地で批判の声が上がり、訴えを受けた裁判所が米国外に強制退去させないよう決定。大統領令の正当性が問われる事態となった。▼2面=空にも「壁」、7面=英首相、帰国後批判

 27日に署名された大統領令は、テロの懸念がある国を指定し、一部の例外を除き90日間入国を禁止した。対象国はシリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの7カ国。人口は2億人以上になり、国民の多くがイスラム教徒だ。米国の永住権を持っていた場合でも、入国許可は「ケース・バイ・ケース」(米政府高官)になるとしており、現場で混乱が起きている。

 AP通信によると、国土安全保障省が28日午後11時(日本時間29日午後1時)現在でまとめた数字では、米国に入国できなかったのは109人、米行きの飛行機に搭乗拒否されたのは173人になるという。

 ニューヨークのケネディ空港では、署名前に搭乗した2人のイラク人を含む約10人が拘束された。このため、数千人が抗議のために集まった。首都ワシントン郊外のダレス空港や、カリフォルニア州サンフランシスコの空港でも数百人が抗議デモを行った。

 市民団体の訴えを受け、ニューヨークの連邦裁判所は28日夜、拘束された人を強制送還した場合、「取り返しがつかない損害が起きる」とし、国外退去させないよう命じる仮処分を決定した。

 ただ、この決定は身柄を拘束された人だけを対象とし、大統領令の合憲性については判断していない。ニューヨーク・タイムズによると、米国外にいる人の入国を認める内容にはなっていない。人権団体「米イスラム関係委員会」は30日にも、大統領令が違憲だとして訴訟を起こす方針を明らかにしており、法廷での争いは今後も続く見通しだ。

 大統領令についてイランの外務省は28日に声明を出し「イスラム世界への明らかな侮辱だ。政治的、法的な対抗措置を取る」と批判。イラク議会も対抗措置を求めているという。

 各地で混乱が伝えられる中、トランプ氏は29日朝、ツイッターで「我が国は強い国境と極めて厳しい入国審査が必要だ」とし、「欧州や世界で何が起きているか見なさい。めちゃくちゃな状態だ」と語った。(ニューヨーク=中井大助、ワシントン=杉山正)



(2) (トランプの時代)空にも「壁」米混迷 「イスラム教徒標的」大統領否定

 「米国第一」のテロ対策として出されたトランプ米大統領の大統領令が、混乱と不安をもたらしている。中東・アフリカからの移民や難民の入国を制限する措置は「イスラム教徒を狙い撃ちしている」との批判が広がるが、トランプ氏は「非常にうまくいっている」と相手にせず、分断の亀裂は深まるばかりだ。▼1面参照

 「憎しみも恐怖もない。難民はここでは歓迎だ」「壁を建てればいい。我々がそれを取り壊す」

 ニューヨークのケネディ空港では28日、トランプ氏の大統領令に抗議するデモが続いた。最初は小規模だったが、人数は次第にふくれ、夜には数千人が集まった。混雑を避けるため、市内と空港をつなぐ電車の乗車が一時的に制限されるほどだった。

 混乱は全米に広がる。大統領令が署名された27日午後、ケネディ空港では入国が認められず、身柄を拘束される人が相次いだ。

 ハミード・カリード・ダウィーシュさん(53)は、2003年から約10年間、イラクで米軍の通訳などとして働いてきた。弁護士によると、米国の協力者向け特別ビザが3年間におよぶ審査を経て20日に認められたばかりだった。

 ニューヨーク州選出の民主党の下院議員らが働きかけて28日午後に解放された。手錠をかけられたというダウィーシュさんは「この手で何人の米兵を触れてきたか」と涙を浮かべた。

 ダウィーシュさんらを支援した弁護士は大統領令の合法性を疑問視し、人身保護の申し立てを裁判所に行った。ニューヨークの裁判所が28日夜、「自国に強制送還した場合、回復困難な損害が起きる」と認め、ダウィーシュさんらを米国外に強制退去させないよう認める決定を出した。

 米メディアによると、テキサス州ダラス空港でも身柄拘束された人がおり、ペンシルベニア州フィラデルフィア空港では、カタールから到着したシリア人家族が再び中東行きの飛行機に乗せられた。

 27日に署名された大統領令は、すべての難民の受け入れを120日間停止したほか、イラクやシリアなど7カ国の市民について90日間、米国への入国を禁止した。対象国はテロが多発しているとしてオバマ政権時に、渡航経験者の入国基準を厳しくした国だ。

 ただ、いずれもイスラム教徒が人口の過半数を占めている。このため、実質的に、大統領選中に打ち出して物議を醸した「イスラム教徒の入国禁止」だとの批判が起きている。

 しかし、トランプ氏は28日、記者団に「イスラム教徒の入国禁止ではない」と反論。さらに「とてもうまくいっている。空港やどこでも見るといい。極度に厳しい入国審査をしていく」と語り、大統領令の正当性を強調した。

 政府高官は大統領令による影響を受けるのは「比較的少数の集団だ。多くの渡航者にとって、ほとんど混乱はない」と強調。その上でこう言い切った。

 「重要な点は、海外に住む者は誰も、米国に入国する権利を有していないということだ。主権国家として米国が方法を確立できる」(ニューヨーク=中井大助、ワシントン=杉山正)

 ■中東で対抗措置の動き

 イラク首都バグダッド中心部の国際警備区域内にある米国大使館。取材に応じた大使館職員によると、本来ならビザ申請者であふれる日曜日にもかかわらず、受付や待合室に人影はないという。ビザ関連のすべての業務が止まっていた。

 「トランプの発言は選挙向けのパフォーマンスだと思っていた」。イラク政府職員の女性(37)は困惑を隠さない。来月、米国に出張する予定でビザ更新の手続き中だ。「イラク人が米国の脅威になるはずがない。むしろ経済に貢献してきた。まったく理解できない」

 エジプト航空の米国便担当者は、トランプ氏が27日に大統領令に署名する数時間前、米当局から「入国制限された7カ国出身の米国ビザ取得者がいても搭乗させないように」との依頼があったとロイター通信に明かした。同航空はカイロ発ニューヨーク行きを週5便運航。28日はカイロで乗り継いでニューヨークに向かおうとした5人のイラク人が搭乗を許可されなかった。

 レバノンの首都ベイルートから米アトランタに向かう予定だったシリア人家族も経由地のパリで送り返された。アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ航空の広報担当者は、米国便の乗務員を変更せざるをえなくなったとロイター通信に述べた。

 トランプ氏の大統領令に対しては、中東全体で怒りが広がっている。

 イラン外務省は28日、「対抗措置を取る」とする声明を出した。「テロの扇動者たちに利用されてきた、寄る辺ない若者たちとの亀裂を深め、テロリストの数を増やす土壌となる」と指摘。イラン国民がテロを起こした例はないとし、「米国民を尊重し、敵意に満ちた政策を取る米政府とは区別するが、政治的、法的な対抗措置を取る」とした。新たなビザ申請者に対する許可要件を厳しくすることなどが想定される。

 イラク議会の外交委員会は29日、政府に対して対抗措置の実施を求めた。イラクには、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘を支援する軍人数千人に加え、石油企業関係者など多くの米国人が滞在する。仮にイラクが米国人の入国制限に踏み切った場合、米国が関わる石油開発などへの影響は計り知れない。(カイロ=翁長忠雄、ドバイ=渡辺淳基、テヘラン=神田大介)

 ■日本からの渡航、政府は停止せず

 日本の航空各社や国土交通省によると、29日夕の時点で、国内でトラブルの情報はない。全日空広報は「現状では特に対応は取っていない。国の指示に従って動くことになると思う」。日本航空も「どう対応するか、検討をこれから始める」としている。

 法務省によると、出入国管理及び難民認定法で規定する「出国確認の留保」にあたる外国人以外、日本政府が出国を拒否することはできない。日本国内で犯罪をした疑いがあって逮捕状が出ている人などが対象となる。日本政府が米国の方針を元に出国を止めることはないという。

 ■IT企業・大学・スポーツ、対応苦慮

 米国のビジネスや教育の現場にも、混乱が広がる。外国人を多く抱えるシリコンバレーなどの米IT企業や各地の大学、スポーツチームで影響が懸念される。米国の成長を支えてきた源泉を、内向きな政策が直撃している。

 「アップルは、この政策を支持しない。アップルは移民なしに成り立たない。影響を受ける社員には法務部が連絡を取っており、あらゆる支援をする」

 ウォールストリート・ジャーナル紙などによると、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は社員向けのメッセージでこう書き、最後にマーチン・ルーサー・キング牧師の「我々はみな別々の船でやってきた。しかし、今は同じボートに乗っている」との言葉を引用した。

 米国のIT企業は、世界中から優秀な技術者を集めてビジネスを成り立たせてきた。多くの外国人社員が、特殊技能を持つ人が対象のビザを取得して働く。

 グーグル(アルファベット傘下)のスンダー・ピチャイCEOは社内向けの連絡で、少なくとも187人の社員が影響を受けることを明らかにした。ピチャイ氏はインド出身で、「我々の同僚が個人的に代償を払わされるのを見るのはつらい」と書いた。グーグルは「社員や家族への影響だけでなく、才能ある人材を呼び込む際に障壁ができることを懸念している」としている。

 マイクロソフトも「(大統領令で)指定された国から合法的に入国していた社員に影響が及ぶことを懸念しており、彼らには法的な支援をしている」とのコメントを寄せた。

 米国際教育研究所によると、米国の大学には外国人留学生が約100万人いるという。コーネル大学は27日、該当の学生に「国外に出る予定がある場合には、大学側と協議してほしい。学位を取得するまで、大学はあらゆる支援をする」などとしたメールを送り、教官が学生と直接連絡を取った。スタンフォード大学も同日、フェイスブック上で該当者は海外渡航を取りやめるよう呼びかけている。

 米国のニュースサイト、ダラスニュースは、大リーグのレンジャーズでプレーするダルビッシュ有選手の父親で、イラン出身のファルサさんも米国に入国できず、息子の応援ができない可能性があると報じた。球団は選手本人に影響がないか、確認するという。

 米プロバスケットボール協会(NBA)も28日、米国務省に問い合わせるなど情報収集を始めたという。USAトゥデー紙によると、NBAにはスーダン(現在は南スーダン)生まれの選手が2人いる。カナダにもNBAチームがあるため、対戦の前後に問題が起きる可能性がある。(ワシントン=宮地ゆう)



(3) 英首相に国内から不満 訪米中、難民政策批判避ける

 トランプ米大統領の就任後初の外国首脳との会談相手として、「特別な二国間関係」を強調したメイ英首相が訪米中、米国の難民政策への明確な批判を避けたことに波紋が広がっている。英メディア、与野党とも対応への不満が続出。メイ氏が招請したトランプ氏の訪英の延期、中止を求める声も出ている。▼1面参照

 ■帰国後一転「同意せぬ」

 英首相府はメイ氏が訪米から帰国した直後の28日夜、米大統領令による米国の入国制限について「この種の対応には同意しないし、我々はそのような措置は取らない」との声明を出した。メイ氏は、米国からの帰路に立ち寄ったトルコでも「米国の難民政策は米国の責任だ」などと語り、直接的な批判を避けていたが、対応を変更した。

 首相府の声明は「大統領令がもし、英国民に影響があれば、米政府に明確に申し立てる」とし、中東やアフリカの対象国出身で英国籍を持つ市民への影響に言及した。英メディアは、声明について、イラク出身の与党保守党議員ナジム・ザハウィ氏が「入国禁止」の対象になりうることを受けたものと伝えている。

 野党労働党のコービン党首、自民党のファロン党首は29日、メイ首相が訪米中に招請したトランプ氏の国賓としての訪英について、大統領令を撤回しない限り、中止または延期すべきだと語った。ファロン氏は「英国民は我が国のメイ首相がトランプのプードルのように振る舞うのを見た」と強く批判した。英議会の請願サイトには、トランプ氏の訪英中止を求める署名が、議会での討論に必要な10万を超えた。

 ザハウィ議員はツイッターで「自分の出生国によって米国への入国が禁じられると聞き、悲しい」と発言。これを受けて別の保守党の議員が「何が特別な二国間関係だ。越えてはならない一線はある」と述べるなど与党内からも対応の甘さを指摘する声が出ている。

 英公共放送BBCもサイトで「首相は、(訪米中)トランプ氏を批判しなかったことへの批判が広がって何時間も経ってから厳しい対応に変えた」「トランプ氏がさらなる一線を越えたとき、メイ氏が批判しなければ、彼女は強者に従う弱いパートナーとみられるだろう」との解説を載せた。(ロンドン=石合力)



(4) 米ロ、IS対策で一致 独仏は排外姿勢に懸念 電話会談

 トランプ米大統領は、28日、ロシアのプーチン大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領らと相次いで電話会談した。プーチン氏とは両国関係の改善を確認し、「イスラム国」(IS)など過激派組織の壊滅に向け協力を進める方針で合意した。一方、独仏首脳はトランプ氏の排外的な姿勢に懸念を示した。▼7面=「米は同盟国」

 ホワイトハウスは声明で、プーチン氏からの電話を「祝福の電話」と表現。約1時間にわたった会談を、オバマ政権期に悪化した両国関係の改善に向けた「重要な一歩」とした。

 米側に先立って声明を発表したロシア大統領府は、核戦力の均衡やウクライナ危機など様々な課題を列挙し、すべての分野で協力を進めることで一致したとした。貿易経済関係の進展でも一致したという。

 また今後も定期的に協議を続け、実際の会談を調整することでも合意した。

 一方、独仏との間では、北大西洋条約機構(NATO)の重要性について一致しつつ、全加盟国が公平な費用負担をするべきだとした。

 ロイター通信によると、メルケル氏はトランプ氏による難民などの一時入国禁止に対して、遺憾の意を示した。オランド氏も、トランプ氏を牽制(けんせい)。仏大統領府によると、「不安定で不確実な世界にあって、内向きな考えでは解決策は見いだせない」として、保護主義的な政策に懸念を示したという。(ワシントン=杉山正、モスクワ=駒木明義)



(5) 「2度の大戦、米は同盟国」プーチン氏 米ロ電話会談

 トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領の電話会談は、過激派組織「イスラム国」(IS)対策での協力を打ち出し、関係改善を予感させるものになった。一方、北大西洋条約機構(NATO)で連携してきた欧州各国は、ウクライナ問題などでロシアへの警戒を解いていない。ロシアとの融和に走れば、同盟国との溝が深まりかねない。

 「ロシアは過去2回の世界大戦で米国の同盟国となり、200年以上の長期にわたり支持してきた」

 ロシア大統領府によると、電話会談でプーチン氏はトランプ氏にこう伝えたという。冷戦も、オバマ前政権期の関係悪化もなかったかのような言葉に、トランプ氏と良好な関係を築きたいという思惑がにじむ。

 一方、トランプ氏が会談と同じ28日に署名した対IS戦略強化の大統領令には「新しい連合パートナーの確認」とある。米軍主導の有志連合から、ロシアも排除しないことを示唆する。

 ロシア大統領府は電話会談について「シリアでの対テロ戦での協力に優先順位が置かれた」と発表した。シリアは中東で唯一ロシアが空軍と海軍の拠点を維持しており、戦略的な重要性が高く、今後も自らに好都合な政権を維持するため、米国の理解と協力を取り付けたい意向だ。

 IS撲滅などテロ対策での連携強化は、ドイツやフランスも一致する点だ。

 ただホワイトハウスが会談後に出した声明には、オバマ前政権が問題視してきたロシアのクリミア併合やシリアでの残虐行為への言及はなかった。大統領選を巡るロシアのサイバー攻撃にも言及しなかった。

 オバマ前政権は、クリミア併合とサイバー攻撃でロシアに制裁を科した。だがトランプ氏は制裁解除の可能性を示唆。取引材料として核軍縮をあげている。合理的な説明のないロシアとの接近は、米議会の疑念も生む。共和党重鎮のマケイン上院軍事委員長は「プーチンは対ISを含め、絶対に我々のパートナーたりえない。(米大統領が)そう考えないならば、世間知らずで危険だ」と牽制(けんせい)した。

 米ロの間では、利害が鋭く対立する問題も多い。米国が欧州やアジア太平洋地域で進めるミサイル防衛(MD)システムの配備を、ロシアは安全保障上の脅威と受け止めている。イランとの核合意の破棄も容認できない。(ワシントン=杉山正、モスクワ=駒木明義)



(6) 而今…指ふるることのみばかり思えただ…道元禅の悟り

      https://www.google.co.jp/?gws_rd=ssl#q=%E8%80%8C%E4%BB%8A%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3 2007/06/16 - 普通は「じこん」と読みます。 漢和辞典の意味では、「ただいま」といったような意味です。 「而今而後」=今からのち、今後(『論語』泰伯) 仏教読みでは、「にこん」になります(「じこん」でもOKですが)。 意味はやはり「目下、ただいま」という意味で、

自分ができることから、今、この瞬間から。 さて、2013年のスタート月である今月のキーワードは、. 『而今(じこん)』. をお送りしたいと思います。 「而今」とは、道元禅師が中国での修行時代に悟った世界観。 意味は、「ただ、今、この一瞬」 道元禅師は悟ります―.

2016/03/29 - 禅語(3)而今(にこん、今ここに). 作家の中野孝次さん(1925-2004)の座右の銘が「而今」でした。 禅を学ぶ者にはなじみの言葉ですね。これまでほとんどの禅師や仏教研究家がその意味を、 ・・・過去はもう過ぎたのでこだわるな。未来は ...

2013/07/14 - ... かれています。 その中で「而今(にこん)」という禅語をとり... ... 足るを知る」という意味の<知足>という言葉も禅語とのことでした。 自分にとっては ... 而今(にこん) (hide-san): 2013-07-14 10:47:43: 難しいことを考えますね。 ボクはカメラの ...

2014/06/26 - それが私たちの生きていく現実であり、道元禅師はこれを「而今」(にこん)と言われました。 他人がしたことは自分がしたこととは違う。 後回ししたら、後回しした時にやるべきことも更に後回ししなくてはならなくなり、結果的に全てを後回しにして ...

而今(じこん)」の意味がカッコイイ!「たった今。まさに今、この時。」 2016.06.25. imgrc0063977666. 三重県・木屋正酒造の 而今 (じこん) 純米吟醸 山田錦 火入れ を呑んでみました! IMG_7807. 世の日本酒好き達が愛してやまない「而今」。 その「而今」 ...

2002/06/01 - 第四十一話 而今にこんに生きる 学道の人は、後日を待って行道せんと思ふことなかれ。 只、今日今時を過ごさずして、日日時時を勤むべき也。 (正法眼蔵随聞記) 仏道を学ぶ人は、後日に修行しょう、などと考えてはいけません、 今日、この時 ...

2016/08/24 - 今、この瞬間を大切に生きる――。禅を学んでいると、こんな意味の禅語が多いことに気づきます。「而今(にこん)」もその一つです。 時は刻々とすぎていきます。 今という時間がとどまることはありません。, 今、この瞬間を大切に生きる――。

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(7) (トランプの時代)工場移転介入、称賛と不安 米ラストベルト

 トランプ米大統領が特定企業の国外への工場移転を名指しで批判し、計画の見直しを迫っている。製造業がさびれた「ラストベルト(さびついた地帯)」に住む支持者らは「型破りな行動力」と称賛するが、当事者の工場労働者らの間には戸惑いも広がる。

 ■雇用維持、行動力を歓迎

 「トランプは有言実行の実業家で、口先だけの政治家とは実行力が違う」

 1月16日、米中西部インディアナ州の州都インディアナポリスに近いモーガン郡ムーアズビル。建設作業員のドナルド・トラスティーさん(54)は食堂で、親指を突き出してトランプ氏を絶賛した。

 トランプ氏が名指しで批判してきた空調機器大手キヤリアがメキシコへの工場移転計画を見直し、一部の雇用が維持されることを評価。妻のコニーさん(54)も「中西部の雇用を守るという、どの大統領も実現できなかったことを就任前にやってしまった」と目をまん丸く見開いて笑った。

 昨年11月の大統領選でトランプ氏は、モーガン郡で75%を得票。19%の民主党候補クリントン氏を圧倒した。トラスティーさん夫妻は、雇用保護の訴えが地元民に響いたのは間違いないと主張。トランプ氏は同州を含む五大湖周辺の「ラストベルト」で勝利を重ね、大統領選を制した。

 トランプ氏は当選後、「私は感謝祭の日もキヤリアを米国に残すために働く。交渉は前進中」(昨年11月24日)とツイッターで発信し、同州知事でもあったペンス次期副大統領(当時)を伴ってキヤリアを訪問。その後同社の計画変更が発表され、トランプ氏は「1100人以上」の雇用が守られると胸を張った。

 企業経営への異例の介入は、トランプ支持者には「実業家の行動力」の象徴として大歓迎されている。

 ■進む自動化、将来の失業懸念

 だが、キヤリアの工場周辺から聞こえてくる声は歓迎一色ではない。

 「トランプ氏が雇用を守ると言うから期待してたけれど、勤続の短い私は解雇される。今と同じ時給17ドルをもらえる仕事は他では見つかりそうにない」。勤続約3年のキヤリア従業員、デニス・ギルさん(30)は子ども3人を抱えて途方に暮れていた。8歳の長男のバスケットボールクラブや3歳の長女の水泳教室はとても続けられそうにない。

 「政治的な思惑があるのではないか」。勤続15年の従業員T・J・ブレイさん(32)は雇用が守られるものの、素直には喜べない様子だ。「失業を免れたことはうれしい」と感謝を口にしつつも、懸念が残るという。トランプ氏は「1100人以上の雇用を守る」と誇ったが、実際に守られるのは730人ほどで、残りは解雇される見通しだ。

 自らもリーダーを務める労働組合には、やはり海外移転する別企業の労働者もいて「私たちの雇用はどうなるのか」と声を上げているが、トランプ氏が本気で動く気配はない。

 ブレイさんは、オートメーション(自動化)の波も懸念する。トランプ氏は昨年12月1日に工場を訪問した際に、キヤリアが工場の「修繕」のため1600万ドル(約18億円)を投資するとし、「素晴らしいクリスマスになる」と絶賛した。

 その4日後、親会社の幹部がテレビのインタビューで、修繕とは「競争力を高めるための自動化」と説明し、「究極的には雇用減を意味する」と述べた。

 ブレイさんがクリスマス休暇後に職場に戻ると、管をネジで連結するラインに新しいロボットが導入されていた。「実はその仕事は私が昨年の夏まで2年間やっていた仕事なんだ」

 トランプ氏らが選挙戦で自由貿易を批判していた昨年、米通商代表部のフロマン代表(当時)も、雇用減や賃金の伸びの停滞は「グローバル化というよりも自動化の産物だ」と繰り返し訴えていた。

 トランプ氏は個別企業の経営判断に介入して成果を強調するが、効果の持続性には疑問がつきまとう。海外移転を一時的に止めることはできても、自動化の波は止められそうにない。(インディアナポリス=金成隆一)

 ■「誇張」訴えた労組幹部に脅迫も トランプ氏も批判

 「お前の自家用車の車種を知っているぞ」「家には子どももいるんだろ?」

 キヤリア従業員が所属する全米鉄鋼労働組合(USW)支部のチャック・ジョーンズ組合長(65)の元に脅迫が届いている。トランプ氏の発表に誇張が含まれていたとして、米メディアで批判した直後からだ。

 トランプ氏は「1100人以上」の雇用を守れたと誇ったが、ジョーンズ氏によると、実際に維持される雇用は730人ほど。「大喜びした翌日に解雇を知った労働者がいる。正直になれ、労働者をだしにするな、と腹を立てただけだ」。ジョーンズ氏は今も怒りが収まらない。

 トランプ氏はジョーンズ氏を名指しし「労働者の代表としてひどい仕事をしてきた」「話す時間を減らし仕事に使え」と批判。直後から、ジョーンズ氏の携帯電話も事務所の電話も鳴りっぱなしに。そこに脅迫が含まれていた。友人は「防弾チョッキを着ろ」と心配してくれている。

 ジョーンズ氏はトランプ氏が、一般市民が相手でも個人攻撃をすることを憂慮する。「一連の個人攻撃は『私を批判しない方が身のためだ』というメッセージだ。大統領がすることではない」(インディアナポリス=金成隆一)



(8) (ここに注目!)セルビアが宣伝列車 目覚める民族主義

 米国のトランプ政権発足と前後して、旧ユーゴスラビアのセルビアと、9年前に同国から独立を宣言したコソボの緊張がにわかに高まっている。14日、セルビア政府が首都ベオグラードからコソボ北部に向け、車両を自国の国旗の色に染めて「コソボはセルビアだ」と20カ国語で大書きした宣伝列車を出発させたのだ。

 この路線の運行は1998~99年の武力衝突以来、途絶えたままだ。コソボは強く反発し、治安部隊を配置。セルビアは境界の一歩手前で列車を停止させた。

 奇妙だったのは、セルビア政府がコソボとの関係改善交渉を進める中でこれが起きたことだ。旧ユーゴ紛争以来の国際的な孤立から抜け出すため、ブチッチ首相が欧州統合への参加へとカジを切り、欧州連合(EU)もそれを支えてきた。

 だが、欧州統合を否定する右翼の台頭や、紛争時にセルビアの後ろ盾だったロシアとの接近を公言するトランプ米政権の誕生で、セルビア国内でもコソボとの和解を拒否する民族主義勢力が勢いづいている。議会では米大統領選の直後、極右民族派政党の党首がトランプ氏礼賛の歌を流した。

 セルビアは大統領選を春に控える。宣伝列車の背景には、ブチッチ首相が「コソボ独立拒否の原則は譲らない」という強い姿勢を国民に示す必要に迫られたという事情がありそうだ。

 「魔人は瓶から出た。もう元に戻らない」。「米国第一」のトランプ大統領が就任した翌日、EU攻撃を強めるオランダの右翼、ウィルダース自由党党首は繰り返した。元は、英国独立党のファラージ前党首の言葉だ。英国の国民投票でEU離脱が決まった夜、欧州統合を進めた既成政治への人々の反発を「アラジンの魔法のランプ」に例えた。

 体制を攻める言葉はいつも歯切れがいい。だが、地域統合や国際協調は、国境の枠を超えてより多くの人の利益を目指すことで紛争の芽を摘んできた。それを忘れては、瓶から飛び出した「自国第一主義」や「反エリート」という魔人が、民族主義というもう一つの魔人を目覚めさせかねない。(ウィーン=喜田尚)



(9) 「カナダは難民を歓迎する」 トルドー首相、ツイート

 カナダのトルドー首相は28日、ツイッターで「迫害、恐怖、戦争を逃れようとしている人たちへ。信仰にかかわらず、カナダの人はあなたたちを歓迎する。多様性は私たちの力だ」と発信した。米トランプ政権が難民の受け入れを停止したことに直接触れていないが、対照的な姿勢を打ち出す形となった。

 トルドー氏はさらに、「カナダへようこそ」との説明をつけて、自身が腰を落として少女と話している様子の写真も発信した。ロイター通信によると、2015年にシリアから到着した難民を出迎えた時の写真という。トルドー政権は同年に就任してから、難民受け入れ拡大を目指している。同年11月以降、シリアからだけで4万人近い難民がカナダに到着しているという。 (ニューヨーク=中井大助)



(10) 壁建設、イスラエル首相絶賛 メキシコ、拒絶と失望表明

 イスラエルのネタニヤフ首相は28日、トランプ米大統領がメキシコ国境への壁建設など不法移民対策を強化する大統領令に署名したことについて、ツイッター上で「トランプ大統領は正しい。素晴らしいアイデアだ」と絶賛した。

 ネタニヤフ氏は、イスラエルがエジプトのシナイ半島との国境沿いに設置したフェンスに触れて、「私はイスラエル南部の国境に壁をつくり、あらゆる不法移民(の流入)を防いだ。大成功だ」とし、イスラエルと米国の国旗の絵文字を、書き込みの末尾につけた。

 メキシコ外務省は28日、イスラエル政府に対し、強い拒絶と失望の念を表明する声明を発表した。「メキシコはイスラエルの友人であり、そのように扱われるべきだ」と求めた。

 声明は「メキシコとイスラエルは人種差別や外国人排斥に反対してきた共通の歴史を持つ」と指摘。「メキシコは世界のあらゆる差別撲滅に向けイスラエルと共に努力する」とした。

 メキシコのユダヤ人社会も強く反発しており、ユダヤ人団体が「我々はネタニヤフ首相の視点とは考えが一致せず、その主張を明確に拒絶する」との声明を出した。(エルサレム=渡辺丘、ティフアナ〈メキシコ北部〉=田村剛)



(11) 「米大使館、エルサレムに」 イスラエル首相

 イスラエルとパレスチナが帰属を争うエルサレムへの米大使館移転について、イスラエルのネタニヤフ首相は29日の閣議で「米大使館はエルサレムにあるべきだ」と述べた。2月にワシントンで予定されるトランプ米大統領との首脳会談を前に移転を改めて求めた。

 トランプ氏は選挙戦から国際社会がイスラエルの首都と認めていないエルサレムに米大使館を移すと表明。ただ、26日には米FOXテレビに「時期尚早だ」と態度を保留した。ネタニヤフ氏は「エルサレムはイスラエルの首都」として、「米大使館だけでなく、すべての国の大使館はここに来るべきだ」と語った。(エルサレム=渡辺丘)



(12) 米軍増強へ大統領令 即応性・核戦略見直し要求

 トランプ米大統領は27日、米艦船や戦闘機の増強などを目的とした「米軍再建」の大統領令に署名した。1カ月の間に米軍の危機に対応する即応性を検証するほか、核兵器の近代化やミサイル防衛システムの強化を盛り込んだ。

 トランプ氏は同日、国防総省で開かれたマティス新国防長官の宣誓式典で「米国の軍事力は誰からも疑問視されなくなるだろう」と述べ、新政権で米軍を強化する方針を強調した。

 大統領令では、米軍の即応性を重視し、現在の能力を30日間で検証し、能力向上のために必要な予算を提言するよう要求。「米軍を再建する」とし、来年1月をめどに国防長官に新たな「国防戦略」の策定を指示した。さらに、核兵器の近代化などを盛り込んだ新たな「核戦略見直し」や、ミサイル防衛システムの強化計画を策定するよう求めた。

 トランプ氏は大統領選で、米海軍艦艇を350隻に増やし、戦闘機を100機増強するなど米軍強化を訴えていた。また、マティス長官は27日、ロッキード・マーチンの最新鋭ステルス戦闘機F35と、ボーイングが製造する大統領専用機「エアフォースワン」の調達コスト見直しを指示した。特にF35については、FA18戦闘攻撃機の改良で代替できないか検討するとしている。日本はすでに米側からF35の調達を開始しており、もしFA18で代替することになれば、影響が出そうだ。(ワシントン=佐藤武嗣)



(13) (声)深刻ないじめ、みんなで共有を

 無職 玉木信子(神奈川県 67)

 東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に自主避難している男子中学生が、小学生のころにいじめを受けていた問題で、市教育委員会が設けた第三者委員会が同級生らに総額約150万円ものお金を渡していたことを「いじめ」と認定しなかった。

 男子中学生は「またいじめが始まると思って、何もできずにただ怖くて仕方なくて、お金を出した」と。これが「いじめ」でなければ何なのか。言葉や行為を受けた側が「いじめ」と感じれば、「いじめ」なのではないか。

 私は恐喝に等しい「犯罪」だと思っている。同級生らは、自分たちの行為をどう考えていたのだろうか。

 文部科学省にお願いしたい。全国で「いじめ」が原因で児童や生徒が自殺や不登校に至った深刻な事例を調査し、全国の学校に周知し、先生だけでなく児童・生徒にも情報を共有させてほしい。

 学校はそれを活用し、先生と児童・生徒がみんなで話し合ったらどうだろうか。「いじめ」と思っていない行為が「相手を自殺や不登校にまで追いこんでしまうかもしれない」と気づき、いじめをやめる子も出てくると思う。



(14) 米国を覇権国からふつうの国に戻すトランプ 国際ニュース解説

2017年1月28日   田中 宇

 まず今回書きたいことの概要。トランプが大統領就任とともに始めた経済戦略の要諦は「世界の消費に責任を持つ覇権国としての責務を放棄し、米国を消費の国から生産の国に引き戻すことで経済成長と雇用増に結びつけ、支持率維持と再選を狙うこと」だ。トランプがやると言っている自由貿易圏の破壊、関税引き上げ、輸出産業へのテコ入れ、国際化した米大企業の母国引き戻しは、いずれも経済覇権放棄の具体策だ。 (What Trump Means For Vol Trading: "This Is The Start Of Global Regime Change") (トランプ革命の檄文としての就任演説)

 トランプのTPP離脱を受け、豪州NZは、米国が抜けたTPPに中国を引き込み、TPPとRCEPの統合を図っている。中国は、米国抜きの自由貿易国際体制の守護役に名乗りを上げ、欧米側で自由貿易を推進する国際支配層が集まるダボス会議に習近平が呼ばれ、欧米エリートと中国が結束する新たな世界体制が立ち上がっている。自由貿易支配層は米国を追い出され、中国BRICSにすり寄っている。日本など自由貿易を信奉する世界の多くの国は、経済覇権国になる中国との敵対をやめていかざるを得ない。米国が買ってくれない以上、中国などに売り込むしかない。 (TPP Is Dead. What Now?) (TPP: 'Australia first' trade policy outlined by Scott Morrison after Donald Trump's withdrawal)

 日本やカナダは、対米従属や中国敵視に固執してTPPに関する「トランプ説得・翻身」に望みをかけるが、覇権放棄はトランプ革命の根幹なので説得翻身は無理だ。メキシコはトランプと交渉しようとしたが、国境の隔離壁の建設費を出せとトランプに言われ、米墨サミットは中止された。トランプは、壁の建設費徴収を口実に、メキシコからの輸入品に高関税をかける。トランプは、いずれ他の国々からの輸入品にも高関税をかけそうだ。トランプは、英国と2国間の貿易協定を結びたいが、それは「英国みたいにEUから離脱する国は、米国が貿易協定を結んでやる」という態度をとって、EUを分裂させるドイツ=EU敵視策だ。概要ここまで。 (U.S.-Mexico crisis deepens as Trump aide floats border tax idea) (Mexico president cancels meeting with Trump over border wall) (米欧同盟を内側から壊す)

▼米国との2国間貿易協定もマイナスしかない

 ドナルド・トランプ米大統領が、TPPへの参加を取り消す大統領令を出したことに対し、日本や豪州、ニュージーランド(NZ)、カナダなどの加盟諸国が、いくつかの異なる姿勢を表明し、大騒ぎになっている。一つの姿勢は、日本やカナダが発している「米国抜きのTPPは無意味だ。TPP離脱を取り消すようトランプを説得する」というものだ。トランプは企業人なので、TPP加盟が米国の経済利得になることにいずれ気づいて再転換するはずという考え方が、この姿勢の原動力だ。だが、これは非現実的だ。 (Canada Hopeful TPP Can Survive Without U.S., Trade Minister Says) (Cannot Enter Into Force Without US - Canada’s Foreign Ministry) (TPP trade deal dead without US: Canada)

 すでに何度も書いたが、トランプの基本戦略は「覇権の放棄」であり、TPP離脱はこの戦略に見事に合致している。トランプはTPP離脱を決して撤回しない。トランプは企業人として経済利得を重視するが、その利得は非常に長期的な、覇権の視野に立っており、年単位の経済成長だけを重視する狭い視野と異なる。 (トランプの経済ナショナリズム) (トランプが勝ち「新ヤルタ体制」に)

「米議会がトランプを弾劾してくれるはず」というカミカゼ式の楽観論が存在するが、それも甘い。トランプは、議会の多数派である共和党の大統領で、共和党議員たちを喜ばせるため、軍事費増加、イスラエル強烈支持、環境や金融に関する規制の撤廃などをせっせとやっている。トランプは英国と2国間の貿易協定を結びそうだが、これも、米政界に影響力を持つ英国を厚遇して取り込む策だ。共和党の多くの議員は、覇権放棄屋のトランプに不満だろうが強く反対せず、弾劾決議案は通らない。トランプを辞めさせたいジョージソロスの団体ですらが「トランプの弾劾は無理だ」と断言する記事を出している。 (Donald Trump and the shape of things to come) (Mexico Warns It Is Ready To Quit NAFTA If Trump Crosses "Red Lines")

 日本やカナダには、TPPやNAFTAといった多国間の貿易協定でなく、米国と2国間の貿易協定の締結を希望する道もある。だが、自由貿易を否定して覇権放棄に走るトランプは、多国間、二国間を問わず、日本などが満足する貿易協定を結ぶ気がないだろう。日本が米国と貿易協定を結ぶためには、トランプがトヨタなど外国の自動車などのメーカーに求めた「主要部品を含めた完全な米国内での生産」に同意せねばならない。悪い貿易協定を結ぶぐらいなら、トランプの任期が終わるまで協定を結ばない方が良い。英国は、米国と2国間協定を結ぶ方向だが、英米間の貿易はすでにほとんど自由化されており、新たに協定を結ぶ利得は少ないと英中銀が指摘している(しかも英国は、EUを離脱する手続きが完了しないと新たな貿易協定を結べない)。 (Japan says preparing for all possible U.S. trade contingencies) (Japan Gears Up For Trade War) (UK-US trade deal will have 'very small upsides' for Britain, says former Bank of England economist)

 日本やカナダと対照的に、豪州とNZは「米国がTPPをやめるというなら仕方がない、中国をTPPに入れよう」と提案している。今のままの形のTPPに、中国が加盟したがるとは思えない。TPPには、超国家的な(主に米国の)国際大企業が、加盟諸国の貿易関連政策(通商、税制、環境、雇用、商品安全などに関する政策)のうち「不当」と感じたものを訴追して潰せる超国家法廷の条項(ISDS)など、大企業が国家政府より上位に立てる仕掛けがついている。国家の権力が異様に強い中国は、こんな民間企業優位の仕掛けを決して認めない。 (After U.S. exit, Asian nations try to save TPP trade deal) (Trump Hands China A Gift In Dumping Trans-Pacific Partnership)

 TPPからISDS条項を外し、民間企業の権限を大幅に削ぎ、国家間の協定に変質させた上でなら、中国がTPPに入りうる。だがそうなると、TPPは、中国が主導するTPPのライバル貿易圏であるRCEP(中国+ASEAN+日韓豪NZ印)と、あまり違いがないものになってしまう。米国が抜けたTPPに中国を招き入れる豪NZ案は、TPPとRCEPを合併する案だ。米国抜きだと、中国が最大市場になるので、RCEPがTPPを吸収合併する、つまりTPPは中国主導になってしまう。トランプのTPP離脱は、隠然と中国を強化する隠れ多極主義的な策でもある。 (Canada to seek increased trade with China, Japan after death of TPP) (In Asia, China looks like the winner after scuttling of Trans-Pacific Partnership)

▼米国を、覇権国になる前の戦前の状態に戻す

 カナダは右派政権なので、中国の台頭を認めたくない。だがカナダはTPPだけでなく、既存の貿易圏であるNAFTA(米加墨)も、トランプにダメ出しされ、再交渉の俎上に載せられて崩壊寸前だ。カナダ経済は圧倒的に米国に依存している。米国経済もカナダに依存しており「企業人のトランプが、カナダとの自由貿易を破壊したいはずがない」という楽観論が出回っているが、すでに述べたように、トランプは別のところを見ている。それを察知しているカナダ政府は、米国抜きの体制など考えられないと言う一方で「米国に頼れないなら、中国や日本などアジア諸国との関係を強化せざるを得ない」とも言い出している。中国との経済関係を重視するほど、豪州NZ案に賛成するようになる。 (Malcolm Turnbull, Shinzo Abe agree to push for TPP despite Trump scepticism) (Australia tries to save TPP after Trump exits deal)

 この面に関して、浅薄な中国敵視に拘泥する日本は沈黙しているが、事態はカナダとさして変わらない。安倍首相は、トランプ就任前に豪州を訪問し、トランプがTPPを離脱したら、日本と豪州が協力して事態を乗り切ることを決めている。日本では、外務省などが官僚独裁体制を維持するため徹頭徹尾の対米従属・中国敵視の姿勢だが、安倍自身は政治的な野心(官僚独裁を打破して国会主導にする真の民主化の野望??)から、外務省などと微妙に違う姿勢にも見える。 (A 'Plan B' Trans-Pacific Partnership agreement could still go ahead without the United States, Prime Minister Bill English says) (見えてきた日本の新たな姿)

 安倍は年初に、反米のドゥテルテが率いるフィリピンも訪問した。昨夏のドテルテ就任以来、フィリピンを訪問した外国首脳は安倍が初めてだった。安倍は豪州と新たな軍事協定も結んだ。ほのかに再び見えてくる「日豪亜」。もし、米国も中国も入らない場合のTPPを考えてみると、それは「拡大版の日豪亜」「日豪亜+環太平洋」「米国と中国の間に位置する第3の影響圏」だ。 (潜水艦とともに消えた日豪亜同盟) (Japan's Abe visits Philippines as Duterte's first top guest)

 中国の台頭が進むと、この影響圏も中国に吸収されてしまう。日本が韓国朝鮮みたいな対中従属国に成り下がりたくないのなら、この影響圏を、豪州やドテルテと一緒につかむしかない。ISDSの裁判所の判事には、米国の弁護士軍団でなく、日豪亜の政府と内通した官僚出身者などが就任する。TPPは、多国籍大企業による覇権体制という従来の構想と、似て非なるものになる。米国がTPPを不可逆的に離脱しても、安倍はしつこくTPPを推進している。表向き、それは「トランプをなんとか説得する」という、日本外務省的な「徹頭徹尾な対米従属」の路線に見えるが、もしかするとこっそり「拡大版の日豪亜の貿易圏」を狙っているのかもしれない。 (Who's Afraid of the Trans-Pacific Partnership?)

 TPPとは何だったのか、についてもう少し。ISDS条項などを見ると、TPPやNAFTAは、米国の国家の覇権体制というより、自由貿易体制下で儲けが増える米国などの多国籍企業群による覇権体制だ。ダボス会議に集まるような人々が、TPPやNAFTAを推進してきた。だから、TPPやNAFTAを潰そうとするトランプやその側近たちは、誰もダボス会議に招待されていない。ダボス会議に招待され、自由貿易体制を発展させようと演説して最も注目されたのは、中国の習近平主席(大統領)だった。 (The 2017 “Davos Consensus”—More Welfare and Warfare) (Australia, New Zealand pledge to salvage TPP after US exit)

 ダボス会議には来なかったが、ドイツのメルケル首相も同時期に、自由貿易体制の重要性を強調する演説を行い、トランプの保護主義を批判した。メルケルも習近平も、トランプに敵視されている。自由貿易体制は今や、トランプの米国が敵視する勢力によって守られている。豪州などが、米国がTPPから出て行くなら代わりに中国に入ってもらおうと言い出すのは不思議でない。「地球温暖化」対策も、かなり前から世界的な主導役は発展途上諸国を率いる中国になっている。トランプは、温暖化人為説を否定している。温暖化と自由貿易に関するトランプの動きは、同じ構図になっている。 (As Trump stresses 'America First', China plays the world leader) (新興諸国に乗っ取られた地球温暖化問題)

 トランプは、第二次大戦以来の世界的な単独覇権国である米国を「ふつうの大国」(西半球の地域覇権国)に戻そうとしている。これは米国を、覇権国になる前の戦前の状態に戻すことでもある。これまでの米国は、覇権国の義務である世界経済の牽引役として、自国の製造業を意図的にないがしろにして、世界から無関税で旺盛に輸入して消費する役目を果たしてきた。トランプは、この役目を放棄し、米国の製造業を蘇生し、輸入や消費をがんばる単独覇権国でなく、製造や輸出で儲ける「ふつうの国」に戻そうとしている。 (Corporate America split over radical import tax plan)

 この転換は、うまくいかないかもしれないが、メキシコやカナダや日本や中国が製造業で得ていた経済成長を米国が奪うことを意味するので、うまくいけば何年間かトランプが言う4%の高度経済成長を実現できる。経済成長を実現し、支持率や権力を維持できている限り、トランプは経済面だけでなく政治面の覇権放棄や多極化推進も続けられる。金融危機が起きると経済が破綻するので、トランプは少なくとも任期(2期8年)の後半までイエレンの米連銀(FRB)を追い詰めず、オバマ時代に大きく膨らんだ金融バブルが破裂しないようにするだろう。途中でバブルが崩壊してリーマン危機のさらに大型版が起きると、トランプの経済政策は失敗の烙印を押されるが、同時にドルや米国債の基軸性が失われ、これまた米国覇権の崩壊と多極化の急進展につながる。 (Stephen Moore: The Donald Trump Plan for Boom Times) (Mnuchin Backs Fed Independence and Signals Reform Isn’t Priority)