折々の記へ
折々の記2016⑨へ

折々の記 2017 2017 ①
【心に浮かぶよしなしごと】

【 01 】01/04~     【 02 】01/05~     【 03 】01/06~
【 04 】01/09~     【 05 】01/13~     【 06 】01/16~
【 06 】01/16~     【 07 】01/22~     【 08 】01/24~
【 01 】01/13~     【 02 】01/16~     【 03 】01/22~
【 04 】01/24~     【 05 】01/25~     【 06 】01/25~
【 07 】01/26~     【 08 】01/27~     【 09 】01/27~
【 10 】01/27~     【 11 】00/00~     【 12 】00/00~

特別編集 トランプ氏の波紋 その三 【 03 】01/22~
就任後 【 01 】


No.1 トランプ大統領就任以降  その一
   (1) 「米国第一を推進」 トランプ大統領就任 雇用・移民、国益優先
   (2) トランプ大統領就任演説 日本語訳全文
   (3) トランプ大統領 就任式の人数めぐりメディアを非難
No.2 トランプ大統領就任以降  その二
   (1) 朝日新聞・トランプニュース
      ①1面 「米国第一」次々着手 TPP離脱・NAFTA再交渉 トランプ政権、初日に
      ② (天声人語)19世紀米国のトランプ
      ③2面 (トランプの時代)自由貿易に激震 「米国人雇用を」強まる圧力
      ④3面 「強い米国」同盟語らず トランプ大統領就任
      ⑤ 温室ガス対策、行動計画撤廃 削減目標達成、不透明に トランプ大統領就任
      ⑥(日曜に想う)「考える人」から「思う人」へ 編集委員・福島申二
      ⑦4面 トランプ相場、先行きは 専門家「日本株にマイナス」「ドル高円安続く」
      ⑧ 与野党幹部は 自民「TPPの利点説明」 民進「保護主義気がかり」 トランプ大統領就任
      ⑨6面 第一声、世界が警戒 トランプ米大統領就任
      ⑩ トランプ米大統領就任式ドキュメント
      ⑪ ケネディ夫人を意識? メラニア夫人のドレスに注目 トランプ米大統領就任式
      ⑫ 孤立主義の歴史、繰り返すのか トランプ米大統領就任 アメリカ総局長・山脇岳志



No.1 トランプ大統領就任以降  その一
(1) 「米国第一を推進」 トランプ大統領就任 雇用・移民、国益優先
      朝日新聞デジタル 2017年01月21日1面
      http://www.asahi.com/shimen/20170121/index_tokyo_list.html

 「不動産王」と呼ばれ、公職経験のない初の大統領が米国に誕生――。共和党のドナルド・トランプ氏(70)が20日正午(日本時間21日午前2時)、連邦議会議事堂前の就任式で第45代大統領に就任、トランプ時代の幕が開けた。就任演説では、国益を最優先する「米国第一主義」を掲げ、雇用創出や不法移民対策などを強調。排外主義的な発言などで「分断」が広がる中、どう米国を導くのか注目される。

 就任式典でトランプ氏は宣誓。その後、演説で「ワシントンから権力をあなた方、国民に戻す」と強調。「ワシントンは繁栄したが、人々は違う。仕事はなくなり、工場は減った」と述べ、雇用確保や社会資本整備を政権の最優先課題とする方針を示した。

 また、「この日から、America First(米国第一主義)になる」と米国益を最優先する考えを強調。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を念頭に、保護主義的な貿易政策を前面に打ち出した。不法移民の排斥やイスラム教徒の入国禁止などを選挙戦で訴えたことから広がった米社会の分断を修復するため、「米国は一つになった時、米国は止められない」と国民の団結を呼びかけた。

 また、新政権は発足当初から、犯罪歴のある不法移民の措置や、メキシコとの国境での壁建設、国内のテロ対策など重点課題に着手する方針だ。

 一方、米メディアなどが調査した、トランプ氏の就任直前の支持率は4割にとどまり、これまでで最も不人気な大統領と言われている。就任式では、トランプ氏に反発する民主党下院議員ら約60人が「分断と憎悪を説く人物を祝福できない」(キース・エリソン下院議員)などと式典を欠席。会場周辺でも「人種差別主義者」「性差別主義者」などと非難する抗議デモが起きた。

 トランプ氏は不動産業など実業家出身で、公職経験のない大統領は米史上初めて。70歳での大統領就任も過去最高齢となる。ジョージ・W・ブッシュ政権以来、8年ぶりに共和党が政権交代を果たした。

 首都ワシントンでは20日早朝から市民らが議事堂前の「ナショナル・モール」に集まった。一方でトランプ氏に抗議するデモが全米であり、式典会場周辺でもカフェの窓ガラスが割られるなど、一部が暴徒化。警官のほか装甲車などが展開して厳戒態勢が敷かれた。

 (ワシントン=佐藤武嗣、五十嵐大介)

(2) トランプ大統領就任演説 日本語訳全文
      NHK WEB NEWS 1月21日 6時12分
      http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170121/k10010847631000.html?utm_int=all_side_ranking-access_001

アメリカの第45代大統領にドナルド・トランプ氏が就任しました。以下はトランプ新大統領の就任演説の日本語訳全文です。

ロバーツ最高裁判所長官、カーター元大統領、クリントン元大統領、ブッシュ元大統領、オバマ大統領、そしてアメリカ国民の皆さん、世界の皆さん、ありがとう。私たちアメリカ国民はきょう、アメリカを再建し、国民のための約束を守るための、国家的な努力に加わりました。私たちはともに、アメリカと世界が今後数年間進む道を決めます。私たちは課題や困難に直面するでしょう。しかし、私たちはやり遂げます。私たちは4年ごとに、秩序だち、平和的な政権移行のために集結します。私たちは政権移行中の、オバマ大統領、そしてファーストレディーのミシェル夫人からの寛大な支援に感謝します。彼らは本当にすばらしかったです。

しかし、きょうの就任式はとても特別な意味を持ちます。なぜなら、きょう、私たちは単に、1つの政権から次の政権に、あるいは、1つの政党から別の政党に移行するだけでなく、権限を首都ワシントンの政治からアメリカ国民に返すからです。

あまりにも長い間、ワシントンの小さなグループが政府の恩恵にあずかる一方で、アメリカ国民が代償を払ってきました。ワシントンは栄えてきましたが、人々はその富を共有していません。政治家は繁栄してきましたが、仕事はなくなり、工場は閉鎖されてきました。既存の勢力は自分たちを守ってきましたが、国民のことは守ってきませんでした。彼らの勝利は皆さんの勝利ではありませんでした。彼らが首都で祝っている一方で、闘っている国中の家族たちを祝うことはほとんどありませんでした。すべてが変わります。いま、ここから始まります。なぜなら、この瞬間は皆さんの瞬間だからです。皆さんのものだからです。ここに集まっている皆さんの、そして、アメリカ国内で演説を見ている皆さんのものだからです。きょうという日は、皆さんの日です。皆さんへのお祝いです。そして、このアメリカ合衆国は、皆さんの国なのです。本当に大切なことは、どちらの政党が政権を握るかではなく、私たちの政府が国民によって統治されているかどうかということなのです。

2017年1月20日は、国民が再び国の統治者になった日として記憶されるでしょう。忘れられていた国民は、もう忘れられることはありません。皆があなたたちの声を聞いています。世界がこれまで見たことのない歴史的な運動の一部を担う、数百万もの瞬間に出会うでしょう。この運動の中心には、重要な信念があります。それは、国は国民のために奉仕するというものです。アメリカ国民は、子どもたちのためにすばらしい学校を、家族のために安全な地域を、そして自分たちのためによい仕事を望んでいます。これらは、高潔な皆さんが持つ、当然の要求です。しかし、あまりにも多くの国民が、違う現実に直面しています。母親と子どもたちは貧困にあえぎ、国中に、さびついた工場が墓石のように散らばっています。教育は金がかかり、若く輝かしい生徒たちは知識を得られていません。そして犯罪やギャング、薬物があまりに多くの命を奪い、可能性を奪っています。このアメリカの殺りくは、いま、ここで、終わります。私たちは1つの国であり、彼らの苦痛は私たちの苦痛です。彼らの夢は私たちの夢です。そして、彼らの成功は私たちの成功です。私たちは、1つの心、1つの故郷、そしてひとつの輝かしい運命を共有しています。

きょうの私の宣誓は、すべてのアメリカ国民に対する忠誠の宣誓です。何十年もの間、私たちは、アメリカの産業を犠牲にして、外国の産業を豊かにしてきました。ほかの国の軍隊を支援する一方で、非常に悲しいことに、われわれの軍を犠牲にしました。ほかの国の国境を守る一方で、自分たちの国境を守ることを拒んできました。そして、何兆ドルも海外で使う一方で、アメリカの産業は荒廃し衰退してきました。私たちが他の国を豊かにする一方で、われわれの国の富と強さ、そして自信は地平線のかなたに消えていきました。取り残される何百万人ものアメリカの労働者のことを考えもせず、1つまた1つと、工場は閉鎖し、この国をあとにしていきました。中間層の富は、彼らの家庭から奪われ、世界中で再分配されてきました。しかし、それは過去のことです。いま、私たちは未来だけに目を向けています。きょうここに集まった私たちは、新たな命令を発します。すべての都市、すべての外国の首都、そして権力が集まるすべての場所で、知られることになるでしょう。この日以降、新たなビジョンがわれわれの国を統治するでしょう。

この瞬間から、アメリカ第一となります。貿易、税、移民、外交問題に関するすべての決断は、アメリカの労働者とアメリカの家族を利するために下されます。ほかの国々が、われわれの製品を作り、われわれの企業を奪い取り、われわれの雇用を破壊するという略奪から、われわれの国境を守らなければなりません。保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながるのです。わたしは全力で皆さんのために戦います。何があっても皆さんを失望させません。アメリカは再び勝ち始めるでしょう、かつて無いほど勝つでしょう。私たちは雇用を取り戻します。私たちは国境を取り戻します。私たちは富を取り戻します。そして、私たちの夢を取り戻します。

私たちは、新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、そして鉄道を、このすばらしい国の至る所につくるでしょう。私たちは、人々を生活保護から切り離し、再び仕事につかせるでしょう。アメリカ人の手によって、アメリカの労働者によって、われわれの国を再建します。私たちは2つの簡単なルールを守ります。アメリカのものを買い、アメリカ人を雇用します。私たちは、世界の国々に、友情と親善を求めるでしょう。しかし、そうしながらも、すべての国々に、自分たちの利益を最優先にする権利があることを理解しています。私たちは、自分の生き方を他の人たちに押しつけるのではなく、自分たちの生き方が輝くことによって、他の人たちの手本となるようにします。

私たちは古い同盟関係を強化し、新たな同盟を作ります。そして、文明社会を結束させ、過激なイスラムのテロを地球から完全に根絶します。私たちの政治の根本にあるのは、アメリカに対する完全な忠誠心です。そして、国への忠誠心を通して、私たちはお互いに対する誠実さを再発見することになります。もし愛国心に心を開けば、偏見が生まれる余地はありません。聖書は「神の民が団結して生きていることができたら、どれほどすばらしいことでしょうか」と私たちに伝えています。私たちは心を開いて語り合い、意見が合わないことについては率直に議論をし、しかし、常に団結することを追い求めなければなりません。アメリカが団結すれば、誰も、アメリカが前に進むことを止めることはできないでしょう。そこにおそれがあってはなりません。私たちは守られ、そして守られ続けます。私たちは、すばらしい軍隊、そして、法の執行機関で働くすばらしい男性、女性に、守られています。そして最も大切なことですが、私たちは神によって守られています。

最後に、私たちは大きく考え、大きな夢を見るべきです。アメリカの人々は、努力をしているからこそ、国が存在し続けていけるということを理解しています。私たちは、話すだけで常に不満を述べ、行動を起こさず、問題に対応しようとしない政治家を受け入れる余地はありません。空虚な話をする時間は終わりました。行動を起こすときが来たのです。できないことを話すのはもうやめましょう。アメリカの心、闘争心、魂を打ち負かすような課題は、存在しません。私たちが失敗することはありません。私たちは再び栄え、繁栄するでしょう。私たちはこの新世紀のはじめに、宇宙の謎を解き明かし、地球を病から解放し、明日のエネルギーや産業、そして技術を、利用しようとしています。新しい国の誇りは私たちの魂を呼び覚まし、新しい視野を与え、分断を癒やすことになるでしょう。私たちの兵士が決して忘れなかった、古くからの知恵を思い起こすときです。それは私たちが黒い肌であろうと、褐色の肌であろうと、白い肌であろうと、私たちは同じ愛国者の赤い血を流し、偉大な自由を享受し、そして、偉大なアメリカ国旗をたたえるということです。そしてデトロイトの郊外で生まれた子どもたちも、風に吹きさらされたネブラスカで生まれた子どもたちも、同じ夜空を見て、同じ夢で心を満たし、同じ全知全能の創造者によって命を与えられています。だからこそアメリカ人の皆さん、近い街にいる人も、遠い街にいる人も、小さな村にいる人も、大きな村にいる人も、山から山へ、海から海へと、この言葉を伝えます。あなたたちは二度と無視されることはありません。あなたの声、希望、夢はアメリカの運命を決定づけます。そしてあなたの勇気、善良さ、愛は私たちの歩む道を導きます。ともに、私たちはアメリカを再び強くします。私たちはアメリカを再び豊かにします。私たちはアメリカを再び誇り高い国にします。私たちはアメリカを再び安全な国にします。そして、ともに、私たちはアメリカを再び偉大にします。ありがとうございます。神の祝福が皆様にありますように。神がアメリカを祝福しますように。

(3) トランプ大統領 就任式の人数めぐりメディアを非難
      NHK WEB NEWS 1月22日 11時13分
      http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170122/k10010848551000.html?utm_int=all_side_ranking-social_004

アメリカのトランプ大統領は、就任式について、メディアが意図的に参加人数を少なく見せて報じたなどと主張し、「これはうそだ。代償を払うことになるだろう」と非難して、メディアとの対立が一層深まっています。

アメリカのトランプ大統領は就任から一夜明けた21日、CIA=中央情報局で行った演説で、「私はメディアと戦っている最中だが、彼らは地球上で最も不誠実なたぐいの人間だ」と述べました。

そして前日の就任式について、主要メディアが8年前のオバマ前大統領の就任式の写真との比較から、参加者が大幅に少なかったと伝えたことをめぐり、意図的に人数を少なく見せて報じたなどと主張し、「これはうそだ。彼らは代償を払うことになるだろう」と非難して、メディアとの対決姿勢を鮮明にしました。

また、ホワイトハウスのスパイサー報道官も21日、会見場に記者を集め、「就任式の目的は国を結束することだったが、不誠実な報道は国をまとめることを難しくするだけだ」と述べて、メディアを批判しました。

一連の政権側の反応について、有力紙のニューヨーク・タイムズは21日の電子版で、「トランプ大統領とそのスタッフは、実質的な政権発足初日を参加者数をめぐってメディアに激しい戦いを仕掛けることに費やした」と批判的に伝えるなど、トランプ新政権とメディアの対立は一層深まっています。



No.2 トランプ大統領就任以降  その二
(1) 朝日新聞・トランプニュース
      朝日新聞デジタル 2017年01月22日全面
      http://www.asahi.com/shimen/20170122/index_tokyo_list.html

1面 「米国第一」次々着手 TPP離脱・NAFTA再交渉 トランプ政権、初日に
(天声人語)19世紀米国のトランプ

2面 (トランプの時代)自由貿易に激震 「米国人雇用を」強まる圧力

3面 「強い米国」同盟語らず トランプ大統領就任
温室ガス対策、行動計画撤廃 削減目標達成、不透明に トランプ大統領就任
(日曜に想う)「考える人」から「思う人」へ 編集委員・福島申二

4面 トランプ相場、先行きは 専門家「日本株にマイナス」「ドル高円安続く」
与野党幹部は 自民「TPPの利点説明」 民進「保護主義気がかり」 トランプ大統領就任

6面 第一声、世界が警戒 トランプ米大統領就任
トランプ米大統領就任式ドキュメント
ケネディ夫人を意識? メラニア夫人のドレスに注目 トランプ米大統領就任式
孤立主義の歴史、繰り返すのか トランプ米大統領就任 アメリカ総局長・山脇岳志

⑬7面 トランプ時代の世界、どう見るか 専門家に聞く

⑱9面 トランプ大統領就任演説〈1〉
⑭8面 トランプ大統領就任演説〈2〉
⑮安全保障の「重し」失う恐れ トランプ米大統領就任演説 久保文明・東大教授
⑯演説に「誇張」「誤認」指摘 米メディアが検証 トランプ大統領就任
⑰米新政権の主要政策

⑲10面 (社説)トランプ政権 内向き超大国を憂う
⑳(声)トランプ大統領就任式の現場で
(21)(声)国のトップに持ってほしい心
(22)(声)お互いの尊重が大事なのに

(23)35面 「米国第一」トランプ政権、揺れる日本

(24)【余滴】10面 (社説)施政方針演説 未来を拓くと言うなら
(25)【余滴】10面 「声」100年、投稿を募集



1面 「米国第一」次々着手 TPP離脱・NAFTA再交渉 トランプ政権、初日に
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759574.html

 米国のトランプ新大統領は20日、就任初日から激しく動いた。主要政策を発表し、米国益を最優先する「米国第一主義」を政権の外交・経済の主軸に据えた。環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱表明や、医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃に向けた大統領令に署名するなど、オバマ前政権が積み重ねた「レガシー」(政治的遺産)を次々と撤回した。

 「再び米国を偉大にする」という選挙スローガンを掲げてきたトランプ氏は「米国第一」の姿勢を鮮明にすることに注力した。

 就任演説で「この日から『米国第一』だけになる。貿易、税金、移民、そして外交問題に関するすべての決定は、米国労働者や米国民の利益になるものにする」と宣言。トランプ氏には、これまでの米国は外国に対して寛大になりすぎ、貿易不均衡や雇用流出、犯罪増を招いたとの思いが強い。演説では「米国での殺戮(さつりく)は、ここで、今すぐ終わりとなる」と表現した。

 就任式後にはホワイトハウスのホームページで、「米国第一のエネルギー計画」「米国第一の外交政策」など、外交や貿易など6項目の主要政策を発表した。

 貿易政策では、米国の経済成長は「TPPからの離脱によって始まる」と主張。北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求める方針も示し、参加国のカナダとメキシコが交渉を拒めば、離脱する可能性も示唆した。

 外交でも「米国の国益と安全保障を最重視する」とした。オバマ前政権の「国際協調主義」から、「米国第一」の路線へと大きく方針転換させた。

 トランプ氏の初日の動きで、もう一つの特徴は、オバマ氏の政治的なレガシーの象徴を覆したことだ。

 6項目の政策では、オバマ政権が進めたTPPを事実上、破綻(はたん)に追い込んだ。エネルギー政策では、温室効果ガス削減策としてオバマ政権が掲げた火力発電所への排出規制を含む国内対策を撤廃させると明記した。

 さらには、オバマ氏のレガシーの象徴とも言えるオバマケアの撤廃に向けた大統領令にも署名した。就任初日に、大統領令でオバマケアの見直しを打ち出したことで、オバマ路線の変更と行動力を示す狙いがあるとみられる。

 ただ、これまでの路線からの変革や、既存政治の打破などを派手に印象づけた一方で、代替案や具体策は示せていない。

 オバマケアが導入されて以来、約2千万人が保険に加入できるようになったが、撤廃後にこうした加入者が保険を失う可能性がある。そうした人にどう手当てをするのか道筋は明確でない。エネルギー政策でも昨年に発効した新たな国際枠組み「パリ協定」への対応も明らかにしなかった。

 (ワシントン=佐藤武嗣、小林哲)



(天声人語)19世紀米国のトランプ
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759571.html

▼19世紀の米大統領アンドリュー・ジャクソンは粗野で短気な荒くれ男だった。10代で独立戦争の前線に立つ。拳銃による決闘もしたが、綿花栽培や投機で財を築いた
▼対英戦争で名をあげ、大統領選では高学歴エリートを大差で退けた。政権につくと高官たちからポストを取りあげ、選挙戦を支えた友人知人らにばらまく。親友を重要な役職に就け、閣僚たちの内紛を招く。議会と対立し、国立銀行をつぶし、先住民を西へ追いやった
▼強引さや身内びいきなど何かにつけて「ジャクソン以来」と評されるドナルド・トランプ氏が大統領に就任した。これほど大勢が出席招待を断り、これほど大勢が抗議集会に集まった就任式が過去にあったとは寡聞にして知らない
▼リッチ、グレート、ストロング。就任演説は、拍子抜けするほど素朴な形容詞であふれた。壇上のヒラリー・クリントン氏への敬意や謝意の言葉もなかった。いかにも格調を欠く演説だったが、希代のわかりやすさで後世に語り継がれるかもしれない
▼19世紀に戻ると、ジャクソンの人気は圧倒的だった。再選も果たした。「性格こそ激しいが能力は凡庸な男である」。彼に面会した若き仏思想家トクビルは、名著『アメリカのデモクラシー』でそう酷評したが、米大衆の支持は厚かった
▼トランプ氏に対する米大衆の期待を各国の識者やメディアは軒並み読み損ねた。就任式で改めて「大衆第一主義」の紙吹雪がふりまかれる。政権が2期8年続く予感が胸をよぎった。



2面 (トランプの時代)自由貿易に激震 「米国人雇用を」強まる圧力
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759553.html

 トランプ新大統領が就任初日から前面に押し出したのは、オバマ前政権の国際協調主義をひっくり返し、外交やエネルギー政策も「米国第一」とする方針だった。米軍も再建して強くすると主張する一方で、日本や欧州との同盟の重要性には触れず、むしろ米国の負担の重さを嘆いた。

 ■「他国防衛」不満にじむ トランプ氏

 「(米国は)我々の軍隊の悲しむべき疲弊を許しておきながら、他国の軍を援助してきた。我々の国境を守ることを拒みながら、他国の国境を防衛してきた」

 トランプ氏が右手の指で輪を作りながら訴えると、集まった観衆から拍手と口笛が飛んだ。就任演説でにじませたのは、過去の米政権への批判に加え、「同盟国」への不満だった。

 トランプ氏は選挙中から、北大西洋条約機構(NATO)について「多くの国がテロと戦う対価を支払っていない」と不満を表明。日本にも「日本が攻撃されれば、米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、我々が攻撃を受けても、日本の連中は家でくつろぎ、ソニーのテレビを見ている。こんな合意ってあるだろうか」と、駐留米軍経費を日本が全額負担しなければ、米軍撤退もありうると示唆してきた。

 日本の外務省幹部は「選挙に勝つための売り文句なのだろう」と語っていたが、就任演説でも「トランプ節」は変わらなかった。

 演説では、「従来の同盟を強化し、新しい同盟を結ぶ」と述べたが、あくまで過激派組織「イスラム国」(IS)などの打倒に向けた協力の文脈で語っただけ。就任当日にホワイトハウスのウェブサイトに掲載した外交と国防の政策基本方針には、「同盟」の字は見当たらなかった。

 かつてトランプ氏は「ビジネスは核心的利益を見失えば成功しない。国家もまた同じだ」と語っていた。この日の演説でも外交の「損得」を論じ、外交を商取引と同一視する同氏の考えが浮かび上がった。

 トランプ氏は外交方針で「(米軍は)敵を探し求めて外国に行かない」と覇権主義を否定した。一方で、「ほかの国が米国の軍事力をしのぐのは許さない」とも主張。過去25年で、海軍の艦艇が500隻以上から275隻に減り、空軍の規模も3分の2になったと憂い、米軍再建のため予算を割く方針を明らかにした。

 ただ軍の再建について、トランプ氏は昨年10月、閉鎖された海軍造船所の再活性化で「数千人の雇用が生まれる」と雇用に結びつけて語っていた。世界における米軍の戦力構想にも触れておらず、計画の詳細や実現性もなお不透明だ。

 また20日に米上院に承認され、正式に就任したマティス国防長官は同日の声明で「我々は国務省とともに同盟国との関係を強化する」と表明。トランプ氏と路線が食い違った。

 (ワシントン=佐藤武嗣)

 ■具体策見えず、負担増警戒 日本政府

 日米同盟を「不変の原則」(安倍晋三首相)とする日本政府内では、いら立ちが募る。海洋進出を強める中国や核開発を進める北朝鮮への対応を迫られるなか、「大統領選で訴えてきたことの繰り返しで、具体的なものが見えなかった」(防衛省幹部)ためだ。

 駐留経費の負担増を示唆したトランプ氏について、日本政府は、駐留経費の7割超を日本側が負担しているとして「適切な負担がなされている」(菅義偉官房長官)と強調。「日米同盟は一方が利益を享受する枠組みではない」(稲田朋美防衛相)と、トランプ氏周辺に伝えてきた。

 足元の与党内では「日米同盟の行く末を心配することはない」(高村正彦・自民党副総裁)との見通しがある一方、GDP(国内総生産)比で1%程度で推移してきた防衛費について、「1%にとどめておいていいかどうかの議論は避けられない」(自民党幹部)との声も上がっている。

 日本政府内には、「ディール(取引)」を強調するトランプ流が外交・安全保障政策にも及ぶのではないかとの懸念がある。防衛省幹部は「共和党のブッシュ(子)元政権のような民主主義への強いこだわりはなく、状況次第で中国と妥協する事態もあり得る」と話す。

 政権は2月上旬以降の早い時期に首相が訪米し、日米首脳会談を行う方向で調整している。外務省幹部は「首脳会談から物事がすべて動きだす」と語り、トップ同士の話し合いで同盟の維持・強化を図る方針だ。

 (相原亮)



3面 「強い米国」同盟語らず トランプ大統領就任
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759542.html

 トランプ新大統領が就任初日から前面に押し出したのは、オバマ前政権の国際協調主義をひっくり返し、外交やエネルギー政策も「米国第一」とする方針だった。米軍も再建して強くすると主張する一方で、日本や欧州との同盟の重要性には触れず、むしろ米国の負担の重さを嘆いた。

 ■「他国防衛」不満にじむ トランプ氏

 「(米国は)我々の軍隊の悲しむべき疲弊を許しておきながら、他国の軍を援助してきた。我々の国境を守ることを拒みながら、他国の国境を防衛してきた」

 トランプ氏が右手の指で輪を作りながら訴えると、集まった観衆から拍手と口笛が飛んだ。就任演説でにじませたのは、過去の米政権への批判に加え、「同盟国」への不満だった。

 トランプ氏は選挙中から、北大西洋条約機構(NATO)について「多くの国がテロと戦う対価を支払っていない」と不満を表明。日本にも「日本が攻撃されれば、米国は軍事力を全面的に行使しなければならないが、我々が攻撃を受けても、日本の連中は家でくつろぎ、ソニーのテレビを見ている。こんな合意ってあるだろうか」と、駐留米軍経費を日本が全額負担しなければ、米軍撤退もありうると示唆してきた。

 日本の外務省幹部は「選挙に勝つための売り文句なのだろう」と語っていたが、就任演説でも「トランプ節」は変わらなかった。

 演説では、「従来の同盟を強化し、新しい同盟を結ぶ」と述べたが、あくまで過激派組織「イスラム国」(IS)などの打倒に向けた協力の文脈で語っただけ。就任当日にホワイトハウスのウェブサイトに掲載した外交と国防の政策基本方針には、「同盟」の字は見当たらなかった。

 かつてトランプ氏は「ビジネスは核心的利益を見失えば成功しない。国家もまた同じだ」と語っていた。この日の演説でも外交の「損得」を論じ、外交を商取引と同一視する同氏の考えが浮かび上がった。

 トランプ氏は外交方針で「(米軍は)敵を探し求めて外国に行かない」と覇権主義を否定した。一方で、「ほかの国が米国の軍事力をしのぐのは許さない」とも主張。過去25年で、海軍の艦艇が500隻以上から275隻に減り、空軍の規模も3分の2になったと憂い、米軍再建のため予算を割く方針を明らかにした。

 ただ軍の再建について、トランプ氏は昨年10月、閉鎖された海軍造船所の再活性化で「数千人の雇用が生まれる」と雇用に結びつけて語っていた。世界における米軍の戦力構想にも触れておらず、計画の詳細や実現性もなお不透明だ。

 また20日に米上院に承認され、正式に就任したマティス国防長官は同日の声明で「我々は国務省とともに同盟国との関係を強化する」と表明。トランプ氏と路線が食い違った。

 (ワシントン=佐藤武嗣)

 ■具体策見えず、負担増警戒 日本政府

 日米同盟を「不変の原則」(安倍晋三首相)とする日本政府内では、いら立ちが募る。海洋進出を強める中国や核開発を進める北朝鮮への対応を迫られるなか、「大統領選で訴えてきたことの繰り返しで、具体的なものが見えなかった」(防衛省幹部)ためだ。

 駐留経費の負担増を示唆したトランプ氏について、日本政府は、駐留経費の7割超を日本側が負担しているとして「適切な負担がなされている」(菅義偉官房長官)と強調。「日米同盟は一方が利益を享受する枠組みではない」(稲田朋美防衛相)と、トランプ氏周辺に伝えてきた。

 足元の与党内では「日米同盟の行く末を心配することはない」(高村正彦・自民党副総裁)との見通しがある一方、GDP(国内総生産)比で1%程度で推移してきた防衛費について、「1%にとどめておいていいかどうかの議論は避けられない」(自民党幹部)との声も上がっている。

 日本政府内には、「ディール(取引)」を強調するトランプ流が外交・安全保障政策にも及ぶのではないかとの懸念がある。防衛省幹部は「共和党のブッシュ(子)元政権のような民主主義への強いこだわりはなく、状況次第で中国と妥協する事態もあり得る」と話す。

 政権は2月上旬以降の早い時期に首相が訪米し、日米首脳会談を行う方向で調整している。外務省幹部は「首脳会談から物事がすべて動きだす」と語り、トップ同士の話し合いで同盟の維持・強化を図る方針だ。

 (相原亮)



温室ガス対策、行動計画撤廃 削減目標達成、不透明に トランプ大統領就任
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759543.html

 トランプ新大統領は20日公表した政策方針で、温室効果ガス削減策としてオバマ前政権が掲げた「気候変動行動計画」の撤廃を打ち出した。昨年11月に発効した新たな国際ルール「パリ協定」からの離脱には触れていないが、米国が同協定で国際公約とした目標の達成が危ぶまれる状況だ。

 トランプ氏は、エネルギー問題についても「米国第一」と明記。前政権が2013年にまとめた行動計画を「有害で不必要な政策」と切り捨てた。エネルギー産業に対する規制が「重荷だった」とも批判。規制を撤廃することで、今後7年間に米国人労働者の賃金を300億ドル(約3・4兆円)以上引き上げるとしている。

 前政権の行動計画は、09年に国際公約に掲げた「20年までに05年比で17%減」とする旧目標を前提に、国内の火力発電所からでる二酸化炭素(CO2)の排出抑制策の導入を明記。前政権はその後、発電所から出るCO2を「30年に05年比で32%削減」することなどを盛り込んだ「クリーンパワー計画」を取りまとめた。

 さらに14年秋、パリ協定の国際合意を主導するため、中国とともに新目標を公表。米国は「25年までに05年比で26~28%減」とした。米全体の排出量の約3分の1を占める発電所への規制強化は、国際目標の達成に欠かせないとしていた。

 (ワシントン=小林哲)



(日曜に想う)「考える人」から「思う人」へ 編集委員・福島申二
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759540.html

 もはや旧聞に属するが、米誌タイムは昨年末、恒例の「今年の人」にトランプ氏を選んだ。だが選ばれるのが毎年著名人とは限らない。その10年前は「YOU(あなた)」だった。

 誰でもインターネットを通じて自由に発信し、世界を動かすことができる。新しい時代の到来を人称代名詞で表したセンスに感心したのを覚えている。

 そんな時代を象徴するように、去年は「保育園落ちた日本死ね」という匿名の発信が拡散した。政治をゆさぶり、波紋を広げるのを眺めながら、思い出した一冊の本があった。ナチスへの抵抗運動で処刑台に消えた学生たちを伝える「白バラは散らず」(未来社)である。

 「白バラ」と呼ばれたグループはドイツの良心として語り継がれる。手もとにあるその本には、自分たちの意見を社会に広めるために「謄写機をぜひ持つべきだ」という学生の言葉が繰り返し記されている。ネットなどない時代、学生らはタイプライターで原紙を打ち、一枚ずつ手で刷って密(ひそ)かに配布した。

 ビラの末尾にはきまって「本紙を複写し、さらに配布されんことを!」といった呼びかけがあった。巨大で凶悪なプロパガンダ組織だったナチスに小さな謄写機で必死に抵抗し、ついに捕らえられた学生たちに胸が詰まる。

 今のように携帯から瞬時に発信、リツイートできる時代だったら、若く聡明(そうめい)な彼や彼女の運命は違っていただろうかと、想いはそこへ飛んでいく。

    *

 「ポスト真実(トゥルース)」という聞き慣れない言葉が、昨年来、またたく間に世界に流布した。好ましい言葉ではない。平たく言えば、事実や真実よりも感情的な言辞や虚言、あるいはうその情報に民意が誘導されていく状況をさしている。

 英国の国民投票でEU離脱派が勝利したが、あとで公約は虚言まじりだったことが判明した。米大統領選ではデマのニュースが繰り返しネットに流れ、自らも虚偽発言が多いとされるトランプ氏が勝利した。この言葉の使用頻度は前年に比べて20倍に跳ね上がったそうだ。

 「うそとほんと」と題する谷川俊太郎さんの詩が胸に浮かぶ。〈うそはほんとによく似てる ほんとはうそによく似てる うそとほんとは 双生児/うそはほんととよくまざる ほんとはうそとよくまざる うそとほんとは 化合物〉

 かわいい詩ながら恐ろしい。そして虚実のモラルが溶解する閉塞(へいそく)した時代には往々に虚が実を駆逐する。今ならネットが両刃の剣となって虚をばらまく。

 思えば、白バラの若者たちが命がけで抗したヒトラーも、「ポスト真実」の土壌から台頭した独裁者だった。人は小さなうそより大きなうそにだまされやすいと平然と述べ、大衆の理解力は小さいが忘却力は大きいなどと、寄り添うふうをしながら徹底して大衆を蔑視した。

    *

 就任したトランプ氏がどんな大統領になるのかは分からない。

 同時進行で政治家を評価するのは難しい。英国の高名な歴史学者トインビー博士も、ヒトラーを「ヨーロッパの平和を本当に願っていると確信する」と評した時期があったという。並ならぬ視野を持つ泰斗にして、その本質を見誤った。

 政治家を「考える」タイプと「思う」タイプに分けるなら、政権を去ったオバマ氏は前者であろう。

 挑発より説得を、対立より協調を擁護する手法は、ときに非力に見え、優柔不断と批判も浴びた。だがそれも、分裂への地鳴りが常に響いている多様な米社会のもろさ、民主主義に内在する(今回のような)危うさを深く認識すればこその「考え」であったと推察する。

 トランプ氏は後者だろう。好き嫌いを軸にものごとを判断し、保水力のない心は思いを衝動的に吐き出してしまう。往々にしてこのタイプの方が決断力に富み英雄的で、強く見えるのが厄介だ。

 トランプ大統領の誕生は、「思う」がもてはやされ、「考える」が面倒がられるネット時代の必然かもしれない。米の民主主義がもたらした世界への劇薬であるのは、いまのところ間違いない。



4面 トランプ相場、先行きは 専門家「日本株にマイナス」「ドル高円安続く」
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759519.html

{ "@context": "http://schema.org", "@type": "NewsArticle", "headline": "トランプ相場、先行きは 専門家「日本株にマイナス」「ドル高円安続く」", "mainEntityOfPage": "http://www.asahi.com/articles/DA3S12759519.html", "url": "http://www.asahi.com/articles/DA3S12759519.html", "thumbnailUrl":"https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20170122000160_commL.jpg", "image":[ {"@type": "ImageObject","url": "https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20170122000160_comm.jpg","width": 640,"height": 634,"description":"「トランプ相場」の円安・株高は一服しつつある "}], "description":" トランプ氏の経済政策への期待感から、米国の株高などによる「トランプ相場」に沸いてきた金融市場。20日の大統領就任演説では、大規模なインフラ投資への言及の一方、「米国第一」を掲げる保護主義的な主張も改…", "articleSection": 写真・図版 「トランプ相場」の円安・株高は一服しつつある

 トランプ氏の経済政策への期待感から、米国の株高などによる「トランプ相場」に沸いてきた金融市場。20日の大統領就任演説では、大規模なインフラ投資への言及の一方、「米国第一」を掲げる保護主義的な主張も改めて鮮明になった。世界経済を動かす米国の新政権の「第一声」を市場関係者はどう見たのか。

 ■経済、具体策乏しく

 トランプ氏の就任演説が始まった日本時間21日未明。ニューヨーク市場では、円相場が1ドル=115円前後から円高ドル安方向に振れ、一時114円20銭台の円高水準となった。トランプ氏は演説で「新しい道路、橋、空港をつくる」など、インフラ投資や雇用創出に言及したが、具体策が乏しいと受け止められ、ドル買いは進まず、逆にドルが売られた。ダウ工業株平均の終値は前日より94・85ドル(0・48%)高い1万9827・25ドル。演説での保護主義的な姿勢への懸念から、一時前日の終値付近となる場面もあった。

 演説内容は「抽象的な話ばかりで具体策はまだない」(みずほ証券の丹治倫敦氏)との受け止めが多いが、新政権は早速、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を求める方針を表明した。改めて鮮明になった保護主義政策に、楽天証券の窪田真之氏は「関税引き上げなど具体的な政策が出てくれば、自動車など日本株にはマイナスに働く」と指摘。週明けの東京市場での取引にも影響が出そうだ。

 トランプ氏はこれまでも企業の米国外での工場建設計画へ批判を繰り返し、一部で計画見直しに追い込んだ。市場では「個別企業への攻撃が増えれば市場は動揺する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)との警戒感が強まる。

 トランプ氏が昨年11月の大統領選で勝利後、市場では同氏の経済政策への期待感が先行してきた。大型投資や減税で米国の景気が拡大するとの見方から、米長期金利や株価が上昇。日米の金利差が広がるとみて、外国為替市場ではドル高円安となった。円安や米国景気拡大への期待で日経平均株価は急上昇。円相場は昨年末までに対ドルで13円以上円安に振れ、日経平均は3000円以上も値上がりして、2万円に迫った。

 ただ年明け以降は、その流れは一服しつつある。トランプ氏の経済政策の具体策はまだはっきりせず、専門家の間では「政策の実効性とスピードを確認できればドル高円安の流れは続く」(クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏)、「市場の高い期待を実際の政策が上回るのは難しい」(大和証券の亀岡裕次氏)と見方が交錯する。今後の施政方針演説や予算教書などで、トランプ氏がどんな具体策を示すかに市場の注目が集まりそうだ。(藤田知也、神山純一)

   ■トランプ政権誕生で金融市場は?

 【日経平均株価は?】

 ◇楽天証券・窪田真之氏
 <3月末の予想> 2万1000円
 <ポイント> 米国や新興国を中心にした世界景気の回復で株高に。保護貿易主義による経済の混乱がリスク

 ◇三菱UFJモルガン・スタンレー証券・藤戸則弘氏
 <3月末の予想> 2万円
 <ポイント> 円安で株価の上昇基調は続くが、トランプ大統領の不規則発言に敏感に反応する展開に

 【円相場は?】

 ◇クレディ・アグリコル銀行・斎藤裕司氏
 <3月末の予想> 1ドル=115~120円
 <ポイント> 円安ドル高の流れは続くが、中国との貿易摩擦などリスクに注意が必要

 ◇大和証券・亀岡裕次氏
 <3月末の予想> 1ドル=110~113円
 <ポイント> 自国製品優遇の「米国第一」主義からはドル安志向が連想される

 【長期金利(満期10年国債の利回り)は?】

 ◇みずほ証券・丹治倫敦氏

 <3月末の予想> 0~0.1%
 <ポイント> 米国の財政の規模と今後の利上げペースが焦点になる



与野党幹部は 自民「TPPの利点説明」 民進「保護主義気がかり」 トランプ大統領就任
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759520.html

 トランプ米大統領の就任演説で「米国第一主義」が前面に掲げられ、公表された主要政策で保護主義的な色合いが強まったことに、与野党の幹部からは21日、指摘や懸念が相次いだ。

 自民党の高村正彦副総裁は「米国第一主義の具体的内容と程度をしっかり見極めていく必要がある」とした上で、トランプ氏が離脱を表明したTPPについて「アメリカ経済にとっても、よりよい結果をもたらすことを説明するところから日米の交渉は始まる」と語った。公明党の山口那津男代表はコメントを出し、「トランプ新政権が米国民の期待に応え、国際社会の平和と繁栄に寄与することを願ってやまない」と強調。安倍晋三首相がトランプ氏と信頼関係を深めるため、「早期に首脳会談を行うことを期待する」と求めた。

 野党は懸念を強める。民進党の蓮舫代表は21日、党会合で「国益を最大限に考えるのは理解するが、あまりにも保護主義的、孤立主義的な方向に行かないかが気がかりだ」と指摘。TPPについて「離脱が表明された。安倍政権の対応は厳しく問うていきたい」と語り、今後の国会審議で追及する考えを示した。共産党の志位和夫委員長は談話を発表し、「トランプ氏が軍事的・財政的負担の強化を求めてくる可能性がある。経済関係でも、二国間交渉を通じていっそうの譲歩を迫ってくる危険がある」と強調。その上で、「対等・平等・友好の日米関係に切り替えることが、これまでにも増して切実な課題となる」と訴えた。



6面 第一声、世界が警戒 トランプ米大統領就任
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759609.html

 ■中国、独自報道を規制

 トランプ米大統領の就任演説を中国メディアも注視し、トランプ氏が強調した「米国第一」のスローガンに警戒感を強めている。

 中国共産党機関紙・人民日報系の国際情報紙「環球時報」は21日の社説で「米国内の政治革命と国際経済貿易革命を同時に展開しようとするトランプ氏の目標は広大で、中国ではネット上で『米国版の文化大革命だ』と呼ぶ人もいる」としたうえで、対中輸出の大幅拡大のために米新政権が台湾問題などをカードに使う可能性を指摘。「中国を譲歩させるため様々な手段を遠慮せず使う恐れを排除できない」と懸念を示した。

 中国中央テレビは、反トランプ氏のデモ隊と警官隊の衝突など混乱ぶりを詳しく報じている。

 ただ、中国政府は就任前から中国への批判的な言動が目立つトランプ氏の就任式での発言を警戒していたようだ。関係者によると、当局は国内各メディアに独自の報道を禁じ、国営メディアの記事を転載するよう通知を出した。21日未明となった就任演説の生中継も規制されたという。

 トランプ氏は中国を「為替操作国」などと批判してきたため、中国で反発や警戒が出ている。ただ、最高指導部が入れ替わる5年に一度の党大会を秋に控える習近平(シーチンピン)指導部にとって、国内や党内の掌握が最優先課題。この時期に米国と激しく対立するのは避けたいのが本音だ。

 (北京=延与光貞、西村大輔)

 ■「テロ撲滅」歓迎と反発

 ロシアのペスコフ大統領報道官は英BBCが21日に放映したインタビューで、プーチン大統領がトランプ氏と会談する用意があることを明らかにした。ペスコフ氏によると、近くプーチン氏がトランプ氏に電話で祝意を伝えるが、ロシア大統領府は21日昼の時点でトランプ氏の就任に対する公式の反応は示していない。

 ロシアがサイバー攻撃で米大統領選に介入してトランプ氏に勝たせたという疑惑が指摘されていることもあり、はしゃいでいるような印象を与えたくないという配慮が感じられる。

 一方で、ロシアメディアはトランプ氏の就任演説をおおむね好意的に報じている。ノーボスチ通信は、トランプ氏が「私たちは、米国の生き方を誰にも無理強いしようとはしない」と述べたことを速報。オバマ政権と厳しく対立したウクライナやシリアをめぐり、新政権とは折り合いがつけられるのではないかという期待がにじむ。

 就任演説でトランプ氏は従来の同盟を強化するとともに、新たな同盟を結んで「過激なイスラムのテロリズムを地球上から撲滅する」と述べた。米国から多額の軍事支援を受けてきたエジプトは、シナイ半島などで過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力の活動に悩まされており、トランプ氏の就任を歓迎。シーシ大統領は20日、「トランプ大統領の任期の4年間で様々な困難に満ちた中東が安定と平和、発展へと実を結ぶことを期待する」との祝意を表した。

 演説では触れなかったが、トランプ氏はシリア内戦でアサド政権を支援するロシアとの協力に前向きだ。シリア政府は声明を出していないが、アサド大統領は今月、仏メディアとの会見で「米国とロシアの関係改善はシリア内戦にも良い影響をもたらすだろう」と期待感を表明している。

 ただ、アラブ世界ではイスラムをテロと結びつける言葉に対する警戒と反発がある。イスラム過激派に詳しいエジプトのアフマド・バン氏は、トランプ氏が「過激なイスラムのテロリズム」と表現した点について「評価は二分する。エジプトやサウジアラビアのような政権は歓迎するが、多くの市民は憎悪が過激主義だけでなく、すべてのイスラム教徒に向くことを恐れている」と指摘した。イスラム過激派はトランプ氏の表現を「米国対イスラム」という構図を強調することに利用する可能性がある。

 南シナ海問題の当事国の一つ、フィリピンのアベリヤ大統領報道官は21日、トランプ氏の就任を歓迎するコメントを発表し、「我々もフィリピンの利益を最優先としており、トランプ氏の『アメリカ・ファースト』を尊重する」とした。

 だが、同日付の英字紙インクワイアラーは「不透明感漂う中 トランプが宣誓」と報じるなど、まだ明確でないトランプ氏の安全保障分野での関与方針に不安がぬぐえない。

 米軍の駐留が続くアフガニスタンの大統領府は就任式前に「トランプ新政権との協力のもとでテロを食い止めたい」とのメッセージを発表。トランプ氏は過去にツイッターで米軍の「撤退論」を唱えている。戦闘で疲弊し、治安も財政も米国頼みのアフガン政府は新政権の動向を注視する。

 ロンドンの米国大使館前では20日夕、就任に反対する数百人が「憎悪はいらない」「人種差別にノー」などと書かれたプラカードを掲げてデモをした。同様のデモはこの日、英国の約20都市で行われたという。

 フランスのオランド大統領は20日、保護主義的な姿勢を取るトランプ氏を批判。一方、トランプ氏と共通する「自国中心主義」を掲げ、欧州で勢力を伸ばす右派勢力は20日、就任をこぞって歓迎した。



トランプ米大統領就任式ドキュメント
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759610.html

 (時刻は米東部時間、日本との時差はマイナス14時間)

1月20日

5:20 就任式会場周辺では夜明け前から警察と軍が厳しい警戒態勢を敷いた
7時ごろ 就任式が開かれる連邦議会議事堂近くのゲートが開き、市民らが続々と会場へ
7:31 トランプ氏、「今日全てが始まる! 午前11時に、宣誓式で会おう。運動は続く--仕事が始まる!」とツイート
8:37 激しい雨が降り出す中でも、ユニオン駅前での抗議デモは200人超に
8:40 トランプ氏、メラニア夫人らを伴いホワイトハウス前の教会に入って礼拝。ネクタイは赤
9:27 オバマ大統領、ホワイトハウスの大統領執務室を離れる。報道陣から「米国民に最後の言葉は?」と問われ、笑顔で「サンキュー」
9:42 トランプ夫妻、ホワイトハウスに到着。出迎えたオバマ大統領はトランプ氏に「ハウ・アー・ユー?」と語りかけ、固く握手。オバマ夫妻がトランプ夫妻を招き入れ、お茶をのみながら歓談
10:18 ヒラリー・クリントン氏が連邦議会議事堂に到着。報道陣の呼びかけに手を振る=写真、AFP時事
11:03 新旧大統領が大統領専用車に乗り合わせ、ホワイトハウスから連邦議会議事堂に到着
11:13 就任式に出席するヒラリー・クリントン氏の姿が大型モニターに映し出されると、隣り合うナショナル・モールに集まったトランプ氏の支持者からブーイング
11:26 オバマ大統領が着席。ジョージ・W・ブッシュ元大統領らと談笑
11:31 トランプ氏が登壇。親指を立てる得意のしぐさやガッツポーズで観衆に応えるも表情は硬く、緊張の色を隠せず
      午前中、ATMコーナーや飲食店などが暴徒に襲われ、ガラスを割られる被害がワシントン市内の複数の場所で確認される
11:33 就任式始まる
12:00 トランプ氏が宣誓、第45代大統領に就任
12:01 トランプ大統領の就任演説始まる。再び降り出した雨の中、「再び米国を強く、裕福に、誇り高く、安全に、そして偉大な国にする」と訴えてガッツポーズ
12:18 就任演説終了
12:46 ワシントン中心部の交差点で、反トランプ氏の抗議デモに加わる市民ら約500人が警官隊とにらみ合うなど、緊張が続く
12:53 トランプ氏が「2017年1月20日は、国民が再びこの国の支配者になった日として記憶されるだろう」とツイート
13:09 オバマ前大統領、アンドルーズ空軍基地で支持者にあいさつ。「あなたたちは希望の持つ力を証明した」「Yes,we did!」
13時過ぎ トランプ政権、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱方針を表明
15:17 大統領のパレードの観客への手荷物検査は厳重。クッキーを捨てるよう求められた女性は周りの人に食べてもらう一幕も
15:29 ホワイトハウスに向かうパレードが始まる
16:13 トランプ氏がパレードのルートにあるトランプホテル前で車を降り、約3分、歩きながら観衆に手を振る
19時ごろ 警察が一連の抗議活動で少なくとも217人を逮捕、6人の警察官がけがと発表
19時過ぎ トランプ大統領、大統領執務室で「オバマケア」の撤廃に向けた大統領令などに署名
21:39 トランプ大統領が就任舞踏会でメラニア夫人と「マイ・ウェイ」に合わせて踊る
22:06 トランプ大統領、就任舞踏会であいさつ。得意のツイートを「不誠実なメディアをバイパスする方法だ」として続ける意欲を示す

 ■観衆「8年前の3分の1」

 トランプ大統領の就任式のために多くの人がワシントンに集まったが、8年前や4年前のオバマ氏の就任式と比べると、かなり少なかった。

 一般の人が演説を聞くために集まる連邦議会議事堂前の緑地帯「ナショナル・モール」には早朝から人が押し寄せたが、8年前の写真と比べると少ないのは明らかで、ニューヨーク・タイムズは「約3分の1」という専門家の見方を紹介。2009年は過去最高の約180万人の観衆のうち約46万人がナショナル・モールに集まったと推定しており、今回は15万人前後だったことになる。

 (ワシントン=中井大助)



ケネディ夫人を意識? メラニア夫人のドレスに注目 トランプ米大統領就任式
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759612.html

 トランプ大統領の就任式では、ファーストレディーとなるメラニア夫人(46)らの服装にも注目が集まった。デザイナーの中にはトランプ氏を批判し、メラニア夫人のためにはデザインをしないと発言していた人もいたためだ。

 就任式で夫人が着た水色のドレスは米国人デザイナー、ラルフ・ローレン氏のもの。ローレン氏はニューヨーク・タイムズ紙に「就任式は世界に米国の最高のものを見せる場所。この日のために、象徴的なアメリカン・スタイルを作って見せるのが大切だった」とコメントした。

 同紙は「パステルカラー、タートルネック、ややふくらみのある髪形やシルエット。明らかに(ジョン・F・ケネディ大統領の妻)ジャクリーン・ケネディ氏の装いを参考にしている」と書いた。

 米メディアによると、メラニア夫人が夜の舞踏会で着た白いドレスはフランス出身のデザイナー、エルベ・ピエール氏と夫人が一緒にデザインした。

 (ワシントン=宮地ゆう)



孤立主義の歴史、繰り返すのか トランプ米大統領就任 アメリカ総局長・山脇岳志
      http://digital.asahi.com/articles/DA3S12759613.html

 就任演説が始まるのを待っていたかのように、雨が降り出した。トランプ新大統領の濃紺のスーツは、みるみる雨粒でぬれていく。60人以上の連邦議員が就任式を欠席、トランプ氏に抗議する人々と警官隊が衝突し、200人以上が逮捕される。米国の首都は、異様な雰囲気の中で、深い分断をさらけ出した。

 就任式の演説は、新しい大統領が、選挙戦での対立を癒やし、乗りこえるために使われることが多い。しかし、トランプ氏の演説は、陰惨な選挙戦そのままだった。

 米国は、外国に富を吸い取られ、他国の軍を援助するお人よしで、大損をしているという思い込み。新大統領は、それを「米国での殺戮(さつりく)」とまで形容した。

 新大統領は、「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」を、解決策の主軸に構えた。保護や防御こそが、繁栄をもたらすのだと。前任のオバマ大統領が力を入れた環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱も表明した。

 「米国第一主義」は、目新しい言葉ではない。

 有名なのは、1940年に設立された「米国第一主義委員会」である。スポークスマンは、大西洋単独無着陸飛行で知られるチャールズ・リンドバーグだった。ナチス・ドイツに融和的だったリンドバーグは、孤立主義を唱え、米国の第2次大戦参戦に反対した。リンドバーグの孤立主義や人種差別的傾向と、トランプ氏の主張に共通点があるという見方がある。

 米国に建国以来の孤立主義の伝統はある。その転換を図ったのは、1913年に大統領に就任したウッドロー・ウィルソンである。第1次大戦への参戦を決断し、戦争終結後は、世界平和の実現のために、国際連盟の創設に尽力した。自由貿易も主張した国際主義者だった。

 しかし、米議会は、1920年、国際連盟への加盟を否決。さらに、4年後には、日本からの移民も含めた移民排斥法が成立するなど、ウィルソン退任後は孤立主義への回帰が鮮明になった。

 29年には世界大恐慌が起き、国際協調や自由貿易の理念は後退し、主要国は輸入品に高関税をかけるようになる。世界経済は悪化し、各国でナショナリズムが台頭、第2次大戦へと突き進んだ。

 ウィルソン大統領の国際主義と、オバマ大統領の国際協調・核廃絶などの理想主義は重なる部分がある。そしてトランプ氏の孤立主義、保護主義は、第2次大戦前の米国や世界の暗黒時代を思い起こさせる。戦後の米国外交は、大戦前の反省にたち、国際主義が基軸だった。今、米国は戦後最大の転換点にさしかかっているのかもしれない。

 識者の中には、トランプ氏が任命した閣僚が保護主義・孤立主義者ばかりではないことや、米議会には共和党を中心に自由貿易派も多いことから「戦前のような極端な保護主義には戻らない」との楽観論も少なくはない。

 ただ、トランプ氏の初日の言動を見る限り、自国の国益を追求する姿は露骨であり、世界をリードするという役割は放棄したかにみえる。

 トランプ政権移行チームの幹部は「日本は自国の防衛費を大幅に増強すべきだ」と語った。戦後日本は防衛費を抑え、貿易拡大に力点を置き経済成長を図った。土台となってきた日米同盟も、変革期を迎えることになりそうだ。

 米国が保護主義に傾けば、問題は米国にとどまらない。貿易摩擦の中心が米国と中国の間になったとしても、相互依存が進んでいるため、日中貿易にも悪影響は及ぶ。世界経済の低迷は日本を直撃する。日本のためにも、米国が保護主義に傾斜しないよう働きかける必要がある。